(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバーから出射された光のうち、前記発光素子の発光中心を基準として前記光軸に対して0°以上30°以下の領域に出射された光の相対照度の和をEa、30°超60°以下の領域に出射された光の相対照度の和をEb、60°超90°以下の領域に出射された光の相対照度の和をEc、90°超120°以下の領域に出射された光の相対照度の和をEd、120°超150°以下の領域に出射された光の相対照度の和をEeとし、前記Ea〜Eeのうちの最大値をEmaxとしたときに、
Ea/Emaxが0.8より大きく1以下であり、Ed/Emaxが0.6より大きく1以下である、
請求項1に記載の照明装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】特許文献1に記載の照明装置の構成を示す模式図である。
【
図2】特許文献2に記載の照明装置の構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る照明装置の要部断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る光束制御部材の断面図である。
【
図5】
図5A〜Dは、本発明の一実施形態に係る第1光束制御部材およびホルダーの構成を示す図である。
【
図6】
図6A〜Dは、本発明の一実施形態に係る第2光束制御部材の構成を示す図である。
【
図7】
図7A〜Dは、本発明の他の実施形態に係る第1光束制御部材およびホルダーの構成を示す図である。
【
図8】光束制御部材の配光特性を測定するための照明装置の構成を示す模式図である。
【
図9】
図8に示される照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図10】実施例1に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図11】実施例1に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図12】実施例2に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図13】実施例2に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図14】実施例3に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図15】実施例3に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図16】実施例4に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図17】実施例4に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図18】実施例5に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図19】実施例5に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図20】実施例6に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図21】実施例6に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図22】実施例7に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図23】実施例7に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図24】実施例8に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図25】実施例8に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図26】実施例9に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図27】実施例9に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図28】実施例10に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図29】実施例10に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図30】実施例11に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図31】実施例11に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図32】実施例12に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図33】実施例12に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図34】実施例13に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図35】実施例13に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図36】実施例14に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図37】実施例14に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図38】実施例15に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図39】実施例15に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図40】比較例1に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図41】比較例1に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図42】比較例2に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図43】比較例2に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図44】比較例3に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図45】比較例3に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図46】比較例4に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図47】比較例4に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図48】比較例5に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図49】比較例5に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図50】比較例6に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図51】比較例6に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図52】比較例7に係る照明装置の構成を示す模式図である。
【
図53】比較例7に係る照明装置の全方位の相対照度を示すグラフである。
【
図54】実施例1〜15および比較例1〜7に係る照明装置におけるR/OとEa/Emaxとの相関を示すグラフである。
【
図55】実施例1〜15および比較例1〜7に係る照明装置におけるR/OとEd/Emaxとの相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、本発明の照明装置の代表例として、白熱電球に代えて使用されうる照明装置について説明する。
【0014】
[照明装置の構成]
図3は、本発明の一実施形態に係る照明装置の構成を示す断面図である。
図3に示されるように、照明装置100は、筐体110、基板120、発光素子130、光束制御部材140およびカバー160を有する。以下、各構成要素について説明する。
【0015】
(1)筐体、基板および発光素子
筐体110は、筐体110の一端面の縁から筐体110の他端側に向けて傾斜する傾斜面110aと、筐体110の他端に配置される口金110bと、を有する。さらに筐体110は、発光素子130からの熱を放出するためのヒートシンクを兼ねている。口金110bおよびヒートシンク内部には、口金110bと発光素子130とを電気的に接続する不図示の電源回路が配設されている。傾斜面110aは、カバー160から後方方向へ出射された光を遮らないために形成されている。基板120は、筐体110の一端面上に配置されている。基板120の形状は、発光素子130を実装することができれば特に限定されず、板状でなくてもよい。発光素子130は、照明装置100の光源であり、筐体110上に固定された基板120上に実装されている。発光素子130は、発光素子130の光軸LAが基板120の法線に沿うように、基板120上に配置される。たとえば、発光素子130は、白色発光ダイオードなどの発光ダイオード(LED)である。「発光素子の光軸」とは、発光素子からの立体的な光束の中心における光の進行方向を言う。発光素子が複数ある場合は、複数の発光素子からの立体的な光束の中心における光の進行方向を言う。
【0016】
(2)光束制御部材
図4は、光束制御部材140の断面図である。光束制御部材140は、発光素子130から出射された光の配光を制御する。
図4に示されるように、光束制御部材140は、発光素子130に対向して配置される第1光束制御部材141、第1光束制御部材141に対向して配置される第2光束制御部材142およびホルダー150を含む。
【0017】
(2−1)第1光束制御部材
図5A〜Dは、第1光束制御部材141およびホルダー150の構成を示す図である。
図5Aは平面図であり、
図5Bは側面図であり、
図5Cは底面図であり、
図5Dは
図5Aに示されるA−A線の断面図である。第1光束制御部材141は、発光素子130から出射された光の一部の進行方向を制御する。第1光束制御部材141は、第1光束制御部材141からの出射光が発光素子130からの出射光よりも配光が狭まるように機能する。
図5Aに示されるように、第1光束制御部材141は、平面視形状が略円形に形成されている。第1光束制御部材141は、ホルダー150と一体的に形成されており、その中心軸CA1が発光素子130の光軸LAと一致するように、発光素子130に対して空気層を介して配置されている(
図4参照)。
【0018】
図4および
図5Dに示されるように、第1光束制御部材141は、屈折部161と、フレネルレンズ部162と、出射面163とを有する。出射面163側を第1光束制御部材141の表側とすると、屈折部161は、第1光束制御部材141の裏側面における中心部に形成されている。屈折部161は、発光素子130から出射された光の一部を入射して出射面163に向けて屈折させる。このように屈折部161は、第1光束制御部材141に入射する光の入射面として機能する。
【0019】
フレネルレンズ部162は、屈折部161の周囲に形成されている。フレネルレンズ部162は、同心円状に配置された円環状の突起162aを複数有する。円環状の突起162aは、内側の第1傾斜面162bと外側の第2傾斜面162cとを有する。第1傾斜面162bは、発光素子130から出射された光を入射する。このように第1傾斜面162bは、第1光束制御部材141に入射する光の入射面として機能する。第2傾斜面162cは、第1傾斜面162bに入射した光の一部を第2光束制御部材142に向けて全反射する。このように第2傾斜面162cは、第1傾斜面162bから入射した光の一部を全反射する全反射面として機能する。すなわち、フレネルレンズ部162は反射型のフレネルレンズとして機能する。
【0020】
第1光束制御部材141は、例えば射出成形により形成される。第1光束制御部材141の材料は、所望の波長の光を通過させ得る透過性の高いものであれば特に限定されない。たとえば、第1光束制御部材141の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂(EP)などの光透過性樹脂、またはガラスである。
【0021】
屈折部161および第1傾斜面162bは、発光素子130から出射された光の一部を第1光束制御部材141の内部に入射させる。屈折部161は、平面視形状が円形の面である。屈折部161は、例えば、平面、球面、非球面または屈折型のフレネルレンズである。屈折部161の形状は、中心軸CA1を中心軸とする回転対称(円形)である。
【0022】
第1傾斜面162bは、円環状の突起162aの頂縁から円環状の突起162aの内側の底縁に至る面であり、第1光束制御部材141の中心軸CA1を中心とする回転対称面である。すなわち、第1傾斜面162bは、中心軸CA1を中心軸とする円環形状に形成されている。第1傾斜面162bの傾斜角は、それぞれ異なっていてもよいし、光軸LAと平行(傾斜角90°)の場合を含みうる。第1傾斜面162bの母線は、直線であってもよいし、曲線であってもよい。第1傾斜面162bが曲面である場合における第1傾斜面162bの傾斜角は、第1傾斜面162bの接線の、中心軸CA1に対する角度である。
【0023】
第2傾斜面162cは、第1傾斜面162bから入射した光の一部を第2光束制御部材142に向けて全反射する。第2傾斜面162cは、円環状の突起162aの頂縁から円環状の突起162aの外側の底縁に至る面である。最も外側の第2傾斜面162cの外縁と出射面163の外縁との間には、フランジ148が設けられている。このフランジ148は設けられなくてもよい。第2傾斜面162cは、第1光束制御部材141の中心軸CA1を取り囲むように形成された回転対称面である。第2傾斜面162cの直径は、円環状の突起162aの頂縁から底縁に向けて漸増している。第2傾斜面162cを構成する母線は、外側(中心軸CA1から離れる側)に凸の円弧状曲線である。また、照明装置100に求められる配光特性に応じて、第2傾斜面162cを構成する母線を直線としてもよい。すなわち、第2傾斜面162cは、テーパー形状であってもよい。なお、「母線」とは、一般的に線織面を描く直線を意味するが、本発明では回転対称面である第2傾斜面162cを描くための曲線を含む語として用いる。第2傾斜面162cの傾斜角は、個々の第2傾斜面162cで異なっていてもよい。第2傾斜面162cが曲面である場合における第2傾斜面162cの傾斜角は、第2傾斜面162cの接線の、中心軸CA1に対する角度である。
【0024】
出射面163は、屈折部161および第1傾斜面162bから入射した光の一部および第2傾斜面162cで全反射された光を第2光束制御部材142に向けて出射する。出射面163は、第1光束制御部材141において、裏側に形成されるフレネルレンズ部162の反対側(表側)に位置する面である。すなわち、出射面163は、第2光束制御部材142と対向するように配置されている。
【0025】
(2−2)第2光束制御部材
図6A〜Dは、第2光束制御部材142の構成を示す図である。
図6Aは平面図であり、
図6Bは側面図であり、
図6Cは底面図であり、
図6Dは
図6Aに示されるA−A線の断面図である。
【0026】
第2光束制御部材142は、第1光束制御部材141から出射され第2光束制御部材142に到達した光のうち、一部の光の進行方向を制御して反射させ、残部を透過させる。
図6Aに示されるように、第2光束制御部材142は、平面視形状が略円形に形成された部材である。第2光束制御部材142は、ホルダー150により支持されており、その中心軸CA2が発光素子130の光軸LAと一致するように、第1光束制御部材141に対して空気層を介して配置されている。
【0027】
第2光束制御部材142に前述した部分反射、部分透過の機能を付与する手段は、特に限定されない。たとえば、光透過性の材料からなる第2光束制御部材142の表面(発光素子130および第1光束制御部材141に対向する面)に透過反射膜を形成すればよい。光透過性の材料の例には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂(EP)などの透明樹脂材料や、ガラスなどが含まれる。透過反射膜の例には、TiO
2およびSiO
2の多層膜、ZnO
2およびSiO
2の多層膜、Ta
2O
5およびSiO
2の多層膜などの誘電体多層膜や、アルミニウム(Al)などからなる金属薄膜などが含まれる。また、光透過性の材料からなる第2光束制御部材142の内部にビーズなどの光散乱子を分散させてもよい。すなわち、第2光束制御部材142は、一部の光を反射させ、一部の光を透過させる材料により形成されていてもよい。また、光反射性の材料からなる第2光束制御部材142に光透過部を形成してもよい。光反射性の材料の例には、白色樹脂や金属などが含まれる。光透過部の例には、貫通孔や有底の凹部などが含まれる。後者の場合、発光素子130および第1光束制御部材141からの出射光は、凹部の底部(厚みが薄くなっている部分)を透過する。たとえば、可視光の透過率が20%程度であり、反射率が78%程度である白色のポリメタクリル酸メチルを用いて、光反射性および光透過性の機能を併せ持つ第2光束制御部材142を形成することができる。第2光束制御部材142の第1光束制御部材141と対向する面(この後説明する反射面145)は、入射光の正反射方向の反射強度が他の方向の反射強度よりも大きくなるように形成されていることが好ましい。したがって、第2光束制御部材142の第1光束制御部材141と対向する面は、光沢面となるように形成されている。
【0028】
第2光束制御部材142は、第1光束制御部材141と対向し、かつ第1光束制御部材141から出射された光の一部を反射させる反射面145を有する。反射面145は、第1光束制御部材141からの出射光の一部をホルダー150に向けて反射させる。反射した光は、ホルダー150を透過してカバー160の中部(側部)および下部に到達する。
【0029】
第2光束制御部材142の反射面145は、第2光束制御部材142の中心軸CA2を中心とする回転対称(円対称)面である。また、
図4に示されるように、この回転対称面の中心から外周部にかけての母線は、発光素子130および第1光束制御部材141に対して凹の曲線であり、反射面145は、この母線を360°回転させた状態の曲面である。すなわち、反射面145は、中心から外周部に向かうにつれて発光素子130からの高さが高くなる非球面形状の曲面を有する。また、反射面145の外周部は、反射面145の中心と比較して、発光素子130の光軸LA方向における発光素子130からの距離(高さ)が離れた位置に形成されている。たとえば、反射面145は、中心から外周部に向かうにつれて発光素子130からの高さが高くなる非球面形状の曲面であるか、または、中心部から所定の地点までは中心部から外周部に向かうにつれて発光素子130(基板120)からの高さが高くなり、前記所定の地点から外周部までは中心部から外周部に向かうにつれて発光素子130からの高さが低くなる非球面形状の曲面である。前者の場合、基板120の面方向に対する反射面145の傾斜角度は、中心から外周部に向かうにつれて小さくなる。一方、後者の場合、反射面145には、中心と外周部との間であって、かつ外周部に近い位置に、基板120の面方向に対する傾斜角度が零(基板120と平行)となる点が存在する。なお、前述の通り、「母線」とは、一般的に線織面を描く直線を意味するが、本発明では回転対称面である反射面145を描くための曲線を含む語として用いる。
【0030】
(3)ホルダー
ホルダー150は、基板120に位置決めされるとともに、発光素子130に対して第1光束制御部材141および第2光束制御部材142を位置決めする。
【0031】
ホルダー150は、略円筒形状に形成された光透過性を有する部材である。ホルダー150の一方の端部には、第2光束制御部材142が固定される。ホルダー150の他方の端部は、基板120に固定される。以下の説明では、ホルダー150の2つの端部のうち、第2光束制御部材142が固定される端部を「上端部」と呼び、基板120に固定される端部を「下端部」と呼ぶ。
【0032】
ホルダー150は、第1光束制御部材141と共に一体成形により形成されている。ホルダー150の材料は、所望の波長の光を通過させ得るものであれば特に限定されない。たとえば、ホルダー150の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂(EP)などの光透過性樹脂、またはガラスである。ホルダー150に光拡散能を付与する場合には、これらの光透過性の材料に散乱子を含ませてもよいし、ホルダー150の表面に光拡散処理を施してもよい。
【0033】
図5に示されるように、ホルダー150の上端部には、上端部の端面151上に第2光束制御部材142を固定するための、ガイド突起152および爪部153が設けられている。
【0034】
ガイド突起152は、上端部の端面151の外周部の一部に形成されており、第2光束制御部材142がホルダー150の径方向に移動することを防止する。ガイド突起152の数は、特に限定されないが、通常は2つ以上である。
図5に示される例では、ホルダー150は、互いに対向する2つのガイド突起152を有している。また、ガイド突起152の形状は、第2光束制御部材142と径嵌合することができれば特に限定されない。
図5に示される例では、平面視したときのガイド突起152の形状は、円弧状である。
【0035】
爪部153は、上端部の端面151に形成されている。後述するように、爪部153は、第2光束制御部材142の嵌合部143(凹部144)に嵌合して、第2光束制御部材142が外れることおよび回転することを防止する。爪部153の数は、特に限定されないが、通常は2つ以上である。
図5に示される例では、ホルダー150は、互いに対向する2つの爪部153を有している。また、爪部153の形状は、第2光束制御部材142を回転させたときに、爪部153を第2光束制御部材142の凹部144に嵌合させることができれば特に限定されない。
【0036】
ホルダー150の上端部には、全周にわたり、第2光束制御部材142を載せるための端面151が形成されている。すなわち、ガイド突起152の内側および爪部153の内側にも端面151は存在する(
図5A参照)。したがって、光束制御部材140を平面視したとき、第2光束制御部材142の外周部(フランジ146)は、上端部の端面151に、全周にわたり重なる。このため、第2光束制御部材142とホルダー150との隙間から光が漏れることが防止される。
【0037】
ホルダー150の下端部には、ホルダー150を筐体110に位置決めするためのボス155と、筐体110または基板120の一端面に形成された不図示の係止用の孔に係止する係止爪157が設けられている。また、第1光束制御部材141の周囲の空気を換気するための換気口156も設けられている。
【0038】
光束制御部材140の製造方法は、特に限定されない。たとえば、光束制御部材140は、第1光束制御部材141とホルダー150との一体成形物に第2光束制御部材142を組み付けることによって製造されうる。第2光束制御部材142を組み付ける際には、接着剤などを使用してもよい。第1光束制御部材141とホルダー150の一体成形物は、例えば無色透明の樹脂材料を用いて射出成形により作製されうる。第2光束制御部材142は、例えば、無色透明の樹脂材料を用いて射出成形した後に、反射面145となる面に透過反射膜を蒸着することによって、または、白色の樹脂材料を用いて射出成形することによって、作製されうる。第2光束制御部材142は、第1光束制御部材141の爪部153を第2光束制御部材142の凹部144に嵌合させて第2光束制御部材142を回転させることによって、第1光束制御部材141およびホルダー150の一体成形物に組み付けられる。
【0039】
なお、第1光束制御部材141とホルダー150とを別々に成形してもよい。この場合は、第1光束制御部材141をホルダー150に組み付け、また第2光束制御部材142をホルダー150に組み付けることで、光束制御部材140を製造することができる。第1光束制御部材141とホルダー150とを別々に成形することにより、ホルダー150および第1光束制御部材141を形成する材料の選択の自由度が向上する。たとえば、散乱子を含む光透過性の材料でホルダー150を形成し、散乱子を含まない光透過性の材料で第1光束制御部材141を形成することが容易となる。
【0040】
次に、光束制御部材140における、発光素子130から出射された光の光路について説明する。
【0041】
発光素子130の光軸LAに対する角度が大きい光は、第1傾斜面162bから第1光束制御部材141に入射する。第1光束制御部材141に入射した光は、第2傾斜面162cで第2光束制御部材142に向けて反射し、出射面163から出射される。そして、第2光束制御部材142に到達した光の一部は、第2光束制御部材142を透過してカバー160の上部に到達する。また、第2光束制御部材142に到達した光の一部は、第2光束制御部材142の反射面145で反射して、ホルダー150を介してカバー160の中部(側部)および下部に到達する。このとき、第2光束制御部材142の中心部において反射した光は、カバー160の中部に向かう。一方、第2光束制御部材142の外周部において反射した光は、カバー160の下部に向かう。
【0042】
発光素子130の光軸LAに対する角度が小さい光は、屈折部161から第1光束制御部材141に入射し、出射面163から出射して第2光束制御部材142に到達する。そして、第2光束制御部材142に到達した光の一部は、第2光束制御部材142を透過してカバー160の上部に到達する。一方、第2光束制御部材142に到達した光の一部は、第2光束制御部材142の反射面145で反射して、ホルダー150を介してカバー160の中部および下部に到達する。このとき、第2光束制御部材142の中心部において反射した光は、カバー160の中部に向かう。また、第2光束制御部材142の外周部において反射した光は、カバー160の下部に向かう。こうして、発光素子130からの出射光は、前方方向、側方方向および後方方向に配光される(
図9参照)。
【0043】
(4)カバー
カバー160は、光束制御部材140により進行方向を制御された光(反射光および透過光)を拡散させつつ透過させる。カバー160は、開口部を有する中空領域が形成された部材である。基板120、発光素子130および光束制御部材140は、カバー160の中空領域内に配置される。
【0044】
カバー160に光拡散能を付与する手段は、特に限定されない。たとえば、カバー160の内面または外面に光拡散処理(例えば、粗面化処理)を行ってもよいし、光拡散性の材料(例えば、ビーズなどの散乱子を含む光透過性の材料)を用いてカバー160を作製してもよい。
【0045】
カバー160は、方向Yにおけるカバー160の開口部上の点をP0とし、方向Yにおける光軸LAから最大径となる点をP5としたとき、P0からP5に向かって、カバー160の内径が漸増するように形成される。カバー160の形状は、さらに下記式(1)を満たす。カバー160の形状は、例えば球冠形状(球面の一部を平面で切り取った形状)でありうるが、下記式(1)をさらに満たす範囲において特に限定されない。
0.33<R/O<1.2 (1)
【0046】
上記式中、「O」は、光軸LAに沿う方向Xにおいて、光束制御部材140上の基板120から最も離れた点から、カバー160の内面上の基板120から最も離れた点までの方向Xにおける距離である(
図3参照)。「方向Xにおいて光束制御部材上の基板から最も離れた点」とは、光束制御部材140の出射光の配光を制御する機能を有する部分のうち、方向Xにおいて基板から最も離れた位置にある点である。たとえばガイド突起152上の点または第2光束制御部材142の外周部上の点(
図4中のP1)である。「方向Xにおいてカバーの内面上の基板から最も離れた点」は、例えばカバー160の内面と光軸LAとの交点(
図3中のP2)である。これらの点間の「方向Xにおける距離」とは、例えば、P2から基板120の表面までの距離と、P1から基板120の表面までの距離との差である。
【0047】
上記式中、「R」は、光軸LAを含む断面において、光束制御部材140の光軸LAから最も離れた点から全反射面の最外縁部を通り光軸LAに直交する直線とカバーの内面との交点までの光軸LAに直交する方向Yにおける距離である(
図3参照)。「方向Yにおいて光束制御部材の、光軸から最も離れた点」とは、光束制御部材140の出射光の配光を制御する機能を有する部分のうち、方向Yにおいて光軸から最も離れた位置にある点である。たとえばホルダー150の上端部における側面上の点(
図4中のP3)である。「全反射面の最外縁部を通り光軸LAに直交する直線とカバーの内面との交点」とは、例えば光軸LAを含む断面において光束制御部材140の全反射面の最外縁部(フレネルレンズ部162の最外縁に位置する第2傾斜面162cの底縁)を通り光軸LAに直交する直線とカバー160の部分における内面との交点(
図3中のP4)である。これらの点間の「方向Yにおける距離」とは、例えば、P4から光軸LAまでの距離と、P3から光軸LAまでの距離との差である。光束制御部材140の全反射面の最外縁部を通る面は、全反射面である第2傾斜面162cの形成基準面と言い換えることもできる。
【0048】
R/Oが0.33以下であると、光束制御部材140から出射した光のうち、発光素子130の発光中心を基準として光軸LAに対して0°以上30°以下の光におけるカバー160への入射角が大きくなり、この光がカバー160から出射しにくくなる。このため、カバー160から出射する光のうち、光軸LAに対して0°以上30°以下の光の光量が少なくなってしまう。
【0049】
R/Oが1.2以上であると、カバー160から出射する光のうち、発光素子130の発光中心を基準として光軸LAに対して0°以上30°以下の光の光量は多くなるが、90°超120°以下の光の光量が相対的に少なくなる。このため、カバー160から出射する光の配光が狭くなることがある。
【0050】
照明装置100は、照明装置として全方位に適切な配光を実現する観点から、下記式(2)および式(3)の関係を満たすことが好ましい。
0.8<Ea/Emax≦1 (2)
0.6<Ed/Emax≦1 (3)
【0051】
上記式中、Eaは、カバー160から出射された光のうち、発光素子130の発光中心を基準として光軸LAに対して0°以上30°以下の領域に出射された光の相対照度の和を表し、Edは、90°超120°以下の領域に出射された光の相対照度の和を表す。また、Emaxは、カバー160から出射された光の、発光素子130の発光中心を基準として光軸LAに対して30°超〜60°以下の領域に出射された光の相対照度の和をEb、60°超90°以下の領域に出射された光の相対照度の和をEc、120°超150°以下の領域に出射された光の相対照度の和をEeとしたときの、Ea〜Eeのうちの最大値を表す。「相対照度」とは、発光素子の発光中心から等距離の位置における照度である。相対照度は、実測値であってもよいし、仮想面における照度の計算値であってもよい。
【0052】
上記式(2)において、Ea=Emaxのとき、Ea/Emaxは最大値1となる。Ea/Emaxが0.8以下であると、カバー160から出射する光のうち、光軸LAに対して0°以上30°以下の光の光量が少なくなる。このため、カバー160からの出射光の配光分布は、0°付近で暗い配光分布となり、好ましくない。
【0053】
上記式(3)において、Ed=Emaxのとき、Ed/Emaxは最大値1となる。Ed/Emaxが0.6以下であると、カバー160から出射する光のうち、光軸LAに対して90°超120°以下の光の光量が少なくなる。このため、カバー160からの出射光が、照明装置の後方(筐体110の他端側)まで十分に届かない。よって照明装置として最適な全方位配光が得られないことがある。
【0054】
Ea/EmaxおよびEd/Emaxは、前述したR/Oや、光軸LAの方向Yにおける基板120表面からカバー160内面上において最大径となる点P5(
図3参照)までの距離によって調整されうる。たとえば、光軸LAの方向において、P5がP1よりも基板120側にある場合では、前方方向の光の光量が増加し、側方方向および後方方向の光の光量が減少する傾向にある。光軸LAの方向において、P5がP1よりも基板120から遠い位置にある場合では、側方方向および後方方向の光の光量が増加し、前方方向の光の光量が減少する傾向にある。
【0055】
[効果]
照明装置100では、発光素子130の光軸LAに対する角度が大きい発光素子130からの出射光を、第1光束制御部材141の第2傾斜面162cで反射させることで、第2光束制御部材142に到達する光の光量を増やしている。そして、第2光束制御部材142に到達した光の一部をカバー160の中部および下部に向けて反射させることで、側方方向および後方方向への出射光の光量を増やしている。さらに、光束制御部材140からの出射光を、前述の式(1)を満たす形状のカバー160に通すことによって、カバー160から前方方向、側方方向および後方方向の各方向への出射光量を均等にする。このため、照明装置100は、白熱電球に近い配光特性を実現することができる。照明装置100は、白熱電球に代えて室内照明などに使用されうる。また、照明装置100は、白熱電球よりも消費電力を少なくすることができるとともに、白熱電球よりも長期間使用することができる。
【0056】
[光束制御部材の変形例]
光束制御部材140に代えて、
図7に示されるように、フレネルレンズ部162を含まない光束制御部材740を用いることができる。
図7は、本発明の他の実施形態に係る第1光束制御部材およびホルダーの構成を示す図である。
図7Aは平面図であり、
図7Bは側面図であり、
図7Cは底面図であり、
図7Dは
図7Aに示すB−B線の断面図である。
図4に示した第1光束制御部材141およびホルダー150と同じ構成要素を同じ符号で示し、その説明を省略する。
【0057】
光束制御部材740は、図示しない第2光束制御部材142に加えて、第1光束制御部材741およびホルダー150を有する。第1光束制御部材741は、発光素子130から出射された光を入射する入射面761と、入射面761から入射した光の一部を全反射する全反射面762と、入射面761から入射した光の一部および全反射面762で反射した光を出射する出射面163とを有する。
【0058】
入射面761は、第1光束制御部材741の底部に形成された凹部の内面である。入射面761は、凹部の天面を構成する内天面と、凹部の側面を構成するテーパー状の内側面とを有する。内側面は、内天面側の縁の内径寸法よりも開口縁側の内径寸法の方が大径となるように、内天面側から開口縁側に向かうに従って内径が漸増している(
図7D参照)。
【0059】
全反射面762は、第1光束制御部材741の底部の外縁から出射面163の外縁に延びる面である。全反射面762は、第1光束制御部材741の中心軸CA1を取り囲むように形成された回転対称面である。全反射面762の直径は、底部側から出射面163側に向けて漸増している。全反射面762を構成する母線は、外側(中心軸CA1から離れる側)に凸の円弧状曲線である。全反射面762を構成する母線を直線とし、全反射面762をテーパー形状としてもよい。本変形例における「R」も、光軸LAを含む断面において、全反射面762の最外縁部を通り光軸LAに直交する直線とカバーの内面との交点から光束制御部材740の光軸LAから最も離れた点までの光軸LAに直交する方向Yにおける距離として、光束制御部材140を有する照明装置と同様に定義することができる。全反射面762の最外縁部とは、全反射面762の上端縁であり、例えば
図7中では点P6で示される。光束制御部材740の全反射面762の最外縁部を通る面は、全反射面762の形成基準面と言い換えることもできる。このような光束制御部材740を用いても、照明装置100は、白熱電球に近い配光特性を実現しうる。
【実施例】
【0060】
形状の異なるカバーを装着した照明装置の配光特性をシミュレーションによって求めた。具体的には、発光素子130の発光中心を基準点として、光軸LAを含む平面における全方位の相対照度を求めた。本シミュレーションでは、発光素子130の発光中心から1000mmの距離にある仮想面における照度を算出した。
【0061】
(光束制御部材の配光特性)
図8に示すように、カバー160を有さない照明装置を用いて、光束制御部材140の配光特性を調べた。
図9は、上記照明装置(光束制御部材140)の配光特性を示すグラフである。このグラフでは、最大照度を「1」として、各方位における相対照度を示している(以下のグラフも同じ)。0°は前方方向(
図8における上方方向)を意味し、90°は側方方向(
図8における水平方向)を意味し、180°は後方方向(
図8における下方方向)を意味する。このグラフから、発光素子130からの出射光の配光が光束制御部材140によって制御され、側方方向(約60°)および後方方向(120°超150°以下)の光量が多くなっていることがわかる。一方で、前方方向(0°以上30°以下)および後方方向(90°超120°以下)の光量が相対的に少なく、光束制御部材140だけではバランスのよい配光を行えないことがわかる。
【0062】
(実施例1)
図10に示す形状のカバーを有する照明装置1の配光特性を求めた。照明装置1において、光束制御部材における基板から最も離れた点(前述のP1)から、カバーの内面における基板から最も離れた(前述の点P2)までの、方向Xにおける距離(O)は17.8mmである。また、光束制御部材における光軸から最も離れた点(前述のP3)から、全反射面の形成基準面と同一高さに位置するカバーの内面における点(前述のP4)までの、方向Yにおける距離(R)は13.44mmである。また、点P1からカバー内面の最大径の点P5までの方向Xにおける距離(Q)は12.7mmである。
【0063】
照明装置1の配光特性を
図11に示す。さらに、照明装置1の、R/OとEa/Emaxとの相関を示すグラフを
図54に、照明装置1の、R/OとEd/Emaxとの相関を示すグラフを
図55に、それぞれ示す。
図11から、照明装置1は、広くかつバランスのよい配光特性を有することがわかる。
【0064】
(実施例2〜15)
照明装置1を照明装置2〜15に代える以外は実施例1と同様にして、照明装置2〜15の配光特性を求めた。照明装置2〜15のカバーの形状を
図12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,34,36および38に示す。また、照明装置2〜15におけるO,RおよびQを以下の表1に示す。また、照明装置2〜15の配光特性を
図13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37および39に示す。さらに、照明装置2〜15の、R/OとEa/Emaxとの相関を示すグラフを
図54に、照明装置2〜15の、R/OとEd/Emaxとの相関を示すグラフを
図55に、それぞれ示す。実施例15における照明装置15のカバーおよび光束制御部材は、他の実施例における照明装置のカバーおよび光束制御部材よりも、大きめに形成されている。このような照明装置であっても、R/Oが前述の式(1)を満たすことにより、白熱電球に近い配光特性を実現しうる。
【0065】
(比較例1〜7)
照明装置1を照明装置16〜22に代える以外は実施例1と同様にして、照明装置16〜22の配光特性を求めた。照明装置16〜22のカバーの形状を
図40,42,44,46,48,50および52に示す。また、照明装置16〜22におけるO,RおよびQを以下の表1に示す。また、照明装置16〜22の配光特性を
図41,43,45,47,49,51および53に示す。さらに、照明装置16〜22の、R/OとEa/Emaxとの相関を示すグラフを
図54に、照明装置16〜22の、R/OとEd/Emaxとの相関を示すグラフを
図55に、それぞれ示す。
【0066】
【表1】
【0067】
図11〜
図39、
図54および
図55に示されるように、照明装置1〜15では、全方位の各角度範囲における光量(Ea〜Ee)の最大値(Emax)に対して80%以上の光量が前方方向(0°以上30°以下)で得られ、かつ後方方向(90°超120°以下)でも60%以上の光量が得られる。これらのことから、上記式(1)を満たすカバー160を使用することで、光束制御部材140による配光制御では光量が相対的に少なくなる前方方向(0°以上30°以下)および後方方向(90°超120°以下)の光量を多くして、バランスのよい配光を実現できることがわかる。
【0068】
一方で、
図40〜47に示されるように、照明装置16〜19では、Rに対してOが大きすぎ、前方方向(0°以上30°以下)の光量が少ないままであるため、バランスのよい配光を実現できない。また、
図48〜53および
図55に示されるように、照明装置20〜22では、RがOに対して大きすぎ、後方方向(90°超120°以下)の光量が少ないままであるため、バランスのよい配光を実現できない。
【0069】
また、例えば実施例1〜3および7より、Oを実質的に固定して、基板120の表面からP5(最大径位置)までの方向Xにおける距離を大きくする(P5の位置をより高くする)と、後方方向の光量が増加することがわかる。
【0070】
また、例えば実施例3,13および比較例4より、OとQを実質的に固定して、Rを大きくすると、30°超150°以下の光量が低下し、Rを小さくすると、前方方向(0°以上30°以下)および後方方向(150°超180°以下)の光量が低下することがわかる。
【0071】
また、例えば実施例1,4,比較例1および4より、Oを実質的に固定して、Rを小さくし、かつP5の位置をより高くすると、前方方向(0°以上60°以下)の光量が低下し、かつ後方方向(150°超180°以下)の光量が増加することがわかる。
【0072】
また、例えば実施例3,5および8より、Oを実質的に固定して、Rを大きくし、かつ、かつP5の位置をより高くすると、前方方向(0°以上60°以下)の光量および後方方向(120°超180°以下)の光量がともに増加することがわかる。