(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フウ属に属する樹木が、Liquidamber styraciflua、Liauidamber orientalis、及びLiauidamber formasanaからなる群より選択される少なくとも1種の樹木である請求項2記載のタイヤ用ゴム組成物。
前記樹脂が、スチレン、スチレン誘導体、β−カリオフィレン、及びα−ピネンからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
前記スチレン誘導体が、桂皮酸、桂皮酸エステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、及びこれらの化合物やスチレンのベンゼン環に結合する水素原子が極性官能基で置換された化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項6記載のタイヤ用ゴム組成物。
前記スチレン誘導体が、桂皮酸、桂皮酸エステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、及びこれらの化合物やスチレンの4位の炭素原子に結合する水素原子が極性官能基で置換された化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項6記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、マンサク科に属する樹木に由来する樹脂を含む。本明細書において、樹脂とは、マンサク科に属する樹木に由来する室温で固体又は半固形体の混合物のことを意味し、樹液といった概念のものも含まれる。
【0018】
マンサク科に属する樹木に由来する樹脂の組成は、樹木の種類、季節等によって変化し、また詳細な組成は明らかではないが、桂皮酸、桂皮酸エステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、スチレン、カリオフィレン、ピネン等が含まれている(Pesticide Biochemistry,93,138−143,2009)。そして、該樹脂を配合することにより、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能、加工性を改善できる。これは、上記樹脂をゴム成分等と混練することにより、該樹脂に含まれている上記成分が、a)縮合(重合)することにより重合体(粘着性樹脂)を生成してウェットグリップ性能を改善、b)ゴム成分にグラフト重合したり付加したりすることにより、ゴム成分に極性基が導入され、シリカ等の補強用充填剤の分散性が向上し、低燃費性、耐摩耗性を改善、c)シリカ等の補強用充填剤に反応し、シリカ等の補強用充填剤の分散性が向上し、低燃費性、耐摩耗性を改善するためと推測される。
【0019】
一方、樹脂に含まれている上記成分を個別にゴム組成物に配合した場合には、これらの成分がすぐに自己縮合したりして良好にゴム組成物中に分散せず、性能の改善効果が小さい。これに対して、上記樹脂では、上記成分がモノマーのまま安定して存在しており、混練中に、ゴム組成物中で上記樹脂がある程度分散した後、上記成分が反応すると推測される。この理由は不明であるが、上記樹脂には、天然の安定化成分が含まれているためと推測される。
【0020】
また、マンサク科に属する樹木に由来する樹脂は、天然由来であるため、化石資源の枯渇や環境に配慮できる。
【0021】
本発明で使用できるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性がバランスよく得られるという理由からBR、SBRが好ましく、BR、SBRを併用することがより好ましい。
【0022】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。なかでも、良好な耐摩耗性が得られるという理由から、BRのシス含量は90質量%以上が好ましい。
【0023】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。該BRの含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。BRの含有量が上記範囲内であると、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能がバランスよく得られる。
【0024】
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。
【0025】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られない傾向がある。また、上記スチレン含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、耐摩耗性が低下する傾向がある。なお、本発明において、SBRのスチレン含有量は、H
1−NMR測定により算出される。
【0026】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。該SBRの含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。SBRの含有量が上記範囲内であると、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能がバランスよく得られる。
【0027】
本発明のゴム組成物は、マンサク科に属する樹木に由来する樹脂を含む。
【0028】
マンサク科に属する樹木としては、特に限定されないが、マンサク属又はフウ属に属する樹木が好ましく、フウ属に属する樹木がより好ましい。
【0029】
マンサク属に属する樹木としては、特に限定されない。
【0030】
フウ属に属する樹木としては、特に限定されないが、Liquidamber styraciflua、Liauidamber orientalis、及びLiauidamber formasanaからなる群より選択される少なくとも1種の樹木であることが好ましく、Liquidamber styraciflua、Liauidamber orientalisがより好ましい。
【0031】
マンサク科に属する樹木に由来する樹脂の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹木の幹や樹皮に傷をつけ、滲出してきた樹脂を取得する方法や、幹、枝、葉等より、水蒸気蒸留、溶媒抽出などの方法により抽出し、溶媒を除去して取得する方法等が挙げられる。また、同様に樹木からの生産物であるロジン樹脂採取の方法(トールロジン採取法、ガムロジン採取法、ウッドロジン採取法)は、すべて好ましく適用することができる。なかでも、目的とする樹脂が直接大量に得られ、一本の樹木から繰り返し採取できるという理由から、樹木の幹や樹皮に傷をつけ、滲出してきた樹脂を取得する方法が好ましい。
【0032】
また、マンサク科に属する樹木、特にフウ属に属する樹木に由来する樹脂は、アロマ用途として流通しており、これらを利用してもよい。
【0033】
マンサク科に属する樹木は、街路樹、園芸用品種として世界に広く分布しており、これら樹木の生産する樹脂を活用することは、環境への配慮の点から好ましい。さらに、伐採時に生成した不要な幹、枝等や落葉を有効活用することも可能であり、食料品との競合も無く、理想的なバイオマス資源といえる。
【0034】
上記樹脂の組成は、上述のように、樹木の種類、季節等によって変化し、また詳細な組成は明らかではないが、上記樹脂は、スチレン、及びスチレン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレン誘導体を含むことがより好ましい。これらの化合物(スチレン類)は、同一の化合物同士及び/又は他の化合物と重合可能であり、混練中にゴム中で分散しながら重合体を生成し、粘着性樹脂として、タイヤのグリップ特性を向上させるものと推測される。また、スチレン類は、混練中に、ジエン系ゴム成分にグラフト重合したり付加したりすることが可能で、その結果、ゴム特性(特に、低燃費性、耐摩耗性)を向上できるものと推測される。
【0035】
スチレン誘導体としては、例えば、桂皮酸、桂皮酸エステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒドや、これらの化合物やスチレンのベンゼン環に結合する水素原子が極性官能基で置換された化合物等が挙げられる。
【0036】
極性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、アミノ基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基等が挙げられる。なかでも、水酸基が好ましい。
【0037】
桂皮酸、桂皮酸エステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、及びスチレンのベンゼン環に結合する水素原子が極性官能基で置換された化合物としては、特に限定されないが、これらの化合物の4位の炭素原子に結合する水素原子が極性官能基で置換された化合物が好ましい。
【0038】
該化合物の具体例としては、例えば、4−ヒドロキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ桂皮酸エステル、4−ヒドロキシシンナミルアルコール、4−ヒドロキシシンナムアルデヒド、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシ桂皮酸、4−カルボキシ桂皮酸エステル、4−カルボキシシンナミルアルコール、4−カルボキシシンナムアルデヒド、4−カルボキシスチレン等が挙げられる。なかでも、4−ヒドロキシシンナミルアルコール、4−ヒドロキシシンナムアルデヒドが好ましく、4−ヒドロキシシンナミルアルコールがより好ましい。
【0039】
スチレン誘導体としては、桂皮酸、桂皮酸エステル、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、及びこれらの化合物やスチレンの4位の炭素原子に結合する水素原子が極性官能基で置換された化合物が好ましく、桂皮酸、桂皮酸エステル、シンナミルアルコール、及びこれらの化合物の4位の炭素原子に結合する水素原子が極性官能基で置換された化合物がより好ましく、桂皮酸、桂皮酸エステル類、シンナミルアルコール、4−ヒドロキシシンナミルアルコールが更に好ましく、桂皮酸、桂皮酸エステル類が特に好ましい。
なお、桂皮酸エステル類とは、桂皮酸エステル、及び該化合物のベンゼン環に結合する水素原子(特に、4位の炭素原子に結合する水素原子)が極性官能基で置換された化合物を意味する。
【0040】
樹脂100質量%中のスチレン、及びスチレン誘導体の合計含有量(好ましくはスチレン誘導体の含有量)は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、最も好ましくは60質量%以上である。また、該合計含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0041】
また、上記樹脂は、β−カリオフィレン、α−ピネン、及びβ−ピネンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、β−カリオフィレン、α−ピネンを含むことが好ましく、α−ピネンを含むことがより好ましい。これらの化合物は、加工性を向上させると共に、同一の化合物同士及び/又は他の化合物と重合可能であり、混練中にゴム中で分散しながら重合体を生成し、粘着性樹脂として、タイヤのグリップ特性を向上させるものと推測される。
【0042】
樹脂100質量%中のβ−カリオフィレン、α−ピネン、及びβ−ピネンの合計含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、該合計含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
【0043】
また、上記樹脂は、スチレン、スチレン誘導体、β−カリオフィレン、及びα−ピネンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレン誘導体を含むことがより好ましく、スチレン誘導体、α−ピネン、β−カリオフィレンを含むことが更に好ましく、スチレン誘導体、スチレン、α−ピネン、β−カリオフィレンを含むことが特に好ましい。これにより、本発明の効果が好適に得られる。
この際、樹脂100質量%中のスチレン誘導体の含有量は、10〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましく、樹脂100質量%中のスチレンの含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、樹脂100質量%中のα−ピネンの含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、樹脂100質量%中のβ−カリオフィレンの含有量は、0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
また、樹脂100質量%中の桂皮酸、及び桂皮酸エステル類の合計含有量は、20〜80質量%が好ましく、55〜75質量%がより好ましく、樹脂100質量%中のシンナミルアルコールの含有量は、0.5〜20質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、樹脂100質量%中の4−ヒドロキシシンナミルアルコールの含有量は、0.5〜40質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0044】
上記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、充分な低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能が得られない傾向がある。また、上記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。100質量部を超えると、破断強度、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0045】
上記樹脂は、補強用充填剤のなかでも、特に、シリカの分散性を向上させる効果が高いため、本発明のゴム組成物は、シリカを使用することが好ましい。これにより、低燃費性、ウェットグリップ性能を向上でき、また、耐摩耗性の改善効果も得られる。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。なかでも、湿式法シリカが好ましい。
【0046】
シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは50m
2/g以上、より好ましくは100m
2/g以上、更に好ましくは150m
2/g以上である。50m
2/g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性が得られない傾向がある。また、シリカのN
2SAは、好ましくは250m
2/g以下、より好ましくは200m
2/g以下である。250m
2/gを超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化する傾向がある。また、分散性が悪化し、低燃費性、耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、シリカのN
2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0047】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。5質量部未満であると、充分な低燃費性、ウェットグリップ性能の改善効果が得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。150質量部を超えると、分散性が悪化し、低燃費性、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0048】
本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0049】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、耐摩耗性、低燃費性が悪化する傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。15質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0050】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックを配合することにより、補強効果が得られ、本発明の効果(特に、耐摩耗性、ウェットグリップ性能の向上効果)がより良好に得られる。
【0051】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は10m
2/g以上が好ましく、20m
2/g以上がより好ましい。10m
2/g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性、ウェットグリップ性能が得られないおそれがある。該N
2SAは、80m
2/g以下が好ましく、50m
2/g以下がより好ましい。80m
2/gを超えると、分散させるのが困難となり、低燃費性、加工性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのN
2SAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0052】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。5質量部未満では、充分な耐摩耗性、ウェットグリップ性能が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。70質量部を超えると、分散性が悪化し、加工性、低燃費性、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0053】
本発明で使用できるシリカ、カーボンブラック以外の補強用充填剤としては、タイヤ用ゴム組成物において公知に使用されているものであれば、限定無く使用でき、例えば、水酸化アルミニウム、クレー、炭酸カルシウム、モンモリロナイト、セルロース、ガラスバルーン、各種短繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明のゴム組成物は、軟化剤を配合することが好ましい。軟化剤としては、特に限定されず、例えば、オイルであればアロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイル等の鉱物油が挙げられる。なかでも、アロマオイル(芳香族系プロセスオイル)が好ましい。これら軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。軟化剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは15〜40質量部である。なお、本明細書において、軟化剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0055】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、粘着付与剤、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0056】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。該ゴム組成物は、空気入りタイヤの各部材(例えば、トレッド、サイドウォール、ベーストレッド、ブレーカー、カーカス等)に使用され、特に、トレッドに好適に使用できる。
【0057】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【実施例】
【0058】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0059】
<製造例1>
Liauidamber orientalis(日本産)の樹皮を傷つけることにより、滲出した樹脂を採取し、樹脂1を得た。樹脂をエタノールに溶解して、ろ過後、溶液をガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)にて分析することにより得られた結果(樹脂の組成)を表1に示す。
【0060】
<製造例2>
Liquidamber styraciflua(日本産)を用いた点以外は、製造例1と同様にして樹脂2を得た。樹脂2の成分を樹脂1と同様に分析した結果(樹脂の組成)を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:JSR(株)製のNS116(ビニル含有量:60質量%、スチレン含有量:20質量%)
BR:宇部興産(株)製のポリブタジエンゴム(UBEPOL BR150B、シス含量:97質量%)
樹脂1、2:上記製造例1、2により調製した樹脂(マンサク科に属する樹木に由来する樹脂)
樹脂3:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1150N(ピネン重合体)
オイル:ジャパンエナジー社製のプロセスX−140(芳香族系プロセスオイル)
シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製のウルトラジルVN3(N
2SA:175m
2/g)
カーボンブラック:新日化カーボン(株)製のニテロン#55S(N
2SA:28m
2/g)
シランカップリング剤:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「桐」
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製の酸化亜鉛2種
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0063】
実施例及び比較例
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を充填率が58%になるように充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練りして混練り物を得た。
次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加して混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を所定のサイズに成形し、150℃の条件下で20分間プレス加硫することにより加硫ゴム組成物を得、約2mm×130mm×130mmの加硫ゴムスラブシートを作成し、試験用サンプルとした。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件下で15分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を得た。
【0064】
試験用サンプルから1cm角のサンプルシートを切り出し、該サンプルシートをトルエンに2日間浸漬し、得られたトルエン溶液をGC/MSにて分析したところ、表1に示した樹脂1、2由来の成分は検出されず、ほぼ全量が重合又はゴム成分にグラフト重合若しくは付加していることが分かった。
【0065】
得られた試験用サンプル、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表2に示す。
【0066】
<加工性>
JIS K6300−1に基づいて、ムーニー粘度(ML
1+4)を130℃で測定し、比較例1のムーニー粘度を100として、下記式から加工性指数を計算した。指数が大きいほど、未加硫時の加工性が良好であることを示す。
(加工性指数)=(比較例1のムーニー粘度)/(各配合のムーニー粘度)×100
【0067】
<粘弾性試験>
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターVESを用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪±1%および周波数10Hzの条件下で試験用サンプルの損失正接(tanδ)を測定し、比較例1の転がり抵抗指数を100とし、下記計算式により、転がり抵抗を指数表示した。転がり抵抗指数が大きいほど、転がり抵抗が低減され、低燃費性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0068】
<ウェットグリップ性能>
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求めた。比較例1の制動距離を100とし、下記計算式により、ウェットグリップ性能を指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能)=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0069】
<耐摩耗性>
(株)岩本製作所製のランボーン摩耗試験機を用い、表面回転速度50m/分、付加荷重3.0kg、落砂量15g/分でスリップ率20%にて、試験用サンプルの摩耗量を測定した。比較例1の摩耗量を各配合の摩耗量で除して、100倍して、耐摩耗性指数とした。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(比較例1の摩耗量)/(各配合の摩耗量)×100
【0070】
【表2】
【0071】
マンサク科に属する樹木に由来する樹脂(樹脂1、2)を含む実施例は、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能、加工性を改善できた。