(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のAC信号レベル/DC信号レベル変換装置において、平均値算出/保持手段は、AC入力の最大値及び最小値を検出して、それらの和の1/2を算出することにより、平均値を算出するよう構成されていることを特徴とするAC信号レベル/DC信号レベル変換装置。
請求項1又は2記載のAC信号レベル/DC信号レベル変換装置において、平均値算出/保持手段はさらに、算出された1周期前の平均値に、前回値保持手段に記憶された前回値であって、該1周期前の最後のサンプリングの前回値を1周期のサンプリング数で除算した値を加算した値を、現周期の間平均値として出力するよう構成されていることを特徴とするAC信号レベル/DC信号レベル変換装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図2は、
図1に示した電力量計におけるそれぞれの構成要素の出力を模式的に表している波形図である。なお、
図1に示したように、電力量計は通常、LPF104によって電力値Wの周波数成分を除去するように構成されているが、
図2のグラフにおいて、パターンAは、LPF104を備えていない場合、又はLPF104を備えていてもその出力にリップル分が含まれている場合の、積算器105の出力波形(すなわち、積算値Wh1)を模式的に示しており、また、パターンBは、リップル分が含まれていない場合の積算器105の出力波形(すなわち、積算値Wh2)を示している。
【0004】
図2のパターンAで示すように、積算器105の積算値Wh1は、瞬時電力値Wに依存するリップル分を含んでいるため、特に、瞬時電力値Wが大きいところでは、しきい値を超える時点が早くなる。このため、パルス化回路106からのパルスが早く出力されることにより、順次出力されるパルスの間隔が一定とならず、出力される一連のパルス列にパルス間隔の粗密が生じてしまう。それに対して、リップル分を含んでいないパターンBの積算値Wh2では、等間隔でパルスが出力される。
このように、積算値Wh1にリップルが含まれている場合、パルス間の周期が異なってしまいパルス列に粗密が生じる。これにより、パルス列の周波数にばらつきが生じるため、電力値の測定精度に影響を及ぼしてしまう。
【0005】
なお、
図2においては、説明を容易にするために、積算器105の出力及びパルス化回路106に設定されたしきい値が段階的に順次増大するように示しているが、実際には、パルス化回路106に設定されるしきい値は1つであり、該しきい値に到達する度にパルス化回路106からの出力パルスによって、積算器105がリセットされるよう構成されている。したがって、積算器105の出力は、出力パルスの発生毎にゼロ値からしきい値に向かって増大する波形を一周期とする波形で表されるものである。
【0006】
そして、
図1に示したように、従来例においては、電力量計にLPF104を設けて、瞬時電力値Wに含まれる高調波〜商用電源周波数帯域のリップル分を抑圧するように構成しているが、商用電源の電圧V及び電流Iの掛け算によって生じたAC成分を確実に除去するためには、回路規模が大型のローパスフィルタを用いる必要があり、したがって、商用電源等の電力量計としては実用的ではない。
【0007】
このようなパルス間隔の粗密は、AC電力波形の瞬時電力値Wをそのまま積算していることから生じる積算値Wh1の増加分が一定ではないことに起因しており、電力量計を短時間使用する電力量計の検定等の短時間測定をする際の障害となってしまう。例えば、電力量計の出荷前に、定格電力(100V、30A)でパルス化回路106から1000Hzのパルスが出力されるかどうかを短時間でテストしているが、特に重負荷の場合、粗密の影響が定格電力付近で特に大きくなってしまう。また、パルス列の周波数のばらつきは、比較的長時間の測定の場合には、ある程度平均化することができるが、短時間測定の場合はばらつきがそのまま測定結果に現れてしまう。また、高精度の電力量計では、出力パルス列の周波数のばらつきが短時間であっても極めて小さいことが要求されることから、高精度の電力計を実現する際にも、出力パルス列の粗密が問題となる。
【0008】
また、
図3に示すように、電圧Vと電流Iとの位相がずれた電力波形の場合、1周期の内で瞬時電力値Wの符号が正から負に切り替わって負電力となる期間t1〜t2がある。この場合、
図1に示した従来例による装置では、積算器105において、正電力の期間では正の積算を行い、負電力の期間では負の積算を行うことになる。このような場合、負電力の大きさによっては、負電力積算値が所定のしきい値を超えることにより、負電力を積算したことによるパルスが出力されてしまうことになる。有効電力値を検出する場合、正電力と負電力とを相殺して本来の電力値を算出する必要があるため、正負のパルスを相殺して出力する処理が必要となる。そのため、従来例では、パルス化回路106の後段に、正負のパルスを相殺する回路を設けている。
しかしながら、正負のパルスを相殺することは、パルスを出力しない期間が生じることに繋がり、結局のところ、パルス列に粗密が生じてしまう。
【0009】
さらに、出力パルス列の粗密の問題を解決するために、
図1に示したパルス化回路106の後段(又はその回路内)にパルス間隔の平均化処理を行う機能を設けた電力量計も提案されている。
図4は、パルス化回路106の後段にパルス間隔の平均化処理を行う回路を配置した従来例を示している。該平均化処理回路においては、パルス化回路106からのパルス列をカウンタ107でカウントし、周期測定手段108において測定されたAC入力の周期で該カウント値を除算手段108で除算し、得られた除算値に相当する周期であって一定周期のパルス列をパルス発生手段110から出力するよう構成されている。これにより、パルス間隔を平均化することができ、粗密周期ではなく等間隔のパルス列が出力される。
しかしながら、パルス列の平均化処理を行って一定周期のパルス列を出力するためには、
図4に示したようなカウンタ、周期測定手段、除算手段、パルス発生手段を備える必要があり、このため、構成が複雑化するとともに処理時間も増大するという問題が生じる。
【0010】
このように、上記した問題点を解決することが切望されており、これは、電力量計だけではなく、計器の技術分野において共通に切望されていることである。本発明の目的は、このような問題点を解決して、リップル除去用のフィルタ及びパルス列の間隔の平均化回路を用いることなく、AC信号入力のレベルに高精度に対応するDCレベルを出力することができるAC信号レベル/周波数変換装置を提供することである。本発明の他の目的は、このようなAC信号レベル/周波数変換装置を具備した電力量計、及び、AC信号レベル/周波数変換装置に具備されて、AC信号入力レベルをDCレベルに変換するAC信号レベル/DC信号レベル変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明は、所定の周波数でサンプリングされたAC(交流)信号入力のレベルを該レベルに対応するDC(直流)信号レベルに変換して出力端から出力する装置であって、
AC信号入力の各周期の平均値を算出し、1周期前の平均値を現周期の間、出力する平均値算出/保持手段と、
平均値算出/保持手段から出力される信号が一方の入力端に印加され、該信号と他方の入力端に印加される信号とを対比する比較手段と、
比較手段の出力により切り換えられて、比較手段の一方の入力端に印加される信号と他方の入力端に印加される信号とを選択的に出力するスイッチング手段であって、値が小さい方の信号を出力するスイッチング手段と、
比較手段の他方の入力端に印加される信号から、スイッチング手段から出力される信号を減算する減算手段と、
減算手段により得られた信号を記憶して、1サンプリング前の減算により得られた信号を出力する前回値保持手段と、
前回値保持手段からの信号と現サンプリングのAC信号入力とを加算して、得られた値を、比較器の他の入力端及びスイッチング手段に供給する加算手段と
からなることを特徴とするAC信号レベル/DC信号レベル変換装置を提供する。
【0012】
上記したAC信号レベル/DC信号レベル変換装置において、平均値算出/保持手段は、AC信号入力の最大値及び最小値を検出して、それらの和の1/2を算出することにより、平均値を算出することが好ましい。また、平均値算出/保持手段はさらに、算出された1周期前の平均値に、前回値保持手段に記憶された前回値であって、該1周期前の最後のサンプリングの前回値を1周期のサンプリング数で除算した値を加算した値を、現周期の間平均値として出力するよう構成されていることが好ましい。さらに、AC信号レベル/DC信号レベル変換装置はさらに、AC信号入力の符号が反転した時点を検出して、該時点から少なくとも1周期分、スイッチング手段からの出力を強制的にゼロレベルに設定する手段を備えていることが好ましい。さらにまた、平均値算出/保持手段により算出された平均値を監視し、該平均値が所定の範囲以外の場合に、該平均値を強制的にゼロ値として出力する手段を備えていることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、入力端に供給されたAC信号入力のレベルを該レベルに対応する周波数に変換して出力端から出力するAC信号レベル/周波数変換装置であって、上記したAC信号レベル/DC信号レベル変換装置と、該AC信号レベル/DC信号レベル変換装置の出力を積算する積算手段と、積算手段の出力が所定値に達する毎にパルスを出力する手段であって、該パルスにより積算器をリセットすることにより、AC信号入力のレベルに対応する周波数のパルス列を発生するパルス発生手段とを備えているAC信号レベル/周波数変換装置を提供する。
本発明はさらに、上記したAC信号レベル/周波数変換装置を備えている電力量計も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図5は、本発明に係る、AC信号入力のレベルをそれに対応する周波数に変換するためのAC信号レベル/周波数変換装置の第1の実施例を示している。
図5において、
図1の構成と同様な構成は同一の参照符号で示されている。符号10は本発明の特徴であるAC信号入力のレベルに対応するDC信号レベルの出力を出力する回路すなわちAC信号レベル/DC信号レベル変換装置であり、該装置10は、平均値算出部11と、ラッチ回路12、加算器13、比較器14、スイッチング回路15、加算器(減算器)16、及び前回値保持回路(Z
-)17を備えている。
【0016】
この実施例の具体的構成を詳細に説明する前に、本発明の原理について説明する。
上述したように、従来例においては、瞬時電力WにAC(交流)成分が含まれていることにより積算値Wh1にリップル成分が含まれしまうことが原因で、パルス列の周期に粗密が生じてしまっていた。上記したパルス列におけるパルス間隔の粗密の問題は、AC電力波形の瞬時電力値Wをそのまま積算していることによって積算値Wh1の増加分が一定ではない、すなわち、リップル分が含まれることに起因して生じている。そこで、本発明者は、積算される瞬時電力値Wh1が均一であれば粗密周期を防止することができることに着目し、本発明に至ったものである。
【0017】
より具体的には、AC(交流)波形の1周期分の出力は、平均値すなわち一定値を算出することにより直流的に扱うことができる。そこで、以下の式に示すように、1周期を積算することにより、次の1周期に積算する値の上限値W
UPを平均値として求める。
W
UP=(W
(1)+W
(2)+W
(3)+W
(4)+ … +W
(N))/N
=ΣW
(i)/N
上記した式において、iは1周期内のサンプリング番号、Nは1周期のサンプル数(例えば、約7.8kHzの周波数)を表しており、また、Σはi=1、2、・・・NについてのW
(i)の加算を表している。
【0018】
出力値W
OUT(すなわち、積算器によって積算される値である積算用出力値)を決定する際に、平均値W
UPに関して以下のような場合分けを行う。なお、この説明においては、入力値の符号が正を持続していると仮定する。また、W
RESTは、加算器(減算器)16の出力であって、加算器13の出力W
SUMからスイッチング回路15の出力W
OUTを減算した値であり、W
SUMは、入力される電力値Wに1サンプリング前のW
RESTを加算した値である。
(イ)W
SUMがW
UP以下(W
SUM≦W
UP)の場合、
W
OUT=W
SUM
W
REST=W
SUM−W
OUT=0
(ロ)W
SUMがW
UPより大きい(W
SUM>W
UP)の場合、
W
OUT=W
UP
W
REST=W
SUM−W
OUT
【0019】
このような場合分けを行って積算用出力値W
OUTを決定すると、W
OUTはW
UPと等しくなり、これにより、積算値は一定の増加となる。ただし、初期状態において、W
UPが決まるまでの最初の1周期は、W
(1)、W
(2)、・・・、W
(i)、・・・、W
(N)をそのまま出力することになる。最初の1周期目では、W
OUTとしてゼロレベルを出力するように、設定してもよい。
【0020】
図6は、上記の場合分けを行うことにより、W
OUT=W
UPとなることを説明するための模式的な波形図であり、(A)、(B)及び(C)はそれぞれ、瞬時電力値W、W
SUM(=W+(1サンプリング前のW
REST))、及びW
OUTを表している。
上記したように、電力値Wの1周期目では、Wの平均値を求め、該平均値をW
UPとして記憶する。したがって、最初の1周期目では、入力されるWが出力W
OUTとして出力され、また、W
SUMはゼロである。
2周期目において、入力Wが平均値W
UP以下の状態では、W=W
SUMであるため、W
SUM≦W
UPであり((イ)の場合)、W
SUM(=W)がW
OUTとして出力される。そして、時点t
1において、W
SUM>W
UPとなると((ロ)の場合)、W
OUTとしてW
UPすなわち平均値が出力され、また、時点t
2において再度W
SUM≦W
UP((イ)の場合)となると、W
OUTとしてW
SUMが出力される。
3周期目以降においては、常にW
SUM>W
UPであるため((ロ)の場合)、W
OUTとしてW
UPが出力される。
【0021】
これにより、
図6の(C)に示すように、3周期目以上において、Wの値が平均値W
UP以上及び未満のいずれにおいても積算器への入力であるW
OUTが一定となるため、積算器からの出力が一定量の増加すなわち線形となり、上述したパルス列の粗密の問題を防止することができる。
また、1周期の平均値を上限値W
UPとしているため、位相がずれた電力Wが入力し、かつ該上限値とWの符号が相違する場合、それを検出することにより、W
OUTを強制的にゼロにすることができる。したがって、従来例において具備されている相殺回路を設ける必要がない。
【0022】
図5に戻って、上記した原理に基づいた本発明のAC/周波数変換装置の一実施例の構成及び動作を詳細に説明する。
平均値算出部11は、乗算器103から出力される電力値を示す信号Wが入力され、各周期jの商用電源の電力の平均値を算出する。算出された平均値はラッチ回路12にラッチされ、周期j+1において上限値W
UPとして用いられ、比較器14の一方の入力端及びスイッチング回路15の一方の入力端に供給される。
このように、電力Wの周期jにおいて算出された平均値はラッチされて、周期j+1において、比較器14及びスイッチング回路15に供給され、スイッチング回路15からの出力の上限値として用いられる。
【0023】
平均値算出部11におけるWの平均値の算出は、上述したように、Wの1周期分のサンプル値を積算し、該積算値を1周期分のサンプル数で除算することにより求めることができる。また、Wが正弦波で電流及び電圧の位相が一致している場合、電力量W=(V
PI
P/2) cosθから電力の一周期の平均値を算出するためには、最大値と最小値とが分かれば算出することができるため、1周期内の最大値W
MAX及び最小値W
MINを検出し、これらの加算値を2で除算することにより算出することもできる。
W
UP=(W
MAX+W
MIN)/2
このとき、波形の周期が既知である場合には、ゼロクロスタイミングを検出することにより、該ゼロクロスタイミングを基準として最大値W
MAX及び最小値W
MINをサンプリングできるタイミングが分かっているため、測定の開始と終了点とを設定することで最大値W
MAX及び最小値W
MINを検出し、平均値を算出すればよい。
【0024】
このような上限値W
UPの算出後、2周期目以降において電力量の実質的な測定が開始されるが、実質的な測定の1周期中に供給される電力信号を、上述のように、iをサンプリング番号として、W
(i)(i=1,2,・・・,N)で表すことにする。
スイッチング回路15は、比較器14の出力が制御信号として印加されて切り替えられ、W
SUM(i)≦W
UPの場合((イ)の場合)に加算器13の出力W
SUM(i)を、そしてW
UP<W
SUMの場合((ロ)の場合)にラッチ回路12の出力W
UPを、出力信号W
OUT(i)として積算器105に供給する。
図5のスイッチング回路15の状態は、W
UP<W
SUMの場合を表している。
加算器16は、加算器13の出力W
SUM(i)とスイッチング回路15の出力W
OUT(i)の反転信号とを加算、すなわち、W
SUM(i)からW
OUT(i)を減算し、信号W
REST(i)を出力する。該信号W
REST(i)は前回値保持回路17に保持される。前回値保持回路17は、サンプリングiのタイミングでは、前回入力されたW
REST(i-1)を出力し、この出力は加算器13の他方の入力端に供給される。
【0025】
加算器13の出力W
SUM(i)は、電力W
(i)に前回値保持回路17の出力W
REST(i-1)を加算した値となり、以下のように表すことができる。
W
SUM(i)=W
(i)+W
REST(i-1)
また、加算器6の出力W
REST(i)は、加算器13の出力W
SUM(i)からW
OUT(i)を減算したものであるから、以下のように表すことができる。
W
RESET(i-1)=W
SUM(i-1)−W
OUT(i-1)
これら2つの式から、
W
SUN(i)=W
(i)+W
SUM(i-1)−W
OUT(i-1)
=W
(i)+(W
(i-1)+W
SUM(i-2)−W
OUT(i-2))−W
OUT(i-1)
=ΣW
(i)+W
SUM(0)−ΣW
OUT(i-1)
が得られる。
【0026】
上記の式から明らかなように、
図5の装置において、加算器13から出力されるW
SUMは、
図6の(B)に示されるようになる。特に、2周期目において、W
SUM(0)は、1周期目の最後のサンプル番号NのW
SUM(N)に相当するため0であって無視することができ、また、W(1)=0であるから、W
SUN(1)=0、W
SUN(2)=W
(2)、W
SUN(3)=W
(3)であり、W
SUN(4)は、W
(4)に(W
(3)−W
OUT(2)−W
OUT(3))が加算された値となる。さらに、3周期目のW
SUM(0)は、2周期目の最後のサンプル番号NのW
SUM(N)に相当し、該W
SUM(N)はW
UPよりも大きいので、スイッチング回路15は、ラッチ回路12の出力W
UPをW
OUT(i)として出力する。4周期目以降は3周期目と同一である。
このように、
図5に示したAC信号レベル/DC信号レベル変換装置10により、
図6に示したW
SUM、W
OUTの波形を得ることができることが分かる。
【0027】
なお、上記したように、入力波形が正弦波の場合、3周期目以降においては、W
OUTとしてW
UPが常に出力される。その後、周期の途中で電力が遮断された場合、W
SUMがラッチされたW
UPよりも低下してW
SUM≦W
UPとなるため、スイッチング回路がW
SUMを出力することになる。そして、W
SUMはWに依存して低下するとともに、W
OUTが加算器16において減算されるので、W
OUT=W
SUMは急速にゼロレベルとなる。したがって、電源が遮断されたにも拘わらず、W
UPを出力し続けることがない。これにより、実際の電力Wに正確に対応する出力を得ることができる。
【0028】
ところで、
図7に示すように、前周期j−1の電力値Wj-1が正で、現周期j以降の周期において電力値の符号が負となる場合がある。例えば、軽負荷(電力使用量が少ない)とき、ラインノイズの影響で電流側の入力の正負が定まらない状態では、前周期と現周期の電力の符号が反転することが想定される。このような場合、
図5に示したAC信号レベル/DC信号レベル変換装置10においては、現周期jの入力電力Wjは平均値以下となるため、AC成分を含んだ電力値Wj-1がそのまま出力されることになる。
このように、平均値と入力値Wの符号が異なる場合には、それを検出する符号反転検出部(不図示)を設けて、符号反転した直後の1周期分の出力W
OUTをゼロに保持し、そして、周期j+1において検出された平均値をW
UPとして用いることにより、AC成分を含まない一定の出力を得ることができる。
【0029】
また、例えば、センサによって暗さを感知し、それに応じて照明の強度を自動的に増大させる場合等のように、入力電力Wの振幅が一定ではなく徐々に増大する場合がある。
図8は、入力電力Wが徐々に増大し、しかも平均値が徐々に増大する場合の波形図を示している。このような場合、現周期jの入力電力値Wjが、前周期j−1の平均値=上限値Wj
UPよりも大きな平均値を有することになり、W
SUMがオーバーフローを引き起こしてしまう。例えば、加算器13として32ビット積算用カウンタを用い、128ずつ前の周期よりWjが大きくなると仮定すると、約5時間(33554432サンプル)でW
SUMがオーバーフローしてしまう。
これを防止するために、平均値W
UPに128/(1周期のサンプル数)を上乗せすることにより、W
UPを徐々に増大させるように構成すればよい。
【0030】
すなわち、
Wj
UP=算出平均値Wj-1
UP+(Wj-1
REST(残り電力)/1周期のサンプル数)
上記式において、平均値算出回路11において算出される算出平均値自体が入力電力の増大に応じて増大するものであるが、該算出平均値にさらに(Wj-1
REST/1周期のサンプル数)を加算することにより、前周期j−1のWj-1
RESTを現周期jで出力することができ、これにより、次の周期j+1に余り分を持ち越すことがないため、加算器13のオーバーフローを防止することができる。
【0031】
さらに、負荷が軽負荷等で電力計測範囲が決まっている場合がある。例えば、始動電流値がJIS規格により規定されている機器があり、このような機器では、始動電流が規定されていることから、電力量計の計測範囲を使用者が所定範囲に設定している。このように電力計測範囲を決めている場合、計測範囲以外の場合に、W
OUTとしてゼロが出力されるように構成すればよい。
図9は、計測範囲以外の場合にW
OUTとしてゼロが出力されるよう構成した本発明の別の実施例を示している。該実施例においては、
図9に示すように、
図1に示したAC信号レベル/DC信号レベル変換装置10に、範囲設定手段18及びスイッチ19が追加されている。そして、使用者が計測範囲を範囲設定手段18に設定し、該範囲設定手段18において、平均値算出回路11において算出される算出平均値が設定範囲内であるか否かを監視し、軽負荷等で所定範囲に入らない場合に、範囲設定手段18の出力によりスイッチ19を切り替えて、比較器14への入力を強制的にゼロにするよう構成している。これにより、平均値すなわち上限値W
UPが出力されないようにすることができる。また、スイッチ19の切換に連動して、スイッチング回路15の出力が強制的にゼロとなるようにしてもよい。
【0032】
本発明は上記したように構成されているので、大型のLPFを用いることなく、AC信号入力レベルに対応するDC信号レベルを出力することができ、また、該DC信号レベルを用いて、AC信号入力レベルに対応する周波数のパルス列を発生させる場合に、パルス列に粗密が生じることがない。さらに、電力量計に本発明を適用した場合には、比較的簡単で小型の電力量計を提供することができ、また、電源変動が生じた場合に、直ちにそれに追従したDC信号レベルを出力することができるので、電源変動に高精度で追従する出力を電力量計から発生させることができる。
【0033】
上記においては、電力値をAC信号入力として説明したが、電力値に限定されずに、本発明のAC信号レベル/DC信号レベル変換装置及びAC信号レベル/周波数変換装置を、任意のAC信号入力のレベルを計測する場合に適用が可能であることは、明らかであろう。