特許第5944831号(P5944831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944831
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】抗FLT3抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160621BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160621BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20160621BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20160621BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160621BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160621BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20160621BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K16/40
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C07K16/46
   A61K39/395 N
   A61K39/395 D
   A61K45/00
   A61P35/02
   !C12P21/08
【請求項の数】14
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2012-545347(P2012-545347)
(86)(22)【出願日】2010年12月23日
(65)【公表番号】特表2013-515472(P2013-515472A)
(43)【公表日】2013年5月9日
(86)【国際出願番号】EP2010070659
(87)【国際公開番号】WO2011076922
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年12月10日
(31)【優先権主張番号】61/289,529
(32)【優先日】2009年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512165385
【氏名又は名称】シュニムネ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SYNIMMUNE GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】グロセ−ホペスト ルートガー
(72)【発明者】
【氏名】ビューリング ハンス−イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】アウルヴュルム シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】ユング グルントラム
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−525443(JP,A)
【文献】 特表2006−512407(JP,A)
【文献】 特表2008−537941(JP,A)
【文献】 特表平08−511420(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/119796(WO,A1)
【文献】 医学のあゆみ,2007年,220, 9,759-764
【文献】 Research in Immunology,1994年,145,33-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
A61K 39/00
A61K 45/00
A61P 35/00
C07K 16/00
C12N 1/00
C12N 5/00
C12P 21/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖及び軽鎖と、
抗FLT3の親抗体の定常領域における少なくとも2つのアミノ酸置換とを備え、
前記少なくとも2つのアミノ酸置換は、S239D及びI332Eの2つのアミノ酸置換を含み、アミノ酸の位置の番号付け方法は、EUインデックスに基づき、
VLCDR1は、SEQID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
VLCDR2は、SEQID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
VLCDR3は、SEQID NO:3に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
VHCDR1は、SEQID NO:4に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
VHCDR2は、SEQID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
VHCDR3は、SEQID NO:6に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなるヒト受容体型チロシンキナーゼFLT3に結合する抗体。
【請求項2】
重鎖及び軽鎖と、
抗FLT3の親抗体の定常領域における少なくとも2つのアミノ酸置換とを備え、
前記少なくとも2つのアミノ酸置換は、S239D及びI332Eの2つのアミノ酸置換を含み、アミノ酸の位置の番号付け方法は、EUインデックスに基づき、
LCDR1は、SEQID NO:7に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
LCDR2は、SEQID NO:8に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
LCDR3は、SEQID NO:9に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
HCDR1は、SEQID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
HCDR2は、SEQID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなり、
HCDR3は、SEQID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなる抗体。
【請求項3】
請求項の抗体において、
前記重鎖は、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなるVHドメインを備え、
前記軽鎖は、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなるVLドメインを備えている抗体。
【請求項4】
請求項の抗体において、
前記重鎖は、SEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなるVHドメインを備え、
前記軽鎖は、SEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列を含む、又はそのアミノ酸配列からなるVLドメインを備えている抗体。
【請求項5】
請求項1の抗体において、
キメラ抗体であり、
SEQID NO:27に示されるアミノ酸配列を有する重鎖と、
SEQID NO:23に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖とを備えている抗体。
【請求項6】
請求項の抗体において、
キメラ抗体であり、
SEQID NO:43に示されるアミノ酸配列を有する重鎖と、
SEQID NO:39に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖とを備えている抗体。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項の抗体において、
前記親抗体と比較して、増強された親和性でFcγRIIIa受容体に結合する、又は増強されたADCCエフェクター機能を有する抗体。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸分子。
【請求項9】
哺乳動物のリンパ腫又は白血病の治療用の医薬組成物を調製するための請求項1〜のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項10】
請求項に記載の使用において、
前記リンパ腫又は白血病は、微小残存病変(MRD)の段階にある使用。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の使用において、
前記リンパ腫又は白血病は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞性急性リンパ性白血病/リンパ腫(B−ALL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)からなる群から選択される使用。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の使用において、
前記抗体は、細胞毒薬剤、化学療法剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤、キナーゼ阻害剤、抗血管新生剤、心保護剤、免疫賦活剤、免疫抑制剤、血管新生阻害剤、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤及び第二抗体からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤と組み合わせて投与される使用。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか1項に記載の抗体と、
医薬的に許容可能な担体とを備えている医薬組成物。
【請求項14】
請求項1〜のいずれか1項に記載の抗体を産生するトランスフェクションされた細胞株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の技術分野に属し、抗体依存性細胞障害(ADCC)を起こす又は増強するための変異型Fc領域を有するFLT3特異的抗体、及びその抗体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
造血前駆細胞の細胞表面に発現される受容体型チロシンキナーゼFLT3は、初期造血におおいて重要な役割を果たす。それは、造血細胞(B細胞及びT細胞)の生存、増殖及び分化の制御において重要な役割を果たすため、異常なFLT3活性は、造血系の癌の発生及び進行に関わる。例えば、FLT3の遺伝子内縦列重複は、急性骨髄性白血病(AML)に関連する最も一般的な変異である。このため、FLT3発現細胞を特異的に標的として破壊することができる抗体が技術的に必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
従って、本発明の目的は、インビボにおいてFLT3発現細胞と結合してそれを死滅できる抗FLT3抗体を提供することにある。
【0004】
本発明は、受容体型チロシンキナーゼFLT3に対する抗体、及びその使用方法に関する。特定の態様において、その抗体は変異型Fc領域を含む。さらなる実施形態において、その抗体はキメラ抗体又はヒト化抗体である。さらに、本発明は、それらの抗体を備えた医薬組成物、及び種々の病気の兆候におけるその抗体の使用方法に関する。
【0005】
第1の態様において、本発明は、ヒト受容体型チロシンキナーゼFLT3に結合する抗体に関する。前記抗体は、重鎖及び/又は軽鎖を備え、抗FLT3の親抗体の定常領域に該当する領域に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。前記少なくとも1つのアミノ酸置換は、239D及び332Eのアミノ酸置換を含む。それらの位置の番号付け方法は、EUインデックス(Kabat等、1983年)に基づく。一つの特定の実施形態において、そのアミノ酸置換は、S239D及びI332Eである。
【0006】
本発明の一実施形態において、抗FLT3抗体は、例えば抗体依存性細胞障害(ADCC)のエフェクター機能等の殺細胞活性を有する。それは、その抗体が、FLT3発現細胞と接触すると、例えばトリガーによる補体系の活性化、食作用又はアポトーシスによって細胞死を促進することができることを意味する。
【0007】
一実施形態において、その抗体は、重鎖及び軽鎖を備えている。前記重鎖は、VCDR1領域、VCDR2領域及びVCDR3領域を備えていてもよい。また、前記軽鎖は、VCDR1領域、VCDR2領域及び/又はVCDR3領域を備えていてもよい。
【0008】
一つの特定の実施形態において、VCDR1は、SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:7のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実質的にその選択されるアミノ酸配列からなる又はその選択されるアミノ酸配列からなり、VCDR2は、SEQ ID NO:2及びSEQ ID NO:8のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実質的にその選択されるアミノ酸配列からなる又はその選択されるアミノ酸配列からなり、VCDR3は、SEQ ID NO:3及びSEQ ID NO:9のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実質的にその選択されるアミノ酸配列からなる又はその選択されるアミノ酸配列からなり、VCDR1は、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:10のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実質的にその選択されるアミノ酸配列からなる又はその選択されるアミノ酸配列からなり、VCDR2は、SEQ ID NO:5及びSEQ ID NO:11のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実質的にその選択されるアミノ酸配列からなる又はその選択されるアミノ酸配列からなり、VCDR3は、SEQ ID NO:6及びSEQ ID NO:12のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実質的にその選択されるアミノ酸配列からなる又はその選択されるアミノ酸配列からなる。
【0009】
他の特定の実施形態において、VCDR1は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR2は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR3は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR1は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR2は、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR3は、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなる。
【0010】
更なる他の特定の実施形態において、VCDR1は、SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR2は、SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR3は、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR1は、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR2は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなり、VCDR3は、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる又はそのアミノ酸配列からなる。
【0011】
本発明の一実施形態において、本発明の抗体の重鎖が、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる若しくはそのアミノ酸配列からなるVドメインを備え、且つ/又は、本発明の抗体の軽鎖が、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる若しくはそのアミノ酸配列からなるVドメインを備えている。
【0012】
本発明の他の実施形態において、本発明の抗体の重鎖が、SEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる若しくはそのアミノ酸配列からなるVドメインを備え、且つ/又は、本発明の抗体の軽鎖が、SEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列を含む、実質的にそのアミノ酸配列からなる若しくはそのアミノ酸配列からなるVドメインを備えている。
【0013】
本発明の他の実施形態において、本発明の抗体はキメラ抗体であり、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列を有する重鎖を備え、且つ/又は、SEQID NO:23に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を備えている。
【0014】
本発明の他の実施形態において、本発明の抗体はキメラ抗体であり、SEQ ID NO:43に示されるアミノ酸配列を有する重鎖を備え、且つ/又は、SEQID NO:39に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を備えている。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、S239D/I332Eのアミノ酸置換を備えた本発明の抗体は、前記アミノ酸置換を有さない親抗体と比較して、増強された親和性でFcγRIIIa受容体に結合する、又は増強されたADCCエフェクター機能を有する。ここで、「増強された」とは、親抗体が実験的に証明できるADCCエフェクター機能を示さずに、新規に生成されたFc最適化抗体が、初めて及びその抗体の起源となる親抗体とは対照的に、ADCCエフェクター機能を示す状況を含む。
更なる実施形態において、その抗体は、221、222、223、224、225、227、228、230、231、232、233、234、235、236、237、238、240、241、243、244、245、246、247、249、255、258、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、278、280、281、282、283、284、285、286、288、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、313、317、318、320、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、333、334、335、336及び337からなる群から選択される位置に1つ又はそれ以上の更なるアミノ酸変異を含み、それらの位置の番号付け方法はEUインデックスに基づく。それらの1つ又はそれ以上の更なるアミノ酸変異は、221K、221Y、222E、222Y、223E、223K、224E、224Y、225E、225K、225W、227E、227G、227K、227Y、228E、228G、228K、228Y、230A、230E、230G、230Y、231E、231G、231K、231P、231Y、232E、232G、232K、232Y、233A、233D、233F、233G、233H、233I、233K、233L、233M、233N、233Q、233R、233S、233T、233V、233W、233Y、234A、234D、234E、234F、234G、234H、234I、234K、234M、234N、234P、234Q、234R、234S、234T、234V、234W、234Y、235A、235D、235E、235F、235G、235H、235I、235K、235M、235N、235P、235Q、235R、235S、235T、235V、235W、235Y、236A、236D、236E、236F、236H、236I、236K、236L、236M、236N、236P、236Q、236R、236S、236T、236V、236W、236Y、237D、237E、237F、237H、237I、237K、237L、237M、237N、237P、237Q、237R、237S、237T、237V、237W、237Y、238D、238E、238F、238G、238H、238I、238K、238L、238M、238N、238Q、238R、238S、238T、238V、238W、238Y、240A、240I、240M、240T、241D、241E、241L、241R、241S、241W、241Y、243E、243H、243L、243Q、243R、243W、243Y、244H、245A、246D、246E、246H、246Y、247G、247V、249H、249Q、249Y、255E、255Y、258H、258S、258Y、260D、260E、260H、260Y、262A、262E、262F、262I、262T、263A、263I、263M、263T、264A、264D、264E、264F、264G、264H、264I、264K、264L、264M、264N、264P、264Q、264R、264S、264T、264W、264Y、265F、265G、265H、265I、265K、265L、265M、265N、265P、265Q、265R、265S、265T、265V、265W、265Y、266A、266I、266M、266T、267D、267E、267F、267H、267I、267K、267L、267M、267N、267P、267Q、267R、267T、267V、267W、267Y、268D、268E、268F、268G、268I、268K、268L、268M、268P、268Q、268R、268T、268V、268W、269F、269G、269H、269I、269K、269L、269M、269N、269P、269R、269S、269T、269V、269W、269Y、270F、270G、270H、270I、270L、270M、270P、270Q、270R、270S、270T、270W、270Y、271A、271D、271E、271F、271G、271H、271I、271K、271L、271M、271N、271Q、271R、271S、271T、271V、271W、271Y、272D、272F、272G、272H、272I、272K、272L、272M、272P、272R、272S、272T、272V、272W、272Y、273I、274D、274E、274F、274G、274H、274I、274L、274M、274N、274P、274R、274T、274V、274W、274Y、275L、275W、276D、276E、276F、276G、276H、276I、276L、276M、276P、276R、276S、276T、276V、276W、276Y、278D、278E、278G、278H、278I、278K、278L、278M、278N、278P、278Q、278R、278S、278T、278V、278W、280G、280K、280L、280P、280W、281D、281E、281K、281N、281P、281Q、281Y、282E、282G、282K、282P、282Y、283G、283H、283K、283L、283P、283R、283Y、284D、284E、284L、284N、284Q、284T、284Y、285D、285E、285K、285Q、285W、285Y、286E、286G、286P、286Y、288D、288E、288Y、290D、290H、290L、290N、290W、291D、291E、291G、291H、291I、291Q、291T、292D、292E、292T、292Y、293F、293G、293H、293I、293L、293M、293N、293P、293R、293S、293T、293V、293W、293Y、294F、294G、294H、294I、294K、294L、294M、294P、294R、294S、294T、294V、294W、294Y、295D、295E、295F、295G、295H、295I、295M、295N、295P、295R、295S、295T、295V、295W、295Y、296A、296D、296E、296G、296H、296I、296K、296L、296M、296N、296Q、296R、296S、296T、296V、297D、297E、297F、297G、297H、297I、297K、297L、297M、297P、297Q、297R、297S、297T、297V、297W、297Y、298A、298D、298E、298F、298H、298I、298K、298M、298N、298Q、298R、298T、298W、298Y、299A、299D、299E、299F、299G、299H、299I、299K、299L、299M、299N、299P、299Q、299R、299S、299V、299W、299Y、300A、300D、300E、300G、300H、300K、300M、300N、300P、300Q、300R、300S、300T、300V、300W、301D、301E、301H、301Y、302I、303D、303E、303Y、304D、304H、304L、304N、304T、305E、305T、305Y、313F、317E、317Q、318H、318L、318Q、318R、318Y、320D、320F、320G、320H、320I、320L、320N、320P、320S、320T、320V、320W、320Y、322D、322F、322G、322H、322I、322P、322S、322T、322V、322W、322Y、323I、324D、324F、324G、324H、324I、324L、324M、324P、324R、324T、324V、324W、324Y、325A、325D、325E、325F、325G、325H、325I、325K、325L、325M、325P、325Q、325R、325S、325T、325V、325W、325Y、326E、326I、326L、326P、326T、327D、327E、327F、327H、327I、327K、327L、327M、327N、327P、327R、327S、327T、327V、327W、327Y、328A、328D、328E、328F、328G、328H、328I、328K、328M、328N、328P、328Q、328R、328S、328T、328V、328W、328Y、329D、329E、329F、329G、329H、329I、329K、329L、329M、329N、329Q、329R、329S、329T、329V、329W、329Y、330E、330F、330G、330H、330I、330L、330M、330N、330P、330R、330S、330T、330V、330W、330Y、331D、331F、331H、331I、331L、331M、331Q、331R、331T、331V、331W、331Y、333A、333F、333H、333I、333L、333M、333P、333T、333Y、334A、334F、334I、334L、334P、334T、335D、335F、335G、335H、335I、335L、335M、335N、335P、335R、335S、335V、335W、335Y、336E、336K、336Y、337E、337H及び337Nからなるアミノ酸置換の群から選択されてもよく、これらの位置の番号付け方法はEUインデックスに基づく。
【0016】
他の実施形態において、1つ又はそれ以上の更なるアミノ酸変異は、221、222、223、224、225、228、230、231、232、240、244、245、247、262、263、266、271、273、275、281、284、291、299、302、304、313、323、325、328及び336からなる群から選択される位置にあり、それらの位置の番号付け方法はEUインデックスに基づく。このような実施形態において、前記1つ又はそれ以上のアミノ酸変異は、221K、221Y、222E、222Y、223E、223K、224E、224Y、225E、225K、225W、228E、228G、228K、228Y、230A、230E、230G、230Y、231E、231G、231K、231P、231Y、232E、232G、232K、232Y、240A、240I、240M、240T、244H、245A、247G、247V、262A、262E、262F、262I、262T、263A、263I、263M、263T、266A、266I、266M、266T、271A、271D、271E、271F、271G、271H、271I、271K、271L、271M、271N、271Q、271R、271S、271T、271V、271W、271Y、273I、275L、275W、281D、281E、281K、281N、281P、281Q、281Y、284D、284E、284L、284N、284Q、284T、284Y、291D、291E、291G、291H、291I、291Q、291T、299A、299D、299E、299F、299G、299H、299I、299K、299L、299M、299N、299P、299Q、299R、299S、299V、299W、299Y、304D、304H、304L、304N、304T、313F、323I、325A、325D、325E、325F、325G、325H、325I、325K、325L、325M、325P、325Q、325R、325S、325T、325V、325W、325Y、328A、328D、328E、328F、328G、328H、328I、328K、328M、328N、328P、328Q、328R、328S、328T、328V、328W、328Y、336E、336K及び336Yからなるアミノ酸置換の群から選択されてもよい。
【0017】
特定の実施形態において、その抗体は、236A、268D、268E、330Y及び330Lからなる群から選択される1つ又はそれ以上の更なるアミノ酸変異を備えている。
【0018】
他の態様において、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子を備えていることを特徴とする。それらの核酸分子は、SEQ ID NO:17若しくはSEQ ID NO:33に示されるような軽鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列、又はSEQ ID NO:18若しくはSEQ ID NO:34に示されるような重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列を備えていてもよい。
【0019】
一つの特定の実施形態において、本発明の抗体の軽鎖をコードする核酸は、SEQ ID NO:24及びSEQ ID NO:40からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0020】
他の特定の実施形態において、本発明の抗体の重鎖をコードする核酸は、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:44からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0021】
更なる態様において、本発明は、ヒト受容体型チロシンキナーゼFLT3に関連する病気又は障害を治療する方法に関し、当該方法は、本発明の抗体を、それを必要とする対象者に投与することを含む。対象者とは、例えば、動物又はヒトであり、ヒト等の哺乳動物であることが好ましい。
【0022】
一実施形態において、前記病気又は障害は、細胞増殖性の病気又は障害である。
【0023】
他の実施形態において、病気又は障害は、リンパ腫又は白血病等の造血系起源の腫瘍である。そのリンパ腫又は白血病は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞性急性リンパ性白血病/リンパ腫(B−ALL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫(MM)からなる群から選択されてもよい。好ましい実施形態において、前記リンパ腫は、急性骨髄性白血病(AML)である。
【0024】
他の実施形態において、前記病気又は障害は、骨髄異形成症候群(MDS)である。
【0025】
種々の実施形態において、前記リンパ腫又は白血病は、例えば幹細胞移植を用いた又は用いない従来の化学療法後に達する微小残存病変(MRD)の段階にある。
【0026】
本発明の方法の特定の実施形態において、前記抗体は、細胞毒薬剤、化学療法剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤、キナーゼ阻害剤、抗血管新生剤、心保護剤、免疫賦活剤、免疫抑制剤、血管新生阻害剤、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤及び第二抗体からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤と組み合わせて投与されてもよい。
【0027】
更なる態様において、本発明は、本発明に係る抗体及び医薬的に許容可能な担体を備えている医薬組成物をも含む。
【0028】
他の態様において、本発明は、FLT3を発現している細胞の増殖を阻害する方法に関し、当該方法は、前記細胞と本発明に係る抗体とを接触させることを含む。その方法はインビトロの方法であってもよい。
【0029】
更なる態様において、本発明は、FLT3を発現している細胞に対して、抗体依存性細胞障害を増強する方法に関し、当該方法は、前記細胞と本発明に係る抗体とを接触させることを含む。
【0030】
本発明の更なる態様は、哺乳動物からFLT3を発現している少なくとも1つの細胞を除去する方法であり、当該方法は、本発明に係る抗体を前記哺乳動物に投与することを含む。
本発明は、FLT3に関連する病気又は障害を治療するための本発明に係る抗体の使用にも関する。FLT3に関連する病気又は障害は、例えばリンパ腫若しくは白血病といった造血系起源の腫瘍又は骨髄異形成症候群(MDS)等の細胞増殖性の病気又は障害であってもよい。前記リンパ腫又は白血病は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞性急性リンパ性白血病/リンパ腫(B−ALL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)からなる群から選択されてもよく、好ましくは、急性骨髄性白血病である。
他の実施形態において、本発明は、FLT3を発現している細胞を標的とするための本発明に係る抗体の使用に関する。標的とするとは、FLT3発現細胞に薬剤又は毒物を送るために前記抗体を用いることを含み得る。
更なる態様において、本発明は、生体サンプル中のFLT3発現細胞の検出のための本発明に係る抗体の使用を含む。このような使用のために、前記抗体は、蛍光体、発色団及び免疫原生の標識等の検出可能部分により標識され得る。
本発明は、FLT3に対するモノクローナル抗体にも関し、前記抗体は、CHO又はSp2/0等のトランスフェクションされた産生細胞株により生成される。
更なる態様において、本発明は、本発明に係る抗体を生成するトランスフェクションされた細胞株を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明は、発明を実施するための形態を参照し、これと共に非限定的実施例及び添付図面を考慮することで、より理解されるだろう。
図1図1は、モノクローナル抗体のキメラ化のためのクローニング方法の略図を示している。箱形部分はエクソンを表し、円形部分はエンハンサー配列を示し、細線部分はUT領域及びイントロン配列を表している。Pはプロモーター、L及びLは2つの異なるエクソンによりコードされたリーダー配列、Eはエンハンサー、Vは可変領域、Dは多様性領域、Jは連結領域、C(1−3)は定常領域、Hはヒンジ領域をそれぞれ示している。
図2図2は、マウス軽鎖のVJ領域及びヒトκ遺伝子のC領域を含む親ベクターを示している。断片の置換に関する領域は図2Aに拡大して示されている。発現ベクターchimFLT3−lightの中にモノクローナル抗体BV10又は4G8のVJ領域の挿入で生じる配列構成が図2Bに示されている。分泌シグナルペプチドのための切断部位は、|により示され、[、]によりエクソン‐イントロンの境界が示されている。
図3図3は、ヒトγ1アイソタイプIg重鎖を含む元のベクターを示す。VDJ断片のクローニングに関連する領域は、(a)に拡大して示されている。置換されるためのMluI−SpeI断片(bに拡大して示す)は、ヒトγ1重鎖の定常領域の全体、及び示されているようなCH2ドメインにおける2つのアミノ酸変異(Ser239−Asp、Iso332−Glu)を含む。図3Bは、発現ベクターchimFLT3−heavyの中にモノクローナル抗体BV10又は4G8の重鎖のVDJ領域の挿入で生じる配列構成を示している。分泌シグナルペプチドのための切断部位は、|により示され、[、]によりエクソン‐イントロンの境界が示されている。
図4図4は、Fc最適化キメラ抗体であるChim4G8−SDIE(A)及びchimBV10−SDIE(B)のそれぞれと、刺激されていないヒトPBMCsとによるFLT3発現ヒト白血病培養細胞のNALM16に対する殺細胞効果を、変異していないキメラ抗体であるchim4G8及びchimBV10を用いた場合と比較して示している。図4Cは、上記Chim4G8−SDIE及びchimBV10−SDIE抗体と同一の位置でFc最適化がなされたNG2に対するキメラ抗体のヒトメラノーマSKMel63細胞に対する殺細胞効果を示している。細胞毒性は、クロム放出法を用いて測定され、測定時間及び標的とエフェクターとの比率は、図中に示されている。
図5図5は、最適化抗FLT3抗体である4G8−SDIE及び刺激されていないヒトPBMCsによるAML芽細胞に対する殺細胞効果を、変異していないマウスの親抗体と比較して示している。
図6図6は、抗FLT3抗体クローンの4G8及びBV10の軽鎖可変領域(A)及び重鎖可変領域(B)のアミノ酸配列アラインメントを示している。
図7図7は、マウスのキメラ化され且つ最適化された4G8及びBV10のFLT3に対する結合を示している。FLT3−及び偽トランスフェクションされたSp2/0細胞(A)又はNALM16細胞(B、C)は、示された抗体と共に培養され、間接免疫染色法及びフローサイトメトリーにより解析された。(A)の白抜き及び陰影の付いたヒストグラムは、アイソタイプの対照及び示されたFLT3抗体(10μg/ml)を用いた染色を示している。MFIは平均蛍光強度である。
図8図8は、FLT3リガンド(FLT3L)の結合及び白血病細胞の増殖への4G8SDIEMの効果を示している。(A)では、NALM16細胞を、示された濃度の組換え型FLT3リガンドの存在下で1μg/mlの4G8SDIEM又はBV10SDIEMと共に培養し、結合された抗体の量を間接免疫染色法及びフローサイトメトリーにより測定した。(B)では、3人の異なる患者の末梢血から密度勾配遠心分離法により単離されたAML芽細胞を、示された濃度の4G8SDIEMと共に24時間培養し、その増殖を3[H]チミジン取込み試験を用いて評価した。右側のバーは、抗体が存在しない条件での増殖量を示している。
図9図9は、変異されていない及びSDIEM変異されたそれぞれのFLT3抗体4G8及びBV10のADCC活性を示している。51[Cr]ラベルされたNALM16細胞を、示された濃度の変異されていないキメラの4G8及びBV10、又はSDIEM変異された4G8及びBV10の存在下で健康なドナーのPBMCsと共に4時間培養した。このとき、PBMC:標的細胞の比は50:1である。標的細胞の死滅量は、標準51[Cr]放出試験を用いて測定した。異なる健康なドナーからのPBMCsを用いた6つの独立した試験のうちの1つの代表的な結果を示している。
図10図10は、白血病細胞に対する4G8SDIEMのADCC活性を示している。NALM16細胞に対する異なる3人の健康なドナーのPBMCs(PBMCs#1、#2、#3)の細胞溶解活性(A)、及び異なる3人の患者の白血病芽細胞(AML#1、#2、#7)に対するドナー#2のPBMCsの細胞溶解活性(B)を、それぞれ51[Cr]放出試験で4時間及び8時間測定した。(C)には、エフェクター細胞としてそれぞれの患者の自己のPBMCsを用いて、AML芽細胞#1及び#15に対する8時間後の細胞溶解活性が示されている。黒の記号及び白抜きの記号は、4G8SDIEM及び非結合の対照抗体である9.2.27SDIEを介したADCCをそれぞれ示している。右側の黒のバー(NK)は、抗体が無い条件におけるNK活性を示している。なお、PBMC#1−3は、健康なドナーのPBMCsであり、AML芽細胞#1−3と関連しない。
図11図11は、抗原変異及び由来が異なる白血病細胞におけるFLT3の発現を示し、(A)はNALM16細胞及び異なる2人のAML患者からの芽細胞を、示された濃度の4G8SDIEMと共に培養した結果である。48時間後に細胞を洗浄し、2μg/mlの4G8SDIEMと共に再培養し、間接免疫染色法及びフローサイトメトリーにより解析した。抗体を添加せずに前培養された細胞において検出されたFLT3の発現量を100%と規定した。(B)では、15人の患者からのAML芽細胞を、マウス4G8(10μg/ml)と共に培養し、洗浄した後に間接免疫染色法及びフローサイトメトリーにより解析した。結合された抗体分子の量は、較正ビーズ(QIFIKIT)と比較することにより測定した。(C)では、(B)において用いられたAML芽細胞を、PE結合4G8SDIEM又は抗原に結合しないPE結合9.2.27SDIE抗体(10μg/ml)と共に培養し、直接免疫染色法及びフローサイトメトリーにより解析した。SFIは特定の蛍光インデックスである。4つのサンプルのSFIは、9.2.27SDIE対照抗体の結合量が多かったため、測定されなかった(n.d.)。
図12図12は、正常のDCs及び骨髄細胞におけるFLT3の発現を示している。(A)には、磁気細胞分離により健康なドナーの末梢血から単離されたDCsを4G8と共に培養し、洗浄し、標識二次抗体を用いて染色し、再び洗浄し、異なる標識がなされたCD11c−抗体とCD303−抗体との混合液の存在下で培養した。その後、細胞をフローサイトメトリーにより解析した。(B)及び(C)は、CD303+pDC及びCD11c+ mDCの亜集団に対する4G8の結合をそれぞれ示している。(D,E)は(A−C)と同様に、密度勾配遠心分離法により単離された正常骨髄細胞をマウス4G8と共に培養し、洗浄し、標識二次抗体と、異なる標識がなされたCD34−及びCD45−抗体の混合液とにより染色した。(E)には、CD34+CD45lowの亜集団に対する4G8の結合が示されている。陰影が付いたヒストグラムは、アイソタイプの参照抗体を用いて一次染色したものを示し、白抜きのヒストグラムは、マウス4G8を用いたものを示している。異なる健康なドナーのDCs及び骨髄細胞を用いた3つの試験のうちの1つを代表的な結果として示している。
図13図13は、正常細胞に対する4G8SDIEMの細胞毒性活性を示している。(A)では、2人の異なる健康なドナーのヒト骨髄細胞を5μg/mlの4G8SDIEMと共に培養し、12日間の半固形培地での培養後にコロニー形成単位を測定した(黒のバー及び陰影の付いたバー)。CFUの数値は、未処理の対照と関連付けられている。(B)では、4時間の51[Cr]放出試験において磁気細胞分離により健康なドナーのPBMCsから単離されたDCs及びNALM16細胞を4G8SDIEMの標的として用いた(PBMC:標的は、100:1である)。異なるドナーのDCs及び自己のPBMCsを用いた3つの試験のうちの代表的な1つが示されている。
図14図14は、患者の標的及びエフェクター細胞における4G8抗体のインビトロでの効果を示している。(A)では、抗マウスPE結合体に結合される、患者のPBMCをマウス4G8の親抗体及びアイソタイプの対照を用いて、FLT3の発現をFACSにより解析した。また、このとき、CD34のための二重染色も行った。(B,C)では、患者のPBMCを、クロム標識FLT3陽性NALM16細胞(B)、又はCD34+選択により単離された患者の芽細胞(C)と共に培養した。標的細胞を示された濃度の4G8SDIEM又は変異していないキメラ4G8抗体(4G8−ch)と共に前処理した。ADCCの誘導を、PBMC:標的を50:1とし、クロム放出試験によって測定した。なお、PBMC及び未精製NK細胞を用いた。
図15図15は、インビボにおける4G8−SDIEMの半減期及び結合特性を示している。(A)では、4G8−SDIEMの血清半減期を、臨床適応の異なる時点で得られた血清サンプルと共にFLT3発現NALM16細胞を培養することにより測定した。特異的結合抗体の量をFACSにより測定し、所定量の4G8−SDIEMを含む血清サンプルの結合活性と比較した。NDは未検を表している。(B)では、インビボで4G8−SDIEMの結合を検出するために、治療前に得られたBM芽細胞(d0)及び10mgの処理を行った1時間後のBM芽細胞(d5)を4G8マウス親抗体と共に培養し、第2抗体としてヒトIg吸着済み抗マウスPE結合体により結合される非交差反応性マウス抗FLT3抗体(BV10)、又はアイソタイプの対照(白抜きの山)を用いた。FACSにより測定されたように、BV10でなく、マウス4G8の完全な阻害は、4G8−SDIEMの飽和した結合を示している。
図16図16は、4G8−SDIEMの臨床効果を示している。(A,B)では、末梢血(PB)(A)又は骨髄(BM)(B)における単核細胞中のCD34+芽細胞(白抜きの円)、及び活性化(CD69+)CD56+CD3−NK細胞(菱形)の割合を、白血病(overt leukemia)の治療中の示された時間にFACSにより測定した。(C)では、白血病(overt leukemia)の治療中の示された時間におけるTNFの血清中レベルをIMMULITE(登録商標)により測定した。(D)では、PBにおける単核細胞中の活性化NK細胞の割合(菱形)、及びTNFの血清中レベルを、完全寛解(CR)での4G8−SDIEMの処理中の示された時間に、上記のように測定した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において用いられている用語は、特に明確にされていない限り、以下の意味を有する。
【0033】
本明細書において用いられる「ADCC」又は「抗体依存性細胞障害」とは、FcγRsを発現する細胞障害性細胞が標的細胞に結合した抗体を認識し、その後、標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を意味する。
【0034】
本明細書において用いられる「ADCP」又は「抗体依存性貪食作用」とは、FcγRsを発現する非特異的細胞障害性細胞が標的細胞に結合した抗体を認識し、その後、標的細胞に対して貪食作用を示す細胞媒介反応を意味する。
【0035】
本明細書において用いられる「アミノ酸」及び「アミノ酸相同性」とは、所定の位置に存在し得る天然の20アミノ酸又は非天然の誘導体の1つを意味する。従って、本明細書において用いられる「アミノ酸」は、天然のアミノ酸及び合成のアミノ酸の両方である。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリン及びノルロイシンは、本発明のためのアミノ酸とみなされる。「アミノ酸」は、プロリン及びヒドロキシプロリン等のイミノ酸残基をも含む。側鎖は、(R)型又は(S)型のどちらかであってもよい。一実施形態において、アミノ酸は、(S)又はL型である。非天然の側鎖が用いられる場合、例えば、インビボにおける分解を防ぐ又は遅らせるために、非アミノ酸置換基が用いられてもよい。
【0036】
本明細書において用いられる「抗体」とは、認識されるイムノグロブリン遺伝子の全て又は一部によって実質的にコードされた1又はそれ以上のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。例えば、ヒトの認識されるイムノグロブリン遺伝子は、カッパ(κ)、ラムダ(λ)、及び重鎖の遺伝子座を含み、それは、無数の可変領域遺伝子と、IgM、IgD、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)、IgE及びIgA(IgA1及びIgA2)アイソタイプのそれぞれをコードする定常領域遺伝子のミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、イプシロン(ε)及びアルファ(α)とを共に備えている。本明細書における抗体は、完全長の抗体及び抗体の断片を含み、生物からの天然抗体、改変抗体、又は試験、治療若しくは他の目的のために組み換えて生成された抗体であってもよい。
【0037】
本明細書において用いられる「B細胞」又は「Bリンパ球」とは、血液及びリンパ液を循環し、液性免疫を提供し、骨髄で作られるリンパ球の型を意味する。B細胞は遊離抗原分子を認識し、抗原を不活化するイムノグロブリン(抗体)を分泌する形質細胞に分化又は成熟する。その後にそのような抗原と遭遇したときに特異的なイムノグロブリン(抗体)を作製する記憶細胞も生じる。B細胞はランゲルハンス島における「ベータ細胞」としても知られている。
【0038】
本明細書において用いられる「T細胞」又は「Tリンパ球」とは、血液及びリンパ液を循環し、細胞性免疫を提供し、骨髄で作られるリンパ球の型を意味する。T細胞は、細胞結合抗原分子を認識するT細胞受容体を備えている。T細胞は、サイトカインを分泌し、他の型の細胞を活性化するヘルパーT細胞、又は他の細胞に結合し、破壊する細胞障害性T細胞に成熟し得る。
【0039】
本明細書において互換的に用いられる「FLT3」(fms様チロシンキナーゼ受容体3)、「FLK2」(胎児肝臓キナーゼ2)及び「CD135」とは、造血前駆細胞の表面に発現されるサイトカイン受容体を意味する。FLT3は、骨髄においてある種の造血(血液)前駆体を識別するために用いられる細胞表面マーカーである。特に、多様性前駆細胞(MPP)及びリンパ球共通前駆細胞(CLP)は、その表面において高レベルのFLT3を発現する。FLT3受容体は、サイトカインFlt3リガンド(Flt3L)に結合される。FLT3は受容体型チロシンキナーゼIII型である。この受容体がFlt3Lに結合されると、それはセカンドメッセンジャーシグナリングを活性化する二量体(ホモ二量体)を形成する。FLT3シグナリングは、リンパ球(B細胞及びT細胞)の生存、増殖及び分化に重要な役割を果たす。FLT3シグナリングの調節解除は、癌、特に白血病等の増殖性の病気を引き起こし得るため、FLT3は癌原遺伝子に分類される。実際に、FLT3の遺伝子内縦列重複は、急性骨髄白血病(AML)に関連する最も一般的な変異である。本明細書におけるFLT3の使用は、全て知られた又は今のところ発見されていないアレル、及びFLT3の多様な形を含むことを意味する。ヒトFLT3抗原の配列は、SEQ ID NO:65に示されている。
【0040】
本明細書において用いられる「CDC」又は「補体依存性細胞障害」とは、1つ又はそれ以上の補体タンパク質組成物が標的細胞に結合した抗体を認識し、その後に標的細胞の溶解を引き起こす反応を意味する。
【0041】
本明細書において定義される抗体の「定常領域」とは、軽鎖又は重鎖イムノグロブリン定常領域遺伝子の1つにコードされた抗体の領域を意味する。
【0042】
本明細書において用いられる「定常軽鎖」又は「軽鎖定常領域」とは、カッパ(Cκ)又はラムダ(Cλ)軽鎖によりコードされた抗体の領域を意味する。一般に、定常軽鎖は、単一のドメインを備え、本明細書で定義されるものは、Cκ又はCλの108−214の位置をいい、その番号付け方法はEUインデックスに基づく。
【0043】
本明細書において用いられる「定常重鎖」又は「重鎖定常領域」とは、IgM、IgD、IgG、IgA又はIgEといった抗体のアイソタイプをそれぞれ規定するミュー、デルタ、ガンマ、アルファ又はイプシロン遺伝子によりコードされた抗体の領域を意味する。全長IgG抗体において、本明細書において定義される定常重鎖は、CH1ドメインのN末端からCH3ドメインのC末端まで、すなわち、118−447の位置を含む領域をいう。その番号付け方法は、EUインデックスに基づく。
【0044】
本明細書において用いられる「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域とFc受容体又はリガンドとの相互作用により生じる生化学的事象を意味する。エフェクター機能は、ADCC及びADCP等のFcγR媒介エフェクター機能、並びにCDC等の補体媒介エフェクター機能を含む。
【0045】
本明細書において用いられる「エフェクター細胞」とは、1つ又はそれ以上のFc受容体を発現し、1つ又はそれ以上のエフェクター機能を媒介する免疫系の細胞を意味する。エフェクター細胞は、以下のものに限られないが、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞及びT細胞を含み、それは、以下の種に限られないがヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルを含む生物由来であってもよい。
【0046】
本明細書において用いられる「Fab」又は「Fab領域」とは、VH、CH1、VH及びCLイムノグロブリンドメインを備えるポリペプチドを意味する。Fabは、分離した状態のこの領域、又は全長抗体又は抗体の断片におけるこの領域をいう。
【0047】
本明細書において用いられる「Fc」又は「Fc領域」とは、第1の定常領域イムノグロブリンドメインを除く抗体の定常領域を備えたポリペプチドを意味する。従って、Fcは、IgA、IgD及びIgGの他の2つの定常領域イムノグロブリンドメインと、IgE及びIgMの他の3つの定常領域イムノグロブリンドメインと、それらのドメインへの可動ヒンジN末端とをいう。IgA及びIgMにおいて、Fcは、J鎖を含み得る。IgGにおいて、Fcは、イムノグロブリンドメインCγ2及びCγ3、並びにCγ1とCγ2との間のヒンジを備えている。Fc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、そのカルボキシル末端にC226又はP230残基を備えていることが定義され、その番号付け方法はKabatのEUインデックスに基づく。Fcは、分離した状態のこの領域、又はFcポリペプチド、例えば抗体に関するこの領域をいう。
【0048】
本明細書において用いられる「Fcポリペプチド」とは、Fc領域の全て又は一部を備えたポリペプチドを意味する。Fcポリペプチドは、抗体のFc融合体、分離されたFc及びFc断片を含む。
【0049】
本明細書において用いられる「Fcガンマ受容体」又は「FcγR」は、IgG抗体のFc領域と結合するタンパク質のファミリーのメンバーを意味し、それは、FcγR遺伝子により実質的にコードされている。ヒトにおいて、そのファミリーは、以下のものに限られないが、アイソフォームであるFcγRIa、FcγRIb及びFcγRIcを含むFcγRI(CD64)と、アイソフォームであるFcγRIIa(アロタイプのH131及びR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb‐1及びFcγRIIb‐2を含む)及びFcγRIIcを含むFcγRIIと、アイソフォームであるFcγRIIIa(アロタイプのV158及びF158を含む)及びFcγRIIIb(アロタイプのFcγRIIIb‐NA1及びFcγRIIIb‐NA2を含む)(Jefferis等、2002、Immunol Lett 82:57-65)と、未知のヒトFcγRs又はFcγRのアイソフォーム若しくはアロタイプを含む。マウスFcγRsは、以下のものに限られないが、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)及びFcγRIII‐2(CD16‐2)と、未知のマウスFcγRs又はFcγRのアイソフォーム若しくはアロタイプを含む。FcγRは、以下の種に限られないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルを含む生物由来であってもよい。
【0050】
本明細書において用いられる「Fcリガンド」又は「Fc受容体」とは、Fcリガンド複合体を形成するために抗体のFc領域に結合する生物由来のポリペプチド等の分子を意味する。Fcリガンドは、以下のものに限られないが、FcγRs、FcRn、C1q、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG及びウイルスのFcγRを含む。Fcリガンドは、Fc受容体ホモログ(FcRH)も含み、それは、FcγRsに類似するFc受容体のファミリーである(Davis等、2002、ImmunologicalReviews 190:123-136)。Fcリガンドは、Fcに結合する未知の分子を含み得る。
【0051】
本明細書において用いられる「IgG」とは、広く認められているイムノグロブリンガンマ遺伝子により実質的にコードされた1つ又はそれ以上の抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。ヒトにおいて、そのクラスは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。マウスにおいて、そのクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3を含む。
【0052】
本明細書において「イムノグロブリン(Ig)」とは、イムノグロブリン遺伝子により実質的にコードされた1つ又はそれ以上のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。イムノグロブリンは、以下のものに限られないが、抗体を含む。イムノグロブリンは、以下のものに限られないが、全長抗体、抗体断片及び個々のイムノグロブリンドメイン等の多くの構造形を有し得る。
【0053】
本明細書において「イムノグロブリン(Ig)ドメイン」とは、タンパク質構造の分野における当業者により確認されているような、他と異なる構造実体として存在するイムノグロブリンの領域を意味する。Igドメインは、通常、特徴的なβサンドイッチ折り畳みトポロジーを有する。抗体のIgGクラスにおける公知のIgドメインは、VH、Cγ1、Cγ2、Cγ3、VL及びCLである。
【0054】
本明細書において、「アミノ酸変異」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入及び/又は欠失を意味する。
【0055】
本明細書において、「アミノ酸置換」又は「置換」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置におけるアミノ酸が他のアミノ酸に入れ替わることを意味する。例えば、I332E置換は、変異したポリペプチドをいい、この場合、332の位置のイソロイシンがグルタミン酸に入れ替わった定常重鎖の変異である。野生型の残基は、明示されていてもよく、また、明示されていなくてもよい。その例として、332Eは、332の位置がグルタミン酸に置換されていることを示す。本明細書における目的のために、多重置換は、通常、スラッシュにより分けられる。例えば、239D/332Eは、239D及び332Eの置換を含む二重変異を意味する。
【0056】
本明細書において用いられる「アミノ酸挿入」又は「挿入」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置におけるアミノ酸の付加を意味する。例えば挿入‐236Gは、236の位置のグリシンの挿入を示す。
【0057】
本明細書において用いられる「アミノ酸欠失」又は「欠失」は、親ポリペプチド配列の特定の位置におけるアミノ酸の除去を意味する。例えば、G236‐は236の位置のグリシンの欠失を示す。
【0058】
本明細書において互換的に用いられる「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「前駆ポリペプチド」又は「前駆タンパク質」は、例えば本明細書に記載された少なくとも1つのアミノ酸変異のための鋳型及び/又は基礎として働き、ポリペプチド等の変異体を生成するために後に変異されるポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、天然のポリペプチド、又は天然のポリペプチドの変異体若しくは改変体であってもよい。親ポリペプチドは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、又はそれがコードされたアミノ酸配列をいう。従って、本明細書において用いられる「親抗体」又は「親イムノグロブリン」とは、変異体を生成するために変異される抗体又はイムノグロブリンを意味する(例えば、親抗体は、以下のものに限られないが、天然のIgの定常領域を備えたタンパク質を含み得る)。
【0059】
本明細書において用いられる「タンパク質」又は「ポリペプチド」とは、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸を意味し、それは、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド及びペプチドを含む。タンパク質は、天然のアミノ酸とペプチド結合とからなり得る、又は合成ペプチド模倣構造、すなわち、ペプトイド等の「誘導体」からなり得る。
【0060】
本明細書において用いられる「位置」とは、タンパク質の配列における位置を意味する。位置は、順次に番号付けされてもよく、また、例えばKabatのEuインデックス(Kabat等、1983)等の確立されたフォーマットに基づいてもよい。他の方法が示されていない場合は、本明細書において用いられる全ての位置は、EUインデックスに基づいて番号付けされている。対応する位置は、本明細書で概説されるように、通常、他の親配列と並べて決定される。
【0061】
本明細書において用いられる「残基」とは、タンパク質における位置、及びその関連するアミノ酸のアイデンティティーを意味する。例えば、セリン239(Ser239及びS239とも示される)は、ヒト抗体IgG1の239の位置における残基である。
【0062】
本明細書において用いられる「標的抗原」、「標的」又は「抗原」とは、所定の抗体の可変領域により特異的に結合される分子を意味する。標的抗原は、タンパク質、炭水化物、脂質又は他の化合物であってもよい。
【0063】
本明細書において用いられる「標的細胞」とは、標的抗原を発現する細胞を意味する。
【0064】
本明細書において用いられる「変異タンパク質」、「タンパク質変異体」、「変異ポリペプチド」又は「ポリペプチド変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸変異によって親ポリペプチド配列と異なったポリペプチド配列を意味する。変異ポリペプチドは、ポリペプチド自体、ポリペプチドを含む組成物又はそれをコードするアミノ酸配列を意味し得る。一実施形態において、変異ポリペプチドは、親ポリペプチド比較して少なくとも1つのアミノ酸変異を有する。例えば、親ポリペプチドと比較して約1個から約10個のアミノ酸変異を有する、また、親ポリペプチドと比較して約1個から約5個のアミノ酸変異を有する。本明細書における変異ポリペプチド配列は、親ポリペプチドと比較して少なくとも約80%の相同性を有してもよく、少なくとも約90%の相同性を有してもよく、少なくとも約95%の相同性を有してもよい。従って、本明細書において用いられる「変異抗体」又は「抗体変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸変異によって親抗体配列と異なった抗体配列を意味する。変異抗体又は抗体変異体は、抗体ポリペプチド自体、抗体変異体ポリペプチドを含む組成物、又はそれをコードするアミノ酸配列を意味し得る。従って、本明細書において用いられる「定常重鎖変異体」、「定常軽鎖変異体」又は「Fc変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸変異によって親配列と配列がそれぞれ異なる定常重鎖、定常軽鎖又はFc領域ポリペプチド若しくは配列を意味する。
【0065】
本明細書において「野生型」又は「WT」とは、対立遺伝子変異を含む、自然界で発見されるアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を意味する。WTのタンパク質、ポリペプチド、抗体、イムノグロブリン及びIgG等は、意図的に変異されていないアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を有する。
【0066】
本明細書で論じられる全てのイムノグロブリン重鎖定常領域の位置において、番号付け方法はKabatのEUインデックス(Kabat等、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、United States Public Health Service、National Institutes of Health Bethesda)に基づく。「KabatのEUインデックス」は、Edelman等、1969、Biochemistry63 78-85に記載されたようなヒトIgG1 EU抗体の残基の番号付け方法をいう。
【0067】
「抗原」は、動物内で抗体反応を起こし得る、また生じた抗体により認識され得る高分子である。抗原及びハプテンの両方は、少なくとも1つの抗原決定基又は「エピトープ」を備え、それは、抗体に結合する抗原又はハプテンの領域である。一般に、ハプテンのエピトープは、分子全体である。
【0068】
本明細書において用いられる「サンプル」という用語は、材料のアリコートをいい、しばしば、生体材料由来の生体マトリックス、水溶液又は水性懸濁液をいう。本発明の方法による分析物が存在するかどうか試験されるためのサンプルは、例えば、細胞、組織、ホモジネート、溶解物、抽出物、精製又は部分的に精製されたタンパク質、他の生体分子及びそれらの混合物を含む。
【0069】
本発明の方法において、通常、用いられる非限定的な例は、全血、血清、血漿、脳脊髄液、痰、気管支洗浄液、気管支吸引液、尿、精液、リンパ液、種々の気道や腸や泌尿生殖器の管における外分泌物、涙、唾液、乳、白血球、ミエローマやその類似体、細胞培養上清等の生体液、固定されている又はされていない組織標本、及び固定されている又はされていない細胞標本を含む。本発明の方法に用いられるサンプルは、試験の形式、及び試験されるための組織、細胞、抽出物又は特に生体材料である他の材料の性質に基づいて異なる。細胞又はサンプルからタンパク質抽出物を調製する方法は、本分野において公知であり、本発明の方法と相性が良いサンプルを得るために容易に適応できる。
【0070】
本明細書において用いられる「特異的に結合すること」及び「特異的結合」は、標的分子のエピトープの認識に基づいて、抗体がその標的(分析物)に結合することを意味する。抗体は、存在し得る他の化合物に結合するよりも高い結合親和性で標的分子を認識し、それに結合することが好ましい。本発明の種々の実施形態において、「特異的に結合すること」は、抗体が標的分子と関係が無い分子と結合するよりも、少なくとも約10倍大きい親和性、好ましくは少なくとも約10倍大きい親和性、より好ましくは少なくとも約10倍大きい親和性、最も好ましくは少なくとも約10倍大きい親和性で標的分子に結合することを意味する。一般に、特異的結合は、非特異的結合よりも約10倍から約10倍大きい親和性を有する。いくつかの実施形態において、特異的結合は、非特異的結合に対して10倍以上大きい親和性により特徴付けられ得る。結合親和性は、いくつかの適当な方法により測定され得る。そのような方法は、本技術分野において公知であり、以下の方法に限られないが、表面プラズモン共鳴及び等温滴定型熱量測定を含む。特定の実施形態において、抗体は、標的分析物を唯一認識し、それと結合する。
【0071】
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」とは、実質的に同種の抗体の群から得られる抗体をいう。すなわち、少数存在し得るような変異が自然発生する可能性を除けば、同一である群を備えたそれぞれの抗体をいう。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対して高い特異性を有する。さらに、一般に異なる決定基(エピトープ)を認識する異なる抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原における単一の決定基を認識する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他のイムノグロブリンにより汚染されていないハイブリドーマの培養により合成され得る点で有利である。変更「モノクローナル」は、抗体の実質的に同一の群から得られるような抗体の特性を示し、いくつかの特定の方法による抗体の要求生成と解釈されない。モノクローナル抗体は、「キメラ」抗体(米国特許第4816567号、及びMorrison等(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855)、並びにヒト化抗体(Jones等(1986)Nature, 321:522-525; Reichmann等(1988)Nature,332:323-329; Presta(1992)Curr. Op. Struct.Biol. 2:593-596)を含み得る。
【0072】
モノクローナル抗体は、培養液中の継代細胞株によって抗体分子を生成するいくつかの技術により得られ得る。それらは、以下のものに限られないが、Koehler及びMilsteinのハイブリドーマ法(1975、Nature, 256: 495-7; 及び米国特許第4376110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosbor等(1983)、ImmunologyToday, 4: 72; Cote等(1983)、Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 80: 2026-30)、及びEBV−ハイブリドーマ法(Cole等(1985)、Monoclonal Antibodies And CancerTherapy, Alan R. Liss, Inc., New York, pp.77-96)を含む。標的化合物に特異的なモノクローナル抗体の調製は、Harlow及びLane編(1988)、Antibodies-ALaboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 6に記載されている。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそれらのサブクラスを含むイムノグロブリンのクラスのいずれかである。mAbを生成するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで培養され得る。インビボにおける高力価のmAbsの生成は、非常に効率的な生成方法となる。
【0073】
「ポリクローナル抗体」は、抗原又はその抗原性機能的誘導体を用いて免疫性を与えた動物の血清由来の抗体分子の異種群である。ポリクローナル抗体の生成のために、ウサギ、マウス及びヤギ等の宿主動物は、抗原又はハプテン−担体結合体と選択的に免疫補助剤と共に注射されることにより、免疫性が与えられ得る。
【0074】
一本鎖抗体の生成方法(米国特許第4946778号; Bird(1988)、Science242: 423-26; Huston等(1988)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 5879-83; 及びWard等(1989)、Nature, 334:544-46)は、遺伝子−一本鎖抗体を生成するために適応され得る。一本鎖抗体は、通常、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖及び軽鎖の断片を結ぶことにより形成され、一本鎖ポリペプチドが生じる。
【0075】
特異的なエピトープを認識する抗体断片は、公知の方法により生成され得る。例えば、そのような断片は、以下のものに限られないが、抗体分子のペプシン消化により生成され得るF(ab’)断片、及びF(ab’)断片のジスルフィド架橋を低減することにより生成され得るFab断片を含む。また、Fab発現ライブラリーは、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の同定を迅速かつ容易にできるようにするために構築され得る(Huse等、(1989)、Science,246: 1275-1281)。
【0076】
本明細書において互換的に用いられる「ポリヌクレオチド」及び「核酸(分子)」という用語は、天然又は非天然の核酸を含む所定の長さのヌクレオチドの重合体を意味する。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸、リボ核酸及び/又はそれらの類似体を含み得る。核酸の選択及び調製方法は、多くあり、標準的な生体分子のプロトコールに記載されている。通常の方法は、既存の鋳型DNA又は人工の核酸の段階的合成からの予備的なPCR及びクロマトグラフィーによる精製が用いられる。通常、ここでは、核酸分子はDNA分子である。
【0077】
アミノ酸置換に関して、本明細書において用いられる「少なくとも1つ」という用語は、少なくとも1つに関するが、好ましくは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個又は複数のアミノ酸置換に関する。
【0078】
本明細書において互換的に用いられる「接触」又は「培養(インキュベート)」という用語は、一般に、一の組成物、試薬、分析物又はサンプルと他のものとの接近を意味する。
【0079】
本明細書において用いられる「検出」という用語は、所定の分子の存在を確認する方法をいう。これを達成するために用いられる方法は、以下のものに限られないが、ELISA及びイムノPCR(IPCR)等のイムノアッセイを含み得る。
【0080】
血液系腫瘍は、血液、骨髄及びリンパ節に影響する癌の型である。血液系腫瘍は、骨髄細胞株及びリンパ細胞株の主要な2つの血液細胞系のどちらかに由来し得る。骨髄細胞株は、通常、顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ及びマスト細胞を生成し、リンパ細胞株は、B細胞、T細胞、NK細胞及び形質細胞を生成する。リンパ腫、リンパ性白血病及び骨髄腫は、リンパ細胞株から生じ、一方、急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性疾患は、骨髄が起源である。
【0081】
白血病は、血液又は骨髄の癌であり、通常は白血球である血液細胞の異常な増殖により特徴付けられる。白血病は、臨床的及び病理的に種々の大きな群に細分される。急性白血病は、未熟な血液細胞の急速な増加により特徴付けられる。この細胞群により、骨髄が健康な血液細胞を生成することができなくなる。悪性細胞が急速に増加及び蓄積し、その後、それは血流に波及し、体内の他の器官に広がるため、急性白血病に対しては迅速な治療が必要である。急性白血病は、子供の白血病において最も一般的な型である。慢性白血病は、比較的に成熟しているが異常な白血病の過度の生育により特徴付けられる。一般に、数か月又は数年かかって、その細胞が正常細胞よりも極めて高い割合にまで生成され、その結果、血液中に多くの異常な白血球が生じる。急性白血病はすぐに治療しなければならないが、慢性型は、治療の最大効果を保証するために、治療する前に所定の期間中、経過を見る場合がある。慢性白血病は、老人が多く罹るが、理論上はどの年代も罹り得る。さらに、その疾病は、どの種類の血液細胞が影響を受けるかに従って細分される。この区分は、リンパ芽球性又はリンパ性の白血病と、骨髄の又は骨髄性の白血病とに白血病を分ける。リンパ芽球性又はリンパ性の白血病では、癌化が、感染と戦う免疫系細胞であるリンパ球を正常に形成する骨髄細胞の型において起こる。多くのリンパ性白血病は、B細胞のような特定のサブタイプのリンパ球が関与する。骨髄の又は骨髄性の白血病では、癌化が、赤血球、他の型の白血球及び血小板を正常に形成する骨髄細胞の型において起こる。急性骨髄性白血病(AML)は、血液細胞の骨髄系の癌であり、骨髄に蓄積し、正常細胞の生成を妨げる異常な白血球の急速な増殖により特徴付けられる。AMLは成人に発症する最も一般的な急性白血病であり、その発症率は年齢と共に増加する。AMLは比較的まれな疾病であるが、アメリカにおける癌死の約1.2%を占め、その発症率は、人口年齢に応じて増加すると考えられる。
【0082】
AMLの症状は、正常骨髄が白血病細胞に置換されることにより引き起こされ、それは、赤血球、血小板及び正常白血球の減少を引き起こす。それらの症状は、疲労、息切れ、容易にあざ及び出血が生じること、及び感染のリスクの増大を含む。AMLのいくつかのリスク因子は同定されているが、その疾病の特異的な原因は明らかになっていない。急性白血病であるAMLは、治療しなければ、急速に進行し、通常、数週間又は数カ月以内に致命的になる。
【0083】
AMLはいくつかのサブタイプを有し、サブタイプの間で治療法及び予後が異なる。サブタイプに従って、5年生存率が15〜70%の間で異なり、再発率が78〜33%の間で異なる。
【0084】
モノクローナル抗体は、特に造血系に発症する細胞増殖性の病気及び障害の治療のために用いられ得る治療タンパク質のクラスである。標的に対する特異性、免疫因子機構を媒介する能力及び血清中における長い半減期等を含む多くの抗体の有利な特性は、抗体を強力な治療薬にする。本開示は原癌遺伝子FLT3に対する抗体を記載する。
【0085】
FLT3は、白血病、特にAMLの発症及び進行における重要な役割を果たすことが知られており、AMLの患者にFLT3阻害剤を用いた最初の試験は、期待できる結果を示した。しかしながら、AML等の白血病の治療に役立つ抗FLT3抗体の必要性はまだ存在する。
【0086】
FLT3に対する抗体の臨床的成功は、それらの作用の潜在的機序に依存する。細胞の作用を媒介するような抗体によって可能なメカニズムは多く存在し、それらは、必要とされる成長経路の阻害を介した抗増殖、アポトーシスのための細胞内シグナリングの誘導、受容体のダウンレギュレーション及び/又はターンオーバーの増強、補体依存性細胞障害(CDC)、抗体依存性細胞障害(ADCC)、抗体依存性貪食作用(ADCP)及び適応免疫反応の促進を含む(Cragg等、1999、Curr Opin Immunol 11; 541-547, Glennie等、2000、Immunol Today 21, 403-410)。抗体の効能は、それらのメカニズムの組み合わせにより生じ得る。また、腫瘍学において、臨床的治療におけるそれらの相対的重要性は、癌依存的であると思われる。
【0087】
いくつかの抗体の活性のためのFcγR媒介エフェクター機能の重要性は、マウスにおいて(Clynes等、1998、Proc Natl Acad SciUSA, 95, 652-656; Clynes等、2000、Nat Med, 6, 443-446)、及びヒトにおける臨床的効能と、高親和性(V158)又は低親和性(F158)FcγRIIIaの多様型のアロタイプとの間で観察された相対性から証明されている。それらのデータは共に、特定のFcγRsに結合するために最適化された抗体がエフェクター機能を良好に媒介し得ることを示し、それにより、患者における標的細胞をより効率的に破壊する。従って、抗体の抗腫瘍効果を増強するための期待できる手段は、ADCC、ADCP及びCDC等の細胞障害性エフェクター機能を媒介する能力の増強を介する。さらに、抗体は、抗体が腫瘍細胞におけるその標的に結合している際に起こり得る増殖阻害又はアポトーシスシグナリングを介する抗腫瘍メカニズムを媒介し得る。このようなシグナリングは、抗体がFcγRを介して免疫細胞に結合される腫瘍細胞に存在する際に増強され得る。従って、FcγRsに対する抗体の親和性の増大は、抗増殖作用を増強し得る。
【0088】
いくつかの成功は、増強されたエフェクター機能を提供するために、FcγRsへの結合が選択的に増強されるように抗体を変異することで達成される。エフェクター機能を最適化するために変更された抗体は、アミノ酸変異を用いて達成される(例えば、米国特許出願第2004−0132101号又は米国特許出願第2006−0024298号を参照)。
【0089】
残念ながら、所定の標的抗原に最適である作用機序は、先天的に知られていない。さらに、抗体が標的細胞に対する所定の作用機序を媒介できることは知られていない。ある場合において、Fv又はFcのどちらかを介した抗体活性の欠損は、そのような活性を媒介することに乏しい、標的抗原におけるエピトープの標的化に起因し得る。他の場合において、標的化されたエピトープは、所望のFv又はFcを介した活性を受け入れやすく、それでも、親和性(抗原に対するFv領域の親和性又はFc受容体に対するFc領域の親和性)は、不十分である。この問題を解決するために、本開示は、例えば新たに生成又は最適化されたFc媒介活性といったFc媒介活性を提供する抗FLT3抗体の変異を記載する。
【0090】
抗体は、特定の抗原に結合する免疫学的タンパク質である。ヒト及びマウスを含む多くの哺乳動物において、抗体は、重鎖及び軽鎖の対から構成されている。軽鎖及び重鎖の可変領域は、抗体同士の間における重要な多様性を示し、標的抗原との結合に関与する。それぞれの鎖は、個々のイムノグロブリン(Ig)ドメインから構成され、従って、イムノグロブリンという総称は、そのようなタンパク質に用いられる。
【0091】
天然の抗体の構成単位は、通常、四量体を備えている。それぞれの四量体は、通常、2つのポリペプチド鎖の同一の対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(通常、約25kDaの分子量を有する)と、1つの「重」鎖(通常、約50〜70kDaの分子量を有する)とを有している。軽鎖及び重鎖のそれぞれは、可変領域及び定常領域と呼ばれる2つの異なる領域からなる。イムノグロブリンのIgGクラスにおいて、重鎖は、N末端からC末端に向かって、VH−CH1−CH2−CH3の順に結合された4つのイムノグロブリンドメインからなり、それらは、それぞれ重鎖可変ドメイン、重鎖定常ドメイン1、重鎖定常ドメイン2及び重鎖定常ドメイン3と呼ばれる(また、VH−Cγ1−Cγ2−Cγ3ともいわれ、それぞれ、重鎖可変ドメイン、定常ガンマ1ドメイン、定常ガンマ2ドメイン及び定常ガンマ3ドメインともいわれる)。IgG軽鎖は、N末端からC末端に向かって、VL−CLの順に結合された2つのイムノグロブリンドメインからなり、それらは、それぞれ軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインと呼ばれる。定常領域は、より少ない配列多様性を示し、重要な生化学的事象を誘発するために多くの天然タンパク質と結合することに関与している。
【0092】
抗体の可変領域は、抗原と結合する決定要因となる分子を含み、従って、抗体とその標的抗原との特異性を決定する。可変領域は、同一クラス内の他の抗体と配列の点で大きく異なるため、このように呼ばれている。可変領域において、3つのループは、抗原結合部位を形成するために重鎖及び軽鎖のVドメインのそれぞれに集められている。ループのそれぞれは、相補性決定領域(以下、CDRという)と呼ばれ、アミノ酸配列の差異が最も著しい。全部で6つのCDRがあり、重鎖及び軽鎖に3つずつあり、それぞれVCDR1、VCDR2、VCDR3、VCDR1、VCDR2及びVCDR3と呼ばれる。CDRsの外側の可変領域は、フレームワーク(FR)領域と呼ばれる。CDRほど多様ではないが、異なる抗体間でFR領域の配列差がある。さらに、この特徴的な抗体の構造は、安定な骨格(FR領域)を提供し、抗原の広範な配列に対する特異性を得るための免疫系により実質的な抗原結合多様性(CDRs)が探索され得る。多くの高分解構造は、抗原と非結合及び抗原と複合した異なる生物からの種々の可変領域断片に適用可能である。抗体の可変領域の配列及び構造の特徴は、例えば、Morea等、1997、Biophys Chem, 68: 9-16; Morea等、2000、Methods, 20: 267-279に記載され、抗体の保存特性は、例えば、Maynard等、2000、Annu Rev Biochem Eng, 2: 339-376に記載されている。
【0093】
抗体は、定常領域により遺伝的に決定されるような、アイソタイプともいわれるクラスに分類される。ヒト定常軽鎖は、カッパ(Cκ)軽鎖及びラムダ(Cλ)軽鎖に分類される。ヒト重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ又はイプシロンに分類され、それぞれIgM、IgD、IgD、IgG、IgAおよびIgEの抗体のアイソタイプに定義される。IgGクラスは、治療目的で用いられる最も一般的なものである。
【0094】
本明細書において用いられる「IgG」とは、認められているイムノグロブリンガンマ遺伝子に実質的にコードされた抗体のクラスに属するポロペプチドを意味する。ヒトにおいて、このクラスは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスを含む。マウスにおいて、このクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3を含む。IgMは、以下に限られないが、IgM1及びIgM2を含むサブクラスを有している。IgAは、以下に限られないが、IgA1及びIgA2を含む数個のサブクラスを有している。従って、本明細書において用いられる「アイソタイプ」は、それらの定常領域の化学的及び抗原的特性により定義されたイムノグロブリンのクラス又はサブクラスを意味する。公知のヒトイムノグロブリンのアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2、IgD及びIgEである。
【0095】
天然のヒトIgGアイソタイプのハイブリッド組成物であるIgGsは本発明に役立ち得る。ADCC、ADCP、CDC及び血清半減期等のエフェクター機能は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG及びIgMを含む抗体の異なるクラス間で顕著に異なる(Michaelsen等、1992、MolecularImmunology, 29(3):319-326)。多くの研究では、それらの間のエフェクター機能の差異の決定要因を調べるために、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の変異体を調べている。例えば、Canfield 及びMorrison, 1991 , J. Exp. Med.173: 1483-1491 ; Chappel等.,1991 , Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88(20): 9036-9040; Chappel等., 1993, Journal of Biological Chemistry 268:25124- 25131 ; Tao等., 1991 , J . Exp. Med. 173: 1025-1028; Tao等.,1993, J. Exp. Med. 178: 661-667; Redpath等., 1998, Human Immunology, 59, 720-727を参照できる。
【0096】
米国特許出願2006−0134105号の「最適化されたエフェクター機能を有するIgGイムノグロブリン変異体」に記載されているように、他のイムノグロブリンクラスからの定常領域を含む抗体におけるアミノ酸変異を行うことができる。そのような人工のハイブリッドIgG組成物は、改良されたADCC、貪食作用、CDC及び血清半減期を含む改良されたエフェクター機能の特性を提供できる。
【0097】
本技術分野において公知であるように、イムノグロブリンの多型性は、ヒト個体群内に存在する。Gm多型性は、ヒトIgG1、IgG2及びIgG3分子のマーカーのためのG1m、G2m及びG3mアロタイプと呼ばれるアロタイプの抗原性の決定要因をコードするアレルを有するIGHG1、IGHG2及びIGHG3遺伝子により決定される(ガンマ4鎖ではGmアロタイプは発見されていない)。マーカーは、「アロタイプ」及び「イソアロタイプ」の中に分類さ得る。それらは、アイソタイプ間における強い配列相同性に依存する異なる血清学的基礎で区別される。アロタイプは、Ig遺伝子の対立形質により特定される抗原性決定要因である。アロタイプは、異なる個体の重鎖又は軽鎖のアミノ酸配列におけるわずかな差異を表す。多くの場合においていくつかのアミノ酸置換が生じているが、1つのアミノ酸の差異でさえも、アロタイプの決定要因を引き起こし得る。アロタイプは、サブクラス間のアレル間における配列差であり、それにより、抗血清がアレルの差異のみで認められる。イソアロタイプは、1つ又はそれ以上の他のアイソタイプと共有される非多型性相同領域エピトープを生成する1つのアイソタイプ中のアレルである。このため、抗血清は、関連するアロタイプ及び関連する相同アイソタイプの両方に反応する(Clark, 1997, IgG effectormechanisms, Chem. Immunol. 65-88-110, Gorman 及びClark, 1990, Semin. Immunol.2(6):457-66)。
【0098】
ヒトイムノグロブリンのアレル型は、十分に特徴付けられている。さらに、他の多型も特徴付けられている(Kim等., 2001 , J. Mol. Evol.54 1-9, これは本明細書に参照として援用される)。現在では、G1m(1、2、3、17)又はG1m(a、x、f、z)、G2m(23)又はG2m(n)、G3m(5、6、10、11、13、14、15、16、21、24、26、27、28)又はG3m(b1、c3、b5、b0、b3、b4、s、t、g1、c5、u、v、g5)の18個のGmアロタイプが知られている(Lefranc等 , Thehuman IgG subclasses: molecular analysis ofstructure, function and regulation Pergamon, Oxford,pp 43-78 (1990), Lefranc, G等.,1979, Hum. Genet.: 50, 199-21 1)。固定された組み合わせで遺伝するアロタイプは、Gmハプロタイプと呼ばれる。本発明の抗体は、イムノグロブリン遺伝子のアロタイプ、イソアロタイプ又はハプロタイプにより実質的にコードされ得る。本発明の抗体は、例えばヒト等を含む哺乳動物、マウス及びラット等を含む齧歯動物、ウサギ及びノウサギ等を含むウサギ目、ラクダ、ラマ及びヒトコブラクダ等を含むラクダ科、並びに原猿、広鼻猿類(新世界サル)、オナガザル上科(旧世界ザル)、及びギボンとテナガザルと大型類人猿等とを含む類人の遺伝子により実質的にコードされ得る。
【0099】
一実施形態において、本発明の抗体は、実質的にヒトの抗体である。本発明の抗体は、抗体のクラスのいずれかに属するイムノグロブリン遺伝子により実質的にコードされ得る。一実施形態において、本発明の抗体は、ヒトサブクラスIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む抗体のIgGクラスに属する配列を含む。代替の実施形態において、本発明の抗体は、IgA(ヒトサブクラスIgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG又はIgMの抗体のクラスに属する配列を含む。本発明の抗体は、1つ以上のタンパク鎖を含み得る。すなわち、本発明では、モノマー、又はホモオリゴマー若しくはヘテロオリゴマーを含むオリゴマーである抗体が用いられ得る。
【0100】
一実施形態において、本発明の抗体は、ヒトIgG配列に基づき、従って、ヒトIgG配列は、例えば齧歯動物及び霊長類の配列といった他の生物の配列、並びにIgA、IgE、IgD及びIgM等の他のイムノグロブリンクラスの配列等を含む他の配列が比較される「ベース」の配列として用いられる。本発明の抗体は、1つの親抗体に照らして合成されるが、変異体は、他の第2の親抗体に照らして合成又は「転移」されると考えられる。これは、「同等の」又は「対応する」残基を決定すること、及び2つの抗体の配列間の配列的又は構造的相同性に主として基づく第1の抗体と第2の抗体との間の置換により行われる。相同性を確認するために、本明細書で要約された第1の抗体のアミノ酸配列は、第2の抗体の配列と直接に比較される。アラインメントを維持するために必要な挿入及び欠損をさせるように(すなわち、任意の欠損及び挿入を介して保存された残基の除去を避ける)、本技術分野において公知の1つ又はそれ以上の相同性アラインメントプログラムを用いて、(例えば種同士の間の保存された残基を用いて)、配列を調整した後に、第1の抗体の一次配列における特定のアミノ酸と同等の残基が規定される。保存された残基のアラインメントは、そのような残基の100%を保存し得る。しかしながら、保存された残基の75%以上又は50%のアラインメントは、同等の残基を規定するのに適する。同等の残基は、構造が決定された抗体の三次構造のレベルにある第1の抗体と第2の抗体との間の構造的相同性を決定することにより規定され得る。この場合、同等の残基は、アラインメント後に、親又は前駆体の特定のアミノ酸残基の主鎖の2つ又はそれ以上の原子の原子座標(NとN、CAとCA、CとC及びOとO)が0.13nm以内、例えば0.1nmとなるように規定される。アラインメントは、最も良いモデルがタンパク質の非水素タンパク質原子の原子座標の最大のオーバーラップを与えるために、向きを調整され、位置づけられた後に達成される。同等の又は対応する残基がどのように決定されたかにかかわらず、また、その抗体を形成する親抗体のアイデンティティーにかかわらず、伝えられることは、本発明により発見された抗体が、その抗体と相同性がある重要な配列又は構造を有する第2の親抗体の中に作られ得ることである。従って、例えば、親抗体がヒトIgG1の場合、同等の残基を決定するための上記の方法又は他の方法を用いることにより、変異抗体が生成されると、変異抗体は、ヒトIgG2親抗体、ヒトIgA親抗体、及びマウスIgG2a又はIgG2b親抗体等において変更され得る。また、上記のように、親抗体の関連は、本発明の抗体から他の親抗体へ移転するための能力に影響しない。例えば、1つの抗原エピトープを標的とするヒトIgG1抗体において変更された変異抗体は、異なる抗体エピトープを標的とするヒトIgG2抗体の中に転移され得る。
【0101】
イムノグロブリンのIgGクラスにおいて、重鎖にはいくつかのイムノグロブリンドメインがある。本明細書において「イムノグロブリン(IgG)ドメイン」とは、他とは異なる三次構造を有するイムノグロブリンの領域を意味する。本発明における対象は、定常重鎖(CH)ドメイン及びヒンジを含む定常重鎖のドメインである。IgG抗体に関して、IgGアイソタイプのそれぞれは、KabitのEUインデックスに基づく118〜220の位置にある「CH1」、237〜340の位置にある「CH2」及び341〜447の位置にある「CH3」の3つのCHドメインを有する。本明細書における「ヒンジ」、「ヒンジ領域」、「抗体ヒンジ領域」又は「イムノグロブリンヒンジ領域」は、抗体の第1定常ドメインと第2定常ドメインとの間にアミノ酸を含む可動性ポリペプチドを意味する。構造的に、IgGのCH1ドメインはEUインデックスの220の位置で終わり、IgGのCH2ドメインはEUインデックスの237の位置から始まる。従ってIgGのヒンジは、221(IgG1のD221)から236(IgGのG236)の位置を含むように規定される。その番号付け方法は、KabitのEUインデックスに基づく。いくつかの実施形態において、例えばFc領域に関して、下側ヒンジが含まれ、「下側ヒンジ」とは、一般に、226又は230の位置をいう。本明細書で定義される定常重鎖は、CH1ドメインのN末端からCH3ドメインのC末端までをいい、従って118〜447の位置を含み、この番号付け方法はEUインデックスに基づく。本明細書で定義される定常軽鎖は、単一のドメインを有し、108〜214の位置のCκ又はCλであり、その番号付け方法はEUインデックスに基づく。
【0102】
特に、「抗体」の定義には全長抗体が含まれる。本明細書における「全長抗体」とは、可変領域及び定常領域を含む抗体の天然の生化学的形状を構成する構造を意味する。例えば、ヒト及びマウスを含む多くの哺乳動物において、IgGクラスの全長抗体は、四量体であり、2つのイムノグロブリンの2つの同一の対からなる。それぞれの対は、1つの軽鎖及び1つの重鎖を有し、それぞれの軽鎖は、イムノグロブリンドメインVL及びCLを含む、それぞれの重鎖は、イムノグロブリンドメインVH、CH1(Cγ1)、CH2(Cγ2)及びCH3(Cγ3)を含む。例えばラクダ及びラマ等の哺乳動物において、IgG抗体は、2つの重鎖のみからなり得る。それぞれの重鎖はFc領域に接続した可変ドメインを含む。
【0103】
また、ここでの抗体は、抗体断片等の種々の構造であってもよい。抗体断片は、以下のものに限られないが、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体、擬似抗体、キメラ抗体、抗体融合体(時々「抗体結合体」とも呼ばれる)及びそれぞれの断片を含む。特異的抗体断片は、以下のものに限られないが、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一の抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)単一の可変領域からなるdAb断片、(v)単離されたCDR領域、(vi)2つの結合されたFab断片を備えた二価の断片であるF(ab’)、(vii)VHドメイン及びVLドメインが、抗原結合領域を形成するために2つのドメインを結合させるペプチドリンカーによって結合されている一本鎖Fv分子(scFv)、(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体、及び(ix)「ダイアボディ」若しくは「トリアボディ」、又は遺伝子融合により構築される多価若しくは多重特異性の断片を含む。抗体断片は変異されていてもよい。例えば、その分子は、VHドメインとVLドメインとを結合するジスルフィド架橋の組み込みにより安定化され得る。抗体のフォーマット及び構築の例は、Holliger及びHudson,2006, Nature Biotechnology 23(9):1126- 1136,並びにCarter2006, Nature Reviews Immunology 6:343-357、さらに、それらの中で引用された参考文献に記載されている。
【0104】
本発明の抗体は、「ダイアボディ」とも時々呼ばれる、特に二重特異性抗体である多重特異性抗体を含み得る。それらは、2つ(又はそれ以上の)異なる抗原と結合する抗体である。ダイアボディは、例えば化学的調製又はハイブリッドハイブリドーマを用いるような、本技術分野に周知の種々の方法で作成され得る。一実施形態において、抗体はミニボディである。ミニボディは、CH3ドメインに結合されたscFvを含む最小化された抗体様タンパク質である。いくつかの場合において、scFvは、Fc領域に結合し、ヒンジ領域の一部又は全てを含み得る。多重特異性抗体の詳細については、Holliger及びHudson,2006,Nature Biotechnology 23(9): 1126-1136と、その中で引用された参考文献を参考とできる。
【0105】
一実施形態において、本発明の抗体は、抗体断片である。特に興味深いのは、Fc領域、Fc融合体、及び重鎖の定常領域(CH1−ヒンジ−CH2−CH3)を含む抗体である。本発明の抗体は、Fc断片を含む。本発明のFc断片は、1〜90%、例えば10〜90%又は30〜90%等のFc領域を含み得る。従って、例えば本発明のFc断片は、IgG1Cγ2ドメイン、IgG1Cγ2ドメイン、ヒンジ領域、及びIgG1Cγ3ドメイン等を含み得る。一実施形態において、本発明のFc断片は、融合パートナーをさらに含み、効果的にFc断片融合体とされる。Fc断片は、余分なポリペプチドを含んでも含まなくてもよい。
【0106】
免疫原性は、外来性のものと認められる物質に対する複雑な一連の反応の結果であり、中和及び非中和抗体の生成、免疫複合体の形成、補体の活性化、マスト細胞の活性化、炎症、過敏応答、及びアナフィラキシー反応を含み得る。以下のものに限られないが、タンパク質配列、投与の経路及び頻度、並びに患者個体群等のいくつかの要因は、タンパク質免疫原性に寄与し得る。免疫原性は、多種の方法におけるタンパク質治療の有効性及び安全性を制限し得る。有効性は、中和抗体の形成により直接に低減され得る。また、有効性は、中和抗体又は非中和抗体のいずれかに結合して、通常、血清から急速に除去されるので、間接的に低減され得る。重い副作用及び致死さえも免疫反応が生じた際に起こり得る。従って、一実施形態において、タンパク質エンジニアリングは、本発明の抗体の免疫原性を低減するために用いられる。
【0107】
いくつかの実施形態において、スカフォールド成分は、異なる種由来の混合物となり得る。そのような抗体は、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体であってもよい。一般に、「キメラ抗体」及び「ヒト化抗体」の両方は、一つの種よりも多くの種由来の領域を兼ね備える抗体を意味すする。「キメラ抗体」は、伝統的に、マウス(又はいくつかの場合においてはラット)の可変領域及びヒトの定常領域を備えている(Morrison等, 1984, Proc NatlAcad Sci USA 81 6851-6855)。
【0108】
本明細書において用いられる「ヒト化」抗体とは、ヒトのフレームワーク領域(FR)、及び非ヒト(通常はマウス又はラット)抗体の1つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDRs)を備えた抗体を意味する。CDRsを提供する非ヒト抗体は、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒトイムノグロブリンは、「アクセプタ」と呼ばれる。ヒト化は、アクセプタ(ヒト)VL及びVHフレームワークにドナーCDRsを移植することに主に基づく(Winter US 5225539)。この方法は、「CDRグラフティング」と呼ばれる。ドナーの残基に対応して選択されたアクセプタフレームワークの残基の「逆突然変異」は、最初に移植された構成物において失われた親和性を回復するためによく必要とされる(US 5693762)。ヒト化抗体は、イムノグロブリン定常領域の少なくとも一部、通常は、ヒトイムノグロブリンの少なくとも一部を適切に備え、従って、通常はヒトFc領域を備えている。ヒト化、及び非ヒト抗体の再形成のための種々の技術及び方法は、本技術分野において周知である(Tsurushita及びVasquez,2004, Humanization of Monoclonal Antibodies, Molecular Biology of B Cells,533-545, Elsevier Science (USA)、及びその中で引用された参考文献を参照)。ヒト化、又は非ヒト抗体可変領域の免疫原性を低減する他の方法は、例えばRoguska等.1994,Proc Natl Acad Sci USA 91 969-973に記載されたリサーフェシング方法を含む。一実施形態において、選択に基づく方法は、ヒト化するため、及び/又は親和性が十分な抗体の可変領域を得る、すなわち、その標的抗原のための可変領域の親和性を増大するために用いられ得る。他のヒト化方法は、以下のものに限られないが、Tan等, 2002, J Immunol169 1119-1125, De Pascalis等,2002, J Immunol 169 3076-3084に記載された方法を含む、CDRsの部分のみを移植することを含み得る。構造に基づく方法は、例えば米国特許7117096及びその関連の出願に記載されているように、ヒト化するため及び親和性を十分にするために用いられ得る。
【0109】
特定の変形例において、抗体の免疫原性は、2004年12月3日に出願された「宿主ストリング含有量が増加された変異体タンパク質の生成法と、それらの組成物」という発明の名称の米国特許出願2006-0008883号に記載された方法を用いて低減される。
【0110】
免疫原性を低減するための変異は、親配列に由来する処理されたペプチドのMHCとの結合を低減する変異を含み得る。例えば、アミノ酸変異は、一般的なMHCアレルと高い親和性で結合することが予測される免疫エピトープが無い、又は最小限の数だけあるように設計される。タンパク質配列のMHC結合エピトープを同定するいくつかの方法は、本技術分野において周知であり、本発明の抗体においてエピトープを記録するために用いられ得る。例えば、米国特許出願2002-0119492、2004-0230380又は2006-0148009、及びそれらの中で引用された参考文献を参照できる。
【0111】
他の実施形態において、本発明の抗体は、完全に又は実質的にヒト抗体の配列である完全ヒト抗体であってもよい。「完全(Fully)ヒト抗体」又は「完全(complete)ヒト抗体」は、本明細書において概説された変異を有するヒト染色体由来の抗体の遺伝子配列を有するヒト抗体をいう。トランスジェニックマウスの使用(Bruggemann等. 1997,Curr Opin Biotechnol 8:455-458)、又は選択的方法とヒト抗体ライブラリとの使用(Griffiths等. 1998, CurrOpin Biotechnol 9:102-108)を含む完全ヒト抗体を生成するための多くの方法は、本技術分野において周知である。
【0112】
本発明の抗体は、FLT3を標的とし、公知又は未知の抗FLT3抗体の可変領域(例えばCDRs)を備え得る。本発明の抗体は、FLT3に対する選択性を示す。例としては、全長対スプライス変異、細胞表面対可溶型、種々の多型変異体の選択性、又は標的の特異的な立体配座形状を含む。本発明の抗体は、FLT3のエピトープ又は領域に結合してもよく、抗原の断片、変異型、スプライス型又は異常型に特異的であってもよい。本発明において用いられ得るFLT3を標的とする多くの有益な抗体は、これまでに発見されている。
【0113】
適当なFLT3抗体は、米国特許第5777084号及び米国特許第6156882号に記載されるように、抗FLT3抗体4G8及びBV10を含む。
【0114】
本発明の抗体は、製品の広い範囲において用いられ得る。一実施形態において、本発明の抗体は、治療用薬剤、診断試薬又は研究試薬である。一実施形態において、本発明の抗体は、治療上のものである。本発明の抗体は、モノクローナル又はポリクローナルの抗体組成物において用いられ得る。一実施形態において、本発明の抗体は、例えば癌細胞のような標的抗原を生む標的細胞を死滅させるために用いられる。代替の実施形態において、本発明の抗体は、標的抗原をブロックする、中和する又は刺激するために用いられる。代替の実施形態において、本発明の抗体は、標的抗原をブロックする、中和する又は刺激するために、また、標的抗原を生む標的細胞を死滅させるために用いられる。
【0115】
本明細書において同定されたCDRsを含む可変ドメインの配列が抗体において組み合わせ自由で結合され得ることが認められる。さらに、これらの配列は、本明細書で開示されるようなFc領域又はFc変異体の全て又は一部を加えることによって独立的に変異され得る。変異された配列は、抗体において組み合わせ自由に結合され得る。
【0116】
本発明は、変異を含む抗体に関し、その変異は、1つ若しくはそれ以上のFc領域に対する親和性を変更する、及び/又は1つ若しくはそれ以上のエフェクター機能を媒介する抗体の能力を変更する。
【0117】
本発明の発明者等は、驚いたことに、(上記の)4G8及びBV10等の公知の抗FLT3抗体のFc部分のCH2ドメインにアミノ酸置換239D及び332Eを導入することにより、初めて、これらの抗体の殺細胞活性を顕著に増大し、又は検出及び生成し得ることを見出した。一実施形態において、アミノ酸置換は、S239D及びI332Dである。同一の変異では、一般に殺細胞活性が増大しないことが経験的に示されているため、それは、驚くべきことである。換言すると、種々の標的抗原に対する種々の抗体において、これらの置換の導入は、細胞死においては測定できるような影響はない。
【0118】
さらに、そのような変異がなされた抗体は、重鎖定常領域の221、222、223、224、225、227、228、230、231、232、233、234、235、236、237、238、240、241、243、244、245、246、247、249、255、258、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、278、280、281、282、283、284、285、286、288、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、313、317、318、320、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、333、334、335、336及び337の位置におけるアミノ酸変異をさらに備え得る。これらの位置のアミノ酸変異は、抗体のFcγR結合特性、エフェクター機能及び潜在的臨床特性を変更することが認められている(発明の名称が「最適化Fc変異体」であり、2005年5月5日に出願されたUSSN11/124620を参照)。
【0119】
特に、1つ又はそれ以上のヒトFc受容体への結合を変更する追加の変異体は、本明細書に記載されたような重鎖定常領域において、221K、221Y、222E、222Y、223E、223K、224E、224Y、225E、225K、225W、227E、227G、227K、227Y、228E、228G、228K、228Y、230A、230E、230G、230Y、231E、231G、231K、231P、231Y、232E、232G、232K、232Y、233A、233D、233F、233G、233H、233I、233K、233L、233M、233N、233Q、233R、233S、233T、233V、233W、233Y、234A、234D、234E、234F、234G、234H、234I、234K、234M、234N、234P、234Q、234R、234S、234T、234V、234W、234Y、235A、235D、235E、235F、235G、235H、235I、235K、235M、235N、235P、235Q、235R、235S、235T、235V、235W、235Y、236A、236D、236E、236F、236H、236I、236K、236L、236M、236N、236P、236Q、236R、236S、236T、236V、236W、236Y、237D、237E、237F、237H、237I、237K、237L、237M、237N、237P、237Q、237R、237S、237T、237V、237W、237Y、238D、238E、238F、238G、238H、238I、238K、238L、238M、238N、238Q、238R、238S、238T、238V、238W、238Y、240A、240I、240M、240T、241D、241E、241L、241R、241S、241W、241Y、243E、243H、243L、243Q、243R、243W、243Y、244H、245A、246D、246E、246H、246Y、247G、247V、249H、249Q、249Y、255E、255Y、258H、258S、258Y、260D、260E、260H、260Y、262A、262E、262F、262I、262T、263A、263I、263M、263T、264A、264D、264E、264F、264G、264H、264I、264K、264L、264M、264N、264P、264Q、264R、264S、264T、264W、264Y、265F、265G、265H、265I、265K、265L、265M、265N、265P、265Q、265R、265S、265T、265V、265W、265Y、266A、266I、266M、266T、267D、267E、267F、267H、267I、267K、267L、267M、267N、267P、267Q、267R、267T、267V、267W、267Y、268D、268E、268F、268G、268I、268K、268L、268M、268P、268Q、268R、268T、268V、268W、269F、269G、269H、269I、269K、269L、269M、269N、269P、269R、269S、269T、269V、269W、269Y、270F、270G、270H、270I、270L、270M、270P、270Q、270R、270S、270T、270W、270Y、271A、271D、271E、271F、271G、271H、271I、271K、271L、271M、271N、271Q、271R、271S、271T、271V、271W、271Y、272D、272F、272G、272H、272I、272K、272L、272M、272P、272R、272S、272T、272V、272W、272Y、273I、274D、274E、274F、274G、274H、274I、274L、274M、274N、274P、274R、274T、274V、274W、274Y、275L、275W、276D、276E、276F、276G、276H、276I、276L、276M、276P、276R、276S、276T、276V、276W、276Y、278D、278E、278G、278H、278I、278K、278L、278M、278N、278P、278Q、278R、278S、278T、278V、278W、280G、280K、280L、280P、280W、281D、281E、281K、281N、281P、281Q、281Y、282E、282G、282K、282P、282Y、283G、283H、283K、283L、283P、283R、283Y、284D、284E、284L、284N、284Q、284T、284Y、285D、285E、285K、285Q、285W、285Y、286E、286G、286P、286Y、288D、288E、288Y、290D、290H、290L、290N、290W、291D、291E、291G、291H、291I、291Q、291T、292D、292E、292T、292Y、293F、293G、293H、293I、293L、293M、293N、293P、293R、293S、293T、293V、293W、293Y、294F、294G、294H、294I、294K、294L、294M、294P、294R、294S、294T、294V、294W、294Y、295D、295E、295F、295G、295H、295I、295M、295N、295P、295R、295S、295T、295V、295W、295Y、296A、296D、296E、296G、296H、296I、296K、296L、296M、296N、296Q、296R、296S、296T、296V、297D、297E、297F、297G、297H、297I、297K、297L、297M、297P、297Q、297R、297S、297T、297V、297W、297Y、298A、298D、298E、298F、298H、298I、298K、298M、298N、298Q、298R、298T、298W、298Y、299A、299D、299E、299F、299G、299H、299I、299K、299L、299M、299N、299P、299Q、299R、299S、299V、299W、299Y、300A、300D、300E、300G、300H、300K、300M、300N、300P、300Q、300R、300S、300T、300V、300W、301D、301E、301H、301Y、302I、303D、303E、303Y、304D、304H、304L、304N、304T、305E、305T、305Y、313F、317E、317Q、318H、318L、318Q、318R、318Y、320D、320F、320G、320H、320I、320L、320N、320P、320S、320T、320V、320W、320Y、322D、322F、322G、322H、322I、322P、322S、322T、322V、322W、322Y、323I、324D、324F、324G、324H、324I、324L、324M、324P、324R、324T、324V、324W、324Y、325A、325D、325E、325F、325G、325H、325I、325K、325L、325M、325P、325Q、325R、325S、325T、325V、325W、325Y、326E、326I、326L、326P、326T、327D、327E、327F、327H、327I、327K、327L、327M、327N、327P、327R、327S、327T、327V、327W、327Y、328A、328D、328E、328F、328G、328H、328I、328K、328M、328N、328P、328Q、328R、328S、328T、328V、328W、328Y、329D、329E、329F、329G、329H、329I、329K、329L、329M、329N、329Q、329R、329S、329T、329V、329W、329Y、330E、330F、330G、330H、330I、330L、330M、330N、330P、330R、330S、330T、330V、330W、330Y、331D、331F、331H、331I、331L、331M、331Q、331R、331T、331V、331W、331Y、333A、333F、333H、333I、333L、333M、333P、333T、333Y、334A、334F、334I、334L、334P、334T、335D、335F、335G、335H、335I、335L、335M、335N、335P、335R、335S、335V、335W、335Y、336E、336K、336Y、337E、337H、及び337Nからなる群から選択されるアミノ酸変異を備え得る。それらの番号付け方法は、EUインデックスに基づく。
【0120】
さらに、本発明の抗体は、発明の名称が「Fc領域の外側におけるイムノグロブリン変異体」の2005年3月24日に出願された米国特許7276585号に記載されたようにFc領域の外側にアミノ酸変異をさらに備え得る。そのアミノ酸変異は、重鎖定常領域の118、119、120、121、122、124、126、129、131、132、133、135、136、137、138、139、147、148、150、151、152、153、155、157、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、183、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、201、203、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、216、217、218、219、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235及び236の位置のアミノ酸変異を含む、及び/又は軽鎖定常領域の108、109、110、111、112、114、116、121、122、123、124、125、126、127、128、129、131、137、138、140、141、142、143、145、147、149、150、151、152、153、154、155、156、157、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、176、180、181、182、183、184、185、187、188、189、190、191、193、195、197、199、200、202、203、204、205、206、207、208、210、211、212及び213の位置のアミノ酸変異を含む。
【0121】
これらの変異は、抗体のFcγR結合特性、エフェクター機能及び潜在的臨床特性の更なる変更を許容し得る。特に、1つ又はそれ以上のヒトFc受容体への結合を変更する変異体は、本明細書に記載されるような重鎖定常領域における118K、118E、118Y、119R、119E、119Y、120R、120E、120I、121E、121Y、121H、122E、122R、124K、124E、124Y、126K、126D、129L、129D、131G、131T、132D、132R、132L、133R、133E、133L、135I、135E、135K、136E、136K、136I、137E、138S、138R、138D、139I、139E、139K、147A、147E、148Y、148K、150L、150K、150E、151A、151D、152L、152K、153L、153D、155E、155K、155I、157E、157K、157Y、159K、159D、159L、160K、160E、160Y、161D、162D、162K、162Y、163R、164R、164E、164Y、165D、165R、165Y、166D、167A、168L、169E、171G、171H、172K、172L、172E、173T、173D、174E、174K、174Y、175D、175L、176D、176R、176L、177R、177E、177Y、178D、179K、179Y、179E、180K、180L、180E、183T、187I、187K、187E、188I、189D、189G、190I、190K、190E、191D、191R、191Y、192N、192R、192L、193F、193E、194R、194D、195R、195D、195Y、196K、196D、196L、197R、197E、197Y、198L、199T、199D、199K、201E、201K、201L、203D、203L、203K、205D、205L、206A、206E、207K、207D、208R、208E、208Y、209E、209K、209Y、210L、210E、210Y、211R、211E、211Y、212Q、212K、212H、212L、212Y、213N、213E、213H、213L、213Y、214N、214E、214H、214L、214Y、216N、216K、216H、216L、216Y、217D、217H、217A、217V、217G、218D、218E、218Q、218T、218H、218L、218Y、219D、219E、219Q、219K、219T、219H、219L、219I、219Y、205A、210A、213A、214A、218A、221K、221Y、221E、221N、221Q、221R、221S、221T、221H、221A、221V、221L、221I、221F、221M、221W、221P、221G、222E、222Y、222D、222N、222Q、222R、222S、222T、222H、222V、222L、222I、222F、222M、222W、222P、222G、222A、223D、223N、223Q、223R、223S、223H、223A、223V、223L、223I、223F、223M、223Y、223W、223P、223G、223E、223K、224D、224N、224Q、224K、224R、224S、224T、224V、224L、224I、224F、224M、224W、224P、224G、224E、224Y、224A、225D、225N、225Q、225R、225S、225H、225A、225V、225L、225I、225F、225M、225Y、225P、225G、225E、225K、225W、226S、227E、227K、227Y、227G、227D、227N、227Q、227R、227S、227T、227H、227A、227V、227L、227I、227F、227M、227W、228K、228Y、228G、228D、228N、228Q、228R、228T、228H、228A、228V、228L、228I、228F、228M、228W、229S、230A、230E、230Y、230G、230D、230N、230Q、230K、230R、230S、230T、230H、230V、230L、230I、230F、230M、230W、231K、231P、231D、231N、231Q、231R、231S、231T、231H、231V、231L、231I、231F、231M、231W、232E、232K、232Y、232G、232D、232N、232Q、232R、232S、232T、232H、232A、232V、232L、232I、232F、232M、232W、233D、233N、233Q、233R、233S、233T、233H、233A、233V、233L、233I、233F、233M、233Y、233W、233G、234D、234E、234N、234Q、234T、234H、234Y、234I、234V、234F、234K、234R、234S、234A、234M、234G、235D、235S、235N、235Q、235T、235H、235Y、235I、235V、235F、235E、235K、235R、235A、235M、235W、235P、235G、236D、236E、236N、236Q、236K、236R、236S、236T、236H、236A、236V、236L、236I、236F、236M、236Y、236W及び236Pからなる群から選択されるアミノ酸変異を備え得る。これらの番号付け方法はEUインデックスに基づく。
【0122】
特に、1つ又はそれ以上のヒトFc受容体への結合を変更する変異体は、本明細書に記載されるような軽鎖定常領域における108D、108I、108Q、109D、109P、109R、110E、110I、110K、111E、111K、111L、112E、112R、112Y、114D、114I、114K、116T、121D、122R、122S、122Y、123L、123R、124E、125E、125K、126D、126L、126Q、127A、127D、127K、128N、129E、129I、129K、131T、137K、137S、138D、138K、138L、140E、140H、140K、141E、141K、142D、142G、142L、143A、143L、143R、145D、145T、145Y、147A、147E、147K、149D、149Y、150A、151I、151K、152L、152R、152S、153D、153H、153S、154E、154R、154V、155E、155I、155K、156A、156D、156R、157N、158D、158L、158R、159E、159K、159L、160K、160V、161K、161L、162T、163E、163K、163T、164Q、165K、165P、165Y、166E、166M、166S、167K、167L、168K、168Q、168Y、169D、169H、169S、170I、170N、170R、171A、171N、171V、172E、172I、172K、173K、173L、173Q、174A、176T、180E、180K、180S、181K、182E、182R、182T、183D、183L、183P、184E、184K、184Y、185I、185Q、185R、187K、187Y、188E、188S、188Y、189D、189K、189Y、190E、190L、190R、191E、191R、191S、193E、193K、193S、195I、195K、195Q、197E、197K、197L、199E、199K、199Y、200S、202D、202R、202Y、203D、203L、203R、204T、205E、205K、206E、206I、206K、207A、207E、207L、208E、208K、208T、210A、210E、210K、211A、211E、211P、212E、212K、212T、213L及び213Rからなる群から選択されるアミノ酸変異を備え得る。これらの番号付け方法は、EUインデックスに基づく。
【0123】
本発明において用いられ得る更なる置換は、Fc受容体に対する親和性、FcγR媒介エフェクター機能、及び/又は補体媒介エフェクター機能を変更する他の置換を含み、それは、以下のものに限られないが、298A、298T、326A、326D、326E、326W、326Y、333A、333S、334L及び334A(US 6,737,056; Shields等.Journal of BiologicalChemistry, 2001 , 276(9):6591-6604; US 6,528,624; ldusogie等.2001 , J. Immunology 166:2571-2572)、247L、255L、270E、392T、396L及び421K (USSN 10/754,922; USSN 10/902,588)、並びに280H、280Q及び280Y (USSN 10/370,749)を含む。
【0124】
他の実施形態において、本発明の抗体は、FcRn結合を変更する定常重鎖変異体を備え得る。それらは、pH特異的にFcRnへの親和性を変更する変異を含む。特に、FcRnに結合するFcを増大する変異体は、以下のものに限られないが、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton等.2004, J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216, Hinton等. 2006 Journal of Immunology 176:346- 356,USSN 11/102621 , PCT/US2003/033037, PCT/US2004/01 1213, USSN10/822300, USSN 10/687118, PCT/US2004/034440, USSN 10/966673)、256A、272A、286A、305A、307A、311A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shields等, Journal of BiologicalChemistry, 2001 , 276(9):6591-6604, USSN 10/982470, US6737056, USSN 11/429793,USSN 11/429786, PCT/US2005/029511 , USSN 11/208422)、252F、252T、252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、311S、433R、433S、4331、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、308T/309P/311S(Dall Acqua等. Journal of Immunology, 2002,169:5171-5180, US7083784, PCT/US97/03321, US6821505, PCT/US01/48432, USSN11/397328)、257C、257M、257L、257N、257Y、279E、279Q、279Y、281の後にセリンが挿入、283F、284E、306Y、307V、308F、308Y 311V、385H、385N、(PCT/US2005/041220, USSN 11/274065, USSN11/436,266) 、204D、284E、285E、286D及び290E (本明細書に参照として援用されるPCT/US2004/037929)を含む。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態において、抗体は、アイソタイプの変異、すなわち、代替IgGのアミノ酸型への親IgGの変異を含み得る。
【0126】
本発明は、治療に関連する特性の多くに最適な変異抗体を提供する。変異抗体は、親抗体に対して1つ又はそれ以上のアミノ酸変異を含み、そのアミノ酸変異は、1つ又はそれ以上の最適化された特性を提供する。従って、本発明の抗体は、変異抗体である。本発明の抗体は、少なくとも239D及び332Eの2つのアミノ酸変異によって、その親抗体のアミノ酸配列とは異なる。さらに、本発明の変異抗体は、親抗体と比較して、前記の2つのアミノ酸変異よりも多くのアミノ酸変異、例えば、親抗体と比較して約3〜50個のアミノ酸変異、また、約3〜10個のアミノ酸変異又は約3〜5個のアミノ酸変異を含み得る。従って、変異抗体の配列と親抗体の配列とは、実質的に相同性を有する。例えば、本明細書における変異抗体の配列は、親抗体の配列と約90%の相同性を有し、また、少なくとも約95%の相同性を有し得る。
【0127】
本発明の抗体は、親抗体と比較して最適化されたエフェクター機能特性を提供するアミノ酸変異を含み得る。置換、及び最適化されたエフェクター機能特性は、米国特許出願2004-0132101, PCT出願 US03/30249, 及び米国特許 7,317,091 10/822,231に記載されている。最適化された特性は、以下のものに限られないが、増強又は低減されたFcγRに対する親和性を含む。一実施形態において、本発明の抗体は、ヒト活性化FcγR、例えばFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、FcγRIIIa及びFcγRIIIbに対する増強された親和性を有するように最適化されている。一実施形態において、本発明の抗体は、ヒトFcγRIIIaに対する増強された親和性を有するように最適化されている。代替の実施形態において、その抗体は、ヒト阻害性受容体FcγRIIbに対する低減された親和性を有するように最適化されている。これらの実施形態は、ヒトにおける増強された治療特性、例えば増強されたエフェクター機能及びより強い抗癌効力を有する抗体を提供することが期待される。
【0128】
他の実施形態において、本発明の抗体は、1つ又はそれ以上のFcγRsに対する増強された親和性、反対に1つ又はそれ以上の他のFcγRsに対する低減された親和性を提供する。例えば、本発明の抗体は、FcγRIIIaとの結合を増強し、反対にFcγRIIbとの結合を低減し得る。また、本発明の抗体は、FcγRIIa及びFcγRIとの結合を増強し、反対にFcγRIIbとの結合を低減し得る。
【0129】
本発明の変異は、1つ又はそれ以上のFcγRsに対する結合親和性を増強し得る。本明細書において用いられる親イムノグロブリンに対して「より強い親和性」、「改良された親和性」「増強された親和性」又は「より良い親和性」とは、結合アッセイにおける変異体及び親ポリペプチドの量が実質的に同一である場合に、親ポリペプチドに対して顕著に高い平衡定数の結合(Ka)又は顕著に低い平衡定数の解離(Kd)でFc変異体がFc受容体に結合することを意味する。例えば、改良されたFcγR結合親和性を有するFc変異体は、親ポリペプチドと比較して、Fc受容体結合親和性が約5倍〜約1000倍、例えば約500倍の向上を示し得る。このとき、Fc受容体結合親和性は本技術分野において周知の方法により測定される。従って、本明細書において用いられる親Fcポリペプチドと比較して「低減された親和性」とは、親ポリペプチドよりも顕著に低いKa又は顕著に高いKdでFc変異体がFc受容体に結合することを意味する。
【0130】
実施形態では、ヒトFcγRに結合するFcの最適化を含むが、代替の実施形態において、本発明の抗体は、齧歯動物及びヒト以外の霊長類等の非ヒトの生物由来のFcγRsに対する増強された親和性又は低減された親和性を有する。非ヒトFcγRへの結合が最適化された抗体は、実験に用いられ得る。例えば、マウスモデルは、種々の病気に適応でき、所定の薬剤候補の有効性、毒性及び薬物動態等の特性の試験を可能とする。本技術分野において周知なように、癌細胞は、ヒトの癌を模擬するためにマウスに移植又は注入され得る。これは、異種移植と呼ばれる。1つ又はそれ以上のマウスFcγRsに対して最適化された抗体を備えた抗体の試験は、タンパク質の有効性及びその作用メカニズム等に関する重要な情報を提供し得る。本発明の抗体は、非グリコシル化型の増強された機能性及び/又は溶液物性が最適化され得る。一実施形態において、本発明の非グリコシル化抗体は、親抗体の非グリコシル化型よりも強い親和性でFcリガンドに結合する。Fcリガンドは、以下のものに限られないが、FcγRs、C1q、FcRn並びにプロテインA及びGを含み、ヒト、マウス、ラット、ウサギ又はサル等を含む生物由来であってもよい。代替の実施形態において、抗体は、親抗体の非グリコシル化型よりも安定且つ/又は可溶性となるように最適化されている。
【0131】
本発明の抗体は、以下のものに限られないが、補体タンパク質、FcRn及びFc受容体ホモログ(FcRHs)を含むFcγRs以外のFcリガンドとの相互作用を調整する変異を含み得る。FcRHは、以下のものに限られないが、FcRH1、FcRH2、FcRH3、FcRH4、FcRH5及びFcRH6を含む(Davis等, 2002, Immunol.Reviews 190:123-136)。
【0132】
本発明の抗体は、エフェクター機能自体には特に関連しない最適化された特性を提供する1つ又はそれ以上の変異を備え得る。その変異は、酵素的又は化学的になされたアミノ酸変異であってもよい。そのような変異は、例えば、その安定性、可溶性、機能又は臨床的用途の向上といった抗体の改良を提供するだろう。本発明では、更なる変異を本発明の抗体に付加することにより、形成される種々の改善が期待される。
【0133】
一実施形態において、本発明の抗体の可変領域は、十分な親和性を有し、すなわち、アミノ酸変異は、その標的抗原に対する抗体の結合を増強するために、抗体のVH及び/又はVLドメインに形成される。そのような変異の型は、標的抗原に対する結合のための結合及び/又は解離動態を改善し得る。他の変異は、標的抗原と代替抗原との選択性を改善する変異を含む。それらは、標的細胞と非標的細胞とのそれぞれに発現された抗原に対する選択性を改善する変異を含む。標的認識特性の他の改善は、更なる変異により提供され得る。そのような特性は、以下のものに限られないが、特定の動態特性(すなわち、結合及び解離特性)、特定の標的と代替の標的との選択性、及び特定の標的型と代替の型との選択性を含み得る。例としては、全長とスプライス変異体、細胞表面と可溶型、種々の多型変異体の選択性、又は標的抗原の特定の配座型の選択性を含む。
【0134】
本発明の抗体は、抗体の低減又は増強された内部移行を提供する1つ又はそれ以上の変異を提供し得る。一実施形態において、本発明の抗体は、1つ又はそれ以上のFcリガンドとの相互作用を介して起こる抗体の細胞内移行を低減するために更なる変異を用いられ得る又は組み合わせられ得る。この特性は、本発明の抗体のエフェクター機能を増強し、免疫原性を潜在的に低減することが期待され得る。また、本発明の抗体は、1つ又はそれ以上のFcリガンドとの相互作用を介して起こる抗体の細胞内移行を増強するために、更なる変異が直接に用いられ得る又は組み合わせられ得る。
【0135】
一実施形態において、変異は、以下のものに限られないが、安定性、可溶性及びオリゴマー状態を含む本発明の抗体の生物物理学的特性を改善するために行われる。変異は、例えば、より強い安定性を提供する等のために抗体のより好ましい分子内相互作用を提供する置換、又はより高い可溶性のために極性アミノ酸を用いた露出された非極性アミノ酸の置換を含み得る。多くの最適化の目的及び方法は、米国特許出願2004-0110226に記載され、それは、本発明の抗体をさらに最適化するための更なる変異を設計するために用いられ得る。本発明の抗体は、腫瘍への侵入が増強される、又はインビボにおける除去率が所望の通り増加するように、オリゴマーの状態又はサイズを低減する更なる変異が組み合わせられ得る。
【0136】
本発明の抗体における他の変異は、特定の構造、又はホモ二量体若しくはホモ多量体分子を可能とする変異を含む。そのような変異は、以下のものに限られないが、共有結合性のホモ二量体又はホモ多量体を生成するためのメカニズムを提供し得る設計されたジスルフィド、及び化学的変異又は集合法を含む。例えば、そのような分子の設計方法及び組成は、Kan等. 2001 , J. Immunol.2001 , 166: 1320-1326; Stevenson等., 2002, RecentResults Cancer Res. 159 104-12; US 5,681 ,566; Caron等.,1992, J. Exp. Med. 176:1191-1195, 及びShopes, 1992, J. Immunol. 148(9):2918-22に記載されている。本発明の変異体における更なる変異は、特定の構造、又はヘテロ二量体、ヘテロ多量体、二機能性及び/若しくは多機能性分子を可能とする変異を含む。そのような変異は、以下のものに限られないが、CH3ドメインにおける1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を含み、その置換は、ホモ二量体の構造を低減し、ヘテロ二量体構造を増大する。例えば、そのような分子の設計方法及び組成は、Atwell等. 1997, J. Mol. Biol. 270(l):26-35, 及びCarter等.2001 , J. Immunol. Methods248:7-15に記載され、それぞれ本明細書に参照として援用される。更なる変異は、ヒンジ及びCH3ドメインに変異を含み、その変異は、二量体を形成するための性質を低減する。
【0137】
更なる実施形態において、本発明の抗体は、タンパク質分解性の分解部位を除去する変異を備えている。それらは、例えば、生成収率を低減するプロテアーゼ部位、及びインビボにおいて投与されたタンパク質を分解するプロテアーゼ部位を含み得る。一実施形態において、更なる変異は、アミド分解(すなわち、グルタミル及びアスパルチル残基に対応するグルタミニル及びアスパラギニル残基のアミド分解)、酸化及びタンパク質分解性の分解部位等の共有結合の分解部位を除去する。除去することが特に有利なアミド分解部位は、アミド分解の性質を増強させる部位であり、以下のものに限られないが、後にグリシンが続くアスパラギニル及びグルタミル残基(それぞれNG及びQGモチーフ)を含む。そのような場合において、どちらかの残基の置換は、アミド分解の性質を顕著に低減する。一般的な酸化部位は、メチオニン及びシステイン残基を含む。導入又は除去のいずれかを用い得る他の共有結合性修飾は、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基の水酸基のリン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のアミノ基のメチル化(T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W. H.Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983))、N末端アミンのアセチル化、及びC末端カルボキシル基のアミド化を含む。また、更なる変異は、以下のものに限られないが、N結合型又はO結合型グリコシル化及びリン酸化等の翻訳後の変異を含み得る。
【0138】
変異は、生物学的な生成のために一般に用いられるホスト又はホスト細胞からの発現及び/又は生成収率を改良する変異を含み得る。それらは、以下のものに限られないが、種々の細胞株(例えばCHO)、酵母細胞株、バクテリア細胞株及び植物を含む。更なる変異は、鎖間ジスルフィド結合を形成するために、重鎖の能力を除去又は低減する変異を含む。更なる変異は、鎖内ジスルフィド結合を形成するために、重鎖の能力を除去又は低減する変異を含む。
【0139】
本発明の抗体は、例えば、Cropp及びShultz,2004, Trends Genet. 20(12):625-30, Anderson 等. 2004,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101 (2):7566-71, Zhang等.2003, 303(5656):371-3, 並びにChin等.2003, Science 301(5635):964-7、に記載された方法等を含むシュルツ等により開発された技術を用いて作られた非天然のアミノ酸の使用を含む変異を備え得る。いくつかの実施形態において、それらの変異は、上記の種々の機能的、生物物理学的、免疫学的又は製造特性の操作を可能とする。更なる実施形態において、これらの変異は、他の目的のための付加的な化学的修飾を可能とする。他の変異は、本明細書において考えられる。例えば、抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの共重合体等の種々の非タンパク質性のポリマーの1つに結合され得る。更なるアミノ酸変異は、抗体の特異的又は非特異的な化学的な又は翻訳後の修飾を可能とされ得る。そのような変異は、以下のものに限られないが、PEG化及びグリコシル化を含む。PEG化を可能とするために用いられ得る特定の置換は、以下のものに限られないが、効率的かつ特異的な結合化学がPEG又は他のポリマー部分を付加するために用いられ得るような、新規のシステイン残基又は非天然アミノ酸の導入を含む。特定のグリコシル化部位の導入は、本発明の抗体の中に新規のN−X-T/S配列を導入することにより達成され得る。
【0140】
抗体の共有結合性修飾は、本発明の範囲内に含まれ、一般的であるが、常にではなく、翻訳後に行われる。例えば、抗体の共有結合性修飾のいくつかの型は、選択された側鎖、N末端又はC末端の残基と反応できる有機誘導体化剤と抗体の特定のアミノ酸残基とを反応することによって、分子の中に導入される。
【0141】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体の共有結合性修飾は、1つ又はそれ以上のラベルの付加を備えている。「標識された基」の用語は、検出可能なラベルである。いくつかの実施形態において、標識化された基は、潜在的な立体障害を低減するために種々の長さのスペーサーアームを介して抗体に結合されている。タンパク質の標識化のための種々の方法は、本技術分野において周知であり、本発明の実施において用いられ得る。一般に、ラベルは試験に基づいて種々のクラスに分類される。それらは、試験で検出されるものであり、a)放射性又は重同位体である同位体ラベル、b)磁気ラベル(例えば磁気粒子)、c)レドックス活性成分、d)光学色素、酵素群(例えば、西洋ワサビペルオキシターゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェリン又はアルカリホスファターゼ)、e)ビオチン化群、及びf)二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体結合部位、金属結合ドメイン又はエピトープタグ等)である。いくつかの実施形態において、標識された基は、潜在的な立体障害を低減するために種々の長さのスペーサーアームを介して抗体に結合されている。タンパク質を標識するための種々の方法は、本技術分野において周知であり、本発明の実施において用いられ得る。特定のラベルは、以下のものに限られないが、クロモフォア、ホスフォア及びフルオロフォアを含む光学色素を含み、後者は多くの例で特定される。フルオロフォアは、「低分子」蛍光又はタンパク質性蛍光のいずれかであることができる。「蛍光性ラベル」とは、その特有の蛍光特性を介して検出され得る分子を意味する。
【0142】
一実施形態において、本発明の抗体は、抗体「融合タンパク質」であり、本明細書では時々「抗体結合体」という。融合のパートナー又は結合のパートナーは、タンパク質性又は非タンパク質性であり、後者は一般に、抗体及び結合のパートナーにおける官能基を用いて生成される。結合及び融合のパートナーは、低分子化合物及びポリペプチドを含む分子であってもよい。例えば、種々の抗体結合体及び方法は、Trail等. 1999, Curr.Opin. Immunol. 11 :584-588に記載されている。可能性がある結合のパートナーは、以下のものに限られないが、サイトカイン、細胞毒性薬、毒素、放射性同位体、化学療法剤、抗血管形成剤、チロシンキナーゼ阻害剤及び他の治療的活性剤を含む。いくつかの実施形態において、結合のパートナーは、多くがペイロードと考えられ、すなわち、結合体の目的は、抗体により、例えば癌細胞又は免疫細胞等の標的とされた細胞に結合のパートナーを標的導入することである。従って、例えば、抗体に対する毒素の結合は、標的抗原を発現する細胞に毒素を導入することを狙う。当業者により認められるように、実際には、融合体及び結合体の概念及び定義は、重なっている。融合体又は結合体としての抗体の命名は、本発明の特定の実施形態でそれを制限することを意味しない。むしろ、これらの用語は、本発明の抗体が所望の特性を提供するために、遺伝的、化学的又はそれら以外で1つ又はそれ以上のポリペプチド又は分子に結合され得ることの広い概念を伝えるために大まかに用いられる。
【0143】
適当な結合体は、以下のものに限られないが、以下に記載するようなラベル、薬剤、及び細胞毒性薬(例えば化学療法剤)、毒素又は毒素等の活性断片等を含む細胞毒性剤を含む。適当な毒素及びそれらに対応する断片は、ジフテリアA鎖、エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン及びエノマイシン等を含む。細胞毒性剤は、抗体に放射性同位体を結合すること、又は抗体に共有結合的に付加されたキレート化剤に放射性核種を結合することにより形成された放射化学体を含む。更なる実施形態では、カリチアマイシン、アウンスタチン(aunstatins)、ゲルダナマイシン、マイタンシン及びデュオカルマイシン並びに類似体を用い、後者のために、米国特許出願2003/0050331を参照できる。
【0144】
維持実施形態において、本発明の抗体は、サイトカインと融合又は結合されている。本明細書において用いられる「サイトカイン」とは、一細胞群により放出され、細胞間媒介物として他の細胞に作用するタンパク質をいう一般的な用語である。例えば、Penichet等. 2001, JImmunol Methods 248-91-101に記載されているように、サイトカインは、種々の所望の特性を提供するための抗体に融合され得る。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン及び伝統的なポリペプチドホルモンである。ヒト成長ホルモン、Nメチオニルヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン等の成長ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシン、プロリラキシン、濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモン(LH)等のグリコプロテインホルモン、肝細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、腫瘍壊死因子アルファ及びベータ、ミュラー管抑制因子、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮細胞増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、NGFβ等の神経成長因子、血小板成長因子、TGFアルファ及びベータ等のトランスフォーミング成長因子、インスリン様成長因子I及びII、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導性因子、インターフェロンアルファ、ベータ及びガンマ等のインターフェロン、マクロファージCSF(M−CSF)、顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)及び顆粒球CSF(G−CSF)等のコロニー刺激因子(CSF)、IL−1、IL−1アルファ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15等のインターロイキン(ILs)、TNFアルファ又はTNFベータ等の腫瘍壊死因子、C5a、並びにLIF及びkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子がサイトカインに含まれる。本明細書で用いられるように、サイトカインという用語は、天然由来又は細胞培養による組み換え由来のタンパク質、及び天然の配列のサイトカインの生物活性のある同等物を含む。
【0145】
代替の実施形態において、本発明の抗体は、以下のものに限られないが、断片及び/又はそれらの変異体を含む、細菌、菌、植物又は動物由来の低分子毒素及び酵素活性毒素を含む毒素に融合、結合又は操作可能に接続されている。例えば、種々の免疫毒素及び免疫毒方法は、Thrush等. 1996, Ann. Rev. Immunol.14:49-71に記載されている。低分子毒素は、以下のものに限られないが、カリチアマイシン、マイタンシン(US52008020)、トリコセン及びCC1065を含む。本発明の一実施形態において、抗体は、1つ又はそれ以上のマイタンシン分子に結合される(例えば、1抗体分子中に対して約1〜約10分子のマイタンシン分子)。マイタンシンは、例えば、May−SH3になり、マイタンシン−抗体結合体を生成するために変異抗体(Chan等. 1992, Cancer Research 52 127-131)と反応し得るMay−SS−Meに変換され得る。興味深い他の結合体は、1つ又はそれ以上のカリチアマイシンに結合された抗体を含む。抗生物質のカリチアマイシンファミリーは、サブピコモル濃度において二本鎖DNAの切断を可能とする。用いられ得るカリチアマイシンの構造的類似体は、例えば、Hinman 等. 1 93, Cancer Research 53 3336-3342, Lode 等,1998, Cancer Research 58 2925-2928, US 5,714,586; US 5,712,374, US 5,264,586; 及び US 5,773,001に記載されている。アウリスタチンE(AE)及びモノメチルアウリスタチンE(MMAE)等のドラスタチン10類似体は、本発明の抗体と結合させるために用いられ得る(Doronina等. 2003,Nat Biotechnol 21(7):778-84; Francisco 等. 2003 Blood 102(4): 1458-65)。有益な酵素活性毒素は、以下のものに限られないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌由来の)エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファサルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、ツルレイシ阻害因子、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス阻害因子、ゲロニン、ミトギリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンを含む。例えば、国際公開93/21232を参照できる。本発明は、さらに、本発明の抗体と、例えばリボヌクレアーゼ又はデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)等のDNAエンドヌクレアーゼといった核酸分解活性を有する化合物との結合体が考えられる。
【0146】
代替の実施形態において、本発明の抗体は、放射性結合体を形成するために、放射性同位体に融合、結合又は操作可能に接続され得る。種々の放射性の同位体は、放射性結合体抗体を生成するために利用される。その例は、以下のものに限られないが、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体を含む。
【0147】
さらに他の実施形態において、本発明の抗体は、腫瘍の前標識に利用するためにストレプトアビジン等の「受容体」に結合し得る。その抗体と受容体との結合体は、患者に投与され、続いて、清澄剤を用いて循環から非結合の結合体が除去され、細胞毒性剤(例えば放射性ヌクレオチド)に結合された「リガンド」(例えばアビジン)が投与される。代替の実施形態において、抗体は、抗体誘導性酵素プロドラッグ療法(ADEPT)を用いるために酵素に結合され、又は操作可能に接続される。ADEPTは、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、本明細書に参照として援用される国際公開81/01145を参照)を活性化抗癌薬に変換するプロドラッグ活性化酵素に抗体を、結合又は操作可能に接続することにより用いられ得る。例えば、それぞれ本明細書に参照として援用される国際公開88/07378又は米国特許 4,975,278を参照できる。ADEPTに有益な免疫結合体の酵素組成物は、それをより活性した細胞毒型に変換するために、そのような方法で、プロドラッグに作用可能な酵素を含む。本発明の方法に有益な酵素は、以下のものに限られないが、リン酸塩を含むプロドラッグを遊離型薬物に変換するのに有益なアルカリホスファターゼ、硫酸塩を含むプロドラッグを遊離型薬物に変換するのに有益なアリルスルファターゼ、毒性が無い5−フルオロシトシンを抗癌薬の5−フルオロウラシルに変換するのに有益なシトシンデアミナーゼ、ペプチドを含むプロドラッグを遊離型薬物に変換するのに有益なセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(カテプシンB及びL等)等のプロテアーゼ、D−アミノ酸置換基を含むプロドラッグを変換するのに有益なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ、グリコシル化プロドラッグを遊離型薬物に変換するのに有益なベータガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼ等の炭水化物切断酵素、アルファラクトンを用いて誘導体化された薬物を遊離型薬物に変換するのに有益なベータラクタマーゼ、並びにフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基を用いてそれらのアミン窒素で誘導体化された薬物をそれぞれ遊離型薬物に変換するのに有益なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼ等のペニシリンアミダーゼを含む。また、本技術分野において「アブザイム」として知られている酵素活性を有する抗体は、本発明のプロドラッグを遊離型薬物に変換するのに用いられ得る(例えば、本明細書に参照として援用されるMassey, 1987, Nature 328. 457-458を参照。)抗体−アブザイム結合体は、腫瘍細胞群にアブザイムを送るために調製され得る。種々の付加的な結合体は、本発明の抗体が考えられる。種々の化学療法剤、抗血管形成剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及び他の治療剤は、以下に記載され、それらは抗体結合体として用いられ得る。
【0148】
融合及び結合のパートナーとしては、Fcポリペプチドも考えられる。従って、抗体は、2つ又はそれ以上のFc領域を備えた多量体Fcポリペプチドであってもよい。そのような分子の利点は、単一のタンパク質分子でFc受容体のための複数の結合部位を提供することである。一実施形態において、Fc領域は、化学的な設計アプローチを用いて結合され得る。例えば、Fab’s及びFc’sは、ヒンジにおけるシステイン残基に由来するチオエーテル結合により結合され得る。これによりFabFc等の分子が生成される。Fc領域は、ジスルフィド設計及び/又は化学的架橋を用いて結合され得る。一実施形態において、Fc領域は、遺伝学的に結合され得る。一実施形態において、発明の名称が「新規のFcリガンド結合部位を有するFcポリペプチド」の米国特許出願2005−0249723号に記載されるように、抗体におけるFc領域は、タンデムに結合されたFc領域が生成されるように遺伝学的に結合される。タンデムに結合されたFcポリペプチドは、2つ又はそれ以上のFc領域、例えば1つから3つ又は2つ等のFc領域を含み得る。それは、最も有利な構造及び機能的特性を有するホモ又はヘテロのタンデムに結合された抗体を得るために、多くの設計した構築物を調べるのに有利となり得る。タンデムに結合された抗体は、ホモのタンデムに結合された抗体であってもよく、すなわち、一抗体の一つのアイソタイプは、他抗体の同一のアイソタイプと遺伝学的に融合されている。タンデムに結合されたFcポリペプチドにおける多量体FcγR、C1q及び/又はFcRn結合部位があるため、エフェクター機能及び/又は薬物動態は増強され得ることが予想される。代替の実施形態において、種々のアイソタイプの抗体は、タンデムに結合され、それは、ヘテロのタンデムに結合された抗体という。例えば、FcγR及びFcγR1受容体を標的とできるため、FcγRs及びFcγRIの両方に結合する抗体は、堅調な臨床的改善を提供し得る。
【0149】
融合及び結合のパートナーは、本発明の抗体の、N若しくはC末端を含むいずれかの領域、又は末端同士の間におけるいずれかの残基に結合し得る。一実施形態において、融合又は結合のパートナーは、抗体のN又はC末端、例えばN末端に結合される。種々のリンカーは、融合又は結合のパートナーに抗体を共有結合的に結合するために、本発明における用いられ得る。本明細書において、「リンカー」、「リンカー配列」、「スペーサー」、「テザリング配列」又はそれらと文法的に同等なものは、2つの分子を接続し、所望の配座に2つの分子を配置するように作用する分子又は分子の基(モノマー又はポリマー等)を意味する。リンカーは、本技術分野において周知であり、例えばホモ又はヘテロの二機能性リンカーが良く知られている(1994 Pierce Chemical Company catalog, technical section oncross-linkers, pages 155-200を参照)。多くの方法は、分子同士を共有結合的に結合するために用いられ得る。それらは、以下のものに限られないが、タンパク質又はタンパク質ドメインのN末端とC末端との間のポリペプチド結合、ジスルフィド結合を介した結合、並びに化学的架橋剤を介した結合を含む。この実施形態の一態様において、リンカーは、組み換え技術又はペプチド合成により生じるペプチド結合である。リンカーは、柔軟性を提供するアミノ酸残基を含み得る。従って、リンカーペプチドは、Gly、Ser、Ala又はThrのアミノ酸残基を主に含む。リンカーペプチドは、2つの分子が所望の活性を維持するように、互いに正しい構造をとる方法で2つの分子を結合するのに十分な長さを有するべきである。この目的のために適当な長さは、少なくとも1つ、多くとも50個のアミノ酸残基を含む。一実施形態において、リンカーは、長さで約1〜30のアミノ酸、望ましくは長さで約1〜20のアミノ酸である。有益なリンカーは、当業者に理解されるように、グリシン−セリンポリマー(例えば、(GS)、(GSGGS)、(GGGGS)及び(GGGS)であり、ここで、nは少なくとも1つの整数である)、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー及び他の柔軟なリンカーを含む。また、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン又はポリエチレングリコールの共重合体等を含む種々の非タンパク質性ポリマーは、本発明の抗体を融合若しくは結合パートナーと結合する、又は本発明の抗体を結合体に結合するために用いることが可能なリンカーとして用いられ得る。
【0150】
本発明は、抗体を生成する、及び実験的に試験するための方法を提供する。記載された方法は、本発明を実施における特定の適用又は理論に限定することを意味しない。むしろ、記載された方法は、1つ又はそれ以上の抗体が変異抗体を得るために生成され、実験的に試験され得ることの一般的な説明であることを意味する。発生、精製及びスクリーニングといった抗体の分子生物学的な通常の方法は、Antibody Engineering, Duebel及び Kontermann編,Springer- Verlag, Heidelberg, 2001 , Hayhurst及びGeorgiou, 2001 , Curr Opin ChemBiol 5 683-689; Maynard及びGeorgiou,2000, Annu Rev Biomed Eng 2 339-76, Antibodies. A Laboratory Manual Harlow及びLane, New York: Cold Spring HarborLaboratory Press, 1988に記載されている。
【0151】
本発明の一実施形態において、核酸は、本発明の抗体をコードするように作製され、望むならば、ホスト細胞の中で複製され、発現され、また、試験され得る。従って、核酸、特にDNAは、それぞれタンパク質配列をコードするように作製され得る。これらは、周知の方法を用いて実施される。例えば、本発明において用いられ得る種々の方法は、Molecular Cloning - A Laboratory Manual, 第3版.(Maniatis, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York,2001) 、並びにCurrent Protocols in Molecular Biology(John Wiley及びSons)に記載されている。当業者に理解されるように、多くの配列を備えたライブラリのための完全系列を生成することは、非常にコストがかかり、時間を消費する。本明細書において「ライブラリ」とは、以下のものに限られないが、精製型又は未精製型のいずれかの核酸若しくはアミノ酸配列のリスト、可変部位における核酸若しくはアミノ酸置換のリスト、ライブラリ配列をコードする核酸を備えた物理的ライブラリ、又は変異タンパク質を備えた物理的ライブラリを含むいずれかの型における1組の変異体を意味する。従って、本発明のライブラリを効率的に生成するために用いられ得る技術は数多くある。本発明において用いられ得るそのような方法は、米国特許6,403,312号;米国特許出願2002-0048772号, 米国特許7,315,786号;米国特許出願2003-0130827号, 国際公開01/40091号又は国際公開02/25588号に記載される又は参照される。そのような方法は、以下のものに限られないが、遺伝子構築法、PCRに基づく方法及びPCRの変法を用いる方法、リガーゼ連鎖反応に基づく方法、合成シャフリングに用いられる方法等のオリゴプール法、エラープローン増幅法及びランダム変異を有するオリゴを用いる方法、古典的な部位特異的変異誘発法、カセット変異導入、並びに他の増幅及び遺伝子合成方法を含む。当業者に周知なように、遺伝子構築、変異誘発及びベクターサブクローニング等のための商業的に入手可能なキット及び方法は数多くある。そのような市販の製品は、抗体をコードする核酸を生成するために、本発明において用いられ得る。
【0152】
本発明の抗体は、例えば、その抗体をコードする核酸を含む発現ベクターといった核酸を用いて形質転換されたホスト細胞を、タンパク質の発現を誘導する又は引き起こすために適当な状態で培養することにより生成され得る。発現に適当な状態は、発現ベクター及びホスト細胞の選択で異なり、それはルーチン実験を通して当業者に容易に確認される。種々のホスト細胞は、以下のものに限られないが、哺乳動物細胞、細菌、昆虫細胞及び酵母等が用いられ得る。例えば、本発明において用いられ得る種々の細胞株は、American Type Culture Collectionから入手できるATCC細胞株カタログに記載されている。
【0153】
一実施形態において、抗体は、レトロウィルス又はアデノウィルス等のウィルスを用いて哺乳動物細胞の中に発現コンストラクトを導入する系を含む哺乳動物発現系で発現される。哺乳動物細胞には、例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター又は霊長類等が用いられ得る。適当な細胞は、以下のものに限られないが、ジャーカットT細胞、NIH3T3、CHO、BHK、COS、HEK293、PERC6、HeLa、Sp2/0、NSC細胞及びそれらの変異体を含む公知の研究用細胞を含む。細菌性発現系は、本技術分野において周知であり、Escherichia coli (E. coli). Bacillus subtilis,Streptococcus cremoris, 及びStreptococcuslividansを含む。代替の実施形態において、抗体は、昆虫細胞(例えばsf21/sf9)又は酵母細胞(例えばs.cerevisiae, Pichia, 等)で生成される。代替の実施形態において、抗体は、無細胞翻訳系を用いてインビトロで発現される。原核生物(例えばE.coli)及び真核生物(例えば小麦胚芽又はウサギ網状赤血球)細胞由来のインビトロ翻訳系が利用可能であり、それは、関心があるタンパク質の発現レベル及び機能的特性に基づいて選択され得る。例えば、当業者に理解されるように、インビトロ翻訳は、例えば、リボソームディスプレイといったディスプレイ技術に必要である。さらに、抗体は、化学合成法により生成され得る。また、動物(例えばウシ、ヒツジ若しくはヤギのミルク、発育鶏卵、又は全体の昆虫の幼虫等)及び植物(例えばトウモロコシ、タバコ又はウキクサ等)の両方でのトランスジェニック発現系によっても生成され得る。本発明の抗体をコードする核酸は、タンパク質を発現するために発現ベクターに組み込まれ得る。種々の発現ベクターは、タンパク質発現に有益である。発現ベクターは、染色体外自己複製ベクター、又はホストゲノムの中に組み込まれるベクターを含み得る。発現ベクターは、ホスト細胞の型に適合されるように構築される。従って、本発明において用いられる発現ベクターは、以下のものに限られないが、哺乳動物細胞、細菌、昆虫細胞、酵母及びインビトロ系でタンパク質発現が可能なベクターを含む。本技術分野において公知なように、種々の発現ベクターは、商業的又は他の方法で入手可能であり、抗体を発現するために本発明において用いられ得る。
【0154】
発現ベクターは、通常、調節又は制御配列、選択マーカー、いくつかの融合パートナー、及び/又は付加要素と操作可能に結合されたタンパク質を備えている。本明細書において「操作可能に結合された」とは、核酸が、機能的に関連する他の核酸配列の中に配置されることを意味する。一般に、それらの発現ベクターは、抗体をコードする核酸に操作可能に結合された転写及び翻訳を制御する核酸を含み、また、通常、タンパク質を発現するために用いられるホスト細胞に適合する。一般に、転写及び翻訳を制御する配列は、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、及びエンハンサー又はアクチベーター配列を含み得る。本技術分野において周知なように、発現ベクターは、一般に、発現ベクターを含む形質転換されたホスト細胞を選択するための選択遺伝子又はマーカーを含む。選択遺伝子は、本技術分野において周知であり、用いられるホスト細胞によって異なる。
【0155】
抗体は、発現されたタンパク質の標的化、精製、スクリーニング及びディスプレイ等を可能とするために融合パートナーと操作可能に結合され得る。融合パートナーは、リンカー配列を介して抗体配列に結合され得る。一般に、より長いリンカーが用いられ得るが、リンカー配列は、少数のアミノ酸、通常、10個よりも少ないアミノ酸を含む。一般に、リンカー配列は、柔軟で、分解に対する耐性を有するように選択される。当業者に理解されるように、種々の配列のいずれかは、リンカーとして用いられ得る。例えば、一般的なリンカー配列は、GGGGSのアミノ酸配列を含む。融合パートナーは、所望の細胞部位又は細胞外培地に抗体及び結合された融合パートナーを向けるターゲティング又はシグナル配列であってもよい。本技術分野において周知なように、特定のシグナル配列は、成長培地の中、又は細胞膜の内側と外側との間に位置する周辺質の空間の中に分泌されるようにタンパク質を標的とし得る。融合パートナーは、精製及び/又はスクリーニングが可能であるペプチド又はタンパク質をコードする配列であってもよい。そのような融合パートナーは、以下のものに限られないが、ポリヒスチジンタグ(His-tags)(例えば、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)システム(例えばNi2+親和性カラム))、GST融合体、MBP融合体、ストレプトタグ、細菌性酵素BirAのBSPビオチン標識標的配列、並びに抗体により標的化されたエピトープタグ(例えばc−mycタグ及びflagタグ等)を含む。当業者により理解されるように、そのようなタグは、精製のため若しくはスクリーニングのため、又はそれら両方のために有益であり得る。例えば抗体は、Ni2+親和性カラムにそれを固定化することにより、Hisタグを用いて精製されてもよく、その精製後に、同一のHisタグは、ELISA又は他の(以下に示すような)結合試験を行うために、Ni2+がコートされたプレートに抗体を固定化するために用いられ得る。融合パートナーは、抗体をスクリーニングするための選択方法の使用を可能とし得る(以下を参照)。種々の選択方法を可能とする融合パートナーは、本技術分野において周知であり、それらの全ては、本発明において用いられ得る。例えば、gene IIIタンパク質に抗体ライブラリのメンバーを融合することにより、ファージディスプレイが用いられ得る(Kay等. Phage display of peptides andproteins: a laboratory manual, Academic Press, San Diego, CA, 1996; Lowman等.1991, Biochemistry 30: 10832-10838; Smith, 1985, Science228:1315-1317)。融合パートナーは、抗体の標識化を可能とし得る。また、融合パートナーは、それらをコードする核酸と融合パートナー及び結合された抗体との共有結合的又は非共有結合的な結合を可能とするように、発現ベクターの特定の配列に結合し得る。
【0156】
ホスト細胞の中に外因性の核酸を導入する方法は、本技術分野において周知であり、用いられるホスト細胞によって異なる。その技術は、以下のものに限られないが、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、塩化カルシウム処理、ポリブレン媒介トランスフェクション、原形質融合、エレクトロポレーション、ウィルス又はファージ感染、リポソームを用いたポリヌクレオチドの被包、及び核の中にDNAを直接にマイクロインジェクションすることを含む。
【0157】
一実施形態において、抗体は、発現の後に精製又は単離される。タンパク質は、当業者に周知の種々の方法で単離又は精製され得る。標準的な精製方法は、イオン交換、疏水的相互作用、親和性、サイズ又はゲル濾過、及び逆相のクロマトグラフィー技術を含み、FPLC及びHPLC等の系を用いて大気圧又は高圧で行われる。また、精製方法は、電気泳動的技術、免疫学的技術、沈殿技術、透析技術、及び等電点電気泳動技術を含む。タンパク質濃度と関連して、限外濾過及び透析濾過技術も有用である。本技術分野において周知なように、種々の天然のタンパク質は、Fc及び抗体に結合し、それらのタンパク質は、抗体の生成のために本発明において用いられ得る。例えば、細菌性タンパク質A及びGは、Fc領域に結合する。同様に、細菌性タンパク質Lは、いくつかの抗体のFab領域に結合し、当然に抗体の標的抗原として結合する。精製は、特定の融合パートナーにより可能とされ得る。例えば、抗体は、GST融合体が用いられているならばグルタチオン樹脂を用いて、Hisタグが用いられているならばNi2+親和性クロマトグラフィーを用いて、又はflagタグが用いられているならば固定化された抗flag抗体を用いて精製され得る。適当な精製技術の一般的なガイダンスとしては、例えば、Protein Purification: Principles and Practice, 第3版., Scopes, Springer- Verlag, NY, 1994を参照できる。精製の必要性の度合いは、スクリーン又は抗体の用途に従って異なる。いくつかの例においては、精製は必要でない。例えば、一実施形態において、抗体が分泌型の場合、スクリーニングは、培地から直接に行われ得る。本技術分野において周知なように、選択のいくつかの方法は、タンパク質の精製を含まない。従って、例えば、抗体のライブラリがファージディスプレイライブラリの中に形成されている場合、タンパク質の精製は行われない。
【0158】
抗体は、インビトロアッセイ、インビボ及び細胞に基づくアッセイ、並びに選択技術において用いる方法等を含む種々の方法を用いてスクリーニングされ得る。オートメーション及びハイスループットスクリーニング技術は、スクリーニング方法において有益となり得る。スクリーニングは、融合パートナー又はラベルの使用を採用し得る。融合パートナーの使用は、上記に記載されている。本明細書において、「標識化」とは、本発明の抗体がスクリーンにおいて検出可能となるように結合された1つ又はそれ以上の要素、同位体、又は化合物を有する。一般に、ラベルは、a)抗体により認識される融合パートナーとして組み込まれたエピトープ等である免疫ラベル、b)放射性同位体又は重同位体等の同位体ラベル、及びc)蛍光及び比色色素、又は他の標識方法が可能なビオチン等の分子を含み得る低分子ラベルの3つのクラスに分けられる。ラベルは、化合物内のどの位置にでも組み込まれ、また、タンパク質発現の間にインビトロ又はインビボで組み込まれ得る。一実施形態において、抗体の機能的及び/又は生物物理学的特性は、インビトロアッセイにおいてスクリーニングされる。インビトロアッセイは、関心のある特性をスクリーニングするために広いダイナミックレンジとし得る。スクリーニングされ得る抗体の特性は、安定性、可溶性、及び、例えばFcγRsのFcリガンドに対する親和性等を含む。多様な特性は、同時に又は別々にスクリーニングされ得る。タンパク質は、試験の必要性に依存して、精製されても、精製されなくてもよい。一実施形態において、スクリーンは、公知又は抗体に結合すると考えられるタンパク質又は非タンパク分子に抗体を結合するための定性的又は定量的結合アッセイである。一実施形態において、スクリーンは、標的抗原に対する結合を測定するための結合アッセイである。代替の実施形態において、スクリーンは、FcγRsのファミリー、新生児の受容体FcRn、補体タンパク質C1q、並びに細菌性タンパク質A及びG等を含むFcリガンドに抗体を結合するための試験である。Fcリガンドは、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ又はサル等の生物由来であってもよい。結合アッセイは、以下のものに限られないが、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)及びBRET(生物発光共鳴エネルギー移動)に基づく試験、アルファスクリーン(増幅ルミネセンス近接ホモジニアスアッセイ)、シンチレーション近接アッセイ、ELISA(酵素免疫吸着アッセイ)、SPR(表面プラズモン共鳴、Biacore(登録商標)として知られている)、等温滴定型熱量測定、示差走査熱量測定、ゲル電気泳動、並びにゲル濾過を含むクロマトグラフィーを含む本技術分野において周知の種々の方法を用いて行われ得る。これら及び他の方法は、抗体の融合パートナー又はラベルを利用し得る。試験は、発色、蛍光、発光又は同位体ラベル等を含む種々の検出方法を用い得る。
【0159】
例えば安定性及び可溶性といった抗体の生物物理学的特性は、本技術分野に周知の種々の方法を用いてスクリーニングされ得る。タンパク質の安定性は、折り畳まれた状態と折り畳まれていない状態との間の熱力学的平衡を測定することにより決定され得る。例えば、本発明の抗体は、化学変性剤、熱又はpHを用いて折り畳みが展開され、この変化は、以下のものに限られないが、円偏光二色性分光、蛍光分光、吸収分光、NMR分光、熱量測定及びタンパク質分解を含む方法を用いて測定され得る。当業者に理解されるように、折り畳みとその展開との変化の動態パラメータも、それら及び他の技術を用いて測定され得る。抗体の可溶性及び全体的な構造完全性は、本技術分野に周知の方法の広範囲を用いて、定性的又は定量的に測定され得る。抗体の生物物理学的特性を特徴付けるために、本発明において用いられ得る方法は、ゲル電気泳動、等電点電気泳動、キャピラリ電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び逆相高速液体クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー、ペプチドマッピング、オリゴ糖マッピング、質量分析、紫外吸収分光、蛍光分光、円偏光二色性分光、等温滴定型熱量測定、示差走査熱量測定、超遠心分析、動的光散乱、タンパク質分解及び架橋、濁り度測定、フィルタ遅延試験、免疫学的試験、蛍光色素結合試験、タンパク質染色試験、顕微鏡、並びにELISA又は他の結合試験を介した集合体の検出を含む。X線結晶学技術及びNMR分光を用いた構造解析も用いられ得る。一実施形態において、安定性及び/又は可溶性は、所定の期間後にタンパク質の溶解量を決定することにより測定され得る。この試験において、タンパク質は、高温、低pH又は変性剤の存在下といった過酷な条件に晒されても、晒されなくてもよい。機能として、通常、安定性、可溶性及び/又は良好なタンパク質のホールド性/構造性を必要とするため、上述の機能的及び結合試験は、そのような測定を実行するための方法としても提供される。例えば、抗体を含む溶液は、標的抗原に結合する能力を試験され、その後、1つ又はそれ以上の所定の期間に高温に晒され、その後再び抗原結合試験が行われてもよい。折り畳まれていないタンパク質及び凝集したタンパク質は、抗原に結合する能力が期待されないため、活性の維持度が抗体の安定性及び可溶性を規定する。
【0160】
本発明の抗体の生物物理学的特性は、細胞、組織及び生体全体において特徴付けられ得る。本技術分野に周知なように、薬剤は、病気若しくは病気モデルに対する治療のための薬剤の有効性を測定するために、又は薬剤の薬物動態、毒性及び他の特性を測定するために、以下のものに限られないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、及びサルを含む動物において、よく試験される。その動物は、病気モデルとしていわれ得る。本発明の抗体に関して、候補のポリペプチドがヒトにおいて有効となる可能性を向上するために動物モデルを用いる際に、特定の課題が生じる。これは、少なくとも部分的に、ヒトのFc受容体に対する親和性に特異的な影響を有する抗体が、オルソロガスな動物受容体に同様の親和性効果を有すとは限らないことによる。これらの問題は、真のオルソログの正確な割当てに関連する必然の多義性(Mechetina等.Immunogenetics, 2002 54:463-468)、及びいくつかのオルソログが簡単に動物に存在しない(例えば、ヒトはFcγRIIaを有し、マウスはそれを有さない)という事実によりさらに悪化され得る。治療学は、以下のものに限られないが、ヌードマウス、SCIDマウス、異種移植マウス並びに(ノックイン及びノックアウトを含む)トランスジェニックマウスを含むマウスにおいてよく試験される。例えば、抗癌治療を目的とする本発明の抗体は、例えば異種移植マウスにおけるマウス癌モデルで試験され得る。この方法において、腫瘍又は腫瘍細胞株は、マウスに移植又は注入され、実質的にそのマウスは、癌の成長及び転移を抑制又は阻害するための抗体の能力を決定するために、治療学を用いて治療される。代替のアプローチは、適当な一連のFcRsを有する準機能的な系及びヒトの免疫系を与えるように末梢血リンパ球(PBLs)を免疫欠損マウスに導入し、そのマウスに注入されたヒト腫瘍細胞を標的とする抗体又はFcポリペプチドが続いて導入されるSCIDマウスモデルの使用である。そのようなモデルにおいて、所望の抗原を標的とするFcポリペプチドは、殺腫瘍エフェクター機能を保証するためにマウス内でヒトPBLsと相互作用する。そのような実験は、治療として用いられる抗体の潜在力の決定のための有意なデータを提供し得る。例えば哺乳動物といった生物が試験のために用いられ得る。例えば遺伝学的にヒトに類似するため、サルは治療モデルに適当となり得る。従って、サルは、本発明の抗体の有効性、毒性、薬物動態又は他の特性の試験に用いられ得る。ヒトにおける本発明の抗体の試験は、薬剤として承認されるために最終的に必要であり、従って当然に、それらの試験は考えられる。従って本発明の抗体は、それらの有効性、毒性、薬物動態及び/又は他の臨床的特性を測定するために、ヒトにおいて試験され得る。
【0161】
毒性の研究は、標準的な薬理プロファイルで評価され得ない、又は薬剤の投与が繰り返された後にのみ起こる抗体又はFc融合体による影響を決定するために行われる。多くの毒性試験は、予期しない副作用が、新規の治療的物質が体内に導入される前に見落とされないことを保証するために、2つの種、例えば齧歯動物及び非齧歯動物で行われる。一般に、それらのモデルは、遺伝毒性、慢性毒性、免疫原性、生殖/発達毒性及び発癌性を含む種々の毒性を測定し得る。上記のパラメータの中に食料消費、体重、抗体形成、臨床化学、並びに標準的な生物/組織の巨視的及び微視的試験(例えば心毒性)の標準的な測定値が含まれる。測定値の付加的なパラメータは、あるとすれば、注射部位の外傷及び中和抗体の量である。伝統的に、裸の又は結合体のモノクローナル抗体治療学は、正常な組織を用いた交差反応、免疫原性/抗体生成物、結合又は接続毒性、及び放射性標識された種の「傍観者」毒性を評価される。それにもかかわらず、そのような研究は、特定の懸念及び後のICH S6(上記で注釈されたバイオ製品のための安全性研究)で規定されるガイダンスを対処するために個別化され得る。そのように、一般原則は、製品が十分に特徴付けられ、それは不純物/汚染物が除去され、試験材料が開発の間比較できることであり、GLPコンプライアンスである。
【0162】
本発明の抗体の薬物動態(PK)は、非常に関連性のあるカニクイザル及びアカゲザル等のヒト以外の霊長類を用いた種々の動物モデルにおいて研究され得る。6000倍(0.05〜300mg/kg)の濃度範囲での単回又は複数回のi.v./s.c.投与は、血漿濃度及びクリアランスを用いて半減期(数日から数週間)が評価され得る。また、安定状態での分布容量及び全身における吸収度が測定され得る。そのようなパラメータ測定の例は、通常、観測された最大血漿濃度(Cmax)、Cmax到達時間(Tmax)、0時から無限時までの血漿濃度のタイムカーブの下方の領域[AUC0−inf]、及び見かけの排泄半減期(T1/2)を含む。付加的な測定されるパラメータは、i.v.投与及び生物学的利用能の後に得られる濃度−時間データのコンパートメント解析を含み得る。カニクイザルを用いた薬理学/毒物学研究の例は、CD20と交差反応するモノクローナル抗体であるリツキサン(登録商標)及びゼバリン(登録商標)を確立させた。生体分布、線量測定(放射性標識抗体)及びPK実験は、齧歯動物においても行われ得る。そのような研究は、全ての投与濃度での体性、局部組織での毒性、齧歯動物の異種移植動物モデルでの局在化、標的細胞の除去を評価する。本発明の抗体は、動物系又はヒトにおいて優れた薬物動態を示し得る。例えば、FcRnへの結合の増大は、半減期及び治療的抗体の曝露を増大し得る。また、そのような薬剤が副作用を有する等の曝露が低いことが好ましい場合に、FcRnへの結合の低減は、半減期が低減し、Fc含有薬剤の曝露を低減し得る。Fc受容体のアレイは、種々の免疫細胞の型及び種々の組織に、それぞれ異なって発現されることは、本技術分野において周知である。Fc受容体の種々の組織における分布は、本発明の抗体の薬力学的(PD)及び薬物動態(PK)特性に最終的に影響を及ぼし得る。ここで示した抗体は、それぞれFc受容体のアレイへの異なる親和性を有し、さらに、PD及び/又はPK特性のためのポリペプチドのスクリーニングは、それぞれの候補となるポリペプチドにより与えられたPD、PK及び治療効果の最適なバランスを規定するために極めて有益である。
【0163】
薬力学の研究は、以下のものには限られないが、特定の腫瘍因子の標的化、シグナルメカニズムの阻害、又は標的抗原を発現する細胞若しくはシグナルの欠乏の測定等を含み得る。そのような薬力学的効果は、動物モデル又はヒトにおいて証明され得る。
【0164】
本発明の抗体は、治療目的のために用いられ得る。当業者により理解されるように、本発明の抗体は、抗体及びその類似体を使用する治療目的のために用いられ得る。一実施形態において、抗体は、癌等の障害を治療するために患者に投与される。
【0165】
本発明の目的のための「患者」とは、ヒト、及び哺乳動物等の他の動物の両方を含む。従って、本発明の抗体は、ヒトの治療及び獣医学での適用の両方に用いられる。本発明における「治療」又は「治療すること」の用語は、治療学的処置、及び病気又は障害の予防又は制御手段を含むことを意味する。従って、例えば、病気の発病の前に抗体の効果的な投与は、病気の治療となる。他の例として、病気の症状と戦うために、病気の臨床的発症後に最適化された抗体を効果的に投与することは、病気の治療となる。また、「治療」及び「治療すること」は、病気を根絶するために病気の発症後に最適化された抗体を投与することも含む。できる限りの臨床的症状の減退及び病気の改善をするための、発病後、及び臨床的症状が現れた後の薬剤の効果的な投与は、病気の治療となる。「治療の必要がある」対象は、病気又は障害を既に有する哺乳動物、及び防止されるための病気又は障害を有する傾向にあるものを含む。
【0166】
一実施形態において、本発明の抗体は、タンパク質又はFLT3等の他の分子の不適当な発現を含む病気を有する患者に投与される。本発明の範囲内において、これは、例えば、タンパク質の存在量の変化、タンパク質の局在化、翻訳後の修飾、立体配座状態、又は変異タンパク質の存在等に起因する、異常なタンパク質により特徴付けられる病気及び障害を含むことを意味する。過剰とは、以下のものに限られないが、分子量における過剰発現、作用部位における発現の延長化若しくは促進化、又は正常時と比較してタンパク質の活性の増大を含む原因により起こり得る。タンパク質の低減により特徴付けられる病気又は障害は、この定義内に含まれる。そのようなタンパク質の過剰又は低減は、タンパク質の正常な発現、出現又は活性と比較して測定され得る。その測定は、本発明の抗体の開発及び/又は臨床試験に重要な役割を果たし得る。
【0167】
本明細書における「癌」及び「癌性」とは、一般に未制御の細胞増殖により特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態をいう又は記載する。癌の例は、以下のものに限られないが、細胞腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫(脂肪肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍、中皮腫、シュワン腫、髄膜腫、腺癌、黒色腫、及び白血病又はリンパ性腫瘍を含む。
【0168】
そのような癌のより特異的な例は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞性急性リンパ性白血病/リンパ腫(B−ALL)及びT細胞性急性リンパ性白血病/リンパ腫(T−ALL)等の血液腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、多発性骨髄腫(MM)、分化型AML及び未分化型AMLを含む急性骨髄性白血病(AML)等の骨髄新生物、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球白血病、急性単球性白血病、骨髄異形成症候群、並びに慢性骨髄性白血病(CML)を含む慢性骨髄異形成症候群(MDS)を含む。
【0169】
癌又は腫瘍がリンパ腫又は白血病の場合、その病気は、微小残存病変(MRD)の段階にあり得る。この段階は、例えば幹細胞移植を用いた又は用いない従来の化学療法後に達する。これに関して、「MRD」は、患者が完全な寛解(症状又は病気の兆候が無い)を含む寛解となったときにおいて、治療中又は治療後の患者に少数のリンパ腫/白血病の細胞が保持される病気の段階に関する。これは、癌又は白血病の再発の主な原因となる。この段階において、患者は完全な寛解の状態にあり得るが、病気は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びフローサイトメトリー(FACS)等の先端技術によって、まだ検出される。
【0170】
本発明の抗体の標的は、ヒト個体群において多型になり得る。従って、所定の患者又は患者の個体群において、本発明の抗体の有効性は、タンパク質における特異的な多型性の存在又は非存在により影響され得る。例えば、FcγRIIIAは、158の位置において多型であり、その位置は、通常、V(高有効性)又はF(低有効性)のいずれかである。V/Vホモ接合体遺伝子型を有する患者は、より強いNK反応を備え得るため、抗CD20抗体リツキサン(登録商標)(リツキシマブ)を用いた治療で良好な臨床的反応を示すことが観察される(Dall'Ozzo 等. (2004) Cancer Res. 64-4664-9)。更なる多型性は、以下のものに限られないが、FcγRIIA R131又はH131を含み、そのような多型性は、その多型性に依存して、Fc結合及びその後の生物学的活性を増大又は低減することが知られている。本発明の抗体は、例えばFcγRIIIA 158Vといった受容体の特定の多型相に結合し得る、又は例えばFcγRIIIAの158V及び158Fの両方の多型性である、受容体における特定の位置における多型性のすべてに同等の親和性で結合し得る。一実施形態において、本発明の抗体は、種々の多型性を有する患者に見られる種々の有効性を除くための抗体に用いられ得る多型に結合する同等物を有し得る。そのような特性は、治療的反応におけるより強い強度を与え、非反応型の患者の個体群を低減し得る。受容体多型に同一の結合をするそのような変異体Fcは、関連するFc受容体に結合することの調節を介して、ADCC、CDC若しくは循環半減期等の生物学的活性を増大し得る、又は代わりに活性を低減し得る。一実施形態において、本発明の抗体は、結合に差があることを強調する又は差を逆転するように、受容体の多型の1つに、高い又は低い親和性で結合し得る。そのような特性は、多型性等の患者の個体群が有するもので有効性に特に適合された治療が考えられ得る。例えば、FcγRIIB等の抑制性受容体への高い親和性を有する多型性を備えている患者の個体群は、より有効な薬剤を生成するように受容体の多型相等に結合することが低減された抗体を含む薬剤を受けることが可能である。
【0171】
一実施形態において、本発明の抗体の有効性を予測するために、患者は1つ又はそれ以上の多型性をスクリーニングされる。この情報は、例えば、臨床試験に患者を含めるか除外するかを選択するために、又は、承認後に適切な用量及び治療の選択肢に関して医師と患者とに助言をするために用いられ得る。一実施形態において、患者は、彼らの遺伝子型が抗体治療に現在用いられている1つ又はそれ以上と比較して本発明の抗体に非常に良好に反応する傾向にあることを示す場合、本発明の抗体のための臨床試験に含まれることを選択される。他の実施形態において、適切な用量及び治療法は、そのような遺伝子型の情報を用いて決定される。他の実施形態において、患者は、彼らの多型性遺伝子型に基づいて、臨床試験に含まれること又は承認後に治療を受けることを選択される。そのような治療は、個体群に特定の有効性があるように設計された抗体を含む、又はその代わりに、そのような治療は、多型の異なる型に異なる活性を示さない抗体を含む。
【0172】
本発明の抗体に好ましい臨床的反応を示す傾向にある、又は現在用いられている1つ又はそれ以上の抗体治療と比較して本発明の抗体を用いて治療すると非常に良好な反応を示す傾向にある同一の患者に、診断検査することは本発明に含まれる。本技術分野において周知のヒトにおけるFcγR多型性を決定するための多くの方法が用いられ得る。
【0173】
さらに、本発明は、血液及び組織サンプル等の臨床的サンプルにおいて実施される予後検査を含む。そのような検査は、以下のものに限られないが、ADCC、CDC、貪食作用、オプソニン作用を含むエフェクター機能活性について、又は、メカニズムに関わらず癌性若しくは他の病原性細胞の死滅について分析し得る。一実施形態において、上記に記載された試験等のADCC試験は、特定の患者における本発明の抗体のうちの所定のものの有効性を予測するために用いられ得る。そのような情報は、臨床試験に含む若しくは臨床試験から除外することを目的として患者を確認するために、又は適当な用量及び治療法に関する決定を通知するために用いられ得る。また、そのような情報は、そのような試験において優れた活性を示す特定の抗体を含む薬剤を選択するためにも用いられ得る。
【0174】
本発明の抗体及び1つ又はそれ以上の治療活性剤が処方されるように、医薬組成物が考えられる。本発明の抗体の製剤は、所望の純度を有する抗体を任意の医薬的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態での保存のための調製がなされる(Remington'sPharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.,1980)。許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩及び他の有機酸等の緩衝液、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヘキサメトニウムクロライド、ベンズアルコニウムクロライド、ベンズエトニウムクロライド、フェノール、ブチルオルベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾール等)、低分子量(約10残基以下)のポリペプチド、血清アルブミン、ゲラチン若しくはイムノグロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジン等のアミノ酸、グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール等の糖、甘味料及び他の香味料、微晶性のセルロース、ラクトース、コーン及び他のでんぷん等の充填剤、結合剤、添加剤、着色剤、ナトリウム等の造塩性の対イオン、金属複合体(例えばZn−タンパク質複合体)、並びに/又はTWEEN(登録商標)、PLURONICS若しくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。一実施形態において、本発明の抗体を含む医薬組成物は、医薬的に許容可能な塩として現れるように、水溶性であってもよい。その塩は、酸及び塩基の両方の付加塩を含むことを意味する。「医薬的に許容可能な酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性を維持し、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸等の無機酸、並びに酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、けい皮酸、マンデル酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びサリチル酸等の有機酸を用いて、非生物学的に又は他の形式で望まれずに形成された塩をいう。「医薬的に許容可能な塩基付加塩」は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン及びアルミニウム塩等に由来する塩を含む。特に有益なものは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウム塩等である。医薬的に許容可能な有機無毒塩基に由来する塩は、1級、2級及び3級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、並びにイソプロピルアミン、トリメチルメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びエタノールアミン等の塩基イオン交換樹脂の塩を含む。インビボ投与のために用いられる製剤は、無菌であるべきである。これは、無菌濾過膜を用いた濾過又は他の方法により、容易に達成される。
【0175】
本明細書に記載された抗体は、免疫リポソームとして処方され得る。リポソームは、哺乳動物に治療薬を届けるのに有益な種々の型の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤を含む小胞である。抗体を含むリポソームは、Epstein等. 1985, Proc NatlAcad Sci USA, 82:3688;Hwang 等. 1980, Proc Natl Acad Sci USA, 77:4030; 米国特許第4,485,045号; 米国特許第4,544,545号; 及び 国際公開97/38731号等に記載された本技術分野の周知の方法により調製される。循環時間が増大されたリポソームは、米国特許第5,013,556に記載されている。リポソームの組成物は、一般に、生物膜の脂質配列と同様に、二重層構造に配列される。特に有益なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法により生成され得る。リポソームは、所望の系を有するリポソームを生成するために、所定の孔径のフィルタを通して押し出される。化学療法剤又は他の治療活性剤は、リポソーム内に任意に含まれる(Gabizon等, 1989, JNational Cancer Inst 81 :1484)。
【0176】
抗体及び他の治療活性剤は、以下のものに限られないが、コアセルベーション技術、(例えば、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル、又はポリメタクリル酸メチルマイクロカプセルを用いた)界面重合、コロイドドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミン微粒子、マイクロエマルジョン、名の粒子及びナノカプセル)、及びマクロエマルジョンを含む方法により調製されるマイクロカプセルに封入され得る。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 第16版, Osol, A. Ed., 1980に開示されている。徐放性製剤は、調整され得る。徐放性製剤の適当な例は、固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含む。そのマトリクスは、例えばフィルム又はマイクロカプセルといった造形品の形状である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びガンマエチル−L−グルタメート、非分解性エチレンビニルアセテート、Lupron Depot(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸リュープロリドから構成される注入可能な微粒子)等の分解性乳酸−グリコール酸共重合体、ポリ−D−(-)−3−ヒドロキシブチル酸、及びポリ−DL−ラクチド−コ−グリコリド(PLG)のマトリクスの中に導入された所望の生物活性分子から構成された微粒子型デリバリーシステムであるProLease(Alkermesから商業的に入手可能)を含む。
【0177】
例えば無菌水溶液の形状の本発明の抗体を含む医薬組成物の投与は、以下のものに限られないが、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、耳内、経皮的、局所的(例えばゲル、軟膏、ローション及びクリーム等)、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、非経口的、直腸的、又は眼内を含む種々の方法で行われ得る。本技術分野において周知なように、医薬組成物は、導入方法に従って処方され得る。
【0178】
本技術分野において周知なように、タンパク質治療では、静脈内注射又はボーラスによりよく導入される。本発明の抗体は、そのような方法を用いて届けられ得る。例えば、投与は、注射溶媒として0.9%塩化ナトリウムを用いて静脈内注射により行われ得る。
【0179】
さらに、多くのデリバリーシステムは、本技術分野の周知であり、本発明の抗体を投与するために用いられ得る。その例は、以下のものに限られないが、リポソームへのカプセル封入、ミクロ粒子及び微粒子(例えばPLA/PGA微粒子)等を含む。また、多孔の移植、無孔、又は膜若しくは繊維を含むゼラチン材料が含まれ得る。徐放システムは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ乳酸、L−グルタミン酸とエチル−L−グルタメート、エチレン−ビニルアセテート、Lupron Depot等の乳酸−グリコール酸共重合体、及びポリ−D−(-)−3−ヒドロキシブチル酸等の重合体材料又はマトリクスを含み得る。例えば、レトロウィルス感染、直接注入、又は脂質、細胞表面受容体若しくは他のトランスフェクション剤でのコーティングによって、本発明の抗体をコードする核酸の投与も可能である。全ての場合において、調整される徐放システムは、所望の作用部位又はその近傍で抗体を放出するのに用いられ得る。
【0180】
投与の用量及び回数は、一実施形態において、治療的又は予防的効果のために選択される。本技術分野において周知なように、タンパク質分解の調整、局在に対する全身へのデリバリー、及び新規のプロテアーゼ合成の比率、また、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食生活、投与時間、薬剤相互作用及び状態の重症度は、必要となり得り、当業者によるルーチン実験で解明され得る。
【0181】
製剤中の治療活性抗体の濃度は、約0.1重量%から100重量%までの間で変更され得る。一実施形態において、抗体の濃度は、0.003μMから1.0Mまでの範囲である。患者の治療のために、本発明の抗体の治療効果がある用量が投与され得る。本明細書における「治療効果がある用量」とは、投与されて効果が生じる用量を意味する。実際の用量は、治療の目的に依存し、周知の技術を用いて当業者により解明され得る。用量は、体重で0.0001mg/kgから100mg/kgまでの範囲又はそれ以上、例えば、体重で0.1、1、10又は50mg/kgとなり得る。
【0182】
いくつかの実施形態において、単一の用量のみの抗体が用いられる。一実施形態において、複数の用量の抗体が投与される。投与間の経過時間は、1時間以下、約1時間、約1〜2時間、約2〜3時間、約3〜4時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、約2〜4日、約4〜6日、約1週間、約2週間、又は2週間以上であってもよい。
【0183】
他の実施形態において、本発明の抗体は、継続的な注入又は長い休息期間が無い頻発な投与のいずれかによる規則正しい投与計画で投与される。そのような規則正しい投与は、休息期間が無い一定の間隔での投薬を含み得る。一般に、そのような投与計画は、慢性の低用量、又は例えば1〜2日、1〜2週間、1〜2か月、又は6カ月以上の拡大された期間中の継続的な注入を含む。低用量の使用は、副作用及び休息期間の必要性を最小限にし得る。
【0184】
所定の実施形態において、本発明の抗体、及び1つ又はそれ以上の他の予防薬剤又は治療薬剤は、患者に周期的に投与される。周期療法は、1回目に第1薬剤を、2回目に第2薬剤を、任意に追加で追加薬剤を投与し、任意に休息期間を取り、その後、1回又はそれ以上のこの投与順序を繰り返すことを含む。周期の回数は、通常、2回から10回である。周期療法は、1つ又はそれ以上の薬剤に対する抵抗の発生を抑制し、副作用を最小限にし、また、治療効果を改善し得る。
【0185】
本発明の抗体は、1つ又はそれ以上の他の治療計画又は薬剤と同時に用いられ得る。また、付加的な治療計画又は薬剤は、抗体の作用を変更するというよりもむしろ同一の病気又は合併症を治療することに用いられ得る。例えば、本発明の抗体は、化学療法、放射線療法、又は化学療法と放射線療法との両方と共に患者に用いられ得る。本発明の抗体は、以下のものに限られないが、細胞毒性薬、化学療法薬、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤、キナーゼ阻害剤、抗血管形成剤、心保護剤、免疫賦活剤、免疫抑制剤、血液細胞の増殖を促す薬剤、血管形成阻害剤、プロテインチロシンキナーゼ(PTK)阻害剤、付加的抗体、FcγRII若しくは他のFc受容体阻害剤、又は他の治療薬剤を含む1つ又はそれ以上の他の予防薬剤又は治療薬剤と組み合わせて投与され得る。
【0186】
「組み合わせ」及び「併用投与」という用語は、実際に同一の時間での予防薬剤又は治療薬剤の投与に限られない。また、それは、本発明の抗体、及び他の単一の薬剤又は複数の薬剤は、本発明の抗体又は他の単一の薬剤若しくは複数の薬剤のいずれかのみを用いて治療に対して増大される効果を得るために、それらが共に作用するように時間間隔内で連続して投与されることを意味する。一実施形態において、その抗体及び他の単一の薬剤又は複数の薬剤は、相加的に作用する。また、例えばそれらは相乗的に作用する。そのような分子は、意図する目的のための効果がある量の組み合わせで適当に存在する。熟練した開業医は、経験的に、又は薬剤の薬物動態及び作用形態を考えることにより、それぞれの治療薬剤の好ましい用量又は各用量、及び投与の好ましいタイミング及び方法を決定できる。
【0187】
一実施形態において、本発明の抗体は、抗体又はFcを含む1つ又はそれ以上の付加的分子と共に投与され得る。本発明の抗体は、同一の病気又は付加的な合併症の治療効果を有する1つ又はそれ以上の他の抗体と併用投与され得る。例えば、所定の癌腫で過剰発現された2つの抗原を認識する2つの抗体が投与され得る。
【0188】
一実施形態において、本発明の抗体は、化学療法剤と共に投与され得る。本明細書において用いられる「化学療法剤」とは、癌の治療に有益な化合物を意味する。化学療法剤の例は、以下のものに限られないが、チオテパ及びシクロホスファミド等のアルキル化剤、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のスルホン酸アルキル、カルステロン等のアンドロゲン、プロピオン酸ドロスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン,アミノグルテチミド、ミトタン及びトリロスタン等の抗副腎剤、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン等の抗アンドロゲン、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジサゾ-5-オクソ-L-ノルロイシン、ドクソルビシン、エピラビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ぺプロマイシン、ポルフィロマイシン、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、エトレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニミクス、ジノスタチン、ゾルビシン等の抗生物質、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを阻害する4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン及びトレミフェン(ファレストン)を含む抗エストロゲン剤、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)等の代謝抵抗物質、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体、ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ及びウレドーパ等のアジリジン、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、エチレンチオホスファオラミド及びトリメチルオロメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン、フロリン酸等の葉酸補液、クロランブシル、クロルナファジン、クロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロライド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニマスチン、トロファスミド及びウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチン等のニトロ尿素化合物、シスプラチン及びカルボプラチン等の白金アナログ、ビンブラスチン、白金、アルギニンデイミナーゼ及びアスパラギナーゼ等のタンパク質、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン及びチオグアニン等のプリンアナログ、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン及び5-FU等のピリミジンアナログ、例えばパクリタキセル (TAXOL(登録商標), Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)及びドセキタル (TAXOTERE(登録商標), Rhne-PoulencRorer, Antony, France) 等のタキサン、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、チミジル酸合成酵素阻害剤(トムデックス等)、アセグラトンを含む付加的化学療法剤、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビスアントレン、エダトレキサート、デホファミン、デメコルシン、ジアジクオン; ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、エフロルニチン、エリプチニウムアセテート、エトグルシド、窒化ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)、ラゾキサン、シゾフラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2, 2′,2"-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、デカルボジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド(Ara-C)、シクロホスファミド、チオテパ、クロランブシル、ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、エトポシド(VP- 16)、イホスファミド、ミトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、CPT- 11、レチノイン酸、エスペラミシン並びにカペシタビンを含む。上記のいずれかの医薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体もまた用いられ得る。
【0189】
化学療法剤又は他の細胞毒性剤は、プロドラッグとして投与され得る。本明細書において用いられる「プロドラッグ」とは、親薬剤と比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が少なく、酵素学的に活性化される又はより活性した親の型に変化されることが可能な医薬活性物質の前駆又は誘導体を意味する。例えば、Wilman, 1986,Biochemical Society Transactions, 615th Meeting Belfast, 14:375- 382; Stella等. "Prodrugs: A Chemical Approach toTargeted Drug Delivery," Directed Drug Delivery;及びBorchardt 等. (ed.): 247-267,Humana Press, 1985を参照できる。本発明と共に用いられ得るプロドラッグは、以下のものに限られないが、より活性した細胞毒性遊離薬剤に変化され得るリン酸塩を含むプロドラッグ、チオリン酸塩を含むプロドラッグ、硫酸塩を含むプロドラッグ、ペプチドを含むプロドラッグ、D−アミノ酸修飾型プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、ベータラクタムを含むプロドラッグ、任意に置換されたフェニルアセトアミドを含むプロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミドを含むプロドラッグ、5−フルオロシトシン、及び他の5−フルオロウリジンプロドラッグを含む。本発明の抗体と共に用いるためのプロドラッグ型に誘導体化され得る細胞毒性薬剤の例は、上述の化学療法剤のいずれか等を含む。
【0190】
他の実施形態において、抗体は、1つ又はそれ以上の免疫調節剤と共に投与される。そのような薬剤は、1つ又はそれ以上のサイトカインの生成を増大する若しくは低減し得る、自己抗原提示を上方又は下方調節し得る、MHC抗原をマスクし得る、又は免疫細胞の1つ又はそれ以上の型の増殖、分化、移動若しくは活性化状態を促進し得る。免疫調節剤は、以下のものに限られないが、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、インドメタシン、ケトララク、オクサプロジン、ナブメトン、スリンダク、トルメンチン、ロフェコキシブ、ナプロキセン、ケトプロフェン及びナブメトン等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、ステロイド剤(例えば、グルココルチコイド、デキサメタゾン、コルチゾン、ヒドロキシコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、プロスタグランジンとトロンボキサンとロイコトリエン等のアズルフィジンエイコサノイド、及びアントラリンとカルシポトリエンとクロベタゾールとタザロテン等の局所ステロイド)、TGFb、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−2、IL−4、IL−10、サイトカイン、ケモカイン、又はBAFF、B7、CCR2、CCR5、CD2、CD3、CD4、CD6、CD7、CD8、CD11、CD14、CD15、CD17、CD18、CD20、CD23、CD28、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD402、CD64、CD80、CD86、CD147、CD152、補体因子(C5, D) CTLA4、エオタキシン、Fas、ICAM、ICOS、IFNα、IFNβ、TFNγ、IFNAR、IgE、IL−1、IL−2、IL−2R、IL−4、IL−5R、IL−6、IL−8、IL−9、IL−12、IL−13、IL−13R1、IL−15、IL−18R、IL−23、インテグリン、LFA−1、LFA−3、MHC、セレクチン、TGFβ、TNFα、TNFβ、TNF−R1、Enbrel(登録商標)(エタネルセプト)、Humira(登録商標)(アダリムマブ)及びRemicade(登録商標)(インフリキシマブ)を含むT−Cell受容体、異種性抗リンパ球グロブリン、2-アミノ-6-アリル-5 置換ピリミジン等の他の免疫調節分子、MHC結合ペプチド及びMHC断片の抗イディオタイプ抗体、アザチオプリン、ブレキナル、ブロモクリプチン、シクロホスファミド、シクロホスファリンA、D-ペニシラミン、デオキシスペルグアリン、FK506、グルタルアルデヒド、金、ヒドロキシクロロクイン、レフルノミド、マロノニトリルアミド (例えばレフルノミド)、メトトレキサート、ミノサイクリン、ミゾリビンミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン、並びにサルファササジンに対する抗体、可溶性受容体及び受容体−Fc融合体を含む受容体アンタゴニストを含む。
【0191】
代替の実施形態において、本発明の抗体は、サイトカインと共に投与される。本明細書において用いられる「サイトカイン」とは、細胞間媒体として他の細胞群に作用する一細胞群により放出されるタンパク質の総称を意味する。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン等の成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシン、プロリラキシン、濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモン(LH)等のグリコプロテインホルモン、肝臓成長因子、線維芽細胞成長因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、腫瘍壊死因子アルファ及びベータ、ミュラー管抑制因子、マウスゴナドトロピン結合ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮細胞増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、NGFベータ等の神経成長因子、血小板増殖因子、TGFアルファ及びTGFベータ等のトランスフォーミング増殖因子(TGFs)、インスリン様成長因子I及びII、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導因子、インターフェロンアルファ、ベータ及びガンマ等のインターフェロン、マクロファージCSF(M−CSF)、顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)及び顆粒球CSF(G−CSF)等のコロニー刺激因子(CSFs)、IL−1、IL−1アルファ、IL− 2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12及びIL−15等のインターロイキン(ILs)、TNFアルファ又はTNFベータ等の腫瘍壊死因子、並びLIF及びkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書において用いられるように、サイトカインの用語は、天然由来又は組み換え細胞の培養により生じるタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物活性同等物を含む。
【0192】
一実施形態において、免疫系の細胞を刺激するサイトカイン又は他の薬剤は、本発明の抗体と共に併用投与される。そのような治療形態は、所望のエフェクター機能を増強し得る。例えば、IL−2等を含むNK細胞を刺激する因子が併用投与され得る。他の実施形態において、C5a、N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン等のホルミルペプチド(Beigier-Bompadre 等. (2003) Scand J. Immunol. 57. 221-8)等を含むマクロファージを刺激する因子が併用投与され得る。また、G−CSF、GM−CSF及びそれらの類似体等を含む好中球を刺激する因子が投与され得る。さらに、インターフェロンガンマ、IL−3及びIL−7等を含む付加的因子は、1つ又はそれ以上のエフェクター機能を促進し得る。
【0193】
代替の実施形態において、エフェクター細胞作用を阻害するサイトカイン又は他の因子は、本発明の抗体と共に併用投与される。そのような治療の形態は、望まれないエフェクター機能を制限し得る。
【0194】
本発明の抗体は、他の治療計画と組み合わせられ得る。例えば、一実施形態において、本発明の抗体を用いて治療される患者は、放射線治療をも受けてもよい。放射線治療は、本技術分野で通常用いられ、当業者に周知のプロトコールに従って用いられ得る。そのような治療は、以下のものに限られないが、セシウム、イリジウム、ヨウ素又はコバルト放射線を含む。放射線治療は、全身照射がなされてもよく、また、肺、膀胱又は前立腺等の体内又は体表面における特定の部位又は組織に局所的に照射してもよい。一般に、放射線治療は、約1週間から2週間の期間にわたって照射される。しかしながら、放射線治療は、さらに長期間にわたって行われてもよい。例えば、放射線治療は、約6週間から約7週間の間、頭及び首の癌を有する患者に行われ得る。任意に、放射線治療は、単一の放射線量又は複数の一連の放射線量が用いられ得る。熟練した開業医は、ここで有益な放射線治療の好ましい単一の放射線量又は複数の放射線量を経験的に決定できる。本発明の他の実施形態に従って、本発明の抗体及び1つ又はそれ以上の他の抗癌治療は、エクスビボで癌細胞を治療するために用いられる。そのようなエクスビボ治療は、骨髄移植、特に自家骨髄移植に有益となり得ると考えられる。例えば、上記のような抗体及び1つ又はそれ以上の他の抗癌治療を用いる、癌細胞を含む細胞又は組織の治療は、レシピエントの患者に移植する前に癌細胞を除去又は実質的に除去するために用いられ得る。
【0195】
本発明の抗体は、手術又は光線療法等のさらなる他の治療技術と組み合わせて用いられ得ることも当然に考えられる。
【0196】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。しかしながら、本発明は実施形態の例示に制限されないことが理解されるべきである。
【0197】
[実施例]
材料及び方法
A.菌種及びプラスミド
Escherichiacoli DH5a (Invitrogen, Karlsruhe, Germany)は、プラスミドの増幅及びクローニングのために用いられた。
【0198】
B.細胞株
組み換え型hum−FLT3特異的抗体誘導体の生成のために用いられるマウス骨髄腫細胞株Sp2/0-Ag14 (ATCC, American Type Culture Collection, Manassas, VA,USA)は、10%ウシ胎児血清 (PAN-Biotech, Aidenbach,Germany)、1% ペニシリン及びストレプトマイシンが添加されたIMDM (PAN-Biotech, Aidenbach, Germany)で培養された。安定なトランスフェクタントは、1mg/mlのG418(Invitrogen, Karlsruhe, Germany)を用いて選択された。
【0199】
マウスIgG1/抗ヒトFLT3特異的抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株BV10及び4G8(Dr.H-J. Biihring, UKT Tubingen, Germanyから得た)は、10%ウシ胎児血清(PAN-Biotech, Aidenbach,Germany)、1%ペニシリン及びストレプトマイシン(Lonza, Basel,Switzerland)が添加されたRPMI 1640 (PAN-Biotech, Aidenbach,Germany)で培養された。密度勾配遠心分離法(LSM 1077, Lonza, Basel, Switzerland)により単離された末梢血単核球(PBMCs)、ハイブリドーマ細胞及びNALM16細胞(R. Handgretinger, Department ofPediatrics, University of Tubingenから快く贈与された)は、RPMI 1640において保持され、マウスSp2/0-Ag14細胞(ATCC, Manassas, USA)は、IMDM培地(Lonza)において維持された。全ての培地には、10%熱不活化ウシ胎児血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、2mM L−グルタミン及び57nMβ−メルカプトエタノールが添加されていた。
【0200】
C.FLT3トランスフェクタント
ヒトFLT3の全長cDNA(GenBank #BC 126350)は、ImaGenes, Berlin,Germanyから得られた。そのcDNAは、付加されたBamHI−及びXbaI−制限酵素部位を用いてpcDNA3ベクターの中にクローニングされ、エレクトロポレーションによりSp2/0-Ag14 細胞にトランスフェクションされた。
D.抗体及びフローサイトメトリー
CD33-PE-Cy5(クローンWM53)、CD34-APC (クローン581)、CD-45-FITC (クローン HI30)、CD123- PE-Cy5 (クローン 9F5)、CDl lc-PE (クローンB-ly6)及びアイソタイプ対照抗体は、BD Biosciences (Heidelberg,Germany)から購入され、the CD303-FITC 抗体は、Miltenyi Biotech (Bergisch-Gladbach, Germany)から購入された。全ての抗体は、4℃で30分間細胞と共にインキュベートされた。間接免疫蛍光法のために、PE- 又はAPC-結合が結合されたヤギ-抗マウスF(ab)2-断片及びヤギ-抗ヒトF(ab)2-断片のそれぞれが用いられた(Jackson ImmunoResearch, West Grove, USA)。いくつかの試験において、我々は、最終ステップで標識抗体を加える多次元分析のために、間接及び直接免疫蛍光法を組み合わせた。細胞は、FACSCanto II又はFACSCalibur(Becton Dickinson)で分析された。間接免疫蛍光法(QIFIKIT)の定量分析のためのビーズは、Dako (Hamburg,Germany) から購入され、製造業者のプロトコールに従って用いられた。ヒト化抗体の定量化のために、適当なビーズは、得られなかった。従って、特定蛍光指数(SFI)は、4G8SDIEMを用いて得られた蛍光強度を、結合しないSDIE修飾対照抗体9.2.27を用いて検出された平均蛍光強度により割ることによって算出された。これらの試験のために、Lynx rapid PE antibody conjugation kit (AbDSerotec, Dusseldorf, Germany)を用いて生成されたPE結合抗体が用いられた。組み換え型FLT3リガンド(rFLT3L)は、Peprotech EC(London, Great Britain)から購入された。競合試験のために、種々の濃度のrFLT3Lは、NALM16細胞、及びBV10SDIEM又は4G8SDIEM(1μg/ml)と共に4℃で30分間インキュベートされ、間接免疫蛍光法及びフローサイトメトリーにより分析された。
【0201】
E.3[H]−メチル−チミジン取込みアッセイ
2x10のAML芽細胞は、96wellプレートにトリプリケートで播種され、種々の濃度の最適化された抗体と共に培養された。24時間後、細胞は、3[H]−メチル−チミジン(0.5μCi/well)を用いてさらに20時間処理され、フィルタマットで回収された。組み込まれた放射活性は、2450 Microplate counter (Perkin Elmer, Waltham, USA)で液体シンチレーション計測により測定された。
【0202】
F.51[Cr] 放出アッセイ
NALM16細胞及び初代培養AML芽細胞は、標的として用いられた。白血病患者のPBMC調製液から芽細胞及びエフェクター細胞を分離するために、細胞はCD34及びCD33マイクロビーズで標識され、LDカラムで製造業者(Miltenyi Biotec)のプロトコールに従って分離された。消極的に選択されるエフェクター細胞群中に混入した芽細胞の数は、FACS分析により測定され、最初の芽細胞の混入に従って1%と10%との間で変化された。いくつかの試験において、標識されたDCsは、標的細胞として用いられた。クロム放出アッセイは、以前に記載されたように行われた(Otz T, Grosse-HovestL, Hofmann M, Rammensee HG, Jung G. A bispecific singlechain antibodythat mediates target cell-restricted, supra- agonistic CD28 stimulation andkilling of lymphoma cells. Leukemia. 2009;23(l):71-77)。簡単に、標識された標的細胞及びPBMCは、種々の濃度の抗体の存在下で、また、PBMC:標的の比が50:1で、96well平底プレートに37℃で4又は8時間培養された。特定の51[Cr]放出の割合は、[cpm (test)-cpm (spontaneous) / [cpm (triton lysis)] -cpm (spontaneous)]の式によって算出された。白血病芽細胞が標的として用いられた場合、抗体でなくエフェクター細胞を追加することは、いくつかの試験において51[Cr]の自然放出を低減し、特異的放出の負の値が生じる。
【0203】
G.抗原シフト
NALM16細胞又はAML芽細胞は、RPMI1640培地において、種々の濃度の4G8SDIEM又はBV10SDIEMと共に培養された。24又は48時間後に、細胞は氷冷FACSバッファーにより洗浄され、飽和濃度の4G8SDIEM(2μg/ml)と共に4℃で30分間培養され、PE結合ヤギ抗ヒトF(ab)2−断片により染色され、FACSにより分析された。FLT3の相対表面発現は、抗体の非存在下で前培養された細胞の平均蛍光強度を100%と規定して算出された。
【0204】
H.樹状細胞(DC)の単離及び成熟
DCsは、blood DC isolation kit IIを用いて、製造業者 (MiltenyiBiotec)のプロトコールに従って、健康な個体の軟膜調製液から単離された。骨髄(mDC)及び形質細胞(pDC)サブセットは、CD11c-PE、CD303-FITC及びCD123-PE-Cy5抗体の混合物を用いて染色された。インビボにおけるmDCの生成のために、健康な個体の1×10のPBMCsは、10mlのX−Vivo15培地(Gibco, Darmstadt, Germany)に播種された。37℃で2時間培養後、接着細胞は、50ng/mlのGM−CSF及びIL−4(20ng/ml)が添加されたRPMI1640培地で5日間培養された。6日目に、LPS(100ng/ml)が加えられた。細胞は、7日目に回収され、フローサイトメトリーにより分析された。
【0205】
I.コロニー形成単位アッセイ
骨髄細胞は、股関節手術を受けている患者から大腿骨頭の洗浄により得られた。その細胞は、密度勾配遠心分離法により精製され、5μg/mlの4G8SDIEM又は9.2.27SDIEを含むRPMI1640に107/mlで播種された。培養の24時間後、細胞は、(5μg/ml)メチルセルロース培地を含む抗体の中に移された(10000cells/ml, MethoCult H4434 classic, Stemcell Technologies, Grenoble, France)。そのアッセイは、トリプリケートで行われた。12日後、コロニーは、カウントされ、分類された。
【0206】
実施例1:FLT3特異的抗体からの未知配列の同定
A.V領域をコードするDNAのクローニング
V領域のクローニングは、PCRにより行われた。多くの技術は、mRNAから開始し、抗体のV領域の類似性が用いられる(Kabat, E.A., Wu, T.T., Reid-MOller, M., Perry, H.M., Gottesman,K.S. Sequences of Proteins of immunological interest, 4th ed. U.S. Department of Health and HumanServices, Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, MD.1987)。それは、PCR増幅の可能性のために、縮重プライマーがデザインさせる(Larrick, J.W., Daniellson,L., Brenner, C.A., Wallace, E.F., Abrahamson, M., Fry, K.E., Borrebaeck, C.A.K. Polymerase chain reaction used mixedprimers: cloning of a human monoclonal antibody variable region genes fromsingle hybridoma cells. Bio/Technology 7: 934-938, 1989; Orlandi, R., Giissow, D.H.,Jones, P.T., Winter, G. Cloning immunoglobulin variable domains for expressionby the polymerase chain reaction. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837,1989)。しかしながら、完全なVレパートリーの不偏性の増幅は、非常に複雑な一連の縮重プライマーを必要とする(Marks J.D., Hoogenboom H.R., Bonnert T.P., McCafferty J.,Griffiths A.D., Winter G. By-passing immunization. Human antibodies from V-gene librariesdisplayed on phage. J. Mol. Biol.222: 581-597, 1991)。非定型配列を有するV領域のクローニングは、まだこのアプローチにより可能でないかもしれない。さらに、元の配列は、そのプライマーによりカバーされるそれらの部分において、失われるだろう。それらの領域のアミノ酸は、CDR領域の正確な折り畳み構造に寄与するように考えられる(Chothia, C, Lesk,A.M., Tramontano, A., Levitt, M., Smith-Gill, S J., 等. Conformations of immunoglobulin hypervariableregions. Nature, 342: 877-883, 1989)。この理由のために、縮重プライマーの使用によるV領域のクローニングは、抗体の親和性を低減することを引き起こすことができた。これらの潜在的な問題を回避するための方法は、抗体の既知の定常領域配列に合うプライマーを用いた逆ポリメラーゼ連鎖反応(iPCR)により抗体の両方の鎖をクローン化することである。そのクローニング方法は、図1に模式的に示される。
【0207】
細胞質のRNAsは、細胞質のRNAのみの単離のための改変されたプロトコールを適用してRNeasy Kit (Qiagen, Hilden, Germany)を用いて、ハイブリドーマ細胞株BV10及び4G8(Rappold I., Ziegler B.L., Kdhler I., Marchetto S., Rosnet 0-, Birnbaum D., SimmonsP.J., Zannettino A.C., Hill B., NeuS., Knapp W., Alitalo R., AlitaloK., Ullrich A., Kanz L., Bilhring H.J. Functional and phenotypic characterization ofcord blood and bone marrow subsets expressing FLT3 (CD 135) receptor tyrosinekinase. Blood, 90: 111-125, 1997)から調製された。
【0208】
オリゴ(dT)15プライマーを用いて、2本鎖cDNA(ds−cDNA)は、cDNA Synthesis System (Roche, Mannheim,Germany)を用いて0.3−2μgのmRNAから調製された。さらに具体的に、DNA鎖における平滑末端の形成を可能とするために、ds−cDNAは、T4−DNAポリメラーゼと共にインキュベートさせた。その反応混合液は、等量のフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール(25:24:1)を用いて、1度抽出され、エタノールを用いて沈殿された。溶解されたds−cDNAペレットは、cDNAを環状化させるためにT4 DNA ligase (Roche, Mannheim, Germany)と共にインキュベートされた(Uematsu Y. A novel and rapid cloningmethod for the T-cell receptor variable region sequences. Immunogenetics,34:174-178, 1991)。3‘ポリ(A)テイルは、環状化によりcDNAの未知の5’末端に結合される。
【0209】
B.イムノグロブリン可変領域cDNAのPCR増幅
iPCR反応における2つの外側に向いた定常領域に特異的なプライマー(図1に要約)の使用は、再構成された軽鎖及び重鎖の遺伝子断片の全体cDNAの増幅を可能とした。1−5μlの環状化ds−cDNAは、軽鎖の増幅のためのCk−for及びCk−backのプライマー対、並びに重鎖の増幅のためのgammal−for及びgammal−backのプライマー対を有する50μlのstandard PCR reaction (HotStar Taq DNA Polymerase, Qiagen,Hilden, Germany)に含まれた。40増幅サイクルは、以下の条件で行われた:94℃で30秒、56℃で1分、72℃で2分30秒。その増幅で生じた産物は、完全V領域、5‘UT領域、pAテイル、3’UT領域を含み、定常領域配列に隣接される。逆PCRから得られたDNAは、1%アガロースゲルにおいて分離された。対応するサイズのDNAバンド(軽鎖は約1000 bp; 重鎖は約1600 bp)は切り出され、標準的な技術により単離され(Maniatis 等. 1982)、pGEM-T Easy vector(Promega, Madison, WI, USA)の中にクローニングされた。配列決定のために、ベクターシステムのための標準プライマー及びイムノグロブリン定常領域特異的プライマー(軽鎖: k-forl及びk-for2; 重鎖: CGl-forl,CGl-for2, CGl-revl, CGl-rev2)が用いられた(表1を参照)。
【0210】
【表1】
【0211】
従って、マウス抗体4G8の完全軽鎖及び重鎖(軽鎖アミノ酸配列はSEQ ID NO: 15に示され、可変ドメイン(SEQ ID NO:13)を含み、可変ドメインはCDR1(SEQ ID NO:1)、CDR2(SEQ ID NO:2)及びCDR3(SEQ ID NO:3)を含む;重鎖アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 16に示され、可変ドメイン(SEQ ID NO: 14)を含み、可変ドメインは、CDR1(SEQ ID NO:4)、CDR2(SEQ ID NO:5)及びCDR3(SEQ ID NO:6)を含む)と、マウス抗体BV10の完全軽鎖及び重鎖(軽鎖アミノ酸配列はSEQ ID NO: 31に示され、可変ドメイン(SEQ ID NO:29)を含み、可変ドメインはCDR1(SEQ ID NO:7)、CDR2(SEQ ID NO:8)及びCDR3(SEQ ID NO:9)を含む;重鎖アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 32に示され、可変ドメイン(SEQ ID NO: 30)を含み、可変ドメインは、CDR1(SEQ ID NO:10)、CDR2(SEQ ID NO:11)及びCDR3(SEQ ID NO:12)を含む)とが同定された。マー(軽鎖: k-forl及びk-for2; 重鎖: CGl-forl, CGl-for2, CGl-revl,CGl-rev2)が用いられた(表1を参照)。
【0212】
マウス抗体4G8の軽鎖は、SEQ ID NO: 19に示されるヌクレオチド配列によりコードされており (完全cDNA配列は、SEQ ID NO:20に示す)、可変ドメインは、SEQ ID NO: 18に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0213】
マウス抗体BV10の軽鎖は、SEQ ID NO: 35に示されるヌクレオチド配列によりコードされており (完全cDNA配列は、SEQ ID NO:36に示す)、可変ドメインは、SEQ ID NO: 33に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。マウス抗体BV10の重鎖は、SEQ ID NO: 37に示されるヌクレオチド配列によりコードされており (完全cDNA配列は、SEQ ID NO:38に示す)、可変ドメインは、SEQ ID NO: 34に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0214】
実施例2:キメラFLT3特異的抗体及びそれらの誘導体の構築及び発現
組み換え型抗体の第2の構築ステップにおいて、クローン化されたV領域は、発現ベクター内におけるC領域と結合された。ここで行われたクローニング方法では、完全IgV領域を導入させ、それらのアミノ酸配列の変更なく、リンパ系細胞でそれらを発現させた。このため、実施例1で得られたアンプリコンのヌクレオチド配列は、配列決定法(表1のプライマー)によってサブクローニング後に決定され、プライマー対(CC’;DD’;表2)の設計のために用いられた。V部分の再増幅されたDNA断片は、適当な制限酵素(表2にまとめられている)を用いて切断され、その後、発現ベクターの中に結合された。そのベクター(図2及び3)は、ヒト軽鎖及び重鎖定常領域遺伝子を含む。従って、増幅され、再切断されたV部位の挿入物は、V領域のアミノ酸を変更することなく、ベクターにおけるIg遺伝子の本体のゲノム構成を再構築する。
【0215】
軽鎖の親ベクターは、マウス軽鎖のVj領域及びヒトκ遺伝子のC領域を含む。制限酵素部位は、軽鎖XhoI−SpeI断片をモノクローナル抗体BV10若しくは4G8又は他のモノクローナル抗体の軽鎖の適当なVJ断片と置換するために、必要とされる位置(XhoI及びSpeI)に導入された。断片の置換に関連する領域は、図2に拡大されて示される。置換される断片は、リーダー配列の第2エクソン、フレーム融合に適当な部位(XhoI)、VJ領域及び制限酵素部位SpeIを有する第2イントロンの部分を含む。
【0216】
重鎖の元のベクターは、ヒトγ1アイソタイプIg重鎖を含む。制限酵素部位は、AatII−ClaI断片をノクローナル抗体BV10若しくは4G8又は他のモノクローナル抗体の重鎖のVDJ断片と置換するために、イントロンI及びIIの必要とされる位置に導入された。VDJ断片をクローニングするのに関連する領域は、図3aに拡大されて示されている。置換される断片は、AatII制限酵素部位を有する第1イントロンの部分、リーダー配列の第2エクソン、VDJ領域及び制限酵素部位ClaIを有する第2イントロンの部分を含む。定常領域の全てのエクソンの置換のために、制限酵素部位は、イントロンII(MluI)及びイントロンVI(SpeI)における必要とされる部位に導入された。置換されるMluI−SpeI断片(図3bに拡大されて示されている)は、ヒトγ1重鎖の全体の定常領域、及び(Ser239−Asp;Ile332−Glu)で示されるようなCH2ドメインにおける2つのアミノ酸変異を含む。
【0217】
さらに、発現ベクターを用いて、ヒトIgγ1アイソタイプ(MluI−SpeI断片;図3を参照)を、全ての他の抗体アイソタイプの定常領域と、又は最適化若しくは低減されたエフェクター機能を有するFc部分と置換することができる。ADCCを引き起こすために最適化された抗体の場合、S239D及びI332E(Kabatの方法に従ったアミノ酸位置)置換は、ヒトγ1定常領域のCH2ドメインに導入された。これは、Lazar 等の論文(Lazar G.A., Dang W, Karki S, Vafa O, Peng J.S., Hyun L, Chan C, Chung H.S., EivaziA, Yoder S.C., Vielmetter J, Carmichael D.F., HayesR.J., Dahiyat B.I. Engineered antibody Fc variantswith enhanced effector function. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103: 4005-4010,2006)に従って行われた。
【0218】
【表2】
【0219】
従って、キメラ抗体4G8及びBV10、並びにFc最適化変異体SDIE4G8及びSDIE BV10が得られた。これらは、以下のアミノ酸及びヌクレオチド配列を備えている。
【0220】
キメラ抗体4G8:SEQ ID NO:23に示され、SEQ ID NO:24に示されるヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖アミノ酸配列、SEQ ID NO:25に示され、SEQ ID NO:26に示されるヌクレオチド配列によりコードされる重鎖アミノ酸配列。
【0221】
SDIE 4G8(キメラ、Fc最適化抗体):SEQ ID NO:23に示され、SEQ ID NO:24に示されるヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖アミノ酸配列、SEQ ID NO:27に示され、SEQ ID NO:28に示されるヌクレオチド配列によりコードされる重鎖アミノ酸配列。
【0222】
キメラ抗体BV10:SEQ ID NO:39に示され、SEQ ID NO:40に示されるヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖アミノ酸配列、SEQ ID NO:41に示され、SEQ ID NO:42に示されるヌクレオチド配列によりコードされる重鎖アミノ酸配列。
【0223】
SDIE BV10(キメラ、Fc最適化抗体):SEQ ID NO:39に示され、SEQ ID NO:40に示されるヌクレオチド配列によりコードされる軽鎖アミノ酸配列、SEQ ID NO:43に示され、SEQ ID NO:44に示されるヌクレオチド配列によりコードされる重鎖アミノ酸配列。
【0224】
実施例3:抗FLT3抗体の発現及び精製
骨髄腫細胞株Sp2/0へのキメラ重鎖及び軽鎖(IgG1/κ)、又は変異重鎖をコードする発現ベクターのコトランスフェクションは、ヒトREH細胞においてFLT3に特異的に結合できるキメラモノクローナル抗体を分泌する安定的なトランスフェクトーマ、及びFLT3トランスフェクタント(Sp2/0)を産生した。
【0225】
キメラ抗体は、プロテインAでの親和性クロマトグラフィーにより細胞培養上清から精製された。
【0226】
実施例4:抗FLT3抗体のADCCエフェクター機能
Fc最適化されたキメラ抗FLT3抗体4G8−SDIE及びBV10−SDIEのADCCエフェクター機能は、Fc最適化されていないその対応するキメラ抗体と比較して(図4A及びB)、また、同様のFc変異を備えたキメラ抗NG2抗体(図4C)の ADCCエフェクター機能は、クロム放出アッセイを用いて確認された。さらに、4G8−SDIE及び刺激されていないPBMCsの殺細胞活性は、親マウス抗体4G8と比較して、急性骨髄性白血病のヒト患者から単離されたAML芽細胞において示された(図5)。用いられた標的細胞は、以下の通りである。
【0227】
NALM16:急性リンパ性白血病(ALL)細胞株、供給者:Department of Pediatric Oncology, UniversiLyof Tiibingen, original characterization: Minowada J 等. J Cancer Res Clin Oncol 101 :91-100 (1981)。
【0228】
SK−Mel63:ヒト黒色腫細胞株、元の供給者:Dr. A. Knuth, NordwestkrankenhausFrankfurt/Main, Germany。
【0229】
SG3:密度勾配遠心分離法により急性骨髄性白血病(AML)の患者の末梢血から単離された白血病細胞;Dr. H. Salih, Department of MedicalOncology, University of Tiibingenにより供給された。
【0230】
用いられたエフェクター細胞は、正常で健康なドナーの血液から単離された末梢血単核球(PBMCs)であった。
【0231】
クロム放出アッセイは、以下のように行われた:10の標的細胞は、クロム酸ナトリウム(51Cr、150μCi/ml)を用いて1時間標識され、洗浄され、96wellマイクロタイタープレートに播かれた(1well毎に10000cell)。PBMC及び抗体が、その後、示された濃度で加えられた。4時間後及び20時間後にそれぞれの上清は、回収され、MicroBeta Counterでカウントされた。細胞毒性は、標準式:%特定 51Cr-放出 = (試験に基づく放出- 自然放出) : (総放出 - 自然放出) x 100に従って決定された。自然放出及び総放出は、2% Triton-X100を有する培地及び有しない培地のそれぞれにおいて標的細胞を培養することにより測定された。
【0232】
図4及び図5に示された結果は、キメラ抗Flt3抗体4G8及びBV10の重鎖のCH2ドメインの中へのFc変異S239D及びI332Eの導入は、両方の抗体において顕著な殺細胞活性を引き起こすことができることを明白に示す。これらの結果を比較して、キメラ抗NG2抗体の中への同一の変異の導入は、そのような効果が見られなかった。従って、用いられた2つの変異が所定の抗体に殺細胞活性を与えるという一般原則はなく、むしろそれぞれのモノクローナル抗体において注意深く選択されなければならない。
【0233】
実施例5:組み換え型のFc最適化抗体の産生及び精製
マウス抗体BV10及び4G8(共にIgG1/κ)のmRNAは、RNeasy Kit (Qiagen, Hilden, Germany)を用いてハイブリドーマから単離された。重鎖(VDJ)及び軽鎖(VJ)の未知の可変領域は、軽鎖(Ck-for (SEQ ID NO:47); Ck-back (SEQ ID NO:48)) 及び 重鎖 (gammal-for (SEQ ID NO:45); gammal-back (SEQ IS NO:46)のマウス定常領域遺伝子の特異的プライマーを用いて、以前に述べられたように(Herrmann T, Grosse-Hovest L, Otz T, Krammer PH, Ramrnensee HG, Jung G. Construction of optimized bispecific antibodies for selective activation of the deathreceptor CD95. Cancer Res. 2008;68(4):1221-1227)生成された逆PCRアンプリコンの配列決定により同定された。IgG2a/K CSPG4抗体を産生するハイブリドーマ9.2.27(GenBank: #AJ459796; #AJ459797)からの可変領域遺伝子のクローニングも、以前に述べられている(Grosse-Hovest L, HartlappI, Marwan W, Brem G, Ramrnensee HG, Jung G. A recombinant bispecificsingle-chain antibody
induces targeted,supra-agonistic CD28- stimulation and tumor cell killing. Eur J Immunol. 2003 ;33(5): 1334-1340)。キメラ化され最適化された抗体の生成のために、VJ及びVDJ要素は、表2に挙げられたオリゴヌクレオチドを用いて再増幅され、図2及び図3に示されるように真核性の発現ベクターの中にクローン化された。さらに、アミノ酸は、S239D及びI332Eで置換し、最適化G1Fc部分は、アミノ酸配列PTHVNVSVVMAE (ヒトIgα1尾部のアミノ酸 #455-466 ) (SEQ ID NO: 67)、及びc-myc エピトープEQKLISEEDLLR (SEQ IDNO:68) (Evan GI, Lewis GK, Ramsay G, Bishop JM. Isolation of monoclonal antibodies specificfor human c-myc proto-oncogene product. Mol Cell Biol.1985;5(12):3610-3616)から由来されたC末端Mタグ(PTHVNVSVVMAEEQKLISEEDLLR ; SEQ ID NO: 66)を含む。組み換え型抗体、並びに親マウス4G8及びBV10は、それぞれプロテインA親和性クロマトグラフィー(GE Healthcare, Munich, Germany)を用いて、トランスフェクタント及びハイブリドーマ細胞の培養上清から精製された。4G8SDIEMの場合、大きいバッチの抗体(15g)は、発酵のための100 L biowave reactor (Sartorius; Goettingen, Germany)及びプロテインA、イオン交換及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(MabSelect Sure and CaptoAdherecolumns, GE Healthcare, Munich, Germany)による精製のためのAkta Ready systemを含む使い捨ての技術を用いて、GMPに適応したクリーンルームにおいて生成された。
【0234】
実施例6:FLT3特異性及び抗体結合親和性
親マウス抗体4G8及びBV10は、最初に説明され、FLT3タンパク質を認識するとして特徴付けられていた(Rappold I, Ziegler BL, Kohler I,等. Functional and phenotypic characterization of cord blood and bonemarrow subsets expressing FLT3 (CD135) receptor tyrosine kinase. Blood.1997;90(1):111-125)。図7Aは、両方のSDIEM変異抗体がトランスフェクションされたマウスSp2/0細胞においてこのタンパク質に結合することを示す。図7Bにおいて、2つの抗体がFLT3陽性ヒトNALM16細胞に結合することが、フローサイトメトリーにより評価される。抗体は互いにクロスブロックすることなく(データは示さず)、従って、2つの空間的に分離されたFLT3タンパク質のエピトープを認識する。両方の抗体は、1μg/ml以下の濃度で、NALM16におけるFLT3分子に対して飽和した。キメラ化4G8抗体の結合は、BV10よりも強かった。マウス親4G8及びBV10の結合が比較されると、似ていることが観察されたので(図7C)、それはキメラ化又は最適化に起因しない。キメラ化抗体及びSDIEM変異キメラ抗体の結合の差は検出されなかった(図7B)。9.2.27SDIEと呼ばれるSDIE−変異抗体は、表面抗原が結合した黒色腫を標的とし、NALM16細胞に結合せず、この試験及びその後の試験において陰性対照として用いられた。
【0235】
実施例7:FLT3リガンド(FLT3L)の結合との競合
一般に、天然リガンドの結合との干渉は、抗体の治療効果に寄与し得る。図8Aは、NALM16細胞で組み換え型FLT3Lが4G8SDIEMの結合を部分的に阻害するが、BV10SDIEMの結合を阻害しないことを示し、4G8抗体の結合部位がFLT3リガンドの結合部位に近接していることを示唆する。従って、3人の異なる患者の白血病芽細胞の自然増殖における4G8SDIEMの効果は、対照として非結合SDIE−変異9.2.27抗体を用いてインビトロで評価された。初代培養AML細胞同士の自然増殖が実質的に異なる一方、細胞増殖における抗体の顕著な効果は観察されなかった(図8B)。
【0236】
実施例8:抗体依存性細胞毒性
図9は、NALM16細胞に対するPBMCsのADCC活性がSDIEM変異抗体の存在下において、その非変異キメラ抗体の存在下と比較して顕著に増強されていることを示す。いくつかの試験において、非変異及びSDIEM変異抗体によって、同等の溶解を達成するために必要な濃度は、少なくとも100倍異なった。4G8SDIEM抗体による死滅は、BV10SDIEMにより達成される死滅よりも顕著に良好であり、特に低濃度において良好であった。これは、BV10のより低い結合活性とある程度対応する(図7)。
【0237】
図10Aにおいて、4G8SDIEMのADCC活性は、3人の異なる健康なドナー(#1−3)のPBMCsを用いて示される。これらの試験において、SDIE変異mAb9.2.27は、陰性対照として用いられた。この試薬の存在下における細胞溶解活性は、0%から20%の差異があった抗体の非存在下におけるNK細胞の細胞溶解活性を超えなかった。図10Bにおいて、3人の異なる患者の白血病芽細胞に対する健康なドナー(#2)のPBMCsのADCC活性が示される。1細胞ごとに4000、4500及び3200のFLT分子をそれぞれ有するこれらの芽細胞(AML#1、AML#2、AML#7)に対して媒介されたADCC活性は、培養されたNALM16細胞に対するその活性よりも小さいことが示された。明確に検出可能になるために4時間よりむしろ8時間必要であった。一般に、NALM16細胞及び白血病芽細胞に対するADCC及びNK活性は、8時間以降に増加傾向にある。しかしながら、初代培養芽細胞を用いると、自然のクロム放出が増大することにより試験時間をさらに延長することは困難であった。
【0238】
次に、自己芽細胞に対するAML患者の血液から単離されたPBMCsのADCC活性が評価された。この目的のために、PBMC調製液からの白血病芽細胞は、除去され、除去されたPBMCsは積極的に選択された芽細胞に対するエフェクター細胞として用いられた(材料及び方法の欄を参照)。それぞれの患者の芽細胞及び自己PBMCsを用いた5つの独立した試験のうちの2つ(AML#1、#15)において、これらの条件下の顕著な溶解が示された(図10C)。
【0239】
実施例9:抗原シフト
抗体結合に際し標的抗原発現の変調は、抗体療法の間によく観察される現象である。特に、CD33抗体Lintuzumabの飽和した用量を用いてAML患者を治療するに際し、持続性の完全欠損が報告されている(Feldman EJ, Brandwein J, Stone R, et al.Phase III randomized multicenter study of a humanized anti-CD33 monoclonalantibody, lintuzumab, in combination withchemotherapy, versus chemotherapy alone in patients with refractory orfirst-relapsed acute myeloid leukemia. J Clin Oncol. 2005;23(18):4110-4116)。図11Aは、種々の濃度の4G8SDIEMと共にNALM細胞又は2人の患者(AML#1及び#2)の初代培養白血病芽細胞を48時間培養した後に誘導された抗原シフトを示す。全てのこれらの細胞における適度な抗原シフトは培養の24時間後に既に完了されたことが観察された(データは示さず)。
【0240】
実施例10:正常細胞及び白血病細胞に対する結合
図11B及び11Cは、親マウス4G8抗体及び4G8SDIEMのそれぞれが、示されたAMLのサブタイプを患っている患者から得られた白血病細胞のパネルに結合することを示す。ゲートされたCD33+CD45dim又はCD34+CD45dim細胞が分析された。FLT3は、15人の患者のサンプルの全てにおいて検出された。間接免疫蛍光法及び定量的フローサイトメトリーにより測定された1細胞ごとの分子数は、500から6000までと異なり、NALM16細胞では6000から9000であった(図11B)。図11Cにおいて、マウス4G8よりもむしろ4G8SDIEM−PEが染色のために用いられた。この場合、SFI値は、抗体の結合を定量化するために算出された。15人のドナーのうちの4人からの芽細胞におけるこの指標は、参照抗体9.2.27SDIEとの高い非特異的反応により、測定されなかった。予想通りに、評価可能なサンプルのSFI値は、定量的FACSにより測定された分子数に近接していた(図11C)。
【0241】
図12A−Cは、正常PBMCsから精製されたCD11c陽性mDCs及びCD303陽性pDCsに対するマウス4G8の結合があまり良くないことを示す。これらの細胞において発現されたFLT分子の数は、100/cell以下であった。さらに、正常PBMCsからのDCsが生成された。これらの細胞には、大量のDC結合性マーカーCD80、CD86及びCD123が発現していたが、4G8抗体の結合は、ほとんど検出されなかった(データは示さず)。次に、正常骨髄におけるCD34陽性細胞に対するマウス4G8の結合が評価された。また、3人の異なるドナーの骨髄細胞に対する抗体の結合は、1細胞毎に300分子以下程度であった(図12D)。要約すると、正常DCs及び骨髄細胞に対するFLT3抗体の結合は、試験された全てのFLT3を発現する白血病細胞に対するよりも顕著に低かった。さらに、PBMCs、血小板、赤血球及び顆粒球に対するFLT3抗体の結合は認められなかった(データは示さず)。
【0242】
実施例11:インビトロにおける毒性
正常骨髄前駆細胞及びDCsに対する比較的に低レベルの4G8SDIEMの結合にもかかわらず、そのような細胞に対するこの抗体の潜在的な毒性が評価された。この目的のために、我々は、飽和濃度の4G8SDIEM及び9.2.27SDIEと共に骨髄細胞を培養し、半固体培地においてコロニー(CFUs)を生じさせるための骨髄細胞の能力に対するこれらの抗体の影響を測定した。CFU形成能における抗体の顕著な影響は、異なる健康なドナーからの骨髄細胞を用いた2つの試験において検出されなかった(図13A)。同様に、ヒトDCsは、エフェクター細胞としての自己PBMCsと共に培養された。4G8SDIEMが、陽性対照として用いられたNALM16細胞に対する効果的なADCCを媒介した一方で、自己DCsの死滅は認められなかった(図13B)。
【0243】
実施例12:4G8SDIEMの臨床適用
2008年にAML(FAB M0, 45XY, complex kariotype includinginv(3)(q21q26), -7)と診断された30歳の男性は、4G8SDIEMを用いて治療された。その患者は、2つの異なる計画の導入療法後に完全寛解(CR)に達しなかった。彼はHLAが適合するドナーから同種SCT(幹細胞移植)を受けた後、再発し、彼の妹からのハプロタイプ一致SCTを受け、また再発した。4G8SDIEM治療は、慎重に検討され、前臨床試験が行われた。患者の芽細胞(CD34+)のFACS分析は、約4000分子/cellでFLT3の均一の発現を示した(図14A及びデータを示さず)。インビトロにおいて、4G8SDIEMは、NALM16白血病細胞患者の末梢血単核球(PBMC)の有効なADCCを誘導し、また、自己芽細胞に対してはより少ない程度のADCCを誘導した(図14B、C)。患者は、その後、10μgから10mgまでの範囲で段階的に増大された4G8SDIEMの用量を用いて治療された。最初の10mgの投与の数時間後、彼の妹からの5×10のCD3/CD19欠損ドナーPBMCsが養子移入された。4G8SDIEMの血清濃度は、最初の10mgの投与後1時間で0.8μg/mlに達し、その後、24時間で0.3μg/mlにまで低減した(図15A)。処理の間に、骨髄(BM)における白血病細胞のほぼ完全な飽和(図15B)(i)、サイトカインTNFの指標の血清レベルの増大(図16C)と関連された末梢血(PB)(図16A)及びBM(図16B)における活性化NK細胞の顕著な増大(ii)、及びPBにおける白血病芽細胞の顕著な低減(図16A)(iii)が認められた。PB芽細胞の低減が一過性であるがほぼ完全である一方、BMにおける低減があまり見られなかった。これは、2つの部分における異なるNK細胞:白血病細胞の比率による可能性が高い。FACSで測定すると、PBにおけるCD56+NK細胞と芽細胞との非は約1である一方、BMにおいては1/7であった(データは示さず)。その治療の副作用は、軽度であり、微熱(最大で38.2℃)及び前から存在したざ瘡様皮膚発疹の一過性の悪化であった。
【0244】
抗体治療に対する単なる一過性の反応にもかかわらず、患者は最も良い支持療法及びヒドロキシウレアの下で、ゆっくりと増大する芽細胞のカウントで数カ月もの間、予想外に良好な病態のままであった。従って、異なるドナーからの第2のハプロタイプ一致のSCTが実施された。回復後、患者は検出可能な微小残存病変(MRD)がないCRに達した。その後、我々は、段階的に用量を増大して45.5mgの4G8SDIEMを投与した。このとき、関連するサイトカイン放出も全体のNK細胞の活性化も認められず(図16D)、副作用も全くなかった。
【0245】
本発明は、本明細書に広く且つ一般的に説明されている。包括的開示に属するより狭い種及びサブグループもまた本発明の一部を形成する。これは、切除された材料が本明細書に具体的に述べられているかどうかにかかわらず、グループから主題を削除する但し書き又は消極的限定を有する本発明の包括的な記述を含む。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。さらに、本発明の特徴又は態様は、マーカッシュ群で記載され、当業者は、本発明がそれらによりマーカッシュ群の個々の要素又は要素のサブグループで記載されていることがわかるだろう。
【0246】
当業者は、本発明が目的を果たすため、及び述べられた目的及び利点を得るために適応すること、また、それらに本来備わっていることを容易に理解できるだろう。さらに、本発明の精神と範囲とから逸脱することなく、本明細書に開示された発明に対して種々の置換及び改変を行うことができることは、当業者に容易に理解されるだろう。本明細書に記載された組成物、方法、手段、処理、分子及び特定の化合物は、例示であって本発明の範囲の限定として解されない好ましい実施形態の現状の代表例である。それらの中での変更及び他の用途は、当業者に思い浮かばれ、それは特許請求の範囲により規定される本発明の精神内に含まれる。この明細書において挙げられた又は論じられた先行文献は、その文献が最先端技術の一部又は一般的な知見であることの自認として必ずしも扱われるべきでない。
【0247】
本明細書において図示して説明された本発明は、本明細書に非特異的に開示された単数の要素又は複数の要素、及び単数の限定又は複数の限定の非存在下で適当に実行され得る。従って、例えば、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」当の用語は、拡張的に、限定的でなく読まれるべきである。「備える(comprise)」又は「備える(comprises)」若しくは「備える(comprising)」等の変形体の用語は、従って、規定された整数又は整数の群を含むが、他の整数又は整数の群を排除しないことを暗示することが理解されるだろう。さらに、本明細書において用いられた用語及び表現は、説明のための用語として用いられ、限定のために用いられておらず、示され且つ説明された特徴又はその一部と同等のものを排除するそのような用語及び表現の使用を意図しておらず、種々の改変が特許請求の範囲に記載された発明の範囲内であり得ることが理解される。従って、本発明が例示的実施形態及び選択的特徴により具体的に開示されたが、本明細書のそれらにおいて具体的に開示された本発明の改変及び変更は、当業者により頼られ得ること、並びにそのような改変及び変更がこの発明の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。
【0248】
本明細書において引用された全ての文献及び特許文献の内容は、それら全体で参照として組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]