(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記合金電極は、Alloy718、Alloy720、Rene41(商標)、Rene88(商標)合金、およびWaspaloy(登録商標)合金からなる群より選択される合金を含む、請求項1に記載のプロセス。
前記合金インゴットを熱間加工することをさらに含み、前記熱間加工することは、前記外側レイヤに対して力を印加することを含み、前記力は前記合金インゴットを塑性変形させる、請求項1に記載のプロセス。
前記内側インゴットコアは、Alloy718、Alloy720、Rene41(商標)合金、Rene88(商標)合金、およびWaspaloy(登録商標)合金からなる群より選択される合金を含む、請求項14に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
読者は、本開示に係る様々な非限定的な実施形態に関する以下の詳細な記載を考慮すれば、前述の詳細およびその他を理解するであろう。読者は、本開示において説明する実施形態を実装および使用することに関する、追加的な詳細も理解するかもしれない。
【0010】
明瞭化のために、他の特徴、態様、特性、その他が排除される一方で、開示された実施形態の明瞭な理解に関連する特徴、態様、特性、その他のみを示すために、開示された実施形態の様々な記載は簡略化されていることが理解されるであろう。開示された実施形態の記載を考慮するならば、当業者は、他の特徴、態様、特性、その他が、開示された実施形態の特定の実装または適用において、望ましいものとなる場合があることを認識するであろう。しかし、係る他の特徴、態様、特性、その他は、開示された実施形態の記載を考慮するならば、当業者により容易に確認および実施される場合があり、したがって、係る特徴、態様、特性、その他は、開示された実施形態の完全な理解のためには必ずしも必要ではないため、本明細書においては提供されない。そのため、本明細書において提供される説明は、開示された実施形態を単に例示するものにすぎず、請求項によってのみ定められる本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0011】
本開示においては、特記ある場合を除き、量または特性を表現するすべての数値は、すべての事例において「約」という用語により先行および修飾されるものとして理解すべきである。したがって、特にこれに反すると記載しない限り、以下の説明において提供され
るあらゆる数値パラメータは、本開示に係る実施形態において達成が望まれる所望の特性に応じて変化する場合がある。少なくとも、請求項の範囲に対して均等論の適用を制限しないために、本記載において提供される各数値パラメータは、少なくとも、記録された有効数字の桁数を考慮して、通常の丸め技術を適用することにより、解釈されるべきである。
【0012】
また、本明細書に記述される任意の数値範囲は、その範囲内に含まれるサブ範囲を全部含むことを意図する。例えば、「1〜10」の範囲は、記述された最小値の1と記述された最大値の10との間(およびこれらの値を含む)のサブ範囲、すなわち1以上の最小値および10以下の最大値を有するサブ範囲の全部を含むことを意図する。本明細書に記述される任意の最大の数値限定は、その数値限定内に包含される、より小さい数値限定の全部を含むことを意図し、本明細書に記述される任意の最小の数値限定は、その数値限定内に包含される、より大きい数値限定の全部を含むことを意図する。したがって、出願者は、本明細書に明確に記述される範囲内に包含される任意のサブ範囲を明確に記述するよう、請求項を含む本開示を補正する権利を保有する。係る範囲の全部は、任意の係るサブ範囲を明確に記述するよう補正することが、合衆国法典第35巻第112条第1段落および合衆国法典第35巻第132条(a)の要件に準拠するよう、本明細書において本質的に開示されることを意図する。
【0013】
本明細書において用いられる文法的な冠詞「1つの(one)」、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特記ある場合を除き、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を含むことを意図する。したがって、これらの冠詞は、本明細書においてはこれらの冠詞の文法的な目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために用いられる。例えば、「構成部品」は、1つまたは複数の構成部品を意味し、したがって複数の構成要素が考慮される可能性があり、記載された実施形態の実装において、行使または使用される場合がある。
【0014】
参照することにより本明細書に組み込まれることが述べられた、あらゆる特許、刊行物、または他の開示材料は、特記ある場合を除いて、組み込まれる材料が、既存の定義、記載、または本開示において明示的に説明される他の開示された材料と矛盾しない範囲内のみにおいて、その全体が本明細書に組み込まれる。したがって、本明細書に説明された明示的な開示は、参照することにより本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾する材料に、必要な程度まで、置き換えられる。参照することにより本明細書に組み込まれることが述べられてはいるが、しかし既存の定義、記載、または本明細書に説明される他の開示された材料とは矛盾する、あらゆる材料またはその一部は、組み込まれた材料と既存の開示された材料との間に矛盾が生じない範囲内においてのみ、組み込まれる。出願者は、参照することにより本明細書に組み込まれる、任意の主題またはその部分を明確に記述するよう、本開示を補正する権利を保有する。
【0015】
本開示は、様々な非限定的な実施形態の記載を含む。本明細書に記載の全実施形態は、例示的、図示的、および、非限定的であることを理解すべきである。したがって、本発明は、様々な例示的、図示的、および非限定的な実施形態の記述により限定されない。むしろ、本発明は、請求項のみにより定義される。なお、請求項は、本開示において明確にまたは本質的に記述されるかまたは他の方法で本開示により明確にまたは本質的にサポートされる任意の特徴を記述するよう、補正される場合がある。したがって、任意の係る補正は、合衆国法典第35巻第112条第1段落および合衆国法典第35巻第132条(a)の要件に準拠することになる。
【0016】
本明細書において開示および記述された様々な非限定的な実施形態は、本明細書において様々に記述される、特徴、態様、特性、限定、その他を含むことができるか、これらか
らなる可能性があるか、またはこれらから実質的になる可能性がある。本明細書において開示および記述された様々な非限定的な実施形態は、当該技術分野において既知であるか、または他の方法で実際に実装される様々な非限定的な実施形態に含まれる、追加的なまたは任意選択的な、特徴、態様、特性、限定、その他も含むことができる。
【0017】
様々な合金は、亀裂を生じやすいと特徴付けられる場合がある。亀裂を生じやすい合金は加工操作の間に亀裂が形成される傾向を有する。亀裂を生じやすい合金インゴットは、例えば、亀裂を生じやすい合金インゴットから合金物品を製造するために用いられる熱間加工操作を実施する間に亀裂を生じる場合がある。例えば、合金ビレットは、鍛造による変換を用いて合金インゴットから形成さる場合がある。他の合金物品は、押出成形または他の加工操作を用いて合金ビレットまたは合金インゴットから形成される場合がある。亀裂を生じやすい合金インゴットから熱間加工操作を用いて形成された合金物品(例えば、合金ビレット)の製造歩留まりは、熱間加工(例えば、鍛造または押出成形)を実施する間に合金インゴットの表面亀裂が生じるために、低くなる場合がある。製造歩留まりは、加工されたインゴットから表面亀裂を研磨または他の方法で除去する必要性により低減する場合がある。
【0018】
本明細書で用いる場合、用語「熱間加工」は、周囲温度よりも高い温度において加工品に力を印加し、その印加された力が加工品を塑性変形することを指す。
【0019】
例えば、鍛造または押出成形等の熱間加工操作を実施する間、自然な温度勾配が、大気への熱損失による合金インゴット表面の冷却により、形成される。さらに、加工操作を受ける合金インゴットの温度は、インゴット表面に力を機械的に印加するために用いられる金型の温度よりも高くてもよい。インゴット表面とインゴットの内側部分とに結果として生じる温度勾配偏位は、特に、例えばニッケル基、鉄基、ニッケル鉄基、およびコバルト基合金または超合金などのような亀裂を生じやすい合金から形成されたインゴットに対して熱間加工を実施する間に、インゴットの表面亀裂に寄与する場合がある。
【0020】
熱間加工実施する間の合金インゴット表面上における亀裂形成を低減する1つの方法は、熱間加工前に合金インゴットを合金缶に配置することである。例えば、合金缶の内径が、合金インゴットの外径よりもわずかに大きい円筒形インゴットを用いると、それにより、インゴットを缶内に挿入することが可能となる。缶はインゴットを緩く包囲し、空隙および放射密閉を用いて、熱が保持を提供する。加工操作の間、金型は、内側のインゴットを少なくとも部分的に包囲する缶外部に対して接触する。このようにして、缶は、少なくとも部分的に包囲されたインゴットの表面を、断熱しおよび機械的に保護する場合があり、それにより、加工を実施する間におけるインゴットの表面亀裂の発生が低減される場合がある。
【0021】
インゴット缶内挿入操作は、様々な不利を生じる場合がある。缶の外側表面と加工金型との機械的接触は、缶を破損する場合がある。例えば、缶内に挿入されたインゴットの据込および引抜鍛造を実施する間、缶は、引抜操作の間に破損する場合がある。係る場合、インゴットは、複数の据込および引抜鍛造操作の各据込および引抜サイクル間で缶内再挿入する必要がある場合がある。それにより、処理がより複雑化され、コストが増大されてしまう。さらに、缶は、作業者が、加工操作を実施する間、亀裂または加工により誘発された他の欠陥を、缶内挿入されたインゴットの表面を視覚的に監視することができないようにする可能性がある。
【0022】
本明細書に開示された実施形態は、合金インゴットを形成するためのプロセス、および合金インゴットを処理するための方法に関する。様々な非限定的な実施形態において、合金インゴットを形成するためのプロセスは、真空アーク再融解(VAR)装置に用いるた
めの坩堝に合金ライナーを配置することを含む。合金電極は、真空アーク再融解装置において真空アーク再融解されてもよい。合金電極は、坩堝内の合金ライナーへと真空アーク再融解されてもよい。このようにして、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを備える合金インゴットが形成されてもよい。外側レイヤは、最初にライナーを
構成している合金(ライナー合金)
を含む。内側インゴットコアは、最初にVAR電極(電極合金)を
構成している合金
を含む。
【0023】
真空アーク再融解は、合金インゴットの清浄度を改善し、構造を精錬するための、インゴット冶金操作である。VAR装置において、再融解される合金インゴットは合金電極と称される場合がある。VAR操作において再融解される合金電極は、例えば、空気融解(例えば、電気アーク炉(EAF:electric arc furnace)において)、真空融解(例えば、真空誘導融解(VIM:vacuum induction melting))、エレクトロスラグ精錬(ESR:electroslag refining)、ハース融解法、スプレイフォーミング法、および/または他の溶融鋳造またはインゴット形成操作を用いて、形成されてもよい。VARは、真空下における電気アークによる、消耗型合金電極の連続再融解を含んでもよい。直流(DC)電源装置が、VAR装置において、合金電極および坩堝の基部プレートに対して電気的に接続されてもよい。DC電源装置は、合金電極の自由端と、坩堝の基部プレートとの間で電気アークを発生させる。電気アークにより放電されたエネルギーにより生成された熱が、電極の自由端を融解させる。VARの概要は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Donachieらの
Superalloys:A Technical Guide、ASM International、2002年、において説明されている。
【0024】
図1は、VAR装置10の非限定的な実施形態を図示する概略図である。VAR装置10は、基部プレート14を有する坩堝12を含む。坩堝12は、ウォータージャケット16により水冷される。ウォータージャケット16は、水入口および水出口を備え、それにより、坩堝12の外側表面を水流が通過することが可能となる。坩堝12を通過する水流は、坩堝12から熱を除去し、それにより、坩堝12内の融解合金プール42から熱が除去される。その結果、融解合金プール42が真空アーク再融解されたインゴット40へと凝固することが容易になる。真空アーク再融解インゴット40は、坩堝12の内部表面により成型される。坩堝12を通過する水流は、インゴット40からも熱を除去する。坩堝12がVARヘッド20と結合して、シールされた炉チャンバ22が形成される。VARヘッド20は吸引ポート24を備え、吸引ポート24により、炉チャンバ22内の真空が引かれることが可能となる。
【0025】
合金電極30の一方端は、VAR装置10の炉チャンバ22へと延長するラム32に接続される。ラム32は、電極30の自由端を坩堝12の開放容積へと駆動する。ラム32は、合金電極30が融解するにつれて、坩堝12内において合金電極30を垂直に配置し、次いで、融解合金36は、電極アーク間隙46を通って融解合金プール42内へと、インゴット40の上方表面上に落下する。このようにして、ラム32は基部プレート14に向かって進行してもよくそれにより合金電極30を移動させ、比較的一定した電極アーク間隙46は操作誤差内に維持する。ラム32は、VARヘッド20内のシールされた開口部38を通して移動可能に配置され、その結果、VAR操作が実施される間、炉チャンバ22の真空が保持される場合がある。
【0026】
合金電極30は、最初、電極30の自由端と坩堝の基部プレート14との間に形成された電気アークにより放出されたエネルギーにより生成された熱により融解する。電極30および基部プレート14は、電源装置26に対して電気的に接続される。電気アークは、最初、電極30の自由端と基部プレート14との間で、電極アーク間隙46を通って形成される。ラム32の垂直配置動作は、融解合金が基部プレート14を覆い、坩堝12内の
開放容積を充填し始めた後、電極30の自由端と凝固するインゴット40との間に形成された、電極アーク間隙46および電気アークを維持する。
【0027】
図2は、VAR装置50の非限定的な実施形態を図示する概略図である。VAR装置50は、基部プレート54を有する坩堝52を含む。合金ライナー90は、坩堝52内に配置される。
図2は、両方の対向端部において開放された合金ライナー90を示すが、様々な代替的な実施形態において、合金ライナーは、VAR装置の基部プレート近傍に配置された端部において、部分的にまたは完全に閉じられてもよい。坩堝52は、ウォータージャケット56により水冷される。ウォータージャケット56は、水入口および水出口を含み、それにより、坩堝52の外部表面を通過する水流を可能とする。坩堝52を通過する水流は、坩堝52から熱を除去し、それにより、合金ライナー90および合金ライナー90内の融解合金プール82から熱が除去される。その結果、融解合金プール82の真空アーク再融解された内側インゴットコア80への凝固を容易にする。このようにして、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを備える合金インゴットが形成される。外側レイヤは、最初、合金ライナー90を
構成している材料
を含み、内側インゴットコアは、最初、合金電極70を
構成している材料
を含む。坩堝52がVARヘッド60と嵌合して、シールされた炉チャンバ62が形成される。VARヘッド60は吸引ポート64を含み、吸引ポート64により、炉チャンバ62内の真空が引かれることが可能となる。
【0028】
合金電極70の一方端は、VAR装置50内でラム72に接続される。ラム72は、電極70の自由端を合金ライナー90内の開放容積へと駆動する。ラム72は、合金電極70が融解するにつれて、合金ライナー90内において合金電極70を垂直に配置し、融解合金76は、電極アーク間隙86を通って融解合金プール82内へと落下する。このようにして、比較的一定した電極アーク間隙86が操作誤差内に維持されるように、ラム72が制御されてもよい。ラム72は、VARヘッド60のシールされた開口部78を通して移動可能に配置され、その結果、VAR操作の間、炉チャンバ62内の真空が維持されてもよい。
【0029】
合金電極70は、最初、電極70の自由端と坩堝の基部プレート54との間に形成された電気アークにより放出されたエネルギーにより生成された熱により融解する。電極70および基部プレート54は、電源装置66に対して電気的に接続される。電気アークは、最初、電極70の自由端と基部プレート54との間で、電極アーク間隙を通って形成される。ラム72の垂直配置動作は、融解合金が坩堝の基部プレート54を覆い、合金ライナー90内の容積を充填し始めた後、電極70の自由端と凝固するインゴット80との間に形成された、電極アーク間隙86および電気アークを保持する。このようにして、合金電極70は、真空アーク再融解装置50の坩堝52内に配置された、合金ライナー90に真空アーク再融解されてもよい。
【0030】
本明細書で用いる場合、用語「真空アーク再融解」および「VAR」は、例えば、真空アーク二重電極再融解(VADER:vacuum arc double electrode remelting)等のVARの変形物を含む。
図3は、VADER装置を備えるVAR装置150の非限定的な実施形態を図示する概略図である。VAR装置150は、基部プレート154を有する坩堝152を備える。合金ライナー190は、坩堝152内に配置される。
図3は、両方の対向端部において開放された合金ライナー190を示すが、様々な代替的な実施形態においては、合金ライナーは、VAR装置の基部プレート近傍に配置された端部において、部分的にまたは完全に閉じられてもよい。坩堝152は、ウォータージャケット156により水冷される。ウォータージャケット156は、水入口および水出口を含み、それにより、坩堝152の外部表面を通過する水流が可能となる。坩堝152を通過する水流は、坩堝152から熱を除去し、それにより、合金ライナー190および合金ライナー190内の融解合金プール182から熱が除去される。その結果、融解合金プール182が、真空アーク二重電極再融解された内側インゴットコア180へと凝固することが容易になる。このようにして、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを備える合金インゴットが形成される。外側レイヤは、最初、合金ライナー190を
構成している材料を
含み、内側インゴットコアは、最初、2つの合金電極170を
構成している材料
を含む。坩堝152がVARヘッド160と嵌合して、シールされた炉チャンバ162が形成される。VARヘッド160は吸引ポート164を備え、吸引ポート164により、炉チャンバ162内の真空が引かれることが可能となる。
【0031】
各合金電極170の一方端は、VAR装置150内でラム172に接続される。これらのラム172は、電極170の自由端を互いに対して駆動し、それにより、電極アーク間隙186が維持される。ラム172は、合金電極170が融解し、融解合金176が融解合金プール内182に滴下するにつれて、互いに対して合金電極170を水平に配置する。このようにして、操作誤差内の比較的一定した電極アーク間隙186を維持するようにラム172が制御されてもよい。
【0032】
合金電極170は、最初、各電極170の自由端間に形成された電気アークにより放出されたエネルギーにより生成された熱により融解する。電極170は、電源装置(図示せず)に対して電気的に接続される。アークは、電極アーク間隙186を通って、電極170の自由端間に形成される。ラム172の水平配置動作は、電極170の自由端間に形成された、電極アーク間隙186および電気アークを維持する。このようにして、合金電極170は、VAR装置150内の坩堝152内に配置された、合金ライナー190に真空アーク再融解されてもよい。
【0033】
様々な非限定的な実施形態において、合金インゴットを形成するためのプロセスは、真空アーク再融解処理を含んでもよい。真空アーク再融解処理は、真空アーク再融解装置の坩堝内に合金ライナーを配置することを含んでもよい。少なくとも1つの合金電極は、真空アーク再融解装置の坩堝内に配置された合金ライナーへと真空アーク再融解されてもよい。融解電極合金が、合金電極から、合金ライナー内に配置された融解プールへと滴下するにつれて、熱により、融解プールに隣接する領域における合金ライナーは部分的に融解する場合がある。融解した電極合金および少なくとも部分的に融解したライナー合金が坩堝内で凝固するにつれて合金ライナーと凝固した電極合金とは溶着および冶金接合し、それにより、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを備える合金インゴットが形成される。インゴットの外側レイヤはライナー合金を
含む。インゴットの内側インゴットコアは電極合金を
含む。
【0034】
図4Aおよび
図4Bは、本明細書に説明された様々な非限定的な実施形態にしたがって形成された合金インゴット200の概略図である。合金インゴット200は、内側インゴットコア203に対して冶金接合された外側レイヤ202を備える。外側レイヤ202と内側インゴットコア203との間の境界205は、外側レイヤ202を含むライナー合金と内側インゴットコア203を含む電極合金との間に形成された冶金接合を備える。
【0035】
様々な非限定的な実施形態において、冶金接合は、外側レイヤ202を
構成しているライナー合金と、内側インゴットコア203を
構成している電極合金との金属間溶着すなわち合体を含んでもよい。例えば、合金電極が合金ライナーへと再融解する場合、融解電極合金は合金ライナーの内部表面に溶着してもよく、それにより、冶金接合された境界を、外側レイヤ(ライナー合金
を含む)と内側インゴットコア(電極合金
を含む)との間に形成する。融解電極合金により運ばれる熱エネルギーは、合金ライナーの内部表面を少なくとも部分的に融解し、内部表面は融解電極合金と部分的に合体してもよい。それにより、冶金接合境界が、凝固時に、外側レイヤと内側インゴットコアとの間に形成される。
【0036】
様々な非限定的な実施形態において、冶金接合は、合金勾配領域を含んでもよい。なお、合金勾配領域においては、インゴットの組成物が、勾配に沿って、電極合金組成からライナー合金組成へと遷移する。合金勾配は、合金勾配領域において、電極合金とライナー合金とが混合することにより形成する場合がある。合金電極が合金ライナーへと融解されると、融解電極合金は、融解ライナー合金の少なくとも1部分と、少なくとも部分的に混合してもよく、融解ライナー合金は、合金ライナー内の融解プール内へと滴下融解する融解電極合金の熱エネルギーにより、少なくとも部分的に融解してもよい。このようにして、ライナー合金から形成された外側レイヤと、電極合金から形成された内側インゴットコアと、電極合金とライナー合金との混合から形成された合金勾配領域と、を含み、その混合は、合金勾配領域内において、電極合金からライナー合金へと遷移することを特徴とする、インゴットが形成される場合がある。
【0037】
様々な実施形態において、外側レイヤ(ライナー合金
を含む)と内側インゴットコア(電極合金
を含む)とは、冶金接合されない。例えば、ライナー合金の融点温度が電極合金の融点温度よりも遥かに高い場合、融解電極合金は、合金ライナーが、融解する、または他の方法で凝固した内側インゴットコアに溶着することなく、合金ライナー内で凝固するであろう。このようにして、合金ライナーは、その内部において電極合金が内側インゴットコアへと凝固する型として機能する。なお、この内側インゴットコアは、外側レイヤに対しては、物理的に結合するが、冶金接合するものではない。
【0038】
ライナー合金と電極合金との合体または混合の度合い、ひいては、冶金接合された実施形態における、外側レイヤと内側インゴットコアとの間の境界領域の体積は、例えば、特定の融点温度を有するそれぞれの合金を選択することにより、制御される場合がある。例えば、ライナー合金の融点温度が電極合金の融点温度よりも十分に高い場合、融解電極合金は、合金ライナーの内部表面に対して冶金溶着し、結果的に、境界領域は比較的小さくなる。
【0039】
しかし、ライナー合金の融点温度が電極合金の融点温度よりも遥かに低い場合、合金ライナーの全部が融解し、融解電極合金と混合する場合がある。これにより、結果として生じるインゴットの内側インゴットコアの化学的性質が著しく変化する可能性があり、結果的に、電極合金が仕様から逸脱する場合があるため、これは望ましくない場合がある。様々な非限定的な実施形態において、外側レイヤと内側インゴットコアとの間に強力な冶金接合を生じさせる一方で融解電極合金に接触された場合にも過度に融解しないライナー合金が、所与の電極合金に対して選択される。このようにして、内側インゴットコアを含む合金は、仕様内に保持される場合がある。
【0040】
様々な非限定な実施形態において、電極合金(引き続き内側インゴットコアを含む)は、亀裂を生じやすい合金をからなってもよい。例えば、様々なニッケル基、鉄基、ニッケル鉄基、およびコバルト基合金ならびに超合金は、特に熱間加工の間に、亀裂を生じやすい場合がある。合金電極は、係る亀裂を生じやすい合金および超合金から形成される場合がある。亀裂を生じやすい合金電極は、Alloy718、Alloy720、Rene41(商標)合金、Rene88(商標)合金、Waspaloy(登録商標)合金、およびInconel(登録商標)100合金を含むがこれらに限定されない、合金または超合金から形成されてもよい。本明細書に説明する実施形態は、一般に、高い加工温度において比較的延性が低いことを特徴とする任意の合金に適用される。本明細書で用いられる場合、用語「合金」は、従来の合金および超合金を含む。なお、超合金は、高温において、比較的良好な表面安定性、腐食および酸化耐性、高い強度、高い耐クリープ性を示す。
【0041】
ライナー合金(引き続き外側レイヤを含む)は、使用される特定の加工温度において電
極合金(および、引き続き、下層に位置する内側インゴットコア)よりも延性および/または可鍛性がより高い合金であってもよい。ライナー合金は、形成されたインゴットを熱間加工するときに用いられる特定の加工温度において合金電極(および、下層に位置する内側インゴットコア)を含む合金よりも、より高い靭性および/またはより小さい硬度を示す合金であってもよい。様々な非限定的な実施形態においては、外側レイヤは、下層に位置する内側インゴットコアが大気に暴露されないように、および/または、熱間加工金型の表面と接触しないように、遮断する。それにより、下層に位置する内側インゴットコアは、熱間加工中に、内側インゴットコアを含む電極合金が脆化されlより容易に亀裂が生じる場合がある温度へと冷却されることがない。
【0042】
ライナー合金(および外側レイヤ)は、耐酸化性合金を含んでもよい。様々な非限定的な実施形態において、外側レイヤは、熱間加工の間、測定可能な程度まで酸化しないか、または他の方法で酸化しない。外側レイヤは、比較的高い剛性(例えば、比較的低い弾性係数)を示す合金を含んでもよい。様々な非限定的な実施形態において、外側レイヤは、実質的に、熱間加工中に、薄厚化されない(例えば、熱間加工中、1つまたは複数の金型により力が印加されると、比較的剛性が低い合金は、下層に位置する内側インゴットコア上で薄厚化される)。
【0043】
様々な非限定的な実施形態において、合金ライナー(および外側レイヤ)を含む合金、および合金電極(および、下層に位置する内側インゴットコア)を含む合金は、同一の主要成分金属を有してもよい。例えば、合金電極(および内側インゴットコア)がニッケル基合金または超合金(例えば、Alloy718、Alloy720、Rene88(商標)合金、またはWaspaloy(登録商標)合金)を含む場合、合金ライナー(および、外側レイヤ)も、例えばAlloy625等のニッケル基合金を含んでもよい。
【0044】
様々な非限定的な実施形態において、合金ライナー(および外側レイヤ)を含む合金、および合金電極(および、下層に位置する内側インゴットコア)を含む合金は、異なる主要成分金属を有してもよい。例えば、合金電極(および内側インゴットコア)がニッケル基合金または超合金(例えば、Alloy718、Alloy720、Rene88(商標)合金、またはWaspaloy(登録商標)合金)を含む場合、合金ライナー(および、外側レイヤ)は、例えば304型ステンレス鋼等の鉄基合金を含んでもよい。
【0045】
合金ライナーの肉厚は、下層に位置する内側インゴットコアが、接触する金型の表面から保護されるように十分な厚さを有する外側レイヤが形成されてもよいように、選択されてもよい。その結果、下層に位置する内側インゴットコアは、下層の表面が、熱間加工中に、亀裂がより生じやすくなる温度へと、冷却されなくなる。このようにして、より高い熱間加工温度は、一般に、より大きい外側レイヤ厚さと相関する。様々な非限定的な実施形態においては、合金ライナーは、0.25インチ(約0.635センチ)から0.5インチ(約1.27センチ)の肉厚を有してもよい。
【0046】
合金電極は、インゴット冶金操作または粉末冶金操作を用いて、形成されてもよい。例えば、様々な非限定的な実施形態においては、合金電極はVIMにより形成されてもよい。様々な非限定的な実施形態においては、合金電極はVIM−ESRにより形成されてもよい。このようにして、様々な非限定的な実施形態に係るトリプルメルト法は、VAR操作が、合金電極(VADER操作においては2つの電極)を、VAR装置の坩堝内に配置された合金ライナーへと融解することを含むことを特徴とする、VIM-ESR-VARを含んでもよい。様々な非限定的な実施形態においては、粉末冶金操作は、融解合金を微粒化すること、および凝固した冶金粉末を収集し電極へと固体化することを含んでもよい。粉末冶金操作の非限定的な例は、(1)供給原料から所望の合金組成を作製するためのVIMを実施するステップと、(2)融解合金を、合金粉末へと凝固する融解合金液滴へと
微粒化するステップと、(3)合金粉末に対して篩い分けを実施することにより含有物を減少させる、省略可能なステップと、(4)一定量の合金粉末を缶内に挿入し脱ガス処理を実施するステップと、(5)合金粉末を加圧することにより、合金粉末を合金電極へと固体化するステップと、を含む。
【0047】
様々な非限定的な実施形態において、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを有する合金インゴットの少なくとも1つの端部上に、端部レイヤが付着されてもよい。例えば、円筒形合金電極が管状合金ライナーへと再融解されることにより、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを含む円筒形合金インゴットが形成された後、内側インゴットコアは、円筒形インゴットの対向端部のうちの1つまたは両方の端部上において、暴露された状態に保たれてもよい。合金材料のレイヤが、インゴットの対向する端部のうちの1方または両方の端部上において暴露された内側インゴットコアの少なくとも1部分上に付着されてもよい。このようにして、円筒形インゴットの内側インゴットコアは、外周レイヤと、円筒形インゴットの1方または両方の端部上の1つまたは2つの端部レイヤと、により取り囲まれてもよい。
【0048】
様々な非限定的な実施形態において、合金端部レイヤが、合金インゴットの対向する端部のうちの1方または両方の端部に、付着および冶金接合されてもよい。例えば、合金端部レイヤは、溶着物として、インゴットの端部表面上に付着されてもよい。溶着物は、金属不活性ガス(MIG:metal inert gas)溶接、タングステン挿入ガス(TIG:tungsten insert gas)溶接、プラズマ溶接、サブマージアーク溶接、および電子ビーム溶接を含むがこれらに限定されない溶接操作を用いて、合金の端部表面の少なくとも1つの領域に冶金接合されてもよい。
【0049】
合金端部レイヤは、使用される特定の加工温度において、下層に位置する内側インゴットコアの合金よりも、延性および/または可鍛性がより高い合金材料からなってもよい。合金端部レイヤは、使用される特定の加工温度において、下層に位置する内側インゴットコアの合金よりも、より高い靭性および/またはより小さい硬度を示す合金材料からなってもよい。様々な非限定的な実施形態において、合金端部レイヤは、内側インゴットコアの下層の表面を、接触する金型の表面から遮断する。それにより、下層に位置する表面は、熱間加工中に、表面が脆化され亀裂がより生じやすくなる温度へと冷却されることがない。
【0050】
合金端部レイヤは、耐酸化性の合金材料からなってもよい。様々な非限定的な実施形態において、合金端部レイヤは、熱間加工、または他の方法の間、酸化しない。合金端部レイヤは、比較的高い剛性(例えば、比較的低い弾性係数)を示す合金材料からなってもよい。様々な非限定的な実施形態において、合金端部レイヤは、実質的に、熱間加工中に、薄厚化されない(例えば、熱間加工中、1つまたは複数の金型により力が印加されると、比較的剛性が低い合金材料は、下層に位置するインゴット表面上で薄厚化されることになる)。
【0051】
様々な非限定的な実施形態においては、端部レイヤを形成する合金材料および下層の内側インゴットコアを形成する合金は、同一の主要成分金属を有してもよい。例えば、内側インゴットコアがニッケル基合金または超合金(例えば、Alloy718、Alloy720、Rene88(商標)合金、またはWaspaloy(登録商標)合金)を含む場合、端部レイヤの合金材料も、例えばニッケル基の溶接合金(例えば、Techalloy Company/Central Wireから市販されているTechalloy606(商標)合金)等の、ニッケル基合金を含んでもよい。合金端部レイヤは、接触する金型の表面から内側インゴットコアの下層の表面を遮断するために十分な厚さに付着されてもよい。それにより、下層の表面は、熱間加工中に、下層の表面に亀裂がより生じ
やすくなる場合がある温度へと冷却されることがない。このようにして、より高い熱間加工温度は、一般に、より大きい金属材料レイヤの厚さと相関する。様々な非限定的な実施形態においては、金属材料レイヤは、0.25インチ(約0.635センチ)から0.5インチ(約1.27センチ)の厚さに、合金インゴット表面の少なくとも1つの領域上に付着されてもよい。
【0052】
様々な非限定的な実施形態において、内側インゴットコアに対して冶金接合された端部レイヤを形成する合金材料と、内側インゴットコアに対して冶金接合された外周レイヤを形成する合金材料とは、同一の主要成分金属を含んでもよい。様々な非限定的な実施形態において、内側インゴットコアに対して冶金接合された端部レイヤを形成する合金材料と、内側インゴットコアに対して冶金接合された外周レイヤを形成する合金材料とは、同一の合金である。様々な非限定的な実施形態において、内側インゴットコアに対して冶金接合された端部レイヤを形成する合金材料と、内側インゴットコアに対して冶金接合された外周レイヤを形成する合金材料とは、異なる合金である。様々な非限定的な実施形態において、内側インゴットコアに対して冶金接合された端部レイヤを形成する合金材料と、内側インゴットコアに対して冶金接合された外周レイヤを形成する合金材料とは、異なる主要成分金属を含んでもよい。
【0053】
内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤ(および、任意選択的に、内側インゴットコアの対向端部に対して冶金接合された1つまたは2つの端部レイヤ)を含むインゴットが形成された後、合金インゴットは熱処理されてもよい。例えば、様々な非限定的な実施形態においては、内側インゴットコアの合金組成および微細構造は均質化するために、合金インゴットを高温は暴露されてもよい。その高温は、内側インゴットコアを含む合金の再結晶温度よりは高く、しかも、外側レイヤおよび内側インゴットコアを含む合金の融点温度よりは低い温度であってもよい。様々な実施形態において、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤ(および、所望により、内側インゴットコアの対向する端部に冶金接合された1つまたは2つの端部レイヤ)を含むインゴットにおいては、均質化または他の熱処理が実施される間または実施された後、外側レイヤ(および/または、1つまたは2つの端部レイヤ)は内側インゴットコアから剥離することがないであろう。
【0054】
本明細書に開示された様々な非限定的な実施形態は、熱間加工操作が実施される間、合金インゴットの表面亀裂の発生が低減されることを特徴とする、インゴット処理方法および熱間加工プロセスにも関する。様々な非限定的な実施形態において、説明する方法およびプロセスは、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを有する合金インゴットを形成することを含んでもよい。外側レイヤは、内側インゴットコアを
構成している合金よりも、延性がより高い合金
を含む。外側レイヤは、合金インゴットに力を印加する間に合金インゴットに表面亀裂が発生することを低減する場合がある。様々な非限定的な実施形態において、合金インゴットは、合金インゴットに力を印加することにより、熱間加工が実施されてもよい。力は、合金インゴットの外側レイヤに対して印加されてもよい。印加された力は、合金インゴットを変形させてもよい。
【0055】
様々な非限定的な実施形態において、熱間加工操作は、鍛造操作および/または押出成形操作を含んでもよい。例えば、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを含む合金インゴットは、据込鍛造および/または引抜鍛造されてもよい。
【0056】
据込および引抜操作は、1つまたは複数のシーケンスの据込鍛造操作および1つまたは複数のシーケンスの引抜鍛造操作を含んでもよい。据込操作の間、インゴットの端部表面は、インゴットに力を印加する鍛造型と接触してもよく、それにより、インゴットの長さが圧縮され、インゴットの断面積が増加する場合がある。引抜操作の間、側部表面(例え
ば、円筒形インゴットの周辺表面)は、インゴットに力を印加する鍛造型と接触してもよく、それにより、インゴットの断面積が圧縮され、インゴットの長さが増加する場合がある。
【0057】
図5Aおよび
図5Cは引抜鍛造操作を示す。鍛造型280/280’はインゴット220/220’に対して力を印加する。力は、矢印285/285’により示されるように、インゴット220/220’の長手方向軸201/201’に対して略垂直に印加される。鍛造型280/280’は、矢印287/287’により示されるように、インゴット220/220’の長手方向軸201/201’に対して略平行に移動することにより、インゴット220/220’の略全長に沿ってインゴット220/220’に対して力を印加する。
図5Aは、外側レイヤを有しないインゴット220を示す。インゴット220の周辺表面は鍛造型280と接触する(
図5A)。
図6Cは、内側インゴットコア223’に対して冶金接合された外側レイヤ222を有するインゴット220’を示す。インゴット220’の外側レイヤ222は鍛造型280’と接触する(
図5C)。
【0058】
図5Bおよび
図5Dは、それぞれ
図5Aおよび
図5Cに示す引抜鍛造が実施された後の、インゴット220および220’の金型接触表面を示す。
図5Bに示すように、インゴット220の金型接触表面290は表面亀裂を示す。
図5Dに示すように、内側インゴットコア223に対して冶金接合された外側レイヤ222を含む、インゴット220’の金型接触表面290’は表面亀裂を示さない。外側レイヤ222は、係る外側レイヤを有しない、その他の点では同様の鍛造された合金インゴットと比較して、鍛造された合金インゴットにおいて表面亀裂の発生を減少させる。
【0059】
図6Aおよび
図6Cは据込鍛造操作を示す。鍛造型380/380’はインゴット320/320’の対向端部に対して力を印加する。力は、矢印385/385’により示されるように、インゴット320/320’の長手方向軸301/301’に対して略平行に印加される。
図6Aは、外側レイヤを有しないインゴット320を示す。インゴット320の端部は鍛造型380と接触する(
図6A)。
図6Cは、内側インゴットコア323に対して冶金接合された外側レイヤ322を含むインゴット320’を示す。外側レイヤ322は、内側インゴットコア323の周辺表面に沿って、略円筒形状の内側インゴットコア323に対して冶金接合される。外側レイヤ322は、内側インゴットコア323の対向端部に対しても冶金接合される。外側レイヤ322は鍛造型380’と接触する(
図6C)。
【0060】
図6Bおよび
図6Dは、それぞれ
図6Aおよび
図6Cに示す引据込鍛造が実施された後の、インゴット320および320’のそれぞれの金型接触表面を示す。
図6Bに示すように、インゴット320の金型接触表面390は表面亀裂を示す。
図6Dに示すように、内側インゴットコア323に対して冶金接合された外側レイヤ322を含む、インゴット320’の金型接触表面390’は表面亀裂を示さない。外側レイヤ322は、係る外側レイヤを有しないその他の点では同様の鍛造された合金インゴットと比較して、鍛造された合金インゴットにおいて表面亀裂の発生を減少させる。
【0061】
様々な非限定的な実施形態において、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを有するインゴットは、1つまたは複数の据込および引抜鍛造操作が施されてもよい。例えば、三重据込および引抜鍛造操作においては、インゴットは、最初に据込鍛造が施され、次いで、引抜鍛造が施されてもよい。据込および引抜のシーケンスは、もう2回反復され、全部で3回の連続した据込および引抜鍛造操作が行われてもよい。インゴットの1つまたは複数の金型接触表面は、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを有してもよい。
【0062】
様々な非限定的な実施形態において、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを有するインゴットは、1つまたは複数の押出成形操作が施されてもよい。例えば、押出成形操作においては、円筒形インゴットは、円形金型の中を通して強制的に送られ、それにより、インゴットの直径が減少し、長さが増加する。インゴットの1つまたは複数の金型接触表面は、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを有してもよい。
【0063】
様々な非限定的な実施形態において、本明細書に説明する方法およびプロセスは、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを含むインゴットから鍛錬されたビレットを生産するために用いられてもよい。鍛造または押出成形することにより、インゴットをビレットまたは他の方法で加工された物品へと変換することは、鍛造または押出成形による変換前の物品と比較して、細粒度がより高い構造を物品内に生成する場合がある。本明細書に説明する方法およびプロセスは、合金インゴットから鍛造または押出成形された製品(例えば、ビレット等)の歩留まりを改善する場合がある。なぜなら、外側レイヤは、鍛造操作および/または押出成形操作の間、インゴットの表面亀裂が発生することを低減する場合があるからである。例えば、比較的低い延性を有する合金内側インゴットコアに対して冶金接合された比較的延性が高い外側レイヤを含む物品は、比較的高い延性を有する合金外側レイヤを有さない、その他の点では同等の物品よりも、加工金型により生じた歪をより容易に耐える場合がある。内側インゴットコアに冶金接合された外側レイヤは、熱間加工の間、大気とインゴットとの間の温度差、および/または加工金型とインゴットとの間の温度差に対しても、より容易に耐える場合がある。このようにして、物品が加工される間、下層の内側インゴットコアにおいて表面亀裂の開始は阻止されるかまたは軽減される一方で、外側レイヤは、加工が実施される間、表面亀裂を、まったく示さないか、または軽微に示す。
【0064】
様々な非限定的な実施形態において、外側レイヤの少なくとも1部分は、熱間加工の間にインゴットから形成された製品から、熱間加工の後に除去される場合がある。例えば、研磨、剥脱、および/または、他の旋削作業が、外側レイヤの少なくとも1部分を除去するために用いられてもよい。様々な非限定的な実施形態において、外側レイヤの少なくとも1部分は、(インゴットを加工することにより形成された)ビレットを剥脱(旋盤加工)することにより、および/または、研磨することにより、および/または、他の適切な技術を用いることにより、ビレットから除去される場合がある。
【0065】
様々な非限定的な実施形態においては、様々な物品を製造するために用いられてもよい製品を形成するために、外側レイヤを有するインゴットは熱間加工が施されてもよい。例えば、本明細書に説明したプロセスは、ニッケル基、鉄基、ニッケル鉄基、またはコバルト基の合金または超合金のビレットを形成するために用いられてもよい。ビレットまたは熱間加工されたインゴットから形成された他の製品は、例えば、タービンエンジン用および様々な陸上タービン用のディスクおよびリング等のタービン部品を含むがこれらに限定されない物品を製造するために用いられてもよい。本明細書に説明された様々な非限定的な実施形態にしたがって処理されたインゴットから製造された他の物品は、バルブ、エンジン部品、シャフト、および締結具を含んでもよいがこれらに限定されない。
【0066】
以下の例示的且つ非限定的な例は、様々な非限定的な実施形態を、これらの実施形態の範囲を制限することなく、さらに説明することを意図するものである。当業者は、これらの実施例の変化例が、請求項のみにより定められる本発明の範囲内で可能であることを理解するであろう。すべての部分およびパーセントは、特記ある場合を除き、重量に基づくものである。
【0067】
実施例
実施例1
内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを備える円筒形インゴットが形成された。Alloy625ニッケル基合金(UNS06625)を含む円筒形合金ライナーが形成された。Alloy625は、表1に示す公称化学的仕様を有する。
【表1】
Alloy625パイプ(5.9375インチ(約15.081センチ)の外径×4.5945インチ(約11.670センチ)の内径)の6インチ(約15.2センチ)の区画が、合金ライナーを形成するために用いられた。6インチ(約15.2センチ)の区画は、約0.50インチ(約1.27センチ)〜約0.52インチ(約1.32センチ)の肉厚を形成するために、5.625インチ(約14.29センチ)の外径に機械加工された。合金ライナーの重量は約14.75ポンド(約6.69キログラム)であった。
【0068】
合金ライナーは、銅のVAR坩堝内に配置された。坩堝および合金ライナー組立体は、VAR装置内に配置され、坩堝の基部プレートへと固定された。Alloy718ニッケル基合金電極も、VAR装置内に配置され、ラムに固定された。Alloy718は、表2に示す公称化学的仕様を有する。
【表2】
【0069】
Alloy718電極は、3.5キロアンペアおよび25ボルトで、真空アーク再融解された。電気アークは最初、約2キロアンペアで生成され、アーク電流は直ちに3.5キロアンペアに達した。約7分間の融解時間の間、30ポンド(約13.6キログラム)のAlloy718電極がAlloy625ライナー内へと融解した(平均融解速度は4.3ポンド/分(約1.95キログラム/分))。
【0070】
図7を参照すると、結果として生じたインゴット400は、内側インゴットコア403に対して冶金接合された外側レイヤ402を備えた。外側レイヤ402と内側インゴットコア403との間の境界405は、冶金接合を備えた。内側インゴットコア403および外側レイヤ402は、同心状に配置された。
図7は、塩化第2鉄/カナダのエッチャントを用いてエッチングを実施した後のインゴットの内部長手方向断面図を示す。
図7の写真に示すように、強力且つ均一な冶金接合が、合金ライナー(Alloy625)と融解電
極合金(Alloy718)との間に達成され、それにより、Alloy718の内側インゴットコアに対して冶金接合されたAlloy625の外側レイヤを有するインゴットが形成された。
【0071】
実施例2
実施例1にしたがって形成されたインゴットの微細構造が、光学顕微鏡法を用いて撮像された。
図8Aは、インゴットのAlloy625の外側レイヤの光学顕微鏡写真である。
図8Bは、外側レイヤと内側インゴットコアとの間の境界のすぐ内側における、インゴットのAlloy718の内側インゴットコアの光学顕微鏡写真である。
図8Cは、内側インゴットコア内の中間半径位置における、インゴットのAlloy718の内側インゴットコアの光学顕微鏡写真である。
図8Dは、インゴットの外側レイヤと内側インゴットコアとの間の境界の光学顕微鏡写真である。
図8Dに示すように、強力且つ均一な冶金接合が、インゴットの外側レイヤと内側インゴットコアとの間に形成された。
【0072】
実施例3
実施例1にしたがって形成されたインゴットの化学的性質が、走査型電子顕微鏡法/エネルギー分散分光法(SEM/EDS)を用いて、定量分析された。
図9は、インゴットのAlloy625の外側レイヤとインゴットのAlloy718の内側インゴットコアとの間の境界の走査型電子顕微鏡写真である。
図9に示すように、強力且つ均一な接合が、インゴットの外側レイヤと内側インゴットコアとの間に形成された。
【0073】
インゴットのAlloy625の外側レイヤ、Alloy718の内側インゴットコア、外側レイヤと内側インゴットコアとの間の冶金接合された境界領域の、SEM/EDSを用いて判定された化学組成が、表3に示される。外側レイヤおよび内側インゴットコアに対するSEM/EDS測定値は、それぞれ境界領域から数マイクロメートルだけ外側で、および内側で、測定された。
【表3】
【0074】
Alloy625の外側レイヤの化学組成は、全構成元素に関する合金等級に対して仕様の範囲(表1)内であった。Alloy718の内側インゴットコアの化学組成は、ニッケル、ニオビウム、およびモリブデンを除いて、全構成元素に関する合金等級に対して仕様の範囲(表2)内であった。境界領域の化学組成は、チタンが比較的少なく、クロムが比較的多くあった点を除いては、Alloy625の外側レイヤの化学組成と、Alloy718の内側インゴットコアの化学組成との略中間であった。
【0075】
Alloy718の内側インゴットコアの化学組成が、SEM/EDSを用いて、境界領域から約0.5インチ(約1.27センチ)および約1インチ(約2.54センチ)内
側で、さらに2回測定された。測定結果は表4に示す。
【表4】
【0076】
Alloy718の内側インゴットコアの化学組成測定値は、境界領域から0.5インチ離れた位置で測定されたチタンレベルを除いて、全構成元素に関する合金等級に対して仕様の範囲内であった。
【0077】
実施例4
実施例1にしたがって形成されたインゴットの内側インゴットコアの化学的性質が、X線蛍光(XRF:X−ray fluorescence)分光測定法、燃焼および融解技術、およびスパーク光学発光分光法(OES:optical emission spectroscopy)を用いて、定量分析された。XRF分光測定法分析が、参照することにより本明細書に組み込まれる、ASTM E2465 − 06: Standard Test Method for Analysis of Ni−Base Alloys by X−ray Fluorescence Spectrometryにしたがって、実行された。燃焼および融解技術は、参照することにより本明細書に組み込まれる、ASTM E1019 − 08: Standard Test Methods for Determination of Carbon, Sulfur, Nitrogen, and Oxygen in Steel, Iron, Nickel, and Cobalt Alloys by Various Combustion and Fusion Techniquesにしたがって、実行された。
【0078】
Alloy718電極の化学的性質も、XRF分光測定法、燃焼および融解技術、ならびにスパークOESを用いて、定量分析された。測定された化学組成は表5に示す。
【表5】
【0079】
Alloy718の内側インゴットコアおよび初期Alloy718電極に対して測定された化学組成測定値は、全構成元素に関する合金等級に対して仕様の範囲内であった。さらに、Alloy718材料の全化学組成において測定可能な変化は、合金電極が合金ライナーへと再融解されることにより、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを備えるインゴットが形成された後は、観測されなかった。これにより、合金ライナー材料による電極の化学的成分の浸透/希釈が、ほとんどなかったか、または全くなかったことが示される。したがって、外側レイヤは容易に除去されて、仕様内のAlloy718インゴットが形成される場合がある。代替的に、例えば鍛造が施されることによりビレットを形成するために、インゴットは熱間加工されてもよく、外側レイヤが容易に除去されることにより、表面亀裂の発生が低減された、仕様内の鍛造されたAlloy718ビレットが形成される場合がある。
【0080】
以上、本発明について、様々な例示的、図示的、および非限定的な実施形態を参照して、記述してきた。しかし、当業者は、開示された実施形態(またはその一部)のうちのいずれかの、様々な代用例、変更例、または組み合わせが、請求項のみにより定められる本発明の範囲から逸脱することなく行われてもよいことを理解するであろう。したがって、本開示は、本明細書においては明示的に説明されていない追加的な実施形態を含むことが、予期および理解されるべきである。係る実施形態は、例えば、本明細書に説明された実施形態の開示されたステップ、含有物、成分、構成要素、要素、特徴、態様、特性、限定、その他のうちの任意のものを組み合わせること、変更すること、または再編することにより、獲得されてもよい。したがって、本開示は、様々な例示的、図示的、および非限定的な実施形態の記述により限定されることはなく、むしろ請求項によってのみ限定されるものである。このようにして、出願者は、本明細書において様々に説明してきた特徴を追加するよう、訴訟中に請求項を補正する権利を保持するものである。
[発明の態様]
[1]
真空アーク再融解装置の坩堝に合金ライナーを配置することと、
坩堝内で合金電極を前記合金ライナーへと真空アーク再融解することにより、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを備える合金インゴットを形成することと、
を含む、合金インゴットを形成するためのプロセス。
[2]
前記合金ライナーは、前記合金電極を構成している前記合金よりも、延性がより高い合金を含む、1に記載のプロセス。
[3]
前記合金電極は、ニッケル基合金、鉄基合金、ニッケル鉄基合金、およびコバルト基合金からなる群より選択される合金を含む、1に記載のプロセス。
[4]
前記合金電極は、Alloy718、Alloy720、Rene41(商標)、Rene88(商標)合金、およびWaspaloy(登録商標)合金からなる群より選択される合金を含む、1に記載のプロセス。
[5]
前記合金ライナーはニッケル基合金を含む、1に記載のプロセス。
[6]
前記合金インゴットを熱間加工することをさらに含み、前記熱間加工することは、前記外側レイヤに対して力を印加することを含み、前記力は前記合金インゴットを塑性変形させる、1に記載のプロセス。
[7]
前記合金インゴットを熱間加工することは、前記合金インゴットを据込および引抜鍛造することを含む、6に記載のプロセス。
[8]
前記合金インゴットを熱間加工した後、前記合金インゴットから前記外側レイヤの少なくとも1部分を除去することをさらに含む、6に記載のプロセス。
[9]
前記プロセスは、ニッケル基超合金インゴットから形成された鍛造ニッケル基超合金製品の歩留まりを改善する、6に記載のプロセス。
[10]
前記プロセスは、鋳造ニッケル基超合金インゴットから鍛錬されたニッケル基超合金ビレットを生産する、6に記載のプロセス。
[11]
真空誘導融解操作を用いて、前記合金電極を提供することをさらに含む、1に記載のプロセス。
[12]
真空誘導融解−エレクトロスラグ精錬操作を用いて、前記合金電極を提供することをさらに含む、1に記載のプロセス。
[13]
1に記載の前記プロセスにより形成される、合金インゴット。
[14]
合金インゴットに力を印加することにより、前記合金インゴットを塑性変形させることを含み、
前記インゴットは、内側インゴットコアに対して冶金接合された外側レイヤを備え、
前記外側レイヤは、前記内側インゴットコアを含む前記合金よりも、より延性が高い合金を含み、前記外側レイヤは、前記合金インゴットの表面亀裂の発生を低減させる、
合金インゴットを処理するための方法。
[15]
前記合金インゴットが変形された後、前記合金インゴットから前記外側レイヤの少なくとも1部分を除去することをさらに含む、14に記載の方法。
[16]
前記内側インゴットコアは、ニッケル基合金、鉄基合金、ニッケル鉄基合金、およびコバルト基合金からなる群より選択される合金を含む、14に記載の方法。
[17]
前記内側インゴットコアは、Alloy718、Alloy720、Rene41(商標)合金、Rene88(商標)合金、およびWaspaloy(登録商標)合金からなる群より選択される合金を含む、14に記載の方法。
[18]
前記内側インゴットコアはニッケル基超合金を含み、前記外側領域はニッケル基合金を含む、14に記載の方法。
[19]
前記合金インゴットに対して力を印加することは、前記合金インゴットを据込および引抜鍛造することを含む、14に記載の方法。
[20]
前記方法は、ニッケル基超合金インゴットから形成された鍛造ニッケル基超合金製品の歩留まりを改善する、14に記載の方法。
[21]
前記方法は、鋳造ニッケル基超合金インゴットから鍛錬されたニッケル基超合金ビレットを生産する、14に記載の方法。
[22]
14に記載の前記方法により合金インゴットから形成された熱間加工された物品。