特許第5944876号(P5944876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944876
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】レーザ光を用いた距離測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20160621BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20160621BHJP
   G01S 17/42 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   G01C3/06 120P
   G01S7/481 A
   G01S17/42
   G01C3/06 140
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-217045(P2013-217045)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-78941(P2015-78941A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】513246735
【氏名又は名称】増田 麻言
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】増田 麻言
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−270937(JP,A)
【文献】 特開2005−107097(JP,A)
【文献】 特開平06−003617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/00−3/32
G01S 7/481
G01S 17/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を用いた距離測定装置において、
レーザ光源と、
前記レーザ光源が出射したレーザ光を平行光に変換する第1の光学素子と、
揺動可能なミラーを備え、前記レーザ光を被測定物の表面に走査する光偏向手段と、
前記第1の光学素子と前記光偏向手段の間に配置され、前記光偏向手段によって走査された走査レーザ光を、前記被測定物の表面で収束させる第2の光学素子と、
前記被測定物の表面から反射された反射光の光量の最大値を検出する光量検出器と、
前記ミラーの駆動タイミングと前記第2の光学素子の駆動タイミングを同期して駆動させて、前記レーザ光の走査位置および前記第2の光学素子の焦点距離を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記第2の光学素子の焦点距離を変えながら前記反射光の光量値を予め、または測定時に前記光量検出器で検出して記憶し、この時の前記走査レーザ光の走査位置と前記第2の光学素子の焦点距離に係るパラメータを関連付けて記憶し、
前記走査レーザ光を走査し、各走査位置で前記第2の光学素子の焦点距離を変更しながら前記反射光の光量の最大値を検出し、前記光量の最大値と前記パラメータを用いて前記ミラーから前記被測定物の表面までの距離を算出する
ことを特徴とする走査レーザ光を用いた距離測定装置。
【請求項2】
請求項に記載のレーザ光を用いた距離測定装置において、
前記第2の光学素子は、印加する電圧によって焦点距離を変更する可変焦点レンズである、
ことを特徴とするレーザ光を用いた距離測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ光を用いた距離測定装置において、
前記光偏向手段は、前記ミラーを揺動させる静電駆動方式のMEMS構造体である、
ことを特徴とするレーザ光を用いた距離測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレーザ光を用いた距離測定装置において、
前記ミラーと前記第1の光学素子の間の光路に、前記反射光を前記光量検出器に導光する光路分岐手段を備えている、
ことを特徴とするレーザ光を用いた距離測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いた距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光源から予め設定された投光タイミングで、光偏向手段としてのガルバノミラーを用いてレーザ光を被測定物表面に向かって走査投光し、被測定物表面で走査反射された反射光を受光部で検出するという走査レーザ光を用いた距離測定装置が開示されている。この距離測定装置は、レーザ光源の投光タイミングと受光部による反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて、被測定物表面までの距離を計測するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−141265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている距離測定装置は、投光タイミングと反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて、被測定物表面までの距離を計測するものであるが、レーザ光源と被測定物表面との距離が短いときには、ごく短時間の計測が必要となる。したがって、この時間計測には極めて高精度な時間計測装置をはじめ、構成要素が多くなることから小型化は困難である。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型で高精度な距離測定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、レーザ光を用いた距離測定装置おいて、レーザ光源と、レーザ光源が出射したレーザ光を平行光に変換する第1の光学素子と、揺動可能なミラーを備え、レーザ光を被測定物の表面に走査する光偏向手段と、第1の光学素子と光偏向手段の間に配置され、光偏向手段によって走査された走査レーザ光を、被測定物の表面で収束させる第2の光学素子と、被測定物の表面から反射された反射光の光量の最大値を検出する光量検出器と、ミラーの駆動タイミングと第2の光学素子の駆動タイミングを同期して駆動させて、レーザ光の走査位置および第2の光学素子の焦点距離を制御する制御部と、を有し、制御部は、第2の光学素子の焦点距離を変えながら反射光の光量値を予め、または測定時に光量検出器で検出して記憶し、この時の走査レーザ光の走査位置と第2の光学素子の焦点距離に係るパラメータを関連付けて記憶し、走査レーザ光を走査し、各走査位置で第2の光学素子の焦点距離を変更しながら反射光の光量の最大値を検出し、光量の最大値と前記パラメータを用いてミラーから被測定物の表面までの距離を算出する、こととする。
【0009】
また、上記発明に加えて、第2の光学素子は、印加する電圧によって焦点距離を変更する可変焦点レンズである、ことが好ましい。
【0010】
また、上記発明に加えて、光偏向手段は、ミラーを揺動させる静電駆動方式のMEMS構造体である、ことが好ましい。
【0011】
また、上記発明に加えて、ミラーと第1の光学素子の間の光路に、反射光を光量検出器に導光する光路分岐手段を備えている、ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るレーザ光を用いた距離測定装置の構成と光路を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る制御部の主要な構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る光偏向手段の構成の1例を示す平面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る走査レーザ光の走査軌跡を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る可変焦点レンズの構造を示す斜視断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る可変焦点レンズの圧電素子と揺動ミラーの揺動との同期をとるための1例を説明する図である(可変焦点レンズが動作していない場合)。
図7】本発明の実施の形態に係る可変焦点レンズの圧電素子と揺動ミラーの揺動との同期をとるための1例を説明する図である(可変焦点レンズが動作している場合)。
図8】本発明の実施の形態に係る可変焦点レンズの焦点距離の可変前と可変後のビーム径の変化を示すグラフである。
図9】本発明の実施の形態に係るレーザ光を用いた距離測定方法の主たる工程を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施の形態に係るレーザ光を用いた距離測定方法を模式的に示す説明図である。
図11】本発明の実施の形態に係るレーザ光を用いた他の距離測定方法の主たる工程を示すフローチャートである。
図12】本発明の実施の形態に係るレーザ光を用いた他の距離測定方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るレーザ光を用いた距離測定装置1について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(レーザ光を用いた距離測定装置1の構成)
図1は、本実施の形態に係るレーザ光を用いた距離測定装置1の構成と光路を示すブロック図である。なお、以降の説明では、レーザ光を用いた距離測定装置1を単に距離測定装置1と表し説明する。距離測定装置1は、レーザダイオード(半導体レーザ)などのレーザ光源2と、レーザ光源2が出射したレーザ光R1を平行光に変換する第1の光学素子3と、レーザ光R1を被測定物4および測定部5に向かって偏向走査する光偏向手段6を備えている。さらに、距離測定装置1は、第1の光学素子3と光偏向手段6の間に配置されると共に、光偏向手段6によって走査された走査レーザ光R2を、被測定物4の測定部5の表面で収束させる(焦点を結ぶこと)第2の光学素子7と、測定部5の表面から反射された反射光R3の光量を検出する光量検出器8を備えている。また、光偏向手段6は、揺動可能な揺動ミラー9を備えている。そして、第1の光学素子3と揺動ミラー9の間のレーザ光R1の光路には、反射光R3を分岐して光量検出器8に導光する光分岐手段としてのハーフミラー10を備えている。
【0015】
上述したレーザ光源2、第1の光学素子3、光偏向手段6、第2の光学素子7、光量検出器8、およびハーフミラー10などの光学系要素は、筐体11内に格納されている。筐体11の側面には、走査レーザ光R2が所定の範囲で走査可能な開口部(図示は省略)が形成されている。なお、距離測定装置1は、上述の光学系要素を制御する制御部12を備えている。
【0016】
第1の光学素子3は、レーザ光源2から出射されたレーザ光R1を平行光に変換する光学素子であって、本実施の形態ではコリメータレンズなどが用いられる。また、光偏向手段6は、揺動ミラー9を含む静電駆動方式のMEMS構造体である。本実施の形態では、第2の光学素子7として、焦点距離を任意に変更可能な可変焦点レンズを例示している。よって、以降の説明では、第2の光学素子7を可変焦点レンズ7と表す。光偏向手段6の構造は図3を参照し、第2の光学素子7の構造は図5を参照して後述する。
【0017】
ここで、図1を参照してレーザ光R1、反射光R3の光路について説明する。レーザ光源2が出射したレーザ光R1は、第1の光学素子3で平行光に変換される。平行光に変換されたレーザ光R1は、ハーフミラー10、および第2の光学素子7を通って光偏向手段6の揺動ミラー9に投光される。そして、揺動ミラー9を揺動させて被測定物4を含む測定対象領域内にレーザ光を走査投光する。なお、この走査されたレーザ光を走査レーザ光R2と表す。照射された走査レーザ光R2は、測定部5の表面で反射される。光偏向手段6の駆動タイミングと第2の光学素子7の駆動タイミングは、同期させている。このため、反射光R3は、被測定物4のレーザ光が当たる各位置で光径が絞られたものとなる。反射光R3は、レーザ光源2から揺動ミラー9に達する光路を逆に辿り、ハーフミラー10でこの光路から光分岐されて光量検出器8に導光される。なお、光量検出器8は、たとえばフォトダイオードなどの受光素子であって反射光R3の光量を検出する。
【0018】
本実施の形態の距離測定装置1は、測定部5の表面で走査レーザ光R2が収束した位置(焦点を結んだ位置)の反射光量が最大値になること利用するものであって、揺動ミラー9の駆動によるレーザ光の走査位置、第2の光学素子7による焦点距離の制御は、制御部12によって制御される。続いて、距離測定装置1の制御部12の構成について、図2を参照して説明する。
【0019】
図2は、本実施の形態に係る制御部12の主要な構成を示すブロック図である。ブロック図の左辺側に図示する光学系要素の構成は図1で説明しているので、ここでは説明を省略する。制御部12は、レーザ光源2の駆動制御を行う光源駆動制御部13、可変焦点レンズ7の焦点距離を制御する可変焦点レンズ制御部14、揺動ミラー9の駆動を制御する揺動制御部15、および検出した反射光R3の光量を記憶する光量記憶部16を備えている。光源駆動制御部13は、レーザ光源2の出力と、レーザ光R1の出射タイミングを制御する。可変焦点レンズ制御部14は、可変焦点レンズ7に印加する電圧を制御し、走査レーザ光R2の収束位置(焦点位置)を制御する。焦点位置が測定部5の表面にあるとき、反射光R3はその多くが反射し、検出光量は最大値となる。
【0020】
揺動制御部15は、揺動ミラー9の揺動方向、揺動角度、および揺動タイミングを制御することで、走査レーザ光R2の走査方向および走査速度を制御しつつ、走査レーザ光R2の走査位置情報を取得する。光源駆動制御部13と可変焦点レンズ制御部14と揺動制御部15の駆動タイミングは同期している。つまり、レーザ光源2からのレーザ光R1の出射タイミングと光偏向手段6による走査タイミングと第2の光学素子7の駆動タイミングは同期している。したがって、反射光R3は、レーザ光源2から揺動ミラー9に向かう光路を辿るようにしてハーフミラー10で光分岐されて、光量検出器8で所定の位置へ放射された走査レーザ光R2の反射光として受光することが可能となる。光量検出器8で検出された光量のうち最大光量検出値の情報は、光量記憶部16に記憶される。
【0021】
さらに、制御部12は、走査レーザ光R2の走査情報と、可変焦点レンズ制御部14の制御情報(焦点距離を制御する情報)と反射光の最大光量検出値を関連付けてパラメータ化し記憶するパラメータ記憶部17を備える。そして、パラメータ記憶部17の情報を用いて揺動ミラー9から測定部5の表面までの距離を算出する演算部18を備え、距離情報をデータ変換部19に入力する。
【0022】
データ変換部19は、走査位置情報と距離情報とを関連付けしてマトリックス情報に変換する。ただし、どのように距離情報を出力するかは、データの活用方法にしたがって対応することが可能である。たとえば、走査位置(最大光量の検出位置)と距離を一覧表で出力すること、このデータに基づき3次元画像に変換すること、あるいは、揺動ミラー9から測定部5の表面までの距離が最大になる位置や最小になる位置などにデータ変換することが可能である。そして、変換されたデータは、測定結果出力インターフェース20に出力する。なお、測定結果出力インターフェース20は、距離測定装置1から離れた位置に配置してもよく、データ変換部18から通信手段を用いて、PC(パソコン)や携帯端末などに送信することも可能である。
【0023】
(光偏向手段6の構成)
図3は、本実施の形態に係る光偏向手段6の構成の1例を示す平面図である。図3に図示した光偏向手段6は、揺動ミラー9が二次元に揺動可能な構成の1例を示している。なお、図示の横方向をX方向、X方向に直交する縦方向をY方向と表し説明する。光偏向手段6は、静電駆動方式のアクチュエータであって、ベース基板30に固定部と可動部と導電層とを半導体製造技術を用いて形成したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)構造体である。ベース基板30は、厚さが一様な四角形のシリコン基板(半導体基板)などで形成されている。ベース基板30の中央部には、フレーム31が形成されており、フレーム31はY方向両側を第1トーションバー32のみでベース基板30に接続されている。第1トーションバー32は、フレーム31のX方向中央部に配置され、第1トーションバー32のX方向中央部はフレーム31のベース基板30に対する第1回転軸33である。
【0024】
フレーム31の中央部には、円形の可動部34が形成されており、可動部34はX方向両側を第2トーションバー35のみでフレーム31に接続されている。第2トーションバー35は、可動部34のY方向中央部に配置され、第2トーションバー35のY方向中央部は可動部34のベース基板30に対する第2回転軸36となる。なお、第2回転軸36は、フレーム31に対する回転軸でもある。可動部34の表面は鏡面仕上げされて揺動ミラー9となる。揺動ミラー9の表面には、光の反射率を高めるために、たとえば、アルミニウムなどの反射膜を設ける構造としてもよい。
【0025】
フレーム31のY1方向端部には、第1トーションバー32のX1方向側に、第1櫛歯電極37がY1方向に向かって配列されている。第1櫛歯電極37は、X1方向に延伸されている。第1トーションバー32のX2方向側には、第1回転軸33に対して第1櫛歯電極37に対して対称形の第2櫛歯電極38が形成されている。一方、フレーム31のY2方向端部にも、第2回転軸36に対してY1側の第1および第2櫛歯電極と対称形となる第1櫛歯電極37および第2櫛歯電極38が形成されている。
【0026】
ベース基板30には、既述した第1櫛歯電極37に間挿される第3櫛歯電極39と、第2櫛歯電極38に間挿される第4櫛歯電極40が形成されている。第1櫛歯電極37と第3櫛歯電極39、第2櫛歯電極38と第4櫛歯電極40の間には、一定のギャップが設けられている。
【0027】
可動部34のX1方向端部には、第2トーションバー35のY1方向側に、第5櫛歯電極41がX1方向に向かって配列されている。第5櫛歯電極41は、Y1方向に延伸されている。第2トーションバー35のY2方向側には、第2回転軸36に対して第5櫛歯電極41と対称形の第6櫛歯電極42が形成されている。一方、可動部34のX2方向端部には、第1回転軸33に対してX1側の第5櫛歯電極41および第6櫛歯電極42と対称形となる第5櫛歯電極41および第6櫛歯電極42が形成されている。
【0028】
ベース基板30には、既述した第5櫛歯電極41に間挿される第7櫛歯電極43と、第6櫛歯電極42に間挿される第8櫛歯電極44が形成されている。第5櫛歯電極41と第7櫛歯電極43、第6櫛歯電極42と第8櫛歯電極44の間には、一定のギャップが設けられている。第1櫛歯電極37から第8櫛歯電極44のそれぞれの表面(図示されている側の表面)には不図示の導電層が形成されている。
【0029】
なお、ベース基板30のY1方向端部およびY2方向端部には、第1トーションバー32のX方向両側にベース基板30を右側領域45と、左側領域46に分割する溝47および溝48が形成されている。2本の溝47,48で挟まれた領域は接続領域49である。一方、可動部34は、右側のトーションバー35とフレーム31の接続部を電気的に分割する溝50と、左側の第2トーションバー35のフレーム31との接続部を電気的に分割する溝51が形成されている。このように、光偏向手段6は、溝47,48,50,51によって電気的に4つの領域に分割され、それぞれに異なった電位の電力を供給することを可能にしている。
【0030】
(揺動ミラー9の駆動方法)
まず、第1回転軸33回りの揺動について説明する。ベース基板30の右側領域45と左側領域46に、それぞれ異なる電位の電力を供給すると、間挿された櫛歯電極間に電界が発生し、たとえば、右側領域45側で、第1櫛歯電極37と第3櫛歯電極39の間に吸引力が働くとすると、第1トーションバー32が捩じられて、第1回転軸33を回転軸として揺動ミラー9および可動部34を含むフレーム31が回転する。可動部34の鏡面に仕上げられた表面である揺動ミラー9をY2方向から視認すると、揺動ミラー9は、時計回りに回転する。
【0031】
逆に、右側領域45で第1櫛歯電極37と第3櫛歯電極39の間に反発力が働くように電力を供給すると、揺動ミラー9は、反時計回りに回転する。その時の回転角度(揺動角度)は、供給電圧によって制御可能であり、電圧値および電圧印加タイミングは、揺動制御部15によって制御される。
【0032】
ここで、図3で示すX方向を水平方向とすれば、揺動ミラー9は、第1回転軸33を回転軸として揺動され、走査レーザ光R2は、水平方向に往復走査可能となる。フレーム31は、ベース基板30に対して可動部といえる。そして、揺動ミラー9は、揺動制御部15によって、水平方向(X方向)における走査方向(揺動が時計回りか、反時計回りか)、揺動角度、揺動速度が制御可能とされている。
【0033】
次に、揺動ミラー9の第2回転軸36回りの揺動について説明する。可動部34とフレーム31を接続する第2トーションバー35の表面には不図示の導電層が形成されている。そして、可動部34と第2トーションバー35と第5櫛歯電極41および第6櫛歯電極42は、同電位となる。
【0034】
フレーム31の第2回転軸36よりY1方向側とY2方向側に、それぞれ異なる電位の電力を供給すると、間挿された櫛歯電極間に電界が発生する。たとえば、Y1方向側領域で、第7櫛歯電極43と第8櫛歯電極44の間に吸引力が働くとすると、第2トーションバー35が捩じられて、第2回転軸36を回転軸として揺動ミラー9がフレーム31に対して回転する。揺動ミラー9をX2方向から視認すると、揺動ミラー9は、反時計回りに回転する。
【0035】
逆に、Y1方向側で第7櫛歯電極43と第8櫛歯電極44の間に反発力が働くように電力を供給すると、揺動ミラー9は、X2側から視認して時計回りに回転する。第2回転軸36は、第1回転軸33に対して直交しているので、揺動ミラー9は、第2回転軸36を回動中心として揺動することになる。そして、揺動ミラー9は、既述した水平方向の走査(揺動)と同様に、揺動制御部15によって、垂直方向(Y方向)における走査方向(揺動)が時計回りか、反時計回りか)、揺動角度、揺動速度を制御可能となっている。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態の光偏向手段6は、間挿された各櫛歯電極に発生する電界によって揺動ミラー9を揺動する静電駆動方式のアクチユエータを用いており、水平方向の走査と垂直方向の走査を相対的に組み合わせることによって、水平方向および垂直方向の二次元駆動が可能となっている。したがって、走査レーザ光R2の二次元走査が可能である。この二次元走査としては、図4に示すラスタ走査や不図示のリサージュ走査などが可能である。
【0037】
図4は、走査レーザ光R2の走査軌跡を示す図である。図4に示す走査軌跡は、ラスタ走査の例であって、水平走査対垂直走査の比が10:1の場合を示している。走査開始位置Tから水平走査と垂直走査を10:1の割合で、左側走査端部S1から右側走査端部S2を往復しながら走査を行い、走査終端位置Eまで垂直方向に走査して走査開始位置Tに戻す。この走査サイクルを1走査サイクル(または1測定サイクル)とする。または、図4に示すように、図中矢印で示す走査を走査開始位置Tから走査終端位置Eまで走査し、この走査軌跡の間を補完するように、走査終端位置Eから走査開始位置Tまで左側走査端部S1から右側走査端部S2を往復する走査を走査1サイクル(測定1サイクル)としてもよい。
【0038】
(第2の光学素子7の構造)
続いて、第2の光学素子としての可変焦点レンズ7の構造について説明する。可変焦点レンズ7は、第1の光学素子3から入射される走査レーザ光R2を、被測定物4の被走査面上で走査レーザ光R2のスポット径を均一、かつ最小にするために焦点距離を変化させるものである。
【0039】
図5は、可変焦点レンズ7の構造を示す斜視断面図である。可変焦点レンズ7は、可変焦点レンズ部53と固定レンズ部54によって構成されている。可変焦点レンズ部53は、円環状のスペーサ55,55の厚さ方向両側に透光性弾性膜56を陽極接合などの接合手段によって接合され構成されている。スペーサ55,55は、シリコンなどで形成されており、透光性弾性膜56は、薄膜のガラスダイヤフラムなどから形成されている。図5に示すように、上方側の透光性弾性膜56の表面側および下方側の透光性弾性膜56の表面側には、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電素子57がスパッタ等の成膜方法によって円環状に形成されている。圧電素子57の中央部は、走査レーザ光R2(反射光R3含む)が透過する開口部となっている。
【0040】
固定レンズ部53は、レンズホルダ60の内周段部と保持リング61との間に固定対物レンズ62を挟持した状態で接着等の固定手段によって固定して構成されている。そして、上述した可変焦点レンズ部52と固定レンズ部53は、接着等の手段により外周部が互いに接合されて一体化されている。
【0041】
2枚の透光性弾性膜56とスペーサ55とで形成された空間には、透光性物質からなる動作流体58が充填されている。可変焦点レンズ7は、全体として、たとえば凸レンズ形状をしている。本実施の形態では、圧電素子57に電圧を印加すると、電圧値に応じて圧電素子57が収縮または伸長し、スペーサ55と透光性弾性膜56で囲まれた動作流体58の形状が変化する。この形状変化によって透光性弾性膜56の曲率が変化し、可変焦点レンズ7の焦点距離が変化する。可変焦点レンズ7を凸レンズとすれば曲率が小さくなると、焦点距離は遠くなる。したがって、圧電素子57に印加する電圧を徐々に高めていくと、電圧の大きさに対応して可変焦点レンズ7の焦点距離が徐々に遠くなる(または近くなる)ように変化させることが可能である。この可変焦点レンズ7の駆動を揺動ミラー9の揺動と同期させることにより、走査レーザ光R2の焦点距離が変わるように構成されている。
【0042】
なお、透光性弾性膜56は、中央部の膜厚が外周部に比べて徐々に薄くなるような膜厚分布を有している。このことにより、可変焦点レンズ7の光学収差を低減することを可能にしている。
【0043】
なお、本実施の形態の距離測定装置1は、可変焦点レンズ7の駆動タイミングと、揺動ミラー9の揺動駆動タイミングを同期させている。可変焦点レンズ7による焦点距離の制御は、揺動ミラー9から出射される走査レーザ光R2が被測定物5の表面に収束するように行われる。走査レーザ光R2が被測定物5の表面で収束している(焦点がその位置で結ばれている)と、被測定物5からの反射光の光量は最大値となる。本実施の形態に係る距離測定装置1は、可変焦点レンズ7の焦点距離と、光量検出器8によって検出する最大光量値、および走査レーザ光R2の走査位置との相関関係を利用する装置である。
【0044】
ここで、可変焦点レンズ7の焦点距離の調整について図6図8を参照して説明する。図6図7は、可変焦点レンズ7の圧電素子57の駆動と揺動ミラー9の揺動との同期をとるための1例を説明する図であり、図6は可変焦点レンズ9Aが動作していない場合を表し、図7は可変焦点レンズ9Aが動作している場合を表す図である。また、図8は、可変焦点レンズの焦点距離の可変前と可変後の主ビーム径の変化を示すグラフである。ここで、主ビーム径とは、走査レーザ光R2を被測定物4に当てたときの被測定物4における主光束の直径である。なお、図6図7で示す構成は、図1の距離測定装置1とは異なるものであり、可変焦点レンズ7の駆動と揺動ミラー9の揺動との同期をどのように行なうかを調べるためのものである。各符号は距離測定装置1の各部材と同様のものであるため、同じ符号に「A」を付加してある。なお、図6図7では、揺動ミラー9Aと被測定物4Aの間の光路にハーフミラー10Aを備え、反射光R3を受光する光量検出器8Aを図1の距離測定装置1とは異なる位置に配置している。図6図7に記載のP1およびP2は、各走査線上の主ビームを模式的に示したものである。
【0045】
可変焦点レンズ7Aで焦点距離が決定される走査レーザ光R2は、揺動ミラー5で反射され、被走査面、たとえば、被測定物4A上を走査するようになっている。図6に示すように、第1の光学素子3からの平行光は可変焦点レンズ7Aによって所定の位置で最小のビーム径となる。この例では可変焦点レンズ7Aに電圧80Vを印加したときにレンズの焦点距離が最も短くなり、可変焦点レンズ7から30cmの位置(図中a1の位置)で最小のビーム径となる。可変焦点レンズ7Aに電圧75Vを印加したときには可変焦点レンズ7Aの焦点距離が長くなり、可変焦点レンズ7Aから35cmの位置(図中a2の位置)で最小のビーム径となる。このように、可変焦点レンズ7Aは印加する電圧で焦点距離を任意に設定することができる。
【0046】
図6に示すように、可変焦点レンズ7Aに電圧を印加せずに揺動ミラー9Aを揺動すると(可変前)、そのビーム径は揺動の中心で最も小さくなり、揺動の両端に行くほど径は大きくなる(図8の可変前を参照。)。図7に示すように、可変焦点レンズ7Aに電圧を印加する際に揺動ミラー9Aの揺動状態に合わせ、その印加電圧を変化させる可変後では、ビーム径は揺動中心から離れてもほぼ同じとなる(図8の可変後を参照。)。
【0047】
(走査レーザ光を用いた距離測定方法)
図9は、レーザ光を用いた距離測定方法の主たる工程を示すフローチャートであり、図10は、レーザ光を用いた距離測定方法を模式的に示す説明図である。図9図10を参照してレーザ光を用いた距離測定方法を説明する。
【0048】
まず、距離測定装置1を起動してレーザ光の走査を開始する(ステップS1)。次いで、図10に示す実施例では、可変焦点レンズ7の焦点距離を可変焦点レンズ制御部13によって最短焦点a1で走査レーザ光R2の焦点を結ぶように調整された走査レーザ光R2を当てる(ステップS2)。そして、図10に示すM1からM2に向かう方向、またはその逆方向に走査レーザ光R2を走査し、各走査位置における反射光量を光量検出器8で検出し、光量記憶部16に記憶する(ステップS3)。反射光が検出されない場合には、「0」を記憶する。この実施例では、走査線上で、焦点の位置が直線になるように可変焦点レンズ7の焦点距離の調整を行う。可変焦点レンズ制御部14と揺動制御部15は同期しているため、走査位置と、この各走査位置における光量の検出値は関連付けることが可能である。なお、走査レーザ光R2の走査は、図4に示すラスタ走査を用いるものとし、走査開始位置Tから走査終端位置Eまで2回走査したところで、次の工程に移行する。
【0049】
次に、可変焦点レンズ7の焦点位置を、揺動ミラー9から位置a1よりも遠ざかる方向の位置a2で焦点を結ぶように調整された走査レーザ光R2を当てる(ステップS4)。そして、焦点位置a1のときと同様な走査軌跡で走査レーザ光R2を走査し、各走査位置における反射光量を光量検出器8で検出し、光量記憶部16に記憶する(ステップS5)。位置a1から位置a2への焦点距離の移動は、予め設定された間隔とする。
【0050】
このようにして、各走査線上で検出した反射光量のうちの最大値と、可変焦点レンズ7の焦点距離パラメータを関連付けてパラメータ記憶部17に記憶する(ステップS6)。可変焦点レンズ7のパラメータは、光量の最大値を検出した走査位置と、そのときの可変焦点レンズ7(圧電素子57)に印加した電圧値を含む。このようにして、揺動ミラー9からの距離を位置a1、位置a2からさらに遠ざかる方向に移動させて、可変焦点レンズ7の焦点距離の調整可能な範囲までレーザ光の走査と、反射光の光量の検出とを繰り返す。
【0051】
被測定物4の測定可能範囲、または可変焦点レンズ7の焦点距離の調整可能な範囲の走査を測定1サイクルとしたとき、測定1サイクルが終了したかを判定し(ステップS7)、終了(YES)と判定した場合には、次のステップに移行する。未終了(NO)と判定した場合には、走査と反射光量の検出を測定1サイクルが終了するまで継続する。
【0052】
演算部19は、測定1サイクルが終了した時点で、最大光量を検出した瞬間の可変焦点レンズ7(圧電素子57)に印加した電圧値の差から、揺動ミラー9から各測定部までの距離を算出し(ステップS8)、最大光量値を検出した走査位置(二次元位置)と関連付けて、データ変換部19で三次元データ化する(ステップS9)。そして、測定結果出力インターフェース20によって、測定結果を出力する(ステップS10)。たとえば、揺動ミラー9から走査レーザ光R2が焦点を結ぶ位置までの実距離と、この距離に対応した可変焦点レンズ7(圧電素子57)に印加する電圧値を関連付けておけば、揺動ミラー9から反射光の最大光量値を検出した測定部5の表面までの絶対距離(実距離)として算出することが可能となる。
【0053】
測定結果の出力方法としては、走査位置(最大光量の検出位置)と、その位置の揺動ミラー9から測定部5の表面までの距離の一覧表で出力すること、このデータに基づき三次元画像に変換して出力すること、あるいは、揺動ミラー9から測定部5の表面までの距離が最大になる位置や最小になる位置などにデータを変換して出力することが可能である。
【0054】
(レーザ光を用いた他の距離測定方法)
続いて、レーザ光を用いた他の距離測定方法を図11および図12を用いて説明する。図11は、レーザ光を用いた他の距離測定走査方法の主たる工程を示すフローチャートである。図12は、レーザ光を用いた他の距離測定方法を模式的に示す説明図である。
【0055】
まず、距離測定装置1を起動してレーザ光の走査を開始する(ステップS1)。次いで、最短焦点位置b1(図12参照)で焦点を結ぶよう焦点位置を調整する(ステップ2)。そして、図12に示すM1からM2に向かう方向、またはその逆方向に向かう方向に走査レーザ光R2を走査し、各走査位置における反射光量を光量検出器8で検出し、光量記憶部16に記憶する(ステップS3)。反射光が検出されない場合には、「0」を記憶する。図12に示す実施例では、走査線上で、焦点の位置が円弧状になるように可変焦点レンズ7の焦点距離の調整を行う。可変焦点レンズ制御部14と揺動制御部15は同期しているため、走査位置と、各走査位置における光量の検出値は関連付けることができる。なお、走査レーザ光R2の走査は、図4に示すラスタ走査を用いるものとし、走査開始位置Tから走査終端位置Eまで2回走査したところで、次の工程に移行する。
【0056】
次に、可変焦点レンズ7の焦点距離を、揺動ミラー9から位置b1よりも遠ざかる方向の位置b2に焦点を結ぶように焦点位置を調整する(ステップS4)。そして、位置b1のときと同様な円弧状の走査軌跡で走査レーザ光R2を走査し、各走査位置における反射光量を光量検出器8で検出し、光量記憶部16に記憶する(ステップS5)。
【0057】
このようにして、各走査線上で検出した反射光量のうちの最大値と、可変焦点レンズ7のパラメータを関連付けてパラメータ記憶部17に記憶する(ステップS6)。可変焦点レンズ7のパラメータとしては、光量の最大値を検出した走査位置と、そのときの可変焦点レンズ7(圧電素子57)に印加した電圧値を含む。このようにして、揺動ミラー9からの距離を位置b1、位置b2からさらに遠ざかる方向に移動させて、可変焦点レンズ7の焦点距離の調整可能な範囲でレーザ光の走査と反射光の光量の検出を繰り返す。工程S6以降は、第1実施例と同じ工程を実行する。ただし、この距離測定方法本実施例では、走査線が円弧状になるため、走査軌跡の中心部から外側では、揺動ミラー9から焦点が結ぶ位置までの距離を、図10に示した走査線が直線になる実施例における同じ走査位置の距離と同じになるように補正する。
【0058】
以上説明した実施の形態に係るレーザ光を用いた距離測定装置1は、光偏向手段6の揺動ミラー9によって走査レーザ光R2を二次元走査し、焦点位置が制御済みの可変焦点レンズ7、または可変焦点レンズ7によって測定部5の表面に焦点が結ぶように焦点位置を調整し、この焦点位置で、測定部5からの反射光の光量が最大となることを利用して揺動ミラー9から測定部5までの距離を測定するものである。このような距離測定装置1は、特許文献1に開示された距離測定装置がレーザ光源からの投光タイミングと受光部による反射光の受光タイミングの時間差を用いて被測定物までの距離を算出するものに比べ、揺動ミラー9から被測定物4までの距離が短くても高精度な距離測定が可能となる。さらに、高精度な時間計測装置は必要なく、装置の構成要素が少なくできることから小型化しやすい。
【0059】
また、レーザ光を用いた距離測定装置1は、光偏向手段6によって走査レーザ光の走査位置を認識し、反射光の最大光量値と可変焦点レンズ7の焦点距離と印加電圧を含むパラメータとを関連づけて、揺動ミラー9から測定部5の表面までの距離を算出して出力する。したがって、二次元の走査位置と距離の三次元情報を得ることが可能となる。
【0060】
また、レーザ光を用いた距離測定装置1は、揺動ミラー9の駆動タイミングと可変焦点レンズ9の駆動タイミングを同期させている。揺動ミラー9の駆動タイミング(言い換えれば、走査レーザ光R2の走査位置)と、反射光R3の最大光量検出をした瞬間の可変焦点レンズ7に印加した電圧値から揺動ミラー9から測定部までの相対距離を算出できる。さらに、揺動ミラー9の駆動タイミングと可変焦点レンズ9の駆動タイミングを同期させていることから、反射光R3は、レーザ光源2から揺動ミラー9に向かうレーザ光R1の光路を辿りハーフミラー10で光分岐して、光量検出器8で受光することが可能となり、往路および復路の光路がほぼ同じになるため、光学系の小型化を可能にする。
【0061】
また、走査レーザ光を用いた距離測定装置1は、第2の光学素子として可変焦点レンズ7を用いている。この可変焦点レンズ7は、圧電素子57の変位によって焦点距離を変更するものである。圧電素子57は、電圧印加に対して瞬間的に変位することから、揺動ミラー9の駆動タイミングに可変焦点レンズ7の駆動を同期させることが可能となる。
【0062】
また、レーザ光を用いた距離測定装置1は、光偏向手段6として、揺動ミラー9と、揺動ミラー9を揺動させる静電駆動方式のMEMS構造体(アクチュエータ)で構成されている。MEMS構造体は、半導体製造技術を活用して精度よく製造可能であり、走査レーザ光R3の走査位置を高精度に制御可能であり、しかも応答性にも優れる。このように、静電駆動方式を採用することで、小型化、低騒音化および低消費電力化が可能となる。
【0063】
また、レーザ光を用いた距離測定装置1は、揺動ミラー9と第1の光学素子3の間の光路に、反射光R3を光量検出器8に導光する光路分岐手段としてのハーフミラー10を備えている。反射光R3の多くは、測定物5の表面で反射し、レーザ光源2から揺動ミラー9に向かうレーザ光R1の光路を辿るようにして進み、この光路内に配置されたハーフミラー10で反射光R3のみを光分岐して、光量検出器8に導光させることから、光学系の小型化が可能となる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態では、レーザ光を用いた距離測定装置1について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更実施が可能である。たとえば、揺動ミラー9などを設けずに、可変焦点レンズ7から出射する光を直接走査するようにしてもよい。また、出射する光をレーザ光としているが、被走査面(被測定部表面)の種類によっては他の光としてもよい。また、以上説明した実施の形態は、レーザ光を走査しているが、特定点の距離を測定する場合などでは、レーザ光を走査しない場合にも適用できる。
【0065】
また、反射光R3の最大光量を検出して、そのときの可変焦点レンズ7の焦点距離から揺動ミラー9から測定部5の表面までの距離を算出しているが、光量と、その光量となる可変焦点レンズ7の焦点距離を対応させておけば、距離測定が可能となる。ただし、このような場合には、被測定物4が可変焦点レンズ7の最小焦点距離よりも遠くにあることが条件となる。また、最大光量の検出は、距離の許容誤差範囲で幅を持たせてもよく、この範囲内の光量を最大光量と判定するようにしてもよい。
【0066】
また、第1の光学素子3としてコリメータレンズを採用しているが、このコリメータレンズを省略することや、完全な平行光ではなく、略平行光とするレンズを採用してもよい。
【0067】
また、本発明のレーザ光を用いた距離測定装置1は、距離測定に限らず、反射光の光量を検出することを利用して、光走査型の二次元バーコード読み取り装置、車載用のレーザレーダ装置、立体の外形を三次元画像に取り込む装置などに応用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…(レーザ光を用いた)距離測定装置
2…レーザ光源
3…第1の光学素子(コリメータレンズ)
4…被測定物
5…測定部
6…光偏向手段
7…第2の光学素子(可変焦点レンズ)
8…光量検出器
9…揺動ミラー
10…光分岐手段(ハーフミラー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12