(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒形状の外周壁と、第一の流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、前記隔壁及び前記外周壁の少なくとも一方は、気孔率が20%以下に緻密化されている、セラミックスを主成分とするハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体を被覆し、前記ハニカム構造体の前記セルを流れる前記第一の流体と前記ハニカム構造体の外部を流れる第二の流体とを混合させない被覆部材と、を備え、
前記ハニカム構造体の前記外周壁に、軸方向において前記ハニカム構造体の全長にわたらず一部に形成されているスリット、及び/又は、前記ハニカム構造体が前記被覆部材内に直列に複数配置されており、少なくとも前記第一の流体の入口側の前記ハニカム構造体の前記外周壁に形成されているスリットを少なくとも1つ有し、
前記セルを流通する前記第一の流体と、前記被覆部材の外側を流通する前記第二の流体とが混合しない状態で、前記ハニカム構造体の前記外周壁及び前記被覆部材を介して前記第一の流体と前記第二の流体を熱交換させる熱交換部材。
前記外周壁の前記スリットと通じる前記セルのうち少なくとも一つが、形状の一部が前記外周壁で構成されている、内側の前記セルとは異なる形状のパーシャルセルである請求項1に記載の熱交換部材。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0020】
図1Aに本発明の熱交換部材10の一実施形態の斜視図を示す。また、
図1Bは、熱交換部材10を構成するハニカム構造体1と、被覆部材11とを一体とする前を示す斜視図である。さらに、
図2は、ハニカム構造体1の一部拡大図である。
【0021】
図1Aに示すように、熱交換部材10は、ハニカム構造体1と被覆部材11(例えば、金属管12)とを備える。ハニカム構造体1は、筒形状の外周壁7と、第一の流体の流路となる複数のセル3を区画形成する隔壁4とを有し(
図2等参照)、セラミックスを主成分とする。熱交換効率を向上させるために、ハニカム構造体1は、隔壁4及び外周壁7の少なくとも一方が緻密化されていることが好ましい。緻密化されたセラミックスの気孔率としては、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。そして、
図2に示すように、ハニカム構造体1は、外周壁7に、少なくとも1つのスリット15を有する。
図1Bに示す実施形態は、複数のスリット15が、一方の端面2から他方の端面2まで、外周壁7に形成されている。被覆部材11は、第一の流体と第二の流体との間での熱交換可能にハニカム構造体1を被覆している(
図1Bは、被覆させる前を示す)。熱交換部材10は、セル3を流通する第一の流体と、被覆部材11(例えば金属管12)の外側を流通する第二の流体とが混合しない状態で、ハニカム構造体1の外周壁7及び被覆部材11(金属管12)を介して第一の流体と第二の流体を熱交換させる。
【0022】
被覆部材11がハニカム構造体1の外周面7hを被覆しているため、ハニカム構造体1の内部を流れる第一の流体とハニカム構造体1の外部を流れる第二の流体とを混合させずに、それぞれを流通させ、熱交換することができる。外周壁7や隔壁4に熱を伝導させて、第一の流体と第二の流体との熱交換を行わせると、外周壁7や隔壁4において場所により温度差が生じる。こうした温度差は熱に伴う膨張や収縮の度合いの差を生み、その結果、外周壁7や隔壁4に熱応力を生じさせる。この熱応力は、外周壁7や隔壁4の歪みや割れの原因になりうる。本発明の熱交換部材10では、ハニカム構造体1の外周壁7に少なくとも1つ以上のスリット15が設けられているので、外周壁7に生じる熱応力を緩和させ、ひいては外周壁7や隔壁4での歪みや割れの発生を抑えることができる。
【0023】
図2に示すように、外周壁7のスリット15と通じるセル3のうち少なくとも一つが、内側のセル3(完全セル3q)とは異なる形状のパーシャルセル3pであることが好ましい。パーシャルセル3pは、第一の流体が流れにくく、パーシャルセル3pを形成する外周壁7にスリット15を形成することにより、パーシャルセル3pの開口面積が増加し、第一の流体の流れが改善する。つまり、パーシャルセル3pを形成する外周壁7にスリット15を形成することにより、熱応力を緩和し、熱交換効率を改善することができる。
【0024】
ハニカム構造体1を被覆する被覆部材11は、第一の流体や第二の流体を流通させず、熱伝導性がよく、耐熱性、耐蝕性のあるものが好ましい。被覆部材11としては、金属管12、セラミックス管等が挙げられる。金属管12の材質としては、例えば、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができる。また、被覆部材11は、管に限定されず、金属板やセラミックス板を用いてもよい。あるいは、樹脂でハニカム構造体1をコーティングして、これを被覆部材11として用いてもよい。
【0025】
ハニカム構造体1は、セラミックスで筒状に形成され、軸方向の一方の端面2から他方の端面2まで貫通する流体の流路を有するものである。ハニカム構造体1は、隔壁4を有し、隔壁4によって、流体の流路となる多数のセル3が区画形成されている。隔壁4を有することにより、ハニカム構造体1の内部を流通する流体からの熱を効率よく集熱し、外部に伝達することができる。
【0026】
ハニカム構造体1の外形は、円筒状(円柱状)に限らず、軸(長手)方向に垂直な断面が楕円形であってもよい。また、ハニカム構造体1の外形は、角柱状、すなわち、軸(長手)方向に垂直な断面が、四角形、またはその他の多角形であってもよい。
【0027】
本発明の熱交換部材10では、ハニカム構造体1がセラミックスを主成分とすることにより、隔壁4や外周壁7の熱伝導率が高まり、その結果として、隔壁4や外周壁7を介在させた熱交換を効率良く行わせることができる。なお、本明細書にいうセラミックスを主成分とするとは、セラミックスを50質量%以上含むことをいう。
【0028】
ハニカム構造体1は、特に伝熱性を考慮すると、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)が主成分であることが好ましい。なお、主成分とは、ハニカム構造体1の50質量%以上が炭化珪素であることを意味する。
【0029】
さらに具体的には、ハニカム構造体1の材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si
3N
4、及びSiC等を採用することができる。ただし、多孔体の場合は高い熱伝導率が得られないことがあるため、高い熱交換率を得るためには、緻密体構造(気孔率20%以下)とすることが好ましく、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを採用することが好ましい。SiCは、熱伝導率が高く、放熱しやすいという特徴を有するが、Siを含浸するSiCは、高い熱伝導率や耐熱性を示しつつ、緻密に形成され、伝熱部材として十分な強度を示す。例えば、SiC(炭化珪素)の多孔体の場合、20W/m・K程度であるが、緻密体とすることにより、100W/m・K以上とすることができる。
【0030】
ハニカム構造体1のセル3の軸方向に垂直な断面のセル形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
【0031】
ハニカム構造体1のセル密度(即ち、単位断面積当たりのセルの数)については特に制限はなく、目的に応じて適宜設計すればよいが、25〜2000セル/平方インチ(4〜320セル/cm
2)の範囲であることが好ましい。セル密度を25セル/平方インチ以上とすることにより、隔壁4の強度、ひいてはハニカム構造体1自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。また、2000セル/平方インチ以下とすることにより、熱媒体が流れる際の圧力損失が大きくなることを防止することができる。
【0032】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の厚さ(壁厚)についても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。壁厚を50μm〜2mmとすることが好ましく、60〜500μmとすることが更に好ましい。壁厚を50μm以上とすることにより、機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によって破損することを防止することができる。また、2mm以下とすることにより、流体の圧力損失が大きくなったり、熱媒体が透過する熱交換率が低下するといった不具合を防止することができる。
【0033】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の密度は、0.5〜5g/cm
3であることが好ましい。0.5g/cm
3以上とすることにより、隔壁4を十分な強度とし、第一流体が流路内を通り抜ける際に圧力により隔壁4が破損することを防止することができる。また、5g/cm
3以下とすることにより、ハニカム構造体1を軽量化することができる。上記の範囲の密度とすることにより、ハニカム構造体1を強固なものとすることができ、熱伝導率を向上させる効果も得られる。
【0034】
ハニカム構造体1は、熱伝導率が100W/m・K以上であることが好ましい。より好ましくは、120〜300W/m・K、さらに好ましくは、150〜300W/m・Kである。この範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率的にハニカム構造体1内の熱を被覆部材11(金属管12)の外側に排出できる。
【0035】
本発明の熱交換部材10では、第一の流体として排ガスを流す場合、隔壁4に触媒を担持させることが好ましい。このように隔壁4に触媒を担持させると、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になり、これに加えて、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることが可能になる。本発明の熱交換部材10に用いる触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有すると良い。ここに挙げた触媒は、金属、酸化物、およびそれ以外の化合物であっても良い。
【0036】
第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1の第一流体流通部5のセル3の隔壁4に担持される触媒(触媒金属+担持体(触媒金属とそれを担持する担持体を合わせたもの))の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましく、貴金属であれば0.1〜5g/Lであることが更に好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が発現しやすい。一方、400g/L以下とすると、圧力損失を抑え、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0037】
次に、熱交換部材10を構成するハニカム構造体1に形成するスリット15の他の実施形態を説明する。
図3及び
図4に、外周壁7のスリット15(15a)と通じるセル3を形成する隔壁4にスリット15(15b)が形成されている実施形態を示す。
図3は、隔壁4の交点部にスリット15(15b)が形成されている。
図4は、隔壁4の一辺の途中にスリット15(15b)が形成されている。
図3及び
図4に示すように、外周壁7のスリット15(15a)と通じるセル3を形成する隔壁4にスリット15(15b)が形成されていることが、熱応力を緩和するために好ましい。また、外周壁7に形成するスリット15(15a)と隔壁4に形成するスリット15(15b)のスリット幅は、必ずしも同一である必要はなく、異なるスリット幅であることも好ましい形態の一つである。上記のようにすることにより、アイソスタティック強度(ISO強度)を低下させずに、熱応力を緩和する効果が得られ、かつ圧力損失を抑える効果が得られる。ハニカム構造体1のISO強度が低下すると、被覆部材11にてハニカム構造体1を被覆する被覆工程や実使用時においてハニカム構造体1が破損してしまうことがある。
【0038】
図5に外周壁7にスリット15が複数形成されている実施形態を示す。
図5は、ハニカム構造体1の軸方向における断面を簡略化した模式図である。スリット15は、外周壁7に形成されるのみならず、隔壁4に形成されていてもよい。外周壁7にスリット15が複数形成されていることにより、熱応力を緩和する効果がより得られる。
【0039】
図6に、スリット15の幅について説明する説明図を示す。スリット15の幅15tの合計長さは、外周壁7の全周長(一周の長さ)の50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。スリット15の幅15tの合計とは、外周壁7に形成された、複数のスリット15のそれぞれの幅15tをすべて合計した長さである。このような範囲とすることにより、ISO強度を低下させずに、熱応力を緩和することができる。なお、1つのスリット15の幅については、特に制限はないが、0.03〜5mmとするのが好ましく、0.1〜2mmとするのがより好ましく、0.3〜1.1mmとするのが特に好ましい。上記の範囲とすることで、熱応力を十分に緩和しつつ、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0040】
図7Aに、外周壁7に通じるスリット15が存在する領域を説明する説明図を示す。
図7Aの実施形態は、スリット15が、外周壁7に形成され、さらに径方向に、外周壁7からハニカム構造体1の中心までの径の50%よりも外側の領域に形成されている。つまり、外周壁7に通じるスリット15が存在する領域は、径の50%よりも外側の領域(図の網目の領域)であることが好ましく、30%よりも外側の領域であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、ISO強度を低下させずに、熱応力を緩和することができる。
図7Bに、ハニカム構造体1の断面が楕円形の実施形態における、外周壁7に通じるスリット15が存在する領域を説明する説明図を示す。ISO強度を低下させないためには、短い方の径の50%よりも外側の領域にスリット15が存在していることが好ましく、25%よりも外側の領域にスリット15が存在していることがより好ましい。ハニカム構造体1のISO強度が低下すると、被覆部材11にてハニカム構造体1を被覆する被覆工程においてハニカム構造体1が破損してしまうことがある。
【0041】
図8に、外周壁7に通じないスリット15が形成された実施形態を示す。
図8に示すように、この実施形態は、隔壁4に、外周壁7に通じないスリット15(15c)が形成されている。本実施形態では、スリット15cは、軸方向に垂直な断面が十字状に形成されている。このスリット15cは、外周壁7に通じていないため、ISO強度を低下させにくい。また、スリット15cは、第一の流体の圧力損失の低下を防止し、第一の流体の流量を増加させることができる。外周壁7に通じないスリット15cの形状は、本実施形態に限定されない。
【0042】
図9は、ハニカム構造体1の軸方向の一部にスリット15が形成されている実施形態を示す模式図である。外周壁7のスリット15は、軸方向において、ハニカム構造体1の全長にわたらず一部に形成されていてもかまわない。このようなスリット15を形成しても、第一の流体の流れを向上させつつ、熱応力を緩和することができる。本実施形態では、スリット15の加工時間を短縮することができるため、コストを低減することができる。
【0043】
図10に、ハニカム構造体1が被覆部材11である金属管12内に直列に複数配置されており、少なくとも第一の流体の入口側のハニカム構造体1の外周壁7にスリット15が形成されている実施形態を示す。本実施形態では、ハニカム構造体1が直列に、かつ、ハニカム構造体1同士が隙間17をあけて配置されている。ハニカム構造体1同士が隙間17をあけて接続されていることにより、ハニカム構造体1同士に隙間17がない場合に比べて、セル3内を流通する第一の流体が、隙間17において混合され、流れの状態が乱流化する。これにより、第一の流体から隔壁4および外周壁7への熱伝達が促進され、熱交換効率が向上する。また、入口側のハニカム構造体1の外周壁7にスリット15が形成されていることから、第一の流体の流れを向上させつつ、熱応力を緩和することができる。
【0044】
また、金属管12とハニカム構造体1との間に、グラファイトシートからなる中間材13を挟んだ状態で、焼きばめにより一体化することも好ましい。グラファイトシートからなる中間材13を挟んで焼きばめすることにより、使用時の常温〜150℃の環境において、グラファイトシートに圧がかかり、熱伝達が良好となる。
【0045】
また、金属管12の全長がハニカム構造体1の全長よりも0.1mm以上長いことも、望ましい形態の一つである。
図10のように、ハニカム構造体1同士が隙間17をあけて配置されている場合は、複数のハニカム構造体1の長さの合計に、隙間17を加えた長さよりも、金属管12の全長が0.1mm以上長いことが好ましい。
図1Bのように、一つのハニカム構造体1が金属管12と嵌合する場合は、ハニカム構造体1の全長よりも金属管12の全長が0.1mm以上長いことが好ましい。すなわち、ハニカム構造体1の軸方向における端面2(
図10のように、複数のハニカム構造体1が配置されている場合は、最も入口側のハニカム構造体1の入口側の端面2xと、最も出口側のハニカム構造体1の出口側の端面2y)が、金属管12の内側に位置することが好ましい。金属管12の方が長い設計とすることによって、熱交換性能を十分に発揮し易くなる。また、熱交換部材10を用いた熱交換器30を製作する際にも、加工が容易である。
【0046】
次に、本発明の熱交換部材10の製造方法を説明する。まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム構造体1の材料としては、前述のセラミックスを用いることができるが、例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム構造体1を製造する場合、所定量のC粉末、SiC粉末、バインダー、水又は有機溶媒を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得る。
【0047】
そしてハニカム成形体を乾燥し、焼成することによって、隔壁4によってガスの流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1を得ることができる。スリットの加工方法について特に制限はないが、研削加工、切削加工、レーザー加工、ウォータージェット加工、放電(EDM)加工などを用いることができる。焼成する前のハニカム成形体に対してスリットを形成することも、好ましい形態の一つである。焼成前に加工をすることによって、加工面のダメージを最小にしつつ、製造コストの上昇を抑えることができる。続いて、被覆部材11である金属管12を昇温させ、ハニカム構造体1を金属管12に挿入して焼きばめにより一体化し、熱交換部材10を形成することができる。なお、ハニカム構造体1と被覆部材11との接合は、焼きばめ以外に、ろう付けや拡散接合等を用いてもよい。また、被覆部材11は、金属管12に限定されない。
【0048】
図11に本発明の熱交換部材10を含む熱交換器30の斜視図を示す。
図11に示すように、熱交換器30は、熱交換部材10と、熱交換部材10を内部に含むケーシング21とによって形成されている。ハニカム構造体1のセル3が第一の流体が流通する第一流体流通部5となる。熱交換器30は、ハニカム構造体1のセル3内を、第二の流体よりも高温の第一の流体が流通するように構成されている。また、ケーシング21に第二の流体の入口22及び出口23が形成されており、第二の流体は、熱交換部材10の金属管12の外周面12h上を流通する。
【0049】
つまり、ケーシング21の内側面24と金属管12の外周面12hとによって第二流体流通部6が形成されている。第二流体流通部6は、ケーシング21と金属管12の外周面12hとによって形成された第二の流体の流通部であり、第一流体流通部5とハニカム構造体1の隔壁4、金属管12によって隔たれて熱伝導可能とされている。すなわち、熱交換器30は、第一流体流通部5を流通する第一の流体の熱を隔壁4、金属管12を介して受け取り、流通する第二の流体である被加熱体へ熱を伝達する。第一の流体と第二の流体とは、完全に分離されており、これらの流体は混じり合わないように構成されている。
【0050】
熱交換器30は、第二の流体よりも高温である第一の流体を流通させ、第一の流体から第二の流体へ熱伝導するようにすることが好ましい。第一の流体として気体を流通させ、第二の流体として液体を流通させると、第一の流体と第二の流体の熱交換を効率よく行うことができる。つまり、本発明の熱交換器30は、気体/液体熱交換器として適用することができる。
【0051】
以上のような構成の本発明の熱交換器30に流通させる第一の流体である加熱体は、熱を有する媒体であれば、気体、液体等、特に限定されない。例えば、気体であれば自動車の排ガス等が挙げられる。また、加熱体から熱を奪う(熱交換する)第二の流体である被加熱体は、加熱体よりも低い温度であれば、媒体としては、気体、液体等、特に限定されない。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(ハニカム構造体の製造)
SiCや有機バインダ(メチルセルロース)や水など適量混ぜ合わせ、次いで混練して、坏土を作製した。この坏土を押出成形によって円柱状の外観を備えたハニカム形状に成形し、乾燥して成形体を得た。続いて、成形体をSi含浸焼成することにより、主成分が炭化珪素のハニカム構造体1(直径42mm、長さ100mm、隔壁4の厚さ0.4mm、セル密度150cpsi)を製造した。
【0054】
(スリットの加工)
Si含浸前の成形体またはSi含浸焼成後のハニカム構造体1の外周壁7に対して、0.3〜0.9mmの砥石幅をもつダイヤモンド砥石を用いて、所定の深さのスリット加工を実施した。
【0055】
(金属管)
ステンレスの金属管12をハニカム構造体1の外周面7hに焼きばめにより嵌合させて熱交換部材10を製造した(
図1B参照)。
【0056】
(ケーシング)
ステンレスからなるケーシング21内に熱交換部材10を配置した(
図11参照)。
【0057】
(熱交換効率試験)
上記のように、実施例、比較例の熱交換部材10をステンレス製の容器(ケーシング)内に収容することにより作製した熱交換器30を用いた。第一の流体を熱交換部材10のハニカム構造体1のセル3中を通過させたときの第二の流体への伝熱効率を測定した。第一の流体として、窒素ガス(N
2)を用いて、ハニカム構造体1の第一流体流通部5に350℃でSV(空間速度)50000
h−1にてセル3内に流した。また、第二の流体として水を用いて、ケーシング内の第二流体流通部6に40℃で10L/minの流量を流した。熱交換部材10のセル3の入口より20mm上流を流れる第一の流体の温度を「入口ガス温」、セル3の出口より200mm下流を流れる第一の流体の温度を「出口ガス温」とした。ケーシング21の入口を通過する水の温度を「入口水温」とした。
熱交換効率(%)=(入口ガス温−出口ガス温)/(入口ガス温−入口水温)×100
【0058】
(耐熱試験)
第一の流体として、500℃の窒素ガス(N
2)、第二の流体として、20℃の水を用いた。
【0059】
(アイソスタティック強度(ISO強度)の評価)
ハニカム構造体1の外周面7hに、厚さ0.5mmのウレタンゴム製のシートを巻き付け、更に、ハニカム構造体1の両端面2に、円形のウレタンゴム製のシートを挟んで、厚さ20mmのアルミニウム製の円板を配置した。アルミニウム製の円板、及びウレタンゴム製のシートは、ハニカム構造体1の端面2の半径と同じ半径のものを用いた。アルミニウム製の円板の外周に沿ってビニールテープで巻くことにより、アルミニウム製の円板の外周とウレタンゴム製のシートとの間を封止して、試験用サンプルとした。作製した試験用サンプルを水の入った圧力容器に入れた。そして0.3〜3.0MPa/分の速度で圧力を上昇させて3.0MPaの静水圧を試験用サンプルにかけ、ハニカム構造体1の破壊及びクラックの発生を確認した。クラックの発生の有無は、試験中の破壊音の確認と、試験後にハニカム構造体1の外観を目視することによって行った。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示すように、外周壁7にスリット15を形成した実施例1〜5は、耐熱試験やアイソスタティック強度に問題はなかった。また、熱交換効率は、比較例1と同等以上となった。一方、スリット15を形成していない比較例1は、耐熱試験において割れが発生した。