特許第5944900号(P5944900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5944900直線偏光解消機能を備えた両面透明粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944900
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】直線偏光解消機能を備えた両面透明粘着シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20160621BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160621BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20160621BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20160621BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   G02B5/30
   C09J7/02 Z
   C09J133/06
   C09J201/00
   G02F1/1335
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-524643(P2013-524643)
(86)(22)【出願日】2012年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2012066354
(87)【国際公開番号】WO2013011811
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2013年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2011-156302(P2011-156302)
(32)【優先日】2011年7月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新美 かほる
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/140393(WO,A1)
【文献】 特開2008−310309(JP,A)
【文献】 特開2010−044200(JP,A)
【文献】 特開2009−251035(JP,A)
【文献】 特開2011−099078(JP,A)
【文献】 特開2010−039458(JP,A)
【文献】 特開2011−107198(JP,A)
【文献】 特開2003−315554(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065341(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/032995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置において、偏光フィルムの視認側に配置するための透明両面粘着シートであって、
表裏両側に粘着剤層を備え、中間層として直線偏光解消機能を有する層(「直線偏光解消機能層」と称する)を備え、
透明両面粘着シート全体の厚みが0.05mm〜1mmであり、
当該直線偏光解消機能層の厚みは、1μm〜40μmの範囲内であって、表裏いずれかの粘着剤層或いは表裏両側の粘着剤層の厚みよりも小さいものであり、
前記直線偏光解消機能層の面内複屈折は0.003〜0.050であり、
0.5mm厚のソーダライムガラスに挟持した場合に、下記(1)〜(3)を全て満たすことを特徴とする透明両面粘着シート。
(1)波長590nmにおけるレターデーション値が20nm〜200nm
(2)JIS K7361−1に準じて測定した全光線透過率が85%以上
(3)JIS K7136に準じて測定したヘイズ値が5%以下
【請求項2】
前記直線偏光解消機能層が、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリイミド系樹脂からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合樹脂からなる1軸或いは2軸延伸フィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の透明両面粘着シート。
【請求項3】
表裏いずれか一側又は両側の粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル系化合物および分子間水素引抜型光重合性開始剤を含有する粘着剤組成物から形成された潜在的な紫外線2次架橋性を有する粘着剤層であり、かつ、当該粘着剤層は2次架橋前の1次架橋された状態であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の透明両面粘着シート。
【請求項4】
表裏一側の粘着剤層と直線偏光解消機能層との間に離型層を形成し、被粘着部材に透明両面粘着シートを貼着した後に、前記粘着剤層と該離型層との界面において剥離可能に構成してなる請求項1〜の何れかに記載の透明両面粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層および直線偏光解消機能層のうちいずれかの層は、波長380nmの光線透過率が30%以下であり、かつ波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の透明両面粘着シート。
【請求項6】
液晶モジュールの視認側と表面保護パネルとの間にタッチパネル機能層が介挿されてなる構成を備えた画像表示装置であって、請求項1〜のいずれかに記載の透明両面粘着シートが、タッチパネル機能層と表面保護パネルもしくは液晶モジュールとタッチパネル機能層とを当接して貼着・一体化してなる構成を備えた画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置において偏光フィルムの視認側に配置するための透明両面粘着シートに関する。より詳細には、偏光サングラス等を通じて画像表示装置を視認した場合において、虹ムラの発生を解消することができる、直線偏光解消機能を備えた両面透明粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な液晶表示装置では、液晶モジュールから発した画像表示光はその視認側に配置される偏光板を透過し、直線偏光になった状態で出射される。人間の目は偏光を感知しないため、このように直線偏光になった状態で液晶モジュールから出射されても、視認性に影響を及ぼすことは通常はない。しかし、偏光サングラスをかけた状態で視認すると、出射光の偏光透過軸とサングラスの偏光軸が一致しない場合には、透過光が減少し、視認性が著しく悪化したり、虹ムラが生じたりするなどの不具合が起こる場合があった。
【0003】
従来、出射光の直線偏光を解消するべく、偏光板の視認側に複屈折フィルムを積層する方法が用いられている。
例えば特許文献1では、画像表示装置における表示素子表面偏光板と、表面透光性カバーとの間に透光性光学フィルムを配置して、前記透光性カバーと光学フィルムのレターデーションの和を2000nm以上の高位相差にして視認性を得る方法が提案されている。
【0004】
特許文献2や特許文献3では、表示素子表面の偏光板よりも表示像観察者側に、繊維や複屈折微粒子をマトリクス材料に分散させてなる偏光解消層を備えた画像表示装置が提案されている。
【0005】
特許文献4は、液晶表示パネルの前面に、100〜300nmの位相差を有する透明材料を配する構成もしくは、液晶表示視認者自身の偏光レンズに100〜300nmの位相差フィルムを配する提案が為されている。
そのほか、市販の位相差板を偏光板の視認側表面に直接貼付し、出射光の直線偏光を解消する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−157082号公報
【特許文献2】特開2008−310309号公報
【特許文献3】特開2010−091655号公報
【特許文献4】特開2010−044200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像表示装置、例えばモバイル型液晶表示装置などの分野では、近年、薄肉化がますます進められており、直線偏光解消機能を備えたシートにも薄肉化が求められている。
しかし、一般的な位相差板は、レターデーション制御の問題から、ある程度の厚みが必要となるため薄肉化を図ることが難しい。また、直線偏光解消機能を備えたシートを薄肉化すると、画像表示装置の組み立て工程において、このシートを貼着する際に皺が入ったり、歪みが生じたりするなど、取り扱いがとても難しくて作業性が悪いため、従来、直線偏光解消機能を備えたシートはある程度厚みを持って形成するほかなかった。
【0008】
そこで本発明は、偏光フィルムの視認側に配置して、偏光板を透過した直線偏光を解消する直線偏光解消機能を備えたシートに関し、直線偏光解消機能を備えた層を薄肉化することができ、しかも、当該シートを貼着する際の取り扱い性(これを「ハンドリング性」とも称する)をも良好にすることができる、新たな直線偏光解消機能を備えたシートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、画像表示装置において、偏光フィルムの視認側に配置するための透明両面粘着シートであって、表裏両側に粘着剤層を備え、中間層として直線偏光解消機能を有する層(「直線偏光解消機能層」と称する)を備え、当該直線偏光解消機能層の厚みが、1μm〜40μmの範囲内であり且つ表裏いずれかの粘着剤層或いは表裏両側の粘着剤層の厚みよりも小さいことを特徴とする透明両面粘着シートを提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提案する透明両面粘着シートは、直線偏光解消機能層を備えているため、画像表示装置において偏光フィルムの視認側に配置することにより、偏光板を透過した直線偏光を解消することができる。よって、偏光サングラス等を通じて画像表示装置を視認した場合、暗視野になったり、虹ムラが発生したりする問題を解消することができ、画像視認性を好適に確保することができる。
しかも、直線偏光解消機能層の両側に粘着剤層を積層し、シート全体の厚さを確保して取り扱い易くすることができるため、シートの取り扱い性(ハンドリング性)を確保しつつ、直線偏光解消機能層の厚みを薄くすることができる。
また、直線偏光解消機能層の表裏両側に粘着剤層を備えているため、透明両面粘着シートを画像表示装置に組み込んだ際、直線偏光解消機能層が少なくとも空気層と接することがないから、直線偏光解消機能層と空気層との界面が当然存在せず、当該界面での反射による光のロスがないため、視認性の悪化を招くおそれもない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明するが、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<本透明両面粘着シート>
本発明の実施形態の一例に係る透明両面粘着シート(「本透明両面粘着シート」と称する)は、中間層として直線偏光解消機能層を備え、表裏両側に粘着剤層を備えた透明両面粘着シートである。
【0013】
(直線偏光解消機能層)
直線偏光解消機能とは、直線偏光を円偏光或いは楕円偏光に変えるなどして、直線偏光を何らかの方法で解消する機能である。例えば直線偏光解消機能層をディスプレイ出射光側に配置すれば、ディスプレイ出射光の直線偏光を解消することができ、例えば偏光サングラスなどを介して画面を見た際に、暗視野や虹ムラの発生を解消することができる。
【0014】
本透明両面粘着シートの直線偏光解消機能層は、一般的な位相差板を使用するのではなく、特定の樹脂からなる1軸或いは2軸延伸フィルムを用いるのが好ましく、中でも面内複屈折が0.003〜0.050であるものを選択して用いるのがさらに好ましい。
【0015】
特定の樹脂からなる1軸或いは2軸延伸フィルムとしては、例えばポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリイミド系樹脂からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合樹脂からなる1軸或いは2軸延伸フィルムを挙げることができる。
中でも、薄肉化を考慮すると2軸延伸フィルムが好ましく、さらにコストなどを加味すると、ポリエチレンテレフタレートからなる2軸延伸フィルムが特に好ましい。
【0016】
画像表示装置において、ディスプレイ出射光の直線偏光を解消し、例えば偏光サングラス等を通じて画像表示装置を視認した場合の虹ムラの発生を抑制するためには、直線偏光解消機能層のレターデーションを好ましい範囲に制御する必要がある。該レターデーションは、面内複屈折と厚さの積で決まるため、直線偏光解消機能層の厚さを考慮しながら面内複屈折を決定するのが好ましい。
例えば市販の2軸延伸PETフィルムの場合、一般的に面内複屈折が比較的高いため、好ましいレターデーションに制御するためには、フィルムの厚さを薄くしなければならない。逆に言えば、直線偏光解消機能層として用いる2軸延伸PETフィルムを厚くしたい場合には、面内複屈折が低いものを選択する必要がある。一概に2軸延伸PETフィルムと言っても、製膜方法や製膜条件によって面内複屈折が異なるため、2軸延伸PETフィルムの中でも所望の面内複屈折を有する材料を選択することが可能である。
【0017】
所望のレターデーションとハンドリング性等を考慮すると、直線偏光解消機能層は、層厚が1μm〜40μmであり、面内複屈折が0.003〜0.050であるのが好ましい。
【0018】
直線偏光解消機能層の層厚は、所望のレターデーションとハンドリング性等を考慮すると、1μm〜40μmが好ましく、中でも3μm以上或いは25μm以下、その中でも4μm以上或いは15μm以下であるのが好ましい。
【0019】
直線偏光解消機能層の面内複屈折は、上記層厚において所望のレターデーションを得る観点から、0.003〜0.050であるのが好ましく、中でも0.005以上或いは0.04以下、その中でも0.01以上或いは0.03以下であるのが特に好ましい。
直線偏光解消機能層の面内複屈折が0.003以上であれば、異方性が小さ過ぎず、所望の厚み範囲において直線偏光解消機能を十分に得ることができる。他方、面内複屈折が0.050以下であれば、虹ムラを抑えるべく厚みを薄くしても直線変更解消機能層の加工時のハンドリング性を良好に維持することができる。
面内複屈折を上記範囲におさめることで、直線偏光解消機能層に適度なハンドリング性をもたせる厚みを維持しつつ、必要な光学機能を付与する事が出来る。
なお、上述のように、面内複屈折は、樹脂の種類のほか、成膜方法や成膜条件などによって適宜調整することができる値である。
【0020】
例えば、2軸延伸PETフィルムから直線偏光解消機能層を形成する場合には、直線偏光解消機能層の層厚は、3μm〜38μmが好ましく、中でも25μm以下、その中でも4μm以上或いは15μm以下であるのが好ましく、面内複屈折は0.003〜0.050であるのが好ましく、中でも0.004以上或いは0.040以下、その中でも0.010以上或いは0.030以下であるのが好ましい。
【0021】
(粘着剤層)
表裏両側の粘着剤層はいずれも、例えばゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などの粘着剤から形成することができる。これらの中でも、紫外線硬化型や熱硬化型のアクリル系粘着剤が好ましい。
【0022】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(共重合体を含む意で、以下「アクリル酸エステル系(共)重合体」と称する。)をベース樹脂として用いた粘着剤組成物(以下、「本粘着剤組成物」と称する。)から形成されたものを挙げることができる。
【0023】
ベース樹脂としての、アクリル酸エステル系(共)重合体は、これを重合するために用いるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等を適宜選択することによって、ガラス転移温度(Tg)や分子量等の物性を適宜調整して調製することが可能である。
【0024】
アクリル酸エステル(共)重合体を重合するために用いるアクリルモノマーやメタクリルモノマーとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート等を挙げることができる。また、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、グリシジルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フッ素アクリレート、シリコーンアクリレートなどの親水基や有機官能基などを有するアクリルモノマーを上記アクリルモノマーと共重合させてもよい。このほかにも、酢酸ビニルやアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーも適宜重合に用いることができる。
これらのモノマーを用いた重合処理としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の重合方法が採用可能であり、その際に重合方法に応じて熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いることによりアクリル酸エステル共重合体を得ることができる。
【0025】
なお、表裏両側の粘着剤層は、互いに同じ組成の粘着剤から形成してもよいが、本透明両面粘着シートを画像表示装置に用いる場合、表面側の粘着剤層と裏面側の粘着剤層では、被着体の種類や役割が異なるため、それに応じて組成を選択し、互いに異なる組成の粘着剤から形成するのが好ましい。
【0026】
粘着剤層の厚みは、表裏いずれか一側の粘着剤層或いは表裏両側の粘着剤層の厚みが、直線偏光解消機能層の厚みよりも大きければよい。具体的には、表裏いずれか一側の粘着剤層或いは表裏両側の粘着剤層の厚みが25μm〜900μmの範囲であることが好ましく、中でも100μm以上或いは350μm以下であることがより好ましい。
なお、本透明両面粘着シートを画像表示装置に用いる場合、表面側の粘着剤層と裏面側の粘着剤層では、被着体の種類や役割が異なるため、それに応じて粘着剤層の厚みを調整するのが好ましい。
【0027】
また、いずれか一側又は両側の粘着剤層が、1次架橋された粘着剤組成物から形成され、さらに潜在的な紫外線2次硬化性をもつ粘着剤層であってもよい。
潜在的な紫外線2次硬化性をもつ粘着剤層は、組成物中に分子間水素引抜型の光重合開始剤を含有せしめ、組成及び1次架橋する際の条件を適宜調整し、紫外線による2次硬化反応性の余地を残すことで得ることができる。
1次架橋反応には、熱硬化剤やイオン架橋剤の他、電子線や紫外線照射など任意の方法を用いることができる。
予め1次架橋された2次硬化前の状態では、紫外線反応性を残すことができる、言い換えれば、さらに硬化させることができる余地を残していることから、それだけ柔軟であり、被着体の表面に凹凸があったり、粘着界面に異物等が存在したりしても、これらの凹凸に十分に追従して馴染むことができる。よって、このような2次硬化前の透明両面粘着シートを介して2つの画像表示装置構成部材を積層すれば、各画像表示装置構成部材を好適に密着させることができる、しかも、そのように密着させた後に紫外線を照射することで紫外線架橋(2次硬化)させてしっかりと接着させることができる。よって、このような2次硬化前の透明両面粘着シートを介して2つの画像表示装置構成部材を積層し、次いで、少なくとも一方の画像表示装置構成部材側から紫外線を照射し、この部材を介して、当該透明両面粘着シートを紫外線架橋して2次硬化させることにより、透明両面粘着シートをしっかりと架橋させることができ、例えば保護パネル等から発生するアウトガスのガス圧に対して十分に対抗できるだけの粘着力と凝集力を持たせることができる。
【0028】
上記の水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、チオキサンソンやベンジルなどのいずれか、またはその誘導体、或いはこれらの二種類以上の組み合わせからなる混合成分を用いることができる。但し、水素引抜型の光開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。また、水素引抜型の光重合開始剤を粘着シート中に含有していれば、分子内開裂型の光重合開始剤を種々の割合で併用してもよい。
水素引抜型開始剤の添加量は、特に制限されるものではなく、一般的にはベース樹脂100質量部に対し0.1〜10質量部、特に0.2質量部以上或いは5質量部以下、その中でも0.5質量部以上或いは3質量部以下の割合で調整するのが好ましい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0029】
さらにまた、いずれか一側の粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル系化合物および分子間水素引抜型光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成し、他側の粘着剤層は、熱硬化型の粘着剤組成物から形成することもできる。
この際、粘着剤組成物のベースポリマーの質量平均分子量は30〜100万であるのが好ましい。粘着剤組成物のベースポリマーの分子量を30〜100万とすることにより、広範囲の種類の被着体に対して十分な接着力を発揮することができる。
【0030】
(紫外線吸収機能)
また、上記表面側粘着剤層、裏面側粘着剤層および直線偏光解消機能層のうちの何れか1層或いは2層以上が紫外線吸収機能を有していてもよい。これにより、例えば紫外線に弱い部材からなる機能性層が液晶モジュールの視認側に配置された場合であっても、紫外線吸収機能を有する前記の層が紫外線を吸収するため、当該機能性層を保護することが出来る。
【0031】
上記各層に紫外線吸収機能を持たせるには、表面側粘着剤層、裏面側粘着剤層および直線偏光解消機能層何れかの層を形成する樹脂組成物中に紫外線吸収剤を含有せしめて紫外線吸収層とする方法や、表面側粘着剤層、裏面側粘着剤層および直線偏光解消機能層何れかの層に紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を積層する方法が挙げられる。
この際、当該紫外線吸収層は、波長380nmの光線透過率が30%以下であり、かつ波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上であるのが望ましい。波長380nmの光線透過率が30%以下であれば、視認側から入射する紫外光から画像表示装置内の機能性フィルム等の機能性層を保護でき、また、波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上であれば、画像表示装置内に配設して用いた場合にいても、画像表示装置の視認側から可視光を十分に透過して、視認性を確保することができるから、好ましい。
【0032】
前記紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等を挙げることができる。これらは単独あるいは2種類以上を併用して用いることができる。
なお、酸化亜鉛や酸化チタンなどの無機系超微粒子をシート内に散在させることにより、シートに入射した紫外域光を散乱させることによって紫外線を遮断することもできる。前記紫外線吸収剤を含め、これらを単独あるいは2種類以上を併用して用いることもできる。
【0033】
紫外線吸収層における紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収層を形成する樹脂全質量のうち0.01質量%〜40質量%であるのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。40質量%以下であれば、紫外線吸収剤自体の着色による外観不良や添加剤の析出や浮出、隣接層や被着体へのブリードアウトによる粘着特性の低下がおこる虞がない。また、0.01質量%以上であれば、所定の紫外線吸収性を付与することが容易となり、被着体を紫外線から保護する機能に劣るなどのおそれがない。
【0034】
表面側粘着剤層、裏面側粘着剤層のうち何れか一方が、紫外線により1次硬化された、潜在的な2次硬化性をもつ粘着剤層である場合には、該粘着剤層の2次硬化反応を阻害せぬよう、他方の粘着剤層もしくは直線偏光解消機能層に紫外線吸収性を付与するのが好ましい。
また、該両面粘着シートを液晶モジュールの視認側に貼着する際には、紫外線吸収層を液晶モジュール側に、潜在的な2次硬化性をもつ粘着剤層を視認側に配置するよう構成するのが好ましい。これにより、視認側から入射する紫外光を2次架橋に用いると共に、液晶モジュール側を紫外光から保護することが出来る。
【0035】
(離型層)
本透明両面粘着シートは、直線偏光解消機能以外にも機能付加すべく、粘着剤層及び直線偏光解消機能層以外の層を備えていてもよい。
【0036】
例えば、表裏一側の粘着剤層と直線偏光解消機能層との間に離型層を形成し、被粘着部材に透明両面粘着シートを貼着した後に、表裏一側の前記粘着剤層と該離型層との界面において剥離可能に構成することができる。
このようにすることで、両面粘着シートの表裏面へ部材を貼着した後に、該離型層と離型層に接触する粘着剤層との界面において、貼着・一体化した部材の再分離が可能である。例えば、粘着位置がずれてしまったような場合、記粘着剤層と該離型層との界面において剥離して離脱させた後、粘着位置を直して再度粘着することができる。
【0037】
前記離型層は、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、パラフィンワックス、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、尿素−メラミン系、セルロ−ス、ベンゾグアナミンなどの樹脂及び界面活性剤を単独またはこれらの混合物を主成分とした有機溶剤もしくは水に溶解させた塗料を、グラビア印刷法、スクリ−ン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法で、塗布及び乾燥させて形成することができる。なお、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂など硬化性塗膜は、硬化させて形成することができる。
特にシリコーンやフッ素化合物、アルキド樹脂系剥離処理剤等による剥離処理を施すのが好ましい。
【0038】
<本両面透明粘着シートの物性>
本両面透明粘着シートの厚さは、ハンドリング性や用途部材に求められる薄肉化の観点から、全体の厚みが0.05mm〜1mmであるのが好ましく、中でも0.1mm以上或いは0.8mm以下、その中でも0.15mm以上或いは0.5mm以下であるのがより好ましい。
【0039】
本両面透明粘着シートは、0.5mm厚のソーダライムガラスに挟持した場合に、(1)波長590nmにおけるレターデーション値が20nm〜200nmであることが好ましい。
偏光サングラスをかけた際に顔を傾けた時も、広い角度で、色ムラの少ない安定した視認性を確保できるように、本両面透明粘着シートは、590nmにおけるレターデーションが20nm〜200nmであるのが好ましく、中でも50nm以上或いは180nm以下、その中でも80nm以上或いは150nm以下であるのが特に好ましい。
【0040】
さらに本両面透明粘着シートは、0.5mm厚のソーダライムガラスに挟持した場合に、下記(2)及び(3)を満たすのがより一層好ましい。
(2)JIS K7361−1に準じて測定した全光線透過率が85%以上
(3)JIS K7136に準じて測定したヘイズ値が5%以下
【0041】
本透明の両面粘着シートは、直線偏光を解消する機能のほか、液晶モジュールからの画像表示光をそのまま透過する機能を有しているのが好ましい。よって、上記(2)のように本両面透明粘着シートの全光線透過率は85%以上であることが好ましく、さらに好ましくは90%以上である。
【0042】
全光線透過率が高い場合でも粘着シートに濁りがあると出射光が散乱し、視認性を低下させるため、上記(3)のように本両面透明粘着シートのヘイズは5%以下が好ましく、さらに好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。このような光学的性質を有することにより、表示画像の優れた視認性を確保することができる。
【0043】
<本両面透明粘着シートの製造方法>
次に、本両面透明粘着シートの製造方法の一例について説明する。
先ず、表裏の粘着剤層を形成する粘着剤組成物を、それぞれ工程用剥離フィルム(例えば離型PETフィルム)の離型処理面上に、目的の厚さになるように塗布して製膜する。次に、直線偏光解消機能層を構成するフィルムを、表裏の粘着剤層で挟み込むように積層し、必要に応じて加熱や紫外線照射、養生等の架橋処理を施すことにより、形成することができる。
表裏の粘着剤層や基材となる直線偏光解消機能層が多層構成の場合は、別途作成した構成層を順次積層する方法のほか、積層構成の一部または全部を共押出して得ることもできる。
【0044】
<本両面透明粘着シートの用途>
本透明両面粘着シートは、直線偏光解消機能層を備えているため、画像表示装置において偏光フィルムの視認側に配置することにより、すなわち表面保護パネルと液晶モジュールの視認側との間に配置することにより、偏光板を透過して液晶モジュールから出射される直線偏光を解消することができる。よって、偏光サングラス等を通じて画像表示装置を視認した場合において、暗視野や虹ムラの発生を抑制することができ、画像視認性を確保することができる。しかも、直線偏光解消機能層の表裏両側に粘着剤層を備えているため、直線偏光解消機能層が少なくとも空気層と接することがないから、直線偏光解消機能層と空気層との界面反射による光のロスがなく、視認性の悪化を招くおそれもない。また、粘着剤層で空隙や段差を埋めることができるから、画像表示装置全体の薄肉化に貢献することもできる。
よって、本透明両面粘着シートは、例えば画像表示装置において、タッチパネル機能層と表面保護パネルとを貼着して一体化させたり、或いは、液晶モジュールとタッチパネル機能層とを貼着して一体化させたりするのに特に好適である。
【0045】
<語句の説明>
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0046】
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0048】
<実施例1>
第1の粘着剤層を形成するための粘着組成物として、ブチルアクリレート70質量部と、メチルメタクリレート20質量部と、メチルアクリレート9質量部と、アクリル酸1質量部とをランダム共重合してなるアクリル酸エステル共重合体を、固形分25%となるよう酢酸エチルで希釈した粘着樹脂溶液1kgに対し、エポキシ系硬化剤溶液(綜研化学(株)製 E−AX)を2.5g処方して粘着組成物1を作製した。
他方、第2の粘着剤層を形成するための粘着組成物として、2−エチルヘキシルアクリレート70質量部と、酢酸ビニル26質量部と、アクリル酸4質量部とをランダム共重合してなるアクリル酸エステル共重合体1kgに対し、紫外線架橋剤であるペンタエリスリトールトリアクリレート5g及び光重合開始剤として4−メチルベンゾフェノン5gを添加して粘着組成物2を作製した。
【0049】
前記粘着組成物1を、工程用剥離フィルム1(三菱樹脂(株)製「MRA100」、厚さ100μm)に乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布して乾燥させ、その後、その粘着面に、ポリエチレンテレフタレート2軸延伸フィルム(三菱樹脂(株)製「ダイアホイル」、厚さ5μm、面内複屈折0.016)からなる直線偏光解消層1を積層し、工程用剥離フィルム1/粘着剤層1/直線偏光解消層1の構成からなる積層シートを形成した。
【0050】
前記粘着組成物2を、工程用剥離フィルム2(三菱樹脂(株)製「MRF75」、75μm)に乾燥後の厚みが150μmとなるよう塗工して粘着剤層2を形成し、この粘着剤層2に、前記積層シートの直線偏光解消層1を積層して、工程用剥離フィルム1/粘着剤層1/直線偏光解消層1/粘着剤層2/工程用剥離フィルム2からなる積層シートを形成し、この積層シートに対して、表裏両側から工程用剥離フィルム1・2を介して、波長365nmにおける積算光量が2000mJとなるよう紫外線を照射し、粘着剤層2の架橋反応を進行させた。その後、該積層シートを、温度25℃湿度40%環境下にて1週間養生させて粘着剤層1の架橋反応を進行させ、工程用剥離フィルム1/粘着剤層1/直線偏光解消層1/粘着剤層2/工程用剥離フィルム2からなる両面粘着シート1[粘着剤層1(25μm)/直線偏光解消層1(5μm)/粘着剤層2(150μm)=総厚み180μm]を作製した。
【0051】
<実施例2>
直線偏光解消層1の代わりに、ポリエチレンテレフタレート2軸延伸フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製「メリネックス#850」、厚さ15μm、面内複屈折0.012)を用いて直線偏光解消層2を形成した以外は、実施例1と同様にして、工程用剥離フィルム1/粘着剤層1/直線偏光解消層2/粘着剤層2/工程用剥離フィルム2からなる両面粘着シート2[粘着剤層1(25μm)/直線偏光解消層2(15μm)/粘着剤層2(150μm)=総厚み190μm]を作製した。
【0052】
<実施例3>
直線偏光解消層1の代わりに、ポリカーボネート1軸延伸フィルム(株式会社カネカ製「エルメックR40」、厚さ40μm、面内複屈折0.004)を用いて直線偏光解消層3を形成し、粘着剤層2の厚みを135μmとした以外は、実施例1と同様にして、工程用剥離フィルム1/粘着剤層1/直線偏光解消層3/粘着剤層2/工程用剥離フィルム2からなる両面粘着シート3[(粘着剤層1(25μm)/直線偏光解消層2(40μm)/粘着剤層2(135μm)=総厚み200μm]を作製した。
【0053】
<実施例4>
粘着組成物1の代わりに、ブチルアクリレート70質量部と、メチルメタクリレート20質量部と、メチルアクリレート9質量部と、アクリル酸1質量部とをランダム共重合してなるアクリル酸エステル共重合体を、固形分25%となるよう酢酸エチルで希釈した粘着樹脂溶液1kgに対し、エポキシ系硬化剤溶液(綜研化学(株)製 E−AX)2.5g及び、紫外線吸収剤(BASF社製 TINUVIN329)を2g処方した粘着組成物3を用いた以外は実施例3と同様にして、工程用剥離フィルム1/粘着剤層1/直線偏光解消層3/粘着剤層2/工程用剥離フィルム2からなる両面粘着シート4[(粘着剤層3(25μm)/直線偏光解消層2(40μm)/粘着剤層2(135μm)=総厚み200μm]を作製した。
【0054】
<比較例1>
実施例1で用いた粘着組成物2を、工程用剥離フィルム1(三菱樹脂(株)製「MRA100」、厚さ100μm)に、乾燥後の厚みが180μmとなるよう塗工して粘着剤層3を形成し、塗工した粘着面に工程用剥離フィルム2(三菱樹脂(株)製「MRF75」、厚さ75μm)を積層して積層シートを形成した。この積層シートに対して、表裏両側から工程用剥離フィルム1・2を介して、波長365nmにおける積算光量が2000mJとなるよう紫外線を照射し、粘着剤層3の架橋反応を進行させ、粘着剤層3の単層粘着シート5[総厚み180μm]を作製した。
【0055】
<比較例2>
実施例1において、粘着剤層2を積層しない以外は、実施例1と同様にして、工程用剥離フィルム1/粘着剤層1/直線偏光解消層1からなる片面粘着シート6[粘着剤層1(25μm)/直線偏光解消層1(5μm)=総厚み30μm]を作製した。
【0056】
<比較例3>
直線偏光解消層3の代わりに、ポリエチレンテレフタレート2軸延伸フィルム(三菱樹脂(株)製「T−100」、厚さ50μm、面内複屈折0.017)を用いて基材層4を形成した以外は、実施例3と同様に、工程用剥離フィルム1/粘着剤層1/基材層4/粘着剤層2/工程用剥離フィルム2からなる両面粘着シート7[(粘着剤層1(25μm)/基材層4(50μm)/粘着剤層2(135μm)=総厚み210μm]を作製した。
【0057】
<比較例4>
直線偏光解消層1の代わりに、ポリカーボネート1軸延伸フィルム(帝人化成(株)製「T−138」、厚さ70μm、面内複屈折0.002)を用いて基材層5を形成し、粘着剤層1、粘着剤層2の厚みをそれぞれ30μm、60μmとした以外は、実施例1と同様にして、工程用剥離フィルム1/粘着剤層1/基材層5/粘着剤層2/工程用剥離フィルム2からなる両面粘着シート8[粘着剤層1(30μm)/基材層5(70μm)/粘着剤層2(60μm)=総厚み160μm]を作製した。
【0058】
<評価>
(光学測定)
実施例・比較例で作製した粘着シートを、0.5mm厚のソーダライムガラスに挟持したサンプルを作成し、589nmにおける面内複屈折とレターデーション値、遅相軸角を、位相差測定装置KOBRA−WR(王子計測機器(株)製)を用いて計測した。
同サンプルを用いて、全光線透過率及びヘイズ値を、ヘーズメーターNDH5000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。分光透過率は分光光度計UV2450((株)島津製作所製)を用いて測定した。
なお、片面粘着シートである粘着シート6(比較例2)については、片面の粘着剤層をガラスに貼着したもので測定した。
面内複屈折並びにレターデーション値(nm)、ヘイズ、全光線透過率、380nmと430nmにおける分光透過率の測定結果を表1に示した。
【0059】
(外観検査)
実施例・比較例で作製した粘着シートを、遅相軸角に対して45の角度をなす向きを長軸に合わせ、80mm×50mmの長方形に切り出した。切り出した粘着シートの表裏工程用剥離フィルムを順次剥がして露出した粘着面に80mm×50mm×0.5mm厚さのソーダライムガラスを貼着し、両面をガラスで挟持させたサンプルを作製した。
片面粘着シートである粘着シート6(比較例2)については、片面の粘着剤層をガラスに貼着し、さらに周縁部に160μmのスペーサを介した上にガラス配置固定した[ガラス/粘着剤層1/基材層1/空気層/ガラス]の構成とし、作製したサンプルを目視観察した。
【0060】
透過照明付ステージ(株式会社オーツカ光学社製 ENV−CL)のステージ上に、偏光板/サンプル/偏光板をこの順番で配置した。この時、ステージ側の偏光板の配向軸とサンプルの遅相軸とが成す角度を45°とし、上側の偏光板は、ステージ側偏光板と平行ニコルの状態とした。なお、偏光板には日東電工製 NWF−KDSEGHC−ST22を用いた。
ステージ光源から垂直上向きに光を出射し、前述した偏光板/サンプル/偏光板の積層体に光を透過させ、外観を目視観察した。
次に、上側の偏光板を時計回りに90°回転させ、同様に光透過時の外観を確認し、平行ニコル/直交ニコル何れかの状態において、殆ど光が透過しない状態(暗化)、著しい色ムラが確認された場合(虹ムラ)等の著しい視認性の低下がないかを確認した。
サンプル単独での外観不良並びに偏光板介在時に視認性の低下なきものを「○」、何れかに不良が見られたものを「×」と判定した。
【0061】
(粘着信頼性)
85mm×55mm×厚さ1.0mmのソーダライムガラスの周縁部に、幅6mm、厚み30μmの印刷を施し、周縁部に30μmの印刷段差をもつ評価用ガラス基板を作製した。
前記外観評価と同様に裁断し、粘着剤層2側の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面を上記ガラス基板の印刷段差部を覆うようにハンドローラにて貼着した。次いで、残る剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面に前述の外観評価で用いた未処理のソーダライムガラスを減圧下(絶対圧
5kPa)にてプレス貼合してサンプルとした。
貼合品(サンプル)にオートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.3MPa)を施して仕上貼着し、積層体を作製し、これを常態(温度23℃、湿度40%)で一日静置した後、外観を目視観察した。
目視観察して、印刷段差付近に発泡若しくは剥離が発生したものを「×」、発生が認められなかったものを「○」と判定した。
なお、片面粘着シートである粘着シート6(比較例2)では部材間を充填出来ないので、基材に挟持して行う粘着信頼性の評価は行わなかった。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1〜4は、両面粘着シートに適度な異方性をもたせたことによって、平行及び直交ニコル時、すなわち偏光サングラス等を介して画像を見るいずれの場合においても、積層体を光が透過し、著しい視認性低下を起こさないことが分かった。さらには、直線偏光解消層の表裏を粘着シートで挟み込むことで、直線偏光解消層表面の凹凸や傷を柔軟な粘着剤層で埋めて欠陥を最小限に抑えることができることから、偏光板を介さない場合における外観を良好にすることができた。
さらに、実施例4では、紫外線吸収性能をもつ粘着剤層3を積層したため、前述の直線偏光解消機能のみならず、貼合部材を紫外光線から保護する効果も期待できる。しかも可視域光線は十分に透過するため、画像表示装置内に配設して用いた場合においても、視認性は十分確保することができると考えられる。
【0064】
また、実施例1のように直線偏光解消層として薄いポリエチレンテレフタレート2軸延伸フィルム(厚さ5μm)を用いた場合も、粘着剤層で厚みをもたせることで、ハンドリング性が高めることができた。これによって、生産時の作業性改善に寄与するばかりか、さらなる液晶モジュールの薄肉化に寄与する効果も期待できる。
なお、実施例2及び3についても、実施例1同様にハンドリング性については良好であり問題はなかった。
【0065】
これに対し、比較例1は、等方性の粘着剤層のみを積層して形成したため、出射光の偏光状態に影響せず、結果、直交ニコル時に上側の偏光板を光が透過せず暗化し、偏光板介在時の視認性が確保できず不適であった。
比較例2は、複屈折性の基材フィルムによって、偏光板介在時の視認性は確保できたものの、基材の傷や凹凸を埋める粘着剤層がないため、シートの欠陥が目立つばかりか、片面粘着シートであるため、空気層とガラスとの界面反射による光のロスが多く、両面粘着シートを用いた場合に比べて視認性が劣っていた。
比較例3は、複屈折性の直線偏光解消層によって、直線偏光が解消されて光は透過するものの、用いたフィルムの複屈折値に対して厚みが厚いため、レターデーションが高く干渉色を生じることから、虹ムラとなり、視認性が良いとは言い難いものであった。
比較例4は、1軸延伸の位相差フィルムを積層しているため、偏光板介在時の視認性は問題ないが、表裏に配する粘着剤層が何れも直線偏光解消層より薄く、柔軟性に劣り、印刷段差をもつ表面保護パネルに貼ると、段差に沿って外周部に気泡が生じるため、表面保護パネルには直接貼着出来ず、本目的に用いるには不適であることが分かった。
【0066】
以上の点より、本両面粘着シートを、表面保護パネルと液晶モジュールの視認側に用いることによって、裸眼だけでなく偏光サングラス等を介して表示装置画像を見る場合にも優れた視認性を確保できるばかりか、薄肉の基材フィルム機能層に粘着剤層で厚みをもたせることで取回しが容易になり、液晶モジュール組立作業における効率改善に寄与し、さらには液晶モジュールの薄肉化に寄与することができると考えられる。