特許第5944903号(P5944903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944903
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】相互作用深さシンチレーション検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20160621BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   G01T1/20 C
   G01T1/20 B
   G01T1/20 G
   G01T1/20 E
   G01T1/20 D
   G01T1/161 C
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-528480(P2013-528480)
(86)(22)【出願日】2011年9月14日
(65)【公表番号】特表2013-542415(P2013-542415A)
(43)【公表日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】CA2011001035
(87)【国際公開番号】WO2012034220
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】61/382,636
(32)【優先日】2010年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/382,632
(32)【優先日】2010年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513063291
【氏名又は名称】アブデルムーナイム・ファウジ・ゼルーク
(73)【特許権者】
【識別番号】513063305
【氏名又は名称】アレクシ・オレイニク
(73)【特許権者】
【識別番号】513063316
【氏名又は名称】アレクサンダー・ザグメニイ
(73)【特許権者】
【識別番号】513063327
【氏名又は名称】セルゲ・コレフ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】アブデルムーナイム・ファウジ・ゼルーク
(72)【発明者】
【氏名】アレクシ・オレイニク
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ザグメニイ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲ・コレフ
【審査官】 林 靖
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0224164(US,A1)
【文献】 特開平06−051069(JP,A)
【文献】 特開昭56−048560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ光子相互作用の位置の検知を行うためのシンチレーション検出器であって、
夫々の長側面に沿って互いに連結された2以上の細長い第1および第2のシンチレーション結晶素子のアレイと、
ソリッドステート半導体光検出器の共通の基板上に配置された別個の感光領域のアレイと
を備え、
前記第1および第2のシンチレーション結晶素子のアレイは、前記別個の感光領域のアレイに1対1の関係で光学的に連結された近位出力ウィンドウを備え、
前記第1および第2のシンチレーション結晶素子は、該素子の遠位端に屋上部を備え、
前記屋上部は、
前記第1および第2のシンチレーション結晶素子の一方を他方に光学的に連結し、
ガンマ光子相互作用により発生した光を、前記第1および第2のシンチレーション結晶素子の一方から他方に反射し、伝達するように構成され
前記屋上部は、第1および第2の光ガイド面取り面によって形成され、
前記第1光ガイド面取り面は、前記第1シンチレーション結晶素子と一体の部分であり、
前記第2光ガイド面取り面は、前記第2シンチレーション結晶素子と一体の部分である
シンチレーション検出器。
【請求項2】
請求項1に記載のシンチレーション検出器であって、
前記第1および第2のシンチレーション結晶素子のアレイの前記第1および第2のシンチレーション結晶素子は、複数の結合シンチレーション結晶対を形成し、
前記結合シンチレーション結晶対の各々は、他の前記結合シンチレーション結晶対の各々から光学的に遮断される
シンチレーション検出器。
【請求項3】
請求項2に記載のシンチレーション検出器であって、
前記結合シンチレーション結晶対の各々は、前記第1および第2のシンチレーション素子の間に位置決めされた光分離層を備え、
前記光分離層は、前記第1および第2のシンチレーション素子の間の光の共有を制限する
シンチレーション検出器。
【請求項4】
請求項に記載のシンチレーション検出器であって、
前記第1および第2のシンチレーション結晶の前記遠位端は、向かい合った光連結ウィンドウを備え、
前記光連結ウィンドウは、前記第1および第2の光ガイド面取り面の間に位置決めされており、光連結層が間に配置されることによって互いから分離される
シンチレーション検出器。
【請求項5】
請求項3に記載のシンチレーション検出器であって、
前記屋上部は、別体のプリズム素子によって形成されており、
前記別体のプリズム素子は、前記第1および第2のシンチレーション素子と屈折率が同一または実質的に同一の材料で形成されている
シンチレーション検出器。
【請求項6】
請求項に記載のシンチレーション検出器であって、
前記第1および第2のシンチレーション素子の各々は、遠位光連結ウィンドウを備え、
前記別体のプリズム素子は、光連結層が間に配置されることによって、前記遠位光連結ウィンドウに光学的に連結される
シンチレーション検出器。
【請求項7】
請求項1に記載のシンチレーション検出器であって、
前記第1および第2のシンチレーション結晶素子は、
互いに一体的に形成されており、
単一のU字形状シンチレーション結晶素子の第1および第2の枝部を形成する
シンチレーション検出器。
【請求項8】
請求項に記載のシンチレーション検出器であって、
前記第1および第2の枝部は、光連結層が間に配置されることによって互いから分離される
シンチレーション検出器。
【請求項9】
請求項3に記載のシンチレーション検出器であって、
前記光分離層は、不透明度が不均等である
シンチレーション検出器。
【請求項10】
請求項3に記載のシンチレーション検出器であって、
前記光分離層は、反射性または拡散反射性を有する
シンチレーション検出器。
【請求項11】
請求項1に記載のシンチレーション検出器であって、
前記屋上部は、前記第1および第2のシンチレーション結晶の前記長側面に対して約35°以上約80°以下の角度をなす
シンチレーション検出器。
【請求項12】
請求項2に記載のシンチレーション検出器であって、
前記結合シンチレーション結晶対の各々は、その外面に光遮断層を備える
シンチレーション検出器。
【請求項13】
請求項12に記載のシンチレーション検出器であって、
前記光遮断層は、反射性または拡散反射性を有する
シンチレーション検出器。
【請求項14】
請求項1に記載のシンチレーション検出器であって、
前記第1および第2のシンチレーション結晶素子は、互いに実質的に同一であり、LFS、SLO、LYSO、GSO、LGSO、LuAP、BGO、NaIおよびPbWO4の結晶からなる群から選択される
シンチレーション検出器。
【請求項15】
請求項1に記載のシンチレーション検出器であって、
前記別個の感光領域のアレイは、別個のマイクロピクセルアバランシェフォトダイオードのアレイを形成する
シンチレーション検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本願は、2010年9月14日に出願された、米国仮特許出願第61/382,632号および米国仮特許出願第61/382,636号の優先権の利益を主張するものである。これらの出願に開示された全ての内容は、参照によって本明細書の開示の一部とされる。
【0002】
[0002]本発明は、陽電子放射断層撮影(PET)等の撮影用ガンマ線検出器の分野に関し、詳細には、検出器のシンチレータ素子の結晶質内でのガンマ量子相互作用の横方向(transverse)座標ばかりでなく、個々のシンチレータ素子内での深さ(一般的には、相互作用の深さ方向位置(DOI)と呼ばれる)の検知を行うためのシンチレーション検出器に関する。これにより、リング状検出器位置に基づく、PET(または任意の他の)撮影システムの、特にシステムの視野片縁部での空間分解能が向上する。
【背景技術】
【0003】
[0003]陽電子放射断層撮影は、核医学の三次元イメージング技術であり、人間の患者を含む生存生物の機能活性の空間(3D)マップを生成する。この技術は、生物学的物質(例えばフルオロデキシグルコース等)に取り付けた陽電子放射核種を調査対象の生物に導入し、次いで(この物質が体内に浸透し、影響のある領域に集中するのに要する所定時間の後)、調査対象の生物内に亘るその分布を調べることに基づく。
【0004】
[0004]放射性核種が放射した陽電子は、電子と対消滅する前に、調査対象の生物の生物学的組織内を数mm移動する。この対消滅事象は、2つの511keVのガンマ量子を発生させる。これらのガンマ量子は、互いからほぼ反対方向(180°±0.23°)に伝播する。対消滅事象のおおよその位置を決定するために、これらの2つの高エネルギ光子を捕捉できる。代表的なPETシステムでは、これらの光子は、調査対象の生物の周囲にリング状に配置されたシンチレーション素子によって吸収され、低エネルギ可視光子のバーストが発生し、その後、各シンチレーション素子に取り付けられた光検出器によって検知される。高エネルギ光子の各対は、実質上直線的に移動する(一般的には、同時計数線(LOR)と呼ばれる)ので、LOR交差場所(いわゆる「スィートスポット」)を計算することによって、標識付けされた生物学的物質の場所を特定できる。対をなして到達しなかった高エネルギ光子は、同時検出を使用することによって排除される。
【0005】
[0005]従来のシステムでは、ガンマ光子吸収事象の空間座標は、1つのシンチレーション素子の大きさの精度のみで決定できる。横方向座標の重要性が高いので、これらのシンチレーション素子は、視野中心部に面する断面が比較的小さい細長い形態を有する(例えば、従来技術を示す図1を参照されたい)。これにより、調査対象の容積の中心部での空間解像度は良好となるが、吸収事象に対するLORが不正確となるので、空間解像度は、片縁部に向かうに従って徐々に劣化する。従って、シンチレーション素子の長寸法(long dimension)に沿った光子相互作用の位置(これは、通常は、相互作用の深さ方向位置(DOI)と呼ばれる)を決定するのが望ましい。DOI計測を提供するPETスキャナは、LORを光子吸収事象に更に正確に割り当てることができ、それ故に、視野に亘る分解能の不均等が改善される。
【0006】
[0006]DOI性能(DOI capability)を向上させるための多くの方法が提案されてきたが、これらの方法の多くは、検出器の電子装置を追加することに依存するので、相当に複雑なハードウェアを必要とし、多くの他の問題(例えば、前方に面する電子装置でのガンマ量子吸収や、検出器リングにおけるデッドスペースの増大)が生じる。これらの従来技術の方法のうち、ツマー等による米国特許公開第2003/0105397号には、2つの検出器がシンチレーション結晶バーの対向端部に配置された、デュアル検出器読み出し技術が記載されている。デュアル光検出器(PD)読み出しシンチレーションブロックは、シングルPD読み出しブロック程には、密に詰め込むことができない。そのため、ガンマ量子を捕捉することができないデッドスペースがブロック間に生じる。しかも、この方法は、2倍のPDおよび他の電子部品を必要とし(シングルPD読み出しブロックと比較した場合)、これにより製造費用が増大する。
【0007】
[0007]更に、減衰時間によって区別される2つ以上の異なるシンチレータ層を有するホスウィッチ形検出器がDOI計測を行うために公知である。例えば、異なる減衰時間の複数のシンチレータからなる多層検出器を使用するレコンテティーチズの米国特許第4,843,245号を参照されたい。この方法により、おおまかなDOI指標化が可能となり、PETイメージング技術の分解能が向上するが、分解能は、検出用電子装置の弁別性能によって、また、利用可能なシンチレーション材料の選択によって、限定される。しかも、遥かに長い同時計数ウィンドウを必要とし、そのため、収集される事象の数が更にまばらになるとともに誤った同時計数が増え、これらによって、画像の再構成が更に困難になる。
【0008】
[0008]住谷等の米国特許第7,091,490号に開示された別の方法は、光の共有(分配)と減衰時間の弁別との両方を組み込んだ多層シンチレータ検出器の使用からなる。この構成は、様々な表面処理が施されるとともに、透明、反射性または不透明の様々な光インタフェース(検出器素子に組み込まれる)によって分離された、多数のシンチレーション結晶を必要とする。これにより、この方法は、おそらく間違いのないことであろうが、デュアル検出器を用いた方法よりも更に複雑になる。それは、シンチレーション素子の組成が非常に複雑になるためである。
【0009】
[0009]1つの特定の方法は、2つの隣接したシンチレーション結晶間で長寸法に沿った光の共有を使用する。このことは、検出器用電子装置の複雑化に繋がらず、対をなして各結晶に取り付けられた検出器が収集した光信号の比に基づいてDOI情報を取り出すことができる。これが、レウェレン等の米国特許第7,956,331号の要旨であり、隣接した結晶間の、形作られた不透明なスクリーンおよび/または空間的光インターフェース層、および、ソリッドステートマイクロピクセル検出器により、いかなる電子装置も追加導入せずに、DOI機能をPET検出器に追加する手段を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許公開第2003/0105397号
【特許文献2】米国特許第4,843,245号
【特許文献3】米国特許第7,091,490号
【特許文献4】米国特許第7,956,331号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0010]上述の方法は、DOI機能付きPETシステムについての技術的必要条件を満たす。しかしながら、検出器の製造に関連した多くの問題が未解決のままである。例えば、全ての従来のPET検出器と同様に、レウェレン等の米国特許第7,956,331号に概説された方法は、各シンチレーション結晶対を個々の素子から組み立てて、光を共有するための不透明な層および透明な層をこれらの素子間に置くことを必要とする。次に、一対の結晶の各々を(ほぼ手作業で)適当な反射層および光遮断層が一対の結晶間に配置された検出器ブロックに組み立てなければならない。しかしながら、重要なDOI機能を保持しつつ、更に産業的かつ自動化された方法でシンチレーション検出器ブロックを製造することが望ましい。本発明は、とりわけ、PET検出器の製造の自動化および改善の可能性を更に開く費用対効果に非常に優れた方法で、PETシンチレーション検出器にDOI機能を追加するための別の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0011]本発明は、シンチレータ内で発生するガンマ光子相互作用の位置または深さを検出できるシンチレーション検出器に関する。本発明の1つの実施例は、少なくとも一対の結合シンチレーション結晶バーを含み、結合シンチレーション結晶バーの各対は、側面と側面とを向き合わせた構成で位置決めされており、且つ、夫々の長側面に沿って連結された2つの個々のシンチレーション結晶バーを含む。これらのシンチレーション結晶バーは、4つの長側面において、互いからおよび周囲環境から光学的に遮断されている。結晶バーの各々の残りの2つの小さい面は、光ウィンドウとして働き、それらの表面は、結晶バーの外部への光カップリングを容易にしまたは制限するために、必要に応じて、研磨され、コーティングが施される。各対の結晶バーの隣接する2つの連結ウィンドウは、光インターフェース層によってこれらの結晶バーに取り付けられた反射素子(即ち「屋上部」)によって光学的に互いに連結される。一実施例では、更に、一方のシンチレーション結晶バーと他方のシンチレーション結晶バーとの間で光を共有するために、コーティングが施された反射面を有する再帰反射プリズムを含む。
【0013】
[0012]シンチレーション検出器は、更に、反射素子に連結された光ウィンドウとは反対側の、結合シンチレーション結晶バーの各対の隣接する光ウィンドウに光学的に連結されたソリッドステート半導体光検出器を含む。ソリッドステート光検出器は、別個の感光領域のアレイを含み、これらの感光領域の各々は、感光領域の各々が、各結合対の各シンチレーション結晶バーの開放された光ウィンドウに1対1の関係で光学的に連結されるように、共通の基板の好ましくは平らな表面上に配置される。
【0014】
[0013]シンチレーション結晶バーの結合対の一方のバーの1つの内部における可視光子のバースト(ガンマ光子相互作用事象の結果として発生する)は、2つの付属する結晶バー間で共有される。次いで、付属するシンチレーション結晶バーの長さに沿ったこの事象の位置についての情報は、結合バーの各光出力ウィンドウに連結された光検出器の夫々の感光領域によって記録される光信号の比率を計算することによって、判断されてもよい。
【0015】
[0014]本発明のこれらおよび他の実施例を、以下の詳細な説明および添付図面において更に詳細に説明する。しかしながら、本明細書中に開示される特定の実施例に対して、それらの本質的な趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変形、変更および代替を行ってもよいことは理解されるべきである。更に、本明細書中で引用した様々な文献の全ては、参照によって、これらの文献に開示された全ての内容があらゆる目的で明確に本明細書の開示の一部とされる。
【0016】
[0015]これらの例示は、本発明を更によく理解するために、以上の概略の説明および以下の詳細な説明を補足するものである。更に、幾つかの図面に亘り、同様の特徴を示すのに同様の参照番号を使用している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】[0016]図1a(従来技術)は、視野境界2を有する従来のPET検出器リング1の概略側面図であり、視野の片縁部に向かって生じる電子陽電子対消滅事象3を、真のLOR4と、対応する検出器素子によって捕捉された同時計測ガンマ光子から計測される、誤った(位置ずれした)LOR5と、ともに示す。
図1b】[0017]図1b(従来技術)は、ベース部分6が、光インターフェース層9および光分離層10によって分離されたシンチレーション結晶バー8の出力ウィンドウ7に連結されたソリッドステート光検出器である、従来技術のPET検出器(レウェレン等の米国特許第7,956,331号)の概略斜視図である。
図2a】[0018]図2aは、新規な検出器の第1実施例の断面図であり、ベース部分6が、結合シンチレーション結晶バー8の出力ウィンドウ7に連結された共通の基板上にその対応する感光領域を有する光検出器に相当する。これらの結晶バー8は、光ガイド面取り面11(これらの面取り面が屋上部16を形成する)を有しており、光インターフェース層12および遠位連結ウィンドウ13によって互いに連結されている。これらの結晶バー8の隣接する面は、光分離層14を介して互いに取り付けられており、その外側が光遮断コーティング15で覆われている。
図2b】[0019]図2bは、新規な検出器の第2実施例の断面図であり、図2aの要素と同様の要素(同じ参照番号が付してある)に加えて、結合シンチレーション結晶バー8間に光を共有できるように構成された再帰反射結晶素子によって形成された屋上部16を示す。屋上部16は、光インターフェース層17および遠位連結ウィンドウ18を介して結晶バー8に連結されている。
図2c】[0020]図2cは、新規な検出器の別の実施例の断面図であり、図2aの要素と同様の要素(同じ参照番号が付してある)に加えて、U字形状のシンチレーション結晶19を、2つの近位連結ウィンドウ7と、光ガイド面取り面11(これらの面取り面が屋上部16を形成する)と、光分離層14によって設けられた狭幅の開口部と、ともに示す。
図3a】[0021]図3aは、ガンマ光子相互作用で放出された光を、本発明の一部を構成する面取り面が案内する方法を示す図である。20は、γ光子相互作用場所(ここで可視光が発生する)であり、矢印21は、第2シンチレーション結晶バーと共有される放出光の大部分を示す。
図3b】[0022]図3b(従来技術)は、従来の光の共有方法において、ガンマ光子相互作用が起こる結晶バーに連結された検出器感知領域に大量の光22が反射されて戻る(破線参照)ことを示す図である。
図4a】[0023]図4aは、光ガイド面取り位置の角度23および大きさ24を示す図である。
図4b】[0024]図4bは、連結ウィンドウおよび光ガイド面取り位置とともに、光ガイド面取り面の大きさ24、結晶バーの幅25および連結ウィンドウの大きさ26を、2つの光検出器間で共有する光の特性および量を調節する上で使用できるパラメータとして示す図である。
図5a】[0025]図5aは、本発明の別の実施例による検出器ブロックの斜視図であり、検出器ブロックは、面取りを施された結晶質シンチレーションバー8の対(図2a,図3a,図4aに示す検出器の形態の、面取りを施された結晶質の対の各々を有する)のn×kのアレイからなり、光検出器6の2n×kのアレイに連結されている。
図5b】[0026]図5bは、本発明の別の実施例による検出器ブロックの斜視図であり、検出器ブロックは、結晶質シンチレーションバー8の対(図2bに示す検出器の形態の結晶質対の各々を有する)のn×kのアレイからなり、遠位連結ウィンドウおよび再帰反射器16を介して互いに連結された各対の結晶バーとともに、近位出力ウィンドウを介して光検出器6の2n×kのアレイに連結されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0027]本発明は、シンチレーション検出器に関し、この検出器は、検出器のシンチレーション材料内で発生するγ光子相互作用の深さ座標を検知でき、これによってリング状PET画像処理システムの分解能が向上する。一実施例では、添付図面(特に図2a)を参照すると、本発明は、少なくとも一対の結合シンチレーション結晶素子すなわちバー8を含む、γ光子相互作用の深さ位置を計測するためのシンチレーション検出器に関する。結合シンチレーション結晶バー8の各対は、(i)シンチレーションバー8間での光の共有を制限するために、2つの別個のシンチレーション結晶バー8間に位置決めされた光分離層14と、(ii)結合シンチレーション結晶バーの各々の遠位端(図1aを除く全ての図の上部分)に1つずつ設けられた遠位連結ウィンドウ13であって、互いに光学的に接触する、場合によっては、光インターフェース層12を間に置いて光学的に接触する遠位連結ウィンドウ13と、(iii)結合シンチレーション結晶バー8の各々の遠位端に設けられた光ガイド面取り面11(当該技術分野で公知の矩形の結晶バー形状と異なる)とを含む。光ガイド面取り面11は、各結晶バー8の幅に関して様々な大きさ24を備えていてもよく、各結晶バー8の最長面(longest face)に対して様々なカット角度23をなして(一方のバーでγ光子相互作用が発生する複数の結合結晶バー8間での光の共有を最適化するのに必要とされる場合があるように)いてもよい。同様に、遠位連結ウィンドウ13は、光の共有を更に最適化するために、様々な大きさ26および形状を備えていてもよい(図4aおよび図4b参照)。光ガイド面取り面11は、従来の光の共有方法(従来技術を示す図3b参照)とは異なり、γ光子相互作用事象で発生した光のごく一部を、結合シンチレーション結晶素子8の各対の他方の結晶バーに到達するように反射する。図3bに示す従来技術では、発生した光のこの部分は、反射されて同じ結晶バー内に戻される。
【0019】
[0028]γ光子相互作用事象で発生した可視光を更に多く収集し、2つの別個のシンチレーションバー8間での光の共有を最適化するために、各バー8の表面は、機械的処理(例えば研削または研磨)が施されてもよく、化学的処理(例えばエッチング)が施されてもよい。近位出力ウィンドウ7は、十分な光収集できるように、また、光の伝達を高められるように、好ましくは、研磨される。光の収集を更に改善し、一対の結合シンチレーション結晶バー8と別の一対の結合シンチレーション結晶バーとの間のクロストークを防止するために、各シンチレーション結晶バー8の外面は、吸光性カバーまたは光反射性カバーによって覆われていてもよい。更に、光遮断層14は、不透明度が不均等であってもよく、反射性であってもよく、および/または光拡散板として働いてもよい。
【0020】
[0029]個々のシンチレーション結晶バー8の材料は、好ましくは、LFS、SLO、LYSO、GSO、LGSO、LuAP、BGO、NaIおよびPbWOからなる群から選択される。検出器を構成する各結合シンチレーション結晶バー対の個々のバーは、好ましくは、同一のシンチレーション材料で形成されている。この材料は、好ましくは、LFSシンチレーション結晶(ゼコテックフォトニクス社から入手できる)である。また、各シンチレーション結晶バー8の材料は、好ましくは、光出力が80%よりも高いNaI:TIであり、螢光減衰時間が50ns未満であり、密度が6g/cmよりも大きい。
【0021】
[0030]別の実施例では、本発明のシンチレーション検出器は、更に、検出器の感光領域が個々のシンチレーション結晶バー8の各々の近位出力ウィンドウ7に1対1の関係で光学的に連結されたソリッドステート半導体光検出器6(ゼコテックフォトニクス社から入手できる)を含む。当該技術分野で公知の従来の位置検出光電子倍増管(PMT)とは異なり、本発明のソリッドステート半導体光検出器6は、全体に平らな表面を形成する共通の基板の上に配置された別個の感知領域のアレイを含む。光検出器の各感知領域は、マイクロピクセルアバランシェフォトダイオードのアレイを含み、これらのダイオードは、好ましくは、各感知領域の材料に埋め込まれる。各感知領域のピクセル(独立p−n接合)密度は、好ましくは、1000pixel/mmよりも大きい。ピクセル密度は、多くの用途に対しては、5000pixel/mm乃至15000pixel/mmで十分であるが、更に好ましくは、約40000pixel/mm以上である。添付図面に示すように、各シンチレーション結晶バー8の近位出力ウィンドウ7は、光検出器6の夫々の感知領域の各々に1対1の関係で連結されている。本発明のこの実施例の全体の斜視図を図5aに示す。この図では、n×k対の結晶シンチレーションバー8のアレイが、2n×k個の別個の感知領域を有するソリッドステート光検出器6に、シンチレーション結晶バー8の各々と1対1の関係で接続されている。
【0022】
[0031]別の実施例では、図2bを参照すると、本発明は、上述の実施例と類似であるが、個々のシンチレーション結晶バーの遠位端に光ガイド面取り面を形成する代りに、シンチレーション結晶バーの各結合対の各結晶バーが、再帰反射器16(即ち、屋上部または屋上素子)に連結された遠位光連結ウィンドウ18を有するシンチレーション検出器に関する。再帰反射器16は、好ましくは、プリズム形状を有しており、その屈折率がシンチレーション結晶バー8と同じまたは類似の材料で形成される。再帰反射器の光ガイド面の角度および大きさは、図4aおよび図4bに示す第1実施例の光ガイド面取り面の大きさおよび角度と同様に、結合された2つのシンチレーション結晶8の対の各々の間での光の共有を最適化する上で必要なだけ変えてもよい。再帰反射器の表面は、好ましくは、内部光反射を容易にするために、光学的研磨が施されており、シンチレーション検出器の特定の構成に応じて反射性コーティングで覆われていてもよい(結合シンチレーション結晶8の各対の遠位連結ウィンドウに好ましくは取り付けられた連結側部の代りに、光学的接着剤、または(好ましくはシンチレーション結晶バーの材料と同じまたは少なくとも類似の屈折率を有する)他の光インターフェース層を用いる)。再帰反射器16の連結面および結晶バー8の遠位連結ウィンドウには、結晶バー間の光学的結合を改善するために、反射防止コーティングが施してあってもよい。更に、シンチレーション結晶バー8の各結合対に取り付けられた再帰反射器の全体を、光学的に透明なプラスチックを用いて、打ち抜き、射出成形、または別の同様の技術によって1回の作業で単一のユニット(しかしながら、互いから光学的に遮断されたユニット)として製造してもよい。再帰反射器は、製造後、図5bに示すように、結合シンチレーション結晶バーのアレイの遠位端に取り付けられる。この実施例は、上述の実施例の全ての利点を備えており、しかも製造が更に容易であり、安価な材料を使用し得る。本発明のこの実施例の全体を図5bの斜視図に示す。ここでは、n×k対の結合シンチレーションバー8のアレイの近位端が、2n×k個の別個の感知領域を有するソリッドステート光検出器6に、シンチレーション結晶バー8の各々と1対1の関係で接続されている。アレイを構成するシンチレーション結晶バーの各結合対は、それらの遠位端において、対応する再帰反射器16に接続される。再帰反射器のアレイは、単一のアッセンブリ部品として製造し、また、1回の簡単な作業で取り付けることが可能である。
【0023】
[0032]本発明の更に別の実施例では、図2cを参照すると、上述の実施例のシンチレーション結晶バーの各結合対の代りに、1つのU字形状シンチレーション結晶19を備える。U字形状シンチレーション結晶19の枝部(分割された部分)の大きさ(proportions) は、図2a,図2b,図3a,図4a,図5a,図5bに示す他の実施例の結晶バー8のそれと同様である。これらの枝部間には、狭幅のスロットが、他の実施例の同様の層と同様の光分離層14によって狭められて形成されている。U字形状シンチレーション結晶バー19の遠位端には、対をなした別々のシンチレーション結晶8を使用する本発明の他の実施例におけるのと同様の光ガイド面取り面11(屋上部を形成する)が設けられている。この構成には、本発明の他の実施例のシンチレーション結晶の各結合対の結晶バー間に存在する光インターフェースをなくすという利点がある。これにより、フレネル反射による損失および内部反射による光学的損失をなくし、光収集効率が向上する。
【0024】
[0033]上述の実施例を含む本発明の全ての可能な実施例は、デュアル検出器読み出し技術(シンチレーション結晶バーの各端で光検出器を使用する)を越える重要な利点を有する。幾何学的寸法が同じであり、横方向空間解像度が同じであるとすれば、本発明の新規な検出器デバイスは、前記デュアル検出器技術と比較して、検出器間に2倍の光路を提供する。これによって、出力信号比が高くなる。この改良により、DOI計測の精度が向上することが期待される。
【0025】
[0034]本発明は、開示される特定の詳細に限定されない。本発明を、図示し且つ本明細書中に説明した実施例に関して述べたが、本発明は、本発明の趣旨および本質的な特徴から逸脱することなく、その他の特定の方法または形態で実施してもよい。従って、上文中に説明した実施例は、全ての点に関し例示であって、限定ではないと考えられるべきである。従って、本発明の範囲は、以上の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と等価の意味および範囲内の全ての変更は、その範疇に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0026】
6…光検出器
7…近位出力ウィンドウ
8…結合シンチレーション結晶バー
11…光ガイド面取り面
12…光インターフェース層
13…遠位連結ウィンドウ
14…光分離層(光遮断層)
15…光遮断コーティング
16…再帰反射器
17…光インターフェース層
18…遠位光連結ウィンドウ
19…シンチレーション結晶
22…光
23…カット角度
24,26…大きさ
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b