(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多層物品を製造するための方法であって、前記物品は、絶縁層によって分離され、絶縁層に結合した、2つの架橋された半導体層を含み、前記半導体層は、過酸化物架橋性オレフィンエラストマーから形成され、前記絶縁層は、シラングラフト化オレフィン系エラストマー含有組成物を含み、前記方法は、(A)前記2つの架橋された半導体層の間に、シラングラフト化オレフィン系エラストマーを注入して、それぞれの半導体層と直接接触させる工程と、(B)過酸化物触媒のない状態で、シラングラフト化オレフィン系エラストマーを架橋する工程とを含む、前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
特に断りがなく、文脈から暗示されず、または、当分野において慣習的でない限り、すべての部および百分率は、質量を基準にし、すべての試験方法は、本開示の出願日時点のものである。米国特許のプラクティスの目的で、いずれの参考特許、特許出願または特許公報の内容も、特に、定義の開示(本開示で具体的に示す定義と矛盾しない範囲で)、および当分野における一般知識に関して、これらの全体が引用により組み込まれる(または、その対応する米国特許等が引用により組み込まれる)。
【0007】
本開示における数値範囲は、おおよその範囲であるため、特に指示のない限り、その範囲の外側の値を含むことがある。数値範囲には、小さい値と大きい値との間が少なくとも2単位離れている場合、1単位間隔で、下限値および上限値の値、ならびに下限値および上限値を含むすべての値が含まれる。一例として、組成特性、物理特性、または他の特性(例えば、分子量等)が100から1,000である場合、すべての個々の値、例えば、100、101、102等と、サブ範囲、例えば、100から144、155から170、197から200等が明示的に列挙される。1未満である値を含む範囲、または1よりも大きい分数(例えば、1.1、1.5等)を含む範囲において、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01または0.1である。10未満の一桁の数字を含む範囲(例えば、1から5)において、1単位は、一般に、0.1であると考えられる。これらは、具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙した最低値と最高値の間のすべての可能性のある組合せが、本開示に明示されていると考えられる。数値範囲は、特に、組成物の種々の成分の量、および方法のパラメーター等について、本開示中に示されている。
【0008】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、および同類の用語は、同じことが具体的に開示されていても、開示されていなくても、付加的な構成要素、工程または手順の存在を除外することを意図しない。疑問を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用によって特許請求の範囲に記載されるすべての方法には、特に断りのない限り、1つまたはそれ以上の付加的な工程、幾つかの装置もしくは構成部品、および/または材料が含まれ得る。対照的に、「〜から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、実施可能性に必要でないものを除いて、次の詳説の範囲、他の構成要素、工程または手順から除外する。「〜からなる(consisting of)」という用語は、具体的に示されないか、またはリストされない構成要素、工程または手順を除外する。「または(or)」という用語は、特に断りのない限り、リストされた別々の要素、ならびにこれらの組合せを指す。
【0009】
「組成物」、「配合物」、および同類の用語は、2つまたはそれ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。可撓性の層の多層物品が製造される材料の混合物またはブレンドの文脈において、組成物には、層の原料成分(例えば、ポリマー、充填剤、抗酸化剤、難燃剤等)がすべて含まれる。
【0010】
「ポリマー」および同類の用語は、同じ種または異なる種にかかわらず、モノマーの重合によって調製された化合物を意味する。したがって、ポリマーという一般名称は、1種のみのモノマーから調製されたポリマー、および下に定義する共重合体(interpolymer)という用語を指すのに通常使用される、ホモポリマーという用語を包含する。
【0011】
「共重合体(interpolymer)」とは、少なくとも2つの異なる種のモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。この一般名称には、2つの異なる種のモノマーから調製されたポリマー、および2を超える異なる種のモノマー(例えば、三元共重合体、四元共重合体(tetrapolymer)等)から調製されたポリマーを指すのに通常使用される、共重合体が含まれる。
【0012】
「オレフィン系ポリマー」および同類の用語は、ポリマーの全重量を基準にして、大半の重量パーセントのオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)を重合された形態で含む、ポリマーを意味する。オレフィン系ポリマーの非限定例には、エチレン系ポリマー、およびプロピレン系ポリマーが含まれる。
【0013】
「エラストマー」、「エラストマーポリマー(elastomeric polymer)」、および同類の用語は、その元の長さの少なくとも2倍まで伸ばすことができ、また、伸張させる力が放出されると、ほぼその元の長さまで非常に急速に収縮するゴム様ポリマーを意味する。エラストマーは、一般に、ASTM D638−72による測定によって、室温での架橋されていない状態で、10,000psi(68.95MPa)以下の弾性係数、および一般に200%を超える伸びを有する。
【0014】
「オレフィンエラストマー」および同類の用語は、1つまたはそれ以上のオレフィンから誘導された少なくとも50モルパーセント(mol%)の単位を含む、エラストマーポリマーを意味する。
【0015】
「スクラップ」および同類の用語は、成形工程時において、喪失した材料(すなわち、化合物を成形できなくする相当な架橋により、使用不可能になる材料)を意味する。これは、一部分が成形される、ポンプ式押出機の室の処理温度にした後の一部分の成形時に、除去される材料だけでなく、成形工程に戻して再利用することができない、非常に重要な不良部分である場合がある。これらは、不十分な硬化により、成形品の取出し工程時に欠陥があった部分である。
【0016】
「周囲条件」とは、物品の周辺領域または周辺環境の温度、圧力、および湿度を意味する。本発明の目的において、一般的な周囲条件には、23℃の温度および気圧が含まれる。
概要
【0017】
非過酸化物系架橋法は、本発明の実施、特に、厚い成形品、例えば電気付属品に使用されるもの等の製造に用いられる。シラノール末端ポリジメチルシロキサンによって修飾された、シラングラフト化オレフィン系エラストマーが使用される。本発明のアプローチは、高温硬化工程を必要としないが、従来の製造工程のように、金型を加熱しない、熱可塑性成形によってこれらの物品を製造する。これは、最も厚い層であることが一般的ではあるが、必ずしもそうではない、絶縁層に特に適用可能であり、このため、過酸化物系化合物では、金型に硬化させるのに最も時間がかかる。本発明の方法は、急速な部品の冷却のために室温付近またはさらに低い温度に、金型を維持する必要があるだけなので、サイクルタイムの低減(すなわち、より高い生産性)における顕著な利点だけでなく、エネルギー効率、および製造アーゴノミクスも提供する。
【0018】
一実施形態において、絶縁層および半導体層は、相互に完全に結合される(すなわち、剥離試験によって測定される破壊は、接着破壊(adhesive failure)よりもむしろ凝集破壊(cohesive failure)である)。接着破壊は2つの隣接する層の界面で発生する。すなわち、界面における剥離により、幾分清浄な方法で、相互に剥離した2つの元の層が剥離する。1つまたは両方の層が、2つの層の間の界面以外の位置で破壊される場合、凝集破壊が発生する(すなわち、2つの層の間の結合は、該系での短所ではない。)。一実施形態において、剥離試験(1/2インチのストリップ)における接着は、(>)0.2、>0.5、または>1重量ポンド(lbF)の強度を生じる。一実施形態において、絶縁層と少なくとも1つの、好ましくは両方の半導体層との間の結合または接着は、凝集性がある。
半導体層
【0019】
内側半導体層および外側半導体層(または、第1半導体層および第2半導体層)は、架橋性過酸化物(例えばオレフィンエラストマー、例えばEPDM、エチレンプロピレンゴム(EPR)、およびシリコーンエラストマー等)である、可撓性半導体化合物からなる。第1半導体層および第2半導体層は、組成的に同じか、または異なる。半導体層は、1つよりも多い層を含んでいてもよく、また、層は、組成が同一である必要がない。半導体層を架橋する選択肢の1つが、湿分硬化または放射線照射によって生じる場合がある。
【0020】
一実施形態において、少なくとも1つの半導体層は、オレフィンエラストマー、例えばポリオレフィン系ホモポリマーまたはポリオレフィン系共重合体等を含む。ポリオレフィン系ホモポリマーの例は、エチレンとプロピレンのホモポリマーである。ポリオレフィン系共重合体の例は、エチレン/α−オレフィン共重合体、およびプロピレン/α−オレフィン共重合体である。α−オレフィンは、C
3−20の直鎖状、分岐、または環状α−オレフィン(プロピレン/α−オレフィン共重合体において、エチレンは、α−オレフィンであると考えられる)が好ましい。C
3−20α−オレフィンの例には、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、および1−オクタデセンが含まれる。また、α−オレフィンは、α−オレフィン、例えば3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサン等−が生じる環状構造、例えばシクロヘキサンまたはシクロペンタン等を有する場合もある。本発明の目的では、用語の古典的意味におけるα−オレフィンでなく、特定の環状オレフィン、例えばノルボルネンおよび関連するオレフィン等は、α−オレフィンであり、また、上述するα−オレフィンのうちの一部またはすべての代わりに、使用することができる。同様に、スチレンおよびその関連するオレフィン(例えば、α−メチルスチレン等)は、本発明の目的でのα−オレフィンである。例示的なポリオレフィン系共重合体には、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/スチレン等が含まれる。例示的な三元共重合体には、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテン、およびエチレン/ブテン/スチレンが含まれる。共重合体は、ランダムであるか、またはブロック状であり得る。
【0021】
一実施形態において、オレフィンエラストマーは、1つまたはそれ以上の官能基、例えば不飽和エステルまたは不飽和酸等をさらに含み、これらのエラストマー(ポリオレフィン)は、周知であり、従来の高圧技術によって調製することができる。不飽和エステルは、アルキルアクリラート、アルキルメタクリラート、またはビニルカルボキシラートであり得る。アルキル基は、1個から8個の炭素原子を有し、好ましくは、1個から4個の炭素原子を有し得る。カルボキシラート基は、2個から8個の炭素原子を有し、好ましくは、2個から5個の炭素原子を有し得る。エステルコモノマーに起因する共重合体の一部は、共重合体の重量を基準にして、1から最大50重量パーセントの範囲にあり得る。アクリラートおよびメタクリラートの例は、エチルアクリラート、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、t−ブチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、および2−エチルヘキシルアクリラートである。ビニルカルボキシラートの例は、ビニルアセタート、ビニルプロピオナート、およびビニルブタノアートである。不飽和酸の例には、アクリル酸またはマレイン酸が含まれる。
【0022】
また、官能基も、当分野で一般に公知であるように実現可能なグラフト化のよるオレフィンエラストマーに含まれる。一実施形態において、グラフト化は、遊離基の官能化によって発生させてもよく、一般に、該官能化には、オレフィン系ポリマー、遊離基開始剤(例えば、過酸化物等)、および官能基を有する化合物を融解混合することが含まれる。融解混合時において、遊離基開始剤を、オレフィン系ポリマーと反応させて(反応性融解混合)、高分子ラジカルを形成する。官能基を有する化合物は、高分子ラジカルの骨格に結合して、官能化ポリマーを形成する。官能基を有する例示的な化合物には、アルコキシシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン)、ビニルカルボン酸、および無水物(例えば、無水マレイン酸)が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明に有用なオレフィンエラストマーのより具体的な例には、超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば、Dow Chemical Companyによって製造されたFLEXOMER(登録商標)エチレン/1−ヘキセンポリエチレン)、均一に分岐し、直鎖の(homogeneously branched, linear)エチレン/α−オレフィン共重合体(例えば、三井石油化学工業株式会社によるTAFMER(登録商標)、およびExxon Chemical CompanyによるEXACT(登録商標))、均一に分岐し、実質的に直鎖の(homogeneously branched, substantially linear)エチレン/α−オレフィン系ポリマー(例えば、Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITY(登録商標)およびENGAGE(登録商標)ポリエチレン)、および、オレフィンブロック共重合体、例えば米国特許第7,355,089号に記載されているもの等(例えば、Dow Chemical Companyから入手可能なINFUSE(登録商標))が含まれる。より好ましいポリオレフィン系共重合体は、均一に分岐し、直鎖のおよび実質的に直鎖のエチレン共重合体である。実質的に直鎖のエチレン共重合体が特に好ましく、米国特許第5,272,236号明細書、同第5,278,272号明細書、および同第5,986,028号明細書に、より完全に記載されている。
【0024】
本発明の実施に有用なオレフィンエラストマーには、プロピレン、ブテン、および他のアルケン系共重合体(例えば、プロピレンから誘導された多数の単位と、他のα−オレフィン(エチレンを含む)から誘導された少数の単位とを含む共重合体)がさらに含まれる。本発明の実施に有用な例示的なプロピレンポリマーには、Dow Chemical Companyから入手可能なVERSIFY(登録商標)ポリマー、およびExxon Mobil Chemical Companyから入手可能なVISTAMAXX(登録商標)ポリマーが含まれる。
【0025】
また、上述のオレフィン系エラストマーのうちのいずれかのブレンドも、本発明に使用することができ、オレフィンエラストマーを、好ましい様式において、本発明のオレフィンエラストマーが、少なくとも約50重量パーセント、好ましくは、少なくとも約75重量パーセント、およびより好ましくは、少なくとも約80重量パーセントのブレンドの熱可塑性ポリマー成分を構成し、かつ、オレフィンエラストマーの可撓性を保持する程度に、1つまたはそれ以上の他のポリマーとブレンドするか、または、該1つまたはそれ以上の他のポリマーで希釈することができる。好ましくない様式、および要求されてもよい他の特性への依存において、オレフィンエラストマーの内容物は、50%未満の熱可塑性ポリマー成分であり得る。
【0026】
本発明の実施に有用なオレフィンエラストマー(特に、エチレン系エラストマー)のグラフト化前の密度は、一般に、0.91未満、好ましくは、0.90未満の1立方センチメートル当たりのグラム(g/cm
3)である。エチレン共重合体の密度は、一般に、0.85g/cm
3を超え、好ましくは0.86g/cm
3を超える。密度は、ASTM D−792の手順によって測定される。一般に、共重合体のα−オレフィン含量が多いほど、密度が低く、また、共重合体は非晶質である。低密度ポリオレフィン系共重合体は、一般に、半結晶で、可撓性であり、また、十分な光学特性(例えば、可視光およびUV光の高い透過率、ならびに少ないヘイズ)を有することが特徴である。
【0027】
本発明の実施に有用なエチレン系エラストマーのグラフト化前のメルトインデックスは、一般に、0.10g/10分を超え、好ましくは、10分当たり1グラム(g/10分)を超える。エチレン系エラストマーのメルトインデックスは、一般に、500g/10分未満であり、好ましくは100g/10分未満である。メルトインデックスは、ASTM D−1238(190℃/2.16kg)の手順によって測定される。
【0028】
オレフィンエラストマーは、半導体組成物の重量を基準にして、一般に、10重量%から90重量%の量で使用される。好ましくは、オレフィン系エラストマーは、半導体組成物の重量を基準にして、20重量%から80重量%であり、より好ましくは、25重量%から50重量%である。
【0029】
本発明の実施に使用される半導体層の製造に有用な非オレフィンエラストマーには、シリコーンとウレタンのエラストマー、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、クロロプレン、フッ素エラストマー、ペルフルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、およびクロロスルホン化ポリエチレンが含まれる。ポリオルガノシロキサンであるシリコーンエラストマーは、一般に、式R
aSiO
(4−a)/2の平均単位を有し、該単位は、直鎖または部分的に分岐した構造を有し得るが、直鎖が好ましい。Rはそれぞれ、同じかまたは異なる。Rは、置換されたか、または非置換の1価の炭化水素基であり、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびオクチル基等);アリール基(フェニル基およびトリル基等);アラルキル基;アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、およびヘプテニル基);ならびに、ハロゲン化アルキル基(例えば、クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル基)であり得る。ポリオルガノシロキサンは、上述の基のうちのいずれか、またはヒドロキシル基が末端にあってもよい。Rがアルケニル基である場合、アルケニル基は、ビニル基またはヘキセニル基が好ましい。実際、アルケニル基は、ポリオルガノシロキサン中の末端基および/またはポリマー側鎖上にあってもよい。
【0030】
代表的なシリコーンゴムまたはポリオルガノシロキサンには、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンのトリメチルシロキシ末端共重合体、メチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンのジメチルビニルシロキシ末端共重合体、ジメチルヒドロキシシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンのジメチルヒドロキシシロキシ末端共重合体、メチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンのメチルビニルヒドロキシシロキシ末端共重合体、ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、メチルヘキセニルシロキサンとジメチルシロキサンのトリメチルシロキシ末端共重合体、メチルヘキセニルシロキサンとジメチルシロキサンのジメチルヘキセニルシロキシ末端共重合体、メチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンのジメチルビニルシロキシ末端共重合体、メチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンのジメチルヘキセニルシロキシ末端共重合体、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサンとジメチルシロキサンのジメチルビニルシロキシ末端共重合体、およびメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサンとジメチルシロキサンのジメチルヘキセニルシロキシ末端共重合体が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
ウレタン系エラストマーは、反応性高分子、例えばポリエーテルおよびポリエステル、ならびにイソシアナート機能性有機化合物等から調製される。代表例の1つは、ヒドロキシをすべて反応させ、さらなる反応のためにイソシアネート基を残して、ウレタン結合を形成する、ジヒドロキシ機能性ポリエーテルおよび/またはトリヒドロキシ機能性ポリエーテルと、トルエンジイソシアネートの反応生成物である。この種の反応生成物は、プレポリマーと称され、これは、水分へ暴露、またはイソシアナートと反応するポリカルビノールまたは他の多機能性反応性材料の化学量論的添加によって、硬化させることができる。ウレタン系エラストマーは、イソシアナート化合物、ポリエーテルまたはポリエステルの種々の割合によって、商業上調製される。
【0032】
最も一般的なウレタン系エラストマーは、ヒドロキシル機能性ポリエーテルまたはポリエステル、および、低分子量の多機能性イソシアナート系ポリマーを含むものである。ヒドロキシル機能性ポリエーテルおよびポリエステルと共に使用する他の一般的な材料は、トルエンジイソシアネートである。
【0033】
適切なウレタンゴムの非限定例には、Lubrizol Corporationから入手可能なPELLETHANE(商標)熱可塑性ポリウレタン系エラストマー;ESTANE(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOFLEX(商標)熱可塑性ポリウレタン、CARBOTHANE(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOPHILIC(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOPLAST(商標)熱可塑性ポリウレタン、およびTECOTHANE(商標)熱可塑性ポリウレタン(Noveonからすべて入手可能);ELASTOLLAN(商標)熱可塑性ポリウレタン、およびBASFから入手可能な他の熱可塑性ポリウレタン;ならびに、Bayer、Huntsman、Lubrizol Corporation、Merquinsa、および他のサプライヤーから入手可能な付加的な熱可塑性ポリウレタン材料が含まれる。好ましいウレタンゴムは、いわゆる「ミラブル型(millable)」のウレタン、例えばTSI Industries社製のMILLATHANE(商標)等級等である。
【0034】
かかるウレタン材料に関する追加情報は、特に、ゴールディングの文献:Polymers and Resins, Van Nostrande, 1959の第325頁以下参照、およびサーンダーズとフリッシュの文献:Polyurethanes, Chemistry and Technology, Part II, Interscience Publishers, 1964で見出すことができる。
【0035】
シリコーンおよびウレタンゴムは、単独で、または互いに組み合わせて使用することができ、組成物の重量を基準にして、90重量%から10重量%の量で一般に使用される。好ましくは、該ゴムは、組成物の重量を基準にして、80重量%から20重量%、より好ましくは50重量%から75重量%の量で使用される。
【0036】
半導体層は、別々の工程で予め成形するか、または押し出し、架橋して、ピーク特性を達成することができる。本発明の層接着のための残余の過酸化物を有する必要性は、排除され、部品製造において、高度な可撓性を可能にし、スクラップの量を低減させる。これは、部分的に、適切な硬化レベルに到達して、成形品の取出し工程時に欠陥がある部分を回避する場合にのみ、十分な特性が達成されるという事実による。過剰過酸化物の使用によるこの問題の軽減は、本発明に必要ではない。
【0037】
半導体層は、1つまたはそれ以上のアルコキシシランの添加によって修飾(modified)されてもよい。エチレンと効果的に共重合するか、または、エチレン系ポリマーをグラフト化し、架橋する、シランは、本発明の実施に使用することができ、次式に説明するものが典型的である:
【化1】
(式中、R
1は、水素原子またはメチル基であり;xおよびyは0または1であり(但し、xが1である場合、yは1である。);mおよびnは、独立して、1から12の整数であり、好ましくは1から4であり;かつ、R’’はそれぞれ、独立して、加水分解可能な有機基であり、例えば、1個から12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラルオキシ(araloxy)基(例えば、ベンジルオキシ)、1個から12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノもしくは置換されたアミノ基(例えば、アルキルアミノ、アリールアミノ)、または1個から6個の炭素原子を有する低級アルキル基等である(但し、3つのR基のうち1つ以下は、アルキルである)。かかるシランは、高圧法等で、反応器においてエチレンと共重合されてもよい。また、かかるシランは、造形もしくは成形作業の前か、または該作業中のいずれかにおいて、適切な量の有機過酸化物の使用によって、適切なエチレン系ポリマーにグラフト化されてもよい。さらに、付加的な原料、例えば熱安定剤および光安定剤、顔料等も、配合物中に含まれていてもよい。架橋が形成される工程の段階とは、一般に、「硬化段階」と呼ばれ、該工程それ自身は、一般に、「硬化する」ことをいう。また、フリーラジカル過程によってポリマー中の不飽和を増加させるシラン、例えばメルカプトプロピルトリアルコキシシラン等も含まれる。
【0038】
適切なシランには、エチレン性不飽和ヒドロカルビル基(例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、またはγ−(メタ)アクリルオキシアリル基等)、および、加水分解性基(例えば、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルボニルオキシ基、またはヒドロカルビルアミノ基等)を含む、不飽和シランが含まれる。加水分解性基の例には、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ(proprionyloxy)基、およびアルキル基、またはアリールアミノ基が含まれる。
好ましいシランは、ポリマー上にグラフト化するか、または、他のモノマー(エチレンおよびアクリラート等)と反応器内で共重合することができる、不飽和アルコキシシランである。これらのシランとこれらの調製方法は、Meverdenらの米国特許第5,266,627号明細書に、より完全に記載されている。ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、およびこれらのシランの混合物は、本発明に使用される好ましいシラン架橋剤である。充填剤が含まれる場合、架橋剤には、ビニルトリアルコキシシランが含まれることが好ましい。
【0039】
本発明の実施に使用されるシラン架橋剤の量は、ポリマー、シランの性質、工程または反応器の条件、グラフト化または共重合効率、最終的な用途、および同様の要因に広く依存して、変更することができるが、一般に、少なくとも0.5重量パーセント、好ましくは、少なくとも0.7重量パーセントが使用される。利便性および経済性の考慮は、本発明の実施に使用されるシラン架橋剤の最大量に関する主な限界のうちの2つであり、また、一般に、シラン架橋剤の最大量は、5重量パーセントを超えず、好ましくは、3重量パーセントを超えない。
【0040】
シラン架橋剤は、従来法、一般に、遊離基開始剤(例えば、過酸化物、アゾ化合物)の存在下で、または電離放射線等によって、ポリマーにグラフト化される。有機開始剤は、例えば、過酸化物開始剤のうちの1つが好ましく、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾアート、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート(t-butyl peroctoate)、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、およびtert−ブチルペルアセタートである。適切なアゾ化合物は、2,2−アゾビスイソブチロニトリルである。開始剤の量は、変更することができるが、開始剤は、少なくとも0.04、好ましくは、少なくとも0.06の100の樹脂当たりの部(phr)の量で、一般に含まれる。一般に、開始剤は、0.15phrを超えず、約0.10phrを超えないことが好ましい。また、シラン架橋剤と開始剤の重量比も広く変更することができるが、一般的な架橋剤:開始剤の重量比は、10:1から500:1、好ましくは18:1から250:1である。100の樹脂当たりの部またはphrに使用する、「樹脂」とは、オレフィン系ポリマーを意味する。
【0041】
従来法のいずれかを、ポリオレフィン系ポリマーへのシラン架橋剤のグラフト化に用いることができるが、好ましい方法の1つは、反応押出機(reactor extruder)、例えばバス(Buss)ニーダー等の初期段階で、ポリオレフィン系ポリマーとシラン架橋剤の2つと、開始剤をブレンドすることである。グラフト化条件は変更することができるが、融解温度は、開始剤の滞留時間および半減期に依存して、一般に、160℃から260℃、好ましくは190℃から230℃である。
【0042】
ビニルトリアルコキシシラン架橋剤と、エチレンおよび他のモノマーの共重合は、エチレンホモポリマー、ならびにビニルアセタートおよびアクリラートとの共重合体の製造に使用される、高圧反応器で行われてもよい。
【0043】
本方法に含まれる有用な官能末端基を有するオリゴマーは、2単位から100,000単位以上の式R
2SiO(式中、Rはそれぞれ、1個から12個の炭素原子を含むアルキル基、2個から約12個の炭素原子を含むアルケニル基、アリール、および、1個から約12個の炭素原子を含むフッ素置換アルキル基からなる群より独立して選択される)を含む。R基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ドデシル、ビニル、アリル、フェニル、ナフチル、トリル、および3,3,3−トリフルオロプロピルであり得る。R基がそれぞれメチルであることが好ましい。
【0044】
一実施形態において、1つまたはそれ以上の官能末端基を有するオルガノポリシロキサンは、少なくとも2つのヒドロキシル基末端を有する、ヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサンである。かかるポリジメチルシロキサンは、例えば、Gelest,Inc.のシラノール末端ポリジメチルシロキサンとして市販されている。しかしながら、グラフト化シランと反応することができる他の末端基を有したポリジメチルシロキサン(例えば、アミン末端基を有するポリジメチルシロキサン等)を使用してもよい。さらに、ポリシロキサンは、湿分架橋性ポリシロキサンであり得る。好ましい実施形態において、ポリジメチルシロキサンは次式のものである:
【化2】
(式中、Meはメチルであり、nは、2から100,000以上の範囲、好ましくは10から400の範囲、より好ましくは20から120の範囲にある)。適切な多機能性オルガノポリシロキサンの例は、Gelest Corp.のシラノール末端ポリジメチルシロキサンDMS−15(2,000から3,500のMn、45から85センチストークの粘度、0.9%から1.2%の−OHレベル)、およびDow Corning Corp.のシラノール流体1−3563(55から90センチストークの粘度、および1%から1.7%の−OHレベル)である。一部の実施形態において、多機能性オルガノポリシロキサンは、分岐、例えばMe−SiO
3/2基またはSiO
4/2基(シリコーン化学における当業者にTorQ基として公知である)によって提供されたもの等を含む。
【0045】
本発明の実施に使用される多機能性オルガノポリシロキサンの量は、ポリマー、シラン、多機能性オルガノポリシロキサンの性質、工程または反応器の条件、最終的な用途、および同様の要因に広く依存して、変更することができるが、一般に、少なくとも0.5重量パーセント、好ましくは、少なくとも2重量パーセントが使用される。利便性および経済性の考慮は、本発明の実施に使用される多機能性オルガノポリシロキサンの最大量に関する主な限界のうちの2つである。また、一般に、多機能性オルガノポリシロキサンの最大量は、20重量パーセントを超えず、好ましくは、10重量パーセントを超えない。
【0046】
架橋触媒には、ルイス酸およびブレンステッド酸、ならびにルイス塩基およびブレンステッド塩基が含まれる。ルイス酸は、ルイス塩基から電子対を受容することができる化学種である。ルイス塩基は、ルイス酸に電子対を供与することができる化学種である。本発明の実施に使用することができるルイス酸には、スズカルボキシラート、例えばジブチルスズジラウレート(DBTDL)等、ジメチルヒドロキシスズオレアート(dimethyl hydroxy tin oleate)、ジオクチルスズマレアート(dioctyl tin maleate)、ジ−n−ブチルスズマレアート(di-n-butyl tin maleate)、ジブチルスズジアセタート(dibutyl tin diacetate)、ジブチルスズジオクトエート(dibutyl tin dioctoate)、酢酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、および種々の有機金属化合物(鉛ナフテネート(lead naphthenate)、亜鉛カプリラート(zinc caprylate)、およびコバルトナフテネート(cobalt naphthenate)等)が含まれる。DBTDLは、好ましいルイス酸である。本発明の実施に使用することができるルイス塩基には、第一アミン、第二アミン、および第三アミンが含まれるが、これらに限定されない。これらの触媒は、湿分硬化の用途で一般に使用される。
【0047】
ブレンステッド酸は、水素イオン(プロトン)を失うか、またはブレンステッド塩基に水素イオンを供与することができる化学種である。ブレンステッド塩基は、ブレンステッド酸から水素イオンを獲得するか、または受容することができる化学種である。本発明の実施に使用することができるブレンステッド酸には、スルホン酸が含まれる。
【0048】
本発明の実施に使用される架橋触媒の最小量は、触媒量である。一般に、この量は、エチレン−ビニルシランポリマーと触媒の合計重量の、少なくとも0.01重量パーセント(重量%)、好ましくは少なくとも0.02重量パーセント、より好ましくは、少なくとも0.03重量パーセントである。エチレン系ポリマー中の架橋触媒の最大量に関する唯一の制限は、経済性および実用性(例えば、収穫逓減)による負担であるが、一般的な最大値は、一般に、エチレン系ポリマーと縮合触媒の合計重量の5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
絶縁層
【0049】
本発明の絶縁層は、オレフィン系ポリマーを含む組成物、一般に、共重合されたシラン官能基を有するか、または、後に、シランによってグラフト化される、エチレン系ポリマーから調製される。一実施形態において、ポリエチレンは、高圧法を用いて調製される。別の実施形態において、ポリエチレンは、溶液、スラリーもしくは気相重合工程で、モノ−シクロペンタジエニルもしくはビス−シクロペンタジエニル、インデニルもしくはフルオレニル遷移金属(好ましくは第4族)触媒、または、形状抑制型触媒(constrained geometry catalyst)(CGC)を、活性化剤と併用して、調製される。触媒は、モノ−シクロペンタジエニル、モノ−インデニル、またはモノ−フルオレニルCGCが好ましい。溶解法が好ましい。米国特許第5,064,802号明細書、国際公開第93/19104号パンフレット、および同第95/00526号パンフレットは、これらの調製のための形状抑制型金属錯体(constrained geometry metal complex)および方法を開示する。種々の置換されたインデニルを含む金属錯体は、国際公開第95/14024号パンフレットおよび同第98/49212号パンフレットに教示されている。
【0050】
一般に、重合は、ツィーグラー−ナッタ、またはカミンスキー−シン型重合反応における当分野で周知の条件で行うことができる。すなわち、温度は、0℃から250℃、好ましくは30℃から200℃であり、大気圧は、10,000気圧(1013メガパスカル(MPa))である。必要に応じて、懸濁剤、溶液、スラリー、気相、固体粉末重合、または他の作業条件を用いてもよい。触媒は、支持されるか、または支持され得ない。また、支持体の組成は、広く変更することができる。シリカ、アルミナ、またはポリマー(特に、ポリ(テトラフルオロエチレン)もしくはポリオレフィン)は、代表的な支持体である。また、触媒が気相重合工程に使用される場合、支持体が使用されることが望ましい。支持体は、触媒(金属を基準にする)と支持体の重量比が、1:100,000から1:10、より好ましくは1:50,000から1:20、最も好ましくは1:10,000から1:30の範囲内である量で使用されることが好ましい。ほとんどの重合反応において、使用される触媒と重合性化合物のモル比は、10から12:1から10から1:1、より好ましくは10
−9:1から10
−5:1である。
【0051】
α−オレフィンは、C
3−20の直鎖状、分岐、または環状α−オレフィンが好ましい。C
3−20α−オレフィンの例には、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、および1−オクタデセンが含まれる。また、α−オレフィンは、α−オレフィン、例えば3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)、およびビニルシクロヘキサン等が生じる環状構造、例えばシクロヘキサンまたはシクロペンタン等を有する場合もある。本発明の目的では、用語の古典的意味におけるα−オレフィンでなく、特定の環状オレフィン、例えばノルボルネンおよび関連するオレフィン(特に、5−エチリデン−2−ノルボルネン)等は、α−オレフィンであり、また、上述するα−オレフィンのうちの一部またはすべての代わりに、使用することができる。同様に、スチレンおよびその関連するオレフィン(例えば、α−メチルスチレン等)は、本発明の目的でのα−オレフィンである。例示的なエチレン系ポリマーには、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/スチレン等が含まれる。例示的な三元共重合体には、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)、およびエチレン/ブテン/スチレンが含まれる。共重合体は、ランダムであるか、またはブロック状であり得る。
【0052】
本発明の実施に使用される絶縁層の製造に使用される、エチレン系ポリマーは、単独で、または1つまたはそれ以上の他のエチレン系ポリマーと組み合わせて(例えば、モノマー組成および内容物が相互に異なる2つまたはそれ以上のエチレン系ポリマーのブレンド、調製の触媒法等)、使用することができる。エチレン系ポリマーが2つまたはそれ以上のエチレン系ポリマーのブレンドである場合、エチレン系ポリマーは、反応器内工程または反応器後(post-reactor)工程によってブレンドすることができる。反応器内ブレンド工程は、反応器後ブレンド工程よりも好まれ、一連の接続された複数の反応器を使用する工程は、好ましい反応器内ブレンド工程である。これらの反応器は、同じ触媒を充填することができるが、種々の条件(例えば、種々の反応物濃度、温度、圧力等)で操作するか、または、同じ条件で操作するが、異なる触媒を充填することができる。
【0053】
高圧法によって調製されたエチレン系ポリマーの例には、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレンシラン反応器共重合体(ethylene silane reactor copolymer)(Dow Chemical Companyによって製造されたSiLINK(登録商標)等)、エチレンビニルアセタート共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリラート共重合体(EEA)、およびエチレンシランアクリラート三元共重合体が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
シラン官能基によってグラフト化することができるエチレン系ポリマーの例には、超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば,Dow Chemical Companyによって製造されたFLEXOMER(登録商標)エチレン/1−ヘキセンポリエチレン)、均一に分岐し、直鎖のエチレン/α−オレフィン共重合体(例えば、三井石油化学工業株式会社によるTAFMER(登録商標)、およびExxon Chemical CompanyによるEXACT(登録商標)、均一に分岐し、実質的に直鎖のエチレン/α−オレフィン系ポリマー(例えば、Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITY(登録商標)およびENGAGE(登録商標)ポリエチレン)、ならびにエチレンブロック共重合体(例えば、Dow Chemical Companyから入手可能なINFUSE(登録商標)ポリエチレン)が含まれる。より好ましいエチレン系ポリマーは、均一に分岐し、直鎖のまたは実質的に直鎖のエチレン共重合体である。実質的に直鎖のエチレン共重合体が特に好ましく、米国特許第5,272,236号明細書、同第5,278,272号明細書、および同第5,986,028号明細書に、より完全に記載されている。
【0055】
絶縁層を構成するエラストマーポリマーは、半導体層を構成するポリマーについて上述した1つまたはそれ以上のアルコキシシランの添加によって、修飾されてもよい。
【0056】
絶縁材料が、上述する修飾化合物を含む半導体層の間に注入される場合、界面を介する接着は、絶縁層におけるヒドロキシル基末端シリコーン(または、グラフト化アルコキシシラン)との反応によって促進される。
【0057】
または、半導体層を調製する組成物がウレタン化合物を含む場合、絶縁層は、アミノ化オレフィン系ポリマーを含む組成物から調製して、接着を促進することができる。このポリマーは、第一アミンおよび第二アミンを共に有するジアミンと、マレイン化ポリオレフィン(例えば、AMPLIFY(商標)GR)との反応によって、調製することができる。
多層物品を製造するための成形工程
【0058】
本発明の方法は、2つの架橋された半導体層の間に、エラストマー化合物を注入して、少なくとも1つの、好ましくは両方の半導体層に結合した、好ましくは、凝集結合した、絶縁層を形成することによって、選択された設計の多層物品を製造する。絶縁層は、製造工程時に必ずしも硬化させることを必要とせず、低温注入、および金型からの迅速な除去のための急冷を可能にする、低融点エラストマーから調製することができる。一実施態様において、ビニルアルコキシシランを含む半導体層は、該半導体層と絶縁層の接触前に、成形時に別々に架橋された過酸化物である。その後の工程で、シラングラフト化オレフィンエラストマーと、ヒドロキシ末端シリコーンとを含む化合物は、架橋された内側半導体層と外側半導体層の間に注入され、絶縁層を間に形成し、それぞれの半導体層を付着結合する(好ましくは、凝集結合する)。絶縁層の型硬化後、絶縁層と半導体層の間の界面架橋が達成される。
【0059】
一般に、中電圧部品において、絶縁層は、ほとんどの部品において半導体層よりも個別に厚い。しかしながら、絶縁体の厚さは、所定の部品設計内で均一でなく、部品の中心で12mmを超え、部品の端部で1mm未満に漸減し得る。低電圧部品は薄く、また、高電圧部品は厚い。
【0060】
また、本発明の半導体層および絶縁層を構成する組成物は、添加剤も含み、例えば、抗酸化剤(例えば、ヒンダードフェノール、例えばCiba Specialty Chemicalsの登録商標IRGANOX(商標)1010等)、ホスファイト(例えば、Ciba Specialty Chemicalsの登録商標IRGAFOS(商標)168)、UV安定剤、粘着添加剤(cling additive)、光安定剤(ヒンダードアミン等)、可塑剤(ジオクチルフタレート、もしくはエポキシ化大豆油等)、加硫阻害剤、離型剤、粘着付与剤(炭化水素粘着付与剤等)、ワックス(ポリエチレンワックス等)、加工助剤(油、有機酸、例えばステアリン酸等、有機酸の金属塩等)、エクステンダー油(パラフィン油および鉱油等)、着色剤または顔料等を、本発明の組成物の所望の物理特性または機械特性を干渉しない程度に含み得る。これらの添加剤は、当業者に公知の量で使用される。
【0061】
複数の方法は、一部、例えば米国特許第6,796,820号明細書および同第6,905,356号明細書に記載されるもの等を製造するのに使用することができる。好都合なアプローチの1つは、別々の工程で内側半導体層および外側半導体層を成形し、中間層を金属コアに載置して適所に保持し、次いで、その上に外側層を載置することである。このように製造されたアセンブリは、外側層と中間層が共に、固定するように位置して、中間の隙間を維持するように、別の金型にはめられる。その後、外側層に予め作製された通路から絶縁化合物を注入し、材料が一面に流出し、隙間を充填して、最終部品が製造される。
【実施例】
【0062】
具体的実施形態
半導体層
半導体層の組成を表1に記載する。
【表1】
【0063】
表1に示す半導体化合物の実験室規模の試料を、次に示すように生成する。該化合物を、250ccのブラベンダー(Brabender)バッチミキサーを使用して製造する。ミキサーを、最初に120℃、および35毎分回転数(rpm)のローター速度に設定する。まず、ポリマー樹脂をミキサーに充填し、次いで、カーボンブラックを徐々に加え、15分間混合する。可能性がある限り、ポリオレフィンおよび/または炭化水素ゴムを最初に加え、次に、カーボンブラックを加え、その後、非ポリオレフィン系ゴムを加えるが、一部の組成ではこのようなミキサー充填を実践することができないので、これは、必ずしも可能であるとは限らない。しかしながら、いかなる場合も、非オレフィン系ゴムの添加後に、マスターバッチで製造する。カーボンブラックのレベルおよび樹脂型によって、融解温度は、混合サイクルの終了時において、130℃から140℃である。一部の例において、ミキサー中の材料を取り出すことなく冷却することが可能である。他の例において、過酸化物添加前に冷却目的で、ミキサーから化合物を取り出すことが必要である。かかる例において、材料を、過酸化物添加のために再度充填する。すべての例において、過酸化物を加えた後、混合物をさらに35rpmで10分間混合して、過酸化物を導入し、125℃よりも低い混合温度を維持して、未熟な架橋を防ぐことを確実にする。このように調製された化合物は、時間および温度を指示した硬化条件下で、プレス機(Wabash Model#30−1212−451−4ST MBX)で硬化させ、75ミルプラークに圧縮成形する。また、場合により、成形前に、当分野の慣行のとおりに、化合物を、100℃未満の温度で回転ミルにかけ、さらに均質化してもよい。
【0064】
表4に記載するように、圧縮成形によって、プラークに半導体層を加圧し、硬化する。
絶縁層
【0065】
絶縁層の組成の一実施形態を表2に記載する。
【表2】
【0066】
ENGAGE(商標)8200プラストマー(エチレン−オクテン共重合体)を、ENGAGE(商標)7467(エチレンブタン共重合体)と共に、絶縁材料に使用する。ポリマーを、VTMSおよびLuperox101過酸化物(Arkema社から入手可能な2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン))、ヒドロキシポリジメチルシロキサン(PDMS Q1−3563)と混合し、粘土(Translink(登録商標)−37)を添加する。絶縁化合物Bを、ブラベンダーラボミキサー、または二軸押出機のいずれかで調製する。その後、絶縁化合物Bを、35RPM、150℃で、10分間、250ccのブラベンダー中で、5%の触媒マスターバッチC(表3)と混合し、触媒および添加剤を十分に均質化する。
【表3】
【0067】
触媒組成物には、抗酸化剤(例えば、IRGANOX(商標)1010、およびIRGANOX(商標)1024のヒンダードフェノール)が含まれる。
【0068】
触媒マスターバッチCを、200℃を超えない融解温度で、ZSK−30二軸押出機で調製する。この混合工程で、添加剤(IRGANOX1010、およびIRGANOX1024)と共に、ENGAGE樹脂を、樹脂原料に加え、液体触媒Fastcat4202(ジブチルスズジラウレート、Elf−Atochem/Arkema Corp.製)を、液体として押出機に注入する。さらなる使用のために、化合物を押し出し、冷却し、ペレット化する。また、同じ化合物を、ブラベンダーバッチミキサーで、実験室規模で調製することもできる。
多層物品を製造する方法
【0069】
次に、触媒マスターバッチCと混合した絶縁材料Bを、180℃で5分間、半導体化合物Aから調製した層に対して加圧して、2層試料を調製する。2つのプラークの加圧時に、注意して、層の端部から約1インチ以内に、1枚のマイラーシートを挿入する。その結果、プラークを遊離することができ、このため、剥離試験装置に保持することが容易である。加圧されたプラークを、周囲条件下、一定温度および湿度で、5日間静置する。幅0.5インチおよび長さ8インチの試料を、接着剥離試験のために切断する。
【0070】
次いで、プラークの接着について試験する。加圧されたプラークの剥離力試験を次に示すように行う。インストロン張力試験装置を使用し、試料の2つの層を180度の角度に開き、各側を試験装置の反対の口部に合わせる。クランプしたら、試験装置は、一端を引っ張り、20インチ/分の速度で一方の層を剥離し、他方の層を固定したままにする。剥離によって、清浄な層間剥離が生じるか、または1層を引き裂くことができる(すなわち、材料は、他方の層に結合したままであるか、もしくは、層のうちの1つに単純な破損が生じるのみである)。剥離力を機器によって記録する。
【表4】
【0071】
半導体層中にVTMSまたはVTMS/OH−PDMSを有する、本発明の実施例は、界面において破壊されなかったが、比較例では破壊され、これは、本発明の実施例において良好な層接着を示すものであった。また、これは、剥離力データによっても明確に示される。破壊が付着破壊よりもむしろ材料破壊であるので、完全な接着の場合、力の大きさは、層を含む材料自身の強度によって実際に決定される。
【表5】
【0072】
表5は付加的なデータを報告し、実施例3において、半導体化合物Aを、VTESによって修飾し、実施例4および5において、半導体化合物Aを、絶縁化合物B(前述するように、シラングラフト化し、OH−PDMSと反応させた)の一部を加えて修飾し、次いで、絶縁化合物B(触媒マスターバッチCを含む)を半導体化合物Aに対して加圧した。表5に報告するように、実施例3の試料は、完全な結合を示すが、実施例4および5の試料はさらに、少なくとも部分的な凝集結合を示す。
【0073】
本発明を、先行する好ましい実施態様の説明によって、確実に詳説したが、この詳細は、例示が主な目的である。多くの変更および改良が、次の特許請求の範囲に説明する、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって行うことができる。