(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透液性表面シートと裏面シートとの間に、被包シートで囲繞された吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの面側にエンボスが形成された吸収性物品において、
前記被包シートの両側部同士を重ね合わせた重なり部が、前記吸収体の表面側に長手方向に沿って設けられるとともに、少なくとも前記エンボスの一部が前記重なり部と重なる範囲に付与され、
前記重なり部のうち、前記エンボスが付与される長手方向範囲には、前記被包シート同士を接合する接着剤が塗布されておらず、前記重なり部に付与される前記エンボスの長手方向範囲より長手方向の外方側に、前記被包シート同士を接合する接着剤が塗布されていることを特徴とする吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収体では、ティッシュペーパの幅方向両側部同士を重ね合わせた部分に、前記ティッシュペーパの表面側からの複数のエンボス部を所定の割合で設けないと、ティッシュペーパ同士の重なり部が封鎖できず、装着時に口開きして、そこから吸収コアに含まれる繊維(パルプや化繊又はパルプと化繊の混合物)や高吸水性樹脂がこぼれ出るおそれがあった。
【0006】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、被覆シートと吸収部とがホットメルト接着剤などによって部分接合で固定されているため、この接合部が壁となって体液の拡散がしにくくなり、吸収スピードが低下する問題があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、吸収体を囲繞する被包シートの側端部同士を重ね合わせた重なり部の口開きを防止するとともに、液拡散をしやすくした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に、被包シートで囲繞された吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの面側にエンボスが形成された吸収性物品において、
前記被包シートの両側部同士を重ね合わせた重なり部が、前記吸収体の表面側に長手方向に沿って設けられるとともに、少なくとも前記エンボスの一部が前記重なり部と重なる範囲に付与され、
前記重なり部のうち、前記エンボスが付与される長手方向範囲には、前記被包シート同士を接合する接着剤が塗布されて
おらず、前記重なり部に付与される前記エンボスの長手方向範囲より長手方向の外方側に、前記被包シート同士を接合する接着剤が塗布されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、吸収体を囲繞する被包シートの両側部同士を重ね合わせた重なり部が、吸収体の表面側に長手方向に沿って設けられるとともに、透液性表面シートの面側に形成される少なくともエンボスの一部が、前記重なり部と重なる範囲に付与されている。前記エンボスを重なり部と重なる範囲に付与することにより、前記エンボスによって被包シートの重なり部がしっかりと押さえられて封鎖されるため、装着時に被包シートの重なり部が口開きするのが防止でき、口開き箇所から吸収体に含まれる繊維(パルプや化繊又はパルプと化繊の混合物)や高吸水性樹脂がこぼれ出るのが防止できるようになる。
【0010】
また、本発明にかかる吸収性物品では、前記重なり部のうち、前記エンボスが付与される長手方向範囲には、前記被包シート同士を接合する接着剤が塗布されていない。このため、接着剤によって体液の拡散が阻害されることがなくなり、体液が幅方向のより広い範囲に拡散することにより、吸収体の広い範囲で体液を吸収保持できるようになる。
【0011】
さらに、前記重なり部に付与されるエンボスの長手方向範囲より長手方向の外方側に、前記被包シート同士を接合する接着剤を塗布することにより、長手方向端部の重なり部の口開きが防止できるようになる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記エンボスは、吸収性物品の長手方向中心線を境に左右対称で形成され、
前記左右対称のエンボスのうち少なくとも一方のエンボスは、前記重なり部と重なる縦方向長さが前記重なり部の長手方向長さの70%以上である請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明では、左右対称のエンボスのうち少なくとも一方のエンボスを、前記重なり部と重なる縦方向長さが前記重なり部の長手方向長さの70%以上としているため、重なり部の口開きが確実に防止できるようになる。
【0014】
請求項3に係る本発明として、前記エンボスは、吸収性物品の長手方向中心線を境に左右対称で形成され、
前記左右対称のエンボスのうち少なくとも一方のエンボスは、前記重なり部と重なる幅方向長さが前記重なり部の幅方向長さの10%以上である請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明では、左右対称のエンボスのうち少なくとも一方のエンボスを、前記重なり部と重なる幅方向長さが前記重なり部の幅方向長さの10%以上としているため、重なり部の口開きがより確実に防止できるようになる。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記エンボスは、左右にそれぞれ1条ずつ又は幅方向に離間する複数条ずつ設けられている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項4記載の発明では、左右対称のエンボスを左右にそれぞれ1条ずつ設けてもよいし、幅方向に離間する複数条ずつ設けてもよいことを規定している。エンボスを左右に複数条ずつ設けた場合には、重なり部の口開きがより一層確実に防止できるようになるとともに、エンボスを通じて吸収体に体液が浸透しやすくなり、体液の素早い吸収が可能となる。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記エンボスは、連続線又は間欠線で設けられている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項5記載の発明では、前記エンボスを連続線で設けた場合には、重なり部の口開きがより確実に防止できるようになるとともに、長手方向への体液の拡散性が向上する。また、前記エンボスは、圧搾部と非圧搾部とが交互に配置された間欠線で形成することも可能である。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収体を囲繞する被包シートの側端部同士を重ね合わせた重なり部の口開きが防止できるとともに、液拡散しやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述すると、
本発明に係る失禁パッド1は、
図1及び
図2に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙や不織布等からなる被包シート5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部位Hを含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その長手方向端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。また、必要に応じて、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に、親水性のセカンドシート(図示せず)を配置してもよい。
【0023】
以下、さらに前記失禁パッド1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0024】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0025】
前記吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプ等の吸収性繊維と高吸水性樹脂とにより構成され、図示例では平面形状がパッド長手方向に長い縦長の略小判形とされている。前記高吸水性樹脂は例えば粒状粉とされ、吸収体4を構成するパルプ中に分散混入されている。
【0026】
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記パルプの目付は、100g/m
2〜600g/m
2、好ましくは150g/m
2〜400g/m
2とするのがよい。
【0027】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力(吸収倍率)と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の目付は、体液排出部及びその近傍に所定の吸収能力を持たせるため、60g/m
2〜400g/m
2、好ましくは100g/m
2〜300g/m
2とするのがよい。
【0028】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0029】
前記吸収体4には、吸収体基部よりパルプやポリマー量を多くした中高部やポリマーシートを部分的に配置してもよい。前記中高部を形成する場合、後段で詳述するエンボス10は、この中高部の外側に形成するのが好ましい。
【0030】
前記吸収体4は、被包シート5によって囲繞されている。前記被包シート5は、ティシュー等の紙材あるいは不織布等の透液性のシートを用いることができる。目付は10g/m
2〜50g/m
2とするのがよい。この被包シート5としては、体液を吸収体全体に拡散しやすくするためクレープ紙を用いるのが好ましい。クレープ紙を用いる場合の目付は、13g/m
2〜18g/m
2のものがよい。
【0031】
前記被包シート5は、吸収体4の裏面側(不透液性裏面シート2の面側)から吸収体の両側部を巻き込むようにして折り返し、吸収体4の表面側(透液性表面シート3の面側)で両側部同士を重ね合わせることにより、吸収体4の表面側にパッド長手方向の全長に亘って所定幅の重なり部9が形成されるようにしている。
図3に示されるように、前記重なり部9の幅W
Sは、8〜14mm程度とするのが好ましい。
【0032】
前記重なり部9は、吸収体4の幅方向中央より一方の側部側(図示例では左側)に偏倚して設けられている。前記重なり部9において、被包シート5を重ねる順序は任意であるが、
図3に示されるように、幅方向中央に向かう側(図示例では吸収体4の左側の側部を巻き込むようにして折り返した側)の側部を下層側とし、幅方向外側に向かう側(図示例では吸収体4の右側の側部を巻き込むようにして折り返した側)の側部を上層側とするのが好ましい。これにより、万一、重なり部9が口開きしたときでも、吸収体4に含まれる繊維(パルプや化繊又はパルプと化繊の混合物)や高吸水性樹脂が側方にこぼれ出て中央側に入り込みにくいので装着時の違和感などが軽減できるようになる。
【0033】
前記被包シート5は、
図1及び
図3に示される例では、吸収体4の長手方向両端部と外形線が一致するように設けられているが、吸収体4の長手方向両端部より外方側に延在して設けるようにしてもよい。
【0034】
本失禁パッド1では、吸収体4を被包シート5で囲繞するため、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら尿等の逆戻りを防止するようになる。
【0035】
本失禁パッド1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ失禁パッド1の全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0036】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができる。
【0037】
前記サイド不織布7は、
図2に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着されている。一方、サイド不織布7の内方側部分は幅方向に折り返されるとともに、少なくとも折り返し先端部が二重シートによって構成され、この二重シート内部に、両端または長手方向の適宜の位置が固定された少なくとも1本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材8、8が配設されている。この幅方向に折り返された部分は、ナプキン長手方向の前後端部では下層側に接着されている。その他の前記糸状弾性伸縮部材8、8が配設されたナプキン長手方向の中間部では、
図2に示されるように、前記糸状弾性伸縮部材8、8の収縮作用によって表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0038】
本失禁パッド1では、
図1に示されるように、前記透液性表面シート3の面側に、パッド長手方向中心線を境に左右対称で形成されたエンボス10、10がパッド長手方向に沿って形成されるとともに、前記エンボス10が前記被包シート5の重なり部9と重なる範囲に付与されている。このエンボス10は、吸収体4を被包シート5で囲繞した後、表面側(肌面側)に透液性表面シート3を積層した状態で、透液性表面シート3の表面側からの圧搾により、透液性表面シート3、被包シート5及び吸収体4を一体的に圧縮したものである。
【0039】
前記エンボス10は種々の形態で付与することができる。一例を挙げると、
図1に示されるように、前記エンボス10を体液排出部エンボス11、長手方向エンボス12及び傾斜部エンボス13から構成することができる。前記長手方向エンボス12は、
図1に示される例では、前記体液排出部エンボス11側(内方側)の第1の長手方向エンボス12Aと、これより長手方向外方側の第2の長手方向エンボス12Bとから構成されている。また、前記傾斜部エンボス13は、前記第1の長手方向エンボス12Aの外方側端部から延びる第1の傾斜部エンボス13Aと、前記第2の長手方向エンボス12Bの外方側端部から延びる第2の傾斜部エンボス13Bとから構成されている。
【0040】
前記体液排出部エンボス11は、体液排出部位Hに対応する領域とパッド幅方向に重なる領域を含む範囲に形成され、失禁パッド1の長手方向に沿うとともに、失禁パッド1の幅方向外側に膨出する形状線からなる左右に離間する一対のエンボスラインである。この体液排出部エンボス11は、左右の体液排出部エンボス11、11間の吸収体4に吸収された体液が幅方向外側に拡散して横漏れするのを防止するとともに、表面の中央部から幅方向外側に流れる体液を凹溝内に流入させて素早く吸収体4内に吸収保持するためのものである。左右の体液排出部エンボス11、11は、パッド幅方向に離間して左右にそれぞれ独立的に設けられている。前記体液排出部エンボス11は、長手方向中央部が長手方向両端部より幅方向外側に位置する全体として幅方向外側に膨出した形状線によって形成され、円弧状や長円の外形線状など種々の形態で形成されている。前記体液排出部エンボス11は、前後方向への体液の拡散が均等になるように、体液排出部エンボス11の前後方向中央部を基準に前後対称となる形状で形成するのが好ましい。
【0041】
前記長手方向エンボス12は、体液排出部エンボス11の前後にそれぞれ、失禁パッド1の長手方向に沿って形成された左右に離間する一対のエンボスラインである。この長手方向エンボス12は、吸収体内を拡散する体液がパッド幅方向に拡散して横漏れが生じるのを防止し、パッド長手方向に体液が拡散するように誘導するためのものである。前記長手方向エンボス12は、前記体液排出部エンボス11の前後にそれぞれ2組以上で形成するのが好ましい。図示例では、体液排出部エンボス11の前後にそれぞれ2組ずつ形成され、体液排出部エンボス11側(内方側)から順に第1の長手方向エンボス12A、第2の長手方向エンボス12Bが配置されている。
【0042】
次いで、前記傾斜部エンボス13は、
図1に示されるように、前記長手方向エンボス12の外方側端部から延びるとともに、失禁パッド1の幅方向中央側に向けて傾斜した左右対称のエンボスラインである。前記傾斜部エンボス13は、長手方向エンボス12に沿ってパッド外方側に拡散する体液の流れをパッド幅方向の内側に誘導するためのものである。また、傾斜部エンボス13を目盛りとして吸収体4に吸収された体液の量を把握するのに利用することもできる。前記傾斜部エンボス13は、
図1に示される例では、前記第1の長手方向エンボス12Aの外方側端部から延びるとともに、前記第2の長手方向エンボス12Bの内方側端部に接続する第1の傾斜部エンボス13Aと、前記第2の長手方向エンボス12Bの外方側端部から延びる第2の傾斜部エンボス13Bとから構成されている。
【0043】
以上のように前記エンボス10を、体液排出部エンボス11と、この体液排出部エンボス11の前後にそれぞれ、パッド長手方向に沿って形成される長手方向エンボス12と、この長手方向エンボス12の外方側端部から延びるとともに、パッド幅方向中央側に向けて傾斜する傾斜部エンボス13とから構成することにより、使用後にパッド表面を目視で確認するだけで、前記傾斜部エンボス13を目盛りとして、吸収体内での体液の拡散の程度が認識でき、この体液の拡散状況をその後のパッド大小の選択の目安とすることができるようになる。
【0044】
このとき、本失禁パッド1では、左右の前記傾斜部エンボス13、13の端部同士が幅方向に離間する離間部18が設けられているため、エンボス10によって吸収体内での前後方向の体液拡散が制限されるのが防止でき、正確な吸収体内での体液拡散の状況が認識できるようになる。また、体液の拡散が抑制されないため、体液が体液排出部付近に滞留せず、ベタツキによる不快感が軽減できるようになる。
【0045】
本失禁パッド1では、
図3に示されるように、前記左右対称のエンボス10、10のうちの一方のエンボス10(図示例では左側のエンボス10)であって、少なくとも前記エンボス10の一部が、前記被包シート5の両側部同士を重ね合わせた重なり部9と重なる範囲に付与されている。このとき、重なり部9と重なる前記エンボス10の縦方向長さ(パッド長手方向の長さ)は、該重なり部9の長手方向長さL
Sの70%以上、好ましくは85%〜100%、より好ましくは85%〜90%とするのがよい。すなわち、
図3のように、重なり部9の失禁パッド1の長手方向に沿った長さをL
S、前記重なり部9と重なるエンボス10の失禁パッド1の長手方向に沿った長さをL
Eとしたとき、これらの比L
E/L
Sが、0.7≦L
E/L
S、好ましくは0.8≦L
E/L
S≦1、より好ましくは0.8≦L
E/L
S≦0.9となるように形成されている。
【0046】
このように、前記重なり部9に所定の割合でエンボス10を付与することによって、被包シート5、5同士の重なり部9がしっかりと押さえられ封鎖されるため、装着時にこの重なり部9が口開きするのが防止でき、口開き箇所から吸収体4に含まれる繊維(パルプや化繊又はパルプと化繊の混合物)や高吸水性樹脂がこぼれるのが防止できるようになる。従って、こぼれ出た高吸水性樹脂などによる装着時の違和感が生じることなく、吸収体4の吸収容量が維持できるようになる。
【0047】
これに対して、前記重なり部9と重なるエンボス10の長さを重なり部9の長手方向長さの70%未満とした場合には、コンパクトタイプの失禁パッドにおいて、体液排出部位に対応する長さよりエンボス10の長さの方が短くなる場合があり、エンボス10の長手方向端部より外方側において重なり部9が口開きしやすくなるとともに、口開き箇所からこぼれ出た高吸水性樹脂などによって装着感が悪化する場合がある。
【0048】
なお、後段で詳述するように(
図8(B)、(C))、重なり部9が吸収体4の両側にそれぞれ設けられ、各重なり部9に重なるようにそれぞれエンボス10が付与される場合、それぞれのエンボス10について、重なり部9と重なる長さが重なり部9の長さに対して所定の割合以上となるようにする。
【0049】
また、本失禁パッド1では、前記重なり部9のうち、前記エンボス10が付与される長手方向範囲には、被包シート5、5同士を接合する接着剤を塗布していない。つまり、前記エンボス10の長手方向長さL
Eの範囲では、重なり部9の被包シート5、5同士は、前記エンボス10以外では互いに接合されていない。仮に、重なり部を接着剤によって接合した場合、
図4(A)に示されるように、接着剤が壁となって、中央から幅方向外方側に拡散する体液がブロックされ、この接着剤より幅方向外方側に体液が拡散しにくくなり、吸収体全体で体液を吸収保持しにくくなる。これに対して、本失禁パッド1では、
図4(B)に示されるように、エンボス10が付与される範囲の重なり部9に接着剤を塗布していないため、中央側から拡散した体液が幅方向に拡散しやすくなり、吸収体4の全体で体液を吸収保持できるようになる。
【0050】
前記エンボス10は、
図3に示されるように、左右対称のエンボス10、10のうち前記重なり部9と重なる範囲に付与される一方のエンボス10が、重なり部9の幅方向中央部に位置するように配置し、長手方向に沿って延びるエンボス10の全てが重なり部9の領域内に納まるように付与するのが望ましい。これにより、エンボス10の全体で重なり部9をしっかりと封鎖でき、重なり部9の口開きが確実に防止できるようになる。一方、
図5に示されるように、前記エンボス10がパッド幅方向にジグザグ状に形成される場合、エンボス10の一部が重なり部9に対し、(A)上層側の側縁を跨ぐように重なり部9より外側に延在して設けたり、(B)下層側の側縁を跨ぐように重なり部9より内側に延在して設けたり、上層側の側縁と下層側の側縁との両方を跨ぐように重なり部9の外側と内側の両方に延在して設けたり(図示せず)してもよい。エンボス10の一部を重なり部9より延出して設ける場合、
図5(A)に示されるように、上層側の側縁を跨ぐように設けた方が、被包シート5の上層側の側縁から生じるめくれや口開きがより確実に防止できるので好ましい。エンボス10の一部を重なり部9より延出して設ける場合、重なり部9より延出した部分の長さを除いた、重なり部9の領域内に付与される長手方向長さの総和が、重なり部9の長手方向長さの70%以上であるようにする。
【0051】
前記左右対称のエンボス10、10のうち前記重なり部9と重なる範囲に付与される一方のエンボス10は、前記重なり部9と重なる幅方向長さ(パッド幅方向の長さ)が前記重なり部9の幅方向長さW
Sに対し10%以上、好ましくは40%〜70%、より好ましくは60%〜70%の範囲に付与するのが好ましい。つまり、重なり部9の幅方向長さをW
S、エンボス10の幅方向長さをW
Eとしたとき、これらの比W
E/W
Sが、0.1≦W
E/W
S、好ましくは0.4≦W
E/W
S≦0.7、より好ましくは0.6≦W
E/W
S≦0.7とするのが好ましい。これにより、重なり部9の口開きがより確実に防止できるようになる。
【0052】
前記重なり部9に付与されるエンボス10は、重なり部9の長手方向に対し長手方向中央部に付与するのが好ましい。つまり、エンボス9の長手方向長さL
Eが重なり部9の長手方向長さL
Sより小さい場合、エンボス10の前側端部から重なり部9の前端縁までの長さと、エンボス10の後側端部から重なり部9の後端縁までの長さとが同じになるようにするのが好ましい。これにより、重なり部9が長手方向中央部を中心にエンボス10によって封鎖されるので、体液排出部位に対応する長手方向中央部において、重なり部9が口開きするのが確実に防止でき、口開き箇所から吸収体4に含まれる繊維(パルプや化繊又はパルプと化繊の混合物)や高吸水性樹脂のこぼれによる装着感の悪化などが防止できるようになる。
【0053】
前記エンボス10は、
図1に示されるように、左右にそれぞれ1条ずつ設けてもよいし、
図6に示されるように、エンボス10の全部(同
図6(A))又は一部(同
図6(B))が幅方向に離間する複数条ずつ設けるようにしてもよい。前記エンボス10は、左右にそれぞれ1条〜3条程度ずつ設けるのが好ましく、横漏れ防止効果や装着性を考慮すると2条ずつまでとするのがより好ましい。前記エンボス10を複数条ずつ設けることにより、重なり部9の口開きがより一層確実に防止できるようになるとともに、エンボス10を通じて吸収体4に体液が浸透しやすくなり、体液の素早い吸収が可能となる。
【0054】
前記エンボス10の平面形状は、
図6(A)に示される直線や、曲線、波線などとすることができ、
図1などに示される複数の曲線の組合せなどからなるジグザグ状に形成してもよい。また、左右対称のエンボス10、10は、
図1などに示されるように、左右に離間して形成してもよいし、
図6(A)に示されるように長手方向端部同士を接続して閉合する線で形成してもよい。前記エンボス10を閉合する線で形成する場合、幅方向両側にパッド長手方向に沿って延びる部分のうち一方のエンボス線の全部又は一部が、重なり部9長手方向長さの70%以上の範囲に付与されるようにする。
【0055】
前記エンボス10は、パッド長手方向に対し、連続線又は間欠線で設けられている。連続線とは、エンボス10の圧搾が途切れることなく連続していることである。また、間欠線とは、エンボスに沿って圧搾部と非圧搾部とが交互に繰り返し設けられ、圧搾部が間欠的に配置されていることである。前記エンボス10を連続線で形成した場合、重なり部9を確実に封止できるとともに、連続するエンボス線に沿って体液をパッド長手方向に誘導しやすくなる。一方、前記エンボス10を間欠線で形成した場合、エンボス付与によるパッドの硬化が抑えられ、装着時の違和感が軽減できる。
【0056】
前記エンボス10を間欠線で形成する場合、
図3に示されるエンボス10の長手方向長さL
Eは、非圧搾部を含めたエンボス10の前後端距離をとる。そして、この長さL
Eが重なり部9の長さL
Sの70%以上に形成されるようにする。また、前記エンボス10を圧搾部と非圧搾部とからなる間欠線で形成する場合、エンボス10の前記圧搾部によって重なり部9が確実に封鎖されるように、前記圧搾部の長手方向長さの総和が重なり部9の長さL
Sの40%以上となるように形成するのが好ましい。従って、この場合、エンボス10は、圧搾部の長手方向長さがエンボス10全体の長手方向長さに対して、57%以上で形成されるようにする。
【0057】
前記エンボス10を圧搾部と非圧搾部とからなる間欠線で形成する場合、圧搾部同士の間隔(非圧搾部の長さ)を3mm以内とすることにより、隣接する圧搾部同士の圧縮力が互いに影響し合って隣接する圧搾部同士間の非圧搾部が周囲の非圧搾部より若干窪んだ状態になるため、あたかも連続線であるかのようにエンボス10に沿って体液が拡散しやすくなる。一方、圧搾部同士の間隔(非圧搾部の長さ)を3mmより大きくした場合、エンボスに沿った体液の拡散が抑えられるが、各圧搾部の端部に体液が溜まりやすくなり、そこから吸収体4に体液が吸収され、吸収体内部を体液が拡散しやすくなる。
【0058】
図7に示されるように、本失禁パッド1では、重なり部9に付与されるエンボス10の長手範囲より長手方向の外方側に、重なり部9の被包シート5、5同士を接合するホットメルト接着剤などからなる接着剤塗布領域20を設けることができる。図示例では、接着剤塗布領域20は、エンボス10の端部からそれぞれ重なり部9の前後端縁まで設けられている。つまり、重なり部9は、長手方向中間のエンボス10の付与領域が接着剤を塗布しない非接着領域とされるとともに、これより前後端部がそれぞれ接着剤を塗布した接着剤塗布領域20、20とされている。前記接着剤塗布領域20を設けることにより、エンボス10より外方側の長手方向端部の口開きが防止でき、重なり部9の全長に亘る口開きが防止できるようになる。
【0059】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記エンボス10を透液性表面シート3の表面側からの圧搾により、透液性表面シート3、被包シート5及び吸収体4を一体的に圧縮して付与していたが、透液性表面シート3を積層する前の吸収体4を被包シート5で囲繞した状態で、被包シート5の表面側(肌面側)からの圧搾により、被包シート5及び吸収体4を一体的に圧縮して付与してもよい。
(2)前記被包シート5による吸収体4の囲繞要領としては、
図8に示されるように、(A)重なり部9において下層側の被包シート5の端部を折り返したもの、(B)2枚の被包シート5a、5bからなり、一方の被包シート5aを吸収体4の裏面側から吸収体4の両側部を巻き込むようにして折り返し、吸収体4の表面側の中間位置まで延在するように配置し、他方の被包シート5bを吸収体4の表面側において、両側部が前記一方の被包シート5aの両端部の下層側(吸収体4側)に重なるように配置することにより、吸収体4の表面側の両側にそれぞれ重なり部9、9が設けられるようにしたもの、(C)前記(B)と同様に、他方の被包シート5bの両側部が一方の被包シート5aの両端部の上層側に重なるように配置することにより、吸収体4の両側にそれぞれ重なり部9、9が設けられるようにしたもの、などとすることができる。
図8(B)、(C)に示すように両側に重なり部9、9が設けられる場合、左右対称のエンボス10、10がそれぞれ前記重なり部9に所定の割合で重なるように形成するのが望ましい。