(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、硫黄と、下記式(1)で表される化合物とを含有し、前記ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量が60〜100質量%であり、前記ゴム成分100質量部に対して、下記式(1)で表される化合物の含有量が0.1〜30質量部であるゴム組成物である。
【化3】
(式(1)中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜30の1価の炭化水素基である。また、A及びBは、同一又は異なって、下記式(2)で表される基である。)
【化4】
(式(2)中、R
3は炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。また、R
4は、環状エーテル基である。)
【0014】
式(1)で表される化合物を添加剤としてゴム組成物に用いることにより、良好な耐摩耗性を確保しつつ、ヒステリシスロスを大きく向上でき、初期グリップ性能及び走行中・後期の安定したグリップ性能(特にドライ路面における初期グリップ性能及び走行中・後期の安定したグリップ性能)を同時に高次元に改善できる。
【0015】
この理由は必ずしも明らかではないが、式(1)で表される化合物は、高極性のエーテル基及び環状エーテル基を有し、ポリマーやフィラー、シランカップリング剤との相互作用が非常に大きいため、ゴム組成物のヒステリリシスロスが高くなる結果、上記の効果を奏することが推察される。また、エーテル基は、酸素原子を中心に分子回転が容易であり、界面活性剤や柔軟剤の必須構造の一部でもある。そのため、ベンゼン環とR
3の間にエーテル基が存在することにより、式(1)で表される化合物において、良好な分子の自由回転性、ゴム組成物中での運動性が確保され、ゴム組成物のヒステリリシスロスをより高くできるものと推測される。
【0016】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分を含有する。
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、グリップ性能及び耐摩耗性がよりバランスよく得られるという理由から、NR、BR及びSBRからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、BR及び/又はSBRがより好ましく、SBRが更に好ましい。
【0017】
ゴム成分100質量%中のジエン系ゴム成分の含有量は、60質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、本発明の効果が好適に得られる。
【0018】
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)、プロセスオイル伸展の高分子量スチレンブタジエンゴム等を使用できる。本発明の効果をより有効に発揮する点で、S−SBRが特に好ましい。
【0019】
SBRのスチレン含有率は、好ましくは19質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上である。19質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、上記スチレン含有率は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。60質量%を超えると、SBRポリマー鎖に於ける架橋位置が偏り、破断伸びが低下し、耐摩耗性が低下するだけでなく、温度依存性が増大し、温度変化に対する性能変化が大きくなってしまい、走行中・後期の安定したグリップ性能が良好に得られない傾向がある。なお、本発明において、SBRのスチレン含有率は、H
1−NMR測定により算出される。
【0020】
本発明のゴム組成物がSBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、競技用タイヤ等の高性能タイヤに用いる場合、最も好ましくは80質量部以上である。10質量%未満であると、充分な耐熱性、グリップ性能、耐摩耗性が得られない傾向がある。また、SBRの含有量の上限は特に限定されず、100質量%でもよい。
【0021】
BRとしては、特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、ランクセス社製のCB24、宇部興産(株)製のBR150B等の高シス配合量のBR(ハイシスBR)、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)含有BR、希土類元素系触媒を用いて合成されたBR(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0022】
本発明のゴム組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、BRの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。上記範囲内だと、本発明の効果がより良好に得られる。
【0023】
NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0024】
本発明のゴム組成物がNRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、上限は特に限定されない。
【0025】
ゴム成分100質量%中の、SBR、BR及びNR(好ましくは、SBR及びBR)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは100質量%である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0026】
本発明のゴム組成物は、下記式(1)で表される化合物を含有する。
【化5】
(式(1)中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜30の1価の炭化水素基である。また、A及びBは、同一又は異なって、下記式(2)で表される基である。)
【化6】
(式(2)中、R
3は炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。また、R
4は、環状エーテル基である。)
【0027】
R
1及びR
2の1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。上記炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜3である。
【0028】
R
1及びR
2の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、1〜10のものがより好ましく、1〜3のものが更に好ましい。好ましい例として、上記炭素数のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより良好に得られる点から、メチル基が好ましい。
【0029】
R
1及びR
2の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜8のものが好ましく、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。
【0030】
R
1及びR
2の芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、トリル(tolyl)基、キシリル(xylyl)基、ナフチル基等が挙げられる。なお、トリル基及びキシリル基におけるベンゼン環上のメチル基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置でもよい。
【0031】
R
1及びR
2としては、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。これにより、本発明の効果がより良好に得られる。
【0032】
A及びBは、同一の基であることが好ましい。これにより、式(1)で表される化合物が左右対称の構造となり、ゴム組成物中での式(1)で表される化合物の良好な運動性がより確保され、ゴム組成物のヒステリリシスロスをより高くできる。
【0033】
R
3の2価の炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基などがあげられる。なかでも、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基が好ましい。
【0034】
R
3の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。なかでも、本発明の効果がより良好に得られる点から、メチレン基が好ましい。
【0035】
R
3の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などがあげられる。
【0036】
R
3の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。
【0037】
R
3の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などがあげられる。
【0038】
R
3としては、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜3のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。これにより、本発明の効果がより良好に得られる。
【0039】
R
4の環状エーテル基としては、例えば、オキシラン基、オキセタン基、オキソラン基、オキサン基、オキセパン基、オキソカン基、オキソナン基、オキセカン基、オキセト基、オキソール基等のエーテル結合を1つ有する環状エーテル基、ジオキソラン基、ジオキサン基、ジオキセパン基、ジオキセカン基等のエーテル結合を2つ有する環状エーテル基、トリオキサン基等のエーテル結合を3つ有する環状エーテル基等が挙げられる。なかでも、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜7の環状エーテル基が好ましく、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜5の環状エーテル基がより好ましく、オキシラン基が更に好ましい。また、環状エーテル基は環骨格内に不飽和結合を有していないことが好ましい。また、上述の環状エーテル基が有する水素原子は、上述の1価の炭化水素基により置換されていてもよい。
【0040】
上記式(1)で表される化合物として、具体的には、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、東京化成工業(株)製等)、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メタン、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)エタン、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ブタン、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ペンタン等の市販品を使用できる。なかでも、本発明の効果がより良好に得られる点から、ビスフェノールAジグリシジルエーテルが好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記式(1)で表される化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であり、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が更に好ましい。0.1質量部未満だと、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、30質量部以下であり、22質量部以下が好ましく、より良好な耐摩耗性が得られ、初期グリップ性能、走行中・後期の安定したグリップ性能及び耐摩耗性のより良好な性能バランスが得られる点から、18質量部以下がより好ましく、12質量部以下が更に好ましい。30質量部を超えると、初期グリップ性能、走行中・後期の安定したグリップ性能、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0042】
本発明のゴム組成物は硫黄を含有する。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。
【0043】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.15〜5質量部であり、更に好ましくは0.2〜2質量部である。
【0044】
本発明のゴム組成物は、アクリル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂及びテルペン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。上記式(1)で表される化合物に加えて、上記樹脂を配合することにより、良好な耐摩耗性を確保しつつ、より良好な初期グリップ性能及び走行中・後期の安定したグリップ性能(特に、より良好な初期グリップ性能)が得られる。なかでも、本発明の効果(特に、走行中・後期の安定したグリップ性能の改善効果)がより良好に得られるという理由から、アクリル系樹脂が好ましい。また、アクリル系樹脂、及びテルペン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、アルキルフェノール系樹脂との併用も好ましい。
【0045】
アクリル系樹脂としては、本発明の効果がより良好に得られるという点で、無溶剤型アクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0046】
無溶剤型アクリル樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42−45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0047】
アクリル系樹脂は、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないことが好ましい。また、アクリル系樹脂は、本発明の効果の点で、連続重合により得られる組成分布や分子量分布が比較的狭いものが好ましい。
【0048】
上述のように、アクリル系樹脂としては、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないもの、すなわち、純度が高いものが好ましい。アクリル系樹脂の純度(該樹脂中に含まれる樹脂の割合)は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。
【0049】
アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0050】
また、アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
【0051】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良いが、より優れた初期グリップ性能及び走行中・後期の安定したグリップ性能が得られるという理由から、(メタ)アクリル成分と共にスチレンに由来する成分を構成要素とするスチレンアクリル樹脂(無溶剤型スチレンアクリル樹脂)であることが好ましく、また、より優れた耐摩耗性が得られるという理由から、(メタ)アクリル成分のみで構成されたオールアクリル樹脂(無溶剤型オールアクリル樹脂)が好ましい。
【0052】
また、アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基等を有していてよく、なかでも、式(1)で表される化合物と併用した場合、ヒステリシスロスをより向上させ、初期グリップ性能、耐摩耗性の改善や、初期グリップ性能、走行中・後期の安定したグリップ性能及び耐摩耗性の平均性能バランスの改善において、それぞれを単独で使用した場合に得られる性能の改善効果の単なる足し合わせ以上の効果(相乗効果)が得られるという理由から、水酸基、カルボキシル基を有していることが好ましく、カルボキシル基を有していることがより好ましい。この理由は必ずしも明らかではないが、アクリル系樹脂の水酸基、カルボキシル基が、式(1)で表される化合物の環状エーテル基と反応・結合し、ヒステリシスロスを生む側鎖として機能するため、式(1)で表される化合物が、上記アクリル系樹脂の分散を促進するため、と推定される。
【0053】
アルキルフェノール系樹脂としては、特に限定されず、アルキルフェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるアルキルフェノールアルデヒド縮合樹脂;アルキルフェノールと、アセチレンなどのアルキンとを反応させて得られるアルキルフェノールアルキン縮合樹脂;これらの樹脂を、カシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミンなどの化合物を用いて変性した変性アルキルフェノール樹脂;等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという観点から、アルキルフェノールアルキン縮合樹脂が好ましく、アルキルフェノールアセチレン縮合樹脂が特に好ましい。
【0054】
なお、アルキルフェノール系樹脂を構成するアルキルフェノールとしては、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。なかでも、t−ブチルフェノール等の分枝状アルキル基を有するフェノールが好ましく、t−ブチルフェノールが特に好ましい。
【0055】
テルペン系樹脂としては、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β−ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族テルペン樹脂、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂などを使用できる。ここで、芳香族テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエンなどが挙げられ、また、テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。テルペン系樹脂のなかでも、芳香族テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
【0056】
アクリル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂及びテルペン系樹脂の窒素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは0.5m
2/g以上、より好ましくは1.0m
2/g以上、更に好ましくは2.0m
2/g以上である。N
2SAを0.5m
2/g以上とすることにより、本発明の効果がより好適に得られる。また、該N
2SAの上限は特に限定されない。なお、本発明において、アクリル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂及びテルペン系樹脂の窒素吸着比表面積は、JIS K 6217−2:2001に準拠して求められる。
【0057】
N
2SAが0.5m
2/g以上のアクリル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂及びテルペン系樹脂は、例えば、市販のアクリル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂及びテルペン系樹脂に粉砕処理等を施し、上記N
2SA等の特性を付与することで、調製される。粉砕処理としては、湿式粉砕、乾式粉砕(ジェットミル、カレントジェットミル、カウンタージェットミル、コントラプレックスなど)等、従来公知の方法が挙げられる。
【0058】
アクリル系樹脂及びテルペン系樹脂のガラス転移温度(Tg)(℃/DSC)は、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは50℃以上である。また、該Tgは、好ましくは110℃以下であり、より好ましくは105℃以下、更に好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下である。0℃未満であると、初期グリップ性能の向上効果は得られるものの、走行中・後期の安定したグリップ性能、耐摩耗性が良好に得られないおそれがあり、110℃を超えると、走行後期又は酷暑環境下のグリップ性能の向上効果は得られるものの、初期グリップ性能、耐摩耗性が良好に得られないおそれがある。
なお、本発明において、アクリル系樹脂及びテルペン系樹脂のガラス転移点は、JIS K 7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って測定される値である。
【0059】
アルキルフェノール系樹脂のTgは、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは80℃以上である。また、該Tgは、好ましくは110℃以下であり、より好ましくは105℃以下、更に好ましくは100℃以下である。60℃未満であると、初期グリップ性能の向上効果は得られるものの、走行中・後期の安定したグリップ性能、耐摩耗性が良好に得られないおそれがあり、110℃を超えると、走行後期又は酷暑環境下のグリップ性能の向上効果は得られるものの、初期グリップ性能、耐摩耗性が良好に得られないおそれがある。
なお、本発明において、アルキルフェノール系樹脂のガラス転移点は、JIS K 7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って測定される値である。
【0060】
アクリル系樹脂及びアルキルフェノール系樹脂の水酸基価(OH価)は、好ましくは15mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上である。また、該OH価は、好ましくは350mgKOH/g以下、より好ましくは300mgKOH/g以下である。15mgKOH/g未満であると、初期グリップ及び走行中・後期のグリップ性能を高次元で共に得られないおそれがあり、350mgKOH/gを超えると、ゴム成分との相溶性が悪くなり、十分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
なお、本発明において、アクリル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、テルペン系樹脂のOH価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。なお、カルボキシル基含有アクリル樹脂は、酢酸によるアセチル化が発生しないため、OH価は測定できないため、OH価の代わりに、後述する酸価を用いることができる。
【0061】
特に、アクリル系樹脂のOH価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは60mgKOH/g以上である。また、該OH価は、好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下である。上記範囲内であると、本発明の効果が充分に発揮することができる。
【0062】
特に、アルキルフェノール系樹脂のOH価は、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは150mgKOH/g以上である。上記範囲内であると、本発明の効果を充分に発揮することができる。
【0063】
テルペン系樹脂の水酸基価(OH価)は、0mgKOH/gであってもよいが、好ましくは15mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。また、該OH価は、好ましくは350mgKOH/g以下、より好ましくは300mgKOH/g以下、更に好ましくは150mgKOH/g以下、特に好ましくは100mgKOH/g以下である。350mgKOH/gを超えると、ゴム成分との相溶性が悪くなり、十分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
【0064】
上記カルボキシル基含有アクリル樹脂の酸価は、好ましくは15mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上、更に好ましくは50mgKOH/g以上である。また、該酸価は、好ましくは350mgKOH/g以下、より好ましくは300mgKOH/g以下、更に好ましくは280mgKOH/g以下である。15mgKOH/g未満であると、初期グリップ及び走行中・後期のグリップ性能を高次元で共に得られないおそれがあり、350mgKOH/gを超えると、ゴム成分との相溶性が悪くなり、充分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
なお、本発明において、カルボキシル基含有アクリル系樹脂の酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0065】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上である。また、該Mwは、好ましくは20,000以下、より好ましくは19,000以下、更に好ましくは18,000以下である。2,000未満であると、初期グリップ性能の向上は得られるものの、走行中・後期の安定したグリップ性能が良好に得られないおそれがあり、20,000を超えると、ゴム中の分散性及び走行中・後期のタイヤ表面へのブルーム性が悪化し、グリップ性能の向上が少なくなるおそれがある。
【0066】
アルキルフェノール系樹脂及びテルペン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは500以上、より好ましくは530以上である。また、該Mwは、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,500以下である。500未満であると、初期グリップ性能の向上は得られるものの、走行中・後期の安定したグリップ性能が良好に得られないおそれがあり、2,000を超えると、ゴム中の分散性及び走行中・後期のタイヤ表面へのブルーム性が悪化し、グリップ性能の向上が少なくなるおそれがある。
なお、本発明において、アクリル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂及びテルペン系樹脂のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0067】
具体的には、アクリル系樹脂として、東亞合成(株)製のARUFONシリーズ(UH−2170、UC−3000、UC−3900、UC−3920、UF−5080、UF−5022、UG−4035、UG−4040、UG−4070)等、アルキルフェノール系樹脂として、BASF社製のKoresin等、テルペン系樹脂として、ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターシリーズ(T160、T145、S145)等、アリゾナケミカル社製のSylvaresTP115等、が挙げられる。
【0068】
本発明のゴム組成物がアクリル系樹脂を含有する場合、アクリル系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。1質量部未満であると、充分な粘着効果が得られず、初期グリップ性能及び走行時のグリップ性能の向上が共に得られないおそれがあり、50質量部を超えると、充分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
【0069】
本発明のゴム組成物がアルキルフェノール系樹脂を含有する場合、アルキルフェノール系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上、特に好ましくは15質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。1質量部未満であると、充分な粘着効果が得られず、初期グリップ性能及び走行時のグリップ性能の向上が共に得られないおそれがあり、100質量部を超えると、初期グリップ性能が低下し、充分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
【0070】
本発明のゴム組成物がテルペン系樹脂を含有する場合、テルペン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、特に好ましくは6質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。1質量部未満であると、充分な粘着効果が得られず、初期グリップ性能及び走行時のグリップ性能の向上が共に得られないおそれがあり、50質量部を超えると、充分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化するおそれがある。
【0071】
アクリル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂及びテルペン系樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部、更に好ましくは30質量部以上である。また、該合計含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。1質量部未満であると、充分な粘着効果が得られず、初期グリップ性能及び走行中・後期のグリップ性能の向上が共に得られず、100質量部を超えると、充分な破壊特性が得られず、耐摩耗性が著しく悪化する。
【0072】
本発明では、初期グリップ性能、走行中・後期の安定したグリップ性能などの観点から、更に軟化剤を配合することが好ましい。軟化剤としては特に限定されないが、オイル、液状ジエン系重合体、低温可塑剤(TOP、DOS等)などが挙げられる。
【0073】
オイルとしては、例えば、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイルが挙げられる。
【0074】
本発明のゴム組成物がオイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは40質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは85質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。20質量部未満では、添加による効果が得られないおそれがあり、85質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0075】
液状ジエン系重合体は、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
液状ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×10
3〜2.0×10
5であることが好ましく、3.0×10
3〜1.5×10
4であることがより好ましい。1.0×10
3未満では、グリップ性能の向上効果がなく、充分な耐久性が確保できないおそれがある。一方、2.0×10
5を超えると、重合溶液の粘度が高くなり過ぎ生産性が悪化したり、破壊特性、耐摩耗性が低下するおそれがある。なお、本発明において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0076】
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。なかでも、耐摩耗性と走行中・後期の安定したグリップ性能がバランスよく得られるという理由から、液状SBRが好ましい。
【0077】
本発明のゴム組成物が液状ジエン系重合体を含有する場合、液状ジエン系重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは65質量部以下である。10質量部未満では、充分なグリップ性能が得られない傾向があり、120質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0078】
アクリル系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、テルペン系樹脂、オイル、低温可塑剤、及び液状ジエン系重合体の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは100〜200質量部、更に好ましくは120〜180質量部である。上記含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0079】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック及び/又はシリカを含むことが好ましく、カーボンブラックを含むことがより好ましい。
【0080】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、100m
2/g以上が好ましく、105m
2/g以上がより好ましく、150m
2/g以上が更に好ましい。また、該N
2SAは、600m
2/g以下が好ましく、250m
2/g以下がより好ましく、200m
2/g以下が更に好ましい。100m
2/g未満では、グリップ性能が低下する傾向があり、600m
2/gを超えると、良好な分散が得られにくく、耐摩耗性が低下する傾向がある。なお、カーボンブラックのN
2SAは、ASTM D 6556に準拠して求められる。
【0081】
カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)比表面積は、100m
2/g以上が好ましく、120m
2/g以上がより好ましい。また、該N
2SAは、300m
2/g以下が好ましく、250m
2/g以下がより好ましい。100m
2/g未満では、グリップ性能が低下する傾向があり、300m
2/gを超えると、良好な分散が得られにくく、耐摩耗性が低下する傾向がある。なお、カーボンブラックのCTAB比表面積は、ASTM D3765に準拠して測定される。
【0082】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは80質量部以上、最も好ましくは100質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。10質量部未満では充分な耐摩耗性、グリップ性能が得られないおそれがあり、200質量部を超えると、破壊特性、耐摩耗性及びグリップ性能が低下するおそれがある。
【0083】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0084】
前記シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは50m
2/g以上、より好ましくは100m
2/g以上、更に好ましくは150m
2/g以上である。50m
2/g未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。該N
2SAは、好ましくは280m
2/g以下、より好ましくは250m
2/g以下である。280m
2/gを超えると、分散させるのが困難となり、却って耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのN
2SAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0085】
本発明のゴム組成物が乗用車用途においてシリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。10質量部未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。また、シリカの含有量は、好ましくは140質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。140質量部を超えると、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0086】
本発明のゴム組成物がカーボンブラック及び/又はシリカを含有する場合、カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは60質量部以上、特に好ましくは70質量部以上である。また、該合計含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは140質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる。
【0087】
本発明のゴム組成物は、下記式で表される化合物、硫酸マグネシウム、及び炭化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の無機フィラーを含有することが好ましい。式(1)で表される化合物に加えて、上記無機フィラーを配合することにより、初期グリップ性能及び走行中・後期の安定したグリップ性能をより好適に改善でき、本発明の効果がより良好に得られる。
mM・xSiO
y・zH
2O
(式中、MはAl、Mg、Ti、Ca及びZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、該金属の酸化物又は水酸化物であり、mは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、zは0〜10の整数である。)
【0088】
上記式で表される化合物としては、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、チタン白、チタン黒、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウムマグネシウム、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸マグネシウム、ジルコニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。無機化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0089】
上記無機フィラーのなかでも、モース硬度が3以上、かつ耐水性、耐油性があり、ミクロン単位の粒径に加工することで引っ掻き効果が生じたり、グリップ性能を発現する粘着成分のブルームを促進することで、グリップ性能が改善される。また、良好な耐摩耗性も得られるという点から、MがAlもしくはZrの金属、該金属の酸化物又は水酸化物が好ましく、資源量が豊富で安価である点から、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムがより好ましい。更に良好な練り生産性、押出し加工性も得られるという観点では、水酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0090】
上記無機フィラーの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、5〜120m
2/gであることが好ましい。上記範囲外では、耐摩耗性及びグリップ性能が悪化するおそれがある。該N
2SAの下限は、好ましくは10m
2/g、より好ましくは13m
2/gである。また、該N
2SAの上限は、好ましくは120m
2/g、より好ましくは115m
2/g、更に好ましくは110m
2/gである。
なお、上記無機フィラーのN
2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0091】
上記無機フィラーの平均粒子径は、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは0.69μm以下、更に好ましくは0.6μm以下である。また、該平均粒子径は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.25μm以上、更に好ましくは0.4μm以上である。1.5μmを超えると、耐摩耗性及びグリップ性能が低下するおそれがあり、0.2μm未満であると、ゴム中の2次凝集を形成し易くなり、かえって耐摩耗性、グリップ性能が低下するおそれがある。なお、無機フィラーの平均粒子径は、数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される。
【0092】
上記無機フィラーのモース硬度は、タイヤの耐摩耗性やグリップ性能の確保や、バンバリーミキサーや押出機の金属摩耗を抑える観点から、シリカ並の7又はそれ未満であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。モース硬度は、材料の機械的性質の一つで古くから鉱物関係で汎用されている測定法であり、硬さを計りたい物質(水酸化アルミニウム等)を標準物質でこすり、ひっかき傷の有無でモース硬度を測定する。
【0093】
特に、モース硬度が7未満で、かつ該無機フィラーの脱水反応物のモース硬度が8以上の無機フィラーを使用することが好ましい。例えば、水酸化アルミニウムは、モース硬度約3で、バンバリーやロールの摩滅(摩耗)を防止するとともに、走行中・後期の振動・発熱や一部混練りにより表層が脱水反応(転移)して、モース硬度約9のアルミナへ転化し、路面石以上の硬度となるので、優れた耐摩耗性やグリップ性能が得られる。ここで、水酸化アルミニウムの内部全てが転化する必要はなく、一部の転化で路面の引っ掻き機能を発現できる。また、水酸化アルミニウムとアルミナは、水、塩基、酸に対して安定であり、加硫の阻害や酸化劣化の促進もない。なお、該無機フィラーの転移後のモース硬度は、より好ましくは7以上であり、上限は特に制限されない。ダイヤモンドは最高値10である。
【0094】
上記無機フィラーは、熱分解開始温度(DSC吸熱開始温度)が160〜500℃のものが好ましく、170〜400℃のものがより好ましい。160℃未満では、混練中に熱分解又は再凝集が進みすぎ、練り機のローター羽又は容器の壁等の金属摩耗が行き過ぎたりするおそれがある。なお、無機フィラーの熱分解開始温度は、示差走査熱量測定(DSC)を実施して求められる。また、熱分解には、脱水反応も含まれる。
【0095】
上記無機フィラーとしては、上記N
2SAを有する市販品を使用でき、また、無機フィラーに粉砕などの処理を施して上記特性を有する粒子に調整した処理品なども使用可能である。粉砕処理を施す場合、湿式粉砕、乾式粉砕(ジェットミル、カレントジェットミル、カウンタージェットミル、コントラプレックスなど)等、従来公知の方法を適用できる。
また、必要に応じて、医薬、バイオ関係で頻用されるメンブランフィルター法にて分取し、所定のN
2SAを有するものを作製し、ゴム配合剤として使用することもできる。
【0096】
本発明のゴム組成物が上記無機フィラーを含有する場合、上記無機フィラーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。1質量部未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。70質量部を超えると、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0097】
本発明では、補強用充填剤として、炭酸カルシウムなど、従来タイヤ用ゴム組成物で慣用されるものも使用できる。
【0098】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、シランカップリング剤、ワックス、酸化亜鉛、ステアリン酸、離型剤、老化防止剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0099】
本発明で使用される酸化亜鉛としては、特に限定されず、タイヤなどのゴム分野で使用されているものなどが挙げられる。ここで、酸化亜鉛のなかでは、微粒子酸化亜鉛を好適に使用できる。具体的には、平均一次粒子径200nm以下の酸化亜鉛を使用することが好ましく、より好ましくは100nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上である。なお、酸化亜鉛の平均一次粒子径は、窒素吸着によるBET法により測定した比表面積から換算された平均粒子径(平均一次粒子径)を表す。また、窒素吸着によるBET法により測定した比表面積(N
2SA)は10〜50m
2/gであることが好ましい。
【0100】
本発明のゴム組成物が酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部以下、より好ましくは1〜5質量部である。酸化亜鉛の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0101】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、グアニジン系加硫促進剤などが挙げられ、なかでも、本発明では、チアゾール系、チウラム系加硫促進剤を好適に使用できる。
【0102】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)などが挙げられ、なかでも、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドなどが挙げられ、なかでも、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)などが挙げられ、なかでも、TOT−Nが好ましい。グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン、ジオルトトリグアニジン、トリフェニルグアニジンなどが挙げられ、なかでもジフェニルグアニジンが好ましい。
【0103】
本発明のゴム組成物が加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。1質量部未満では、充分な加硫速度が得られず、良好なグリップ性能、耐摩耗性が得られない傾向があり、15質量部を超えると、ブルーミングを起こし、グリップ性能、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0104】
本発明のゴム組成物は、従来公知の方法で製造できる。
先ず、バンバリーミキサー、オープンロールなどのゴム混練装置に硫黄及び加硫促進剤以外の成分を配合(添加)して混練りした後(ベース練り工程)、得られた混練物に、更に硫黄及び加硫促進剤を配合(添加)して混練りしその後加硫する方法などにより製造できる。
【0105】
本発明のゴム組成物は、グリップ力が必要な用途、すなわち、タイヤ、靴底ゴム、産業用ベルト、ブチル枠ゴム、パッキン、免震ゴム、薬栓等に使用でき、なかでも、靴底ゴム、産業用ベルト、空気入りタイヤのトレッドに好適であり、特に高性能タイヤ用キャップトレッドにより好適である。
【0106】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0107】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用、トラック・バス用、スポーツカー用、2輪バイク用、競技用車両等のタイヤに用いることができるが、特に高性能タイヤとして好適に用いられる。本発明における高性能タイヤとは、グリップ性能(特に、ドライグリップ性能)に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念であり、該競技用タイヤは、レースなどの競技用タイヤ、特にドライ路面に使用される競技用ドライタイヤに好適に適用できる。
【実施例】
【0108】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0109】
<末端変性剤の作製>
窒素雰囲気下、100mlメスフラスコに3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(アヅマックス(株)製)を23.6g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を100mlにして作製した。
【0110】
<共重合体製造例1>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を740g、ブタジエンを1260g、テトラメチルエチレンジアミンを10mmol加え、40℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを10mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、上記末端変性剤を11mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール15mL及び2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.1gを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性SBRを得た。
【0111】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
<SBR1>:旭化成(株)製のタフデン4850(スチレン含有率:40質量%、ビニル含有率:46質量%、Mw:119万、Tg:−27℃、ゴム固形分100質量部に対してオイル分50質量部含有)
<SBR2>:共重合体製造例1で作製した変性SBR(スチレン含有率:27質量%、ビニル含有率:58質量%、Mw:72万、Tg:−27℃)
<BR>:ランクセス社製のCB24(Nd系触媒を用いて合成したハイシスBR)
<NR>:TSR20
<シリカ>:Evonik社製のULTRASIL VN3(N
2SA:175m
2/g)
<カーボンブラック>:オリオンエンジニアドカーボンズ社製のHP180(N
2SA:175m
2/g、CTAB比表面積:181m
2/g)
<シランカップリング剤>:Evonik社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
<無機フィラー1>:住友化学(株)製のATH#Bの乾式粉砕品(水酸化アルミニウム、平均粒子径:0.5μm、N
2SA:95m
2/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9、熱分解開始温度:200℃)
<無機フィラー2>:住友化学(株)製のATH#B(水酸化アルミニウム、平均粒子径:0.6μm、N
2SA:15m
2/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9、熱分解開始温度:200℃)
<無機フィラー3>:昭和電工(株)製のハイジライトH−43(水酸化アルミニウム、平均粒子径:0.75μm、N
2SA:6.7m
2/g、モース硬度:3、熱分解物(アルミナ)のモース硬度:9、熱分解開始温度:200℃)
<液状ジエン系重合体>:(株)クラレ製のL−SBR−820(液状SBR、Mw:10,000)
<添加剤1>:東京化成工業(株)製のビスフェノールAジグリシジルエーテル(式(1)で表される化合物(R
1及びR
2=メチル基、R
3=メチレン基、R
4=オキシラン基)、下記式で表される化合物)
【化7】
<添加剤2>:東京化成工業(株)製のビスフェノールA(下記式で表される化合物)
【化8】
<添加剤3>:東京化成工業(株)製のビスフェノールAジアセタート(下記式で表される化合物)
【化9】
<添加剤4>:東京化成工業(株)製のビスフェノールA O,O−二酢酸(下記式で表される化合物)
【化10】
<添加剤5>:東京化成工業(株)製の1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(下記式で表される化合物)
【化11】
<オイル>:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
<アクリル系樹脂(1)−1>:東亞合成(株)製のARUFON UC−3900(無溶剤型スチレンアクリル樹脂(カルボキシル基含有)、純度:98質量%以上、Tg:60℃、酸価:108mgKOH/g、Mw:4,600、N
2SA:0m
2/g、軟化点:80℃)
<アクリル系樹脂(1)−2>:東亞合成(株)製のARUFON UC−3900の乾式粉砕品(無溶剤型スチレンアクリル樹脂(カルボキシル基含有)、純度:98質量%以上、Tg:60℃、酸価:108mgKOH/g、Mw:4,600、N
2SA:4.0m
2/g、軟化点:80℃)
<アクリル系樹脂(2)−1>:東亞合成(株)製のARUFON UH−2170(無溶剤型スチレンアクリル樹脂(水酸基含有)、純度98質量%以上、Tg:60℃、OH価:88mgKOH/g、Mw:14,000、N
2SA:0m
2/g、軟化点:80℃)
<アクリル系樹脂(2)−2>:東亞合成(株)製のARUFON UH−2170の乾式粉砕品(無溶剤型スチレンアクリル樹脂(水酸基含有)、純度98質量%以上、Tg:60℃、OH価:88mgKOH/g、Mw:14,000、N
2SA:4.0m
2/g、軟化点:80℃)
<アクリル系樹脂(3)−1>:東亞合成(株)製のARUFON UC−3920(無溶剤型スチレンアクリル樹脂(カルボキシル基含有)、純度:98質量%以上、Tg:102℃、酸価:240mgKOH/g、Mw:15,500、N
2SA:0m
2/g、軟化点:125℃)
<アクリル系樹脂(3)−2>:東亞合成(株)製のARUFON UC−3920の乾式粉砕品(無溶剤型スチレンアクリル樹脂(カルボキシル基含有)、純度:98質量%以上、Tg:102℃、酸価:240mgKOH/g、Mw:15,500、N
2SA:4.0m
2/g、軟化点:125℃)
<アクリル系樹脂(4)>:東亞合成(株)製のARUFON UC−3000(無溶剤型オールアクリル樹脂(カルボキシル基含有)、純度:98質量%以上、Tg:65℃、酸価:74mgKOH/g、Mw:10,000、N
2SA:4.0m
2/g、軟化点:85℃)
<芳香族テルペン樹脂>:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(Tg:65℃、OH価:0mgKOH/g、N
2SA:0m
2/g、軟化点:125℃)
<テルペンフェノール樹脂>:アリゾナケミカル社製のSylvaresTP115(Tg:55℃、OH価:50mgKOH/g、Mw:600、N
2SA:0m
2/g、軟化点:115℃)
<アルキルフェノール系樹脂>:BASF社製のKoresin(p−t−ブチルフェノール及びアセチレンの縮合樹脂、Tg:98℃、OH価:198mgKOH/g、N
2SA:0m
2/g、軟化点:145℃)
<酸化亜鉛1>:ハクスイテック(株)製のジンコックスーパーF−2(平均一次粒子径:65nm、N
2SA:20m
2/g)
<酸化亜鉛2>:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
<老化防止剤1>:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチル)−p−フェニレンジアミン)
<老化防止剤2>:大内新興化学工業社製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
<ステアリン酸>:日油(株)製のステアリン酸「椿」
<硫黄>:細井化学工業(株)製のHK−200−5(5%オイル含有粉末硫黄)
<加硫促進剤1>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
<加硫促進剤2>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
<加硫促進剤3>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
<加硫促進剤4>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT−N(テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
【0112】
<実施例及び比較例>
表1、2に示す配合処方に従い、神戸製鋼(株)製4.0Lバンバリーを用いて硫黄及び加硫促進剤1〜4以外の配合材料を排出温度150℃の条件下で5分間混練りした。得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて排出温度95℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、160℃の条件下で20分間加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を得た。
【0113】
上記製造で得た試験用タイヤについて、以下の評価を行った。結果を表1、2に示す。なお、実施例1〜17及び比較例2〜7の基準比較例を比較例1、実施例18〜20及び比較例9の基準比較例を比較例8、実施例21〜23及び比較例11の基準比較例を比較例10とした。
【0114】
(初期グリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際に2周目における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、基準比較例を100として指数表示をした(初期グリップ性能指数)。数値が大きいほど初期グリップ性能が高いことを示す。指数値が104以上の場合に特に良好であると判断した。
【0115】
(走行中・後期のグリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、ベストラップと最終ラップの操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが比較評価し、基準比較例を100として指数表示をした。数値が大きいほどドライ路面において、走行中・後期のグリップ性能の低下が小さく、走行中・後期の安定したグリップ性能が良好に得られることを示す。指数値が104以上の場合に特に良好であると判断した。
【0116】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。その際におけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時7.0mm)、それぞれ基準比較例の残溝量を100として指数表示した(耐摩耗性指数)。数値が大きいほど、耐摩耗性が高いことを示す。指数値が85以上の場合に良好であると判断した。
【0117】
【表1】
【表2】
【0118】
表1、2より、特定量のジエン系ゴム、硫黄、及び特定量の式(1)で表される化合物を配合した実施例では、良好な耐摩耗性を確保しつつ、初期グリップ性能及び走行中・後期の安定したグリップ性能、特にドライ路面における初期グリップ性能及び走行中・後期の安定したグリップ性能を同時に高次元に向上できることが明らかとなった。
【0119】
特に、実施例3、比較例1、7と実施例7との比較により、式(1)で表される化合物のみを用いた場合や、水酸基及び/又はカルボキシル基を有しているアクリル系樹脂のみを用いた場合に比べて、式(1)で表される化合物と、水酸基及び/又はカルボキシル基を有しているアクリル系樹脂とを併用した場合に、初期グリップ性能、耐摩耗性の改善や、上記3性能の平均性能バランスの改善において、足し合わせ以上の改善効果(相乗効果)が得られることが分かった。