特許第5944977号(P5944977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5944977車両用グレージング、その製造方法、および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5944977
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】車両用グレージング、その製造方法、および使用
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/00 20060101AFI20160621BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B60J1/00 G
   B60R11/02 C
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-244860(P2014-244860)
(22)【出願日】2014年12月3日
(62)【分割の表示】特願2012-506455(P2012-506455)の分割
【原出願日】2010年4月19日
(65)【公開番号】特開2015-71419(P2015-71419A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2014年12月16日
(31)【優先権主張番号】102009018348.5
(32)【優先日】2009年4月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルビン・テイメルマン
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−025928(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0052568(US,A1)
【文献】 特表平09−511952(JP,A)
【文献】 特開2008−018910(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/018907(WO,A2)
【文献】 国際公開第2005/095169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用グレージングの製造方法であって、
)1つの透明板(1)が被覆塗料(10)で部分的に被覆されるステップと、
b)1つの透明体(2)および前記透明体(2)の結合面A2に付着された1つの透明ポリマー層(3)が予備加熱されるステップと、
c)バキュームベルの下で透明ポリマー層(3)を備える透明体(2)に真空が印加されるステップと、
d)透明板(1)上の透明ポリマー層(3)を備える透明体(2)が被覆塗料(10)を用いた被覆上に位置合わせされるステップと、
e)透明ポリマー層(3)を備える透明体(2)が透明板(1)上に広げられながら接着されるステップと、を含む製造方法。
【請求項2】
透明板(1)がオートクレーブで2つの透明板から積層される、請求項1に記載の透明板の製造方法。
【請求項3】
透明体(2)が、少なくとも1つの結合面A2上で透明ポリマー層(3)を通じて透明板(1)に確実に接続され、透明体(2)の最大幅B2および最大長さL2が、透明板(1)の最小幅B1および最小長さL1より小さく、透明体(2)の透過面A2−pおよび透明板(1)の表面A1が、10°未満の最大角度偏差で互いに対して延在する、請求項1または2に記載の透明板の製造方法。
【請求項4】
透明体(2)の透過面A2−pおよび透明板(1)の表面A1が、2°未満の最大角度偏差で互いに対して延在する、請求項3に記載の透明板の製造方法。
【請求項5】
透明体(2)が5mmから100mmの最大幅B2を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の透明板の製造方法。
【請求項6】
透明体の結合面A2および透過面A2−pが台形型である、請求項3から5のいずれか一項に記載の透明板の製造方法。
【請求項7】
透明体(2)が、10mmから200mmの長さL2および/または2mmから25mmの厚みD2を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の透明板の製造方法。
【請求項8】
透明体(2)の少なくとも1つの側面A2−qが光吸収層(4)を有する、請求項3から7のいずれか一項に記載の透明板の製造方法。
【請求項9】
透明体(2)が、少なくとも1つの側面に光吸収部品(5)を有し、該光吸収部品(5)が、電磁送信器または受信システムの位置決めおよび実装のための、傾斜平面、開口部、隆起部、および/またはねじ部を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の透明板の製造方法。
【請求項10】
透明体(2)の透過面A2−pが、少なくとも1つの反射防止層(8)を有する、請求項3から9のいずれか一項に記載の透明板の製造方法。
【請求項11】
反射防止層(8)が、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、窒化ケイ素、金属窒化物、および/またはそれらの混合物を含む、請求項10に記載の透明板の製造方法。
【請求項12】
透明体(2)の透過面A2−p上の少なくとも1つの被覆(6)および/または結合面A2上の少なくとも1つの被覆(7)が、銀、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物、および/またはそれらの混合物を含有する、導電性の透明な被覆を有する、請求項3から11のいずれか一項に記載の透明板の製造方法。
【請求項13】
透明板(1)が、被覆塗料(10)を用いた少なくとも1つの部分的被覆を含み、電磁放射線の透過用の表面を完全にまたは部分的に画定する、請求項1から12のいずれか一項に記載の透明板の製造方法。
【請求項14】
透明板(1)が、縦方向および/または横方向に湾曲している、請求項1から13のいずれか一項に記載の透明板の製造方法。
【請求項15】
透明体(2)が、透明板(1)の湾曲に対応して湾曲している、請求項14に記載の透明板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射線の、具体的には可視波長範囲の画像データの、透過用光結合素子を備える新規な車両用グレージングに関する。
【0002】
さらに、本発明は、光結合素子を備える車両用グレージングの製造の新規な方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、運転者支援システムを備える車両における車両用グレージングの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
独国特許出願公開第102007054047号明細書において、車両用の積層ガラス板が記載されており、積層ガラス板は少なくとも1つの外側ガラス板および1つの内側ガラス板を含み、内側ガラス板および外側ガラス板が異なる光学特性を有すること、および内側ガラス板が少なくとも1つの刻み目または切り欠きを有することを特徴とする。このため、積層ガラス板は、その表面の異なる領域において、異なる光透過性を有することができる。
【0005】
独国特許出願公開第102006027044号明細書において、光学的手段、具体的には自動車の画像記録装置用のプリズムまたはミラーシステムが開示されており、光学的手段は、所定の空間的角度範囲内で画像記録装置の視線方向を偏向する。光学的手段は、好ましくは、外部ミラーの領域に実装される。
【0006】
独国特許出願公開第10054307号明細書より、透明板に入射する光線の結合によって反射を減少させるための光結合素子が知られており、光線は、直角以外の角度で板に当たり、光結合素子は、板とほぼ同じ屈折率を有して、板上に確実な係止方式にて配置される。光結合素子は、少なくとも光線の主軸の入射点内で、ほぼ垂直な入光面を有する。
【0007】
独国特許出願公開第102006039056号明細書は、車両用板ガラス上の光学センサの締結装置を開示している。
【0008】
独国特許出願公開第102007054047号明細書は、表面上に断熱層を備える、車両用の積層ガラス板を開示している。断熱層は、機能素子の領域に刻み目を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007054047号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102006027044号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10054307号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102006039056号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
知られている光結合素子は、光学的濃密体の異なる光路長による光学的歪みを有する電磁放射線ビームを、具体的には画像データの透過によって、伝達する。画像データは、非常に大きな計算能力によって修正される必要がある。さらに、具体的には水平方向に向けられた画像記録装置および垂直から大きく偏向した車両用グレージング取付角度をもって、内部への画像の伝達には比較的大きいグレージングの領域が必要である。この領域は、たとえばECE−R43による視野Bについて、もはや使用可能領域として利用することはできない。
【0011】
本発明の目的は、車両用グレージングの最小可能領域が必要とされ、光学的歪み、具体的には画像データが可能な限り小さくなるように、送信器および/または受信器の電磁放射線ビームが車両用グレージングを透過する、車両用グレージングを見出すことである。
【0012】
本発明の別の目的は、車両用グレージングの製造の新規な方法を見出すことである。
【0013】
本発明の別の目的は、車両用グレージングの新規な使用を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、少なくとも:
a)1つの透明板と、
b)1つの透明体と、
c)それらの間に介在する少なくとも1つの透明ポリマー層と、を含む車両用グレージングであって、
透明体は、少なくとも1つの結合面上で透明ポリマー層を通じて透明板に確実な係止方式にて接続され、透明体の最大幅および最大長さは透明板の最小幅および最小長さより小さく、透明体の透過面および透明板の表面は、10°未満の最大角度偏差で互いに平行に延びる、車両用グレージングによって実現される。
【0015】
電磁放射線ビーム、具体的には画像データの経路は、光結合素子としての透明板の表面および透明体の透過面の平行なコースのため、光学的濃密透明板および光学的濃密透明体において、ほぼ同じである。透明板および透明体を通じて観察される画像は、歪まないか、またはほとんど歪まないように見える。同時に、透明体の透過面と送信器および/または受信器の開口部との間の距離は短縮される。短距離のため、放射線ビームはあまり拡大することができない。このため、放射線ビームの透過のために送信器および/または受信器に必要とされる領域は、特に垂直から大きく偏向した車両用グレージング取付角度を有する、水平方向に向けられた画像記録装置において、減少する。
【0016】
好適な実施形態において、透明体の透過面および透明板の表面は、2°未満の角度偏差で、互いに平行に延びる。透過面と透明板の表面との平行度が高いほど、放射線ビームの光学的歪みが小さくなる。
【0017】
別の好適な実施形態において、透明体は、好ましくは5mmから100mmの最大幅を有する。
【0018】
透明体の結合面および透過面は、好ましくは、台形として実現される。透明板上の送信器および/または受信器の視線方向が垂直から大きく偏向するほど、台形形状がより際立つ。放射線ビームは透明体上の送信器および/または受信器の開口部の間でほんのわずかしか拡大できないので、送信器および/または受信器の開口部の付近に位置する領域は、より狭く実現されることが可能である。したがって、一実施形態において、透明体の幅は、透明板の上縁まで減少する。
【0019】
好適な実施形態において、透明体の長さは10mmから200mmである。
【0020】
透明体の厚みは、好ましくは2mmから25mmである。
【0021】
透明体は、好ましくは、ケイ酸塩ガラス、またはポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、および/またはポリ塩化ビニル、ならびにそれらのコポリマーおよび/または化合物を含有する。全体として、送信器および/または受信器の電磁放射線ビームを透過する全ての材料が考慮される。画像記録装置については、可視領域(380nmから750nm)および/または近赤外線(750nmから1200nm)の電磁放射線に対する高透明性が好ましい。
【0022】
透明体は、好ましくは70%超の、380nmから750nmの波長領域内の光透過性を有する。
【0023】
透明体は、好ましくは、受信器への有益な情報のない入射を最小化するために、50%未満の赤外線放射線の透過率を有することができる。
【0024】
送信器は、電磁放射線、具体的には放射線ビームの放射のための開口部を含む。電磁放射線、および具体的には放射線ビームは、物体との相互作用の後に、受信器の開口部を通じて反射および検出されることが可能である。信号から、位相シフトおよび実行時間測定に基づいて、対象物と車両との間の距離、対象物の表面特性、および車両の周囲の温度に関するデータが計算され得る。しばしば、可視または赤外線範囲の画像記録装置の場合、送信器は必要ではなく、代わりに、周囲から信号が拾われるだけである。電磁放射線の源は、外部送信器によって生じることが可能である。全体として、運転者にとって興味深い全ての電磁放射線の送信および受信、ならびに車両の操作のための運転者支援システムが考慮される。
【0025】
運転者支援システムは、好ましくは、周囲からの画像データを必要とする。別の道路使用者、対象物、道路標識、および路面表示が認識されることが可能である。コンピュータ支援評価システムによって、運転者は、車両の操作において能動的または受動的に支援される。適切な構成を用いて、車両は、これらのデータによって、自動的に操作されることさえ可能である。
【0026】
散乱光は、透明板、透明体または車両用グレージングもしくは周囲のその他の要素によって直接透過または反射されない電磁放射線の一部である。この散乱光は、ほとんどまたは全く利用不可能な情報のみを含み、受信器内で有益な信号に置き換えられる。散乱光は受信器の感度を低下させる。散乱光は、ビーム路内に直接存在しない透明体の側面上の光吸収被覆によって吸収されることが可能である。光吸収被覆について考えられるのは、好ましくは、溶媒の化学反応または蒸発の後で機械的および化学的に安定している、黒化ポリマー含有塗料である。
【0027】
一実施形態において、透明体は、少なくとも1つの側面上に、光吸収部分を有する。この部分は、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、および/またはポリメチルメタクリレート、ならびにそれらのコポリマーおよび/または化合物を含有する。光吸収部分は、透明体、ならびに送信器および/または受信器の間の電磁放射線ビームの直接経路の外側の領域を完全にまたは部分的に包囲することができる。一回の操作で、干渉する散乱光が最小化される。光吸収部分は、散乱光遮蔽体と称され得る。
【0028】
別の好適な実施形態において、光吸収部分および/または透明体の形状は、電磁送信器または受信システムの位置決めおよび実装のための、傾斜平面、開口部、隆起部、および/またはねじ部を有する。本発明のこの実施形態は、具体的には、送信器および/または受信器が、透明板に対しておよび透明体に対して所定の方法で位置決めされるという利点を有する。
【0029】
本発明の別の実施形態において、透明体は、側面上に、完全にまたは部分的に傾斜した平面、凹状、凸状の形状、および/または、たとえば降雨検出システム用など、側面上の付加的電磁センサ信号の結合R_eおよび減結合R_aに使用される光学素子を有することができる。
【0030】
降雨検出システムにおいて、側面を通じて結合された透明板の表面上の水分の信号は、変更されて、出力信号として検出される。出力信号から、適切な計算によって、水分量が推測され得る。
【0031】
透明体の透過面上の電磁放射線の光反射損失を最小化するために、透明体は、好適な実施形態において、少なくとも1つの反射防止層を含む。
【0032】
減反射は、異なる光学密度を有する媒体の界面における電磁放射線の反射損失の最小化である。物体または媒体は、これらが空気よりも大きい屈折率を有する場合に、光学的に濃密である。空気の屈折率はおよそ1である。
【0033】
表面の減反射は、様々な対策によって実現されることが可能である。干渉光学層システムを用いて、反射した放射線の一部は、異なる屈折率を有する2つ以上の薄層でガラス表面を被覆することにより、相殺的干渉によって消失する。あるいは、減反射は、その屈折率が下層材料の屈折率のおおよその乗根に対応する場合に、単層システムによる影響を受ける可能性がある。層は、具体的には、窒化ケイ素および酸化ケイ素、ならびに全ての一般的な透明金属窒化物および/またはそれらの混合物を含む。
【0034】
透明体の透過面または結合面上の少なくとももう1つの被覆は、銀、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物、および/またはそれらの混合物を含有する、導電性の、透明な層を含有する。本発明の一実施形態において、特に低い外気温において、透明体上の結露を最小化するために、透明体は、電流を使用するジュール熱によって加熱されることが可能である。結露は、吸収および/または散乱の増加を通じて、送信器の性能および受信器の感度を低下させるだろう。
【0035】
透明板は、好ましくは、ケイ酸塩ガラス、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、エチレンエチレンビニルアセテート、可塑化ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アイオノマー、および/またはポリメチルメタクリレート、ならびにそれらのコポリマーおよび/または化合物を含有する。透明板は、特に好ましくは、積層ガラス板として開発される。
【0036】
別の好適な実施形態において、透明板は、少なくとも小区域上に、被覆塗料を用いた不透明被覆を含有する。不透明被覆塗料は、たとえば送信器および/または受信器の干渉実装素子などを覆うために、電磁放射線の透過用の表面を完全にまたは部分的に画定する。
【0037】
機械的安定性を向上させるために、好適な実施形態において、透明板は、縦方向および/または横方向に湾曲している。
【0038】
縦方向は、送信器および/または受信器の視線方向にほぼ沿った方向である。長さデータはこの方向を指す。したがって、幅データは横方向を指す。
【0039】
高度に湾曲した透明板とともに、透明体もまた縦方向および/または横方向に、確実に係止するように湾曲している。
【0040】
透明ポリマー層は、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアセテート、可塑化ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリアクリル酸、アイオノマー、ならびにそれらのコポリマーおよび/または化合物を含有する。ポリマー層として、たとえば、ノイスにある3M Deutschland GmbH社のアクリル接着剤系VHB(TM)が使用される。
【0041】
車両用グレージングの好適な実施形態において、透明ポリマー層は、0.5mmから2mm、好ましくは1.00mmから1.5mmの厚さである。
【0042】
車両用グレージングの製造のための本発明による方法において、1つの透明板は不透明被覆塗料で部分的に被覆されている。1つの透明体および接触面に付着された1つの透明ポリマー層は予備加熱され、バキュームベルの下で透明ポリマー層を備える透明体に真空が印加される。透明板上に透明ポリマー層を備える透明体は、広げられながら不透明被覆塗料上に位置合わせされて接着される。予備加熱は、好ましくは、30℃から70℃の温度範囲で実行される。
【0043】
本方法の一実施形態で、方法の先行するステップにおいて、透明板は、2つの透明板およびポリマーから、オートクレーブ処理で積層される。
【0044】
不透明被覆塗料は、好ましくは、積層工程の前に、個別の透明板の内面上に、または透明板の外面上に、シルクスクリーン処理で付着されることが可能である。
【0045】
予想外および驚くことに、電磁放射線の透過のためおよび運転者支援システムの取付けのためのフロントガラスとしての車両用グレージングの新規な使用もまた、見出された。
【0046】
本発明の例示的な実施形態は、図面に示され、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】先行技術による車両用グレージングおよび画像記録装置の断面図である。
図2】本発明による車両用グレージングおよび画像記録装置の断面図である。
図3】本発明による車両用グレージングの平面図である。
図4図3の線A−Aを通る断面図である。
図5】本発明による車両用グレージングの断面図である。
図6】透明体の平面図である。
図7】本発明による車両用グレージングの製造のための本発明による方法の例示的実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1から図6は、本発明の原理を図解するように意図された模式図である。そのため、模式図は縮尺通りではない。
【0049】
先行技術による図1に基づく比較例において、ほぼ水平の視線方向を有する画像記録装置(9)が、積層ガラスフロントガラス(1)積層ガラスフロントガラス(1)の内側に取り付けられた。積層ガラスフロントガラス(1)を透過する間の電磁放射線ビーム(B)の結果的な経路が観察された。積層ガラスフロントガラス(1)は、被覆塗料(10)を備える透過領域の不透明境界線を有していた。
【0050】
湾曲した透明板(1)の長さL1は1mであり、最大幅B1は1.5mであった。積層ガラスフロントガラス(1)は、透明板と水平との間で23°の車両内取付角度を有していた。
【0051】
透明板(1)および透明体(2)を通る電磁放射線ビーム(B)は、歪みがないかまたはほとんど歪みのない画像であった。完全な画像の透過に必要な透明板(1)を通る表面の長さF_Lは67mmであった。
【0052】
図2から図4による例示的実施形態は、透明板(1)およびポリカーボネートを備える透明体(2)としての積層ガラスフロントガラスから構成された。図2は、透明板(1)、透明ポリマー層(3)、および透明体(2)を透過する間の電磁放射線ビーム(B)の結果的な経路を示す。図2は、本発明によるグレージングを用いた電磁放射線の透過のための表面の長さF_L’を示す。同様に示されているのは、放射線ビーム(B)および透明体の透過面A2−pである。透明板(1)の図2図3、および図4に示される表面A1および透明体(2)の透過面A2−pは、結合面A2上で確実な係止方式にて、2°未満の角度偏差で相互に平行に接続された。透明積層ガラスフロントガラス(1)および、したがって、透明体(2)は、透明板(1)と水平との間で23°未満の取付角度を有していた。湾曲した透明板(1)の長さL1は1mであり、最大幅B1は1.5mであった。積層ガラスフロントガラス(1)は、被覆塗料(10)を備える透過領域の不透明境界線を有していた。透明体(2)の長さL2は5cmであり、最大幅B2は5cmであり、厚みD2は7.5mmであった。ポリマー層(3)は、0.5mmの厚みD3を有する自己接着アクリル含有高透明膜3M VHB(TM)4905であった。特性付けのため、ほぼ水平の視線方向を有する画像記録装置(9)が客室側に実装された。画像記録装置の絶縁および光散乱の最小化のため、ポリカーボネートを備える光吸収部品(5)が使用された。
【0053】
透明板(1)および透明体(2)を通る電磁放射線ビーム(B)は、歪みがないかまたはほとんど歪みのない画像であった。完全な画像の透過に必要な透明板(1)を通る表面の長さF_L’は37mmであった。
【0054】
図5は、透明板(1)、送信および/または受信システム(9)用の位置決めおよび実装装置(5)、光吸収被覆(4)、透過面A2−pおよび結合面A2上の導電性透明層(6)、(7)、および透過面A2−p上の反射防止層(8)を含む、本発明による車両用グレージングの断面図を示す。
【0055】
図6は、透明体(2)の小区域内に結合信号R−eおよび減結合信号R−aを備える降雨検出システムの統合を考慮した、透明体(2)の平面図である。
【0056】
図7は、フローチャートにより、本発明による車両用グレージングの製造のための本発明による方法の例示的実施形態を示す。示される方法の5つのステップは、本発明による方法の好適な実施形態である。
【0057】
比較例(図1)および例示的実施形態(図2)からの結果は、表1に示される。
【0058】
【表1】
【0059】
透明板(1)を通る完全な画像Bの透過に必要な表面の長さF_L’はわずかに37mmであり、比較例と比較すると、30mm減少した。運転者支援システムの送信器および受信器の電磁放射線ビームの歪みのない透過には、車両用グレージングの可能な限り小さい表面が必要であるということに利点が存在する。
【符号の説明】
【0060】
(1) 透明板
(2) 透明体
(3) ポリマー層
(4) 光吸収被覆
(5) 光吸収部品
(6)、(7) 導電性透明被覆
(8) 反射防止層
(9) 送信および/または受信システム
(10) 不透明被覆塗料
A1 透明板(1)の外面
A2 透明体(2)の結合面
A2−p 透明板(1)の外面A1と平行な透明体(2)の透過面
A2−q 透明体(2)の側面
L1 透明板(1)の長さ
B1 透明板(1)の幅
L2 透明体(2)の長さ
B2 透明体(2)の最大幅
D2 透明体(2)の厚み
D3 ポリマー層(3)の厚み
B ガラスを通る放射線ビーム
F_L 電磁放射線の透過のための表面の長さ
F_L’ 本発明によるガラスを用いた電磁放射線の透過のための表面の長さ
R−e 結合信号
R−a 減結合信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7