(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低密度ポリエチレンは、ISO 1133(190℃,2.16kg)によるメルトフローレート(MFR)が3.0g/10分よりも大きい、請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の低密度ポリエチレンは、910〜940kg/m
3の間、例えば、910〜935kg/m
3の間にある密度を有するポリエチレンである。
【0011】
さらに、本発明の低密度ポリエチレンは、900〜935kg/m
3の間、例えば、910〜935kg/m
3の間にある密度を有するポリエチレンでもある。
【0012】
さらに、本発明の低密度ポリエチレンは、15を超える分子量分布Mw/Mnを有する。
【0013】
Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である。Mw及びMnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の技術において公知の方法に従って決定される。分岐構造は、線形材料のように、分子量に応じて分岐構造が溶出しないので、分岐材料については光散乱を用いて平均分子量が決定される。
【0014】
MWD又はPDI(多分散性指数)とも称される分子量分布は、押出コーティング特性の重要なパラメータである。ネックインについては、押出コーティング装置のギャップにおいて遅い緩和をもつ高分子量材料を要求するが、加工理由については、均一な加工を得るために低分子量部分が存在しなければならない。
【0015】
本発明によると、管型反応器における重合工程の間に、ラジカル開始剤を通常使用されるラジカル開始剤の量の少なくとも3倍の量で添加することにより、成長反応を介して大量の鎖が生じる。その結果、本発明の低密度ポリエチレンの重量平均分子量の増大が見られ、それは、増大したMw/Mn(多分散性指数)から見られることである。低密度ポリエチレンのマトリックスの高分子量部分は、著しい長さの大量の分岐を有するので、全体の系が優れた機械的変形を維持することを可能にする。分岐のレベルは、低密度ポリエチレンの密度と直接関連するので、全体の密度が減少する系については、分岐のレベルが増加する。このような系の機械的変形能力の根拠は、存在する膨大なレベルの絡み合いのためである。高分子量のポリマー鎖は比較的長いことが予期され、また、分岐のレベルが著しいことが予期されるので、我々は、高分子量鎖が、より大きな分岐を提供するであろうと考えることができる。また、これらの分岐はかなり長いので、同一又は異なる鎖の断片(セグメント)間の著しいレベルの絡み合いが存在するであろう。これらの絡み合いは、ポリマー中で増大した耐機械的変形性(mechanical deformation resistance)を生じさせることが公知であり、それらがより長く且つ高密度になるほど、それらは全体の効果を増大させる。このような耐性の理由は、絡み合い点の両側に配置されるポリマー断片の流動性と関連がある。変形力が増加するにつれ、系は、絡み合い点の全域で、鎖滑り(chain slippage)を受け、鎖の絡み合いの解きほぐし(chain disentanglement)、鎖の再絡み合い(chain re-entanglement)、そして最終的に鎖の破断(chain rapture)を受ける。明らかに、絡み合い点が増加し、そして2つの連続した絡み合い点の間のポリマー断片が頑丈になることが予期される(全ての分岐が長く、分子量が大きいがために)ので、最終的な鎖の破断は、一定の滑り、絡み合いの解きほぐし、及び再絡み合いのために遅延し、したがって耐機械的変形性が増大するに至るであろう。
【0016】
著しく高分子量の尾部(tail)及び非常に高いMw/Mnを与えるオートクレーブ型材料(ここでは、攪拌槽型オートクレーブ反応器で製造された低密度ポリエチレン)は、ネックインとドローダウンとの良好なバランスを有する。管型材料(ここでは、管型反応器で製造された低密度ポリエチレン)は、反応器中のプラグフロー(押出流れ)のために、より狭いMw/Mnを一般に有し、ネックインとドローダウンとの良好なバランスを有さないであろう。特に、ネックインは、管型材料で高くなり、また、ウェブ安定性もまた低いであろう。ネックインとドローダウンとのバランス、及び高ライン速度でのウェブ安定性を有するために、管型材料は、通常よりも広いMw/Mnを有さなければならない。本発明によると、これは、驚くことに、管型反応器中での重合において、ポリマーにラジカル移動を導入し且つそこからポリマー鎖の間の分子量のより大きな違いを得るための高ラジカル開始剤供給材料(high radical initiator feed)を有することによって達成された。
【0017】
更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、16を超える分子量分布Mw/Mnを有する。
【0018】
また更なる実施形態において、分子量分布Mw/Mnは17を超える。
【0019】
本発明のまた更なる実施形態は、分子量分布Mw/Mnが18を超える低密度ポリエチレンを与える。
【0020】
本発明のより更なる実施形態は、分子量分布Mw/Mnが19を超える本発明の低密度ポリエチレンを与える。
【0021】
さらに、本発明の低密度ポリエチレンは、5kPaの損失弾性率G”で測定した際に、3000を超える貯蔵弾性率G’(5kPa)を有する。
【0022】
更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、3100を超える貯蔵弾性率G’(5kPa)を有する。
【0023】
また更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、3200を超える貯蔵弾性率G’(5kPa)を有する。
【0024】
本発明のまた更なる実施形態は、3300を超える貯蔵弾性率G’(5kPa)を有する低密度ポリエチレンを与える。
【0025】
更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、3400を超える貯蔵弾性率G’(5kPa)を有する。
【0026】
より更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、3450を超える貯蔵弾性率G’(5kPa)を有する。
【0027】
また更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、3500を超える貯蔵弾性率G’(5kPa)を有する。
【0028】
さらに、本発明の低密度ポリエチレンは、少なくとも15/100k Cのビニリデン含有量を有する。
【0029】
ビニリデンは、第3級炭素ラジカルのβ開裂によって形成される。より多いラジカル開始剤量による分岐の増加に伴い、第3級炭素ラジカルは増加し、β開裂の可能性及びビニリデンの形成もまた増加するであろう。したがって、ビニリデン含有量は、本発明の低密度ポリエチレン中の導入された分岐の量についての間接的な測定であろう。ビニリデン含有量は、100k C当たりで与えられ、100k Cは100000個の炭素原子を意味する。
【0030】
分岐は、ポリマー骨格へのラジカル移動から生じる。これらの移動反応は、鎖間の分子量の差別化に必要であり、伝搬が、長鎖分岐又は2つの鎖が1つに結合されるに至る組み合わせを介した停止をもたらす。長鎖分岐及び高分子量材料の導入は、材料(ここでは、本発明の低密度ポリエチレン)に、より高い溶融強度(低減されたネックイン)に至る溶融物中の絡み合いを発現させる。
【0031】
更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、少なくとも17/100k Cのビニリデン含有量を有する。
【0032】
また更なる実施形態において、ビニリデン含有量は少なくとも19/100k Cである。
【0033】
本発明のまた更なる実施形態は、ビニリデン含有量が少なくとも20/100k Cである低密度ポリエチレンを与える。
【0034】
本発明の更なる実施形態において、ビニリデン含有量が少なくとも22/100k Cである低密度ポリエチレンが与えられる。
【0035】
本発明のまた更なる実施形態は、ビニリデン含有量が少なくとも24/100k Cである低密度ポリエチレンを与える。
【0036】
更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、少なくとも25/100k Cであるビニリデン含有量を有する。
【0037】
本発明の更なる実施形態は、本明細書に記載されるように、低密度ポリエチレンがホモポリマー又はエチレンである低密度ポリエチレンを与える。
【0038】
本発明のまた更なる実施形態は、本明細書に記載されるように、低密度ポリエチレンが、900〜935kg/m
3の間、例えば、910〜935kg/m
3の間にある密度を有する低密度ポリエチレンを与える。
【0039】
本発明の更なる実施形態は、本明細書に記載されるように、低密度ポリエチレンが管型反応器で製造される低密度ポリエチレンを与える。
【0040】
管型反応器で製造される低密度ポリエチレンは、オートクレーブ型材料に存在する著しく高分子量の尾部(tail)なしで、分子量分布を有するであろう。分子量分布の発生の違いは、当業者に予測されると共に検出可能である。
【0041】
更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、ISO 1133(190℃,2.16kg)によるメルトフローレート(MFR)が3.0g/10分よりも大きい。
【0042】
また更なる実施形態において、本発明の低密度ポリエチレンは、ISO 1133(190℃,2.16kg)によるメルトフローレート(MFR)が3g/10分〜20g/10分である。
【0043】
本発明の更なる実施形態において、低密度エチレンポリマーは、40000〜250000g/モル、例えば、47000〜240000g/モルの重量平均分子量Mwを有する。
【0044】
また、本発明は低密度ポリエチレンを含む組成物に関し、当該組成物は押出コーティングに有用であり得る。必要とされる溶融強度を与えるオートクレーブ型LDPEでそれらを改良することによって加工性を達成する場合、押出コーティング用の市販のポリプロピレン、直鎖低密度及び高密度ポリエチレングレードがある。適切な溶融強度をもつ管型LDPEは、同じ目的のために用いることができる。
【0045】
更なる態様において、本発明は新規な低密度ポリエチレンを含む組成物に関し、当該組成物は押出コーティング法に有用である。
【0046】
したがって、本発明は、押出コーティング法に有用な組成物を与え、当該組成物は、本発明の低密度ポリエチレン、及び任意に追加の更なる成分、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのオレフィンポリマー(例えば、エチレンの直鎖ホモポリマー、及び/又はエチレンと3〜20個の炭素原子を有する1種以上のα−オレフィンコモノマーとのコポリマー)を含む。エチレンのホモポリマー及びコポリマー、プロピレンのホモポリマー及びコポリマー、並びに1−ブテンのホモポリマー及びコポリマーもまた、更なる成分の例である。上述のオレフィンポリマーは、遷移金属重合触媒の存在下でオレフィンを重合させることによって製造することができる。更なる成分としては、例えば、国際公開第2005/002744号及び国際公開第03/66698号に開示されているもののような、エチレンと少なくとも2つのα−オレフィンコモノマーとの二峰性コポリマーが挙げられる。
【0047】
さらに、このような更なる成分の例は、例えば、エチレンのホモポリマー及びコポリマー、プロピレンのホモポリマー及びコポリマー、並びに1−ブテンのホモポリマー及びコポリマーなどのオレフィンポリマーであってもよい。
【0048】
さらに、本発明の組成物は、酸化防止剤、安定剤、及び当該技術分野において公知の他の添加剤を更に含んでもよい。
【0049】
押出コーティング法に有用な本発明の組成物は、組成物の全重量を基準として5〜40重量%の量で新規な低密度ポリエチレンを含んでもよい。更なる実施形態において、組成物は、10〜35重量%、或いは20〜35重量%の新規な低密度ポリエチレンを含んでもよい。さらに、新規な低密度ポリエチレンに加えて、組成物は、60〜95重量%(例えば65〜90%、及び例えば65〜80%)の、直鎖エチレンホモポリマー、及びエチレンと3〜20個の炭素原子を有する1種以上のα−オレフィンコモノマーとのコポリマーから選択される少なくとも1つの更なる成分を更に含んでもよい。
【0050】
本発明の更なる実施形態は、
−本発明の低密度ポリエチレンと、
−遷移金属触媒の存在下で調製された少なくとも1種のオレフィンポリマーと
を含む組成物を与え、ここで、オレフィンポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリ−1−ブテンのホモポリマー若しくはコポリマーから選択されてよく、低密度ポリエチレンは、組成物の全重量を基準として5〜40重量%の量で存在してもよい。
【0051】
本発明の更なる実施形態において、本明細書に記載されるように、本発明に従う低密度ポリエチレンを組成物の全重量を基準として5〜40重量%の量で含み、遷移金属触媒の存在下で調製された少なくとも1種のオレフィンポリマーを更に含み、少なくとも1種のオレフィンポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリ−1−ブテンのホモポリマー若しくはコポリマーから選択されてよい組成物が開示される。
【0052】
本発明に従って、高ライン速度及び最小限のリスクのドローレゾナンスをもつ押出コーティングラインで組成物を処理することができる。
【0053】
本発明の組成物は、高ライン速度で異なる基板に押出コーティングすることができ、組成物は、ドローレゾナンスを受けるために低減された傾向を有することができ、コーティングの均一な分布を得ることができる。これは、良好な製品品質を保持しつつ、コーティングラインにおいて高処理能力を可能にするであろう。したがって、本発明による低密度ポリエチレンは、優れた加工性を示すことができる組成物を製造するために用いることができる。他方、組成物中に存在する他の組成成分の有利な特性が保持される。したがって、本発明による低密度ポリエチレンは、良好な光学特性、良好な密閉性、及び良好な耐摩耗性などの様々な有利な特性を有する異なる組成物の加工性を改善するために使用することができる。さらにまた、本発明の組成物は、押出コーティングで使用される場合に、高ライン速度での低ネックイン及び優れた加工性(高ドローダウン及びウェブ安定性を意味する)を有することができる。特に、ライン速度が増加する場合、ネックインが減少し、より高い処理能力で、より良好なコーティング性能をもたらす。基板の未コーティング部分は、切り取り、そして廃棄する必要があるので、低ネックインは、少量の無駄な基板材料に繋がる。コーティングされる基板は、紙、板紙、クラフト紙、金属箔、プラスチック箔及びセロファン箔などの当該技術分野において公知の任意の基板であることができる。基板とコーティングポリマー層との間の接着性を改善するために、当該技術分野において周知の方法を用いてもよく、例えば、溶融ポリマーフィルムのオゾン処理、基板のフレーム処理及びコロナ処理、接着層を用いることができ、また、接着促進剤を使用してもよい。
【0054】
本発明の更なる目的は、1種以上のラジカル開始剤(過酸化物、酸素又はこれらの組み合わせなど)の作用の下、好ましくは低温分解過酸化物(例えば、0.1時間半減期温度が100℃未満である過酸化物)を含む1種以上の過酸化物の作用の下、エチレンモノマーを反応させることで重合を行う、管型反応器における高圧下でのラジカル開始重合による、本発明の低密度ポリエチレンの製造方法であり、ここで、使用されるラジカル開始剤の量、すなわち、使用される活性酸素の量が、少なくとも0.125kg AO/ton PEである。
【0055】
本発明のまた更なる目的は、低温分解過酸化物(例えば、0.1時間半減期温度が100℃未満である過酸化物)を含む過酸化物である1種以上のラジカル開始剤の作用の下、エチレンモノマーを反応させることで重合を行う、管型反応器における高圧下でのラジカル開始重合による、本発明の低密度ポリエチレンの製造方法を含み、ここで、使用されるラジカル開始剤の量、すなわち、使用される活性酸素のポリエチレン1トンあたりの量が、少なくとも0.125kg AO/ton PE、或いは少なくとも0.127kg AO/ton PEである。
【0056】
本発明の更なる目的は、圧力が1000〜3000bar(例えば、1500〜2500bar)である高圧下での管型反応器におけるラジカル開始重合による、本発明の低密度ポリエチレンの製造方法であり、ここで、1種以上のラジカル開始剤(過酸化物、酸素又はこれらの組み合わせなど)の作用の下、エチレンモノマーを反応させることで重合を行い、使用されるラジカル開始剤の量、すなわち、使用される活性酸素の量が、通常使用される量の少なくとも3倍である。我々は、重合中のラジカル開始剤の量を選択することにより、驚くことに、有利な特性を示す低密度ポリエチレンを製造することができた。
【0057】
本発明のまた更なる目的は、1種以上のラジカル開始剤(過酸化物、酸素又はこれらの組み合わせなど)の作用の下、好ましくは低温分解過酸化物(例えば、0.1時間半減期温度が100℃未満である過酸化物)を含む1種以上の過酸化物の作用の下、エチレンモノマーを反応させることで重合を行う、圧力が1000〜3000bar(例えば、1500〜2500bar)である高圧下での管型反応器におけるラジカル開始重合による、本発明の低密度ポリエチレンの製造方法を含み、ここで、使用されるラジカル開始剤の量、すなわち、使用される活性酸素の量が、少なくとも0.125kg AO/ton PEである。
【0058】
本発明のまた更なる目的は、低温分解過酸化物(例えば、0.1時間半減期温度が100℃未満である過酸化物)を含む過酸化物である1種以上のラジカル開始剤の作用の下、エチレンモノマーを反応させることで重合を行う、圧力が1000〜3000bar(例えば、1500〜2500bar)である高圧下での管型反応器におけるラジカル開始重合による、本発明の低密度ポリエチレンの製造方法を含み、ここで、使用されるラジカル開始剤の量、すなわち、使用される活性酸素のポリエチレン1トンあたりの量が、少なくとも0.125kg AO/ton PE、或いは少なくとも0.127kg AO/ton PEである。
【0059】
さらに、本発明は、低密度ポリエチレン中に高ビニリデン含有量を導入するための連続的なエチレン重合法にも関し、通常使用される量の少なくとも3倍であるラジカル開始剤の量(すなわち、使用される活性酸素の量)を用いることによってビニリデンを導入する。さらに、低密度ポリエチレン中に高ビニリデン含有量を導入するための連続的なエチレン重合は、1種以上のラジカル開始剤(過酸化物、酸素又はこれらの組み合わせなど)の作用の下、好ましくは低温分解過酸化物(例えば、0.1時間半減期温度が100℃未満である過酸化物)を含む1種以上の過酸化物の作用の下、エチレンモノマーを反応させることで重合を行うラジカル開始重合である。
【0060】
更なる実施形態は、エチレン重合がラジカル開始重合であり、且つ1種以上のラジカル開始剤(過酸化物、酸素又はこれらの組み合わせなど)の作用の下、好ましくは低温分解過酸化物(例えば、0.1時間半減期温度が100℃未満である過酸化物)を含む1種以上の過酸化物の作用の下、エチレンモノマーを反応させることで重合を行う、低密度ポリエチレン中に高ビニリデン含有量を導入するための連続的なエチレン重合法を開示し、ここで、使用されるラジカル開始剤の量、すなわち、使用される活性酸素の量が、少なくとも0.125kg AO/ton PE、或いは少なくとも0.127kg AO/ton PEである。
【0061】
更なる実施形態は、本明細書に記載されるような低密度ポリエチレンの製造方法、又は本明細書に記載されるような連続的なエチレン重合法を開示し、ここで、0.1時間半減期温度(T
1/2)が各々のラジカル開始剤に与えられる場合に下記のラジカル開始剤:クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が75〜90℃の開始剤A、クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が80〜95℃の開始剤B、クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が105〜125℃の開始剤C、クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が125〜140℃の開始剤D、及びクロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が155〜175℃の開始剤Eからなるラジカル開始剤の混合物が使用される。
【0062】
本発明の他の目的は、押出コーティング法のための方法に関し、この方法は、275℃〜330℃の温度で平坦基板上に、本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物を溶融状態でフラットダイを通して押出すことにより、少なくとも375m/分のライン速度で平坦基板を押出コーティングすることを含む。
【0063】
押出コーティング法において、基板はポリマーでコーティングされる。基板は、典型的に、紙、板紙、クラフト紙又は織布若しくは不織布などの繊維基板;アルミニウム箔などの金属箔;或いは二軸配向ポリプロピレンフィルム、PETフィルム、PAフィルム、セロファンフィルムなどのプラスチックフィルムであることができる。ポリマーは、フラットダイを通して移動基板上に押出される。ポリマー溶融物は、典型的に、高温(典型的に275〜330℃)でダイを出る。ダイを出た後、ポリマー溶融物は、大気と接触する際に酸化される。
【0064】
溶融物がダイから出る時、溶融物は、ダイの下方に位置する2つのローラー(加圧ロール及び冷却ロール)の間のニップに引き下ろされる。溶融フィルムよりも早い速度で移動する基板は、所望の厚さにフィルムを引き出す。2つのロールの間の圧力は、フィルムを基板に押し付ける。さらに、フィルムは、冷却ロールの低温によって冷却及び固化される。押出コーティング法の特徴的なパラメータの1つであるドローダウン比は、基板上のポリマーフィルムの厚さに対するダイギャップの比である。
【0065】
典型的な押出コーティング法において、基板は、高速、典型的に100m/分超過又は300m/分超過で通過する。
【0066】
押出コーティング法の詳細は、例えば、R.A.V.ラフ(R.A.V.Raff)及びK.W.ドーク(K.W.Doak)によるCrystalline Olefin Polymer, Part II, pp.478-484, Interscience Publishers, 1964、又はドミニク・V・ロサート(Dominick V. Rosato)によるPlastics Processing Data Handbook, pp. 273-277, Chapman & Hall, 1997に与えられる。
【0067】
本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物は、例えば、押出コーティングにおける多くの用途で使用してもよい。
【0068】
本発明によると、物品は、基板と、本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物を基にした少なくとも1つの押出コーティング層とを含まなければならない。
【0069】
上記したように、基板は押出コーティングされ、したがって、基板の少なくとも1つの表面がコーティングされる。しかしながら、基板の両側、すなわち、基板の外表面(側)及び内表面(側)が押出コーティングされることは本発明の範囲内である。また、本発明の低密度ポリエチレンを基にした層又は本発明の組成物を基にした層が、基板と直接接していること、又は基板と、本発明の低密度ポリエチレンを基にした層又は本発明の組成物を基にした層との間に接着層などの少なくとも1つの更なる層が挿入されていることも本発明の範囲内である。また、本発明の低密度ポリエチレンを基にした層又は本発明の組成物を基にした層と基板との間の接着を改善するために、本発明の低密度ポリエチレンを基にした層若しくは本発明の組成物を基にした層がオゾン処理若しくはフレーム処理を受けている実施形態、及び/又は基板がコロナ処理を受けている実施形態もそれぞれ含まれる。
【0070】
押出コーティングされた基板に含まれる本発明の低密度ポリエチレンを基にした層又は本発明の組成物を基にした層は、好ましくは5〜1000μmの範囲、より好ましくは10〜100μmの範囲の厚さを有する。特定の厚さは、基板の性質、その予期される後の取扱条件、及び最も重要なことは最終製品の後の使用に応じて選択されるであろう。基板の厚さは、一般に、自由に選択され、コーティング法に影響がない。それは、典型的に1〜1000μm(例えば、5〜300μm)であることができる。
【0071】
押出コーティング法は、通常の押出コーティング技術を用いて好ましくは行われる。それ故、本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物は、押出装置に供給される。本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物の溶融物は、押出機からフラットダイを通ってコーティングされる基板に移る。ダイリップとニップとの間の距離のため、溶融プラスチックは、大気中にて短時間で酸化され、通常、コーティングと基板との間の改善された接着に至る。コーティングされた基板は冷却ロールで冷却され、その後、エッジトリマに移されて終了する。ダイの幅は、使用される押出機の大きさに典型的に依存する。したがって、90mmの押出機では幅が600〜1200mmの範囲内、115mmの押出機では幅が900〜2500mmの範囲内、150mmの押出機では幅が1000〜4000mmの範囲内、200mmの押出機では幅が3000〜5000mmの範囲内であることが適切であり得る。375m/分以下、好ましくは350m/分以下、例えば300〜325m/分のライン速度に達してもよい。本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物の溶融物の温度は、典型的に275〜330℃の範囲である。また、少なくとも2つの押出機をもつコーティングラインを使用し、異なるポリマーを持つ多層コーティングを製造することを可能にすることもできる。また、ダイを出る本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物の溶融物を処理して接着を改善する配置(例えば、オゾン処理、及び基板をコロナ処理又はフレーム処理することによる)を有することもできる。コロナ処理については、例えば、電極として機能する2つの導体要素の間に基板を通し、高電圧(通常、交流電圧(約10000V及び10000Hz))が、噴霧又はコロナ放電が起こり得る電極間に適用される。
【0072】
本発明の更なる実施形態は、275℃〜330℃の温度で平坦基板上に、本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物を溶融状態でフラットダイを通して押出すことにより、少なくとも350m/分のライン速度で平坦基板を押出コーティングすることを含む、押出コーティング法のための方法を開示する。
【0073】
本発明のまた更なる実施形態は、275℃〜330℃の温度で平坦基板上に、本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物を溶融状態でフラットダイを通して押出すことにより、少なくとも325m/分のライン速度で平坦基板を押出コーティングすることを含む、押出コーティング法のための方法を開示する。
【0074】
本発明のまた更なる実施形態は、275℃〜330℃の温度で平坦基板上に、本発明の低密度ポリエチレン又は本発明の組成物を溶融状態でフラットダイを通して押出すことにより、少なくとも300m/分のライン速度で平坦基板を押出コーティングすることを含む、押出コーティング法のための方法を開示する。
【0075】
本発明の低密度ポリエチレンを押出すことを含む、押出コーティング法のための方法を用いることで、驚くことに、押出コーティング法に由来する管型反応器の低密度ポリエチレンを利用すること、及び伝統的に製造された管型LDPEについては通常乏しい良好なネックイン特性を達成することが可能になることが示された。良好なネックインに加えて良好なウェブ安定性(ここで、300m/分のライン速度でエッジウィービング(edge weaving)が見られず、均一なコーティング量が得られる)を達成することも可能である。
【0076】
エッジウィービングは、ウェブのエッジが2mm以上動くライン速度で始まると定義される。
【0077】
更なる実施形態は、本発明の低密度ポリエチレンの少なくとも1つの層、又は本発明の組成物の少なくとも1つの層を含む物品(例えば、押出品)を開示する。
【0078】
本発明の目的は、例えば、押出コーティング、押出ラミネート、インフレーション成形、流延成形、ワイヤ及びケーブル押出成形、射出成形、ブロー成形又はパイプ押出成形における、本発明の低密度ポリエチレンの使用又は本発明の低密度ポリエチレンを含む組成物の使用である。
【0079】
本発明の更なる目的は、押出コーティングにおける、本発明の低密度ポリエチレンの使用又は本発明の低密度ポリエチレンを含む組成物の使用である。
【0080】
<分析法の説明>
分子量、分子量分布(Mn、Mw、MWD)−GPC
屈折率計(RI)、4本のオンライン毛細管ブリッジ粘度計(PL−BV 400−HT)、及び角度15°及び90°のデュアル光散乱検出器(PL−LS 15/90 光散乱検出器)を備えたPL 220(アジレント)GPCを用いた。アジレントのOlexisカラム3本及びOlexisガードカラム1本を固定相として、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノールで安定化)を160℃且つ1mL/分の一定流量での移動相として使用した。1回の分析あたり200μLの試料溶液を注入した。全ての試料は、10mL(160℃で)の安定化TCB(移動相と同じ)中に8.0〜12.0mgのポリマーを、PPについては2.5時間又はPEについては3時間、連続的に軽く揺すりながら160℃で溶解させることによって調製した。160℃でのポリマー溶液の注入濃度は、下記の方法によって決定した。
【0082】
式中:w
25はポリマー重量、V
25は25℃でのTCBの体積である。
【0083】
対応する検出器定数及び検出器間遅延容量を、分子量132900g/mol及び粘度0.4789dl/gのナローPS標準物質(Narrow PS standard)(MWD=1.01)を用いて決定した。使用したPS標準物質のTCB中の対応するdn/dcは、0.053cm
3/gである。計算は、CirrusマルチオフラインSEC−ソフトウェア・バージョン3.2(アジレント)を用いて行った。
【0084】
各々の溶出スライスでのモル質量は、15°の光散乱角を用いて計算した。データ収集、データ処理及び計算は、CirrusマルチSEC−ソフトウェア・バージョン3.2を用いて行った。分子量の計算は、Cirrusのソフトウェアにある「Sample calculation options subfield slice MW data from」のフィールドにある選択肢「use LS 15 angle」を用いて計算した。分子量の決定のために使用されたdn/dcは、RI検出器の検出器定数(detector constant)、試料の濃度c、及び分析した試料の検出器応答(detector response)の領域から計算した。
【0085】
各々の溶出スライスでのこの分子量は、C.ジャクソン(C.Jackson)及びH.G.バース(H.G.Barth)による「Molecular Weight Sensitive Detectors」、Handbook of Size Exclusion Chromatography and related techniques, C.-S. Wu, 2
nd ed、Marcel Dekker、ニューヨーク、2004年、103頁に記載されているような方法にて低角度で計算した。LS検出器又はRI検出器のシグナルがそれぞれ小さくなる低分子領域及び高分子領域に関しては、線形近似を用いて溶出容積を対応分子量に相関させた。試料に応じて、線形近似の領域を調整した。
【0086】
分子量平均(Mz、Mw及びMn)、分子量分布(MWD)、及び多分散性指数PDI=Mw/Mn(ここで、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)によって記載されるその広さは、下記の式を用いて、ISO 16014−4:2003及びASTM D6474−99に従うゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。
【0088】
一定の溶出容積間隔ΔV
iのため、A
i及びM
iは、GPC−LSによって決定されたクロマトグラフピークスライス領域及びポリオレフィン分子量(MW)である。
【0089】
メルトフローレート
メルトフローレートは、ISO 1133に従い、2.16kg(MFR)の負荷の下、190℃にて測定した。メルトフローレートは、ISO 1133に標準化された試験装置が、2.16kgの負荷の下、190℃の温度で10分以内に押出すポリマーのグラム量である。
【0090】
貯蔵弾性率(G’)
動的剪断測定(周波数掃引測定)
動的剪断測定によるポリマー溶融物の特性は、ISO規格6721−1及び6721−10に従う。測定は、25mm平行板配置を備えたアントンパールMCR501応力制御回転レオメータで行った。測定は、窒素雰囲気を用い、且つ線形粘弾性領域内で歪みを設定して圧縮成形板で行った。振動剪断試験は、0.01〜600rad/秒の周波数範囲を適用し、且つ1.3mmのギャップを設定して190℃で行った。
【0091】
動的剪断実験において、正弦変化する剪断歪又は剪断応力(それぞれ歪及び応力制御されたモード)でプローブを均一な変形に曝した。制御された歪実験においては、下記式によって表され得る正弦歪にプローブを曝した。
【0093】
適用される歪が線形粘弾性領域内であるなら、結果として得られる正弦応力応答は、下記式によって与えることができる。
【0095】
ここで、
σ
0及びγ
0はそれぞれ、応力及び歪の大きさであり、
ωは、角周波数であり、
δは、相シフト(適用された歪と応力応答との間の損失角)であり
tは時間である。
【0096】
動的試験結果は、幾つかの異なるレオロジー関数、すなわち、剪断貯蔵弾性率G’、剪断損失弾性率G”、複素剪断弾性率G
*、複素剪断粘度η
*、動的剪断粘度η’、複素剪断粘度の異相成分η”、損失係数tan δによって典型的に表され、それらは、下記で表される。
【0098】
上記のレオロジー関数に加えて、いわゆる弾力性指数EI(x)などの他のレオロジーパラメータも決定することができる。弾力性指数EI(x)は、x kPaの損失弾性率G”に対して決定される貯蔵弾性率G’の値であり、式(9)によって記載することができる。
【0100】
例えば、EI(5kPa)は、5kPaに等しいG”の値に対して決定される貯蔵弾性率G’の値によって定義される。
【0101】
文献:
[1]Rheological characterization of polyethylene fractions, Heino, E.L., Lehtinen, A., Tanner J., Seppala, J., Neste Oy, Porvoo, Finland, Theor. Appl. Rheol., Proc. Int. Congr. Rheol, 11th (1992), 1, 360-362
[2]The influence of molecular structure on some rheological properties of polyethylene, Heino, E.L. Borealis Polymers Oy, Porvoo, Finland, Annual Transactions of the Nordic Rheology Society, 1995.
[3]Definition of terms relating to the non-ultimate mechanical properties of polymers, Pure & Appl. Chem., Vol. 70, No. 3, pp. 701-754, 1998
【0102】
NMR分光法による微細構造の定量化
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて、ポリマー中に存在する不飽和基の含有量を定量化した。
400.15MHzで操作するBruker Advance III 400 NMR分光計を用いて定量的
1H NMRスペクトルを溶液状態で記録した。全ての空気圧について窒素ガスを用い、
13C最適化10mm選択励起プローブヘッドを125℃で用いて、全てのスペクトルの記録を行った。安定剤として約3mgのHostanox O
3(CAS番号32509−66−3)を用い、約200mgの材料を1,2−テトラクロロエタン−d
2(TCE−d
2)に溶解した。30度パルス、10秒の緩和遅延、及び10Hzの試料回転を利用する標準的な単一パルス励起を用いた。4個のダミースキャンを用い、スペクトルあたり合計128個の積算(transient)を得た。不飽和定量化及びビニリデン基の安定性に必要である高分解能のために、この設定を最初に選択した。{he10a,busico05a}全ての化学シフトは、内部に、5.95ppmに残留プロトン化溶媒に起因するシグナルであった。
【0103】
末端ビニル基(R−CH=CH
2)の存在に対応する特有のシグナルが観察され、官能基あたりの報告サイトの数を説明する、それぞれ4.95ppm、4.98ppm、5.00ppm及び5.05ppmでのカップリングした末端Va及びVbプロトンの積分を用いてビニリデン基の量を定量化した:
Nvinyl=(IVa+IVb)/2
【0104】
ビニル基の含有量は、存在する炭素の合計数に対するポリマー中のビニル基の割合として計算した:
Uvinyl=Nvinyl/Ctotal
【0105】
内部のビニリデン基(RR’C=CH
2)の存在に対応する特有のシグナルが観察され、官能基あたりの報告サイトの数を説明する、4.74ppmでの2つのD末端プロトンの積分を用いてビニリデン基の量を定量化した:
Nvinylidene=ID/2
【0106】
ビニリデン基の含有量は、存在する炭素の合計数に対するポリマー中のビニリデン基の割合として計算した:
Uvinylidene=Nvinylidene/Ctotal
【0107】
内部のcis−ビニレン基(E−RCH=CHR’)の存在に対応する特有のシグナルが観察され、官能基あたりの報告サイトの数を説明する、5.39ppmでの2つのCプロトンの積分を用いてcis−ビニレン基の量を定量化した:
Ncis=IC/2
【0108】
cis−ビニレン基の含有量は、存在する炭素の合計数に対するポリマー中のcis−ビニレン基の割合として計算した:
Ucis=Ncis/Ctotal
【0109】
内部のトランス−ビニレン基(Z−RCH=CHR’)の存在に対応する特有のシグナルが観察され、官能基あたりの報告サイトの数を説明する、5.45ppmでの2つのTプロトンの積分を用いてトランス−ビニレン基の量を定量化した:
Ntrans=IT/2
【0110】
トランス−ビニレン基の含有量は、存在する炭素の合計量に対するポリマー中のトランス−ビニレン基の割合として計算した:
Utrans=Ntrans/Ctotal
【0111】
炭素の合計量は、報告核の数及びこの領域中に含まない不飽和に関連するサイトの補償を説明する、2.85〜−1.00の間のバルク脂肪族積分から計算した:
Ctotal=(1/2)*(Ialiphatic+Nvinyl+Nvinylidene+Ncis+Ntrans)
【0112】
不飽和基の合計量は、個々に観察された不飽和基の合計として計算し、したがって、存在する炭素の合計数に対して報告された:
Utotal=Uvinyl+Uvinylidene+Ucis+Utrans
【0113】
不飽和含有量は、不飽和基/100k Cの量として与えられ、100k Cは、100000個の炭素原子を意味する。
【0114】
特定の不飽和基(x)の相対含有量は、不飽和基の合計量に対する、与えられた不飽和基の割合又は百分率として報告する:
[Ux]=Ux/Utotal
【0115】
文献
he10a
He, Y., Qiu, X, and Zhou, Z., Mag. Res. Chem. 2010, 48, 537-542
busico05a
Busico, V. et. al. Macromolecules, 2005, 38(16), 6988-6996
【実施例】
【0116】
3つのゾーンをもつフロントフィード管型反応器でのラジカル重合によって低密度ポリエチレンを製造した。使用した連鎖移動剤は、プロピオンアルデヒドとプロピレンとの混合物であった。反応器中の圧力は220〜285MPa、ピーク温度は250〜315℃の範囲であった。
【0117】
<材料A>
(革新的な例)
使用した開始剤混合物は、下記のラジカル開始剤(0.1時間半減期温度(T
1/2)が各々のラジカル開始剤に与えられた)から構成した。
開始剤A(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が75〜90℃)、開始剤B(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が80〜95℃)、開始剤C(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が105〜125℃)、開始剤D(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が125〜140℃)、及び開始剤E(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が155〜175℃)
【0118】
イソドデカンに溶解した有機過酸化物(A−E)の3種類の混合物(各反応ゾーンにつき1つ)を重合開始剤として調製して使用した。
ゾーン1(開始剤A:50〜150kg/トン混合物、開始剤B:50〜150kg/トン混合物、開始剤C:50〜150kg/トン混合物、開始剤D:30〜100kg/トン混合物、開始剤E:20〜100kg/トン混合物)
ゾーン2(開始剤A:0〜50kg/トン混合物、開始剤B:0〜50kg/トン混合物、開始剤C:80〜150kg/トン混合物、開始剤D:80〜150kg/トン混合物、開始剤E:80〜150kg/トン混合物)
ゾーン3(開始剤A:0〜50kg/トン混合物、開始剤B:0〜50kg/トン混合物、開始剤C:0〜100kg/トン混合物、開始剤D:0〜100kg/トン混合物、開始剤E:0〜100kg/トン混合物)
【0119】
約27000kg/時間のエチレンを反応器の前部に供給した。有機過酸化物から加えられた活性酸素は、約0.13kg活性酸素/トンポリエチレンであった。重合は、約9300kgポリマー/時間を生成させた。
【0120】
形成されるポリマーが、ISO 1133(190℃、2.16kg)に従って約4g/10分のメルトフローレートを有する量で連鎖移動剤を加えた。生成したポリマーの密度は、ISO 1183に従って約918kg/m
3であった。
【0121】
<材料B>
(比較例)
使用したラジカル開始剤混合物は、下記のラジカル開始剤(0.1時間半減期温度(T
1/2)が各々のラジカル開始剤に与えられた)から構成した。
開始剤A(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が75〜90℃)、開始剤B(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が80〜95℃)、開始剤C(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が105〜125℃)、開始剤D(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が125〜140℃)、及び開始剤E(クロロベンゼン中で0.1時間T
1/2が155〜175℃)
【0122】
イソドデカンに溶解した有機過酸化物の3種類の混合物(各反応ゾーンにつき1つ)をラジカル開始剤として使用した。
ゾーン1(開始剤A:20〜35kg/トン混合物、開始剤B:15〜25kg/トン混合物、開始剤C:20〜35kg/トン混合物、開始剤D:15〜35kg/トン混合物、開始剤E:10〜40kg/トン混合物)
ゾーン2(開始剤A:15〜35kg/トン混合物、開始剤B:15〜35kg/トン混合物、開始剤C:15〜35kg/トン混合物、開始剤D:15〜35kg/トン混合物、開始剤E:20〜40kg/トン混合物)
ゾーン3(開始剤A:0〜20kg/トン混合物、開始剤B:5〜20kg/トン混合物、開始剤C:0〜20kg/トン混合物、開始剤D:10〜35kg/トン混合物、開始剤E:10〜40kg/トン混合物)
【0123】
約27000kg/時間のエチレンを反応器の前部に供給した。重合は、約7700kgポリマー/時間を生成させた。加えられた活性酸素は、約0.04kg活性酸素/トンポリエチレンであった。
【0124】
形成されるポリマーが、ISO 1133(190℃、2.16kg)に従って約5g/10分のメルトフローレートを有する量で連鎖移動剤を加えた。生成したポリマーの密度は、ISO 1183に従って約920kg/m
3であった。
【0125】
本発明の低密度ポリエチレン(すなわち、材料A)の損失弾性率G”=5kPaでの貯蔵弾性率G’は、標準的な管型材料(例えば、従来の技法で製造された材料B)よりも一般的に高い。実施例(表1参照)から、ネックインが、増大したG’(5kPa)によって低下することも明らかである。
【0126】
<押出コーティングの実施例>
(試験)
試験では、ポリマー組成物(すなわち、材料A及びB)のメルトフロー挙動をテストした。
押出コーティングの運転をBeliot共押出コーティングラインで行った。それは、Peter CloerenのEBRダイ及び5層フィードブロックを有していた。ラインダイ開口部の幅は580〜1000mm、基板の最大幅は800mm、及びライン速度は100m/分で保持した。
ポリマー組成物(すなわち、材料A及びB)の押出コーティング挙動を分析した。
【0127】
上記のコーティングラインにおいて、70g/m
2の坪量を有するUGクラフト紙を、10g/m
2の坪量を有する、本発明によるポリマー組成物の層でコーティングした。ポリマー組成物の溶融物(すなわち、材料A又はBの溶融物)の温度は、320℃に設定した。
【0128】
ウェブ不安定性が起こるまでライン速度を段階的に増加させることによって材料A及びBのドローダウン試験を行った。コーティング重量(基板上のポリマーの量(g/m
2で))は、10g/m
2に維持した。エッジウィービングの量及びコーティング重量の変化を通じてウェブ不安定性を視覚的にモニターした。サンプルは、100m/分で始め、ウェブ不安定性が起こるまで、100m/分の間隔でコーティングされたウェブに印をつけた。サンプルをリールから取り出し、ネックインを後で測定した。ネックインは、ダイ開口部の幅と基板上のコーティングの幅との差として定義される。
【0129】
加工性は、供給された活性酸素の増加に伴って改善される。より多くの活性酸素を供給することで、管型反応器で製造される材料は、驚くことに、オートクレーブ型反応器で製造される伝統的な押出コーティング材料から分かっているドローダウンとネックインとのバランスに類似するドローダウンとネックインとのバランスを有する。
【0130】
【表1】