(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導波路が、曲率半径が少なくとも約30μmである非直線形状を有し、かつ、前記導波路の長さが、前記レーザー共振器の長さの約1.5倍以上である、請求項13に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの心臓部は、磁気ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)であり、HDDは、通常、回転する磁気ディスクと、読み取りおよび書き込みヘッドを有するスライダと、回転するディスクの上方のサスペンションアームと、サスペンションアームを揺動させて、読み取りおよび/または書き込みヘッドを、回転するディスク上の選択された円形トラックの上方に位置決めするアクチュエータアームと、を含む。ディスクが回転していない場合には、サスペンションアームがスライダを付勢してディスクの表面と接触させるが、ディスクが回転すると、スライダの空気軸受面(ABS:Air Bearing Surface)に隣接する回転するディスクによって空気が巻き上げられ、その結果、スライダは、回転するディスクの表面からわずかな距離をおいて空気軸受上に載置されることになる。スライダが空気軸受上に載置されているときに、書き込みおよび読み取りヘッドを用いて、回転するディスクに対して磁気インプレッションを書き込むとともに、回転するディスクから磁気信号磁界を読み取る。読み取りおよび書き込みヘッドは、書き込みおよび読み取り機能を実施するコンピュータプログラムに従って動作する処理回路に接続される。
【0003】
情報時代の情報処理量は、急速に増加している。特に、HDDは、その限られた面積および容積内により多くの情報を記憶できることが求められている。この要望に対する技術的な手法は、HDDの記録密度を高めることによって、容量を増加させることである。記録密度をさらに高めるためには、記録ビットのさらなる小型化が効果的であるが、これには通常、ますます小さな構成要素の設計が必要になってくる。
【0004】
構成要素を小型化する1つの試みが、サーマルアシスト型磁気ヘッドの使用に結びつき、これらのヘッドを使用する記録方式が、少なくとも1Tb/in
2の高密度磁気記録の実施に関して(非特許文献1)に提案されている。従来の磁気記録装置では、記録密度が1Tb/in
2を上回ると、記録された情報が、熱振動によって消去されることが問題になっている。これを回避するために、磁気記録媒体の保磁力が増加される。しかしながら、書き込みヘッドによって生成可能な磁界の大きさにしか増加させることができないので、保磁力が高すぎると、媒体に記録ビットを形成することができない。サーマルアシスト型記録装置の解決策として、記録する瞬間に、媒体を光によって加熱して、保磁力を低下させる。このように、保磁力が高い媒体に記録することが可能であり、1Tb/in
2を超える記録密度を実現してもよい。
【0005】
図1に示すように、上述のサーマルアシスト型の記録方式を説明し易くするために、サーマルアシスト型磁気ヘッド100の一部を、従来技術に従って示す。このサーマルアシスト型磁気ヘッドでは、磁界を印加するための主磁極102付近の領域が加熱されなければならない。したがって、導波路104が、例えば、主磁極102の側に沿って形成され、半導体レーザー光源106から到達する半導体レーザー光が、主磁極102の前端部付近の領域へと誘導される。
【0006】
半導体レーザー光源106を装着するための、様々な方法が提案されている。しかしながら、レーザー光源106をスライダ108の上方に直接装着し、スライダ108に形成された導波路104に光を導入し、ABSの近傍に形成されたトランスデューサのような、近接場光発生素子110に光を誘導する方法は、少ない数の構成要素、簡単な構成および低コストで実施が容易であるため、最も有望であるように思える。
【0007】
この方法によるサーマルアシスト型磁気記録の動作原理は、記録時に、レーザー光源106が光を発光し、レーザー光が、導波路104へ導入されるということである。導波路104に導入された光は、磁気記録媒体112の局所的領域を加熱する近接場光発生素子110によって、磁気記録媒体112の表面近傍の微小領域だけを加熱する近接場光に変換される。この加熱によってこの媒体112の局所的領域の温度を媒体112の磁気記録膜114のキュリー温度付近まで昇温させ、同時に、記録される情報に応じて極性を変調するための記録磁界を印加することによって、局所的領域の磁化方向が、記録磁界の方向に整列される。すなわち、情報を記録することができる。このサーマルアシスト型磁気記録方式で記録された情報を、確実に長期にわたって安定させるためには、室温における媒体112の異方性磁界は、十分に大きくなければならない。記録磁界が、加熱されない領域に印加されたとしても、その領域の磁化は反転せず、局所的に加熱された領域の磁化だけが反転される。したがって、この加熱された領域の大きさを極めて小さい領域に限定することにより、超高密度の記録が可能になる。近接場光発生素子110は、極めて小さい領域を加熱するための熱源として使用される。
【0008】
近接場光発生素子110から照射された近接場光の大きさは、主として近接場光発生素子110の形状および大きさ、ならびに媒体112およびヘッド100の間の距離によって、ただ1つに決定される。実際には、記録されている領域の大きさは、近接場光による加熱と、媒体112内の散熱との間のバランスによって決定される温度分布によって変わる。具体的には、意図した領域にだけ記録するためには、近接場光発生素子110による加熱強度、すなわち、近接場光発生素子110によって照射されるレーザー光の強度を、正確に制御しなければならない。
【0009】
例えば、(特許文献1)に記載された方法は、この強度を正確に制御する方法を提案している。この従来の例では、光の照射による近接場光発生素子110の温度上昇、または近接場光発生素子110付近に設けられた温度検出素子の温度上昇をモニタリングすることによって、近接場光発生素子110に導入された光のエネルギーがモニタリングされ、この情報に基づいて、レーザー光源106の出力が変えられ駆動される。具体的には、様々な変動(温度変動、時間経過による変動)の影響は、光源106に対するフィードバック制御を介して自動パワー制御によって修正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明は、本発明の一般的原理を示す目的で行うものであって、本出願で請求する発明概念を限定することを意図するものではない。さらに、本明細書で説明する特定の特徴は、様々な可能な組み合わせおよび置き換えの各々に表された他の特徴と組み合わせて使用することが可能である。
【0022】
本明細書内に特に別段の定義がなければ、すべての用語は、当業者の理解している意味および/または辞書、条約などに定義された意味をはじめとして、本明細書に暗示された意味を含め、それらの最大限広範な解釈を付与されることになる。
【0023】
本明細書および添付の請求項で用いられる、単数形「1つの(a)(an)」および「前記(the)」は、別段の指定がなければ複数の指示対象を含むことにも留意しなければならない。
【0024】
本明細書で用いられる用語「約(about)」は、記述された数値を包含する任意の適正な数値範囲を指す。例えば、「約X」は、いくつかの手法においては、X±Xの10%の数値を指してもよい。
【0025】
以下の説明は、ディスクをベースにした記憶システムのいくつかの好適な実施形態および/または関連するシステムおよび方法を開示するとともに、記憶システムの動作および/または構成部品も開示する。
【0026】
様々な実施形態に従って本明細書に記載されたサーマルアシスト型磁気ヘッドおよびその使用方法は、従来のサーマルアシスト型記録ヘッドおよびその使用方法における問題として認められている、レーザー光源またはレーザー装置のモードホッピングによって引き起こされたパワー変動を、抑制することを示している。
【0027】
1つの全般的な実施形態では、装置は、レーザー光を発生するように構成されたレーザー装置であって、レーザー光放射に対して平行な方向に長さ(L1)を有するレーザー共振器を備えるレーザー装置と、スライダであって、スライダの媒体に対向する表面に対して垂直な方向に長さ(L2)を有するスライダと、を備える。当該スライダが、磁気媒体にデータを書き込むように構成された主磁極と、近接場光発生素子であって、磁気媒体の局所的領域を加熱することによって主磁極が磁気媒体にデータを書き込むのをアシストするために、レーザー光が近接場光発生素子に供給されると、近接場光を発生するように構成された近接場光発生素子と、近接場光発生素子にレーザー光を誘導するために構成された導波路であって、コアを取り囲むクラッドを含む導波路と、を含み、ここで、レーザー共振器の縦モード(longitudinal mode)の間隔が、導波路の光学干渉周期の整数乗数倍の約5%の範囲内で等しい。
【0028】
別の全般的な実施形態では、サーマルアシスト型磁気ヘッドを形成する方法は、スライダであって、スライダの媒体に対向する表面に対して垂直な方向に長さ(L2)を有するスライダを形成するステップと、レーザー光を発生するように構成されたレーザー装置であって、レーザー光放射に対して平行な方向に長さ(L1)を有するレーザー共振器を含むレーザー装置をスライダに結合するステップと、を含む方法であって、スライダが、磁気媒体にデータを書き込むように構成された主磁極と、近接場光発生素子であって、磁気媒体の局所的領域を加熱することによって主磁極が磁気媒体にデータを書き込むのをアシストするために、レーザー光が近接場光発生素子に供給されると、近接場光を発生するように構成された近接場光発生素子と、近接場光発生素子にレーザー光を誘導するために構成された導波路であって、コアを取り囲むクラッドを含む導波路と、を含み、かつ、レーザー共振器の縦モードの間隔が、導波路の光学干渉周期の整数乗数倍の約5%の範囲内で等しい方法である。
【0029】
1つの実施形態によれば、サーマルアシスト型磁気記録ヘッドは、少なくとも磁界発生素子(主磁極)が設けられた磁気記録スライダと、磁気近接場光発生素子の付近に設けられる、光学ヒーター(素子)に光を誘導するための光導波路と、光を発生させ、光導波路に光を導入するためのレーザー装置と、光導波路によって伝搬された光の光学干渉波長周期の整数倍に一致する、レーザー装置の素子の発振する縦モードの波長間隔と、を少なくとも備える。
【0030】
レーザー装置は、縦モードにおいて存在する波長以外の波長で発振しない。したがって、レーザー装置のモードホッピングによって引き起こされた波長のホッピングは、常に、縦モードの間隔の整数倍になり、光導波路によって伝搬された光の光学干渉の波長周期の整数倍に一致する。例えば、たとえモードホッピングが生じて、波長変動が発生したとしても、実質的に、光の干渉状態は、光学干渉の波長周期の様々な整数倍になるが、同一の状態が維持される。その結果、光パワーの変動は発生しない。
【0031】
実際には、およその整数倍で記載しているように、製造上の誤差、寸法公差などのために整数倍を完全に調節することは不可能である。例えば、およそn±0.05倍(n=整数とする)に調節することによって、変動するパワーが整数倍に調節されない場合に、およそ5%以下のプラスマイナスがあっても、満足できる低いレベルに十分抑制されるので、事実上問題は存在せず、サーマルアシスト型磁気ヘッドの性能が大幅に高められる。光学ヒーター(素子)は、具体的には、トランスデューサのような、近接場光発生素子を含む。様々な近接場光発生素子が使用可能であり、本明細書に記載された実施形態は、本明細書に記載されたこれらの特定の構造に限定されないが、当技術分野で公知の任意の考えられ得る近接場光発生素子を含んでもよい。本明細書に記載された実施形態を用いて達成可能な性能の向上は、使用される近接場光発生素子の種類によって左右されない。それに加えて、光導波路は、近接場光発生素子の近傍に光を誘導するための機能的構造を特定する複合光学素子であってもよいし、導波路に加えて、集光機能機構(light-focusing functional mechanism)、極性化調節機能機構(polarization control functional mechanism)などのような、機能機構を含んでもよい。空間導波路光学系が構造の一部に含まれている場合でも、性能の向上は依然として達成可能であり、実質的に同一である。
【0032】
さらに、1つの手法では、レーザー装置の共振器の光の波長がL
LDであり、導波路の光学波長がL
WGである場合、L
WGは、およそL
LDの整数倍、例えばL
WG=n*L
LDになる。また、レーザーの発振波長がλであるときに、光学波長がL
LDであるレーザー共振器の縦モードの間隔は、λ
2/(2*L
LD)と算出してもよい。さらに、光学波長がL
WGである導波路の干渉周期は、λ
2/(2*L
WG)になってもよい。
【0033】
したがって、L
WGを、L
LDのほぼ整数倍に設定することによって、縦モードの間隔が、導波路の干渉周期の整数倍になるので、上記と実質的に同一な条件が満たされ、得られた効果は、前述されたものと実質的に同一である。光路長は、通常屈折率と長さとの積によって表わされる。導波路では、導波路のコアからクラッドまでの漏出を加味する有効屈折率が使用される。
【0034】
別の実施形態では、導波路の光学波長がL
WGである場合、レーザー装置の構造は、光波長がL
SUB、すなわちL
WGの整数分の1、例えばL
SUB=1/m*L
WGである補助共振構造を備えてもよい。この種のレーザー共振器よりも短い副共振器を有する構造を使用することによって、L
LDによって決定される通常のレーザー装置の縦モードの一部が抑制される。L
SUBによって決定された副共振器の光路長よりも長い周期が、レーザー装置の縦モードになる。具体的には、比較的長い共振器を有するレーザー装置が使用される場合であっても、幅の広い縦モードの間隔を維持することが可能になる。その結果、縦モードの間隔を、導波路の干渉周期の整数倍に維持し易くなる。
【0035】
さらなる手法では、スライダの導波路の有効屈折率(伝搬定数)をn
WG、導波路の長さをh
WG、レーザーの導波路の有効屈折率(伝搬指数)をn
LD、および共振器の長さをh
LDにしておくことで、関係n
WG*h
WG=n
LD*h
LDが満たされる。さらに、サーマルアシスト型磁気ヘッドにおいてこの関係を維持するために、構造、長さ、幅、材料などを選択することができる。
【0036】
スライダの導波路の有効長さは、別の手法では、レーザーの共振器の長さの1.5倍の長さであってもよい。
【0037】
約3.5である近赤外半導体レーザー共振器の屈折率と対比して、スライダの導波路の等価屈折率は、大きい場合には、2.3であってもよいが、平均して約2.0であってもよい。したがって、レーザー装置の共振器の光路長およびスライダの導波路の光路長を一致させるために、導波路の長さは、レーザー共振器の長さの少なくとも1.5倍であってもよい。ただし通常は、磁気ヘッドのスライダの厚さは、230μmまたは180μmである。一般的な前端部発光レーザー装置の共振器の長さは、少なくとも250μmから300μmまでの間であり、スライダの厚さよりも長い。したがって、導波路の光路長を長くするために、スライダの導波路の導波路長は、スライダの厚さよりも長くなるように作られる。
【0038】
従来のサーマルアシスト型磁気ヘッドに基づいた従来のサーマルアシスト技術の、上記問題を解決する際に役立つ原理を、以下に詳細に説明する。レーザー装置の発振モード(縦モード)は、レーザー装置の共振器の光路長によって決まる。縦モードの波長は、共振器の光路長の整数分の1になる。したがって、波長間隔を、レーザー装置の共振器の長さを選択することにより制御してもよい。さらに、スライダ内の光学干渉は、波長変動に周期的に生じ、この周期は、スライダの導波路の有効光路長によって決定される。このため、レーザー装置の共振器の長さ、およびスライダの導波路の光路長を選択することによって、レーザー装置の発振モードの間隔およびスライダの導波路内の光学干渉の周期を一致させてもよい。レーザー装置の縦モードが、(例えば、モードホッピングに起因して)変化した場合であっても、周期的な光学干渉の干渉条件が常に同じ条件で維持されるので、
図3Aおよび
図8A〜
図8Bに示されるように、アシストされたパワーの変動は有効に抑制される。
【0039】
サーマルアシスト型記録(TAR:thermally−assisted recording)では、導波路を通して空気軸受面(ABS)または媒体に対向する表面の付近まで、レーザー光を誘導する、
図1に示される光送達システムにともなう問題の1つは、誘導された光の強度、すなわちアシスト強度の安定化である。レーザー装置と導波路との様々な結合方式、様々な導波路の形状、導波路と近接場光発生素子との様々な結合方式、および様々なレーザー装置の搭載方式を有する種々の方法が、光送達システム用に提案されている。
【0040】
任意の光送達システムには、共通の問題があり、それらの問題には、レーザー光が導波路に結合して、光が、媒体に対向する側の平面の付近に位置する導波路の終端部に誘導される際に、近接場光発生素子を使用しないサーマルアシスト方式が含まれる。導波路の終端部の光の強度は、レーザー装置自体のパワー変動によって左右されることに加えて、種々の光学干渉の影響によって左右される。レーザー装置のパワー変動は、温度変動、駆動電流変動などのような動作環境の変化に加えて、主に、レーザー装置から発せられた光が導波路によって反射されることで生じた戻り光の影響により、レーザー装置の発振モードが不安定になることによって起こる。温度などの動作環境の変化は、フィードバック制御によって、実際に発光された光の強度および周囲温度をモニタリングすることにより抑制することができる。レーザー装置の発振モードの変動は、折りにふれて生じるので、予測と制御は非常に困難である。しかしながら、発振モードに変動が生じた場合であっても、レーザー強度がほとんど変動しないように、レーザー装置を実施することができる。
【0041】
なお、サーマルアシスト型磁気ヘッドの発振モードを変えることによって、発振モードの変動すなわち発振波長の変動によって、実効効率を変化させるが、この変動は、導波路などの光学素子の波長依存性によって引き起こされる。その結果、アシスト強度に大きな変動が生じる。レーザー装置の発振波長は、レーザー装置の共振器の有効長(光路長)の整数分の1の波長(縦モード)に制限される。具体的には、レーザー装置によって発振され得る波長は、離散的であり、実質的に、波長の変動は不連続的に発生する。この不連続的な変化は、
図2に示されるように、従来のサーマルアシスト型磁気ヘッドシステムのアシスト強度(パワー)に出現する。高密度記録では、アシスト強度の変動は、記録マーク幅の変動、および過渡的な変動として、具体的には、磁気記録システムでは望ましくないジッタとして出現するので、これらのアシスト強度の変動を抑制しなければならない。
【0042】
しかしながら、導波路の波長依存性の主要構成要素は、波長変動に対して周期的である。したがって、1つの実施形態では、離散的な縦モードの間隔を、波長変動の周期に一致させる。このため、
図8Bに示されるように、レーザー装置の発振状態が変動し、離散的な縦モードの任意の波長へと移行する場合であっても、この移行は、周期的な波長変動の波に関して同一の相状態、すなわち同一の干渉条件への移行であり、パワー変動は発生しない。
図8Aに示されるように、従来の例では、光パワー、すなわち導波路の出力効率(スループット)は、縦モード移行が原因で、導波路終端部で大幅に変動する。換言すれば、モードホッピングによって引き起こされた導波路終端部でのパワー変動は、本明細書に記載された実施形態を用いることにより、従来の技術と比較して実質的に除去することができる。
【0043】
導波路の干渉周期およびレーザー装置の縦モードの間隔を、いくつかの実施形態では、以下のように2つの光路長を一致させることにより実施することができる。
【0044】
第1に、導波路の光学干渉の周期(p)は、次のように算出される。p=λ
2/(2n
WG*h
WG)、ここでは、導波路の光路長がh
WG、導波路の平均有効屈折率(伝搬定数)がn
WGである。次に、レーザー装置の縦モードの間隔Δは、次のように算出することができる。Δ=λ
2/(2n
C*h
C)、ここでは、共振器の長さがh
C、レーザー共振器の平均有効屈折率(伝搬定数)がn
Cである。
【0045】
具体的には、p=Δである場合には、周期を一致させるために、n
WG*h
WG=n
C*h
Cが満たされる。n
WG*h
WGは、スライダの導波路の光路長である。n
C*h
Cは、レーザー共振器の光路長である。したがって、スライダの導波路の有効光路長と、レーザー共振器の有効光路長とが一致し得ることが明らかである。干渉周期(p)を一致させる代わりに、縦モードの間隔を、干渉周期の整数倍kに設定してもよい。すなわち、k・p=Δと同一の結果が得られる。n
WG・h
WG=k・n
C・h
Cのように、導波路の光路長およびレーザー共振器の光路長を選択してもよい。
【0046】
第2に、上記の条件を実現する可能性について考察する。スライダの導波路の屈折率が約2.0で、スライダの厚さが230μmである場合には、光路長は、460μmである。レーザーの中心波長が830nmである場合には、干渉の波長周期は、0.75nmになる。近赤外レーザーの代表的な材料であるGaAaの屈折率は、およそ3.5であるので、レーザーの共振器の長さが、460μm/3.5=130μmである場合には、光路長を一致させる条件が満たされる。
【0047】
具体的には、縦モードの間隔は、約0.75nmであってもよい。共振器の長さ130μmは、通常のレーザー装置よりも幾分短いが、達成可能な範囲内である。レーザーの共振器を短くする代わりに、別の有効な方法は、1つの実施形態では、スライダの導波路を折り曲げることにより有効導波路長を長くし、および/または、ほぼ130μmに相当する第2のファブリ−ペロー干渉構造をレーザー装置に設け、レーザー装置の縦モードをサンプリングすることである。例えば、レーザー装置の共振器の長さを260μmに設定し、中心位置付近で約100nmの幅を有する構造的な変更を加えることによって、奇モードが効果的に抑制され、縦モードの間隔を2倍にすることができる。
【0048】
具体的には、260μmの共振器の長さを有するレーザー装置を使用して、130μmのレーザーと同等の縦モードの間隔を達成してもよいし、導波路の干渉周期を一致させてもよい。本明細書に記載された効果を得るためには、導波路の干渉周期および縦モードの間隔は、できるだけ一致するのが好ましい。差異が約5%の範囲内、またはより好ましくは約2%の範囲内に保たれるのであれば、効果は、ほぼ同等である。この理由は、縦モードの不連続的なホップを、約2%以下の範囲内の差異に抑制することにより、ホップが通常、約1nmから約2nm(縦モードの間隔の2倍〜3倍)の範囲内に制限されるので、最大変動が、約5%に保たれるからである。
【0049】
図3Bは、本明細書に記載されるような、1つの実施形態に従って形成された構造の効果の一例を、従来の構造と比較して示す。これは、レーザー装置の駆動電流を変化させたときの、導波路の終端部における光パワーを示す。従来の例では、パワーが駆動電流を変化させると、レーザー装置の波長が変化して、干渉条件が変化するので、導波路の実効効率が変化して、駆動電流と出力パワーとの間の関係は、直線状ではない。本明細書に記載されるような、様々な実施形態による構造を用いると、波長が変化した場合でも、干渉条件が維持され、導波路の効率が変化しないので、出力パワーは駆動電流に対して完全に直線状になる。これは、本明細書に記載されるような、様々な実施形態による構造を用いるフィードバック制御によって、アシストパワーが、正確に制御可能であることを示す。
【0050】
図10は、レーザー共振器および導波路の光路長比を変えた場合の、導波路の終端部における光パワー変動の最大値を要約したものである。光路長比がほぼ整数倍であるときに、パワー変動を低減する効果が示されている。
【0051】
ここで
図4を参照する。1つの実施形態による読み取り/書き込みヘッドの概略図が示されている。レーザーダイオード、または他の何らかの好適なレーザー光源などの、レーザー装置31が、スライダ30に設けられ、および/またはスライダ30に結合されている。スライダ30は、スライダ30の媒体に対向する側の付近に位置する近接場光発生素子32を、スライダ30の媒体に対向する側と反対の表面で、光発生および光導入素子として利用する。レーザー装置31は、約830nmの波長を有する光を発生させることができる。AlTiCまたは他の何らかの好適な材料から構成される、特定の構成要素をスライダ30の基板301上に形成してもよい。
【0052】
レーザー装置31を用いて、レーザー光を発生させてもよい。また、レーザー装置31は、レーザーチップ311と、レーザー共振器(ストライプ)312と、長さ(L1)を有するサブマウント313と、を備えてもよい。レーザー装置31から発光された光は、導波路33を通過して、磁気記録媒体11に加熱を行う近接場光発生素子32を照射する。導波路33は、幅が約500nm、高さが約300nm、長さが(L2)、および磁気媒体11に約830nmの波長を有する光を導入するための、屈折率が約2.1であるTa
2O
5(または当技術分野で公知の他の何らかの好適な材料)からなるコア331を取り囲むカバーとして、屈折率が約1.6であるAl
2O
3(または当技術分野で公知の他の何らかの好適な材料)を含むクラッド332から組み立てられてもよい。さらに、アルミナまたは他の何らかの好適な材料などの充填材302の内部に、導波路33を形成してもよい。
【0053】
磁気書き込みヘッド35を用いて、磁気媒体11にデータを書き込む一方で、パワーセンサ34を用いて、レーザー光のパワーを測定してもよい。書き込みヘッド35は、主磁極351と、コイル352と、ヨーク353と、を備える。
【0054】
この導波路33では、誘導された光のモード直径は、導波路のコアとほぼ同じ大きさである。具体的には、誘導された光のエネルギーは、実質的にコア内部に閉じ込められる。この実施形態の近接場光発生素子32は、二等辺三角錐形状(1つの実施形態による
図5にさらに詳細に示される)を有するとともに、ベース幅(W)が約100nm、斜辺(L)が約130nm、および高さ(H)が約200nmである金(Au)などの、当技術分野で公知の任意の好適な材料から構成されてもよい。二等辺三角錐の頂点部分を、曲率半径が約10nmである円弧状に処理してもよい。そうすると、発生した近接場光のスポット径は、約25nmになる。
【0055】
再び
図10および
図11を参照する。詳細は示されていないが、レーザー装置31からの光を導波路33に入射させる際の結合効率を増加させるためのスポットサイズ変換構造を、レーザー装置31の真下に形成してもよい。導波路33に結合している光を照射することによって、近接場光発生素子32は、プラズモン共鳴原理に従って、媒体に対向する側で(例えば、記録媒体11の表面で)近接場光を発光し、媒体11の表面の温度が上昇する。この実施形態による構造から得られた結果によれば、近接場光発生素子32に照射している光のパワーが約5mWであるときに、媒体11の表面の磁気膜の局所的な温度は、約400℃まで上昇する。
【0056】
この構造では、スライダの厚さ(L2)は、約230μmであってもよい。また、スライダ30の導波路33の屈折率は、約2.0であってもよい。したがって、導波路33の光路長は約460μmであってもよい。導波路33の両端部で反射された光は、導波路33内部に閉じ込められながら、導波路33の端部間の、約460μmの光路長によって分離された空間で反射を繰り返す。これをファブリ−ペロー干渉計と見なしてもよい。ファブリ−ペロー干渉計(導波路)の干渉周期またはフリースペクトラム範囲は、830nmの波長を有するレーザー光では0.75nmになる。近赤外レーザーの代表的な材料であるGaAsの屈折率は、約3.5である。したがって、この実施形態では、レーザー装置31の共振器の長さは、460/3.5=約130μmである。ゆえに、導波路33の光路長は、レーザー共振器の光路長と一致する。換言すれば、レーザー装置31の縦モードの間隔は、導波路33の干渉周期と同じ0.75nmであってもよい。
【0057】
レーザー装置31の共振器を短くする代わりに、別の実施形態では、約130μmに相当する第2のファブリ−ペロー干渉構造をレーザー装置31に設けてもよい。第2のファブリ−ペロー干渉構造は、レーザー装置31の縦モードをサンプリングする。例えば、レーザー装置31の共振器の長さを約260μmに設定し、その中心付近の位置で約100nmの幅を有する構造的な変更を加えることによって、奇モードが効果的に抑制され、縦モードの間隔を2倍にすることができる。具体的には、約260μmの共振器の長さを有するレーザー装置31を使用して、130μmのレーザー装置と同等の縦モードの間隔を実現してもよいし、導波路33の干渉周期を一致させてもよい。この実施形態では、導波路33の干渉周期および縦モードの間隔は、できるだけ一致してもよい。しかしながら、約5%の範囲内の差異、またはより好ましくは約2%の範囲内の差異に保たれるのであれば、ほぼ同等の効果が得られる。この理由は、縦モードの不連続的なホップを5%の範囲内の差異に抑制することにより、導波路の長さを制御しない場合には、ホップが通常、約1nmから約2nm(縦モードの間隔の2倍〜3倍)に制限されるので、最大変化が、10%程度に保たれるからである。干渉によって引き起こされる発光パワー変動は、最大約30%である。したがって、この実施形態では、変動を、約3%以下に抑制することできるので、実際には問題は生じない。
【0058】
1つの実施形態例では、厚さが約230μmであるスライダ30が使用されたが、別の実施形態例では、それよりも薄いスライダが使用されている。その理由は、ヘッドが製造し易くなり、コストが低減され、サーマルアシスト型磁気記録用光源を装着する空間が確保されるからである。
【0059】
ここで、
図6A−
図6Bを参照する。厚さが180μmである、スライダ30の導波路33の一例が示されている。
図6Aの例では、スライダ30の導波路33を折り曲げることによりスライダ30の導波路33の有効長さを長くするが、約500μm以上に長くしてもよい。前述のように、導波路33の長さは、レーザー共振器312の長さの少なくとも1.5倍であることが望ましい。その結果、共振器の長さが約300μm以下であるレーザー装置を使用してもよい。
【0060】
図6Bでは、導波路33の長さは、約650μm以上にさらに長くされている。これにより、長さが約400μmであるレーザー装置が可能になる。これら2つの実施例では、導波路33を折り曲げることにより、最小曲率半径が、少なくとも約30μmになる。加えて、導波路のコア331の屈折率は、約2.1であり、クラッド332の屈折率は、約1.65である。屈折率の差異が大きいために、光は、曲線部分においてさえ導波路33に十分に閉じ込められ、曲線によって引き起こされる光の伝搬損失(例えば、曲率差異および曲率半径に基づく約1%未満、5%未満または10%未満のエネルギーの損失)は、実質的に生じない。加えて、導波路33の長さを長くすることにより、伝搬損失が増加する懸念があるが、伝搬損失は、導波路33の形成プロセスの管理次第で、約2dB/cm以下に制御される。したがって、導波路33の長さが650μm以上の場合であっても、伝搬損失は、最大値でも約0.065dBであり、すなわち、約1.3%以下に確実に抑制することができるので、実際の使用において問題は生じない。
【0061】
図7A〜
図7Bは、別の実施形態に従って、導波路33を長くするように構成された曲がり反射導波路33を示している。
図7Aに示されるように、レーザー装置から、導波路33に入射する光は、入射角約40°で第1の曲がり導波路333の近接場光発生素子32に照射される。近接場光発生素子32では、光のおよそ15%が反射される。
【0062】
図7Bは、近接場光発生素子32の付近の導波路の構造の拡大図である。
図7Aに示されるように、反射されたレーザー光9は、第2の曲がり導波路334を通過して、パワーモニタリング素子またはパワーセンサ34に導入される。したがって、有効導波路長は、第1の曲がり導波路333と第2の曲がり導波路334との和になり、この例では約650μmに相当する。ゆえに、この構造は、長さが約400μmであるレーザーに相当し得る。この実施例では、パワーセンサ34の近傍で反射され、第2の導波路334に戻るレーザー光9の量、すなわち導波路33の端部での実効反射率は、比較的容易に約1%以下に低減される。近接場光発生素子32の反射率が15%であるとみなすと、端面の実効反射率を、約1%*15%*15%=0.0225%以下まで、さらに低減することができる。端面の反射率を低減させることによって、低減効果が期待される。
【0063】
図9は、本明細書に記載された、いくつかの実施形態による磁気ヘッドを利用して、近接場光発生素子の付近の導波路によって発光された光の強度が、周囲温度変動、例えばレーザー装置またはレーザーダイオード(LD)の温度変動によってどのように変化するのかを、レーザー共振器の長さおよび導波路の長さを様々に組み合わせて考察する一例を示す。これらの結果は、導波路およびレーザーの干渉条件が変わると、レーザー波長が温度変動によって変化するので、モードホッピングが発生することを示している。したがって、パワーは、温度に対して急峻に、かつ、不連続的に変化する。これらの変動を、レーザーおよび導波路の様々な長さについて調べた。
図10は、レーザー共振器および導波路の光路長の比率に関する結果を要約したものである。光路長の比率は、整数倍になり、パワー変動は極めて小さな値をとる。比率が約1.0、すなわち、共振器の光路長および導波路の光路長が一致するときに、かなりのパワー変動低減効果が見られる。
【0064】
次に、
図11を用いて、本明細書に記載された、いくつかの実施形態による読み取り/書き込みヘッドを使用する、サーマルアシスト型磁気記録装置の構造について説明する。サスペンション12によって支持されたスライダ30は、磁気媒体11の上方を、約3nmの浮上高さで浮上するように構成され、ボイスコイルモータ(VCM:voice coil motor)アクチュエータ79によって、トラック方向にアクセスして、サーボトラッキングを行うように駆動される。詳細には説明しないが、この実施形態では、さらに高精度のトラック位置決めを正確に実施するために、ピエゾ素子から構成された追加のアクチュエータを、サスペンションに設けてもよい。それに加えて、浮上高さを正確に制御するために、サーマル駆動型アクチュエータが、スライダに埋め込まれている。
【0065】
読み取り時の、スライダの上方に装着されたCPP/GMRセンサ素子(図示せず)の抵抗は、前置増幅器51によって検出され、例えば、制御装置(SOC)20に設置された信号検出回路22による等化を経て前処理が施され、信号処理回路25に送られる。信号処理回路25は、位置/アドレス検出回路23の位置データおよびタイミング情報に基づいて同期および復調を行い、例えば、復号化回路26で復号された後に復調回路24でエラー訂正などの処理がされたデータを、マイクロプロセッサ27に送り、データは、上位装置99に転送される。情報を、後続する機能で使用するために、メモリ29に記憶させてもよい。サーボ回路54は、位置/アドレス検出回路23で検出されたデータに基づいて、VCMアクチュエータ79を制御する。
【0066】
記録時には、VCMアクチュエータ79は、読み取り時に、位置/アドレス検出回路23によって検出された位置/アドレス信号に基づいて、サーボ制御される。またヘッドは、上位装置99によって特定されたセクタに位置決めされる。次いで、書き込み制御回路52によって符号化されたユーザデータは、スライダ30に埋め込まれたレーザードライバ53および書き込みヘッドによって、スライダ30の上方に装着されたレーザー装置31を駆動し、サーマルアシスト型記録が行なわれる。サーマルアシスト型記録は、記録時に、媒体の局所的領域を、適切な温度まで加熱し、記録磁界が、書込みヘッドによってこの局所的領域に印加される。レーザー装置31の駆動電流は、適切な温度まで加熱するように正確に制御される。1つの実施形態では、近接場光発生素子32の付近に設けられたパワーモニタ素子の抵抗を、抵抗検出回路50によって検出することによって、近接場光発生素子32の温度がモニタリングされる。次いで、この温度情報に基づいて、レーザー装置31の駆動電流が正確に制御される。
【0067】
読み取りおよび/または書き込みのいずれの動作時においても、スピンドルモータ76が、スピンドル(したがって媒体11)を回転させて、媒体11を、スライダ30を横断して移動させる。
【0068】
次に、この実施例の近接場光発生素子に投入されたエネルギーを制御する方法を説明する。1つの実施形態によるサーマルアシスト型磁気記録用のヘッドでは、
図3Bに示されるように、導波路の終端部付近の光の強度、すなわち、近接場光発生素子に照射している光の強度は、レーザー装置から発光されたレーザー光の強度に対して線形相関関係を有する。こうして、パワーモニタリング素子の出力が検出される。フィードバック制御によって、近接場光発生素子に照射している光のパワーが一定であるように制御することができることにより、検出された値が一定になる。
【0069】
再び
図11を参照すると、実際には、書き込み制御回路52がこの制御を行なう。例えば、レーザー装置では、温度変動に対する反応を可能にするには、フィードバック制御の帯域幅は、約10kHzから約100kHzまであってもよい。パワーモニタリング素子の温度は、時定数約1μs以内で反応するので、1MHzまでの帯域幅で制御が可能である。しかしながら、記録されたデータに対する干渉(クロストーク)の影響を考慮して、制御帯域幅は100kHz以下であってもよい。
【0070】
ここで
図12を参照する。本発明の1つの実施形態による磁気データ記憶装置1000(ディスクドライブであってもよい)が示されている。
図12に示すように、少なくとも1つの回転可能磁気媒体(例えば、磁気ディスク)1012が、スピンドル1014上に支持され、駆動機構により回転される。なお駆動機構は、ディスクドライブモータ1018を含んでもよい。各ディスク上の磁気記録は通常、ディスク1012上の環状パターンの同心データトラック(図示せず)の形式である。このため、ディスクドライブモータ1018は、好ましくは、磁気ディスク1012の、すぐ下に記載した磁気読み取り/書き込み部分1021の上方を通過する。
【0071】
少なくとも1つのスライダ1013が、ディスク1012の付近に位置決めされ、各スライダ1013は、例えば、本明細書に記載および/または示唆された手法のうちのいずれかによる磁気ヘッドの、1つまたは複数の磁気読み取り/書き込み部分1021を支持している。ディスク1012が回転するにつれて、部分1021が所望のデータが記録および/または書き込みされるディスク1012の異なるトラックにアクセスし得るように、スライダ1013が、ディスク表面1022の上方を半径方向に出たり入ったりする。各スライダ1013は、サスペンション1015を用いてアクチュエータアーム1019に取り付けられている。サスペンション1015は、ディスク表面1022に対してスライダ1013を付勢するわずかなスプリング力を供給する。それぞれのアクチュエータアーム1019は、アクチュエータ1027に取り付けられている。
図12に示されるように、アクチュエータ1027は、VCMであってもよい。VCMは、固定磁界内において運動可能であるコイルを備え、コイルの運動の方向および速度は、制御装置1029によって供給されるモータ電流信号によって制御されている。
【0072】
ディスク記憶システムの動作時には、ディスク1012の回転により、スライダ1013とディスク表面1022との間に、上向きの力または揚力をスライダ1013に対して作用させる空気軸受が生成される。これにより、空気軸受は、サスペンション1015のわずかなスプリング力を相殺し、通常の動作時に、小さい、実質的に一定の間隔だけ、ディスク表面1022からわずかに上方に離して、スライダ1013を支持する。いくつかの実施形態では、スライダ1013が、ディスク表面1022に沿って摺動してもよいことに留意されたい。
【0073】
ディスクス記憶システムの様々な構成要素は、アクセス制御信号および内部クロック信号などの、制御装置1029によって生成される制御信号によって動作時に制御される。通常、制御装置1029は、論理制御回路と、記憶装置(例えばメモリ)と、マイクロプロセッサと、を備える。好適な手法では、制御装置1029は、その制御動作を行うために1つまたは複数の磁気読み取り/書き込み部分1021に、(例えばワイヤ、ケーブル、電線などを介して)電気的に結合される。制御装置1029は、制御信号を生成して、線1023上の駆動モータ制御信号ならびに線1028上のヘッド位置およびシーク制御信号などの、様々なシステム動作を制御する。線1028上の制御信号は、所望の電流プロファイルを提供して、スライダ1013を、ディスク1012上の所望のデータトラックに最適に移動し位置決めさせる。読み取り信号および書き込み信号は、記録チャネル1025を経由して読み取り/書き込み部分1021との間で伝達される。
【0074】
代表的な磁気ディスク記憶システムの上記説明および
図12の添付図解は、例示を目的としたものに過ぎない。ディスク記憶システムは、多数のディスクおよびアクチュエータを含んでもよく、かつ、それぞれのアクチュエータは、いくつかのスライダを支持してもよいことは、明らかであろう。
【0075】
当業者によりすべて理解されるように、データを送受信するためにディスクドライブと(一体型または外付け)ホストとの間の通信のための、そしてディスクドライブの動作を制御するとともにディスクドライブの状態をホストに伝達するための、インターフェースが設けられてもまたよい。
【0076】
代表的なヘッドでは、誘導性書き込みヘッドは、1つまたは複数の絶縁層(絶縁スタック)に埋め込まれたコイル層を含み、この絶縁スタックは、第1の(主)磁極片層と第2の(戻り)磁極片層との間に位置する。磁極片層同士は、後方のギャップにおいて接続されてもよい。電流がコイル層を介して導通され、主磁極片の周囲に磁界を生成する。媒体に対向する側の磁界は、局所的な熱点が近接場光発生素子によって生成されている間に、移動している媒体上のトラック、例えば回転している磁気ディスク上の円形トラックに、磁界情報のビットを書き込むためのものである。
【0077】
図12の磁気データ記憶装置は、少なくとも1つの、本明細書に記載されるような、任意の実施形態によるサーマルアシスト型磁気ヘッドと、(ディスク1012のような)磁気媒体と、磁気媒体を、少なくとも1つのサーマルアシスト型磁気ヘッドの上方を通過させるための(ディスクドライブモータ1018のような)駆動機構と、少なくとも1つのサーマルアシスト型磁気ヘッドの制御動作を行うための、少なくとも1つのサーマルアシスト型磁気ヘッドに電気的に結合された制御装置1029と、を含んでいてもよい。
【0078】
ここで
図13を参照して、サーマルアシスト型磁気ヘッドを製造する方法1300を、1つの実施形態に従って説明する。
【0079】
図13に示されるように、方法1300は、動作1302から開始してもよい。動作1302では、近接場光発生素子が形成される。近接場光発生素子は、磁気媒体の局所的領域を加熱することによって主磁極が磁気媒体にデータを書き込みするのをアシストするために、レーザー光が近接場光発生素子に供給されると、近接場光を発生するように構成されている。
【0080】
1つの実施形態では、近接場光発生素子は、装置の媒体に対向する表面において二等辺三角錐形状を備えてもよい。
【0081】
動作1304では、近接場光発生素子にレーザー光を誘導するために構成された導波路が形成され、この導波路は、コアを取り囲むクラッドを備える。
【0082】
動作1306では、磁気媒体にデータを書き込むように構成された主磁極が形成される。1つの実施形態では、主磁極を、近接場光発生素子からのダウントラック方向に配置してもよい。
【0083】
1つの実施形態では、主磁極、近接場光発生素子、および導波路をスライダに形成してもよい。
【0084】
動作1308では、レーザー光を発生するように構成されたレーザー装置であって、スライダの媒体に面する表面に対して垂直な方向、スライダの媒体に対向する表面に対して平行な方向、または、本明細書を読めば当業者であれば理解するであろう、他の何らかの向きなどの、レーザー光放射に対して平行な方向に長さ(L1)を有するレーザー共振器(空洞共振器)を備えるレーザー装置がスライダに結合される。
【0085】
1つの手法では、レーザー装置は、屈折率が約3.5であるGaAsを利用してもよい。あるいは磁気記録を支援するのに十分なパワーを有するレーザー光を発生することが可能な、当業者に公知の他の何らかの好適な材料を利用してもよい。
【0086】
1つの手法では、導波路は、曲率半径が少なくとも約30μmである非直線形状を有してもよい。別の手法では、導波路の長さは、レーザー共振器の長さの約1.5倍以上であってもよい。さらに別の手法では、導波路は、2つの直線部分の間に配置された反射素子を備えてもよい。
【0087】
主磁極、近接場光発生素子および導波路はそれぞれ、スライダの、媒体に対向する表面に対して垂直な方向に、長さ(L2)を有するスライダに形成されてもよい。
【0088】
レーザー共振器の縦モードの間隔は、導波路の光学干渉周期の整数乗数倍の約5%の範囲内で等しい。さらに好適な実施形態では、レーザー共振器の縦モードの間隔は、導波路の光学干渉周期の整数乗数倍の約2%の範囲内で等しくてもよい。
【0089】
さらなる実施形態では、整数乗数倍は、1、2、3、および4以上の数字からなる群から選択されてもよい。
【0090】
別の実施形態では、kが整数乗数倍であり、n
WGが導波路の平均有効屈折率(伝搬定数)であり、h
WGが導波路の長さであり、n
Cがレーザー共振器の平均有効屈折率(伝搬定数)であり、h
Cがレーザー共振器の長さである場合に、n
WG・h
WG=k・n
C・h
Cが満たされてもよい。
【0091】
さらなる実施形態では、導波路の平均有効屈折率(伝搬定数)n
WGは、約2.0であってもよい。スライダの長さL2は、約230μmであってもよい。レーザー光の中心波長λは、約830
nmであってもよい。また、レーザー共振器の長さh
Cは、約130μmまたはその整数乗数倍であってもよい。長さの数値が上記の好適な数値から変わるにつれて、前述のような構成を使用する利点が低減される。したがって、可能な限り好適な数値に近いことが好ましい。
【0092】
1つの実施形態では、装置は、レーザー光を発生するように構成されたレーザー装置であって、レーザー光放射に対して平行な方向(例えば、スライダの媒体に対向する表面に対して垂直な方向、スライダの媒体に対向する表面に対して平行な方向など)に、長さ(L1)を有するレーザー共振器を備えるレーザー装置と、スライダであって、スライダの媒体に対向する表面に対して垂直な方向に、長さ(L2)を有するスライダと、を備える。当該スライダが、磁気媒体にデータを書き込むように構成された主磁極と、近接場光発生素子であって、磁気媒体の局所的領域を加熱することによって主磁極が磁気媒体にデータを書き込むのをアシストするために、レーザー光が近接場光発生素子に供給されると、近接場光を発生するように構成された近接場光発生素子と、近接場光発生素子にレーザー光を誘導するために構成された導波路であって、コアを取り囲むクラッドを備える導波路と、を備える。レーザー共振器の縦モードの間隔は、導波路の光学干渉周期の整数乗数倍の約5%の範囲内で等しい。
【0093】
様々な実施形態の少なくとも一部に関して本明細書に提示した方法論は、全体的または部分的に、コンピュータハードウェア、ソフトウェアにおいて、手作業で、専門機器等、およびそれらの組み合わせを用いて、実施してもよいことに留意されたい。
【0094】
さらに、本明細書を読めば当業者には明らかであるように、構造物および/またはステップはいずれも、公知の材料および/または技法を用いて実施してもよい。
【0095】
様々な実施形態を以上に記載したが、それらは、単に例示として提示されたものであり、限定ではないことを理解されたい。したがって、本発明の一実施形態の広がりと範囲は、上記の実施形態例のいずれによっても限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物に従ってのみ定義されるものである。