特許第5945033号(P5945033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5945033
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】天地及び表裏リバーシブル衣料
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/12 20060101AFI20160621BHJP
   A41D 1/22 20060101ALI20160621BHJP
   A41D 1/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   A41D13/12 190
   A41D1/22 Z
   A41D1/02 Z
   A41D13/12 145
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-101544(P2015-101544)
(22)【出願日】2015年5月19日
【審査請求日】2015年5月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年2月7日 アイボリーショップ松本において販売
(73)【特許権者】
【識別番号】510108685
【氏名又は名称】三宅 靖子
(74)【代理人】
【識別番号】100152928
【弁理士】
【氏名又は名称】草部 光司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 靖子
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−155404(JP,A)
【文献】 特開2001−140111(JP,A)
【文献】 実開昭58−151609(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/00
A41D 1/02
A41D 1/22
A41D 3/08
A41D13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの略楕円形の穴を有する矩形の布であって、矩形の布の長辺(c)が113cm〜129cmであり、その短辺(d)が86cm〜92cmであり、
その布が縦糸と横糸によって織られた布目を有する布であって、布の長辺又は短辺が布目に対して平行に裁断された布であり、その四隅は直角であり、
布の短辺を垂直方向に置いたときに、二つの略楕円形の穴の形状及び位置は左右対称であり、その略楕円形の長径が布の短辺と並行であり、
二つの略楕円形の穴の端縁の間隔(h)が34cm〜38cmであり、
略楕円形の上端縁から矩形布の上端縁までの距離(e)が24cm〜26cmであり、
略楕円形の下端縁から矩形布の下端縁までの距離(f)が44cm〜46cmであることを特徴とする衣料。
【請求項2】
二つの略楕円形の穴を有する矩形の布が、一重の布であり、布の周囲が裏面に折り返されて綴じられており、その折り返された部分の2辺の重なり部分が、額縁様に綴じられていることを特徴とする、請求項1記載の衣料。
【請求項3】
二つの略楕円形の穴を有する矩形の布が、平織組織、綾織組織又は朱子織組織を用いた一重組織で構成された布であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の衣料。
【請求項4】
二つの略楕円形の穴を有する矩形の布が、長辺を横にしておいたとき、上下対称ではない模様を有し、表裏の色、色の濃さ及び/又は模様が同一でない布であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項5】
二つの略楕円形の穴は、正方形と二つの半円が組み合わされた形状を有し、その略楕円形の穴の長径(i)が18cm〜20cmであり、短径(j)が9cm〜11cmであり、二つの半円が略楕円形の穴の短径と同一の直径を持つことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項6】
二つの略楕円形の穴の内周を、縦糸と横糸によって織られた布目を有する布地を正バイアスで裁断した帯状の布を用いて袋綴じしたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバーシブルに着用することができる衣料に関し、特に、表裏をリバーシブルに着こなすことができるだけでなく、天地及び前後も入れ替えて着こなすことができる衣料に関し、更には、体の不自由な方でも簡単にファッショナブルに着こなすことができる衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な形状の表裏両面を利用できるリバーシブル衣料が考案されている。表裏を入れ替えることにより、模様や色が変わり、一着で二通りの着こなしができるため、多種のデザインのものが販売されている。しかし、あくまでも表裏がリバーシブルな衣料であり、天地も入れ替えられるリバーシブル衣料は知られていない。すなわち、裾であった部分を上下入れ替えて襟にできるようなリバーシブルな衣料は知られていない。また、販売されているリバーシブル衣料は、そのほとんどが、二枚の布を重ねあわせて表裏リバーシブルにしたものである。よって、厚みもあり、重くなりがちである。
【0003】
例えば、立体的に縫い合わされた上部二箇所の角がとれた矩形の布であって、長軸が内側に傾き、前後に形状の異なる略楕円形の二個のアームホールを有し、異なる色彩や柄模様を有する二枚の同形状の布を袋状に縫い合わせ表裏リバーシブルに着用できるようにしたベストが提案されている(特許文献1)。
【0004】
ファッション雑誌などにもリバーシブルベストやワンピースが多く掲載されている。しかし、前述したようにそれらはすべて表裏のリバーシブルである。このような表裏リバーシブル衣料は、人体が左右対称であることから、単に衣料の腕を通す穴などの位置を左右対称の位置に配するなどして簡単に考案することができる。しかしながら、衣料の天地を入れ替えても着用できるものは知られていない。それは、人の体が左右には対称であるけれども、上下には大きく異なる構造を有するからである。
【0005】
また、一重の布でできた簡単に着用することができる衣料もいくつか提案されている。例えば、矩形のバスタオルなどのタオル地に二つのスリット状の切れ目をあけ、ワンピース様に着用する衣料が提案されている(特許文献2,3)。その切れ目は、狭い扇型の縦に開けたスリットであったり(特許文献2)、横に細長いスリット状の穴であったりするものである(特許文献3)。一枚の略矩形の布の上部に3か所の楕円状の切込みを入れたワンピース型の衣料も提案されている(特許文献4)。しかし、これらはあくまで入浴後などに着用することを想定した簡単な衣料で、外出着として着用できるようなファッション性のあるものではなく、リバーシブルに着用することを意図して作られたものではなく、様々な着こなしができるものでもない。
【0006】
更にまた、略矩形の一枚の布の上部に左右方向に一定の間隔で並ぶ3つの穴を有する衣料が提案されている(特許文献5)。3つの穴のうち隣り合う2つの穴に手を通し、残った穴に更に手を通すことにより、身頃が形成されるようにした衣料である。3つの穴の左右どちらの二つの穴にまず手を通すかによって、ドレープの出かたが左右異なるデザインとなる衣料である。表裏がリバーシブルではないが、手を通したとき左右非対称となるため、手を通す穴を選ぶことにより、左右非対称の複数の着用方法ができる衣料である。3つの穴が布の上端縁から12〜20cmと上端縁近くに配し裾を長くすることにより、ワンピースとして着用するものである。単純な構造ではあるが、複雑な着用手順を要する衣料である。複数の着用方法が可能であるが、衣料の周縁部は三つ折り縫いで処理されており、表裏リバーシブルにすることを意図したものではない。もちろん、天地を入れ替えて着用できるようにしたものでもない。
【0007】
一方、肢体の不自由な方の衣料も多く提案されている。手がご不自由でも簡単に脱ぎ着できるよう工夫されたものが販売されている。あるいは身体障碍を持つ方やアルツハイマー病の方などに用いられる介護用被服としても様々な形態のものも提案されている。形状としては、頭からかぶるだけの簡単なものであったり(特許文献6など)、洋服のあわせの部分の開閉を簡単に自在にできるようにして着せ替えやすくしたものであったり(特許文献7、8、9など)、ボタン部分を磁石にしたり、織製面ファスナーにしたりする工夫をなされたもの(特許文献10、11など)などである。しかしこのような、手など肢体が不自由な方の衣料や介護用被服というと、どうしても脱ぎ着しやすさだけが注目され、フッショナブルさが無視されがちである。着せる側が便利なようにできている。手が不自由であっても、介護を受ける身であっても、洋服をおしゃれに着たいし、自分で工夫して着こなしたいと思っている。そのような要望に応えうる衣料がないのが実情である。更には、車いすに乗った状態でも簡単におしゃれに脱ぎ着できる衣料、かさばらずに持ち運べる衣料が求められている。
【0008】
また、体が不自由な方にとっては、ボタンは面倒であり、掛け違えたり壊れたりすることが多い。更にまた、体が不自由な方の衣料に、織製面ファスナー(着脱自在の布製テープ、商品名マジックテープ、株式会社クラレの登録商標)がよく用いられるが、この織製面ファスナーは一見便利なようではあるが、埃や糸くずなどを絡み付けてしまったり、毛糸(ウール)素材の服などに当該ファスナーがはり付いたりして服を傷めるなどトラブルの元となることがよくある。また、簡単に外れそうであるが、握力の低下した人には意外と取り外しにくかったり、扱いにくかったりするものでもある。このような織製面ファスナーやボタンなどがなくても型崩れなく着用できる衣料がなかなかないのが実情である。
【0009】
もっと言えば、肢体がご不自由な方だけでなく、目のご不自由な方でもご自分で簡単に脱ぎ着でき、かつ、いろいろな着こなしが可能で、ファッショナブルな衣料は知られていない。すなわち、シンプルなデザインで、手で触れただけでその形状がわかり、簡単に着ることができ、そして、美しいラインが現れる洋服、さらには、その日の気分によって幾通りものデザインにもできる洋服が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】登録実用新案第3034157号公報
【特許文献2】登録実用新案第3000724号公報
【特許文献3】登録実用新案第3169259号公報
【特許文献4】実開昭58−151609号公報
【特許文献5】特開2001−140111号公報
【特許文献6】特開2003−129314号公報
【特許文献7】特開平7−324208号公報
【特許文献8】特開平8−158121号公報
【特許文献9】実開平5−35813号公報
【特許文献10】特開平8−13211号公報
【特許文献11】特開2006−37242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような従来の問題点に鑑みて、表裏だけでなく天地もリバーシブルに、更には前後もリバーシブルに着用できることにより、全くイメージの異なる多様な着こなしができ、かつ美しいシルエットやラインを出すことが可能な衣料を提供するとともに、シンプルなデザインとすることにより、肢体が不自由な方はもとより、目が不自由な方でも自分で脱ぎ着できる、単純であるが計算されつくされた衣料、機能性とファッション性を併せ持つ衣料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、長年洋服のデザイン作成に携わってきたが、形状を複雑にし、いろいろな装飾を施すことにより、斬新な洋服とすることは比較的簡単である。しかし、斬新であればあるほど、着方がむつかしく、着こなすことがむつかしくなる。高齢者、特に後期高齢者がどんどん増加する時代となってきているが、後期高齢者の方も体は固くなっているがまだまだ活動的な方が多く、ファッションを楽しむなど充実した生活を送りたいと考えている。また、体が不自由な方も同様に、ファッションを楽しむなど、活動的な生活を送りたいと考えている。そのような点を鑑み、高齢者や体のご不自由な方でも、楽しめるようなデザインの洋服を模索し、鋭意研究した結果、立体裁断と平面図を融合した技術を駆使し、布の裁断方法、各部分の寸法を厳密に規定することにより、単純な構造であり簡単に着こなすことができる衣料であるが、美しいシルエットになり、かつさまざまな着こなしができる衣料を完成させるに至ったものである。
【0013】
すなわち、第一の発明は、二つの略楕円形の穴を有する矩形の布であって、矩形の布の長辺(c)が113cm〜129cmであり、その短辺(d)が86cm〜92cmであり、その布が縦糸と横糸によって織られた布目を有する布であって、布の長辺又は短辺が布目に対して平行に裁断された布であり、その四隅は直角であり、布の短辺を垂直方向に置いたときに、二つの略楕円の穴の形状及び位置は左右対称であり、その略楕円形の穴の長径が布の短辺と並行であり、二つの略楕円形の穴の端縁の間隔(h)が34cm〜38cmであり、略楕円形の穴の上端縁から矩形布の上端縁までの距離(e)が24cm〜26cmであり、略楕円形の穴の下端縁から矩形布の下端縁までの距離(f)が44cm〜46cmであることを特徴とする衣料に存する。
【0014】
第二の発明は、二つの略楕円形の穴を有する矩形の布が、一重の布であり、布の周囲が裏面に折り返されて綴じられており、その折り返された部分の2辺の重なり部分が、額縁様に綴じられていることを特徴とする、第一の発明に記載の衣料に存する。
【0015】
第三の発明は、二つの略楕円形の穴を有する矩形の布が、平織組織、綾織組織又は朱子織組織を用いた一重組織で構成された布であることを特徴とする、第一の発明又は第二の発明に記載の衣料に存する。
【0016】
第四の発明は、二つの略楕円形の穴を有する矩形の布が、長辺を横にしておいたとき、上下対称ではない模様を有し、表裏の色、色の濃さ及び/又は模様が同一でない布であることを特徴とする、第一の発明乃至第三の発明のいずれかひとつに記載の衣料に存する。
【0017】
第五の発明は、二つの略楕円形の穴が、正方形と二つの半円が組み合わされた形状を有し、その略楕円の穴の長径(i)が18cm〜20cmであり、短径(j)が9cm〜11cmであり、二つの半円が略楕円の短径と同一の直径を持つことを特徴とする、第一の発明乃至第四の発明のいずれかひとつに記載の衣料に存する。
【0018】
第六の発明は、二つの略楕円形の穴の内周を、縦糸と横糸によって織られた布目を有する布地を正バイアスで裁断した帯状の布を用いて袋綴じしたことを特徴とする、第一の発明乃至第五の発明のいずれかひとつに記載の衣料に存する。
【0019】
ここで、正バイアスとは、布の地の目方向に対して、45°の角度を成すものを称する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の衣料は、表裏だけでなく天地、前後もリバーシブルに着用することができ、全くイメージの異なる多様な着こなしができ、かつ美しいシルエットやラインを出すことが可能である。本発明の衣料は一枚のストール様であるが、マフラー、ベスト、ボレロ、ケープ更にはブラウスと多様な用途として着用することができ、どのように着用した時にもラインが美しいシルエットになる衣料となる。さらに、シンプルなデザインであり、着用方法が簡単に理解でき、肢体が不自由な方はもとより、目が不自由な方でも自分で脱ぎ着できるにもかかわらずデザイン性に優れた衣料である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の衣料のA面の形状を示したデザイン図。
図2】本発明の衣料のB面の形状を示したデザイン図。
図3】本発明の衣料のアームホールの形状を示したデザイン図。
図4】本発明の衣料の着用パターンを示したデザイン図。
図5】本発明の衣料の実際の作品例。A面とB面。
図6】作品の着用例1。パターン1の状態で向って右のアームホールに左腕を入れ、左のアームホールに右腕を入れて、ベストのように着用したときの正面の写真と側面の写真。
図7】作品の着用例2。パターン2の状態で向って右のアームホールに左腕を入れ、左のアームホールに右腕を入れて、ベストのように着用したときの正面の写真。
図8】作品の着用例3。パターン3の状態で向って右のアームホールに左腕を入れ、左のアームホールに右腕を入れて、ベストのように着用したときの正面の写真。
図9】作品の着用例3のバリエーション。襟をスカーフ様に結んだ着用例。
図10】作品の着用例4。パターン1の状態で向って右のアームホールに右腕を入れ、左のアームホールに左腕を入れて着用したときの正面の写真と側面の写真。
図11】作品の着用例5。パターン3の状態で向って右のアームホールに右腕を入れ、左のアームホールに左腕を入れて着用したときの背面の写真。
図12】作品の着用例6。スカーフのように着用した例。
図13】額縁処理の手順を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
本発明の衣料は、図1にあるように、二つの略楕円形の穴を有する矩形の布である。この二つの略楕円形の穴をアームホールとして、その中に腕を通して着用するという全く単純な構造である。図1は、本発明の衣料の一方の面(A面)を示しているが、その裏面(B面)は図2のようになる。
【0024】
本発明の衣料の一つの特徴は、布の向きを裏表、さらには上下を入れ替えることにより、様々な着こなしが可能となることである。図4に着用に際しての布の向きの四通りのパターンを示した。
【0025】
このように様々な着こなしが可能となるのは、ひとつにはアームホールとなる二つの略楕円形の穴の位置にある。すなわち、略楕円形の穴の上端縁から矩形布の上端縁までの距離(e)を24cm〜26cmとし、略楕円形の穴の下端縁から矩形布の下端縁までの距離(f)を44cm〜46cmとしたことである。この寸法とすることなどにより、上下にリバーシブルにできるなど様々な着こなしが可能となる。そして、当該二つの略楕円形の穴を左右対称に配したことにより、表裏リバーシブルが可能となる。
【0026】
図5に本発明の衣料の制作作品例のA面とB面を示した。当該例示は、あくまでも作品例として示したもので、本発明が当該作品例に限定されるものではない。
【0027】
図6から図11に本発明の衣料の実際の着用パターンを例示した。以下にその着用方法を説明するが、本発明の衣料はここに例示した着用パターン以外にも工夫次第で、様々な着こなしが可能である。ここに示したものはあくまで代表的な着用例である。
【0028】
まず、図6は、図4のパターン1の布の向きで、布に向って右側のアームホールに左腕を入れ左側のアームホールに右腕を入れて、ベストのように着用したときの正面の写真と側面の写真である。作品例では、襟に当たる部分を結んでいるが、結ばずに開いた状態で着用することも可能である。図6からわかるように、本発明において(f)の長さを44cm〜46cmとすることにより、当該着用パターンでは腰を覆う長さで着用することが可能となる。
【0029】
図7は、図6の表裏を返した状態で着用した例である。図4でいうとパターン2の向きで着用したときの正面写真である。当該着用例では、襟をストール風にアレンジしている。
【0030】
このように襟の形をいろいろにアレンジできるのは、(e)の長さを24cm〜26cmと長く設定していることによる。
【0031】
次に、図8は、図4のパターン3の布の向き、すなわち図6の例とは上下を入れ変えた状態で、布に向って右側のアームホールに左腕を入れ左側のアームホールに右腕を入れて、ベストのように着用したときの正面の写真と側面の写真である。(e)の長さを24cm〜26cmとすることにより、腰の上あたりまで覆う形で着用することが可能となる。また、(f)の長さを44cm〜46cmとすることにより、大胆でファッショナブルな襟とすることができる。
【0032】
図9は、図8の着用パターンで、襟の形をストール風に変化させたものである。当該着用パターンでは襟となる部分の長さ(f)を44cm〜46cmとしていることにより、大きくなるので、さらにさまざまな着こなしのアレンジが可能となる。
【0033】
もちろん、この着用パターンで表裏を返して着用することが可能である。
【0034】
図10は、図4のパターン1の布の向きで、布に向って右側のアームホールに右腕を入れ左側のアームホールに左腕を入れて着用したとき、すなわち前後を入れ替えた形で着用した場合の正面の写真と側面の写真である。この例のように着用することにより、図6から図9に示したデザインとは全く異なる雰囲気の洋服として着用することができる。
【0035】
同様に、図11では、図10の上下を入れ替えた形で着用した例で、図4のパターン3の布の向きで、布に向って右側のアームホールに右腕を入れ左側のアームホールに左腕を入れて着用したときの側面の写真である。この着用方法でも、全く異なるイメージのデザインとなる。
【0036】
更に、もちろんこれらの着用パターンでも表裏を返して着用することが可能である。
【0037】
図12は、本発明の衣料をストールとして用いた着用例である。一重の布でできているため厚みがなく、きれいなラインが出るように裁断されているため、ストールとして用いることができる。
【0038】
本発明では、このようにいろいろな着こなしが可能となるというだけでなく、そのシルエットが美しくなるのが特徴である。本発明の矩形の布は、その布が縦糸と横糸によって織られた布目を有する布であって、布の長辺又は短辺が布目に対して平行に裁断された布であり、その四隅が直角になるように裁断されている。このように裁断することにより、布の角が正バイアスになり、襟やドレープが美しいラインとなる。
【0039】
すなわち、本発明に規定しているように裁断することにより、布は地の目を通した形となる。そのことにより、本発明の衣料の裾のラインは生地の糸が構成する矩形構造となる。そのような矩形構造は上下左右に対する力に対して強くなり「はり」が生まれる。そのため裾はドレープが少なく美しいラインとなる。一方、スカーフ様に隅が斜めとなったときは、地の目方向に対して角度を成す正バイアスとなる。正バイアスは生地糸の構造が菱形を構成しているため、上下左右に対する力への抵抗が少なくなり変形しやすくなる。そのため、自然なドレープを表すようになる。またバアイスは伸びやなじみに優れ柔らかな印象を与える事が出来る。本発明の衣料の裾、襟やドレープが美しいラインとなるのはそのためである。
【0040】
また、本発明の衣料は表裏リバーシブルに着用できる衣料であるが、一般にリバーシブル衣料は表裏二枚の異なる生地を袋状に縫い合わせて構成されている。そのため、厚みが出るとともに、重くなりがちである。それに対して、本発明の衣料を構成する矩形の布は一重の布でできている。そのことにより、軽量で持ち運びやすく、通気性にも優れているという特徴を有する。
【0041】
一枚の布の場合、どうしても布の周辺がほつれるなどするため、反対側に折り返して綴じる処理が必要となる。しかし、通常行われている袋綴じ、すなわち単純に生地を折り返した三つ折り始末では、どうしても角が分厚くなるうえ、着用したとき角が対象ではなく、折り返されたほうを表面として着用したとき、四隅が美しく見えない。本発明は、特に、襟やドレープが美しいというのが特徴であるが、このような綴じ方では本発明の正バイアスの持つ美しいラインが生かされない。そこで本発明では、この布の周囲の裏面に折り返しにおける角の二辺の重なり部分が額縁様に綴じられていること(額縁処理)を特徴としている。このように額縁処理することにより、二枚の布を重ね合わせなくても、裏面(B面)を表面として用いても違和感がなく、美しい模様と形状となり、同時に角のラインを美しくすることができる。
【0042】
額縁処理の具体的な方法を説明する。図13−1に示したように、布の角を1.5mmほどA面側に織り込む。この時、図の(l)と(m)を合わせて中表に折り、(n)点から縫い合わせ始め、1/2の点で縫い終えておく。そして、図13−2に示したように、縫い目を割り縫込みを三角に折る。そして、図13−3に示したようにB面に折り返す。同様の処理を四隅に施す。折り返し幅はデザインによって異なるが、一般的に1.5cmから2cmとなるように折り返すのが適当である。
【0043】
次に、アームホールであるが、本発明ではアームホールである二つの略楕円の穴は、図3に示したように正方形と二つの半円が組み合わされた形状を有し、その略楕円の穴の長径(i)が18cm〜20cmであり、短径(j)が9cm〜11cmであり、二つの半円が略楕円の短径と同一の直径を持つと規定している。
【0044】
本来、アームホールは上部が広くなった略楕円形をしており、体の前方向に向かって少し傾いてあけられているのが通常(特許文献1参照)である。そうすることにより、着用したときにしわができないようにしている。しかし、本発明の衣料は上下に自由に入れ替えて着こなすことができるように設計されているため、このような形状のアームホールを用いることができない。そこで、上下入れ替えても、最もしわのできにくい形状を立体裁断の手法で決定した。そのサイズが本発明の略楕円の形状とサイズである。
【0045】
この形状とサイズにすることにより、図4に示すどのパターンの着こなしをしてもアームホール部分にできるしわを最小限とすることができる。
【0046】
さらに、二つの略楕円のアームホールの内周を、縦糸と横糸によって織られた布目を有する布地を正バイアスで裁断した帯状の布を用いて袋綴じしている。この正バイアスに裁断した布は最も伸び縮みしやすく、アームホールが腕を通す時に引っ張られたりしてゆがみを生じたときのその歪みをきれいに修正する働きを持っている。このアームホールに用いる帯状の布の幅は、デザインによって異なるが、表裏0.9cm幅となるように綴じるのが一般的である。
【0047】
そして、本発明の立体裁断の手法を用いて決定した各部分のサイズを有する衣料の場合、体になじんで着用できるため、ボタンや織製面ファスナーなどがなくてもずれたり脱げたりすることなく着用することが可能となる。このようにボタンなどをなくすることにより、更にシンプルで軽量な衣料となり持ち運びが便利で、体のご不自由な方でも簡単に着用することが可能となる。
【0048】
このように、計算しつくされた各部分の寸法及びアームホールの形状、大きさ及びアームホール周辺の布を規定することにより、表裏上下色々な着こなしをした場合でも、型崩れすることなく、アームホール周りもきれいに見せることが可能となる。
【0049】
次に、本発明に用いられる布の素材であるが、薄地から普通地の布が軽量にできるという点で好ましい。しかし、縦糸と横糸によって織られた布目を有する布であれば、様々な布を用いることができる。例えば、織物、ニットなどの編物、レースなどを用いることができる。不織布や皮革などは裏面をリバーシブルに用いることができないので好ましくない。そして、毛皮など毛足がある生地は上下を入れ替えることができないので好ましくない。
【0050】
用いられる布の組織としては、平織組織、綾織組織又は朱子織組織を用いた一重組織のものが好ましい。しかし、これらにからみ織を加えたからみ組織の織物、例えば紗(レノ)や絽(ゴース)はやはりリバーシブルがきかないので好ましくない。また、パイル組織の織物であるテリークロス(いわゆるタオル地)や別珍、ビロード、コーデュロイは毛足があり上下にリバーシブルがきかないので好ましくない。
【0051】
また、本発明の衣料は、表裏、前後、天地にリバーシブルに着用できるのが特徴である。そのことから、用いられる布として表裏及び/又は上下に別の表情が現われる布を利用することにより、全く違った雰囲気の服とすることができる。その点から、用いられる布の模様としては、長辺を横にしておいたとき、上下の模様が対称ではない模様を有した布の方が、上下を入れ替えて着用したときに雰囲気が大きく変化するので好ましい。また同様に、用いられる布の表裏の色、色の濃さ及び/又は模様が同一でない布の方が、表裏を入れ替えて着用したときに雰囲気が大きく変化するので、好ましい。
【0052】
布の大きさは、基本はフリーサイズな衣料として用いられるので、矩形の布の長辺(c)が113cm〜129cmの範囲の長さ、その短辺(d)が86cm〜92cmの範囲の長さが適当である。しかし、例えば子供用として、矩形の布の長辺(c)が96cm〜128cm、短辺(d)が81cm〜85cmと縮小することもできる。さらに体格の良い人用に長辺(c)が130cm〜137cm、短辺(d)が93cm〜96cmと拡大することもできる。このように布のサイズを拡大又は縮小した時は、本発明における他の各部分の寸法を相似的に変更することにより、本発明と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、表裏、前後更には天地にリバーシブルに着用することができる衣料として用いることができる。そして、本発明の衣料は、体のご不自由な方の衣料や介護用衣料としても用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
c 矩形布の長辺の長さ
d 矩形布の短辺の長さ
e 略楕円形の上端縁から矩形布の上端縁までの長さ
f 略楕円形の下端縁から矩形布の下端縁までの長さ
g 略楕円形の横端縁から矩形布の横端縁までの長さ
h 二つの略楕円形の穴の端縁の間隔
i 略楕円形の穴の長径
j 略楕円形の穴の短径
【要約】      (修正有)
【課題】表裏だけでなく天地も前後もリバーシブルに着用できるなど多様な着こなしができ、かつ美しいシルエットやラインを出すことが可能な衣料であり、体が不自由な方でも簡単に着こなすことができる機能性とファッション性を併せ持つ衣料を提供する。
【解決手段】二つの略楕円形の穴を有する矩形の布であって、矩形の布の長辺(c)が113cm〜129cmであり、その短辺(d)が86cm〜92cmであり、その布が縦糸と横糸によって織られた布目を有する布であって、布の長辺又は短辺が布目に対して平行に裁断された布であり、その四隅は直角であり、布の短辺を垂直方向に置いたときに、二つの略楕円の穴の形状及び位置は左右対称であり、その略楕円形の穴、二つの略楕円形の穴の端縁の間隔を規定した衣料。
【選択図】図1
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