(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5945047
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】携帯型電子機器用熱拡散板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20160621BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20160621BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
H01L23/46 B
F28D15/02 102B
F28D15/02 L
F28D15/02 101A
H05K7/20 R
H05K7/20 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-162134(P2015-162134)
(22)【出願日】2015年8月19日
【審査請求日】2016年3月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】モハマド シャヘッド アハメド
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐士
(72)【発明者】
【氏名】高宮 明弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真
【審査官】
豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−165596(JP,A)
【文献】
特開2015−211056(JP,A)
【文献】
特許第5579349(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473
F28D 15/02
H05K 7/20
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体が密着させられる金属板にヒートパイプが添わせて取り付けられ、前記金属板の前記発熱体が密着させられている加熱領域の熱を前記ヒートパイプによって前記金属板の前記加熱領域から離れた箇所に伝達する携帯型電子機器用熱拡散板において、
前記ヒートパイプは、金属製のパイプによってコンテナが形成され、前記コンテナの前記加熱領域に配置される部分が加熱部とされ、前記コンテナの前記加熱領域から離れた部分が前記金属板に放熱する放熱部とされ、
前記加熱部は、前記コンテナを押し潰して扁平状に形成されるとともに、前記放熱部は、前記扁平状の加熱部より厚く形成され、
前記金属板は、前記加熱領域に相当する部分に形成された所定長さの孔部を有し、
前記扁平状の前記加熱部は、前記孔部の内部に配置されるとともに、前記放熱部は、前記金属板の前記加熱領域から離れた箇所の表面に密着させられ、
前記加熱領域において前記発熱体から前記金属板と前記加熱部とに熱を伝達するように構成されている
ことを特徴とする携帯型電子機器用熱拡散板。
【請求項2】
前記加熱領域において、前記扁平状に形成された前記加熱部の表面に接触しかつ前記孔部を閉じるように伝熱材が設けられ、
前記伝熱材に前記発熱体が熱伝達可能に接触するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯型電子機器用熱拡散板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能携帯電話(スマートフォン)やタブレット型パソコンなどの携帯型の電子機器に用いられる熱拡散板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートパイプによって発熱体の熱を低温部分に輸送するように構成された携帯情報端末が特許文献1に記載されている。そのヒートパイプは、銅管の両端部を封止して、その内部に作動流体を封入して構成されており、中央部が、発熱体であるCPUの上面に配置され、両端部側がケーシングの側部に沿いかつバッテリー側に延びている。また、特許文献1に記載された構成では、ケーシングの厚さを薄くするなどのスペース上の制約で、CPU上に配置されているヒートパイプの中央部が扁平に加工された潰し部とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−165596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている携帯型の情報端末などの電子機器では、基板(マザーボード)に実装されているCPUの高さが他の素子に比較して高いから、特許文献1に記載されているようにヒートパイプの潰し部をCPUの上に配置することにより、情報端末を薄くすることができる。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、CPUの熱のほぼ全量がヒートパイプに伝達され、その熱をヒートパイプが輸送することになるので、ヒートパイプに大きい熱輸送容量が要求され、大型もしくは大径のヒートパイプを使用せざるを得なくなり、それに伴って情報端末が大型化し、あるいは厚さの厚いものになってしまう。また、ヒートパイプに対するCPUからの入熱量が多いことに加えて、CPUからの入熱部(もしくは加熱部)が潰し部となっていて、その入熱部での作動流体の保持量が少なくなるから、CPUの発熱量が多い場合には、ヒートパイプのドライアウトが生じやすく、結局は、CPUを冷却する能力が制限されてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、携帯型電子機器の薄型化と冷却能力の増大とを両立させることのできる熱拡散板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、発熱体が密着させられる金属板にヒートパイプが添わせて取り付けられ、前記金属板の前記発熱体が密着させられている加熱領域の熱を前記ヒートパイプによって前記金属板の前記加熱領域から離れた箇所に伝達する携帯型電子機器用熱拡散板において、前記ヒートパイプは、金属製のパイプによってコンテナが形成され、前記コンテナの前記加熱領域に配置される部分が加熱部とされ、前記コンテナの前記加熱領域から離れた部分が前記金属板に放熱する放熱部とされ、前記加熱部は、前記コンテナを押し潰して扁平状に形成されるとともに、前記放熱部は、前記扁平状の加熱部より厚く形成され、前記金属板は、前記加熱領域に相当する部分に形成された所定長さの孔部を有し、前記扁平状の前記加熱部は、前記孔部の内部に配置されるとともに、前記放熱部は、前記金属板の前記加熱領域から離れた箇所の表面に密着させられ、前記加熱領域において前記発熱体から前記金属板と前記加熱部とに熱を伝達するように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明は、前記加熱領域において、前記扁平状に形成された前記加熱部の表面に接触しかつ前記孔部を閉じるように伝熱材が設けられ、前記伝熱材に前記発熱体が熱伝達可能に接触するように構成されていてよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発熱体の熱は、加熱領域において、ヒートパイプの加熱部および金属板に伝達される。ヒートパイプの加熱部は、扁平状に形成されていることに加えて、金属板に形成された孔部の内部に配置されていて、発熱体とヒートパイプの加熱部との間に金属板が介在することがないので、熱拡散板あるいは熱拡散板を用いた携帯型電子機器を薄くすることができる。また、本発明においては、発熱体の熱は、ヒートパイプの加熱部だけでなく金属板にも伝達される。そのため、ヒートパイプの加熱部に対する入熱量が緩和されるので、加熱部が扁平状に形成されているとしてもヒートパイプのドライアウトが生じにくく、熱拡散性能あるいは発熱体の冷却性能が損なわれることがない。また、本発明では、ヒートパイプにおける放熱部が加熱部より厚くなっていることにより作動流体の蒸気が円滑に流動し、さらには放熱部が金属板に密着させられているので、ヒートパイプによる熱輸送性能が優れ、ひいては熱拡散性能が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】ヒートパイプの構造を説明するための断面図である。
【
図3】
図1のIII−III線に沿う断面図である。
【
図6】伝熱材を設けた例を説明するための図であって、
図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る熱拡散板1は、スマートフォンやタブレット型パーソナルコンピュータ(PC)などの携帯型の電子機器に内蔵されて、CPUなどの発熱体の熱を拡散し、発熱体のピーク温度を低下もしくは抑制するためのものである。熱拡散板1の一例を
図1に示してあり、拡散領域を広くするために、金属板2を主体として構成され、その金属板2にヒートパイプ3が取り付けられている。
【0011】
金属板2は、熱伝導率が高くかつ薄いことが望まれるので、0.2mm程度の厚さの薄い銅板が採用される。ヒートパイプ3は、コンテナの内部に封入した作動流体によって熱を輸送する公知の熱伝達素子であり、例えば銅パイプをコンテナとし、その内部に作動流体として水を封入し、さらに銅細線などの極細線や多孔構造の金属焼結体などをウイックとしてコンテナの内部に収容して構成されている。
図1に示す例では、ヒートパイプ3は扁平状に形成されている。
【0012】
このヒートパイプ3は、例えば
図2に示すようにして製造できる。断面円形の銅パイプをコンテナ3aとして用意し、そのコンテナ3aの内部にウイック3bを配置して焼結などの手段で固定する。ついで、コンテナ3aの内部に作動流体を注入するとともに空気を脱気し、その状態でコンテナ3aを密閉する。その後、所定の形状に曲げ加工するとともに、半径方向に荷重を掛けて押し潰し、扁平状に成形する。
【0013】
ヒートパイプ3の一方の端部側の所定の長さの部分が、外部からの入熱で作動流体が蒸発する加熱部4とされ、かつ他方の端部側の部分が外部に熱を放散する放熱部5とされている。その加熱部4は、放熱部5よりも薄くなるように押し潰されており、例えば0.4mm程度の厚さになっている。これに対して放熱部5は、0.85mm程度の厚さの扁平状に成形されている。したがって、単位長さ当たりの内部容積は、加熱部4で小さく、放熱部5で大きくなっている。
【0014】
金属板2は、使用する電子機器の形状に応じた形状をなしており、
図1に示す例では、ほぼ矩形状になっている。金属板2の長手方向での一端側のほぼ中央部が、CPUなどの発熱体6から熱を受ける加熱領域7とされている。加熱領域7には、前述した加熱部4より幅が広く、かつ加熱領域7より幅が狭いいわゆる長孔である孔部8が形成されている。その孔部8に前記加熱部4が嵌め込まれている。
【0015】
孔部8に加熱部4を嵌め込んである状態を
図3に断面図として示してある。加熱部4は
図3における下面が金属板2の下面にほぼ一致する状態で孔部8に嵌め込まれている。孔部8の内面(もしくは内縁)と加熱部4との間の隙間には、適宜の固定材(例えばハンダ)9が充填されて加熱部4が金属板2に対して固定されている。加熱部4は前述したように扁平状に形成されていてもその厚さは金属板2より厚いから、
図3における上面側は金属板2の上面より上側に突出している。しかしながら、加熱部4は金属板2の孔部8に嵌め込まれていて、加熱部4(ヒートパイプ3)と発熱体6との間に金属板2が介在していないので、発熱体6が設けられている箇所における高さ(例えば加熱部4の下面(金属板2の下面)から発熱体6の上面までの寸法)Hは、金属板2の厚さ分、低くなる。すなわち、熱拡散板1自体が薄くなっており、この熱拡散板1を使用することにより携帯型電子機器を薄型化することができる。なお、発熱体6の下面は加熱部4の上面に接触しているものの、発熱体6の下面と金属板2の上面とが離れているので、これら発熱体6の下面と金属板2の上面との間にサーマルグリースGthなどの熱伝導材を充填する。
【0016】
ヒートパイプ3は、上記の孔部8から引き出されている箇所でクランク状に曲げられて金属板2の表面(
図1および
図3での上面)に添わされている。また、孔部8から引き出されて金属板2の表面に沿わせた箇所で、金属板2の一方の側部に向けてほぼ直角に曲げられ、さらに金属板2の側部の近い箇所で、金属板2の側部に沿うようにほぼ直角に曲げられている。ヒートパイプ3をこのように曲げてあるのは、電子機器に内蔵されている部品との干渉を避けるためである。したがって、ヒートパイプ3を曲げる形状は電子機器の内部構造に合わせた形状であってよい。
【0017】
ヒートパイプ3のうち、このように金属板2の表面に添わされている状態で金属板2の側部に向け、かつその側部に沿うように曲げられている部分が放熱部5となっている。この放熱部5のうち、前記加熱部4から前記金属板2の側部に向けて延びている部分5aの断面形状を
図4に示し、また前記金属板2の側部に沿っている部分5bの断面形状を
図5に示してある。
【0018】
金属板2の側部に向けて延びている部分5aは、扁平状に形成されているものの加熱部4より幾分厚くなっている。また、金属板2の側部に沿う部分5bは扁平状をなしているものの加熱部4よりも更に厚くなっている。このように放熱部5を加熱部4より厚く形成してあるのは、作動流体が蒸発して容積を増大することに合わせて、内容積を増大させておくためである。また、放熱部5は金属板2に密着させられており、さらにハンダなどの適宜の手段で金属板2に固定されている。
【0019】
上記の熱拡散板1は、スマートフォンなどの携帯型電子機器の内部に収容されることにより、前記加熱領域7にCPUなどの発熱体6が熱伝達可能に接触させられる。その場合、ヒートパイプ3の加熱部4の幅W3より発熱体6の幅W6が大きいから、発熱体6はヒートパイプ3の加熱部4と金属板2との両方に熱伝達可能に接触する。また、金属板2の前記加熱領域7から離れた箇所は、図示しないバッテリーなどの温度の低い部分に接触させられ、あるいは配置される。
【0020】
発熱体6が動作することにより生じた熱は、加熱領域7においてヒートパイプ3と金属板2とに伝達される。ヒートパイプ3では、加熱部4において作動流体が蒸発し、その蒸気が温度および圧力が低くなっている放熱部5に向けて流動し、作動流体は放熱部5において熱を放散して凝縮する。したがって、ヒートパイプ3に伝達された熱は、作動流体の潜熱の形で放熱部5に輸送され、放熱部5から金属板2に熱が拡散する。凝縮した作動流体はウイック3bで生じる毛管力によって加熱部4に還流させられ、再度、加熱されて蒸発することにより熱輸送を行う。
【0021】
また、発熱体6から金属板2に伝達された熱は、金属板2の温度の低い箇所に伝導される。このように、上記の熱拡散板1では、発熱体6の熱がヒートパイプ3および金属板2によって、発熱体6から離れた箇所に拡散させられ、また発熱体6から離れた箇所から外部に放散させられる。その結果、発熱体6が冷却されてその動作不良が防止される。
【0022】
本発明に係る上記の熱拡散板1では、発熱体6の熱が加熱領域7においてヒートパイプ3と金属板2とに伝達され、かつこれらヒートパイプ3および金属板2によって拡散させられるから、ヒートパイプ3に対する入熱量が抑制される。そのため、ヒートパイプ3の加熱部4が薄い扁平状に形成されていて作動流体の保持量が制限されるとしても、加熱部4における作動流体の量が不足して熱輸送が制限されるいわゆるドライアウトが生じることを回避もしくは抑制することができる。また、放熱部5は加熱部4より厚く形成されていて内部容積が加熱部4より大きくなっているので、蒸発して体積が増大して作動流体が加熱部4から放熱部5に向けて円滑に流動し、ヒートパイプ3による熱輸送を十分に行わせることができる。結局、本発明に係る上記の熱拡散板1によれば、ヒートパイプ3と金属板2とによる発熱体6の冷却能力の増大と携帯型電子機器の薄型化とを両立させることができる。
【0023】
図6は本発明の他の実施例を示す断面図であり、前記加熱部4を配置してある孔部8が伝熱材10によって閉じられている。伝熱材10は、金属板2より薄い銅などの金属製の板材もしくはシート材であって、幅方向での中央部が加熱部4の表面(
図6における下面)に密着し、かつ両端部が加熱部4の両脇から孔部8を通って金属板2の
図6での上面側に引き出され、かつ金属板2の上面に接合されている。また、伝熱材10は、その輪郭が発熱体6の下面の輪郭と同じになる大きさ、もしくは発熱体6の下面の輪郭を超える大きさに形成されている。
図6に示す構成では、発熱体6は
図6の上面側に配置され、伝熱材10によって保持されているヒートパイプ3の加熱部4に直接接触する。また、発熱体6の下面と伝熱材10の上面との間には、サーマルグリースなどの熱伝導材(
図6では省略してある)が充填される。発熱体6の熱は、直接ヒートパイプ3に伝達されるとともに、熱伝導材を介して伝熱材10ならびに伝熱材10を介して金属板2に伝達される。伝熱材10は、
図6に示すように、ヒートパイプ3における加熱部4の下面に接触しているので、ヒートパイプ3には伝熱材10からも熱が伝達される。なお、発熱体6を金属板2の下面側に配置することも可能であって、その場合は、発熱体6の熱が伝熱材10を介してヒートパイプ3に伝達されるとともに、発熱体6から金属板2に直接熱が伝達される。これらいずれの場合であっても、発熱体6から金属板2に伝達された熱の一部が、伝熱材10を介してヒートパイプ3に伝達されるので、金属板2による熱拡散の不足をヒートパイプ3による熱輸送で補うことができる。そのため、ヒートパイプ3による熱輸送および金属板2による熱伝達によって発熱体6の熱を効率よく拡散させて加熱領域7側での温度の上昇を抑制し、発熱体6を効果的に冷却することができる。
【0024】
ここで、本発明による効果を確認するために行った本発明例と比較例とを説明する。
(本発明例1)
金属板として厚さが0.2mmの銅板を使用し、ヒートパイプとして銅パイプの内部に銅細線のウイックを配置するとともに、水を作動流体として封入したヒートパイプを使用した。加熱部は、厚さが0.4mmとなるように扁平に加工し、放熱部は0.6mmの厚さに扁平加工した。ヒートパイプの加熱部は金属板に形成した孔部の内部に配置し、したがって加熱領域の厚さは、加熱部で最大となるものの、0.4mmとなっている。加熱領域に発熱体の代用として、出力の調整可能なヒータを接触させ、ヒータの出力を3W、4W、5Wとした場合の加熱部の温度を測定した。温度の測定結果を表1に示してある。
【0025】
(本発明例2)
上記の本発明例1と同様の金属板およびヒートパイプを使用した。加熱領域には前述した
図6に示す伝熱材を設け、伝熱材の厚さは、0.05mmとした。それに伴って、加熱部の厚さは0.35mmに設定し、したがって加熱領域の最大厚さは、本発明例1と同様に0.4mmとした。上記の本発明例1と同様に、加熱領域に発熱体の代用として、出力の調整可能なヒータを接触させ、ヒータの出力を3W、4W、5Wとした場合の加熱部の温度を測定した。温度の測定結果を表1に示してある。
【0026】
(比較例)
上記の本発明例1および2と同様の金属板およびヒートパイプを使用した。加熱領域には前述した孔部を設けずに、ヒートパイプの加熱部を金属板に直接密着させた。加熱領域の最大厚さを0.4mmとするために、加熱部を薄く扁平加工し、その厚さを0.2mmとした。他の条件は、上述した本発明例1および2と同様にし、加熱領域に発熱体の代用として、出力の調整可能なヒータを接触させ、ヒータの出力を3W、4W、5Wとした場合の加熱部の温度を測定した。温度の測定結果を表1に示してある。
【表1】
【0027】
本発明例1および2ならびに比較例のいずれも、加熱領域の最大厚さが0.4mmであって薄型化されている。しかしながら、表1に示す測定結果から明らかなように、比較例では、加熱部の温度が本発明例1および2に比較して高くなってしまい、熱拡散板の全体として熱抵抗が大きく、発熱体の冷却効果が劣ることが認められた。これに対して、本発明例1および2では、熱拡散板の熱抵抗が実用上十分に小さく、加熱部側から放熱部側への熱輸送もしくは熱拡散を促進して、発熱体を効果的に冷却でき、薄型化と冷却性能とを両立できることが認められた。
【符号の説明】
【0028】
1…熱拡散板、 2…金属板、 3…ヒートパイプ、 3a…コンテナ、 3b…ウイック、 4…加熱部、 5…放熱部、 6…発熱体、 7…加熱領域、 8…孔部、 9…固定材(例えばハンダ)、 10…伝熱材。
【要約】
【課題】電子素子などの発熱体の温度上昇を抑制でき、しかも携帯型電子機器の薄型化を促進することのできる熱拡散板を提供する。
【解決手段】ヒートパイプ3は、加熱部4と放熱部5とを有し、加熱部4は、扁平状に形成されるとともに、放熱部5は、加熱部4より厚く形成され、金属板2は、加熱領域7に相当する部分に形成された所定長さの孔部8を有し、加熱部4は、孔部8の内部に配置されるとともに、放熱部5は、金属板2の加熱領域7から離れた箇所の表面に密着させられ、加熱領域7において発熱体6から金属板2と加熱部4とに熱を伝達するように構成されている。
【選択図】
図1