特許第5945058号(P5945058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5945058コンクリート構造物の製造方法及びシート付き型枠
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5945058
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の製造方法及びシート付き型枠
(51)【国際特許分類】
   E04G 9/10 20060101AFI20160621BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   E04G9/10 101B
   E04G21/02 104
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-243919(P2015-243919)
(22)【出願日】2015年12月15日
【審査請求日】2015年12月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 彩永佳
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢三
(72)【発明者】
【氏名】村田 和也
(72)【発明者】
【氏名】温品 達也
(72)【発明者】
【氏名】坂井 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
(72)【発明者】
【氏名】矢野 英伸
(72)【発明者】
【氏名】栗山 圭一
(72)【発明者】
【氏名】前園 仁司
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 能成
(72)【発明者】
【氏名】落合 和彦
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 博文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−235875(JP,A)
【文献】 特開平07−102763(JP,A)
【文献】 特開2006−283366(JP,A)
【文献】 実開平04−072138(JP,U)
【文献】 特開平07−102762(JP,A)
【文献】 実開昭63−081146(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/10
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設用の型枠及び養生シートを準備する準備工程と、
前記型枠を設置する設置工程と、
前記型枠の内面に前記養生シートが貼り付けられた状態でコンクリートの打設を行う打設工程と、
前記コンクリートの打設後に前記型枠を脱型する脱型工程と、
前記脱型工程の後に前記養生シートを前記コンクリートの表面に残置させて、前記コンクリートを所定期間養生する養生工程と、を備え、
前記準備工程において、前記型枠の内面に前記養生シートを貼り付けた後、前記養生シートの端部が前記型枠の内面を含む平面よりもコンクリート打設側において露出しないように前記養生シートの端部を覆うシート状の被覆部材を前記養生シートの周縁部に貼り付ける端部処理を施し、
当該端部処理が施された前記養生シートを用いて前記打設工程を行うことを特徴とする、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項2】
コンクリート打設用の型枠及び養生シートを準備する準備工程と、
前記型枠を設置する設置工程と、
前記型枠の内面に前記養生シートが貼り付けられた状態でコンクリートの打設を行う打設工程と、
前記コンクリートの打設後に前記型枠を脱型する脱型工程と、
前記脱型工程の後に前記養生シートを前記コンクリートの表面に残置させて、前記コンクリートを所定期間養生する養生工程と、を備え、
前記準備工程において、前記型枠の内面に貼り付けられた前記養生シートの端部を覆うシート状の被覆部材を、前記養生シートの端部が前記型枠の内面を含む平面よりもコンクリート打設側において露出しないように前記養生シートの周縁部に貼り付ける端部処理が予め施されたシート付き型枠を準備し、
前記端部処理が施された前記養生シートを用いて前記打設工程を行うことを特徴とする、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項3】
前記被覆部材は、熱可塑性樹脂からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記養生シートと同種の材料からなることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項5】
前記被覆部材は、第1の面と、前記第1の面に隣り合う第2の面と、を有し、
前記第1の面は、前記養生シートの周縁部に沿うように配置され、前記第2の面は、前記型枠の端面に沿うように配置されることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項6】
前記第1の面は、前記養生シートの周縁部に沿って第1の接着力で接着され、当該第1の接着力が4.0N/25mm以上且つ8.0N/25mm以下であることを特徴とする、請求項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項7】
前記第2の面は、前記型枠の端面に沿って第2の接着力で接着され、当該第2の接着力が0.5N/25mm以上且つ2.0N/25mm以下であることを特徴とする請求項又はに記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項8】
前記型枠の端面に沿うように配置された前記被覆部材が前記型枠に仮止めされることを特徴とする請求項の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項9】
前記養生シートの周縁部の全周に亘って前記端部処理を施すことを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項10】
コンクリート打設用の型枠と、
前記型枠の一方の面に配置された養生シートと、
前記養生シートの端部を、前記型枠の一方の面を含む平面よりも前記型枠の他方の面とは反対側において露出させない端部処理部と、
を備え
前記端部処理部は、前記養生シートの周縁部に貼り付けられ、前記養生シートの端部を覆うシート状の被覆部材を有することを特徴とする、シート付き型枠。
【請求項11】
前記被覆部材は、熱可塑性樹脂からなることを特徴とする、請求項10に記載のシート付き型枠。
【請求項12】
前記被覆部材は、前記養生シートと同種の材料からなることを特徴とする、請求項10又は11に記載のシート付き型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の製造方法及びシート付き型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を構築する際、コンクリート打設用の型枠を設置し、型枠の内面に予め養生シートを貼付した状態でコンクリートの打設を行い、コンクリートの打設後に型枠を脱型し、打設したコンクリートを養生シートで覆い、コンクリートを養生することが新たに行われるようになってきている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の製造方法では、コンクリートの打設後に型枠を脱型した際、打設したコンクリートに養生シートを残置させることでコンクリートを養生シートで覆い、コンクリートを養生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5749830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなコンクリート構造物の製造方法では、コンクリートを打設する際に注意深く打設作業を行わないと型枠の内面に貼り付けた養生シートの周縁部に浮きや捲れが生じ、型枠と養生シートとの間に隙間が形成されてしまう可能性がある。隙間が形成されてしまうと、型枠の内面に養生シートが貼付された状態でコンクリートの打設を行うことになるため、打設したコンクリートが当該隙間に入り込んでしまう場合がある。その結果、養生シートがコンクリートに食い込んでしまう可能性があった。
【0005】
このようなことを防止するため、型枠設置後に、型枠に貼り付けた養生シートの周縁部にテープ等を型枠の内面側から貼り付けることが考えられる。しかしながら、例えば型枠を1枚ずつ建て込む小口組みの場合において配筋量が多いときや型枠の配置が複雑なときには、型枠の内面側から作業することが困難である。
【0006】
そこで、本発明の課題は、コンクリート構造物の表面の品質をより一層向上させることができるコンクリート構造物の製造方法及びシート付き型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート打設用の型枠及び養生シートを準備する準備工程と、型枠を設置する設置工程と、型枠の内面に養生シートが貼り付けられた状態でコンクリートの打設を行う打設工程と、コンクリートの打設後に型枠を脱型する脱型工程と、脱型工程の後に養生シートをコンクリートの表面に残置させて、コンクリートを所定期間養生する養生工程と、を備え、養生シートの端部が型枠の内面を含む平面よりもコンクリート打設側において露出しないように所定の端部処理が施された養生シートを用いて打設工程を行う。
【0008】
このコンクリート構造物の製造方法では、所定の端部処理を養生シートに施すことで、養生シートの端部が型枠の内面を含む平面よりもコンクリート打設側において露出しないようにしている。この養生シートを用いて打設工程を行うことで、当該平面よりもコンクリート打設側において養生シートの周縁部に浮きや捲れが生じることが抑制される。よって、打設したコンクリートが入り込んでしまう隙間が形成されて養生シートがコンクリートに食い込むことを抑制することができる。その結果、コンクリート構造物の表面の品質をより一層向上させることができる。
【0009】
上記のコンクリート構造物の製造方法では、準備工程において、型枠の内面に養生シートを貼り付けた後、養生シートの端部を覆う被覆部材を養生シートの周縁部に貼り付けることで端部処理を施してもよい。この場合、準備工程において養生シートに端部処理を施すため、例えば設置工程後の型枠の内面側から作業することが困難である場合であっても、端部処理を施した養生シートを用いて打設工程を行うことが容易となる。よって、養生シートがコンクリートに食い込むことを容易に抑制することができる。
【0010】
上記のコンクリート構造物の製造方法では、準備工程において、型枠の内面に貼り付けられた養生シートの端部を覆う被覆部材を養生シートの周縁部に貼り付けることで端部処理が予め施されたシート付き型枠を準備してもよい。この場合、準備工程において端部処理が養生シートに予め施されたシート付き型枠を準備するため、例えば設置工程後の型枠の内面側から作業することが困難である場合であっても、端部処理を施した養生シートを用いて打設工程を行うことが容易となる。よって、養生シートがコンクリートに食い込むことを容易に抑制することができる。
【0011】
上記のコンクリート構造物の製造方法では、被覆部材は、第1の面と、第1の面に隣り合う第2の面と、を有し、第1の面は、養生シートの周縁部に沿うように配置され、第2の面は、型枠の端面に沿うように配置されることが好ましい。この場合、養生シートに端部処理を容易に施すことができる。
【0012】
上記のコンクリート構造物の製造方法では、第1の面は、養生シートの周縁部に沿って第1の接着力で接着され、当該第1の接着力が4.0N/25mm以上且つ8.0N/25mm以下であることが好ましい。この場合、打設工程において被覆部材が養生シートに貼り付けられた状態を保つことができる。なお、第1の接着力は、JIS Z 0237に規定されている方法3(引きはがし角度が180°、以下同じ)に準拠して測定することができる。
【0013】
上記のコンクリート構造物の製造方法では、第2の面は、型枠の端面に沿って第2の接着力で接着され、当該第2の接着力が0.5N/25mm以上且つ2.0N/25mm以下であってもよい。この場合、コンクリートの打設後に型枠を脱型する際、被覆部材が養生シートに貼り付けられた状態で型枠を脱型することができる。よって、打設したコンクリートに養生シートを残置させることが容易に行える。なお、第2の接着力は、JIS Z 0237に規定されている方法3に準拠して測定することができる。
【0014】
上記のコンクリート構造物の製造方法では、型枠の端面に沿うように配置された被覆部材が型枠に仮止めされていてもよい。この場合、例えば複数の型枠を建て込む際に型枠の端面上の被覆部材が摺動されたとしても、被覆部材がずれることを抑制できる。
【0015】
上記のコンクリート構造物の製造方法では、準備工程において、型枠の内面に養生シートを貼り付ける際、養生シートの周縁部が型枠の端面に沿うように養生シートを折り曲げる、又は、型枠の内面に貼り付けられた養生シートの周縁部が型枠の端面に沿うように養生シートが予め折り曲げられたシート付き型枠を準備してもよい。この場合、養生シートの端部を覆うための別部材を省くことができる。
【0016】
上記のコンクリート構造物の製造方法では、養生シートの周縁部の全周に亘って端部処理を施すことが好ましい。この場合、養生シートの周縁部の全周に亘って浮きや捲れが生じることが抑制されるため、養生シートの全周に亘って養生シートがコンクリートに食い込むことを抑制することができる。
【0017】
また、本発明は、コンクリート構造物を製造するためのシート付き型枠の発明としても捉えることができ、このシート付き型枠は、コンクリート打設用の型枠と、型枠の一方の面に配置された養生シートと、養生シートの端部を、型枠の一方の面を含む平面よりも型枠の他方の面とは反対側において露出させない端部処理部と、を備えることを特徴としている。
【0018】
このようなシート付き型枠によれば、端部処理部により、型枠の一方の面に配置された養生シートの端部が、型枠の一方の面を含む平面よりも型枠の他方の面とは反対側において露出しないようになる。その結果、例えば、当該平面よりも型枠の他方の面とは反対側においてコンクリートを打設する場合、コンクリート側において養生シートの周縁部に浮きや捲れが生じることが抑制される。よって、打設したコンクリートが入り込んでしまう隙間が形成されて養生シートがコンクリートに食い込むことを抑制することができる。その結果、コンクリート構造物の表面の品質をより一層向上させることができる。
【0019】
上記のシート付き型枠では、端部処理部は、養生シートの周縁部に貼り付けられ、養生シートの端部を覆う被覆部材を有してもよい。この場合、端部処理部を容易に形成することができる。よって、養生シートがコンクリートに食い込むことを容易に抑制することができる。
【0020】
上記のシート付き型枠では、端部処理部は、養生シートの内、型枠の一方の面に貼り付けられたシート本体部の端部と、当該シート本体部の端部から連続して外側に延在している周縁部とから構成され、当該周縁部が型枠の端面に沿うように配置されていてもよい。この場合、養生シートの端部を覆うための別部材を省くことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コンクリート構造物の表面の品質をより一層向上させることができるコンクリート構造物の製造方法及びシート付き型枠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示す断面図である。
図3図3は、シート付き型枠の内面側の平面図である。
図4図4は、シート付き型枠の外面側の平面図である。
図5図5は、図3におけるV−V線に沿ったシート付き型枠の断面図である。
図6図6は、シート付き型枠の参考例を示す断面図である。
図7図7は、シート付き型枠の他の実施形態の例を示す断面図である。
図8図8は、養生シートの表面の水への接触角を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るコンクリート構造物の製造方法について説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示すフローチャートであり、図2は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法の概要を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート打設用の型枠及び養生シートを準備する準備工程(ステップS1)、型枠を設置する設置工程(ステップS2)、型枠の内面に養生シートが貼り付けられた状態でコンクリートの打設を行う打設工程(ステップS3)、コンクリートの打設後に型枠を脱型する脱型工程(ステップS4)、及び、脱型工程の後に養生シートをコンクリートの表面に残置させて、コンクリートを所定期間養生する養生工程(ステップS5)を含む。
【0025】
ステップS1の準備工程では、まず、図2の(a)に示されるように、コンクリート構造物CSを養生する際に用いる養生シート10を準備する。なお、一般的なコンクリート構造物を製造する際、通常は多数の養生シートを用いるが、本実施形態では説明を容易にするため、1枚の養生シート10を型枠に貼り付け、当該型枠を1枚ずつ建て込む場合(いわゆる小口組みの場合)を例にとって説明する。但し、2枚以上の養生シートを用いた場合でも同様である。本実施形態に用いられる養生シート10は、例えば矩形形状のシートであり、0.02mm〜2.0mm程度の厚みを有する。養生シート10としては、熱可塑性樹脂シートを用いることが好ましく、ここで用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂;ポリアミド;ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、養生シート10や後述する被覆部材20としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーとは、エチレンープロピレン共重合体又はポリプロピレンとエチレンープロピレンゴムの溶融混合物又は重合反応物であり、例えば、株式会社プライムポリマー製「プライムTPO(登録商標)」、日本ポリプロ株式会社製「ニューコン(登録商標)」、サンアロマー株式会社製「キャタロイ」、三菱化学社製「ゼラス(登録商標)」、等が挙げられる。
【0026】
準備工程では、養生シート10を型枠1の内面3(型枠1におけるコンクリート打設側の面、一方の面)に貼り付ける。この貼り付けの際、養生シート10の一方の面12が養生シート10におけるコンクリート打設側の面となり、他方の面14が型枠1側の面となる。型枠1の内面3に養生シート10を貼り付けた後、養生シート10に所定の端部処理を施す。詳細については後述する。型枠1及び養生シート10の準備が終了すると、図2の(b)に示すように、ステップS2の設置工程に進み、型枠1を設置する。型枠1は、板材のみで構成されてもよく、板材及び当該板材の少なくとも辺縁を補強する補強部材で構成されてもよい。
【0027】
続いて、ステップS3の打設工程に進み、図2の(c)に示すように、型枠1の内面3に養生シート10が貼り付けられた状態でコンクリートCの打設を行う。その後、コンクリートの締固めが終了すると、型枠1をはめたまま、コンクリートCの湿潤養生を例えば7日〜28日程度行い、コンクリートを硬化させる。コンクリートCが硬化するまでそのままの状態を維持する。
【0028】
続いて、打設工程でのコンクリートの打設及びその硬化が完了したら、ステップS4の型枠を脱型する脱型工程に進み、図2の(d)に示すように、硬化したコンクリートCの表面を養生シート10が覆うように残置したまま型枠1を脱型し、コンクリートCから引き離す。このとき、養生シート10と共に、被覆部材20をコンクリートC側に残置する。
【0029】
続いて、型枠1を脱型した後、ステップS5の養生工程に進み、コンクリートCの貼付面に残置された養生シート10を用いて、コンクリートCを所定期間養生する。養生シート10による養生は、型枠1の脱型後30日以上養生を続けてもよいし、型枠1の脱型後90日以上養生を続けてもよい。更に、コンクリート構造物の引き渡しに至るまで(例えば脱型後1年以上)養生を続けてももちろんよい。このような長期の養生を続けることにより、コンクリートCの強度を飛躍的に高めて、その品質を向上することができる。所定期間の養生が終了すると、図2の(e)に示すように、養生シート10及び被覆部材20をコンクリートCから取り外し、これにより、コンクリート構造物CSが完成する。
【0030】
次に、図3図5を参照して、準備工程S1において、養生シート10の端部10aが型枠1の内面3を含む平面Sよりもコンクリート打設側において露出しないように養生シート10の端部処理を行い、その後の打設工程S3等においても、養生シート10がコンクリートCに食い込むことを抑制するための方法についてより詳細に説明する。図3は、シート付き型枠の内面側の平面図である。図4は、シート付き型枠の外面側の平面図である。
【0031】
図3図5に示すように、養生シート10の周縁部16においては、型枠1の内面3に貼り付けた養生シート10の周縁部16に浮きや捲れが生じてしまい、型枠1と養生シート10との間に隙間が形成されてしまうことがある。本実施形態にかかるコンクリート構造物の製造方法では、例えば準備工程において、養生シート10に所定の端部処理を施す。所定の端部処理とは、養生シート10の端部10aがコンクリートCに食い込むことが抑制されるように、養生シート10の端部10aが型枠1の内面3を含む平面Sよりもコンクリート打設側(型枠1の他方の面とは反対側)において露出しないように、端部処理部Eを形成する処理である。ここでの型枠1の他方の面とは、型枠1の外面5である。なお、養生シート10に所定の端部処理を施す工程は、準備工程に限定されない。
【0032】
本実施形態における端部処理は、型枠1の内面3に養生シート10を貼り付けた後、型枠1の内面3に養生シート10が貼り付けされた状態で施される。この端部処理は、具体的には、準備工程において、養生シート10の端部10aを覆うように、被覆部材20を養生シート10の周縁部16に貼り付ける。被覆部材20は、養生シート10の周縁部16の全周に亘って貼り付けられることが好ましい。なお、養生シート10を型枠1に貼り付ける際、養生シート10の端部10aを、型枠1の内面3の外縁以内に位置するように配置してもよい(図3及び図4参照)。
【0033】
図5を参照して、端部処理部Eをより詳細に説明する。図5は、図3におけるV−V線に沿った断面図である。図5に示されるように、養生シート10に端部処理を施すために用いられる被覆部材20は、一例として、断面L字の形状を有する長尺部材である。被覆部材20の長さは、当該被覆部材20が配置される型枠1の各端辺の長さに対応する。なお、図3及び図4の例では、養生シート10の四隅における周縁部16に被覆部材20を重複させて貼り付けているが、これに限定される訳ではなく、被覆部材20を重複させないで貼り付けてもよいし、適宜、変更することが可能である。本実施形態にかかる製造方法では、このように被覆部材20で養生シート10の端部10aを覆って、コンクリートの打設工程を行う。
【0034】
被覆部材20は、例えば、熱可塑性樹脂シートから構成されており、養生シート10と同種の材料から構成されていることが好ましい。但し、被覆部材20は、コンクリートの養生を行うことが可能な材料から構成されていればよく、養生シート10と異なった材料から構成されていてもよい。被覆部材20は、養生シート10と同様に0.02mm〜2.0mm程度の厚みを有している。
【0035】
被覆部材20は、第1の板部22と、屈曲部24を介して第1の板部22に隣り合う第2の板部26と、を有する。第1の板部22は、第1の面22aを含む。第2の板部26は、第2の面26aを含む。つまり、被覆部材20は、第1の面22aと、第1の面22aに隣り合う第2の面26aと、を有する。被覆部材20は、一例として、第1の面22a及び第2の面26aに接着部(不図示)を有している。接着部は、例えば、両面テープ又は各種の接着剤等から構成されている。接着部は、例えば、養生シート10の端辺に沿って被覆部材20の第1の面22aに全体的に配置されている。接着部は、型枠1の端面7に沿って被覆部材20の第2の面26aに全体的に配置されていてもよい。なお、接着部を設ける代わりに、被覆部材20の一部を熱で溶融させて養生シート10又は型枠1に接着固定してもよい。
【0036】
第1の面22aは、養生シート10の周縁部16に沿うように配置される。被覆部材20の延在方向に沿った第1の面22aの幅は、例えば5mm〜20mmである。第1の面22aは、養生シート10の端部10aを覆うように養生シート10の周縁部16における一方の面12に当該接着部により接着され固定されている。第1の面22aは、養生シート10の周縁部16に沿って第1の接着力で接着される。第1の接着力は、4.0N/25mm以上且つ8.0N/25mm以下であることが好ましい。なお、第1の接着力は、養生シート10と型枠1との接着力よりも大きくてもよい。この場合、コンクリートCの打設後に型枠1を脱型する際、被覆部材20と養生シート10とが貼付いた状態で養生シート10と型枠1とを分離させることが容易となる。第1の接着力は、JIS Z 0237に規定されている方法3に準拠して測定することができる。
【0037】
第2の面26aは、型枠1の端面7に沿うように配置される。被覆部材20の延在方向に沿った第2の面26aの幅は、例えば型枠1の厚み(端面7の幅)及び養生シート10の厚みの合計厚みと同等であることが好ましい。第2の面26aは、型枠1の端面7に沿って第2の接着力で接着されていてもよい。第2の接着力は、0.5N/25mm以上且つ2.0N/25mm以下であることが好ましい。第2の面26aは、必ずしも型枠1の端面7に沿って接着されていなくてもよい。第2の接着力は、0N/25mm以上且つ2.0N/25mm以下であってもよい。第2の接着力は、JIS Z 0237に規定されている方法3に準拠して測定することができる。
【0038】
このような構成を備えた被覆部材20は、例えば、第1の板部22がコンクリート打設側に配置され、第2の板部26が型枠1側に配置されるように、コンクリート打設側から養生シート10の周縁部16に接着されることが好ましい。ここで、例えば第2の接着力が0.1N/25mm以下である場合には、被覆部材20を養生シート10の周縁部16に貼り付けた後、型枠1の端面7に沿うように被覆部材20が配置された状態で、被覆部材20を型枠1に仮止めしてもよい。被覆部材20と型枠1との仮止めには、例えば養生テープ30を用いることができる。養生テープ30は、例えば少なくとも打設工程が完了するまでの期間、被覆部材20を型枠1に一時的に固定するためのテープである。養生テープ30は、複数の型枠1を建て込む際に型枠1の端面7上の被覆部材20が摺動されたとしても被覆部材20がずれない程度に、被覆部材20を型枠1に固定する。
【0039】
このように、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法によれば、上述した端部処理を養生シート10に施すことで、養生シート10の端部10aが型枠1の内面3を含む平面Sよりもコンクリート打設側において露出しないようにしている。この養生シート10を用いて打設工程を行うことで、当該平面Sよりもコンクリート打設側において養生シート10の周縁部16に浮きや捲れが生じることが抑制される。よって、打設したコンクリートCが入り込んでしまう隙間が形成されて養生シート10がコンクリートCに食い込むことを抑制することができる。その結果、コンクリート構造物CSの表面の品質をより一層向上させることができる。
【0040】
また、この製造方法では、準備工程において、型枠1の内面3に養生シート10を貼り付けた後、養生シート10の端部10aを覆う被覆部材20を養生シート10の周縁部16に貼り付けることで端部処理を施す。これにより、準備工程において養生シート10に端部処理を施すため、例えば設置工程後の型枠1の内面3側から作業することが困難である場合であっても、端部処理を施した養生シート10を用いて打設工程を行うことが容易となる。よって、養生シート10がコンクリートCに食い込むことを容易に抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、被覆部材20は、第1の面22aと、第1の面22aに隣り合う第2の面26aと、を有し、第1の面22aは、養生シート10の周縁部16に沿うように配置され、第2の面26aは、型枠1の端面7に沿うように配置される。これにより、養生シート10に端部処理を容易に施すことができる。
【0042】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、第1の面22aは、養生シート10の周縁部16に沿って第1の接着力で接着され、当該第1の接着力が4.0N/25mm以上且つ8.0N/25mm以下である。これにより、打設工程において被覆部材20が養生シートに貼り付けられた状態を保つことができる。
【0043】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、第2の面26aは、型枠1の端面7に沿って第2の接着力で接着され、当該第2の接着力が0.5N/25mm以上且つ2.0N/25mm以下であってもよい。第2の面26aは、必ずしも型枠1の端面7に沿って接着されていなくてもよい。第2の接着力が0N/25mm以上且つ2.0N/25mm以下であってもよい。この場合、コンクリートCの打設後に型枠1を脱型する際、被覆部材20が養生シート10に貼り付けられた状態で、打設したコンクリートCに養生シート10を容易に残置させることができる。
【0044】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、準備工程において、被覆部材20を養生シート10の周縁部16に貼り付けた後、型枠1の端面7に沿うように被覆部材20が配置された状態で、被覆部材20と、型枠1と、を互いに仮止めする。これにより、例えば複数の型枠1を建て込む際に型枠1の端面7上の被覆部材20が摺動される場合、被覆部材20がずれることを抑制できる。
【0045】
また、本実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法では、養生シート10の周縁部16の全周に亘って被覆部材20を貼り付けている。すなわち、養生シート10の周縁部16の全周に亘って端部処理を施している。これにより、養生シート10の周縁部16の全周に亘って浮きや捲れが生じることが抑制されるため、養生シート10の全周に亘って養生シート10がコンクリートCに食い込むことを抑制することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく様々な実施形態に適用することができる。例えば、上記実施形態では、端部処理(端部処理部E)として、図5に示されるものを例示したが、これに限定される訳ではなく、種々の形態とすることができる。
【0047】
例えば、図6に示される参考例では、被覆部材20を備えずに、養生シート10の端部10aが型枠1の内面3を含む平面Sよりもコンクリート打設側において露出しないようにしている点で、上記実施形態の端部処理部Eとは異なっている。
【0048】
図6の例では、端部処理部Eは、養生シート10の内、型枠1の内面3(一方の面)に貼り付けられたシート本体部18の端部10bと、当該端部10bから連続して外側に延在している周縁部16とから構成され、当該周縁部16が型枠1の端面7に沿うように養生シート10の周縁部16の全周に亘って配置されている。養生シート10は、シート本体部18の端部10bで折り曲げられている。養生シート10は、型枠1の内面3から端面7へ沿うような形状とされている。養生シート10では、端部10bの位置が型枠1の内面3と端面7との境界の位置に対応している。養生シート10の周縁部16における面16aは、型枠1の端面7に沿うように配置される。養生シート10の端部10aは、型枠1の外面5と端面7との境界付近に配置される。
【0049】
この端部処理部Eは、例えば、準備工程において、型枠1の内面3に養生シート10を貼り付ける際、養生シート10の面16aが型枠1の端面7に沿うように養生シート10を折り曲げる端部処理を養生シート10に施すことによって、形成することができる。あるいは、準備工程においては、型枠1の内面3に貼り付けられた養生シート10の周縁部16が型枠1の端面7に沿うように養生シート10が予め折り曲げられたシート付き型枠1Sを準備してもよい。これらの場合、養生シート10の周縁部16の全周に亘ってこのような端部処理を施すことが好ましい。このような端部処理部Eの場合にも、養生シート10の端部10aが型枠1の内面3を含む平面Sよりもコンクリート打設側において露出しないようにすることができる。その結果、養生シート10がコンクリートCに食い込むことを抑制することができる。つまり、養生シート10の端部10aを覆うための別部材を省くことができる。
【0050】
また他の実施形態の例として、図7に示される例では、内面3に養生シート10が貼り付けされた状態の型枠1と、内面3’に養生シート10’が貼り付けされた状態の型枠1’と、が互いに直交するように配置されている。図7の例では、端部処理部Eは、当該直交部分において、養生シート10の端部10aが型枠1の内面3を含む平面Sよりもコンクリート打設側において露出しないようにしていると共に、養生シート10’の端部10a’が型枠1’の内面3’を含む平面S’よりもコンクリート打設側において露出しないようにしている点で、上記実施形態の端部処理部Eとは異なっている。
【0051】
図7の例では、端部処理部Eは、型枠1,1’の内面3,3’に養生シート10,10’を貼り付けた後、型枠1,1’の内面3,3’に養生シート10,10’が貼り付けされた状態で行う。この端部処理部Eは、例えば、準備工程において、養生シート10,10’の端部10a,10a’を覆うように、被覆部材20を養生シート10,10’の周縁部16,16’に貼り付ける端部処理を養生シート10に施すことによって、形成することができる。第1の面22aは、養生シート10の周縁部16に沿うように配置され、第2の面26aは、養生シート10’の周縁部16’に沿うように配置される。このような端部処理部Eの場合、養生シート10,10’がコンクリートCに食い込むことを抑制することができる。ここで、例えば、端面7が第2の面26aと接触する部分における接触面積と接着強度との積が、一方の面12’が第2の面26aと接触する部分における接触面積と接着強度との積よりも小さい場合には、被覆部材20を養生シート10の周縁部16に貼り付けた後、型枠1の端面7及び型枠1’の一方の面12’に沿うように被覆部材20が配置された状態で、被覆部材20を型枠1,1’に仮止めしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、準備工程において、型枠1の内面3に養生シート10を貼り付けた後、養生シート10の端部10aを覆う被覆部材20を養生シート10の周縁部16に貼り付けることで上述した端部処理を施した。しかしながら、準備工程においては、型枠1の内面3に貼り付けられた養生シート10の端部10aを覆う被覆部材20を養生シート10の周縁部16に貼り付けることで上述した端部処理が予め施されたシート付き型枠1Sを準備してもよい。この場合、準備工程において養生シート10に端部処理が予め施されたシート付き型枠1Sを準備するため、例えば設置工程後の型枠1の内面3側から作業することが困難である場合であっても、端部処理を施した養生シート10を用いて打設工程を行うことが容易となる。よって、養生シート10がコンクリートCに食い込むことを容易に抑制することができる。
【0053】
また、例えば、上記実施形態における養生シート10として、養生シート10のコンクリートC側の接触面の水との接触角が50度以上であるものを採用してもよい。具体的には、養生シート10の接触面の水との接触角θが69度以上であることが好ましく、接触角θが80度以上であることが更に好ましく、接触角θが90度以上であることがより一層好ましい。
【0054】
ここで、「接触角θ」とは、図8の(a)に示されるように、液滴の接線と固体表面(養生シート10の表面)とのなす角度であり、以下の式(1)で示される。
【数1】

γ:固体の表面張力
γ:液体の表面張力
γSL:固体と液体の界面張力
【0055】
そして、「接触角θ」は、例えば、θ/2法で測定することができる。具体的には、図8の(b)に示されるように、液滴の半径rと高さhを求める。そして、以下の式(2)、式(3)から、接触角θを求めることができる。
【数2】

【数3】
【0056】
通常、セメントの当初の硬化に必要な量以上の余剰な水がコンクリートCに含まれていると、打設後にコンクリートCが硬化する際、ブリージング水が発生することがある。上述のように、水との接触角が50度以上の養生シート10を打設時に用いることにより、ブリージング水が発生することを効果的に抑制することができる。このようにブリージング水の発生が抑制されるのは、コンクリートCの表面を覆っている養生シート10のシート面(接触面)の接触角(濡れ角とも言う)が大きいと、コンクリートC内に含まれていてその表面から外に出ようとする水や当該水中に存在する空気がシート接触面においてコンクリートC内部に押し戻される作用が働き、その結果、水及びその内部の空気がコンクリートC内に残存したまま硬化が進むためと考えられる。そして、この養生シート10によれば、このようにしてブリージング水の発生が抑制されるため、脱型後の水和反応に必要な水をコンクリートCが含有していることになり、コンクリート養生の際に外部から養生水を供給することなく又は養生水をそれほど用いることなく、所定の圧縮強度や耐久性などの品質を発現できるコンクリート構造物を製造することができる。
【0057】
また、養生シート10は、シートの水蒸気透過性の小さいものを用いることが好ましく、シートの水蒸気透過性が10g/m・24h以下であることが好ましく、シートの水蒸気透過性が5g/m・24h以下であることがより一層好ましい。また、養生シート10は、シートの二酸化炭素透過性の小さいものを用いることが好ましく、シートの二酸化炭素透過性が10万cc/m・24h・atm以下であることが好ましく、シートの二酸化炭素透過性が5万cc/m・24h・atm以下であることがより一層好ましい。素材の表面を各種表面加工技術によって加工することで、水蒸気透過性又は二酸化炭素透過性を小さくしたシートを作製することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
まず、実施例1として、以下の材料からなる養生シート及び被覆部材を準備した。なお、養生シートは1798mm×898mm×0.2mmの大きさを有しており、被覆部材は、第1の面の幅が20.0mm、第2の面の幅が60.0mm、厚みが0.2mmの大きさを有していた。次に、コンクリートの打設に用いる型枠を準備した。厚み12mmの合板と、当該合板を補強する厚み48mmの補強部材と、で型枠を構成した。準備した型枠の寸法は、1800mm×900mm×60mm(180cm×90cm×6.0cm)であった。また、被覆部材には、その第1の面及び第2の面に両面テープを接着して接着部を形成した。第1の接着力は、6.50N/25mmとし、第2の接着力は、例えば両面テープの剥離紙を剥離させないことにより、0.0N/25mmとした。第1の接着力及び第2の接着力は、JIS Z 0237に規定されている方法3に準拠して測定した。養生シートは3枚準備し、被覆部材は当該養生シートの3枚分準備した。
養生シート:ポリプロピレン
被覆部材:ポリプロピレン
【0060】
そして、上述した養生シートをポリビニルアルコール水溶液(10重量%)により型枠の内面に貼り付けると共に、被覆部材の第1の面を、養生シートの周縁部に沿って第1の接着力で接着させ、第2の面を、型枠の端面に沿って第1の接着力よりも小さい第2の接着力で配置した。被覆部材は、養生シートの周縁部の全周に亘って貼り付けた。養生シートの端部が型枠の内面を含む平面よりもコンクリート打設側において露出しないように、養生シートの端部処理を行った。
【0061】
その後、以下の表1に記載のコンクリート材料を表2に示す配合にて混合して得たコンクリート材料を型枠内に打設し、コンクリートの固化後に型枠を脱型して、コンクリート構造物の試験体を得た。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
また、比較例1として、養生シートの端部処理を行わない点以外は、実施例1と同様にして、コンクリート構造物の試験体を得た。具体的には、上記の表1に記載のコンクリート材料を表2に示す配合にて混合して得たコンクリート材料を、養生シートの端部処理を行っていない型枠内に打設し、コンクリートの固化後に型枠を脱型して、コンクリート構造物の試験体を得た。
【0065】
その後、実施例1と比較例1とを比較した。実施例1と比較例1とは、型枠の脱型後はいずれも養生シートがコンクリート面に残置することを確認した。実施例1と比較例1とのそれぞれにおいて、コンクリート表面のノロ漏れが生じた面積率を比較した。ノロ漏れとは、型枠と養生シートとの間に形成された隙間に打設したコンクリートが浸入した状態を指す。面積率は、打設したコンクリートに養生シートを残置した状態において、コンクリートに接している養生シートの面積に対して、当該養生シートにおいてノロ漏れが生じた部分の面積の割合である。
【0066】
その結果、表3に示されるように、実施例1の方法によれば、ノロ漏れが生じた面積率を、比較例1に比べて低く抑えることができた。
【表3】
【0067】
つまり、実施例1のように養生シートの端部が型枠の内面を含む平面よりもコンクリート打設側において露出しないように養生シートに端部処理を施すことで、養生シートの周縁部に浮きや捲れが生じて型枠と養生シートとの間に隙間が形成されてしまうことが抑制され、養生シートがコンクリートに食い込むことを抑制することができることが確認された。
【符号の説明】
【0068】
1…型枠、1S…シート付き型枠、3…内面(一方の面)、5…外面(他方の面)、7…端面、C…コンクリート、CS…コンクリート構造物、10…養生シート、10a…端部、10b…端部、16…周縁部、18…シート本体部、20…被覆部材、22a…第1の面、26a…第2の面、E…端部処理部、S…平面。
【要約】
【課題】コンクリート構造物の表面の品質をより一層向上させることができるコンクリート構造物の製造方法及びシート付き型枠を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物の製造方法は、コンクリート打設用の型枠1及び養生シート10を準備する準備工程と、型枠1を設置する設置工程と、型枠1の内面3に養生シート10が貼り付けられた状態でコンクリートCの打設を行う打設工程と、コンクリートCの打設後に型枠1を脱型する脱型工程と、脱型工程の後に養生シート10をコンクリートCの表面に残置させて、コンクリートCを所定期間養生する養生工程と、を備える。この製造方法では、養生シート10の端部10aが型枠1の内面3を含む平面Sよりもコンクリート打設側において露出しないように、端部10aを覆う被覆部材20を養生シート10の周縁部16に貼り付ける端部処理が施された養生シート10を用いて打設工程を行う。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8