(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
円筒内で滑動係合するストッパを有する医療容器は、患者に薬剤を送達するために広く用いられている。
【0003】
そのような容器はシリンジ、カートリッジおよび自動注射器を備えている。
【0004】
患者または医療スタッフによってより容易に用いられるために、および薬剤をバイアルから注射デバイスに移す際に起こる汚染の危険をなくすために、これらは予め充填されていることが好ましい。
【0005】
そのような医療容器は、患者に薬剤を注射する際に円筒内でストッパが良好に滑動することを確実にするために、通常は潤滑化されている。
【0006】
ストッパの滑動運動には、ストッパを動かすための起動力を加えることと、次にストッパの動きを維持するための滑動力を加えることが含まれる。
【0007】
滑らかに滑動させるためおよびスティックスリップ作用を避けるためには、起動力および滑動力はできるだけ小さくなければならない。
【0008】
潤滑剤は鉱油もしくは植物油または合成潤滑剤からなっていてもよい。
【0009】
そのような用途における潤滑剤として、ポリ(ジメチルシロキサン)等のシリコーンオイルが広く用いられている。
【0010】
しかし、そのようなシリコーンオイルには経時的に、特に医療容器の無菌性を確実にするために医療容器に医薬組成物を充填する前または後に通常実施されるオートクレーブ処理の後では、不安定であるという欠点がある。
【0011】
エージングまたはそのような処理により、ストッパと円筒との間に加えられた圧力のもとに潤滑剤が絞り出されることがしばしば観察される。
【0012】
しかし、潤滑剤が絞り出されると、即ちストッパと円筒との界面から移動すると、ストッパの起動力は増大し、ストッパの滑らかな滑動を可能にしない。
【0013】
したがって、医療容器に入れられる医薬溶液の送達用量の精度は、特に注入をポンプによって行う場合に、低下する。
【0014】
特許文献1(「欧州特許出願公開第0920879号明細書」)には、非反応性シリコーンオイルおよび反応性シリコーン、即ちビニル系シリコーンの混合物からなり、混合物中の非反応性シリコーンの割合を5〜85重量%とした潤滑性組成物が提案されている。
【0015】
次にこの組成物は医療容器に適用され、架橋処理に供される。
【0016】
その結果、コーティングが円筒の内壁に沿った固形フィルムを形成する。
【0017】
しかし、そのようなコーティングでも機械的性能に劣り、即ち起動力および滑動力が大きい。
【0018】
特に、起動力は望ましい上限より大きいままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目標は、既知のコーティングの欠点を示さない医療容器用潤滑性コーティングを提供することである。
【0021】
より正確には、この潤滑性コーティングはより良い滑動特性を提供し、滅菌処理に対して良好な安定性および良好な経時的安定性(12から24ヵ月の保存期間を含む)を有することが必要である。
【0022】
さらに、潤滑性コーティング、医療容器に充填することを意図した医薬組成物と相互作用すべきでない。
【0023】
特に、潤滑性コーティングは、容器中に保存される医薬組成物に抽出される可能性のある成分を含むべきでない。
【0024】
本発明の目標は、そのような潤滑性コーティングの製造における中間生成物として用いることができる潤滑性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
一実施形態によれば、本発明は非反応性シリコーンと反応性シリコーンとの混合物を含む架橋潤滑性組成物を含む医療容器用潤滑性コーティングであって、反応性シリコーンはビニル系シリコーンおよびアクリレート系シリコーンの混合物を含む潤滑性コーティングを提供する。
【0026】
「反応性シリコーン」は、少なくとも1つの反応性官能基、即ち通常の照射条件下(例えばガンマ線またはUV照射)において重合する官能基を有するシリコーンポリマーを意味する。したがって、反応性官能基は通常、照射下に切断され、別の官能基と結合してポリマーを形成することができる少なくとも1つの化学結合を有する。
【0027】
「非反応性」シリコーンは、非反応性官能基、即ち通常の照射条件下では重合しない官能基のみを有し、上で定義した反応性官能基を全く有しないシリコーンポリマーを意味する。例えば、直鎖状アルキル鎖は本発明の意味において非反応性官能基と考えられる。
【0028】
有利には、前記潤滑性コーティングは、反応性シリコーンの架橋反応性官能基から形成された三次元固体構造および非反応性シリコーンを含む液相を含み、前記液相は前記三次元固体構造の中に保持されている。
【0029】
非架橋コーティング、即ち液相を取り囲む架橋固体ネットワークを生じないコーティングは、本発明の範囲外である。
【0030】
好ましい実施形態によれば、前記非反応性シリコーンの量は、前記潤滑性組成物の合計重量に対して80〜90重量%である。
【0031】
好ましい実施形態によれば、前記潤滑性組成物中のビニル系シリコーンの量は8〜15重量%、前記潤滑性組成物中の前記アクリレート系シリコーンの量は2〜5重量%である。
【0032】
好ましい実施形態によれば、前記潤滑性組成物中のビニル系シリコーンの量は10重量%、前記潤滑性組成物中の前記アクリレート系シリコーンの量は3重量%である。
【0033】
前記非反応性シリコーンはポリ(ジメチルシロキサン)であってよい。
【0034】
前記ビニル系シリコーンは、トリメチルシリル末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーを含んでよい。
【0035】
前記アクリレート系シリコーンは、トリメチルシリル末端アクリロキシプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーを含んでよい。
【0036】
好ましくは、前記潤滑性コーティングはゲル構造を有し、ゲル分率は25〜55重量%である。
【0037】
有利には、前記潤滑性コーティングはせん断速度0.1rad/s、25℃において500〜2000Pa.sのせん断粘度を有する。
【0038】
有利には、前記潤滑性コーティングはせん断速度0.1rad/s、25℃において20°〜40°の位相角を有する。
【0039】
一実施形態によれば、本発明は医療容器用の潤滑性コーティングの製造における中間生成物として使用可能な潤滑性組成物を提供する。
【0040】
前記潤滑性組成物は非反応性シリコーンと反応性シリコーンとの混合物を含み、前記反応性シリコーンはビニル系シリコーンおよびアクリレート系シリコーンの混合物を含む。
【0041】
好ましい実施形態によれば、前記非反応性シリコーンの量は前記潤滑性組成物の合計重量に対して80〜90重量%である。
【0042】
好ましい実施形態によれば、前記潤滑性組成物中のビニル系シリコーンの量は8〜15重量%、前記潤滑性組成物中の前記アクリレート系シリコーンの量は2〜5重量%である。
【0043】
好ましい実施形態によれば、前記潤滑性組成物中のビニル系シリコーンの量は10重量%、前記潤滑性組成物中の前記アクリレート系シリコーンの量は3重量%である。
【0044】
前記非反応性シリコーンはポリ(ジメチルシロキサン)であってよい。
【0045】
好ましい実施形態においては、前記ポリ(ジメチルシロキサン)の粘度は25℃において12500cStである。
【0046】
前記ビニル系シリコーンは、トリメチルシリル末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーを含んでよい。
【0047】
前記アクリレート系シリコーンは、トリメチルシリル末端アクリロキシプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーを含んでよい。
【0048】
一実施形態によれば、本発明は円筒および前記円筒内で滑動係合するストッパを有する医療容器であって、前記円筒および前記ストッパの少なくとも1つは上述の潤滑性コーティングによって少なくとも部分的にコートされている医療容器を提供する。
【0049】
好ましくは、前記コーティングの厚みは少なくとも350nmである。
【0050】
一実施形態によれば、前記コーティングは前記円筒の内表面の90%までを覆う。
【0051】
前記円筒は有利にはプラスチックから作成される。
【0052】
一実施形態によれば、本発明は、円筒および前記円筒内で滑動係合するストッパを有する医療容器を製造するための方法であって、
− 前記円筒の内表面および/または前記ストッパに潤滑性組成物を堆積させるステップであって、前記潤滑性組成物は非反応性シリコーンと反応性シリコーンとの混合物を含み、前記反応性シリコーンはビニル系シリコーンおよびアクリレート系シリコーンの混合物を含むステップと、
− 前記コートされた円筒および/またはストッパに照射を行なって前記潤滑性組成物を架橋し、潤滑性コーティングを形成させるステップと
を含む方法を提供する。
【0053】
好ましい実施形態によれば、前記照射はガンマ線照射、好ましくはコバルト−60線源から生成される照射を含む。
【0054】
一実施形態によれば、本発明は、医療容器の円筒内で滑動係合するストッパの起動力を低減させるための、非反応性シリコーンと反応性シリコーンとの混合物を含む潤滑性組成物における反応性シリコーン成分としてのビニル系シリコーンおよびアクリレート系シリコーンの混合物の使用であって、前記潤滑性組成物の架橋によって潤滑性コーティングが形成され、前記円筒の内表面および/またはストッパの少なくとも1つは前記潤滑性コーティングによってコートされている使用を提供する。
【0055】
好ましくは、前記潤滑性組成物中のビニル系シリコーンの量は8〜15重量%、前記潤滑性組成物中の前記アクリレート系シリコーンの量は2〜5重量%である。
【0056】
有利な実施形態においては、前記医療容器は前記潤滑性コーティングの形成の後に少なくとも1回のオートクレーブ処理に供される。
【0057】
一実施形態によれば、本発明は、医療容器の円筒と滑動係合するストッパの起動力および滑動力を低減する方法であって、
− 非反応性シリコーンと反応性シリコーンとの混合物を含む潤滑性組成物によって前記円筒および前記ストッパの少なくとも1つをコートするステップであって、前記反応性シリコーンがビニル系シリコーンおよびアクリレート系シリコーンの混合物を含むステップ、および
− 前記潤滑性組成物を架橋してコーティングを形成するステップ
を含む方法を提供する。
【0058】
前記方法の好ましい実施形態によれば、前記潤滑性組成物の合計重量に対して前記ビニル系シリコーンは8〜15重量%、前記アクリレート系シリコーンは2〜5重量%である。
【0059】
さらに、前記方法は、コーティングを形成するステップの後に前記医療容器を少なくとも1回のオートクレーブ処理に供するステップをさらに含んでもよい。
【0060】
本発明のその他の特徴、実施形態および利点は、以下の詳細な説明から、添付した図面に基づいて明らかとなるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の一実施形態によれば、医療容器の潤滑性コーティングのための組成物は非反応性シリコーンと反応性シリコーンとの混合物を含む。
【0063】
コートされた医療容器は、例えばシリンジであることができる。しかし医療容器はまた、カートリッジ、自動注射器または円筒内で滑動係合するストッパを有するその他の任意の注射デバイスであってもよい。
【0064】
図1に示すように、シリンジ1はフランジ6を有する円筒2を含み、シリンジはその近位端3においてストッパ5によって、またその遠位端4においてキャップ7によって閉鎖されている。
【0065】
シリンジ1は医薬組成物8によって満たされている。
【0066】
「遠位」は使用者の手から最も遠く、患者の皮膚に最も近い注射デバイスの部分を意味し、「遠位に」は注射の方向、即ち患者に向かう方向を意味する。
【0067】
「近位」は使用者の手に最も近く、患者の皮膚から最も遠い注射デバイスの部分を意味し、「近位に」は注射の方向の反対方向、即ち使用者に向かう方向を意味する。
【0068】
例えば、コーティングの非反応性シリコーンはポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)を含んでよく、その化学式は
【0070】
であり、式中、xは70〜1600である。
【0071】
好ましい実施形態によれば、潤滑性組成物中の非反応性シリコーンの量は80から90重量%、好ましくは85から90重量%の範囲、より好ましくは87重量%である。
【0072】
好ましくは、非反応性シリコーンの粘度は25℃において10000〜20000cStであり、この場合xは845〜970である。
【0073】
本発明の好ましい実施形態によれば、非反応性シリコーンの粘度は10000〜15000cStである。
【0074】
より好ましくは、非反応性シリコーンは25℃において12500cStのPDMSからなる。
【0075】
例えば、この非反応性シリコーンはDow Corning、Midland、USAからPDMS−DC 360として購入可能である。
【0076】
さらに、組成物はそれ自身ビニル系シリコーンおよびアクリレート系シリコーンの混合物を含む反応性シリコーンを含む。
【0077】
有利な実施形態によれば、ビニル系シリコーンはビニルメチルシロキサンとジメチルシロキサンのコポリマーであって、トリメチルシリル末端を有し、より正確にはビニルメチルシロキサンとジメチルシロキサンのブロックコポリマーである。
【0078】
そのようなコポリマーの化学式は、例えば
【0080】
であり、式中、mは280〜430、好ましくは350であり、nは18〜28、好ましくは23である。
【0081】
このビニル系シリコーンの粘度は、25℃で測定した場合、800〜1200cStである。
【0082】
コポリマー中のビニルメチルシロキサンの量は、好ましくは7〜8モル%である。
【0083】
例えば、このコポリマーはGelest Inc、Morisville、USAからVDT−731という名称で購入可能であるが、他の種類のビニルメチルシロキサンおよびジメチルシロキサンのコポリマー、代替として周期的または統計的ビニルメチルシロキサンおよびジメチルシロキサンのコポリマーを用いることができる。
【0084】
対照的に、非コポリマーのビニル系シリコーンは、上述のコポリマーほど良好な結果をもたらさない。
【0085】
有利な実施形態によれば、アクリレート系シリコーンはアクリロキシプロピルメチルシロキサンおよびジメチルシロキサンのコポリマーであり、トリメチルシリル末端を有する。
【0086】
そのようなコポリマーの化学式は、例えば
【0088】
であり、式中、pは60〜80、好ましくは76であり、qは7〜9、好ましくは8である。
【0089】
このアクリレート系シリコーンの粘度は、25℃で測定した場合、80〜120cStである。
【0090】
コポリマー中のアクリロキシプロピルメチルシロキサンの量は好ましくは15〜20モル%である。
【0091】
例えば、このコポリマーはGelest Inc、Morisville、USAからUMS−182という名称で購入可能であるが、他の種類のアクリレートメチルシロキサンおよびジメチルシロキサンのコポリマー、代替として周期的または統計的アクリレートメチルシロキサンおよびジメチルシロキサンのコポリマーを用いることができる。
【0092】
好ましい実施形態によれば、潤滑性組成物中の反応性シリコーンの量は10から20重量%、より好ましくは10から15重量%の範囲である。
【0093】
より正確には、潤滑性組成物に対するビニル系シリコーンの重量は8から15%、好ましくは8から12%であり、アクリレート系シリコーンの重量は2から5重量%、好ましくは2から3重量%の範囲である。
【0094】
本発明の好ましい実施形態によれば、コーティングの組成物は87%の非反応性PDMS、10%のビニル系シリコーンおよび3%のアクリレート系シリコーンを含む。
【0095】
さらに、潤滑性組成物中には抗酸化剤、例えば酸素捕捉剤、UVフィルター、超吸収剤、ポリマー、賦形剤、繊維、金属もしくは金属性添加物または任意の強化材料等の添加物をさらに加えてもよい。
【0096】
潤滑性組成物を調製するために、上述の3つの成分を一緒に混合する。
【0097】
必要であれば、混合中に生成したかも知れない気泡を除去するために、得られた混合物を混合後に保持して脱ガスする。
【0098】
そのような潤滑性組成物は、医療容器の円筒の内壁に適用することができる粘稠な流体の形態である。
【0099】
適用は通常室温で行なわれるが、粘稠な組成物を熱処理に供した後に適用することができる。
【0100】
代替的実施形態においては、この組成物を円筒の表面により強固に接着させることを可能にするために、円筒を熱処理に供した後に、または医療容器を成形もしくは形成した後に直接、潤滑性組成物を適用することができる。
【0101】
潤滑性組成物は、円筒内にストッパを挿入する前にストッパに適用してもよい。
【0102】
その場合には、潤滑性組成物は円筒と接触させることが意図されたストッパの表面の少なくとも一部に適用されるが、ストッパの表面の他の部分も潤滑性組成物で覆ってもよい。
【0103】
潤滑性組成物の適用は、それ自体公知であり、したがって本明細書中で詳述しないツール、例えばスプレー装置を用いて行うことができる。
【0104】
望ましい滑動特性を提供するため、潤滑剤の厚みをモニターする必要がある。
【0105】
実際、層の厚みは、反射率測定法で測定した場合、少なくとも350nmある必要がある。
【0106】
さらに、潤滑性組成物は円筒の90%までを覆うように適用される。
【0107】
特に、医療容器がシリンジである場合、円筒の両端を除いて円筒の中央部分のみに潤滑性組成物を適用することが好ましい可能性がある。
【0108】
例えば、ストッパ5を起動するプランジャーロッドの側に位置する円筒の近位端3が潤滑化されていない場合には、ストッパがそれ自体潤滑化されていても、ストッパの取り外しが妨げられる可能性がある。実際、円筒のこの非潤滑部分においては摩擦力が極めて大きく、円筒からストッパを取り外すためには重大な力が必要になるであろう。
【0109】
一方、注射ポートの側の円筒の遠位端4が円筒の長さの一部のみしか潤滑化されていない場合には、潤滑性コーティングの一部がストッパによって追い出されるので、ストッパ5は注射ポートの方に動くことが依然として可能である。しかし、潤滑層が消費されるので、ストッパを後退させることはできないであろう。
【0110】
医療容器の円筒および/またはストッパに潤滑性組成物を適用した後、潤滑性組成物を架橋して潤滑性コーティングを形成させるために、架橋処理を行うことができる。
【0111】
好ましくは、潤滑性コーティングは架橋潤滑性組成物からなる。
【0113】
好ましい実施形態によれば、ガンマ線照射は16から32kGyの範囲の線量のコバルト−60線源によって提供される。
【0114】
あるいは、他の種類の架橋処理、例えばUVもしくはX線照射またはプラズマ重合を行なってもよい。
【0115】
照射によって、主としてビニル系シリコーンとアクリレート系シリコーンの反応性官能基の間の反応によるコーティング組成物の架橋がもたらされ、照射後にコーティングがゲル構造、即ち液相を取り囲む固相を有することが示された。
【0116】
したがってコーティングの組成は、液相(遊離の非架橋シリコーンに対応する)を保持する、架橋ビニル系およびアクリレート系シリコーンの固体の三次元分子ネットワークからなる。
【0117】
このユニークなゲル構造は、反応性シリコーンがビニル系およびアクリレート系シリコーンの両方を含む場合にしか存在しないことが示された。
【0118】
組成物の表面層のみを架橋するであろうプラズマ処理とは対照的に、ガンマ線またはUV照射によって、コーティングの厚み全体に実質的に均一なゲル構造がもたらされる。
【0119】
層の厚みは照射後にも変化しないことを認め得る。
【0120】
ゲル構造は以下の特徴によって定義することができる:
− 溶媒膨潤法(下記参照)によって決定されるゲル分率が25〜55重量%の範囲である、および/または
− せん断速度0.1rad/sおよび25℃におけるせん断粘度が500から2000Pa.sの範囲である、および/または
− せん断速度0.1rad/sおよび25℃における位相角が20〜40°である。
【0121】
せん断粘度および位相角はポリマーの粘弾性挙動を特徴付けるものであり、レオメータで測定される。
【0122】
ゲル構造によって、静的および動的な観点の両方におけるコーティングの有利な挙動が提供される。
【0123】
実際、コーティングの粘性部分は滑動特性に関連している一方、弾性部分は低い起動力を得ることに関与している。
【0124】
特に、ストッパを円筒内で組み立てる際の潤滑性コーティングの絞り出しをゲル構造によって避けることができ、それによりストッパを円筒内で動かし始めるために必要な起動力が低減される。さらに、このゲル構造の粘弾性特性によって、ストッパを円筒に沿って動かす際のストッパの滑動力が小さくなる。
【0125】
さらに、ゲル構造によって、オートクレーブに供する際のコーティングの耐性も改善される。
【0126】
コートされた容器は、その無菌性の観点から少なくとも1回のオートクレーブサイクル(通常、飽和蒸気雰囲気下、120℃、圧力3barおよび20分間)に供しなくてはならないので、このことは特に重要である。
【0127】
以下の試験に示すように、非反応性シリコーン(PDMS等)とビニル系シリコーンの混合物に少量のアクリレート系シリコーンを添加することによって、照射ステップ後のゲル構造および対応する潤滑性コーティングの強化された特性が提供される。
【0128】
実際、非反応性シリコーン(PDMS等)およびビニル系シリコーンのみを含む潤滑性組成物は、Co−60照射後にゲル構造をもたらさない。
【0129】
この三次元ネットワークが存在しないために、この潤滑性コーティングは液体であり、オートクレーブサイクルへの耐性がない。
【0130】
そのようなコーティングを適用できる医療容器は、プラスチックまたはガラスの円筒を含み得る。
【0131】
プラスチック円筒は一般に、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、もしくは環状ポリオレフィン等のポリオレフィン、またはクリスタルクリアーポリマーから作られている。
【0132】
ストッパは、少なくとも円筒と接触する表面において、同様のコーティングで覆われてもよい。
【0133】
しかし、円筒がコートされている場合には、ストッパに潤滑性コーティングを適用する必要ない可能性がある。
【0134】
いったん円筒表面に潤滑性組成物を適用すれば、潤滑剤を架橋し、円筒を滅菌するために、これをガンマ線照射等の照射に供する。
【0135】
次いで、円筒に液体医薬組成物等の液体を充填して、ストッパで閉鎖し、医療容器を形成することができる。
【0136】
さらに、医療容器を充填し閉鎖する前または後に、UV線またはオートクレーブ処理等のさらなる滅菌ステップを実施することができる。
【0137】
代替的実施形態においては、円筒およびストッパを組み立てる前の最初のステップにおいてこれらを潤滑してもよい。次いで医療容器をガンマ線等の照射に供し、滅菌およびコーティングの架橋を達成する。その後、対応する医療容器に液体医薬組成物等の液体を充填する。
【0138】
ストッパで閉鎖された充填済み医療容器は、次いで最終ステップでオートクレーブ処理によって滅菌することができる。
【0139】
プラスチック円筒が潤滑化され、ブチルゴムストッパが潤滑化されていない、脱イオン水50mlを充填した50mlのコートされたシリンジについて、オートクレーブサイクルを2回行なった後、滑動試験を行なった。
【0140】
速度100mm/分で起動力および滑動力を測定したところ、それぞれ30N未満および15N未満であった。
【0141】
化学的観点からは、潤滑性組成物中に抽出可能な成分がないように注意しなければならない。
【0142】
抽出可能な成分は、潤滑性コーティングから抽出される可能性があり、かつ容器中に入れられた液体医薬組成物に移動し得る化学成分に対応する。したがって、この液体医薬組成物中の揮発分、半揮発分および不揮発分ならびに無機シリコーン含有量を測定しなければならない。
【0143】
上述の潤滑性コーティングを有する医療容器について、抽出可能な成分は、アクリレート系抽出分について現在のところ5μg/日である適格閾値未満である。
【0144】
そのような化学特性は、患者の安全性と医薬組成物の化学的安定性の両方を保証するために、充填済み医療容器の場合に特に重要である。それは、そのような容器は患者に注射するために用いるまで、長期(通常12から24ヵ月)にわたって保存されるからである。
【0145】
この点に関して、PDMSおよびアクリレート系シリコーンのみを(約25%の重量比で)含む潤滑性組成物はCo−60照射後に粘稠な液体をもたらしたが抽出分の含有量も多かったことが観察されており、これは受け入れられない。
【0146】
[実施例]
試験
PDMS 12500cSt、VDT−731ビニル系シリコーンおよびUMS−182アクリレート系シリコーンの百分率(重量による)が異なる三種の異なったシリコーン混合物からなる組成物から得られた潤滑性コーティングについて試験を行なった。F3組成物が本発明の一実施形態に相当する。
【0148】
それぞれの組成物は、下記のプロトコルに従って調製した。
【0149】
異なった成分を混合した後、それぞれの組成物を約2時間、脱ガスする。
【0150】
次いで、3.4から5.4mgの範囲内のそれぞれの組成物をシリコーン化ベンチにおいてクリスタルクリアーポリマーシリンジの50mlの円筒の内壁に堆積させ、線量25kGy±3でCo−60線源によってガンマ線照射し、潤滑性コーティングを形成させる。
【0151】
シリコーン化ベンチは、この例では、噴霧によって作動する、ジャー圧力約2barの移動ノズルからなるが、他の任意の種類の堆積法を用いることができる。
【0152】
シリンジを潤滑するために用いたものと同じ混合物をもビーカーに注いでバルク体積(以後、「バルク組成物」と称する)を形成し、同じガンマ線照射に供した。
【0153】
次いで、コートした円筒に水を満たしてストッパで閉鎖し、1回または2回のオートクレーブサイクルに供する。それぞれのオートクレーブサイクルは温度120℃、圧力3bar、時間20分で行う。
【0154】
ストッパは潤滑していないが、線量25kGy±3でガンマ線照射した。
【0155】
円筒表面上の潤滑剤再分配の影響
円筒内壁に適用したコーティングの厚みTの再分配を、Rapid Layer Explorer装置で測定した。装置の較正を、潤滑剤またはコーティングを全く施していない円筒について行なった。
【0156】
図2に示すように、コーティング9の厚みをシリンジ1のフランジ6から円筒2の遠位端4まで、種々の距離Dにおいて測定した。
【0157】
図3に示す曲線は、4本の50mlプラスチック円筒に堆積した潤滑剤の、RapIDで測定した平均厚みを表わす。
【0158】
図3で見ることができるように、コーティングの再分配は直線的でなく、350nmを超える厚みについて滑動力および起動力の測定を行うことを決めた。それは、これが良好なストッパ起動を得るために必要な最小の厚みであるからである。
【0159】
機械的試験
F1、F2およびF3組成物から得られた異なったコーティング、即ちコーティングF1、F2およびF3について、円筒内部のストッパの挙動を解析するために、いくつかの機械的試験を行なった。
【0160】
試験は、1回のオートクレーブサイクルの後の、ストッパの起動力および滑動力を測定することからなっており、起動力は円筒に沿ってストッパを動かすために必要な力と定義され、滑動力は円筒に沿ったストッパの動きを維持するために必要な力と定義される。
【0161】
この目的のため、Lloyd LRX Plusベンチを用いて円筒内におけるストッパの滑動を誘起し、対応する起動力および滑動力を測定した。
【0162】
起動力および滑動力は100mm/分の速度で測定した。
【0163】
測定はそれぞれのコーティングF1、F2およびF3について行なった。それぞれのコーティングを2つの異なった50mlプラスチックシリンジの円筒に適用し、シリンジを脱イオン水50mlで満たした。
【0166】
この表より、起動力は本発明によるコーティング(組成物F3)の方が組成物F1およびF2から得られたコーティングよりも実質的に小さいことが分かる。
【0167】
この小さい起動力の値は、F3コーティングで潤滑した円筒の中のストッパが滑らかな初期滑動を有し、スティックリップレベルが低く、患者への医薬組成物のより正確な用量送達を可能にすることを意味している。
【0168】
図4に、F1およびF3コーティングでコートされた円筒によって提供されたオートクレーブサイクルの数による起動力の変化を示す。
【0169】
実際のところ、F2コーティングでコートされた円筒についての起動力は評価していない。それは、1回のオートクレーブサイクルの後で起動力が既に高すぎたためである。
【0170】
図4より、F1コーティングについてはオートクレーブサイクルの数とともに起動力が増大し、これはストッパを円滑に起動するには不利であるが、その一方、F3コーティングについての起動力はオートクレーブサイクルにわたって実質的に安定であることが観察できる。
【0171】
言い換えると、オートクレーブサイクルは医療容器を滅菌するために必要であるが、これは本発明によるコーティングの滑動特性に悪影響を与えず、この滑動特性は2回のオートクレーブサイクルの後でさえも安定なままである。
【0172】
さらに、本発明によるコーティングについてエージングの影響を測定した。F1およびF2コーティングについては、エージングは一般に起動力の増大を引き起こすので、この測定を行なわなかった。実際、これら2つの組成物については初期の起動力が極めて大きいので、F1およびF2コーティングはエージングによって満足できる結果をもたらさないだろうということは明白である。
【0173】
したがって、
図5はF3コーティングでコートしたシリンジの起動力の経時変化を示し、第1の測定はt=0(即ち、組成物の適用によるコーティングの形成および照射の後)で行い、第2の測定は1ヵ月後に行なったものである。
【0174】
エージングは起動力を僅かに低減させる効果を有し、これはストッパの初期滑動に有利であることを認め得る。
【0175】
したがって、F3組成物のユニークな処方および特にビニル系およびアセテート系シリコーンの両方を含む反応性シリコーン部分によって、数回のオートクレーブサイクルおよび/または延長された保存期間の後でさえも、最適な滑動力および起動力が可能となる。
【0176】
ゲル分率
別の実験において、ガンマ線照射に供した後の異なったコーティングF1、F2、F3についてゲル百分率を検討した。F1コーティングはガンマ線照射後にゲル構造を有しないので、この組成物についてはデータを集めなかった。ゲル分率はバルク組成物について測定し、その初期重量を測定する。
【0177】
この試験の間、ポリマーを膨潤させ、遊離のオイルを抽出するために、12時間、溶媒(即ちトルエン)をコーティングと混合する。
【0178】
F2コーティングはトルエンによって完全に抽出され、ゲル分率は実質的にゼロになるので、重量によるゲル分率(またはゲル百分率)の測定はF3コーティングについてのみ行なった。
【0179】
抽出を行なえば、溶液を濾過してポリマーを回収し、オーブン中40℃で24時間、トルエンを完全に蒸発させる。
【0180】
次に乾燥ポリマーの最終重量を測定する。
【0181】
ゲル分率はポリマーの最終重量と初期重量との比である。
【0182】
次の表に見ることができるように、F3コーティングについてのゲル分率は約35重量%である。
【0183】
顕著なゲル分率、即ち25から55%の範囲のゲル分率は、特にオートクレーブ処理後の絞り出しに対する良好な耐性に相関する。それは、このゲル分率が、液体の非反応性シリコーンを取り囲む架橋されたビニル系およびアクリレート系シリコーンによって形成された高密度の三次元固体ネットワークを示すからである。
【0184】
結果として、ゲル分率35%のF3コーティングが、コーティングのために選択される製品と考えることができる。
【0185】
粘弾性特性
バルク組成物として3種のF1、F2、F3コーティングを調製したときに、これらのそれぞれについて粘弾性特性(せん断粘度および位相角)を測定した。
【0186】
せん断粘度(Pa.s)は、流れに対する系の抵抗性を判定するものであり、適用されたせん断応力に対して系がどれだけ抵抗するかを意味する。
【0187】
したがって、せん断粘度はせん断力を加えたときの変形に対するポリマーの抵抗に対応する。
【0188】
位相角(°)は系が機械的エネルギーを熱として消散する能力に関連し、位相角が大きければ材料の消散性が大きいことが知られている。
【0189】
この目的のため、バルク組成物を回転レオメータに負荷し、下プレートと上プレートの間隙を約1mmとして、周波数100〜0.1rad/s、25℃でレオメータを回転させる。
【0190】
せん断速度0.1rad/sにおける結果を下表に示す。
【0192】
F1バルクコーティングはゲル構造を有しないので、この組成物についてはせん断粘度も位相角値も測定しなかった。
【0193】
他のバルクコーティングについては、F2コーティングは大きな位相角を有し、これは消散性が高い材料であってそのせん断粘度が低いために、適用されたせん断応力に対する抵抗性が低く、ゲル百分率がゼロであることに関連して絞り出しが大きいことを意味している。
【0194】
これとは逆に、F3コーティングはそのせん断粘度値が高いことに関連して、適用されたせん断応力に対して高い抵抗性を有し、その位相角が小さいことから示されるように消散性が低く、35%というゲル百分率に相関して絞り出しが小さい。したがって、これらの結果から、F3コーティングがシリンジ筒内でストッパが良好な滑動をするために必要な全ての特徴を有していることが確認される。
【0195】
実際、25℃でのせん断速度0.1rad/sにおけるせん断粘度500〜2000Pa.s、位相角20°〜40°、およびゲル分率25〜55重量%のコーティングが、極めて良好なコーティング特性をもたらすであろうことが実証された。
【0196】
化学的試験
コーティングの経時的挙動を解析するため、シリンジのコーティングに用いた3種のコーティングF1、F2、F3について、40℃で1ヵ月エージングした後に抽出可能成分を測定した。
【0197】
特に、いくつかの分析を行って、シリンジ中のアクリレート系シリコーンからの抽出分を算定した。例えば、揮発性化合物はHS−GC/MS(ヘッドスペース−ガスクロマトグラフィー−マススペクトロメトリーの略語)により分析し、半揮発性化合物はLiq−GC/MS(液体試料−ガスクロマトグラフィー−マススペクトロメトリーの略語)により分析し、不揮発性物質の検出はUPLC−DAD(超高性能液体クロマトグラフィー−ダイオードアレイ検出器の略語)により行い、不揮発性物質の同定はLC−Q−TOF(液体クロマトグラフィー−四極子飛行時間の略語)により行い、酸性化合物はIC(イオンクロマトグラフィーの略語)およびICP/MS(誘導結合プラズマ−マススペクトロメトリーの略語)による元素分析により実施した。
【0198】
そのような実験を行うため、50mlのプラスチックシリンジをいったんコートしてそれに水を満たし、ゴムストッパおよび先端キャップで閉鎖した。 次いでシリンジを120℃、20分で2回オートクレーブ処理して40℃で1ヵ月保存した。
【0199】
異なったコーティングF1、F2およびF3について、MS/MSと結合したUPLC−DADによって決定したアクリレート副生物の濃度および量を下表に示す。この副生物の定量を評価することは重要である。それは、この副生物が医薬溶液内で移動するか、または医薬溶液自体と相互作用する可能性さえもあるからである。
【0201】
この表に見られるように、F1コーティングについてはデータを生成していない。それは、F1コーティングの組成がアクリレート系シリコーンを全く含んでいないからである。
【0202】
それにも関わらず、F2コーティングはシリンジあたり26μgのレベルの大量のアクリレート副生物を生じ、これは50mlのシリンジについて約5μgという推奨される閾値を超える。一方、本発明の一実施形態に相当するF3コーティングについては、量は約100ppbまたは5μgの検出限界(LOD)未満である。
【0203】
さらに、F1およびF3コーティングの組成物中に存在するビニル系シリコーンからの抽出可能な成分は見られなかったことに注意しなければならない。
【0204】
したがって、アクリレート系またはビニル系シリコーンからの副生物はシリンジに入れられた医薬製品中に移動しないであろうから、F3コーティングは円筒の内壁にコーティングするために選択すべき製品である。
【0205】
機械的性能
別の実験において、このような組成物でコートしたシリンジのオートクレーブ処理およびエージングの後の機械的性能を解析するため、本発明によるコーティングを検討した。
【0206】
F3コーティングでコートした機械的性能を下表にまとめる。ここでは50mlの円筒に4.4mgの潤滑剤組成物を噴霧し、線量25kGy±3でガンマ線照射した。
【0207】
それぞれのオートクレーブサイクルは温度120℃、圧力3barで20分間行う。エージングは40℃、1ヵ月の保存によって行う。
【0208】
起動力および滑動力のメディアン値(med)および標準偏差(stdev)を下表に示す。
【0210】
表から分かるように、40℃でのエージングがあった場合もなかった場合も、1回または2回のオートクレーブサイクルの後、起動力は僅かに増加する。
【0211】
そのため、起動力の値はオートクレーブおよび/またはエージングの後でも1桁以内の相違に留まると結論することができる。
【0212】
したがって、F3コーティングはその三次元架橋ネットワークによって、経時的にも1、2回のオートクレーブサイクルの後でも極めて安定である。
【0213】
滑動力に関しては、値はまた僅かに増加している。
【0214】
そのため、オートクレーブ処理は円筒の壁に沿ったストッパの滑動性能に影響しないと結論することができ、それはF3コーティングがオートクレーブ処理にも関わらず経時的に安定であることを意味している。
【0215】
結論として、反応性および非反応性シリコーンの混合物を含む潤滑性組成物中の反応性シリコーン成分としてのアクリレート系およびビニル系シリコーンの組み合わせは、照射後に、抽出可能な成分が全くないかもしくは限られる、起動力および滑動力を低減させるゲル構造を示す(エージングおよび/またはオートクレーブ処理の後でさえも)架橋潤滑性コーティングの提供を助長する。
【0216】
図面を参照して本発明の具体的な実施形態を記述したが、当業者であれば本発明の範囲および精神から逸脱することなく、このような実施形態に改変および変更を加えることができる。したがって、上記の詳細な説明は、制限的ではなく説明的であることを意図する。本発明は、添付した特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の意味および均等の範囲内に含まれる本発明に対する全ての変更は、その範囲内に包含されるべきものである。