【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記立体開孔メッシュシートと、エアレイド吸収体との組合せに係る吸収性物品を想定した場合、下記のような問題点が予想される。
(1)立体開孔メッシュシートの上面に体液を残留させないようにするには、吸収体が十分な体液吸収能を備える必要があるところ、前記エアレイドを吸収体として用いた薄型の吸収性物品の場合は、従来のフラップパルプ吸収体よりも体液の吸収量が少ない。この欠点を補うためには、(1)目付けを上げる、(2)高吸収性ポリマーの混合量を増加するなどの方法が考えられるが、目付けを上げた場合は吸収体が厚くなり、エアレイド吸収体を用いた意義が失われてしまう。また、高吸収性ポリマーの配合量を上げすぎると、膨潤した吸水ポリマー間の空隙が極端に低下する、所謂「ゲルブロッキング」が発生し、所望の吸水力を発現できなくなる、高吸収性ポリマーが偏って配置され易く、型崩れを起こしやすくなるなどの問題が発生してしまう。
(2)立体開孔メッシュシートの上面に体液を残留させないように吸収体に素早く体液を吸収させるために、前記特許文献1では、前記微小開口とは別に、巨視的デボスを形成すること、そしてこれら巨視的デボスの底面を流体通過孔として開口とするが記載されているが、高吸収性ポリマーの配合量を上げたエアレイド吸収体の場合、前記流体通過孔から高吸収性ポリマーが逸脱する場合がある。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、前記立体開孔メッシュシートと、エアレイド吸収体との組合せに係る吸収性物品において、前記立体開孔メッシュシートに微小孔とは別の、相対的に開孔面積の大きな流体通過孔を形成することなく、立体開孔メッシュシート上面の体液を吸収体に素早く吸収させることができ、かつ吸収体の体液吸収量の増大を図り得るようにすること、更には高吸収性ポリマーによるゲルブロッキング、高吸収性ポリマーの偏り、逸脱や型崩れを防止するようにすること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記透液性表面シートは、肌側に突出する多数の微小凸部が形成されるとともに、これら微小凸部の頂面を開孔とした立体開孔メッシュシートを用い、この立体開孔メッシュシートに対し
て、非肌面側に窪む多数の凹部が形成されて
いるとともに、前記凹部の形状は凹部間の横断面形状が肌側に突出する円弧状を成し、その境界部に形成された逆錐状の凹部とされ、
前記吸収体は、前記透液性表面シート側から順に、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーA層、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーB層、エアレイドパルプ不織布層の5層構造のエアレイド吸収体とされ、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーは前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーよりも相対的に吸収速度の高い物性値を有するものが使用されており、前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーは前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーよりも相対的に吸収容量が高い物性値を有するものが使用されて
おり、前記透液性表面シートと吸収体との間に、エアスルー不織布が介在されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、透液性表面シートとして、肌側に突出する多数の微小凸部が形成されるとともに、これら微小凸部の頂面を開孔とした立体開孔メッシュシートを用い、この立体開孔メッシュシートに対して非肌面側に窪む多数の凹部を形成する。
この凹部の形状は、凹部間の横断面形状が肌側に突出する円弧状を成し、その境界部に形成された逆錐状の凹部とされる。排出された体液は、前記微小孔を通過して吸収体側に移行するが、前記凹部が一時的にタンクの役割を果たすため、体液が前記微小孔から素早く流れ出やすくなる。また、相対的に凸部の部分は早く体液が無くなるため、肌に対しての湿り感も早期に無くなる。
【0010】
また、前記立体開孔メッシュシートに微小孔とは別の、相対的に開孔面積の大きな流体通過孔を形成していないため、高吸収性ポリマーが外に逸脱することもない。
【0011】
一方、吸収体は前記透液性表面シート側から順に、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーA層、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーB層、エアレイドパルプ不織布層の5層構造のエアレイド吸収体とされ、前記高吸収性ポリマーA層は相対的に吸収速度の高い物性値を有するものが使用され、前記高吸収性ポリマーB層は相対的に吸収容量の高い物性値のものが使用されている。
【0012】
従って、表面シートから流れ込んできた体液を素早く吸収体に引き込むことができる。また、体液は前記高吸収性ポリマーB層によって薄型のエアレイド吸収体であっても多くの体液を保持できるようになり、吸収量の増大を図り得るようになる。高吸収性ポリマーはA層、B層に分けて層状に配置されているため、偏って配置されることもなく、また型崩れを起こし難くなる。
【0013】
また、本発明
では、前記透液性表面シートと吸収体との間に、エアスルー不織布を介在させることにより、体液が吸収体側に移行し易くし
ている。すなわち、嵩が出やすいエアスルー不織布をセカンドシートとして用いると、透液性表面シートと吸収体との間に隙間が出来ず、連続性が確保されるため、体液が吸収体側に移行し易くなる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーは、下記<吸水速度試験>による吸収速度が40(s)未満である請求項1記載の吸収性物品。
【0015】
<吸水速度試験>
(1)100mlビーカーに生理食塩水50mlとスターラーチップを入れ、ビーカーをマグネチックスターラーに載せる。
(2)マグネチックスターラーの回転数を600±60回に合わせ、生理食塩水に渦を発生させた後に2.0gをビーカーに素早く添加する。
(3)ストップウォッチを用いて、ポリマー添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(s)を計測し、吸収速度(s)とする。
【0016】
上記請求項2記載の発明は、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーの吸水速度特性を数値的に規定したものである。
【0017】
請求項3に係る本発明として、前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーは、下記<吸水量試験>による吸水量が70(g)以上である請求項1,2いずれかに記載の吸収性物品。
<吸水量試験>
(1)ポリマー0.5gをティーバッグ(200メッシュナイロン製袋)を、200mlビーカーに生理食塩水100mlを入れる。
(2)30分間浸漬し、浸漬後5分間吊して水切りし、質量Wa(g)を測定する。
(3)ポリマーを入れていないティーバッグも同様の操作を行い、質量Wb(g)を測定する。
(4)Wa(g)−Wb(g)/ポリマーの質量(g)より、吸水量(g)を求める。
【0018】
上記請求項3記載の発明は、前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーの吸水量特性を数値的に規定したものである。
【0019】
請求項
4に係る本発明として、前記吸収体は、目付けが150〜200g/m
2であり、吸収体の全重量に対する高吸収性ポリマーの配合重量が30〜50重量%であり、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマー/前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーの重量比率が1〜1.5であり、全体の厚みが2mm以下である請求項1〜
3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項
4記載の発明は、吸収体の好適な物性値を具体的に規定したものである。すなわち、吸収体の目付けは150〜200g/m
2とするのが望ましく、吸収体の全重量に対する高吸収性ポリマーの配合重量が30〜50重量%とするのが望ましい。また、前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーに対する前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーの重量比率は、1〜1.5として、両者を同じ分量で配置するか、体液の吸収性を高めるため前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーを100〜150重量%以内でやや多めに配置する。さらに前記吸収体の厚みは2mm以下とするのがよい。