特許第5945075号(P5945075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945075
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20160621BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20160621BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   A61F13/511 100
   A61F13/47
   A61F13/534 110
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-528362(P2015-528362)
(86)(22)【出願日】2014年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2014069743
(87)【国際公開番号】WO2015012399
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-155558(P2013-155558)
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】則元 由美
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−508528(JP,A)
【文献】 特開2013−132434(JP,A)
【文献】 特開昭62−057551(JP,A)
【文献】 特開平10−324750(JP,A)
【文献】 特開2013−013524(JP,A)
【文献】 特開2012−183175(JP,A)
【文献】 特開2005−160717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 −13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記透液性表面シートは、肌側に突出する多数の微小凸部が形成されるとともに、これら微小凸部の頂面を開孔とした立体開孔メッシュシートを用い、この立体開孔メッシュシートに対して、非肌面側に窪む多数の凹部が形成されているとともに、前記凹部の形状は凹部間の横断面形状が肌側に突出する円弧状を成し、その境界部に形成された逆錐状の凹部とされ、
前記吸収体は、前記透液性表面シート側から順に、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーA層、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーB層、エアレイドパルプ不織布層の5層構造のエアレイド吸収体とされ、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーは前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーよりも相対的に吸収速度の高い物性値を有するものが使用されており、前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーは前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーよりも相対的に吸収容量が高い物性値を有するものが使用されており、前記透液性表面シートと吸収体との間に、エアスルー不織布が介在されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーは、下記<吸水速度試験>による吸収速度が40(s)未満である請求項1記載の吸収性物品。
<吸水速度試験>
(1)100mlビーカーに生理食塩水50mlとスターラーチップを入れ、ビーカーをマグネチックスターラーに載せる。
(2)マグネチックスターラーの回転数を600±60回に合わせ、生理食塩水に渦を発生させた後に2.0gをビーカーに素早く添加する。
(3)ストップウォッチを用いて、ポリマー添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(s)を計測し、吸収速度(s)とする。
【請求項3】
前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーは、下記<吸水量試験>による吸水量が70(g)以上である請求項1,2いずれかに記載の吸収性物品。
<吸水量試験>
(1)ポリマー0.5gをティーバッグ(200メッシュナイロン製袋)を、200mlビーカーに生理食塩水100mlを入れる。
(2)30分間浸漬し、浸漬後5分間吊して水切りし、質量Wa(g)を測定する。
(3)ポリマーを入れていないティーバッグも同様の操作を行い、質量Wb(g)を測定する。
(4)Wa(g)−Wb(g)/ポリマーの質量(g)より、吸水量(g)を求める。
【請求項4】
前記吸収体は、目付けが150〜200g/mであり、吸収体の全重量に対する高吸収性ポリマーの配合重量が30〜50重量%であり、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマー/前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーの重量比率が1〜1.5であり、全体の厚みが2mm以下である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアレイドパルプ不織布を吸収体に用いた薄型の、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布などの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られているが、収納性が悪い、身体に対するフィット性が悪い、物流の効率化や省資源化の理由から、近年、エアレイドパルプ不織布(以下、単にエアレイドともいう。)を吸収体として用いた薄型の吸収性物品が知られている。
【0003】
一方、前記透液性表面シートとして、柔軟な絹様の触感を示す微小開口化高分子ウエブ(以下、立体開孔メッシュシートという。)が下記特許文献1に開示されている。このメッシュシートは、図6に示されるように、少なくとも一面に柔軟な絹様の触感をもつ微小開口化高分子ウェブ110において、上記ウェブの絹様触感面は、ウェブと観察者の目との間の垂直距離が少なくとも約30.5cm(12インチ)である時に、正常の肉眼には個々には識別できない頂部の開口による不連続の表面変形部120のパターンを示し、各表面変形部120は、表面変形部120を形成する面からほぼ垂直に高さを有し、各表面変形部120の端部には最大高さ点とほぼ一致して少なくとも1つの微小開口部125が形成され、上記微小開口部125は、ウェブの触感がほぼ柔軟かつ絹様となるように、表面変形部120の各々の耐圧縮性および耐剪断性並びに観察者の皮膚との接触度を減少する比較的薄い不規則な形の花弁状部を有する噴火口状開口部である微小開口化高分子ウェブである。同特許文献では、前記微小開口125とは別に、巨視的デボスを形成すること(同文献の第6図参照)、そして吸収体への流体輸送特性を上げるために、これら巨視的デボスの底面を流体通過孔として開口とすることが開示されている(同文献の第7図参照)。
【0004】
なお、前述のように、肌側に突出する多数の微小凸部が形成されるとともに、その頂部を開口とした立体開孔メッシュシートを開示する文献としては他に、例えば下記特許文献2、3等を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2543502号公報
【特許文献2】特開平8−260329号公報
【特許文献3】特開平10−131014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記立体開孔メッシュシートと、エアレイド吸収体との組合せに係る吸収性物品を想定した場合、下記のような問題点が予想される。
(1)立体開孔メッシュシートの上面に体液を残留させないようにするには、吸収体が十分な体液吸収能を備える必要があるところ、前記エアレイドを吸収体として用いた薄型の吸収性物品の場合は、従来のフラップパルプ吸収体よりも体液の吸収量が少ない。この欠点を補うためには、(1)目付けを上げる、(2)高吸収性ポリマーの混合量を増加するなどの方法が考えられるが、目付けを上げた場合は吸収体が厚くなり、エアレイド吸収体を用いた意義が失われてしまう。また、高吸収性ポリマーの配合量を上げすぎると、膨潤した吸水ポリマー間の空隙が極端に低下する、所謂「ゲルブロッキング」が発生し、所望の吸水力を発現できなくなる、高吸収性ポリマーが偏って配置され易く、型崩れを起こしやすくなるなどの問題が発生してしまう。
(2)立体開孔メッシュシートの上面に体液を残留させないように吸収体に素早く体液を吸収させるために、前記特許文献1では、前記微小開口とは別に、巨視的デボスを形成すること、そしてこれら巨視的デボスの底面を流体通過孔として開口とするが記載されているが、高吸収性ポリマーの配合量を上げたエアレイド吸収体の場合、前記流体通過孔から高吸収性ポリマーが逸脱する場合がある。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、前記立体開孔メッシュシートと、エアレイド吸収体との組合せに係る吸収性物品において、前記立体開孔メッシュシートに微小孔とは別の、相対的に開孔面積の大きな流体通過孔を形成することなく、立体開孔メッシュシート上面の体液を吸収体に素早く吸収させることができ、かつ吸収体の体液吸収量の増大を図り得るようにすること、更には高吸収性ポリマーによるゲルブロッキング、高吸収性ポリマーの偏り、逸脱や型崩れを防止するようにすること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記透液性表面シートは、肌側に突出する多数の微小凸部が形成されるとともに、これら微小凸部の頂面を開孔とした立体開孔メッシュシートを用い、この立体開孔メッシュシートに対して、非肌面側に窪む多数の凹部が形成されているとともに、前記凹部の形状は凹部間の横断面形状が肌側に突出する円弧状を成し、その境界部に形成された逆錐状の凹部とされ、
前記吸収体は、前記透液性表面シート側から順に、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーA層、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーB層、エアレイドパルプ不織布層の5層構造のエアレイド吸収体とされ、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーは前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーよりも相対的に吸収速度の高い物性値を有するものが使用されており、前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーは前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーよりも相対的に吸収容量が高い物性値を有するものが使用されており、前記透液性表面シートと吸収体との間に、エアスルー不織布が介在されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、透液性表面シートとして、肌側に突出する多数の微小凸部が形成されるとともに、これら微小凸部の頂面を開孔とした立体開孔メッシュシートを用い、この立体開孔メッシュシートに対して非肌面側に窪む多数の凹部を形成する。この凹部の形状は、凹部間の横断面形状が肌側に突出する円弧状を成し、その境界部に形成された逆錐状の凹部とされる。排出された体液は、前記微小孔を通過して吸収体側に移行するが、前記凹部が一時的にタンクの役割を果たすため、体液が前記微小孔から素早く流れ出やすくなる。また、相対的に凸部の部分は早く体液が無くなるため、肌に対しての湿り感も早期に無くなる。
【0010】
また、前記立体開孔メッシュシートに微小孔とは別の、相対的に開孔面積の大きな流体通過孔を形成していないため、高吸収性ポリマーが外に逸脱することもない。
【0011】
一方、吸収体は前記透液性表面シート側から順に、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーA層、エアレイドパルプ不織布層、高吸収性ポリマーB層、エアレイドパルプ不織布層の5層構造のエアレイド吸収体とされ、前記高吸収性ポリマーA層は相対的に吸収速度の高い物性値を有するものが使用され、前記高吸収性ポリマーB層は相対的に吸収容量の高い物性値のものが使用されている。
【0012】
従って、表面シートから流れ込んできた体液を素早く吸収体に引き込むことができる。また、体液は前記高吸収性ポリマーB層によって薄型のエアレイド吸収体であっても多くの体液を保持できるようになり、吸収量の増大を図り得るようになる。高吸収性ポリマーはA層、B層に分けて層状に配置されているため、偏って配置されることもなく、また型崩れを起こし難くなる。
【0013】
また、本発明は、前記透液性表面シートと吸収体との間に、エアスルー不織布を介在させることにより、体液が吸収体側に移行し易くしている。すなわち、嵩が出やすいエアスルー不織布をセカンドシートとして用いると、透液性表面シートと吸収体との間に隙間が出来ず、連続性が確保されるため、体液が吸収体側に移行し易くなる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーは、下記<吸水速度試験>による吸収速度が40(s)未満である請求項1記載の吸収性物品。
【0015】
<吸水速度試験>
(1)100mlビーカーに生理食塩水50mlとスターラーチップを入れ、ビーカーをマグネチックスターラーに載せる。
(2)マグネチックスターラーの回転数を600±60回に合わせ、生理食塩水に渦を発生させた後に2.0gをビーカーに素早く添加する。
(3)ストップウォッチを用いて、ポリマー添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(s)を計測し、吸収速度(s)とする。
【0016】
上記請求項2記載の発明は、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーの吸水速度特性を数値的に規定したものである。
【0017】
請求項3に係る本発明として、前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーは、下記<吸水量試験>による吸水量が70(g)以上である請求項1,2いずれかに記載の吸収性物品。
<吸水量試験>
(1)ポリマー0.5gをティーバッグ(200メッシュナイロン製袋)を、200mlビーカーに生理食塩水100mlを入れる。
(2)30分間浸漬し、浸漬後5分間吊して水切りし、質量Wa(g)を測定する。
(3)ポリマーを入れていないティーバッグも同様の操作を行い、質量Wb(g)を測定する。
(4)Wa(g)−Wb(g)/ポリマーの質量(g)より、吸水量(g)を求める。
【0018】
上記請求項3記載の発明は、前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーの吸水量特性を数値的に規定したものである。
【0019】
請求項に係る本発明として、前記吸収体は、目付けが150〜200g/mであり、吸収体の全重量に対する高吸収性ポリマーの配合重量が30〜50重量%であり、前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマー/前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーの重量比率が1〜1.5であり、全体の厚みが2mm以下である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明は、吸収体の好適な物性値を具体的に規定したものである。すなわち、吸収体の目付けは150〜200g/mとするのが望ましく、吸収体の全重量に対する高吸収性ポリマーの配合重量が30〜50重量%とするのが望ましい。また、前記高吸収性ポリマーB層を構成する高吸収性ポリマーに対する前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーの重量比率は、1〜1.5として、両者を同じ分量で配置するか、体液の吸収性を高めるため前記高吸収性ポリマーA層を構成する高吸収性ポリマーを100〜150重量%以内でやや多めに配置する。さらに前記吸収体の厚みは2mm以下とするのがよい。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、前記立体開孔メッシュシートと、エアレイド吸収体との組合せに係る吸収性物品において、前記立体開孔メッシュシートに微小孔とは別の、相対的に開孔面積の大きな流体通過孔を形成することなく、立体開孔メッシュシート上面の体液を吸収体に素早く吸収させることができるようになるとともに、吸収体の体液吸収量の増大を図り得るようになる。更には、高吸収性ポリマーによるゲルブロッキング、高吸収性ポリマーの偏り、逸脱や型崩れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る吸収性物品(生理用ナプキン1)の斜視図である。
図2】透液性表面シート3のエンボス加工前の横断面図である。
図3】(A)、(B)は共に透液性表面シート3の機械的エンボス加工処理後の例を示す横断面図である。
図4】吸収体4の構成を示す横断面図である。
図5】体液Uの吸収状態を説明するための要部横断面図である。
図6】従来例に係る立体開孔メッシュシート110の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
(生理用ナプキン1の参考形態例)
生理用ナプキン1は、主にはパンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの用途に供されるもので、例えば図1に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装されたエアレイド吸収体4と、前記吸収体4を囲繞するテッシュなどのクレープ紙5と、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置されるセカンドシート6とから主に構成されている。前記吸収体4の周囲においては、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3とがホットメルト接着剤等の接合手段によって接合されている。前記クレープ紙5は省略してもよい。
【0025】
以下、具体的に詳述する。
【0026】
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0027】
前記透液性表面シート3は、図2に示されるように、肌側に突出する多数の微小凸部7,7…が形成されるとともに、これら微小凸部7,7…の頂面を開孔8、8…とした三次元表面構造(立体微小孔)を有する立体開孔メッシュシート3Aを用い、この立体開孔メッシュシート3Aに対して機械的エンボス処理によって、図3に示されるように、非肌面側に窪む多数の凹部9、9…を形成したものが使用されている。
【0028】
前記立体開孔メッシュシート3Aの前記微小凸部7,7…の直径は0.1〜0.3mm、好ましくは0.13〜0.27mmとされ、高さが0.05〜0.4mm、好ましくは0.15〜0.3mmとされる。前記微小凸部7,7…の間隔は0.3〜0.7mmとされる。
【0029】
前記立体開孔メッシュシート3Aの開孔8が微小凸部7となっているかどうかは、10cm以上離れたところからでは目視でほとんど確認することができない。このような立体開孔メッシュシート3A自体は公知である。開孔形成方法は、ハイドロフォーミング(高圧液体ジェット)、真空成形、ニードルパンチ等の方法によって形成することができる。これらの開孔形成方法の内、微小孔の周縁が毛羽立つようになる点で(花弁状)、ハイドロフォーミング(高圧液体ジェット)、真空成形を採用するのが望ましい。
【0030】
前記ハイドロフォーミングは、フィルムが微細メッシュ織りワイヤー支持部材上又は多数の微小孔が形成された支持体上に支持されている際に高圧液体ジェットを平らな高分子フィルムのウェブの露出面上に衝突させることによって立体微小孔を形成する方法であり、前記真空成形は、フィルムが微細メッシュ織りワイヤー支持部材上又は多数の微小孔が形成された支持体上にフィルムが存在している間に、反対側から吸引し真空圧を作用させることにより、前記微小孔内にフィルムを吸引し微小孔内でフィルムを膨らませて、最後に先端で破裂させることによって立体微小孔を形成する法である。前記フィルムの素材としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系のフィルムが好適に使用される。フィルムの目付けは20〜30g/m2とするのが望ましい。
【0031】
前記立体開孔メッシュシート3Aに対しては、図3に示されるように、機械的エンボス処理によって、非肌面側に窪む多数の凹部9,9…を形成する。機械的エンボス処理は、多数の凸部が形成されたエンボスロールと、前記凸部に対応した凹部が形成されたアンビルロールとの間に、前記立体開孔メッシュシート3Aを通過させ、非肌面側に窪む多数の凹部9,9…を形成するようにする。該凹部9、9…の配置は格子状配置でも良いし、千鳥状配置でもよい。各凹部9,9…の中心間距離は2.0〜5.0mm、好ましくは3.0〜4.0mmで配置するのが望ましい。凹部形状は、図3(A)に示されるように、エンボス間の横断面形状が円弧状となるようにし、その境界部に逆錐状の凹部9,9…を形成するようにしても良いし、図3(B)に示されるように、円形又は楕円状に窪む凹部9,9…を形成するようにしてもよい。
【0032】
次に前記エアレイド吸収体4について説明する。図4に示されるように、本発明のエアレイド吸収体4は、前記透液性表面シート3側から順に、エアレイドパルプ不織布層10A、高吸収性ポリマーA層12、エアレイドパルプ不織布層10B、高吸収性ポリマーB層13、エアレイドパルプ不織布層10Cの5層構造のエアレイド吸収体とされる。
【0033】
前記エアレイドパルプ不織布10A〜10Cは、所定長さの繊維を解繊して空気の流れに乗せて搬送し、金網又は細孔を有するスクリーンを通過させた後、ワイヤーメッシュ上に落下堆積させるエアレイ法によりウエブを形成し、該ウエブにおける繊維同士の交点をバインダー繊維により熱融着させるか、又はエマルジョンバインダーで繊維交点を結合させて形成されたシート状の吸収体である。前記エアレイドパルプ不織布を構成する繊維としては、パルプ繊維の他、熱可塑性繊維の短繊維が用いられる。熱可塑性繊維としては、例えばポリプロピレン、低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、プロピレンとαオレフィンとからなる結晶性プロピレン共重合体等のオレフィン類や、ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート。ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸とを共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル類などの各種合成繊維が挙げられる。
【0034】
前記バインダー繊維としては、融点の異なる低融点樹脂と高融点樹脂とからなり且つ該低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成している熱融着性複合繊維が好適に用いられる。熱融着性複合繊維の形態は、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などいずれの複合繊維を用いることができる。
【0035】
前記エマルジョンバインダーとしては、水系エマルジョンバインダー及び有機溶剤系のエマルジョンバインダーの何れをも用いることができるが、取り扱い性や安全性等の点から水系エマルジョンバインダーを用いることが好ましい。バインダー成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂などを用いることができる。
【0036】
前記高吸収性ポリマーA層12及び高吸収性ポリマーB層13に用いる高吸収性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0037】
前記エアレイド吸収体4において、前記高吸収性ポリマーA層12を構成する高吸収性ポリマーは前記高吸収性ポリマーB層13を構成する高吸収性ポリマーよりも相対的に吸収速度の高い物性値を有するものが使用されており、前記高吸収性ポリマーB層13を構成する高吸収性ポリマーは前記高吸収性ポリマーA層12を構成する高吸収性ポリマーよりも相対的に吸収容量が高い物性値を有するものが使用されている。
【0038】
具体的には、前記高吸収性ポリマーA層12を構成する高吸収性ポリマーとしては、下記<吸水速度試験>による吸収速度が40(s)未満、好ましくは1〜30(s)、より好ましくは25〜30(s)であるものを用いる。
【0039】
<吸収速度試験>
(1)100mlビーカーに生理食塩水50mlとスターラーチップを入れ、ビーカーをマグネチックスターラーに載せる。
(2)マグネチックスターラーの回転数を600±60回に合わせ、生理食塩水に渦を発生させた後に2.0gをビーカーに素早く添加する。
(3)ストップウォッチを用いて、ポリマー添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(s)を計測し、吸収速度(s)とする。
【0040】
一方、前記高吸収性ポリマーB層13を構成する高吸収性ポリマーとしては、下記<吸水量試験>による吸水量が70(g)以上、好ましくは70〜80(g)、より好ましくは70〜75(g)であるものを用いる。
【0041】
<吸水量試験>
(1)ポリマー0.5gをティーバッグ(200メッシュナイロン製袋)を、200mlビーカーに生理食塩水100mlを入れる。
(2)30分間浸漬し、浸漬後5分間吊して水切りし、質量Wa(g)を測定する。
(3)ポリマーを入れていないティーバッグも同様の操作を行い、質量Wb(g)を測定する。
(4)Wa(g)−Wb(g)/ポリマーの質量(g)より、吸水量(g)を求める。
【0042】
なお、前記両試験に用いた前記生理食塩水は、塩化ナトリウムを0.9w/v%を含有する食塩水である(日本薬局方・処方せん医薬品における「生理食塩液」)。
【0043】
前記透液性表面シート3と吸収体4との間には、セカンドシート6として親水性の不織布6が介在されている。このセカンドシート6としては、この体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した不織布を用いることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの素材の中でも特に、エアスルー不織布を用いるのが望ましい。比較的ソフトで嵩のあるエアスルー不織布を使用することにより、クッション性が与えられ装着感が良好になるとともに、透液性表面シート4とエアレイド吸収体4との間に隙間が出来ず、連続性が確保されるため、体液が吸収体側に移行し易くなる。セカンドシート6の目付けは、15〜30g/mとするのが望ましい。
【0044】
前述のように構成される生理用ナプキン1においては、図5に示されるように、透液性表面シート3の上面に排出された体液Uは、前記微小孔8を通過して吸収体4側に移行するが、前記凹部9が一時的にタンクの役割を果たすため、体液Uが前記微小孔8から素早く流れ出やすくなる。また、相対的に凸部の部分では早く体液Uが無くなるため、肌に対しての湿り感も早期に無くなる。
【0045】
また、前記立体開孔メッシュシート3Aに微小孔8とは別の、相対的に開孔面積の大きな流体通過孔を形成していないため、高吸収性ポリマーが外に逸脱することもない。前記高吸収性ポリマーA層12は相対的に吸収速度の高い物性値を有するものが使用され、前記高吸収性ポリマーB層13は相対的に吸収容量の高い物性値のものが使用されている。従って、表面シート3から流れ込んできた体液Uを素早く吸収体に引き込むことができる。また、体液Uは前記高吸収性ポリマーB層13によって薄型のエアレイド吸収体であっても多くの体液を保持できるようになり、吸収量の増大を図り得るようになる。高吸収性ポリマーはA層12、B層13に分けて層状に配置されているため、偏って配置されることもなく、また型崩れを起こし難くなる。
【0046】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では高吸収性ポリマーA層12を一様に形成したが、ゲルブロッキングを防止するため、高吸収性ポリマーの存在しない部分を点在させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…セカンドシート、7…微小凸部、8…開孔、9…凹部、10A〜10C…エアレイドパルプ不織布層、12…高吸収性ポリマーA層、13…高吸収性ポリマーB層
図1
図2
図3
図4
図5
図6