特許第5945076号(P5945076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5945076有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945076
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20160621BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20160621BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/26 Z
   H05B33/22 A
   H05B33/14 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-533398(P2015-533398)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2015-534230(P2015-534230A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】CN2012082281
(87)【国際公開番号】WO2014047866
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】511215230
【氏名又は名称】オーシャンズ キング ライティング サイエンスアンドテクノロジー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514052553
【氏名又は名称】シェンジェン オーシャンズ キング ライティング エンジニアリング カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN OCEAN’S KING LIGHTING ENGINEERING CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ミンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ピン
(72)【発明者】
【氏名】ファン フィ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジシン
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1708195(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1518132(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102468446(CN,A)
【文献】 特表2013−543654(JP,A)
【文献】 特許第5098641(JP,B2)
【文献】 特開2006−228573(JP,A)
【文献】 特開2009−044105(JP,A)
【文献】 特開2008−226464(JP,A)
【文献】 特表2006−516814(JP,A)
【文献】 特開2002−015873(JP,A)
【文献】 特表2001−520450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
H05B 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法であって、
清潔なガラス基板を用意し、酢酸で酸化亜鉛を溶解させて濃度が0.3g/ml〜0.6g/mlの酸化亜鉛溶液を調製し、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、及びバナジウムフタロシアニンから選ばれるフタロシアニン系物質を、前記酸化亜鉛に占める質量百分率が1%〜10%になるように前記酸化亜鉛溶液に加え、均一に混合して得られる混合物をガラス基板にスピンコーティングしてから乾燥し、ガラス基板に陰極を製造する工程と、
前記陰極において、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、及び陽極を順次に蒸着し、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを得る工程と、
を含む
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記酸化亜鉛の粒径は50nm〜200nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記スピンコーティングは、回転数が2000rpm〜6000rpmであり、時間が10秒〜60秒である、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記乾燥は、温度が100℃〜200℃であり、時間が15分間〜60分間である、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記電子注入層の材料は、炭酸セシウム、フッ化セシウム、セシウムアジド、又はフッ化リチウムである、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記蒸着は真空蒸着を用いて、蒸着圧力が2×10−5Pa〜5×10−3Paであり、蒸着速度が0.1nm/s〜10nm/sである、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項7】
前記蒸着圧力は5×10−4Paであり、
前記電子注入層、前記電子輸送層、前記発光層、前記正孔輸送層、及び前記正孔注入層を蒸着するときの蒸着速度は1nm/sであり、前記陽極を蒸着するときの蒸着速度は5nm/sである、
ことを特徴とする請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項8】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスであって、
ガラス基板、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、及び陽極を順次に備え、
前記陰極は、酸化亜鉛及びフタロシアニン系物質からなり、
前記フタロシアニン系物質は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、又はバナジウムフタロシアニンであり、
前記フタロシアニン系物質は、前記酸化亜鉛に占める質量百分率が1%〜10%である、
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項9】
前記陰極の厚さは、10nm〜50nmである、
ことを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項10】
前記酸化亜鉛の粒径は50nm〜200nmである、
ことを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス分野に関し、特に有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1987年に、米国Eastman Kodak社のC.W.Tang及びVanSlykeらは、有機エレクトロルミネッセンス研究における飛躍的進歩、すなわち極薄フィルム技術により高輝度、高効率の二層有機エレクトロルミネッセンスデバイス(OLED)を製造することを報告した。その二層構造のデバイスは、10Vにおける輝度が1000cd/mに達し、発光効率が1.51lm/Wで、使用寿命が100時間を超えた。
【0003】
OLEDの発光原理は、外部電場の作用で電子が陰極から有機物の最低空軌道(LUMO)に注入されるとともに、正孔が陽極から有機物の最高被占軌道(HOMO)に注入された後、電子と正孔は互いに移動し再結合して、発光層において励起子を形成する。その励起子は電界中を移動し、エネルギーを発光材料に移動させる。電子は、励起され基底状態から励起状態に遷移する。励起状態のエネルギーが輻射により不活化させ、光子を生じて光エネルギーを放出することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて、光取り出し効率は18%ほどであり、他の大部分の光は吸収や全反射などの原因で損失することになる。その有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、一般的に底面発光型構造を持つ。また、ガラスの屈折率が1.5でITOの屈折率が1.8であるので、光が有機層から発光してITOを通過しカラス表面に到着する場合、屈折率の差により全反射を発生することがある。一方、光がガラスから空気に出射する場合も屈折率の差により全反射が存在するため、光取り出し効率を低下させ、最終的には発光効率を明らかに低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した問題を解決するために、本発明の目的は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法を提供することにある。その有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、逆構造を有するトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンスデバイスであり、その陰極が酸化亜鉛及びフタロシアニン系物質から製造されることで、電子の注入性能を向上させるとともに、陰極におけるフタロシアニン系物質の結晶によって陰極を通過した光が散乱されることで、両側への光が散乱されてデバイスの中心に戻って、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの光取り出し効率を向上することができる。
【0006】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスをさらに提供する。
【0007】
一側面において、本発明は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法を提供して、その製造方法は、
清潔なガラス基板を用意し、酢酸で酸化亜鉛を溶解させて濃度が0.3g/ml〜0.6g/mlの酸化亜鉛溶液を調製し、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、マグネシウムフタロシアニン(MgPc)、及びバナジウムフタロシアニン(VPc)から選ばれるフタロシアニン系物質を、上記酸化亜鉛に占める質量百分率が1%〜10%になるように上記酸化亜鉛溶液に加え、均一に混合して得られる混合物をガラス基板にスピンコーティングしてから乾燥し、ガラス基板に陰極を製造する工程と、
上記陰極において、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、及び陽極を順次に蒸着し、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを得る工程と、を含む。
【0008】
陰極において、酸化亜鉛が溶解した後で電離されて亜鉛イオンになり、乾燥してから亜鉛イオン化合物の形で存在して導電機能を働く。同時に、結晶化しやすいフタロシアニン系物質は溶液に分散して均一な懸濁液を形成し、乾燥した後、結晶化して規則配列した晶体構造を形成し、光の散乱を可能にすることで、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの正面発光強度及び光取り出し効率を向上させる。
【0009】
好ましくは、上記酸化亜鉛の粒径は50nm〜200nmである。
【0010】
上記酢酸は、分析グレード酢酸である。上記酸化亜鉛は酢酸と反応して酢酸亜鉛を生成し、亜鉛イオン化合物の形で存在する。また、酸化亜鉛を溶解した後、乾燥して水分及び過量の酢酸を取り除ければ、他の濃度の酢酸溶液を使用してもよい。本発明で使用される酢酸は弱酸であるため、ガラス基板に対する腐食性が弱いとともに、沸点が低く、低い温度で水分及び過量の酢酸を取り除けることができ、また、極性が弱いので、他の物質と結合しにくい。
【0011】
好ましくは、上記陰極の厚さは10nm〜50nmである。
【0012】
好ましくは、上記スピンコーティングは、回転数が2000rpm〜6000rpmであり、時間が10秒〜60秒である。より好ましくは、上記スピンコーティングの回転数は3000rpmであり、時間は20秒である。
【0013】
好ましくは、上記乾燥は、温度が100℃〜200℃であり、時間が15分間〜60分間である。より好ましくは、上記乾燥は、温度が150℃であり、時間が30分間である。
【0014】
上記ガラス基板は、市販の一般的なガラス基板である。
【0015】
好ましくは、上記電子注入層の材料は、炭酸セシウム(CsCO)、フッ化セシウム(CsF)、セシウムアジド(CsN)、又はフッ化リチウム(LiF)である。より好ましくは、上記電子注入層の材料は炭酸セシウム(CsCO)である。
【0016】
好ましくは、上記電子注入層の厚さは0.5nm〜10nmである。より好ましくは、上記電子注入層の厚さは1nmである。
【0017】
好ましくは、上記電子輸送層の材料は4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)、又はN−アリールベンズイミダゾール(TPBI)である。
【0018】
より好ましくは、上記電子輸送層の材料はBphenである。
【0019】
好ましくは、上記電子輸送層の厚さは40nm〜80nmである。より好ましくは、上記電子輸送層の厚さは60nmである。
【0020】
好ましくは、上記発光層の材料は、4−(ジシアノメチレン)−2−tert−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル−ビニル)−4H−ピラン(DCJTB)、9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン(ADN)、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニル)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、又はトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)である。より好ましくは、上記発光層の材料はトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)である。
【0021】
好ましくは、上記発光層の厚さは5nm〜40nmである。より好ましくは、上記発光層の厚さは15nmである。
【0022】
好ましくは、上記正孔輸送層の材料は1,1−ビス[4−[N,N’−ジ(p−メチルフェニル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)、又はN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフタレニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPB)である。より好ましくは、上記正孔輸送層の材料は4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)である。
【0023】
好ましくは、上記正孔輸送層の厚さは20nm〜60nmである。より好ましくは、上記正孔輸送層の厚さは40nmである。
【0024】
好ましくは、上記正孔注入層の材料は三酸化モリブデン(MoO)、三酸化タングステン(WO)、又は五酸化二バナジウム(V)である。より好ましくは、上記正孔注入層の材料は三酸化モリブデン(MoO)である。
【0025】
好ましくは、上記正孔注入層の厚さは20nm〜80nmである。より好ましくは、上記正孔注入層の厚さは30nmである。
【0026】
好ましくは、上記陽極の材料は銀(Ag)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、又は金(Au)である。より好ましくは、上記陽極の材料は銀(Ag)である。
【0027】
好ましくは、上記陽極の厚さは80nm〜250nmである。より好ましくは、上記陽極の厚さは150nmである。
【0028】
好ましくは、上記蒸着は、いずれも真空蒸着を用いて、蒸着圧力が2×10−5Pa〜5×10−3Paであり、蒸着速度が0.1nm/s〜10nm/sである。
【0029】
より好ましくは、上記蒸着圧力は5×10−4Paであり、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、及び正孔注入層を蒸着するときの蒸着速度は1nm/sであり、陽極を蒸着するときの蒸着速度は5nm/sである。
【0030】
別の側面において、本発明は、ガラス基板、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、及び陽極を順次に備える有機エレクトロルミネッセンスデバイスを提供する。上記陰極は、酸化亜鉛(ZnO)及びフタロシアニン系物質からなる。上記フタロシアニン系物質は、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、マグネシウムフタロシアニン(MgPc)、又はバナジウムフタロシアニン(VPc)である。上記フタロシアニン系物質は、上記酸化亜鉛に占める質量百分率が1%〜10%である。
【0031】
好ましくは、上記酸化亜鉛の粒径は50nm〜200nmである。
【0032】
好ましくは、上記陰極の厚さは10nm〜50nmである。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、逆構造を有するトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンスデバイスであり、酸化亜鉛及びフタロシアニン系物質を陰極製造用原料とするものである。その陰極の主原料であるZnOの仕事関数は、5.4eV(酸化亜鉛が溶解して酢酸亜鉛を生成するが、仕事関数がほとんど変化しない)であり、電子注入層のポテンシャル障壁に近いので、電子の注入に有利で、陰極の電子注入性能を向上させ、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの発光効率の向上に有利である。また、ITO(すなわち、インジウムスズ酸化物)が希元素酸化物であり、一定の毒性を持つ一方、本発明はZnOで陰極を製造して金属を陽極とすることにより、この問題を解決できる。陰極にフタロシアニン系物質がドープされ、結晶化した後で規則配列した晶体構造を形成することで、光が晶体を通過するときに散乱され、両側への光が散乱されてデバイスの中心に戻って、正面発光強度及び光取り出し効率を向上させる。
【0034】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法は、下記に示すような有益な効果を有する。すなわち、
(1)本発明提供の製造方法において、基板に酸化亜鉛及びフタロシアニン系物質により陰極を製造することで、得られる陰極の電子注入性能を向上させるとともに、陰極におけるフタロシアニン系物質が結晶化しやすく、結晶化した後で規則配列した晶体構造を形成することで、光が晶体を通過するときに散乱され、両側への光が散乱されてデバイスの中心に戻って、光取り出し効率を向上させる。
【0035】
(2)本発明に係る有機エレクトロルミネッセンスデバイスは逆構造を採用することで、光取り出し効率を顕著に改善し、製造方法が簡便で広範な適用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明で製造される、ガラス基板1、陰極2、電子注入層3、電子輸送層4、発光層5、正孔輸送層6、正孔注入層7、及び陽極8を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイスの構造図である。
図2図2は、実施例1で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイス(曲線1に対応)及び比較デバイス(曲線2に対応)の輝度−電圧変化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の好適な実施形態が示される。本発明の思想を逸脱しないことを前提とする場合、複数の改良及び修飾をしても、本発明の保護範囲に属するものであると理解されるべきである。
【0038】
[実施例1]
有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法は、下記のステップ(1)及びステップ(2)を含む。
【0039】
<ステップ(1)>
まず、ガラスに対してフォトエッチング処理を行った後、2cm×2cmのサイズに切り出し、発光面積が0.3cm×0.3cmである。洗剤、脱イオン水、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールで順番にそれぞれ15分間超音波処理を行い、ガラス表面における有機汚染物質を除去した。粒径が100nmの酸化亜鉛5gを酢酸10mlで溶解した後、濃度が0.5g/mlの酸化亜鉛溶液を得た。得られた酸化亜鉛溶液にCuPcを0.25g加え、均一に混合して得られる混合物をガラスに4000rpmの回転数で20秒スピンコーティングし、その後、200℃で15分間乾燥させ、厚さが20nmの陰極を得た。
【0040】
<ステップ(2)>
陰極において、電子注入層CsCO、電子輸送層Bphen、発光層Alq、正孔輸送層TCTA、正孔注入層MoO、及び陽極Agを順次に蒸着して有機エレクトロルミネッセンスデバイスを得た。蒸着は、高真空成膜装置(ShenyangScientific Instrument Development Center Co., Ltd.製、圧力<1×10−3Pa)で行い、蒸着圧力が5×10−4Paであり、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を蒸着するときの蒸着速度が1nm/sで、陽極の蒸着速度が5nm/sであり、蒸着により得られた電子注入層の厚さが1nmで、電子輸送層の厚さが60nmで、発光層の厚さが15nmで、正孔輸送層の厚さが40nmで、正孔注入層の厚さが30nmで、陽極の厚さが150nmである。
【0041】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、逆構造を有するトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンスデバイスであり、ガラス基板1、陰極2、電子注入層3、電子輸送層4、発光層5、正孔輸送層6、正孔注入層7、及び陽極8を順次に備える。その構造は、具体的に図1に示すように、ガラス基板/(CuPc:ZnO)/CsCO/Bphen/Alq/TCTA/MoO/Agである。ここで、(CuPc:ZnO)は、陰極製造用原料がCuPc及びZnOであることを表す。
【0042】
[実施例2]
有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法は、下記のステップ(1)及びステップ(2)を含む。
【0043】
<ステップ(1)>
ガラスに対してフォトエッチング処理を行った後、2cm×2cmのサイズに切り出し、発光面積が0.3cm×0.3cmである。洗剤、脱イオン水、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールで順番にそれぞれ15分間超音波処理を行い、ガラス表面における有機汚染物質を除去した。粒径が200nmの酸化亜鉛3gを酢酸10mlで溶解した後、濃度が0.3g/mlの酸化亜鉛溶液を得た。得られた酸化亜鉛溶液にZnPcを0.03g加え、均一に混合して得られる混合物をガラスに2000rpmの回転数で15秒スピンコーティングし、その後、100℃で60分間乾燥させ、厚さが50nmの陰極を得た。
【0044】
<ステップ(2)>
陰極において、電子注入層CsF、電子輸送層TPBi、発光層DCJTB、正孔輸送層NPB、正孔注入層WO、及び陽極Alを順次に蒸着して有機エレクトロルミネッセンスデバイスを得た。蒸着は、高真空成膜装置(ShenyangScientific Instrument Development Center Co., Ltd.製、圧力<1×10−3Pa)で行い、蒸着圧力が5×10−3Paであり、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を蒸着するときの蒸着速度が0.5nm/sで、陽極の蒸着速度が10nm/sであり、蒸着により得られた電子注入層の厚さが10nmで、電子輸送層の厚さが80nmで、発光層の厚さが5nmで、正孔輸送層の厚さが60nmで、正孔注入層の厚さが20nmで、陽極の厚さが250nmである。
【0045】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、逆構造を有するトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンスデバイスであり、ガラス基板、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、及び陽極を順次に備える。その構造は、具体的にガラス基板/(ZnPc:ZnO)/CsF/TPBi/DCJTB/NPB/WO/Alである。ここで、(ZnPc:ZnO)は、陰極製造用原料がZnPc及びZnOであることを表す。
【0046】
[実施例3]
有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法は、下記のステップ(1)及びステップ(2)を含む。
【0047】
<ステップ(1)>
ガラスに対してフォトエッチング処理を行った後、2cm×2cmのサイズに切り出し、発光面積が0.3cm×0.3cmである。洗剤、脱イオン水、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールで順番にそれぞれ15分間超音波処理を行い、ガラス表面における有機汚染物質を除去した。粒径が50nmの酸化亜鉛24gを酢酸40mlで溶解した後、濃度が0.6g/mlの酸化亜鉛溶液を得た。得られた酸化亜鉛溶液にMgPcを2.4g加え、均一に混合して得られる混合物をガラスに6000rpmの回転数で60秒スピンコーティングし、その後、150℃で30分間乾燥させ、厚さが10nmの陰極を得た。
【0048】
<ステップ(2)>
陰極において、電子注入層CsN、電子輸送層Bphen、発光層BCzVBi、正孔輸送層TCTA、正孔注入層V、及び陽極Auを順次に蒸着して有機エレクトロルミネッセンスデバイスを得た。蒸着は、高真空成膜装置(ShenyangScientific Instrument Development Center Co., Ltd.製、圧力<1×10−3Pa)で行い、蒸着圧力が2×10−5Paであり、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を蒸着するときの蒸着速度が0.1nm/sで、陽極の蒸着速度が7nm/sであり、蒸着により得られた電子注入層の厚さが0.5nmで、電子輸送層の厚さが60nmで、発光層の厚さが40nmで、正孔輸送層の厚さが20nmで、正孔注入層の厚さが80nmで、陽極の厚さが120nmである。
【0049】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、逆構造を有するトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンスデバイスであり、ガラス基板、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、及び陽極を順次に備える。その構造は、具体的にガラス基板/(MgPc:ZnO)/CsN/Bphen/BCzVBi/TCTA/V/Auである。ここで、(MgPc:ZnO)は、陰極製造用原料がMgPc及びZnOであることを表す。
【0050】
[実施例4]
有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法は、下記のステップ(1)及びステップ(2)を含む。
【0051】
<ステップ(1)>
ガラスに対してフォトエッチング処理を行った後、2cm×2cmのサイズに切り出し、発光面積が0.3cm×0.3cmである。洗剤、脱イオン水、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールで順番にそれぞれ15分間超音波処理を行い、ガラス表面における有機汚染物質を除去した。粒径が80nmの酸化亜鉛9gを酢酸20mlで溶解した後、濃度が0.5g/mlの酸化亜鉛溶液を得た。得られた酸化亜鉛溶液にVPcを0.54g加え、均一に混合して得られる混合物をガラスに2500rpmの回転数で50秒スピンコーティングし、その後、200℃で25分間乾燥させ、厚さが25nmの陰極を得た。
【0052】
<ステップ(2)>
陰極において、電子注入層LiF、電子輸送層Bphen、発光層AND(JilinOptical and Electronic Materials Co. Ltd製)、正孔輸送層NPB、正孔注入層WO、及び陽極Ptを順次に蒸着して有機エレクトロルミネッセンスデバイスを得た。蒸着は、高真空成膜装置(ShenyangScientific Instrument Development Center Co., Ltd.製、圧力<1×10−3Pa)で行い、蒸着圧力が2×10−4Paであり、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を蒸着するときの蒸着速度が0.2nm/sで、陽極の蒸着速度が6nm/sであり、蒸着により得られた電子注入層の厚さが7nmで、電子輸送層の厚さが45nmで、発光層の厚さが30nmで、正孔輸送層の厚さが20nmで、正孔注入層の厚さが80nmで、陽極の厚さが80nmである。
【0053】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、逆構造を有するトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンスデバイスであり、ガラス基板、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、及び陽極を順次に備える。その構造は、具体的にガラス基板/(VPc:ZnO)/LiF/Bphen/AND/NPB/WO/Ptである。ここで、(VPc:ZnO)は、陰極製造用原料がVPc及びZnOであることを表す。
【0054】
[テスト実施例]
電流−電圧試験機(米国Keithly社製、品番:2602)、エレクトロルミネッセンススペクトロメータ(米国photoresearch社製、品番:PR650)、及びスクリーン輝度計(BeijingNormal University製、品番:ST−86LA)を使用して、電圧に伴う有機エレクトロルミネッセンスデバイスの輝度の変化を測定した。測定対象は、実施例1〜4で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイス及び比較デバイスを含む。比較デバイスの構造は、ガラス基板/ITO/MoO/TCTA/Alq/Bphen/CsCO/Alで表示され、ガラス基板以外の各物質は順番に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極の材料にそれぞれ対応する。ここで、ガラス基板は、実施例1〜4におけるガラス基板と同一である。陽極はITOで、厚さが120nmであり、市販のITOガラスを購入して使用してもよい。正孔注入層の厚さは30nmで、正孔輸送層の厚さは40nmで、発光層の厚さは15nmで、電子輸送層60の厚さはnmで、電子注入層の厚さは1nmで、陰極の厚さは150nmである。各層は通常の蒸着方法で製造され、一般的な底面発光型有機エレクトロルミネッセンスデバイスである。実施例1〜4で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイス及び比較デバイスの、電圧10Vにおける輝度データは表1に示される。
【0055】
表1は、実施例1〜4で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイス及び比較デバイスの輝度データ表である。
【0056】
【表1】
【0057】
図2は、実施例1で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイス(曲線1に対応)及び比較デバイス(曲線2に対応)の輝度−電圧変化曲線である。図2に示すように、本発明の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの輝度は、電圧の増加とともに、比較デバイスより高くなることが分かる。また、表1におけるデータによると、電圧が10Vであるとき、比較デバイスの輝度が14161cd/mである一方、実施例1〜4の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの輝度は14205〜19351cd/mに達し、そのうち、実施例1の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの輝度は19351cd/mであり、比較デバイスより35.6%高くなることが分かる。このようにして、本発明に係るフタロシアニン系物質及び酸化亜鉛をドープして陰極を製造することで、陰極の電子注入性能を向上させ、ドープされる結晶化しやすいフタロシアニン系物質によって、光が陰極を通過するときに散乱されるので、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの正面発光強度及び光取り出し効率を向上させることが明らかに分かる。
【0058】
以上は、本発明の好適な実施形態が示される。本発明の思想を逸脱しないことを前提とする場合、複数の改良及び修飾をしても、本発明の保護範囲に属するものであると理解されるべきである。
図1
図2