【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した問題を解決するために、本発明の目的は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法を提供することにある。その有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、逆構造を有するトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンスデバイスであり、その陰極が酸化亜鉛及びフタロシアニン系物質から製造されることで、電子の注入性能を向上させるとともに、陰極におけるフタロシアニン系物質の結晶によって陰極を通過した光が散乱されることで、両側への光が散乱されてデバイスの中心に戻って、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの光取り出し効率を向上することができる。
【0006】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスをさらに提供する。
【0007】
一側面において、本発明は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法を提供して、その製造方法は、
清潔なガラス基板を用意し、酢酸で酸化亜鉛を溶解させて濃度が0.3g/ml〜0.6g/mlの酸化亜鉛溶液を調製し、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、マグネシウムフタロシアニン(MgPc)、及びバナジウムフタロシアニン(V
2Pc
5)から選ばれるフタロシアニン系物質を、上記酸化亜鉛に占める質量百分率が1%〜10%になるように上記酸化亜鉛溶液に加え、均一に混合して得られる混合物をガラス基板にスピンコーティングしてから乾燥し、ガラス基板に陰極を製造する工程と、
上記陰極において、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、及び陽極を順次に蒸着し、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを得る工程と、を含む。
【0008】
陰極において、酸化亜鉛が溶解した後で電離されて亜鉛イオンになり、乾燥してから亜鉛イオン化合物の形で存在して導電機能を働く。同時に、結晶化しやすいフタロシアニン系物質は溶液に分散して均一な懸濁液を形成し、乾燥した後、結晶化して規則配列した晶体構造を形成し、光の散乱を可能にすることで、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの正面発光強度及び光取り出し効率を向上させる。
【0009】
好ましくは、上記酸化亜鉛の粒径は50nm〜200nmである。
【0010】
上記酢酸は、分析グレード酢酸である。上記酸化亜鉛は酢酸と反応して酢酸亜鉛を生成し、亜鉛イオン化合物の形で存在する。また、酸化亜鉛を溶解した後、乾燥して水分及び過量の酢酸を取り除ければ、他の濃度の酢酸溶液を使用してもよい。本発明で使用される酢酸は弱酸であるため、ガラス基板に対する腐食性が弱いとともに、沸点が低く、低い温度で水分及び過量の酢酸を取り除けることができ、また、極性が弱いので、他の物質と結合しにくい。
【0011】
好ましくは、上記陰極の厚さは10nm〜50nmである。
【0012】
好ましくは、上記スピンコーティングは、回転数が2000rpm〜6000rpmであり、時間が10秒〜60秒である。より好ましくは、上記スピンコーティングの回転数は3000rpmであり、時間は20秒である。
【0013】
好ましくは、上記乾燥は、温度が100℃〜200℃であり、時間が15分間〜60分間である。より好ましくは、上記乾燥は、温度が150℃であり、時間が30分間である。
【0014】
上記ガラス基板は、市販の一般的なガラス基板である。
【0015】
好ましくは、上記電子注入層の材料は、炭酸セシウム(Cs
2CO
3)、フッ化セシウム(CsF)、セシウムアジド(CsN
3)、又はフッ化リチウム(LiF)である。より好ましくは、上記電子注入層の材料は炭酸セシウム(Cs
2CO
3)である。
【0016】
好ましくは、上記電子注入層の厚さは0.5nm〜10nmである。より好ましくは、上記電子注入層の厚さは1nmである。
【0017】
好ましくは、上記電子輸送層の材料は4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)、又はN−アリールベンズイミダゾール(TPBI)である。
【0018】
より好ましくは、上記電子輸送層の材料はBphenである。
【0019】
好ましくは、上記電子輸送層の厚さは40nm〜80nmである。より好ましくは、上記電子輸送層の厚さは60nmである。
【0020】
好ましくは、上記発光層の材料は、4−(ジシアノメチレン)−2−tert−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル−ビニル)−4H−ピラン(DCJTB)、9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン(ADN)、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニル)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、又はトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq
3)である。より好ましくは、上記発光層の材料はトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq
3)である。
【0021】
好ましくは、上記発光層の厚さは5nm〜40nmである。より好ましくは、上記発光層の厚さは15nmである。
【0022】
好ましくは、上記正孔輸送層の材料は1,1−ビス[4−[N,N’−ジ(p−メチルフェニル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)、又はN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフタレニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPB)である。より好ましくは、上記正孔輸送層の材料は4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)である。
【0023】
好ましくは、上記正孔輸送層の厚さは20nm〜60nmである。より好ましくは、上記正孔輸送層の厚さは40nmである。
【0024】
好ましくは、上記正孔注入層の材料は三酸化モリブデン(MoO
3)、三酸化タングステン(WO
3)、又は五酸化二バナジウム(V
2O
5)である。より好ましくは、上記正孔注入層の材料は三酸化モリブデン(MoO
3)である。
【0025】
好ましくは、上記正孔注入層の厚さは20nm〜80nmである。より好ましくは、上記正孔注入層の厚さは30nmである。
【0026】
好ましくは、上記陽極の材料は銀(Ag)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、又は金(Au)である。より好ましくは、上記陽極の材料は銀(Ag)である。
【0027】
好ましくは、上記陽極の厚さは80nm〜250nmである。より好ましくは、上記陽極の厚さは150nmである。
【0028】
好ましくは、上記蒸着は、いずれも真空蒸着を用いて、蒸着圧力が2×10
−5Pa〜5×10
−3Paであり、蒸着速度が0.1nm/s〜10nm/sである。
【0029】
より好ましくは、上記蒸着圧力は5×10
−4Paであり、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、及び正孔注入層を蒸着するときの蒸着速度は1nm/sであり、陽極を蒸着するときの蒸着速度は5nm/sである。
【0030】
別の側面において、本発明は、ガラス基板、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、及び陽極を順次に備える有機エレクトロルミネッセンスデバイスを提供する。上記陰極は、酸化亜鉛(ZnO)及びフタロシアニン系物質からなる。上記フタロシアニン系物質は、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、マグネシウムフタロシアニン(MgPc)、又はバナジウムフタロシアニン(V
2Pc
5)である。上記フタロシアニン系物質は、上記酸化亜鉛に占める質量百分率が1%〜10%である。
【0031】
好ましくは、上記酸化亜鉛の粒径は50nm〜200nmである。
【0032】
好ましくは、上記陰極の厚さは10nm〜50nmである。