(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945095
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】火花点火器の装置及びアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/20 20060101AFI20160621BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20160621BHJP
H01T 13/52 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
H01T13/20 B
F02P13/00 301J
H01T13/52
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-283945(P2010-283945)
(22)【出願日】2010年12月21日
(65)【公開番号】特開2011-134714(P2011-134714A)
(43)【公開日】2011年7月7日
【審査請求日】2013年12月16日
(31)【優先権主張番号】12/646,516
(32)【優先日】2009年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】309012096
【氏名又は名称】ユニゾン・インダストリーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ブレンドン・ミー
(72)【発明者】
【氏名】ランダル・パーカー・ボルド
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−274373(JP,A)
【文献】
実公昭02−002325(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00−23/00
F02P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面(202)と、該先端面から離れるように延在し、シェル内の空洞(206)を囲む側壁(204)とを備えるシェル(200)と、
前記先端面から前記空洞へと延びるシェル孔(208)と、
前記シェル(200)内に配置され、前記シェル孔(208)の近傍に位置する点火遠端部を備える電極(212)と、
前記シェル内で前記先端面と前記点火遠端部との間の位置に埋め込まれた第1の端部を備え、前記シェル孔に対してほぼ接線方向に並ぶ線と平行に延びる少なくとも3本のピン(210)と
を備え、
前記少なくとも3本のピンが、前記第1の端部から前記線に沿って延び、第2の端部が前記シェル内で埋め込まれたまま終端する
点火器(40)。
【請求項2】
前記シェル(200)内において、前記シェルと前記電極(212)との間に配置された絶縁体(216)を更に備え、前記絶縁体は前記シェル孔(208)とほぼ位置合わせされた絶縁体孔(218)を備える、請求項1に記載の点火器(40)。
【請求項3】
前記シェル(200)、前記絶縁体(216)、及び前記電極(212)は、前記シェル孔(208)及び前記絶縁体孔(218)とほぼ同心に位置合わせされる、請求項2に記載の点火器(40)。
【請求項4】
前記点火遠端部は、火花ギャップによって前記先端面(202)から離隔される、請求項2に記載の点火器(40)。
【請求項5】
前記ピン(210)は、長方形の断面と、少なくとも部分的に円形の断面のうちの少なくとも1つを備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の点火器(40)。
【請求項6】
前記ピン(210)は、前記先端面(202)に連結されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の点火器(40)。
【請求項7】
前記ピン(210)は幅(209)を備え、前記先端面(202)は前記先端面内に開口部(213)を有するスロット(211)を備え、前記スロットは前記ピンを受けるように構成され、前記スロット開口部の幅は前記ピンの幅よりも狭い、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の点火器(40)。
【請求項8】
前記ピン(210)は幅(209)を備え、前記先端面(202)は前記先端面内に開口部(213)を有するスロット(211)を備え、前記スロットは前記ピン(210)を受けるように構成され、前記スロット開口部の幅は前記ピンの幅とほぼ等しい、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の点火器(40)。
【請求項9】
前記ピン(210)は、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、又はそれらの合金を含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の点火器(40)。
【請求項10】
前記シェルの延在方向において、前記点火遠端部と前記少なくとも3本のピン(210)との間にギャップ(215)が存在する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の点火器(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に火花点火器に関し、特に点火装置の寿命を延ばすための装置及びアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のガスタービンエンジンの少なくとも幾つかは、エンジンの始動及び/又は運転を容易にするための火花点火器を含む。このような点火器は、典型的には、中心電極と接地電極との間に高エネルギの火花放電が発生し、絶縁体の表面に沿って移動する表面ギャップスパークプラグである。このような点火器での火花放電は、火花を引き起こすために使用される点火システムの性質により「高エネルギ型」のものである。このシステムは、システム及び点火器の両端に電圧が印加されると充電される蓄積コンデンサを含む。印加電圧が火花放電を引き起こすのに十分に大きくなると、コンデンサによって蓄積されたエネルギは放電され、火花ギャップを横切って流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5998913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、ジェット機のタービンエンジンで使用される火花点火器は電極の腐食が問題であり、場合によっては点火器の寿命を制約する条件となっていた。中心電極と接地電極の両方の腐食問題は、タービンエンジンで使用される点火器で生ずる。従来の点火器の接地電極は、比較的安価であるためInconel(登録商標)又はその他の従来のニッケル合金で製造される場合が多い。しかし、このような電極は、ある環境やデューティサイクルで必要な耐用寿命が得られないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、点火器は、ベースと、絶縁体先端面と、両者の間に延在する側壁とを備えるシェルを含み、側壁はシェル内の空洞を囲む。点火器は、先端面から空洞へと延びるシェル孔と、先端面に埋め込まれ、孔に対してほぼ接線方向に延びるピンを更に含む。
【0006】
別の実施形態では、点火器アセンブリは、ベースと、先端面と、両者の間に延在する側壁とを備えるほぼ円筒形のシェルを含み、側壁はシェル内の空洞を囲み、シェルは側壁に対して平行に延び、先端面に対しては直交する長手軸を有する。点火器アセンブリは、先端面から空洞へと延び、長手軸と同心であるシェル孔と、孔に対してほぼ接線方向に先端面に結合された少なくとも一本の耐食性ピンと、シェル内に配置され、孔の近傍に位置する点火遠端部を含む電極を更に含む。
【0007】
更に別の実施形態では、ガスタービンエンジンは、燃焼室を囲む側壁を含む燃焼器と、側壁を少なくとも部分的に貫いて延びることで点火器アセンブリの先端が燃焼室と流体連通する点火器アセンブリとを含み、点火器アセンブリはシェル孔を含む先端面と、孔に対してほぼ接線方向に結合された少なくとも一本の耐食性ピンとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1〜5は本明細書に記載の装置及びアセンブリの例示的実施形態を示す図である。
【
図1】本発明の例示的実施形態によるガスタービンエンジンアセンブリの概略図である。
【
図2】本発明の例示的実施形態による点火器アセンブリの部分破断斜視図である。
【
図3】本発明の例示的実施形態による点火器アセンブリの端面斜視図である。
【
図4】本発明の例示的実施形態による点火器アセンブリの端面図である。
【
図5】本発明の例示的実施形態による点火器アセンブリの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、限定的ではなく例示的に本発明の実施形態を説明するものである。本発明には、産業用、商業用及び住居用ガスタービンの用途で、信頼性のある動作と、点火器の部品の寿命を長くするという一般的な応用があるものと考えられる。
【0010】
本明細書では、単数で示されその前に不定冠詞「a」や「an」が付く要素やステップは、例外が別途明記されていない限り、複数の要素やステップを除外するものではないことを理解されたい。更に、本発明の「一実施形態」の参照は、記載の特徴を含む付加的な実施形態があることを除外するものと解釈されるべきではない。
【0011】
図1は、本発明の例示的実施形態によるガスタービンエンジンアセンブリ8の概略図である。例示的実施形態では、ガスタービンエンジンアセンブリ8は、周囲空気14を受けるように直列流体連通された吸気口12を有する高バイパス比のターボファンガスタービンエンジン10と、ファン16と、圧縮機18と、燃焼器20と、高圧タービン22と、低圧タービン24とを含む。高圧タービン22は、第1のシャフト26を用いて圧縮機18に連結され、低圧タービン24は第2のシャフト28を用いてファン16に連結される。ガスタービンエンジン10は、ガスタービンエンジン10の上流側34から後方にガスタービンエンジン10の下流側36へと延在する対称軸32を有する。例示的実施形態では、ガスタービンエンジン10は、燃焼器20の近傍に連結された少なくとも1つの点火器アセンブリ40を更に有する。ガスタービンエンジン10は、少なくとも1つの火花検知器42と、各々がガスタービンエンジン10に連結された少なくとも1つの圧力変換器44とを更に含む。例示的実施形態では、火花検知器42は、点火器アセンブリ40により発生する火花を検知するように構成され、圧力変換器44は、火花点火器アセンブリ40のほぼ近傍の燃焼器20内の圧力を測定するように構成される。
【0012】
動作中、空気流は吸気口12を通ってガスタービンエンジン10に流入し、圧縮機18を用いて圧縮される。圧縮された空気は、上昇した圧力と温度で燃焼器20へと下流側に流される。燃料は燃焼器20に投入され、燃焼室20内で空気と燃料が混合し、点火されて高温燃焼ガスが生成する。詳細には、圧縮機18からの加圧空気は燃焼器20内で燃料と混合し、点火器アセンブリ40を用いて点火されることによって燃焼ガスを生成する。そして、この燃焼ガスは、圧縮機18を駆動する高圧タービン22を駆動し、ファン16を駆動する低圧タービン24を駆動するために利用される。
【0013】
図2は、本発明の例示的実施形態による点火器アセンブリ40の部分破断斜視図である。例示的実施形態では、点火器アセンブリ40は、ベース(
図2には図示せず)と、先端面202と、両者の間に延在する側壁204とを含むシェル200を備える。側壁204は、シェル200内の空洞206を囲む。シェル200は、先端面202から空洞206へと延びるシェル孔208を含む。例示的実施形態では、ピン210は先端面202に埋め込まれ、シェル孔208に対してほぼ接線方向に延びる。様々な実施形態では、ピン210は、円形の断面、部分的に円形の断面、多角形の断面、及びアーチ形の断面の少なくとも1つを含む。ピン210は、ろう付け、溶接、摩擦嵌め、干渉嵌め又はそれらの組み合わせを用いて先端面202に連接される。更に、別の実施形態では、ピン210は幅209を有し、先端面202は先端面202内に開口部213を有するスロット211を含む。スロット211はピン210を受けるように構成され、スロット開口部213の幅209はピン210の幅より狭く、ピン210の干渉嵌めを形成する。様々な実施形態では、先端面202は複数のピンを含み、少なくともその一本はシェル孔208に対して接線方向を向く。更に、様々な実施形態では、スロット211はシェル孔208に対して少なくとも部分的に開かれていても良い。ピン210は、先端面202が耐食性であることにより、点火器アセンブリ40の寿命を延ばすことを意図するものである。例示的実施形態では、ピン210は、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、又はそれらの合金から成る。
【0014】
点火器アセンブリ40は、シェル200内に配置された電極212を更に含む。例示的実施形態では、電極212は、シェル孔208の近傍に位置し、火花ギャップ215によって先端面202から離隔された点火遠端部214を含む。
【0015】
シェル200内には、絶縁体216がシェル200と電極212との間に配置される。絶縁体216は、シェル孔208とほぼ軸方向に位置合わせされた絶縁体の孔を含む。例示的実施形態では、シェル200、絶縁体216、及び電極212は、シェル孔208及び絶縁体孔218とほぼ同心に位置合わせされる。様々な実施形態では、シェル200、絶縁体216、電極212、シェル孔208、及び絶縁体孔218は互いに別々に配列される。
【0016】
図3は、本発明の別の例示的実施形態による点火器アセンブリ40の端面斜視図である。この実施形態では、3本のピン210が使用され、3本のピン210全てがシェル孔208に対してほぼ接線方向に位置合わせされる。
【0017】
図4は、本発明の例示的実施形態による点火器アセンブリ40の端面図である。例示的実施形態では、点火器アセンブリ40は長方形又は正方形の断面400を含み、これは製造段階で円形の断面402に加工されても良い。4本のピン210が先端面202に埋め込まれ、シェル孔208を接線方向に囲む。
【0018】
図5は、本発明の例示的実施形態による点火器アセンブリ40の側面図である。
【0019】
火花点火器の装置及びアセンブリの上記の実施形態は、エンジン点火部品の寿命を延ばすための費用効果が高く、信頼性のある手段を提供する。より詳細には、本明細書に記載の装置及びアセンブリは、使用中の点火器部品の摩耗の軽減を促進する。その結果、本明細書に記載の装置及びアセンブリは、費用効果が高く、確実な方法で保守作業の間の時間を延ばすことを促進する。
【0020】
本明細書は、最良の形態を含む実施例を用いて本発明を開示し、装置又はシステムを製造、使用し、且つ組み込まれた方法を実行することを含めて当業者が本発明を実施することを可能にするものである。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含んでも良い。このような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と相違ない構造要素を有し、又は特許請求の範囲の文言とさほど相違ない同等の構造要素を含む場合は、特許請求の範囲内にあることを意図する。
【符号の説明】
【0021】
8 ガスタービンエンジンアセンブリ
10 ガスタービンエンジン
12 吸気口
14 周囲空気
16 ファン
18 圧縮機
20 燃焼器
22 高圧タービン
24 低圧タービン
26 第1のシャフト
28 第2のシャフト
32 対称軸
34 上流側
36 下流側
40 点火器アセンブリ
42 火花検知器
44 圧力変換器
200 シェル
202 先端面
204 側壁
206 空洞
208 シェル孔
209 幅
210 ピン
211 スロット
212 電極
213 スロット開口部
214 点火遠端部
215 火花ギャップ
216 絶縁体
218 絶縁体孔
400 正方形の断面
402 円形の断面