【実施例】
【0014】
本願において、“近位”という用語は医療処置中における概ね心臓に最も近い方向を指しており、一方、“遠位”という用語は医療処置中における心臓から最も遠い方向を指している。
【0015】
以下に教示される好ましい実施例は、ステント又はステント−移植片の配備に関連させて説明する。該装置及び方法は、ステント、ステント−移植片、大静脈フィルタ、閉塞器具等を含むある種の埋込み医療器具の配備のために使用できることがわかるはずである。
【0016】
図1〜3を参照すると、ステント又はステント−移植片を配備するための装置が開示されている。該装置は、近位領域22と遠位領域24とを有している制御部材20を備えている。制御部材20は、近位領域22と遠位領域24との間に伸長している管腔27を有しているカニューレ26によって形成されている。以下において更に説明するように、制御部材20を選択的に作動させることによって、体内通路内でのステントの少なくとも部分的な拡張が可能になり、また、ステントの少なくとも部分的な径方向への収縮によって体内通路内でのステントの再位置決めも可能になる。
【0017】
制御部材20のカニューレ26は、ニッケル−チタン合金のような形状記憶材料、又は代替的には以下に説明するようにステンレス鋼若しくは別の適切な材料によって形成される。制御部材20の近位領域22は、ステントの一部分と係合する構造とされた少なくとも1つの尖叉部材を備えている。制御部材20は複数の尖叉部材を含んでいる。例えば、
図1〜3に示されているように、制御部材20は、
図2において最も良くわかるように、制御部材20の外周に設けられている5つの尖叉部材35〜39を備えているが、
図1及び
図3の側面図では、明確化のために3つの尖叉部材35〜37のみが示されている。5つより多いか少ない如何なる数の尖叉部材を使用しても良い。
【0018】
尖叉部材35〜39の各々が近位領域と遠位領域とを有している。
図1に示されているように、尖叉部材35は近位領域35aと遠位領域35bとを有しており、一方、尖叉部材36は近位領域36aと遠位領域36bとを有しており、尖叉部材37は近位領域37aと遠位領域37bとを有している。尖叉部材の近位領域は、テーパーが付けられているか又は尖っていない先端を形成している。
【0019】
尖叉部材35〜39は、例えば、レーザー又はその他の切断技術を使用して制御部材20の近位領域22に沿ってカニューレ26の横面に1以上の長手方向のスリットを形成することによってカニューレ26内に形成されている。尖叉部材はまた、半田付け、溶接、又はその他の方法でカニューレ26に取り付けることもできる。近位の長手方向スリット47を設けることによって、互いに隣接している尖叉部材35と36との近位領域35a及び36aが相対的に分離されている。同様に、近位の長手方向のスリット48は、互いに隣接している尖叉部材36及び37の近位領域36aと37aとを分離している。更に、
図1に示されているように、カニューレ26に形成された遠位の長手方向スリット45を設けることによって、各々、互いに隣接している尖叉部材35及び36の遠位領域35bと36bとが分離され、一方、カニューレ26内に形成された遠位の長手方向スリット46を設けることによって、各々、互いに隣接している尖叉部材36及び37の遠位領域36bと37bとが分離されている。
【0020】
一つの実施例においては、近位の長手方向スリット47及び48の長さは、遠位の長手方向スリット45と46との長さよりも短い。従って、
図3に示されているように、尖叉部材35〜39の近位領域は長さL
1を有しており、一方、尖叉部材35〜39の遠位領域は長さL
2を有しており、長さL
1は長さL
2よりも短い。一つの例においては、長さL
2は長さL
1の約2〜8倍の長さである。単なる例示としては、長さL
2は約2〜20cmであり、長さL
1は0.5〜6cmである。下の
図9〜10に示されているように、長さL
1は、例えば、ステントの穴内に配置されることによって1以上の尖叉部材35〜39の近位領域をステントの一部分と係合させるのに十分な長さであるのが好ましい。更に、近位の長手方向スリット47及び48は、遠位の長手方向スリット45及び46よりも外周幅が広いのが好ましい。従って、
図3に示されているように、尖叉部材35〜39の近位領域は幅がW
1であり、一方、尖叉部材35〜39の遠位領域は幅がW
2であり、幅W
1は幅W
2よりも狭い。従って、
図1及び
図3に示されているように、近位領域35a〜37aが幅がより広い遠位領域35b〜37bへと移行する位置に段状部分40が形成されている。段状部分40は、以下において更に説明される目的のために、ステントの一部分と係合し且つ/又は当接する大きさ及び形状とされているのが好ましい。
【0021】
制御部材20は、
図1に示されている収縮した給送形態を有しており、また、
図3に示されている部分的に又は完全に配備された拡張形態をも有する。
図1に全体が図示されているように、収縮した給送形態においては、尖叉部材35〜39の近位領域は径方向に収縮していて制御部材20の中心長手軸線Lにほぼ平行であるのが好ましい。
図3に図示されているように、部分的又は完全に拡張された形態においては、尖叉部材35〜39のうちの少なくとも1つの近位領域は、中心長手軸線Lに対して径方向外方へ拡張している。
【0022】
下の
図9〜10に関して説明されるように、尖叉部材35〜39は、各々、
図1及び
図3に示されている収縮形態と拡張形態との間を増分的な量だけ選択的に動くことができる。以下に記載する一つの例示的な方法においては、尖叉部材35〜39の近位領域は、径方向内方及び外方の両方に増分的な量だけ選択的に動いて制御された方法で体内通路内でのステントの位置決めを容易にすることができる。
【0023】
図4を参照すると、移植片材料90に結合され、その近位側に配置されているステント60を有している例示的なステント−移植片50は、
図1〜3の制御部材20を使用した制御された方法で配備させることができる。ステント60は、連続している筒状体によって形成することができ、該筒状体には、レーザー又は化学エッチングによってパターンを切り込んで該筒状体の壁にスリットを形成する。この結果得られた構造は、次いで所望の最終的な形状を付与するように熱硬化される。
図4に示されているように、この最終的な構造は、一連の近位の頂端と一連の遠位の頂端とを有する形状を有している。
図4に示されているように、ステント60の近位端62は多数の互いに隣接した近位の頂端62a及び62bを有しており、一方、ステント60の遠位端64は多数の互いに隣接している遠位の頂端64a及び64bを有している。例えば、2009年2月2日出願の同時係属の米国特許出願第12/364,162号に記載されている自己拡張型取り付けステントによるステント60が設けられている。当該米国特許出願は、これに言及することによりその内容全体が本願に参考として組み入れられている。
【0024】
図4において、互いに隣接している近位頂端62aと62bとの少なくとも一つの対は、異なる特徴を有している。例えば、
図4に示されているように、第一の近位の頂端62aは、その内側に形成された開口部又は穴71を有している端部領域70を備えており、穴71は、以下に説明するように、尖叉部材35〜39のうちの一つの近位領域を受け入れる構造とされている。
図4に示されているように、第二の隣接している近位の頂端62bは、その内側に形成された一体の棘状部77を有している端部領域75を備えている。棘状部77は、端部領域75内に所望の棘形状をレーザー加工によって形成することができる。従って、
図4に示されているように、スリット76は、所望の棘形状が形成された後に、各端部領域75に形成される。ひとたび所望の棘形状が切り込まれると、棘状部77の主本体部分は、端部領域75に対して径方向外方へ曲げられる。曲げ角度は如何なる鋭角を有していても良く、又は代替的には、直角又は鈍角であっても良い。所望ならば、棘状部77は、目標組織部位に対する係合を補助するために、例えば、棘状部の先端を研磨することによって尖らせても良い。
【0025】
頂端62a,62bは、全て同じであっても良いし又は互いに異なっていても良い。一つの実施例においては、これらは全て棘状部77を有している。別の実施例においては、頂端62a,62b自体には棘状部は全く設けられていない。
【0026】
依然として
図4を参照すると、ステント60は、近位の頂端と遠位の頂端との間に少なくとも1つの支柱部分を備えている。例えば、多数の角度が付けられた支柱部分が第一の近位の頂端62aとこれに対応する遠位の頂端64aとの間に設けられており、角度が付けられた支柱部分の同一の組が、隣接の第二の近位の頂端62bとこれに対応する遠位の頂端64bとの間に設けられている。例示として、
図4に示されているように、第一の近位の頂端62aは遠位方向に伸長し且つ各々第一及び第二の角度が付けられた支柱部分67と68とに分かれていて近位の頂点78を形成している。圧縮された状態では、第一及び第二の角度が付けられた支柱部分67と68とは、これらが互いにほぼ平行であるように圧縮される。同様に、各遠位頂端64a及び64bは、近位方向に伸長しており且つ各々第一及び第二の角度が付けられた支柱部分67と68とに分かれていて遠位の頂点79を形成している。第一の角度が付けられた支柱部分67は隣接の第二の支柱部分68につながって移行部分80を形成している。このようにして、
図4に示されているように、ステント60は連続した概ね筒形状に形成されている。
【0027】
ステント60の拡張は、角度が付けられた支柱部分67と68とによって少なくとも部分的に提供される。これらの支柱部分は、圧縮状態では互いにほぼ平行であるが、
図4に示されている拡張状態においては相対的に離れるように外方へ撓む。ステント60は、レーザー加工されたニチノール製のカニューレのようなあらゆる適切な材料によって作ることができる。ニチノールによって製造されている場合には、ステント60は、下の
図8の外側シース140のような給送シースを取り外すと
図4に示されている拡張状態を呈するように傾斜が付けられている。
【0028】
各移行部分80は、角度が付けられている部分に対して比較的大きな表面積を有している。なぜならば、該移行部分は複数の実質的に異なる角度が付けられた部分67及び68によって構成されているからである。ステント60は、複数の移行部分80のうちの少なくとも1つに設けられた少なくとも1つの棘状部82を有している。棘状部82は、支柱の一部分として一体に形成されても良いし、又は移行部分80の表面に接合された外部の棘状部材によって構成されても良い。
図4に示されているように、多数の一体の棘状部82が設けられている。上記した棘状部77と同様に、棘状部82は、移行部分80に所望の棘状部形状をレーザー加工することによって形成されている。従って、
図4に示されているように、所望の棘状部の形状が形成された後に移行部分80にスリット81が形成される。移行部分80はステント60の他の領域より大きな表面積を有しているので、ステントの構造的一体性に不利な影響を及ぼすことなく移行部分80の一部を貫通することが比較的容易である。所望の棘状部の形状が形成されると、棘状部82の主要本体部分は、移行部分80に対してある角度で外方へ曲げられ且つ任意に尖らせて目標組織部位への係合を容易化することができる。
【0029】
遠位の頂端64a及び64bの各々は、
図4に示されているように、その内側部に穴89が形成されている端部領域88を備えている。ステント60の遠位端64は、移植片材料90の近位端92に結合することができる。遠位の頂端64a及び64bは、例えば、移植片材料及びステント60の穴89に通されて輪にされる1以上の縫合糸を使用して移植片材料に結合させることができる。このようにして、ステント60は、血管内移植片を固定するための取り付けステントとして使用することができる。例えば、移植片材料90は、動脈瘤内の流体の流れを密封するために動脈瘤を覆い、一方、ステント60の近位端62は、移植片材料から近位方向へ遠のく方向に伸長して例えば動脈瘤の疾患部分から離れている血管壁の健康な部分に係合する。明らかに、1以上の付加的なステントを、ステント60に対して遠位側の位置にある移植片材料90の内面又は外面に結合させて移植片材料全体の開存性を維持する補助とすることができる。
【0030】
ステント60は、血管又は導管内の目標位置へと前進することができるように、縮径した給送形態、すなわち圧縮形態を有している。ステント60はまた、例えば、通路内の開存性を維持するために又は移植片の管腔を開いた状態に保持するために、血管又は導管の少なくとも一部分に径方向外方への力をかける拡張された配備状態をも有している。拡張状態においては、ステント60の中心管腔を通った流体の流れが可能になる。更に、ステント60の支柱部は、ほぼ平らなワイヤー状の外形を有するか又は丸味を付けられた外形を有している。
図4から最も良くわかるように、ステント60の支柱は概ね平らなワイヤー状の外形を有している。
【0031】
ステント60は超弾性材料によって製造することができる。単なる例示として、超弾性材料は、ニッケルチタン合金(ニチノール)のような形状記憶合金とすることができる。ステント60がニチノールのような自己拡張型の材料からなる場合には、ステント60は熱硬化されて所望の拡張状態とされた弛緩した形状を呈し、この状態では、該ステントは、ある種の冷却媒体又は熱媒体を適用したときに予め形成された第一の拡張した内径を呈する。別の方法として、ステント60は、配備されたときに、圧縮によって材料に永久的な歪みを生じさせることなく、ステント60をその元の拡張された形状へと戻らせる他の金属及び合金によって作っても良い。単なる例示として、ステント60は、ステンレス鋼、コバルト−クロム合金、アモルファス金属、タンタル、白金、金、及びチタンのような他の材料によって構成することができる。ステント60はまた、熱可塑性樹脂及びその他のポリマーのような非金属材料によって作ることもできる。
【0032】
一つの例示的なステント60が
図4に示され且つ以下の
図9〜10に記載されているけれども、
図1〜3の制御部材20及び下の
図5〜10に記載されている他の装置と組み合わせて種々の代替的なステント構造を使用することができる。更に、ステントは、単独で又はステント−移植片装置の一部として又は他のあらゆる埋込み医療器具の一部として配備することができる。
【0033】
図5を参照すると、内側カニューレ100と、制御部材20に組み合わせて配備器具の一部として使用することができる非外傷性の先端110の側方断面図が示されている。内側カニューレ100は、近位領域と遠位領域とを有している管状部材と、近位領域と遠位領域との間に伸長している管腔104とを備えている。
図5に示されているように、内側カニューレ100の管腔104は、内側カニューレ100がガイドワイヤー108の外周に沿って前進されるようにする大きさとされている。
【0034】
図5に示されているように、非外傷性の先端110は、適当な接着剤又は機械的取り付け機構を使用して、内側カニューレ100の遠位領域に沿って外面103に取り付けられている。非外傷性の先端110は、非外傷性材料によって作られており且つ近位端112及び遠位端114を備えている。近位端112は、遠位端114に対して比較的小さな外径を有しており、それらの間にテーパー部115を有している。
図5に示されているように、非外傷性の先端110の近位端112は、内側カニューレ100の近位端102とほぼ面一である。
図5に示されている非外傷性の先端110は更に遠位の凹部117を備えており、該遠位の凹部117は、非外傷性の先端110の遠位端114にテーパーが付けられている内面118を設けることによって形成されている。以下において更に詳細に説明するように、非外傷性の先端110の遠位の凹部117は、収縮した給送形態にあるステント60の給送中に、制御部材20の近位部分とステント60とを収容する。
【0035】
図6を参照すると、
図1〜3の制御部材20は内側カニューレ100の外面103に結合されている。制御部材20の遠位領域24は、例えばハンダ付け、溶接、又はその他の適当な手段を使用して、取り付け領域109において内側カニューレ100の外面103に固定されている。好ましくは、制御部材20は、尖叉部材が
図6に示されている収縮した給送形態にあるときに、尖叉部材35〜37の近位領域35a〜37aの一部分が非外傷性の先端110の内側凹部117内に配置される位置で内側カニューレ100に固定されている。尖叉部材35〜39は、内側カニューレ100に堅固に取り付けられておらず、むしろ、配備されるか又は部分的に配備された形態においては径方向外方に拡張して内側カニューレ100と非外傷性の先端110とから離れる。
【0036】
更に、内側カニューレ100は尖叉部材35〜37内を通り且つ取り付け領域109を通り過ぎて近位方向に伸長していることは注目されるべき点である。尖叉部材35〜37の内側に配置されている内側カニューレの部分は、図示する目的のために
図6には示されていない。しかしながら、
図5に示されている内側カニューレの近位端102は、尖叉部材35〜37に向かって遠位方向へ伸長しており且つ非外傷性の先端110の近位端に固定されている。
【0037】
図7を参照すると、側面図は
図6の装置を覆って配置されている外側カニューレ120を示している。外側カニューレ120は、近位領域と遠位領域とこれらの間に伸長している管腔124とを備えている。管腔124は、内側カニューレ100の外径よりも大きい内径を有していて外側カニューレ120が内側カニューレ100の外周に沿って動くことができるようにされている。下の
図9〜10に示されているように、外側カニューレ120が内側カニューレ100に対して長手方向に動くことによって、制御部材20の尖叉部材35〜39の選択的な拡張及び収縮が可能にされて、制御された拡張を補助し且つ必要な場合にはステント60の収縮が補助される。
【0038】
図8を参照すると、
図4のステント−移植片50が、収縮された給送形態にある制御部材20に結合されている。この状態では、ステント−移植片50の移植片90は、外側カニューレ120の周囲に配置されている。ステント60の近位端62の少なくとも一部分は制御部材20に結合されている。下の
図9〜10において最も良くわかるように、ステント60の交互の近位頂端62aの各々は、尖叉部材35〜39のうちの一つに結合されている。更に特定すると、
図9〜10に示されているように、尖叉部材35の近位領域35aは、ステント60の近位頂端62aのうちの一つに形成されている穴71に通されて輪に掛けられている。このときに、尖叉部材35の段状部分40はステント60の近位の頂点78に突き当たる。
【0039】
残りの尖叉部材36〜39は、類似した方法でステント60の他の近位の頂端62aに結合されている。尖叉部材35〜39の各々の段状部分40は、ステント60と係合し且つ/又は突き当たり、ステント60の遠位方向への動きを実質的に阻止している。このようにして、ステント60は制御部材20に結合固定されたままとなる。尖叉部材35〜39は、棘状部77を備えている交互の近位頂端62bを貫通して配置されていないことに注目されるべきである。更に、上記したように、給送中にステント60が制御部材20の尖叉部材35〜39に結合されているときに、
図8に示されているように、尖叉部材35〜39の近位部分とステント60の近位部分とは、非外傷性の先端110の遠位端114において内側凹部117内へと伸長している。
【0040】
外側シース140は、ステント−移植片50を
図8に示されている収縮した給送形態に保持するために使用されるのが好ましい。外側シース140は、近位領域及び遠位領域とこれらの間に伸長している管腔144とを有している。外側シース140の近位端142は、
図8に示されているように、ステント−移植片50のステント60の外周に沿って伸長しており且つ非外傷性の先端110の遠位端114に当接している。アセンブリ全体が
図8に示されているようになっている状態で、ステント−移植片50は、ワイヤーガイド108の外周に沿って患者の血管又は導管内の目標部位に向かって進められる。
【0041】
図9〜10を参照すると、ステント−移植片50を体内通路の内壁と係合する状態へ完全に配備する前に、医師は、ステント60を徐々に展開し且つ必要に応じてステント60を徐々に収縮もさせ、ステント60のより良い配備及び位置決めを容易化することができる。第一のステップにおいては、
図8に示されているワイヤーガイド108の外周に沿った装置の給送状態において、ステント60は、該ステント60が配備されることが望ましい体内通路の領域にほぼ合せられる。これは、蛍光透視誘導又はその他の像形成技術によって行うことができる。体内通路内での位置合わせを容易化するために、ステント60上に1以上の放射線不透過性のマーカーが設けられているのが好ましい。
【0042】
最初にステント60が位置合わせされると、
図8の外側シースは遠位方向に後退されてステント−移植片50が露出する。この時点で、ステント60は
図9に示されているように部分的に自己拡張し、ステント60の近位端62はもはや非外傷性の先端110の遠位端114の内側凹部117と係合していない。ステント60の近位端62が自己拡張するにつれて、該ステントの区分は、
図9に示されているように尖叉部材35〜39の各々を径方向外方へ付勢し始める。
【0043】
しかしながら、外側カニューレ120の長手方向の位置決めは、尖叉部材35〜39の最大の径方向拡張量を制限するために使用され、これは、次いで少なくともステント60の近位端62の最大径方向拡張量を制限する。更に特定すると、外側カニューレ120が
図9に示されているように相対的に近位の長手方向位置にあるときに、外側カニューレ120は尖叉部材の遠位領域35b及び36bに比較的堅牢な拘束力をかけ、これによって尖叉部材の近位領域35a及び36aが径方向に更に拡張することが阻止される。この時点でステント60は径方向に更に拡張することはできない。更に、ステント60は後方即ち遠位方向へ移動できない。なぜならば、頂点78、角度が付けられた支柱部分67及び68、又はその他の支柱部分が、制御部材20の尖叉部材35〜39の段状部分40と係合しているからである。
【0044】
従って、外側シース140が相対的に近位の長手方向位置にあり且つ外側カニューレ120が比較的堅牢な拘束力を尖叉部材35〜39にかけているときには、棘状部77も棘状部82も体内通路の内壁と係合しない。このことにより、医師は所望な場合に体内通路でのステント60の位置を再度位置決めすることができる。
【0045】
図10を参照すると、次のステップにおいて、外側カニューレ120は内側カニューレ100に対して遠位方向に後退される。外側カニューレ120は、比較的遠位の長手方向位置にあるときには、尖叉部材9の比較的大きな部分を露出させ且つカニューレ26及び制御部材20と内側カニューレ100との間の取り付け領域109をも露出させる。尖叉部材35〜39はもはや実質的に拘束されていないので、尖叉部材35〜39は、比較的可撓性が大きく、ステント60の所望の自己拡張によって付与される径方向の力によって、
図10に示されているように尖叉部材35〜39が更に径方向外方へ付勢される。
【0046】
このようにして、外側カニューレ120を内側カニューレ100に対してある増分量だけ動かすことによって、外側カニューレ120は、収縮形態と拡張形態との間で径方向内方と外方との両方にある増分量だけ移動することを許容し、体内通路内でのステントの位置決めを容易化することができる。例えば、ステント60が外側カニューレ120の増分的な遠位方向への後退によって制御されたやり方で径方向に拡張し、棘状部77及び82が体内通路の内壁と係合しそうなときに、医師は、外側カニューレ120を内側カニューレ100に対して近位方向に前進させてステント60を再度捕捉し即ち後退させることを望む。従って、ステント60の最終的な配備前にあらゆる回数の再位置決めの試みをなすことができる。
【0047】
最終的な位置決めの際に、外側カニューレ120は、棘状部材77及び82を体内通路の内壁に完全に係合させるのに十分な量だけ遠位方向へ後退される。次いで、内側カニューレ100が遠方方向へ後退され、尖叉部材35及び36の近位領域35a及び36a並びに他の尖叉部材がステント内の関連する穴71内を介して引っ張られる。次いで、尖叉部材35〜39が外側カニューレ120の境界内へと遠位方向に後退され、内側カニューレ100及び外側カニューレ120は患者の体内から取り出される。
【0048】
上記したように、制御部材20を使用した給送装置を設けることによって、体内でのステント−移植片50の改良された位置決めが可能になり、完全に配備される前のステントのある程度の再捕捉も可能になる。更に、典型的には従来のトリガーワイヤーがステントを解放するときに生じる不所望な短縮が、制御部材20及び該制御部材と組み合わせられた尖叉部材を使用することによって減じられ又は排除される。
【0049】
各ステントの頂点62a,62bのための尖叉部材が設けられることが好ましいが、幾つかの実施例においては、ステントの頂端のうちの幾つかだけが関連する尖叉部材を有しており、この場合には、ステント60は、尖叉部材35〜37に結合されているステントの部分によって作られたステント全体に亘って収縮力を生じさせる。
【0050】
以上、本発明の種々の実施例を説明したけれども、本教示はこれらに限定されず、添付の特許請求の範囲を考慮することによって解釈されるべきである。更に、ここに記載された利点は必ずしもここに示されている教示の利点のみではなく、また、本発明の実施例の各々がここに記載されている利点の全てを達成することが期待されるわけではない。
【0051】
本願が優先権を主張している米国特許出願第61/094,605号における開示及びこの出願に添付されている要約も、これらに言及することによって参考として本願に参考として組み入れられている。