(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄板などの蓄熱しやすい屋根材で屋根を形成し、該屋根材の下側に空気導入流路を設けるとともに、該空気導入流路へ外気を取り入れるための外気取入口を屋根の軒先に設けた建物が知られている(例えば特許文献1,2)。この種の建物では、外気取入口から取り入れられた外気は、屋根材に蓄積された太陽熱により暖められながら屋根の棟周辺まで上昇した後、送風機などにより、床下などの建物内部へ供給される。このように、外気を太陽熱により暖めながら建物内部へ供給することにより、建物の暖房に要するエネルギーを削減することができる。しかし、この種の建物において、外気を建物内部へ供給するのは暖房の必要な冬期だけであり、暖房の必要がない夏期などにおいては、暖まった外気はそのまま棟周辺に設けた窓などを通じて建物外部へ送出される。このため、この種の建物では、冷房に要するエネルギーを削減することはできず、必ずしも省エネルギー化を十分に推し進めることができるものではなかった。
【0003】
ところで、平成15年の建築基準法の改正を受けて、一定の住宅でいわゆる「24時間換気システム」が義務化されたことなどに伴い、近年、換気に配慮した各種の建物が提案されるようになっている。その中には、熱交換器を用いることにより、建物外部から建物内部へ供給される外気(給気)と建物内部から建物外部へ排出される内部空気(排気)との間で熱交換を行うようにしたものもある(例えば特許文献3)。このように熱交換器を使用することにより、建物内部へ供給される外気と建物内部に存在する内部空気との温度差を小さくし、暖房に要するエネルギーだけでなく、冷房に要するエネルギーを削減することが可能になる。しかし、上記のように、外気を太陽熱により暖めながら建物内部へ供給する構造の建物において、熱交換器を使用して、建物内部へ供給される外気と建物外部へ排出される内部空気とで熱交換を行うようにしたものは見当たらなかった。このため、熱交換器を通過した後の外気の温度を建物内部の内部空気の温度に近づけるのにも限界があり、やはり省エネルギー化を十分に推し進めることはできなかった。熱交換器を使用する場合でも、熱交換器に導入される前の2種類の空気の温度差は小さい方が省エネルギー化には有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、建物内部へ供給する外気と建物外部へ排出する内部空気とで熱交換を効率的に行うことができ、暖房に要するエネルギーだけでなく冷房に要するエネルギーを十分に削減することが可能で、季節や時間帯を問わず一年を通じて省エネルギー化を実現することのできる建物を提供するものである。また、この建物を低コストで提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
屋根の周辺に存在する外気を取り入れるための第一外気取入口と、
第一外気取入口から取り入れられた外気を建物内部へ供給するための第一外気供給流路と、
を備えた建物であって、
建物内部に存在する内部空気を取り入れるための内部空気取入口と、
内部空気取入口から取り入れられた内部空気を建物外部へ排出するための内部空気排出流路と、
建物内部へ供給される外気と内部空気排出流路を流れる内部空気との間で熱交換を行うための熱交換手段と、
を設けたことを特徴とする建物
を提供することによって解決される。
【0007】
ここで、「建物内部」とは、建物の外壁、基礎及び屋根で囲まれた空間という意味であり、室内だけでなく、床下や天井裏などの空間も含む概念である。本発明の建物により、例えば、冬期日中時において屋根の周辺に存在する暖かい外気(建物内部に存在する内部空気との温度差が小さい外気)を熱交換器に導入することが可能になり、建物内部へ供給する外気を建物内部に存在する内部空気の温度にさらに近づけることが可能になる。したがって、暖房に要するエネルギーをさらに削減することが可能になる。
【0008】
本発明の建物において、屋根の構造は、第一外気取込口を有するのであれば特に限定されないが、以下の構造とすると好ましい。すなわち、屋根の上面を太陽光発電パネルによって覆い、第一外気取入口から取り入れられた外気を第一外気供給流路へ導入するための第一外気導入流路を太陽光発電パネルの下面と屋根の上面との隙間に設けると好ましい。これにより、例えば、冬期日中時において第一外気取入口から取り入れられた外気を太陽光発電パネルに蓄積された太陽熱によってさらに暖めながら第一外気供給流路まで導入することが可能になる。したがって、暖房に要するエネルギーをさらに削減することができる。
【0009】
また、本発明の建物においては、建物下部(建物における屋根より低い部分)の周辺に存在する外気を取り入れるための第二外気取入口と、第二外気取入口から取り入れられた外気を建物内部へ供給するための第二外気供給流路と、建物内部へ供給される外気(熱交換手段にて内部空気排出流路を流れる内部空気との間で熱交換される外気)を、第一外気供給流路を流れる外気と第二外気供給流路を流れる外気とで切り替えるための流路切替手段とを設けることも好ましい。これにより、状況に応じて、外気を取り入れる場所を屋根の周辺と建物の周辺とで切り替えることが可能になり、冬期と夏期、あるいは日中と夜間を問わず、建物内部に存在する内部空気の温度により近い外気を建物内部へ供給することが可能になる。したがって、季節や時間帯を問わず一年を通じて省エネルギー化を実現することができる。
【0010】
このとき、流路切替手段をどのように制御するかは特に限定されない。流路切替手段は、例えば、月日や時刻に応じて制御することもできるが、温度に応じて制御すると好ましい。具体的には、第一外気供給流路を流れる外気の温度T
1を検知するための第一温度センサと、第二外気供給流路を流れる外気の温度T
2を検知するための第二温度センサと、内部空気排出流路を流れる内部空気の温度T
3を検知するための第三温度センサとを設け、温度T
1,T
2,T
3に応じて流路切替手段が制御されるようにすると好ましい。これにより、建物のある地域の気候や天候などが異なっても、自動的に最適な条件で省エネルギー化ができるように流路切替手段を制御することが可能になる。
【0011】
ここで、第一温度センサは、第一外気供給流路を流れる外気の温度T
1と同じ温度、あるいはそれに近い温度を検知できるのであれば、必ずしも第一外気供給流路に設ける必要はない。例えば、第一外気導入流路の終端部近傍(第一外気導入流路における第一外気供給流路に接続される側の端部近傍)に第一温度センサを設けても温度T
1と同一かそれに近い温度を検知することができる。同様の理由で、第二温度センサは、必ずしも第二外気供給流路に設ける必要はなく、第二外気取入口の周辺の屋外などに設けることができるし、第三温度センサは、必ずしも第三外気供給流路に設ける必要はなく、室内などに設けることができる。
【0012】
上記のように、温度T
1,T
2,T
3に応じて流路切替手段を制御する場合には、流路切替手段は、暖房が必要な冬期と、冷房が必要な夏期とで異なる制御を行う。例えば、冬期の場合には、以下のように制御すると好ましい。すなわち、温度T
1が温度T
2よりも高い場合(日中にこのような状況となることが多い。)には、屋根の周辺に存在する外気が第一外気供給流路を通じて建物内部へ供給され、温度T
1が温度T
2よりも低い場合(夜間にこのような状況となることが多い。)には、建物下部の周辺に存在する外気が第二外気供給流路を通じて建物内部へ供給されるように、流路切替手段を制御すると好ましい。これにより、建物内部に存在する内部空気の温度により近い外気(温度の高い外気)を建物内部へ供給することが可能になる。
【0013】
一方、夏期の場合には、以下のように制御すると好ましい。すなわち、温度T
1が温度T
2よりも高い場合(日中にこのような状況となることが多い。)には、建物下部の周辺に存在する外気が第二外気供給流路を通じて建物内部へ供給され、温度T
1が温度T
2よりも低い場合(夜間にこのような状況となることが多い。)には、屋根の周辺に存在する外気が第一外気供給流路を通じて建物内部へ供給されるように、流路切替手段を制御すると好ましい。これにより、建物内部に存在する内部空気の温度により近い外気(温度の低い外気)を建物内部へ供給することが可能になる。冬期であるか夏期であるかは、温度T
1,T
2の絶対値や、温度T
1,T
2と温度T
3との差などから知ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、建物内部へ供給する外気と建物外部へ排出する内部空気とで熱交換を効率的に行うことができ、暖房に要するエネルギーだけでなく冷房に要するエネルギーを十分に削減することが可能で、季節や時間帯を問わず一年を通じて省エネルギー化を実現することのできる建物を提供することが可能になる。また、この建物を低コストで提供することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.本発明の建物の概要
本発明の建物の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の建物は、屋根を有する各種の建物に適用可能であるが、なかでも、住宅として好適である。以下においては、本発明の建物を、住宅に採用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の建物における冬期日中時の空気の流れを示した図である。
図2は、本発明の建物における冬期夜間時の空気の流れを示した図である。
図3は、本発明の建物における夏期日中時の空気の流れを示した図である。
図4は、本発明の建物における夏期夜間時の空気の流れを示した図である。
図5は、本発明の建物における屋根の一例を破断して示した斜視図である。
図6は、本発明の建物における屋根の他例を破断して示した斜視図である。
【0017】
本発明の建物は、
図1〜4に示すように、屋根10の周辺に存在する外気100を取り入れるための第一外気取入口20と、第一外気取入口20から取り入れられた外気100を建物内部へ供給するための第一外気供給流路21と、建物内部に存在する内部空気200を取り入れるための内部空気取入口30と、内部空気取入口30から取り入れられた内部空気200を建物外部へ排出するための内部空気排出流路31と、建物内部へ供給される外気100(又は外気101)と内部空気排出流路31を流れる内部空気200との間で熱交換を行うための熱交換手段40とを備えたものとなっている。
【0018】
本実施態様においては、上記の構成のほか、
図1〜4に示すように、建物下部の周辺に存在する外気101を取り入れるための第二外気取入口22と、第二外気取入口22から取り入れられた外気101を建物内部へ供給するための第二外気供給流路23と、建物内部に供給される外気を、第一外気供給流路21を流れる外気100と第二外気供給流路23を流れる外気101とで切り替えるための流路切替手段50と、第一外気供給流路21を流れる外気100の温度T
1を検知するための第一温度センサ60と、第二外気供給流路23を流れる外気の温度T
2を検知するための第二温度センサ61と、内部空気排出流路31を流れる内部空気200の温度T
3を検知するための第三温度センサ62を設けている。屋根10の上面は、複数枚の太陽光発電パネル70と、複数枚の集熱パネル71とで覆われている。
【0019】
2.屋根
本実施態様において、屋根10は、
図1〜4に示すように、勾配屋根となっている。屋根10は、後述する第一外気取入口20を有するのであれば、その具体的な構造は特に限定されない。本実施態様において、屋根10は、
図5に示すように、その勾配方向に沿う複数本の凸部10aが所定間隔で平行に設けられた形態となっており、隣り合う凸部10aの間の区間は、凸部10aよりも低い平板部10b(凹部)となっている。本実施態様においては、野地板11の上面に防水シート12を張り、その上に複数本の縦桟13を固定し、さらにその上から上葺き材14を張ることにより、上記形態の屋根10を施工している。上葺き材14は、一般的な住宅の屋根に使用される各種のものを使用することができる。本実施態様においては、金属(ガルバニウム)製の鋼板を上葺き材14として用いている。上葺き材14は、縦桟13を覆うことができるように、縦桟13に重ねられる部分で折り曲げられた形態を有している。縦桟13に一致する箇所が上記の凸部10aとなる。
【0020】
本実施態様において、屋根10の上面は、
図5の破線で示すように、複数枚の太陽光発電パネル70及び複数枚の集熱パネル71で覆われる。太陽光発電パネル70は、屋根10の軒先から複数段に配し、集熱パネル71は、屋根10の最上段である棟付近に1段に配している。集熱パネル71は、熱線透過性及び/又は蓄熱性を有するものであれば特に限定されない。本実施態様において、集熱パネル71は、太陽光を透過することができるガラス板を使用している。この集熱パネル71を透過してくる太陽光によって、屋根10の軒先に設けられた第一外気取入口20から取り入れられて後述する第一外気導入流路24を棟付近まで上昇してきた外気100を、さらに暖めることができる。太陽光発電パネル70及び集熱パネル71は、図示省略の金具などを介して、凸部11aの頂面に対して固定される。このため、屋根10の上面と、太陽光発電パネル70の下面及び集熱パネル71の下面との間には、凸部11aで仕切られた複数の隙間24が形成された状態となる。この隙間24は、屋根10の軒先に設けられた第一外気取入口20から取り入れられた外気100を第一外気供給流路21へ導入するための第一外気導入流路となる。
【0021】
本実施態様において、複数本の第一外気導入流路24は、
図5に示すように、屋根10の棟周辺に該棟と平行な方向に設けられた共通のダクト25に接続されている。ダクト25には、第一外気供給流路21の上端部が接続されている。このため、それぞれの第一外気導入流路24を登って来た外気100は、共通の第一外気供給流路21を通じて、建物内部に供給されるようになっている。
図5の例において、ダクト25は、屋根10の幅方向略全体に亘って設けているが、このダクト25は、
図6に示すように、第一外気供給流路21の上端部の周辺(例えば、屋根10の幅方向中央部)のみに設けてもよい。この場合、屋根10の上段部の凸部10a(第一外気導入流路24の仕切となる凸部10a)は、ダクト25に向かって傾斜(屋根10の勾配方向に対して傾斜)して設ける。これにより、第一外気取入口20から取り入れられた外気100を第一外気供給流路21まで案内することができる。この場合、集熱パネル71は、ダクト25の周辺のみに設ければよい。凸部10aを傾斜して設ける部分に使用する屋根材は、他の部分(屋根10の下段部を形成する屋根材)とは別体のパネルとすることもできる。これにより、現場での施工作業を容易にすることができる。
【0022】
3.第一外気供給流路
第一外気供給流路21は、第一外気取入口20から取り入れられた外気100を建物内部へ供給できるのであれば、その形態や経路などを限定されない。本実施態様においては、
図1〜4に示すように、床下空間80とを結ぶ配管により第一外気供給流路21を構成している。第一外気供給流路21の上端部(吸引側の端部)は、屋根10のダクト25に接続され、第一外気供給流路21の下端部(送出側の端部)は、床下空間80に配された熱交換手段40に接続されている。第一外気供給流路21の上端部近傍には、第一フィルター90を設けている。これにより、外気100を清浄にした後、建物内部へと供給することができる。本実施態様において、第一フィルター90は、ファン付きのフィルターを使用している。このため、第一外気取入口20から取り入れられて第一外気導入流路24を流れる外気100を第一外気供給流路21へと吸引することができるようになっている。外気100を吸引するためのファン(第一ファン)は、第一外気供給流路21の他の場所、あるいは熱交換手段40に設けてもよい。ところで、第一外気供給流路21を構成する配管は、壁の中などに埋め込んで見えないようにすると、建物の室内をすっきりと見せることができる。また、この配管は、できるだけ曲がり角の少ない経路で配すると、その中で空気がスムーズに流れるだけでなく、使用する配管の本数を減らしてコストを削減できる。
【0023】
4.第二外気供給流路
第二外気供給流路22は、第二外気取入口22から取り入れられた外気101を建物内部へ供給できるのであれば、その形態や経路などを限定されない。本実施態様においては、
図1〜4に示すように、建物外部と建物内部とを結ぶ配管により第二外気供給流路22を構成している。第二外気供給流路22の上端部(吸引側の端部)は、建物の一階部分の外壁から突出され、第二外気供給流路22の下端部(送出側の端部)は、第一外気供給流路21の中途部分に連結されている。第一外気供給流路21と第二外気供給流路23との連結部分には、熱交換手段40に繋がる流路を切り替えるための流路切替手段50を設けている。流路切替手段50としては、各種の切替ダンパーや切替弁を使用することができる。第二外気供給流路22の上端部近傍には、第二フィルター91を設けている。これにより、外気101を清浄にした後、建物内部へと供給することができる。本実施態様において、第二フィルター91は、ファン付きのフィルターを使用している。このため、第二外気取入口22から第二外気供給流路23へと外気101を吸引することができるようになっている。外気101を吸引するためのファン(第二ファン)は、第二外気取入口22から熱交換手段40までのいずれの箇所に設けてもよいし、外気100を吸引するためのファンと共通のものとしてもよい。第二外気供給流路22を構成する配管を壁の中などに埋め込んで見えないようにすると好ましい点や、その配管をできるだけ曲がり角の少ない経路で配すると好ましい点などは、第一外気供給流路21と同様である。
【0024】
ところで、第二外気取入口22を設ける場所は、建物下部における屋外であれば特に限定されない。しかし、第二外気取入口22を設ける場所が高すぎると、第一外気取入口20から取り入れる外気100と、第二外気取入口22から取り入れる外気101とで温度差が小さくなり、建物内部に取り入れる外気を切り替える意義が低下する。このため、第二外気取入口22は、できるだけ第一外気取入口20よりも低い場所、すなわちできるだけ地面に近い場所に設けると好ましい。具体的には、第二外気取入口22は、地面から3m以下の場所に設けると好ましく、2m以下の場所に設けるとより好ましく、1m以下の場所に設けるとさらに好ましい。ただし、津波などの水害が想定される地域では、外気100と外気101とで温度差が確保される範囲内において第二外気取入口22を高い場所に設けてもよい。
【0025】
5.内部空気排出流路
内部空気排出流路31は、内部空気取入口30から取り入れられた内部空気200を建物外部へ排出できるのであれば、その形態や経路などを限定されない。本実施態様においては、
図1〜4に示すように、室内81に設けた内部空気取入口30と建物基礎に設けた内部空気排出口32とを結ぶ配管により内部空気排出流路31を構成している。内部空気排出流路31の中途部分には、第三ファン92を設けている。このため、室内81から内部空気排出流路31へと内部空気200を吸引することができるようになっている。内部空気排出流路31を構成する配管を壁の中などに埋め込んで見えないようにすると好ましい点や、その配管をできるだけ曲がり角の少ない経路で配すると好ましい点などは、第一外気供給流路21と同様である。
【0026】
6.熱交換手段
熱交換手段70は、建物内部へ供給される外気100,101と内部空気排出流路31を流れる内部空気200との間で熱交換を行うためのものとなっている。熱交換手段70としては、各種の熱交換器を使用することができる。なかでも、全熱交換器を使用すると好ましい。熱交換手段70として好適な全熱交換器としては、回転型全熱交換器や静止型全熱交換器が例示される。特に、回転型全熱交換器は、熱交換効率が高いために最適である。熱交換手段70の熱交換効率は、70%以上であると好ましく、80%以上であるとより好ましく、90%以上であるとさらに好ましい。本実施態様において、熱交換手段70には、熱交換効率が90%の熱交換器を用いている。
【0027】
7.換気方法
続いて、本実施態様の建物における換気方法について、
図1〜4を参照しながら説明する。まず、冬期(
図1,2)における換気方法について説明する。
図1は、冬期の日中における空気の流れを示した図であり、
図2は、冬期の夜間における空気の流れを示した図である。本実施態様の建物は、冬期においては、以下のように換気される。すなわち、屋根10付近の第一外気取入口20から取り入れられた外気100の温度T
1が、建物下部の周辺の外気101の温度T
2よりも高い場合(日中)には、
図1に示すように、屋根10の周辺に存在する外気100が第一外気供給流路21を通じて建物内部(床下空間80)へ供給される。日中は、第一外気導入流路24を流れる際に外気100が太陽熱により暖められるため、温度T
1が温度T
2よりも高くなる。一方、温度T
1が温度T
2よりも低い場合(夜間)には、
図2に示すように、建物下部の周辺に存在する外気101が第二外気供給流路23を通じて建物内部(床下空間80)へ供給される。夜間は、放射冷却により、温度T
1が温度T
2よりも低くなる。
【0028】
このため、暖房が必要な冬期においては、より暖かい外気が熱交換手段40を通じて床下空間80に供給され、暖房に要するエネルギーをより削減することができるようになっている。ここで、温度T
1が温度T
3よりも高い場合には、
図1に示す状態において、熱交換手段40を通さずに外気100を床下空間80に供給してもよいが、温度T
1が温度T
3よりも低い場合には、熱交換手段40を通してから外気100を床下空間80に供給すると好ましい。これにより、床下空間80に供給される外気100の温度を室内81の内部空気200の温度に近づけて、暖房に要するエネルギーを削減することができる。
【0029】
次に、夏期(
図3,4)における換気方法について説明する。
図3は、夏期の日中における空気の流れを示した図であり、
図4は、夏期の夜間における空気の流れを示した図である。本実施態様の建物は、夏期においては、以下のように換気される。すなわち、屋根10付近の第一外気取入口20から取り入れられた外気100の温度T
1が、建物下部の周辺の外気101の温度T
2よりも高い場合(日中)には、
図3に示すように、建物下部の周辺に存在する外気101が第二外気供給流路23を通じて建物内部(床下空間80)へ供給される。上述したように、日中は、第一外気導入流路24を流れる際に外気100が太陽熱により暖められるため、温度T
1は温度T
2よりも高くなる。第一外気取入口20から第一外気導入流路24に取り入れられた外気100は、屋根10の棟周辺(ダクト25)に設けられた窓25から建物外部へと排出される。窓25は、開閉ダンパー25により開閉可能な構造となっている。一方、温度T
1が温度T
2よりも低い場合(夜間)には、
図4に示すように、屋根10の周辺に存在する外気100が第一外気供給流路21を通じて建物内部(床下空間80)へ供給される。夜間は、放射冷却により、温度T
1が温度T
2よりも低くなる。
【0030】
このため、冷房が必要な夏期においては、より冷たい外気が熱交換手段40を通じて床下空間80に供給され、冷房に要するエネルギーをより削減することができるようになっている。ここで、温度T
1,T
2が温度T
3よりも低い場合には、
図1,2に示す状態において、熱交換手段40を通さずに外気100,101を床下空間80に供給してもよいが、温度T
1,T
2が温度T
3よりも高い場合には、熱交換手段40を通してから外気100,101を床下空間80に供給すると好ましい。これにより、床下空間80に供給される外気100の温度を室内81の内部空気200の温度に近づけて、冷房に要するエネルギーを削減することができる。
【0031】
上記の換気方法は、季節や時間帯を問わず一年中、駆動することが可能である。したがって、一部の季節、あるいは一部の時間帯のみしか駆動されない従来の換気方法では困難な、一年を通じての室内の快適温度の維持を、容易に行うことができる。また、一年を通じて、空気調節に要するエネルギーを削減することも可能である。