(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、タンクに生じた孔を検知する技術が研究されている。その一具体例として特許文献1に記載の技術がある。この技術では、アコースティックエミッションセンサー(AEセンサー)を使用して、高圧タンクに生じる破壊の兆候(異常)を非破壊で検知する。
図5は、一般に利用される技術であって、AEセンサーを使用してタンクに生じた異常を検知する技術の構成を示す図である。タンク901は、地面930に埋設されている。タンク901は、複数(二つ)の露出部を備えている。露出部とは、地面930に埋設されているタンク901のうち、容易に触れることが可能な部分である。露出部は、例えばノズル蓋902(902−1、902−2)として構成されている。ノズル蓋902は地面930に設けられた穴の部分に位置しているため、地上からノズル蓋902に対して接触することが可能である。普段は、地面930に設けられた穴の部分には、マンホール等の蓋が設置されている。各ノズル蓋902の上面には、センサー911(911−1、911−2)が設置されている。
【0003】
センサー911はAEセンサーである。センサー911は所定時間にわたってAE波を検知し、AE波を表す信号を出力する。センサー911から出力された信号は判定装置に入力され、判定装置がタンク901における異常の有無を信号に基づいて判定する。具体的には以下の通りである。判定装置は、センサー911から出力された信号において、短時間に連続的に発生する同波数の弾性波から構成される1群のアコースティックエミッション信号(AE信号)の数を数える。判定装置は、AE信号の数の時間変化を示すヒットレートを求める。そして、判定装置は、ヒットレートの変化に基づいて、タンク901における異常の有無を判定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来はタンクが複数の露出部(ノズル蓋902)を備えていることが前提となっていたため、一つの露出部しか備えていないタンクに対しては技術を適用できないという問題があった。
上記事情に鑑み、本発明は、一つの露出部しか備えていないタンクにおいてAEセンサーを用いた異常検知を可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、タンク本体
に設けられた
ノズル蓋からなる一つの露出部上に、前記タンクの長手方向に沿って離れるように設けられ、弾性波を検知する複数のセンサーと、前記センサーによって検知された弾性波を表す信号において、AE信号を検出するとともに、信号の振幅が所定の閾値を超えた回数と信号部分の面積とを前記AE信号毎に算出し、算出結果及び検出結果に基づいて前記タンクにおける異常の有無を判定する判定手段と、を備える異常検知システムである。
【0007】
本発明の一態様は、上記の異常検知システムであって、前記タンク内の圧力を変化させる圧力変化器と、前記圧力変化器と前記タンクとの間に設けられた補助タンクと、をさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、一つの露出部しか備えていないタンクにおいてAEセンサーを用いて異常を検知することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態である異常検知システムのシステム構成を表すシステム構成図である。異常検知システムは、タンク101に生じている異常を検知する。異常検知システムは、例えばタンク101内の液体や気体が外部に漏洩する原因となる孔(漏洩孔)の存在を異常として検知する。
【0011】
タンク101は、地面300に埋設されている。タンク101は、一つの露出部を備えている。露出部とは、地面300に埋設されているタンク101のうち、容易に(地面300を掘り返す等の作業を行うことなく)触れることが可能な部分である。以下の説明では、露出部はノズル蓋102として構成されている。ただし、露出部はノズル蓋102に限定される必要は無く、タンク101の一部分であればどのような構成であっても良い。
【0012】
タンク101は、一つのノズル蓋102を備える。ノズル蓋102は、タンク101の長手方向(
図1の矢印Aの方向)の略中央部に設置されている。ノズル蓋102は地面300に設けられた穴の部分に位置しているため、地上からノズル蓋102に対して接触することが可能である。普段は、地面300に設けられた穴の部分には、マンホール等の蓋が設置されていても良い。また、異常の有無の判定を行う際には、タンク101は減圧されても良い。減圧時の圧力は、例えば2〜10kPaであっても良い。
【0013】
ノズル蓋102の上面には、2つのセンサー201(201−1、201−2)が離れて設置されている。具体的には、センサー201は、ノズル蓋102の縁部に設置することによって、センサー201同士の距離が大きくなるように設置されている。また、センサー201は、タンク101の長手方向(
図1の矢印Aの方向)に沿って離れるように設置されている。そのため、センサー201間の距離のうち長手方向の成分が大きくなるように設置されている。
センサー201は弾性波を検出するセンサーである。センサー201は、例えばAE(アコースティックエミッション:Acoustic Emission)波を検出するAEセンサーである。以下、センサー201がAEセンサーとして構成されるものとして説明を行う。センサー201は、所定時間にわたってAE波を検知し、AE波を表す信号を出力する。センサー201から出力された信号は判定装置500に入力される。センサー201が検知するAE波は、例えばタンク101内の音波によって生じるAE波である。
【0014】
図2は、本発明の第一実施形態における判定装置500の機能構成を示す概略ブロック図である。判定装置500は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、判定プログラムを実行する。判定プログラムの実行によって、判定装置500は、入力部501、出力部502、判定部503を備える装置として機能する。なお、判定装置500の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。また、判定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。判定プログラムは、電気通信回線を介して送受信されても良い。
【0015】
入力部501は、有線伝送路又は無線伝送路を介して、センサー201から出力される信号を判定装置500に入力する。入力部501は、センサー201から出力された信号を判定部503に対して出力する。
出力部502は、判定装置500に接続された不図示の出力装置を介し、判定装置500のユーザに対して判定部503の判定結果を出力する。出力装置は、例えば画像や文字を画面に出力する装置を用いて構成されても良い。例えば、出力装置は、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイ等を用いて構成できる。また、出力装置は、画像や文字をシートに印刷(印字)する装置を用いて構成されても良い。例えば、出力装置は、インクジェットプリンタやレーザープリンタ等を用いて構成できる。また、出力装置は、文字を音声に変換して出力する装置を用いて構成されても良い。この場合、出力装置は、音声合成装置及び音声出力装置(スピーカー)を用いて構成できる。
【0016】
判定部503は、センサー201から出力された信号に基づいて、タンク101における異常の有無を判定する。
図3は、判定部503による処理の概略を示す図である。以下、
図3を用いて判定部503の処理の具体例について説明する。
図3(A)は、センサー201から出力された信号の一部分の具体例を示す図である。
図3(B)は、
図3(A)に示す信号部分の面積を示す図である。判定部503は、センサー201から出力された信号において、短時間に連続的に発生する同波数の弾性波から構成される1群のアコースティックエミッション信号(AE信号)の数を数える。
【0017】
より具体的には以下の通りである。判定部503は、予め設定された閾値ATを記憶している。判定部503は、信号の振幅が閾値ATを最初に超えた時刻T1から、継続的に信号の振幅が閾値ATを超え続けている時間(信号の振幅が閾値ATを最後に超えた時刻T2までの時間)を継続時間として算出する。また、判定部503は、信号の振幅が閾値ATを最初に超えた時刻T1から最大振幅値Amaxが得られた時刻Tmaxまでの時間を立ち上がり時間として算出する。判定部503は、立ち上がり時間及び継続時間が所定の条件を満たしている場合に、継続時間中の信号をAE信号として判定する。所定の条件とは、例えば立ち上がり時間が3マイクロ秒以上であり、且つ、継続時間が10ミリ秒以下であることであっても良い。
【0018】
判定部503は、AE信号毎に、振幅が閾値ATを超えた回数(
図3の交点400の数)をカウント数として計数する。また、判定部503は、AE信号毎に、面積(AEエネルギー)を算出する。判定部503は、センサー201から出力された信号全体にわたって上記の処理を実行し、AE信号数(いわゆるヒット数)を数えるとともに、AE信号毎にカウント数及び面積を取得する。
【0019】
判定部503は、AE信号数(ヒット数)の時間変化を示すヒットレートを求める。そして、判定部503は、ヒットレートの変化と、AE信号毎のカウント数及び面積と、に基づいてタンク101における異常の有無を判定する。
閾値ATは、例えば以下のようにして予め設定される。まず、タンク101に対してセンサー201を取り付け、疑似AE信号を発生させる。疑似AE信号は、例えばシャープペンシルの芯を圧折させることにより発生させることができる。疑似AE信号を発生させてから所定時間の間にセンサー201によって出力された信号に関して、暫定閾値AT’を超えた回数を計数する。繰り返し暫定閾値AT’を変更して計数することによって、計数値が所定数(例えば5回/秒)となる暫定閾値AT’を取得する。計数値が所定数となる状態が所定時間(例えば15分間)継続する場合に、暫定閾値AT’の値を閾値ATとして設定する。また、上記処理によって閾値ATを設定した後、所定の時間内(例えば30分以内)にセンサー201によって信号を出力し判定装置500による判定を実行するように構成されても良い。このように構成されることによって、環境に応じた背景雑音を排除して異常の有無をより精度良く判定することが可能となる。
【0020】
本発明の異常検知システムによれば、複数のセンサー201が一つの露出部(ノズル蓋102)に対して設置される。小規模のタンクは露出部を一つしか備えていないものが多いが、このような小規模のタンクにおいてもAEセンサーを用いた異常検知を行うことが可能となる。
【0021】
また、複数のセンサー201は、タンク101の長手方向に沿って離れるように設置される。そのため、タンク101の長手方向に沿った異常箇所の位置についてより精度良く検知することが可能となる。
また、判定装置500は、AE信号毎のカウント数及び面積に基づいてタンク101における異常の有無を判定する。そのため、従来に比べて異常の検出感度を高くし、正確な評価を行うことが可能となる。
【0022】
<変形例>
本発明の第一実施形態では、ノズル蓋102の上面に設置されるセンサー201の数は2つであるが、3つ以上であっても良い。このように構成された場合であっても、従来に比べて異常の検出感度を高くし、正確な評価を行うことが可能となる。
露出部を複数備えるタンクに対して本発明の第一実施形態が適用されても良い。この場合、複数の露出部のうち一つの露出部に対して複数のセンサー201が設置される。このように構成されることによって、複数の露出部を備えるタンクにおいても、一つの露出部のみに対してセンサー201を設置することで異常を検知することが可能となる。したがって、例えば地震などによって複数の露出部のうち一つの露出部しかセンサー201を設置できない場合であっても、タンクの異常を検知することが可能となる。
本発明の第一実施形態では、判定装置500を用いずに、センサー201から出力された信号の波形を作業者(人間)が目視して判定部503と同様の判定を行っても良い。
【0023】
[第二実施形態]
図4は、本発明の第二実施形態である異常検知システムのシステム構成を表すシステム構成図である。第二実施形態における異常検知システムは、タンク101における異常検知を行う際に、タンク101の内圧を減圧する。以下の説明では、タンク101の内圧を減圧する際に、圧力調整のための流体として空気を用いる。ただし、流体は空気に限定される必要は無い。
【0024】
第二実施形態における異常検知システムは、タンク101、ノズル蓋102、複数のセンサー201(201−1、201−2)、ノズル蓋102を介してタンク101内に貫通している配管103、圧力計601、流量調整弁602、補助タンク603、減圧器604、補助タンク603と減圧器604とを接続する配管104を備える。
圧力計601は、配管103に接続されることによって、タンク101内の圧力Pを測定する。圧力計601は、演算部を備えており、圧力Pの変化量dPを算出して表示する。流量調整弁602は、配管103を流れる空気の量を調整するための弁である。減圧器604は、配管104を介して補助タンク603内の空気の量を変化させることによって、間接的にタンク101を減圧する。
【0025】
異常検知システムのユーザは、圧力計601を目視することによって圧力の変化量dPを確認しながら、流量調整弁602を操作することによって、タンク101を所定の圧力まで減圧する。
補助タンク603は、減圧器604によってタンク101を減圧する際のバッファとして機能する。そのため、減圧器604の動作によるタンク101の急激な圧力の変化を緩和させることが可能となり、タンク101内の減圧をより正確に実施することが可能となる。ユーザは、より正確な減圧が行われた状態で、タンク101について異常の検知を行うことができる。したがって、異常箇所から生じた流体(空気等)の流入によるAE波をセンサー201で検知し、減圧法による異常の判定をより精度良く実施することが可能となる。
【0026】
<変形例>
本発明の第二実施形態では、減圧器604に代えて加圧器を設置し、タンク101に対して加圧しても良い。この場合、加圧器の動作によるタンク101の急激な圧力の変化を緩和させることが可能となり、タンク101内の加圧をより正確に実施することが可能となる。ユーザは、より正確な加圧が行われた状態で、タンク101について異常の検知を行うことができる。したがって、異常箇所から生じた流体(空気、タンク101内に貯蔵されている流体等)の流出によるAE波をセンサー201で検知し、加圧法による異常の判定をより精度良く実施することが可能となる。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。