【実施例1】
【0020】
(排水部)
本発明に係るシンクの排水部の実施例1を
図1〜6において説明する。実施例1のシンクの排水部1では、
図1及び
図3に示すように、シンク2の底面3に形成された排水口6に連通するように、シンク2の底面3から下方に向けて排水筒部7が取り付けられている。
【0021】
排水筒部7の排水の流れ方向下流側には、
図3に示すように、管状の排水経路8が接続されている。排水経路8には、蛇行部を備えた排水トラップ11が設けられている。
【0022】
排水筒部7は、筒状の周壁26を備えており、周壁26の少なくとも一部は、光透過性を有する、例えば、耐熱ガラス等の素材で形成されている。排水筒部7において、シンク2から排水が流入する内面側に光触媒のコーティング層28が、焼き付け、塗装、塗布等で施されている。
【0023】
排水筒部7は、一体(単体)で形成されたものでもよいが、この実施例1では、排水筒部7は、
図1(a)に示すように、耐熱ガラス、合成樹脂又は金属等の素材で形成された上筒12と、耐熱ガラスで形成された下筒13とが互いに結合されて構成されている。
【0024】
上筒12は、その下部外周面に雄螺子16が形成されており、また上端周縁にフランジ17が形成されている。フランジ17がシンク2の排水口6の周縁に形成された凹状の縁部18に載置され吊持される。
【0025】
上筒12の下端部に、下筒13の上端部が、接着剤21又は螺子結合等で固着されて結合されている。
図1は接着剤21で固着した構成であるが、この固着の際に、上筒12と下筒13の継ぎ目から内側や外側にはみ出た接着剤21は、研磨して除去すればよい。
【0026】
そして、凹状の縁部18の下面に環状のパッキン22を当接し、内面に雌螺子の形成された締着筒23を、下方から上筒12及び下筒13の外側に嵌合し、上筒12の雄螺子16に螺着する。これによって、排水筒部7は、パッキン22を介して排水口6の周縁の凹状の縁部18に締着して固定される。
【0027】
この実施例1では、排水筒部7の一部である下筒13は、光透過性を有する耐熱ガラスで形成されており、筒状の周壁26を備えている。下筒13の下半部27の内面に光触媒のコーティング層28が、焼き付け、塗装、塗布等で施されている。下筒13の上半部31は、光触媒のコーティング層28を施すことなく、光透過可能な状態とされている。
【0028】
なお排水筒部7の上筒12の内面の一部(LED光源を入光する部分を除く部分)、或いは、図示はしないが、排水網かごの網部の表面にも、光触媒のコーティング層を施してもよい。
【0029】
光触媒のコーティング層として酸化チタンのコーティング層を形成し、その表面に紫外線を照射すると、光触媒が励起(活性化)され、光触媒のコーティング層の表面に沈着、付着された汚れ(汚物)となる有機物の分解を促進し、その結果、汚れを分解除去し、菌の繁殖を抑制し、脱臭等の効果を有することが知られている。
【0030】
従来、紫外線を照射すると励起される光触媒が一般的であったが、近年、可視光応答型の光触媒が開発されており、これは従来よりも非常に弱い紫外線しか含まない白色光を照射することで、光触媒を励起させ、有機物の分解を促進し、汚れを分解除去し、さらに菌の繁殖を抑制し、脱臭効果も発揮する。
【0031】
本発明においては、光源と、該光源の光で励起される光触媒の組み合わせは、特に限定するものではなく、紫外線を含む光を発光する光源と、紫外線で励起する光触媒の組み合わせを採用してもよいし、従来よりも非常に弱い紫外線しか含まない白色光源と、可視光応答型の光触媒との組み合わせを採用してもよい。
【0032】
ところで、LED光源として、従来よりも非常に弱い紫外線しか含まない白色光を発光するもの、また紫外線を発光するLED光源(例えば、UVLED等)も知られている。LED光源は、必要な電力が比較的少なく省エネ性に優れており、また耐久性も優れておりメインテナンスの観点からも、シンクの排水部1に配置する光源として適しているので、この実施例1では、LED光源(LEDランプ)32を使用する構成とする。
【0033】
図1(b)は、LED光源32の取付構造を示す図である。複数のLED光源32は、支持枠33に一列に取付けられている。この支持枠33を、その両端において取付杆36を介して下筒13の上半部31の外側面に固定する。これによって、光触媒のコーティング層28が施されていない光透過性を有する下筒13の外側に、LED光源32が取り付けられる。
【0034】
なお、支持枠33は、
図1(b)では直線状に形成されているが、排水筒部7の外面に沿って湾曲状に形成されていてもよい。また、図示しないが、支持枠を環状に形成して、この環状の支持枠に複数のLED光源32を一定間隔で設けて、下筒13の全周から照射する構成としてもよい。
【0035】
図1(c)は、LED光源32の別の取付構造を示す図である。この取付構造では、光透過性を有する下筒13の上半部31において、その周壁26の外面に、部分的に内側へ凹んだ複数の凹部37が形成されている。
【0036】
そして、複数のLED光源32は、湾曲状の支持枠38の内面側に一列に取付けられている。この支持枠38を、その両端の取付杆36を介して周壁26の外面に固定する。これによって、複数のLED光源32は、それぞれその先端が凹部37に進入する(埋め込まれる)ようにして取り付けられる。
【0037】
(汚れ検知手段と発光制御部等)
LED光源32は、例えば、図示しないシンクキャビネットに設けられたAC電源に接続される構成とする。この場合、AC電源からの配線の途中にスイッチを設け、利用者がこのスイッチを操作することで、随時、発光できるような構成としてもよいが、シンクの排水部1の汚れを検知して、その汚れ具合によって、自動的に発光できるような構成としてもよい。
【0038】
この実施例1では、
図3に示すように、排水経路8におけるトラップ部11の排水が貯まる部位41に、シンクの排水部1の汚れ度合いを検知するための汚れ検知手段42が設置されている。汚れ検知手段42は、トラップ部11に設置される構成に限定されるものではなく、排水経路8内であれば、例えば排水部1内に設置される構成でも良い。
【0039】
そして、汚れ検知手段42で汚れを検知するために計測して得られた計測信号を発光制御部43(
図4、
図5参照)で受信する。発光制御部43は、マイコン等で構成されており、計測信号に基づいて汚れ具合を判定して、LED光源32の発光タイミング等を決定する構成としている。汚れ検知手段42は、その具体的な構成としていくつかの実施の態様があり、次にそれらの例を説明する。
【0040】
汚れ検知手段42の第1の態様は、排水経路8内に配置された流量センサーであり、この流量センサーによる計測で所定の流量の水が流入したことを条件に、LED光源32を発光させる構成である。これは、排水経路8を所定の流量が通過すると、シンクの排水部1は汚れていると判定する考え方に基づき、流量センサーを汚れ検知手段42として機能させる構成である。
【0041】
なお、流量センサーによる流量の計測は、排水トラップ11を流れる排水の時間を計測することで間接的に流量計測を行う構成としてもよいし、回転流量計等、流量を直接計測する構成としてもよい。
【0042】
流量センサーを汚れ検知手段として使用する構成では、予め、シンク2から排水された流量と汚れ度合いを計測し、両者の相関を把握しておく。そして、LED光源32を発光させ汚れを除去すべき汚れ度合いに相当する流量を決めておき、それを予め発光制御部43に設定しておく。
【0043】
利用に際しては、流量センサーで排水の流量を計測し、その計測信号を発光制御部43で受信し、予め設定された、汚れを除去すべき汚れ度合いに相当する流量以上となった場合には汚れていると判定し、発光制御部43は、LED光源32へ汚れ有りの信号を、予め定めた所定時間だけ出力してLED光源32を発光させる。
【0044】
なお、流量センサーで計測した流量の度合いに応じて、LED光源32の発光時間を予め決めておき、これを予め発光制御部43に設定しておく構成としてもよい。このような構成とすれば、流量に応じてLED光源32の汚れ有りの信号の出力時間を制御し、LED光源32の発光時間をコントロールすることができる。
【0045】
汚れ検知手段42の第2の態様は、排水経路8内に配置された濁度センサーであり、この濁度センサーの計測で、所定の濁度以下になったことを条件にLED光源32を発光させる構成である。ここで、濁度とは光の透過度であり、具体的には、濁度計測用の光源から光を照射し、該光を排水を通して受光器で受光する度合いである。
【0046】
要するに、汚れ検知手段42として濁度センサーを利用するものは、排水経路8中の排水が所定の濁度(透過度)以下となると、シンクの排水部1は汚れていると判定する考え方に基づき、濁度センサーを汚れ検知手段42として機能させる構成である。
【0047】
この構成では、予め、シンク2から排水された排水の濁度と汚れ度合いを計測し、両者の相関を把握しておく。そして、光触媒によって汚れを除去すべき汚れ度合いに相当する濁度を決めておき、それを予め発光制御部43に設定しておく。
【0048】
利用に際しては、濁度センサーで排水の濁度を計測し、その計測信号を発光制御部43で受信し、予め設定された汚れを除去すべき汚れ度合いに相当する濁度以下になった場合には、排水は汚れていると判定し、汚れ有りの信号を予め定めた所定時間だけLED光源32へ出力する。
【0049】
なお、濁度センサーで計測した濁度の度合いに応じて、LED光源32の発光時間を予め決めておき、これを予め発光制御部43に設定しておく構成としてもよい。このような構成とすれば、濁度に応じてLED光源32の汚れ有りの信号の出力時間を制御し、LED光源32の発光時間をコントロールすることができる。
【0050】
汚れ検知手段42の第3の態様は、排水経路8内に配置された一対の電極(本明細書では、一対の電極を単に「電極」という)であり、所定の電気抵抗になったことを条件にLED光源32を発光させる構成である。これは、排水に溶け込んでいる電解質の量に伴って変化する電気抵抗の高低により汚れの度合いを判定し、LED光源32を発光させ、或いはLED光源32の発光時間もコントロールする構成である。
【0051】
要するに、汚れ検知手段42として電極を利用するものは、排水経路8中の排水が所定の電気抵抗となると、電解質が増えシンクの排水部1は汚れている判定するという考え方に基づくものであり、電極を汚れ検知手段42として機能させる構成である。
【0052】
この構成では、予め、シンク2から排水された排水の電気抵抗と汚れ度合いを計測し、両者の相関を把握しておく。そして、光触媒によって汚れを除去すべき汚れ度合いに相当する電気抵抗を決めておき、それを予め発光制御部43に設定しておく。
【0053】
利用に際しては、電極で排水の電気抵抗を計測し、その計測信号を発光制御部43で受信し、予め設定された、汚れを除去すべき汚れ度合いに相当する電気抵抗以上になった場合には、LED光源32の汚れ有りの信号を予め定めた所定時間だけ出力する。
【0054】
なお、電極で計測した電気抵抗の度合いに応じて、LED光源32の発光時間を予め決めておき、これを予め発光制御部43に設定しておく構成としてもよい。このような構成とすれば、電気抵抗の高低に応じてLED光源32の汚れ有りの信号の出力時間を制御し、LED光源32の発光時間をコントロールすることができる。
【0055】
以上は、汚れ検知手段42の説明であるが、
図4は、AC電源52、汚れ検知手段42、LED光源32等の関係を説明するための全体的な構成を示すブロック図である。
図4において、発光制御部43と、照射LED光源32を点灯・消灯するための発光用スイッチSWと、分岐部(電源電力を分岐する部分)46とが、基板47に配置されている。
【0056】
この基板47は、例えば、
図3に示すように、シンクキャビネット内に配置されている排水トラップ11のドレインキャップ48に取り付けるか、或いはドレインキャップ48と一体の構成とする。
【0057】
汚れ検知手段42は、
図3に示すように、排水トラップ11内であって排水が貯まる部位41に位置するように適宜装着されており、その計測信号が信号送信用配線51によって、基板47の発光制御部43へ送られるように構成されている。
【0058】
キャビネット内にあるAC電源52は、ACアダプター53で降圧して分岐部46に接続されている。分岐部46からの電源配線は、常開の発光用スイッチSWが接続されているとともに、汚れ検知手段42にも接続されており、それぞれに電力を供給する。発光用スイッチSWには、光触媒のコーティング層28に光を照射し、光触媒を励起する1又は複数のLED光源32が接続されている。
【0059】
発光制御部43は、マイコン等で構成され、前記したとおり汚れ検知手段42から計測信号を受信し、排水が汚れているか否か、汚れの度合い等を判定し、汚れていると判定した場合には汚れ有りの信号を発光用スイッチSWに出力するように構成されている。
【0060】
発光用スイッチSWは、常時は開いているが、発光制御部43から汚れ有りの信号を受信すると閉じ、LED光源32は所定時間だけ発光する、或いは予め汚れ度合いに応じて発光制御部43に設定された時間だけ発光する。
【0061】
図5は、AC電源、汚れ検知手段、LED光源等の関係的な構成の変形例であり、
図5記載の構成とほぼ同じであるが、複数のLED光源のうち、1つのLED光源56を、発光制御部43が汚れと判定した場合に、赤色に発光する汚れ警告用の赤色警告灯とし、他の1つのLED光源57を、発光制御部43が汚れ有りと判定しない場合に、青色に発光する汚れ無し表示用の青色表示灯として利用する構成を特徴とする。
【0062】
この変形例では、分岐部46からの電源配線は、発光用スイッチSWへの配線以外に、常開の警告用スイッチSW
1を介してLED光源56(赤色警告灯)に接続されているとともに、常閉の汚れ無し表示用スイッチSW
2を介してLED光源57(青色表示灯)に接続されている。発光制御部43は、発光用スイッチSWに加えて、警告用スイッチSW
1及び汚れ無し表示用スイッチSW
2にもそれぞれ接続されている。
【0063】
発光制御部43が汚れ有りと判定しない場合は、常時、LED光源57(青色表示灯)は点灯している。そして、発光制御部43が、汚れ有りと判定した場合は、汚れ有りの信号を出力し、発光用スイッチSWを閉じてLED光源を発光し光触媒を励起するとともに、警告用スイッチSW
1は閉じてLED光源56(赤色警告灯)を点灯し、汚れ無し表示用スイッチSW
2を開いて消灯する。
【0064】
なお、LED光源56(赤色警告灯)及びLED光源57(青色表示灯)が発光する光の波長と、その波長で励起する光触媒の材料とを組み合わせれば、赤色警告灯及び青色表示灯は、光触媒の励起光源としても兼用可能となる。
【0065】
(作用)
以上のような構成から成るシンクの排水部1の作用を説明する。シンク2からの排水は、排水口6、排水筒部7及び排水経路8を通過して排水される。ある程度排水が流れると、排水中の汚れが排水筒部7の内面に沈着し、排水筒部7の内部に汚れが生じる。
【0066】
本発明のシンクの排水部1では、LED光源32を発光し排水筒部7の内面に施された光触媒のコーティング層28を照射して光触媒を励起して、酸化分解力の高いOHラジカル(・OH:ヒドロキシンラジカル)を発生させて、排水筒部7の内面に付着した汚れとなる有機物を分解して、汚れの除去を促進し、併せて減菌、脱臭をする。
【0067】
利用者がLED光源32の発光用スイッチを任意に開閉できる構成の場合は、利用者が随時この発光用スイッチを操作してLED光源32を発光して光触媒に照射すればよい。
【0068】
実施例1のシンクの排水部1では、汚れ検知手段42を設け、汚れの度合いによって、LED光源32を発光させ、また、必要に応じて、汚れの度合いによってLED光源32の発光時間をコントロールする。
【0069】
具体的には次のとおりである。汚れ検知手段42(流量センサー、濁度センサー又は電極)は、排水の流量、濁度又は電気抵抗を計測し、その計測データを計測信号として発光制御部43へ送信する。
【0070】
発光制御部43は、計測データを、予め設定されている汚れを除去すべき汚れ度合いに相当する流量、濁度又は電気抵抗と比較し、汚れていると判定した場合は、発光制御部43は、LED光源32へ汚れ有りの信号を出力し、予め定めた所定時間だけLED光源32を発光する。
【0071】
また、汚れ度合いに相当して発光時間が発光制御部43に予め設定されている場合は、発光制御部43は、汚れ検知手段42で計測した計測データに基づき、汚れに相当する時間だけLED光源32へ汚れ有りの信号を出力し、予め定めた時間だけLED光源32を発光する。
【0072】
本発明では、
図1(b)に示すように、LED光源32を、排水筒部7の光透過ガラスで形成された下筒13の周壁26の外面に接近して配置し、又は
図1(c)に示すように、光透過部の凹部37に埋め込むように配置する構成とした。
【0073】
このため、排水筒部7の内部により近い位置から、LED光源で光を照射することができ、加えて光透過ガラスで形成された下筒13の周壁26の内部において光を反射、拡散させて、排水筒部7の光触媒のコーティング層28を均一、かつ効果的に照射することが可能となる。
【0074】
また、LED光源32は、排水筒部7とともにシンクキャビネット内に配置されており、上記のように反射、拡散した光は、排水筒部7の内部を照射するとともに、排水筒部7の内部から外部にも出射するので、シンクキャビネットの庫内の照明にも利用可能となる。