特許第5945149号(P5945149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945149
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】フィールド機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20160621BHJP
   G06F 1/30 20060101ALI20160621BHJP
   G06F 1/28 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   G06F1/26 334D
   G06F1/30 X
   G06F1/28 D
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-94494(P2012-94494)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-222370(P2013-222370A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大矢 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】名古屋 博昭
【審査官】 片岡 利延
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−151941(JP,A)
【文献】 特開2009−060690(JP,A)
【文献】 特開2006−034047(JP,A)
【文献】 特開2003−196974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26
G06F 1/28
G06F 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位側システムより一対の電線を介して供給される電流から主電源を生成する主電源生成回路部と、前記主電源より生成される動作電源電流の供給を受けて動作する演算処理部および各種機能回路部を含む本体回路とを備えたフィールド機器において、
前記主電源より前記本体回路へ供給することが可能な電流を前記本体回路への供給電流として監視し、この本体回路への供給電流が前記演算処理部の起動に必要な電流値以上となった場合に、前記演算処理部への前記動作電源電流の供給を開始させるとともに、監視中の前記本体回路への供給電流の電流値を前記演算処理部へ送る動作電源電流供給手段を備え、
前記演算処理部は、
前記動作電源電流の供給を受けて、自己のリセット動作が解除された後、前記動作電源電流供給手段からの前記本体回路への供給電流の電流値に基づいて、前記各種機能回路部毎に起動条件として定められている前記本体回路への供給電流の下限値と起動順序とに従って、起動条件が成立し起動される順番となった各種機能回路部に対して、前記動作電源電流の供給を指示する
ことを特徴とするフィールド機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上位側システムより一対の電線を介して供給される電流から主電源を生成して動作するポジショナなどのフィールド機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、調節弁の弁開度制御を担うフィールド機器であるポジショナは、上位側システムより一対の電線を介して送られてくる4〜20mAの電流で動作するように設計されている。例えば、上位側システムより4mAの電流が送られてきた場合には調節弁の開度を0%とし、20mAの電流が送られてきた場合には調節弁の開度を100%とする。
【0003】
この場合、上位側システムからの供給電流は4mAから20mAの範囲で変化するので、ポジショナの内部回路は上位側システムから供給される電流値として常に確保することの可能な4mA以下の電流より自己の動作電源(主電源)を生成する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図5に従来のポジショナの要部の構成を示す。このポジショナ100は、上位側システム200より一対の電線L1,L2を介して電流Iの供給を受け、この供給電流Iから主電源を生成する一方、供給電流Iの値に応じて図示されていない調節弁の開度を制御する。
【0005】
ポジショナ100は、CPU(演算処理部)1や各種機能回路部(A/D変換器、EPM(電空変換器)の駆動回路、センサ回路、デジタル回路など)2を含む本体回路3と、ツェナーダイオードD1を含む主電源生成回路部4とを備えている。このポジショナ100において、主電源生成回路部4は、上位側システム200からの供給電流Iより定電圧Vsを生成し、この生成した定電圧Vsを主電源として本体回路3に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−151941号公報
【特許文献2】特開平3−212799号公報(特許第2753592号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図5に示した回路構成では、正常動作が可能である供給電流Iの電流範囲をポジショナ100の仕様として規定しているが、上位側システム200からの電源供給の立ち上がり時など、供給電流Iが素早く正常動作が可能な電流範囲まで上昇すれば問題はないが(図6に示す特性I参照)、供給電流Iがゆっくり変化するような場合(図6に示す特性II参照)、CPU1や各種機能回路部2を含む本体回路3が主電源生成回路部4が生成する不充分な電圧で起動してしまい、中途半端な起動状態となり、意に反して調節弁が開かれてしまうなど、誤動作が生じる虞があった。
【0008】
なお、特許文献2には、2線の伝送線を介して電源(電圧)の供給を受けて流量などの物理量を測定して、その測定値に応じて電流信号を伝送する2線式計器が示されている。この2線式計器では、端子電圧の低下を監視し、端子電圧の低下を検出した場合、マイクロプロセッサに初期化と警報を指示する。しかし、この特許文献2に示された技術を適用して上述したポジショナでの問題を解決しようとしても、次のような事情があり、容易にその問題を解決することはできない。
【0009】
〔事情1〕
特許文献2に示された2線式計器は、電圧入力型機器であって、ポジショナは電流入力型機器という動作形式の違いがある。
〔事情2〕
特許文献2に示された技術では、2線式計器が正常に起動した状態から電源電圧の低下のような異常が発生した場合には対処できるが、正常に起動したかどうかは検知できない。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、演算処理部や各種機能回路部が不安定な状態で動作することによる不具合の発生を防止することが可能なフィールド機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために本発明は、上位側システムより一対の電線を介して供給される電流から主電源を生成する主電源生成回路部と、主電源より生成される動作電源電流の供給を受けて動作する演算処理部および各種機能回路部を含む本体回路とを備えたフィールド機器において、主電源より本体回路へ供給することが可能な電流を本体回路への供給電流として監視し、この本体回路への供給電流が演算処理部の起動に必要な電流値以上となった場合に、演算処理部への動作電源電流の供給を開始させるとともに、監視中の本体回路への供給電流の電流値を演算処理部へ送る動作電源電流供給手段を備え、演算処理部は、動作電源電流の供給を受けて、自己のリセット動作が解除された後、動作電源電流供給手段からの本体回路への供給電流の電流値に基づいて、各種機能回路部毎に起動条件として定められている本体回路への供給電流の下限値と起動順序とに従って、起動条件が成立し起動される順番となった各種機能回路部に対して、動作電源電流の供給を指示することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、上位側システムより一対の電線を介して供給される電流から主電源生成回路部が主電源を生成し、この主電源より生成される動作電源電流が最優先で演算処理部に供給される。演算処理部は、この最優先で供給される動作電源電流を受けて、自己のリセット動作が解除された後、動作電源電流供給手段からの本体回路への供給電流の電流値に基づいて、各種機能回路部毎に起動条件として定められている本体回路への供給電流の下限値と起動順序とに従って、起動条件が成立し起動される順番となった各種機能回路部に対して、動作電源電流の供給を指示する。これにより、電源起動時、最初に演算処理部が起動され、この演算処理部が起動した後に、演算処理部からの指示に従って、各種機能回路部が所定の順序で順次起動されて行く。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電源起動時、最初に演算処理部が起動され、この演算処理部が起動した後に、演算処理部からの指示に従って、各種機能回路部が所定の順序で順次起動されて行くものとなり、電源起動時に一斉に演算処理部や各種機能回路部が起動することがなくなり、演算処理部や各種機能回路部が不安定な状態で動作することによる不具合の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るフィールド機器の一実施の形態の要部の構成図である。
図2】このフィールド機器(ポジショナ)において最優先でCPUに動作電源電流が供給される様子を示す図である。
図3】このフィールド機器(ポジショナ)のCPUに対して定められた各種機能回路部の起動順序および起動条件を示す図である。
図4】このフィールド機器(ポジショナ)の供給電流監視回路によって監視される供給電流Isの電流値と起動される各種機能回路部との関係を示す図である。
図5】従来のポジショナの要部の構成を示す図である。
図6】電源供給の立ち上がり時の供給電流Iの変化例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係るフィールド機器の一実施の形態の要部の構成図である。同図において、図5と同一符号は図5を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0016】
この実施の形態において、ポジショナ100は、本体回路3における各種機能回路部として、A/D変換器21、EPM(電空変換器)の駆動回路22、センサ回路23、デジタル回路24を備えている。
【0017】
また、動作電源電流供給手段として、主電源生成回路部4が生成する主電源Vsを入力とし、この主電源Vsによって本体回路3へ供給可能な主電源生成回路部4からの電流を供給電流Isとして監視する供給電流監視回路5を備えている。なお、供給電流監視回路5は、本体回路3で必要な消費電流よりも格段に低い電流で動作する。
【0018】
このポジショナ100において、CPU1およびデジタル回路24の前段には、主電源生成回路部4からの主電源VsをCPU1およびデジタル回路24に適した電圧Vdに変換する電源回路61が設けられている。また、A/D変換器21およびセンサ回路23の前段には、主電源生成回路部4からの主電源VsをA/D変換器21およびセンサ回路23に適した電圧Vaに変換する電源回路62が設けられている。また、駆動回路22の前段には、主電源生成回路部4からの主電源Vsを駆動回路22に適した電圧Vdrに変換する電源回路63が設けられている。
【0019】
また、このポジショナ100において、電源回路61からのCPU1への電源の供給ラインには直列に接続されたスイッチSW8とSW9が設けられており、電源回路61からのスイッチSW8を介するデジタル回路24への電源の供給ラインにはスイッチSW10が設けられている。
【0020】
また、電源回路62からのA/D変換器21への電源の供給ラインには直列に接続されたスイッチSW4とSW5が設けられており、電源回路62からのスイッチSW4を介するセンサ回路23への電源の供給ラインにはスイッチSW6が設けられている。
【0021】
また、電源回路63からの駆動回路22への電源の供給ラインにはスイッチSW2が設けられており、主電源生成回路部4からの電源回路61,62,63への電源の供給ラインにはスイッチSW7,SW3,SW1が設けられている。
【0022】
このポジショナ100において、供給電流監視回路5は、スイッチSW7〜SW9のオン/オフを制御し、CPU1はスイッチSW1〜SW6およびSW10のオン/オフを制御する。なお、これらのスイッチSW1〜SW10は、主電源Vsが生成されていない電源オフの状態では、全てオフとされている。以下、供給電流監視回路5およびCPU1が有する本実施の形態特有の機能について、その動作を交えながら説明する。
【0023】
上位側システム200からの電源供給の立ち上がり時、すなわち主電源生成回路部4が生成する主電源Vsの立ち上がり時(電源起動時)、供給電流監視回路5は、主電源生成回路部4が生成する主電源Vsにより本体回路3へ供給可能な供給電流IsがCPU1の起動に必要な電流値(Is1)以上となると(図4に示すt1点)、スイッチSW7〜SW9をオンとするとともに、その供給電流Isの電流値をCPU1へ送る(図2参照)。
【0024】
これにより、CPU1に最優先で主電源生成回路部4が生成する主電源Vsより生成される動作電源電流が供給され、この動作電源電流の供給を受けてCPU1が起動する。
【0025】
CPU1は、動作電源電流の供給を受けて、自己のリセット動作が解除された後、供給電流監視回路5からの供給電流Isの電流値に基づいて、スイッチSW1〜SW6およびSW10のオン/オフの制御を開始する。
【0026】
CPU1に対しては、A/D変換器21、駆動回路22、センサ回路23およびデジタル回路24に対して、図3に示すような起動順序((1)〜(4))と起動条件(本体回路3への供給電流の下限値Is2〜Is5)が定められている。この例では、優先度の高い順に起動順序が定められ、例えばA/D変換器21、駆動回路22、センサ回路23、デジタル回路24の順とされている。また、供給電流Isの電流値により起動条件が定められ、Is1<Is2<Is3<Is4<Is5であることを前提とし、A/D変換器21の起動条件がIs2以上とされ、駆動回路22の起動条件がIs3以上とされ、センサ回路23の起動条件がIs4以上とされ、デジタル回路24の起動条件がIs5以上とされている。
【0027】
この起動順序と起動条件に従って、CPU1は供給電流Isの電流値がIs2以上となった場合(図4に示すt2点)、スイッチSW3,SW4,SW5をオンとし、A/D変換器21への主電源生成回路部4からの動作電源電流の供給を開始させる。
【0028】
また、CPU1は、その後、供給電流Isの電流値がIs3以上となった場合(図4に示すt3点)、スイッチSW1,SW2をオンとし、駆動回路22への主電源生成回路部4からの動作電源電流の供給を開始させる。
【0029】
以下同様にして、CPU1は、供給電流Isの電流値がIs4以上となった場合(図4に示すt4点)、スイッチSW6をオンとし、センサ回路23への主電源生成回路部4からの動作電源電流の供給を開始させ、供給電流Isの電流値がIs5以上となった場合(図4に示すt5点)、スイッチSW10をオンとし、デジタル回路24への主電源生成回路部4からの動作電源電流の供給を開始させる。
【0030】
このようにして、本実施の形態では、主電源生成回路部4が生成する主電源Vsの立ち上がり時(電源起動時)、先ず最初にCPU1が起動され、CPU1が起動した後に、CPU1からの指示に従って、各種機能回路部(A/D変換器21、駆動回路22、センサ回路23、デジタル回路24)が所定の順序で順次起動されて行く。
【0031】
これにより、本実施の形態では、電源起動時に一斉にCPU1や各種機能回路部(A/D変換器21、駆動回路22、センサ回路23、デジタル回路24)が起動することがなくなり、CPU1や各種機能回路部(A/D変換器21、駆動回路22、センサ回路23、デジタル回路24)が不安定な状態で動作することによる不具合の発生が防止されるものとなる。
【0032】
なお、上述した実施の形態では、A/D変換器21、駆動回路22、センサ回路23、デジタル回路24の順番に起動させて行くものとしたが、あくまでもその順番は一例であり、この順番に限られるものでないことは言うまでもない。また、各種機能回路部もその一例として、A/D変換器21、駆動回路22、センサ回路23、デジタル回路24を挙げたに過ぎず、これらに限られるものでもない。
【0033】
また、各種機能回路部への電源の供給は、上述した実施の形態で示したように電源自体の供給をオン/オフしてもよいが、スリープ機能端子があったり、プログラマブル設定で、パワーダウン機能のような動作を停止する(電流消費が極めて小さい)機能などを備えるものは、その機能を使用することが可能である。
【0034】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1…CPU、3…本体回路、4…主電源生成回路、5…供給電流監視回路、21…AD変換器、22…駆動回路、23…センサ回路、24…デジタル回路、61,62,63…電源回路、SW1〜SW10…スイッチ、L1,L2…一対の電線、100…ポジショナ、200…上位側システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6