(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945158
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】シート剥離装置及び剥離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-110325(P2012-110325)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-239509(P2013-239509A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年4月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101188
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 義雄
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡昭
【審査官】
今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−228626(JP,A)
【文献】
特開2009−111056(JP,A)
【文献】
特開2012−028478(JP,A)
【文献】
特開2009−141314(JP,A)
【文献】
特開2008−004712(JP,A)
【文献】
特開2009−123963(JP,A)
【文献】
特開昭60−218257(JP,A)
【文献】
特開2006−041160(JP,A)
【文献】
特開2011−086772(JP,A)
【文献】
特開2010−103219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67−21/687
H01L 21/301−21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼付された接着シートに剥離用テープを貼付し、当該剥離用テープを介して前記接着シートを剥離するシート剥離装置において、
前記被着体を支持する支持手段と、
前記接着シートに臨む位置に前記剥離用テープを繰り出す繰出手段と、
前記剥離用テープの一部を保持する保持手段と、
前記剥離用テープを前記接着シートに貼付する貼付手段と、
前記支持手段と前記保持手段とを相対移動させて前記接着シートを剥離する移動手段とを備え、
前記保持手段と前記接着シートとの間に延在する剥離用テープが前記接着シート以外の領域に付着することを回避する弛み防止手段を更に備え、
前記弛み防止手段は、前記保持手段に設けられているとともに、前記保持手段と前記接着シートとの間に延在する剥離用テープに当接若しくは気体を吹きつけて張力を付与することを特徴とするシート剥離装置。
【請求項2】
前記弛み防止手段は、前記接着シートに前記剥離用テープを貼付してから当該剥離用テープを介して前記接着シートを剥離するまで剥離用テープに張力を付与することを特徴とする請求項1記載のシート剥離装置。
【請求項3】
被着体に貼付された接着シートに剥離用テープを貼付し、当該剥離用テープを介して前記接着シートを剥離するシート剥離方法において、
前記被着体を支持する工程と、
前記接着シートに臨むように前記剥離用テープを繰り出す工程と、
前記剥離用テープの一部を保持手段を介して保持する工程と、
前記剥離用テープを前記接着シートに貼付する工程と、
前記保持手段と前記被着体とを相対移動させて前記接着シートを剥離する工程とを含み、
前記保持手段と前記接着シートとの間に延在する剥離用テープが前記接着シート以外の領域に付着することを回避するように前記保持手段から前記剥離用テープに当接若しくは気体を吹きつけて当該剥離用テープに張力を付与する工程を有することを特徴とするシート剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート剥離装置及び剥離方法に係り、更に詳しくは、剥離用テープを接着シートに貼付して剥離する際に、意図しない箇所に剥離用テープが接着することを防止することができるシート剥離装置及び剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する場合がある)には、回路面を保護するための接着シートが貼付され、ウエハの裏面研削等の処理を行った後の工程で、接着シートを剥離することが行われている。
このような接着シートの剥離装置としては、例えば、特許文献1に記載されている。同装置は、ウエハに貼付された保護シート(接着シート)に臨む位置に接着テープ(剥離用テープ)を繰り出し、当該繰り出された剥離用テープの一端側を剥がしヘッド(保持手段)で保持する一方、後端側を接着シートに貼付し、その状態で保持手段とウエハとを相対移動して剥離用テープを引っ張ることで接着シートの剥離が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−16862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたシート剥離装置にあっては、例えば、
図6に示されるように、ウエハWFから接着シートASを剥離するために保持手段101とテーブル100とを相対移動させると、同図中実線で示すように、保持手段101と接着シートASとの間に延在する剥離用テープPTに弛みが生じてしまう構成となっている。従って、剥離用テープPTが常温で接着力を有する場合や、ウエハWFが常温で接着力を有するダイシングテープDTを介してリングフレームRFに一体化されているような場合、剥離用テープPTの弛んだ部分がテーブル100や、ダイシングテープDTに接着してしまい、接着シートが剥離できなかったり、ダイシングテープDTを引き上げてウエハWFを破損させてしまったりするといった剥離不良を招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、剥離用テープを用いて接着シートを剥離する際に、剥離用テープが弛むことを防止し、意図しない箇所に剥離用テープが接着することにより生じる剥離不良を回避できるシート剥離装置及び剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、被着体に貼付された接着シートに剥離用テープを貼付し、当該剥離用テープを介して前記接着シートを剥離するシート剥離装置において、前記被着体を支持する支持手段と、前記接着シートに臨む位置に
前記剥離用テープを繰り出す繰出手段と、前記剥離用テープの一部を保持する保持手段と、前記剥離用テープを
前記接着シートに貼付する貼付手段と、前記支持手段と
前記保持手段とを相対移動させて
前記接着シートを剥離する移動手段とを備え、前記保持手段と
前記接着シートとの間に延在する剥離用テー
プが前記接着シート以外の領域に付着することを回避する弛み防止手段を更に備え
、前記弛み防止手段は、前記保持手段に設けられているとともに、前記保持手段と前記接着シートとの間に延在する剥離用テープに当接若しくは気体を吹きつけて張力を付与する、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記弛み防止手段は、
前記接着シートに前記剥離用テープを貼付してから当該剥離用テープを介して前記接着シートを剥離するまで剥離用テープに張力を付与する、という構成を採っている。
【0008】
また、本発明は、被着体に貼付された接着シートに剥離用テープを貼付し、当該剥離用テープを介して前記接着シートを剥離するシート剥離方法において、前記被着体を支持する工程と、前記接着シートに臨むように
前記剥離用テープを繰り出す工程と、前記剥離用テープの一部を
保持手段を介して保持する工程と、前記剥離用テープを
前記接着シートに貼付する工程と、前記保持手段と
前記被着体とを相対移動させて
前記接着シートを剥離する工程とを含み、前記保持手段と
前記接着シートとの間に延在する剥離用テープ
が前記接着シート以外の領域に付着することを回避する
ように前記保持手段から前記剥離用テープに当接若しくは気体を吹きつけて当該剥離用テープに張力を付与する工程を有する手法を採っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保持手段と接着シートとの間に延在する剥離用テープに張力を付与することができるので、剥離用テープが弛んで接着シート以外の領域に付着することで生じる剥離不良を防止できる。
また、弛み防止手段が保持手段に設けられていれば、剥離用テープを保持している部材を通じて剥離用テープに張力を付与させることができ、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るシート剥離装置の概略正面図。
【
図2】保持手段が剥離用テープを保持する動作説明図。
【
図3】剥離用テープを接着シートに貼付する動作説明図。
【
図4】弛み防止手段が剥離用テープに張力を付与する動作説明図。
【
図5】(A)、(B)、(C)は弛み防止手段の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態において基準となる図を挙げることなく、例えば、上、下、左、右、または、前、後といった方向を示した場合は、全て
図1を正規の方向(付した番号が適切な向きとなる方向)から観た場合を基準とし、上、下、左、右方向が紙面に平行な方向であり、前が紙面に直交する手前方向、後が紙面に直交する奥方向とする。
【0012】
図1において、シート剥離装置10は、被着体としてのウエハWFに貼付された接着シートASに剥離用テープPTを貼付し、当該剥離用テープPTを介して接着シートASを剥離するものであり、ダイシングテープDTを介してリングフレームRFにマウントされたウエハWFを支持する支持手段11と、ウエハWFに貼付された接着シートASに臨む位置に帯状の剥離用テープPTを繰り出す繰出手段12と、剥離用テープPTの一部となる先端部を保持する保持手段14と、剥離用テープPTを接着シートASに貼付する貼付手段15と、剥離用テープPTを所定長さで切断する切断手段16と、支持手段11と保持手段14とを相対移動させて接着シートASを剥離する駆動機器としての第1直動モータLM1からなる移動手段17と、保持手段14と接着シートASとの間に延在する剥離用テープPTに張力を付与する弛み防止手段18とを備えて構成されている。
【0013】
前記支持手段11は、第1直動モータLM1のスライダ21に支持されるとともに、上面側が吸着面とされてダイシングテープDTを介してウエハWFを支持するテーブル20からなり、吸着面には、図示しない減圧ポンプや真空エジェクタ等の吸着手段に接続された図示しない吸引孔が設けられている。
【0014】
前記繰出手段12は、フレームFRに支持され、剥離用テープPTを支持する支持ローラ22と、駆動機器としての回動モータDMによって駆動する駆動ローラ23と、駆動ローラ23との間に剥離用テープPTを挟み込むピンチローラ24と、ガイドローラ25及びブッシュ26と、当該ブッシュ26によって軸27を介して左右方向に移動可能なテープ案内板28とを備えて構成されている。このテープ案内板28は、上面に凹部28Aを有するとともに、軸27の外周側に設けられたコイルばね30により、常に左側に付勢されている。
【0015】
前記保持手段14は、第1直動モータLM1と平行に配置された駆動機器としての第2直動モータLM2と、第2直動モータLM2のスライダ32に支持されるとともに、剥離用テープPTを挟み込む上チャック35及び下チャック36を有する駆動機器としてのチャックシリンダ34とを備えて構成されている。下チャック36は、上面がテープ案内板28の上面と略同一平面又はそれよりも少々下方となる位置に固定されている。
【0016】
前記貼付手段15は、テーブル20が剥離用テープ貼付位置(
図1中実線位置)にあるときに、接着シートASの左端外縁上方に位置するように配置されている。この貼付手段15は、下端部が先尖形状に設けられたヒートブロック40と、当該ヒートブロック40を上下方向に進退させる駆動機器としての第3直動モータLM3とにより構成されている。なお、ヒートブロック40の先端面形状は、接着シートASの外周形状に沿う形状に設けることが好ましい。ヒートブロック40には図示しないコイルヒータや赤外線ヒータ等の加熱手段が内蔵されている。
【0017】
前記切断手段16は、貼付手段15の隣接位置に配置され、カッター刃42と、当該カッター刃42を上下方向に進退させる駆動機器としての第4直動モータLM4と、当該第4直動モータLM4を前後方向に移動可能に支持するスライダ43を有する駆動機器としての第5直動モータLM5とにより構成されている。
【0018】
前記弛み防止手段18は、下チャック36の右端側に開口するように左右方向に延びる穴45と、当該穴45内に設けられた駆動機器としての第6直動モータLM6と、第6直動モータLM6の出力軸46に支持された弛み防止部材としての当接部材47とにより構成されている。
【0019】
次に、本実施形態におけるシート剥離方法について、
図2ないし
図4をも参照しながら説明する。
【0020】
先ず、剥離用テープPTを
図1に示すようにセットしておく。そして、接着シートASが貼付されたウエハWFがリングフレームRFに一体化された状態で
図1中二点鎖線位置に待機しているテーブル20に載置されると、支持手段11が図示しない吸着手段を駆動し、これを吸着保持する。次いで、移動手段17が第1直動モータLM1を駆動し、テーブル20を右方向に移動させる。テーブル20が剥離用テープ貼付位置に移動したことが図示しないセンサにより検出されると、
図2に示されるように、保持手段14が第2直動モータLM2を駆動し、上下チャック35、36を離間した状態でチャックシリンダ34をテープ案内板28に向かって移動させる。そして、下チャック36の右端がテープ案内板28に当接した後も更にチャックシリンダ34を右側に移動させることにより、テープ案内板28がコイルばね30の付勢力に抗して右側に押され、剥離用テープPTの先端部が上下チャック35、36間に導かれる。この後、保持手段14がチャックシリンダ34を駆動し、上チャック35を下降させ、剥離用テープPTを下チャック36との間に挟み込む。次に、保持手段14が第2直動モータLM2を駆動し、チャックシリンダ34を左方向に移動させ、チャックシリンダ34とテープ案内板28とを
図3に示される位置に復帰させる。このとき、繰出手段12が回動モータDMを駆動し、剥離用テープPTを所定長さ繰り出す。
【0021】
次いで、貼付手段15が第3直動モータLM3を駆動し、
図3に示されるように、ヒートブロック40を下降させ、剥離用テープPTの一部を接着シートASの左端外縁上面部分に押し付け、図示しない加熱手段を駆動し、剥離用テープPTを加熱して接着シートASに貼付する。その後、切断手段16が第4直動モータLM4及び第5直動モータLM5を駆動し、カッター刃42を凹部28A内に下降させた後、カッター刃42を前後方向に移動させて剥離用テープPTを幅方向に切断する。
【0022】
剥離用テープPTの貼付と切断とが完了した後、貼付手段15及び切断手段16が第3直動モータLM3及び第4直動モータLM4を駆動し、ヒートブロック40及びカッター刃42を初期の上昇位置に復帰させる。
次いで、
図4に示すように、弛み防止手段18が第6直動モータLM6を駆動し、接着シートASからチャックシリンダ34の間に延在している剥離用テープPTの下面側に当接部材47を所定のトルクで突出させる。その後、移動手段17が第1直動モータLM1を駆動し、テーブル20を左側に相対移動させることで、ウエハWFから接着シートASを剥離する。このとき、テーブル20の相対移動に伴い、上下チャック35、36と接着シートASとの間に延在する剥離用テープPTが弛もうとするが、剥離用テープPTは、当接部材47によって所定のトルクで張力が付与されているので、ダイシングテープDTや他のものに接着してしまうような不都合は発生しない。
【0023】
接着シートASがウエハWFから完全に剥離されると、弛み防止手段18が第6直動モータLM6を駆動し、当接部材47を左方向に移動させる。また、保持手段14がチャックシリンダ34を駆動し、上チャック35を上昇させ、剥離済みの接着シートASを剥離用テープPTと共に下チャック36から離脱させて図示しないダストボックスに廃棄する。この接着シートASの廃棄のときに、剥離用テープPTが下チャック36に接着している場合があるので、弛み防止手段18が第6直動モータLM6を駆動し、当接部材47を左右方向に移動させて剥離用テープPTが下チャック36から剥がれるように付勢することができる。その後、図示しない搬送手段で接着シートASを剥離したウエハWFを搬送して剥離動作が完了し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0024】
従って、このような実施形態によれば、剥離用テープPTがダイシングテープDTに接着してしまうことを防止することができる。
【0025】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0026】
例えば、弛み防止手段18は、
図5(A)に示すように、下チャック36の下方に設けたり、弛み防止部材をローラ60で構成したりしてもよい。
更に、
図5(B)に示すように、弛み防止手段18を上チャック側の上方に設け、剥離用テープPTを上方向に付勢する構成としてもよい。
また、
図5(C)に示すように、弛み防止手段18を下チャック36の左右方向に貫通する孔61と、加圧ポンプやタービンなどの送風手段62とで構成し、窒素やアルゴン等のガスや大気等の気体を剥離テープPTに吹き付けてもよい。
【0027】
また、剥離用テープPTは、帯状のものに限らず、枚葉のものでもよい。また、剥離用テープPTは感熱接着性の接着シートや感圧接着性の接着シートを使用することもでき、感圧接着性の接着シートを使用する場合、加熱手段は必ずしも必要ではない。
【0028】
また、支持手段11を移動させることなく保持手段14側のみを移動させる構成としてもよく、これら両方を移動させる構成としてもよい。
【0029】
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【0030】
更に、被着体は、ウエハWF以外にガラス板、鋼板、または、樹脂板、その他のものも対象とすることができ、ウエハWFは、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等が例示できる。また、接着シートASの種別や材質などは、特に限定されず、例えば、基材シートBSと接着剤層ADとの間に設けられる中間層を有するものや、他の層を有する等3層以上のものでもよいし、基材シートBSを有さない接着剤層AD単体のものでもよい。さらに、被着体が光ディスクの基板であってもよい。以上のように、被着体としては、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 シート剥離装置
11 支持手段
12 繰出手段
14 保持手段
15 貼付手段
16 切断手段
17 移動手段
18 弛み防止手段
AS 接着シート
PT 剥離用テープ
WF 半導体ウエハ(被着体)