特許第5945161号(P5945161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945161
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】直動案内ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   F16C29/06
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-119564(P2012-119564)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-245751(P2013-245751A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092347
【弁理士】
【氏名又は名称】尾仲 一宗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 佳弘
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−035146(JP,A)
【文献】 特開2008−082433(JP,A)
【文献】 特開2011−099501(JP,A)
【文献】 特開2011−149469(JP,A)
【文献】 実開平06−058234(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向両側面に沿って一対の第1軌道面が形成された軌道レール,及び前記軌道レールの長手方向に摺動自在なスライダから成り,前記スライダは,前記軌道レールの前記一対の第1軌道面に対向して一対の第2軌道面がそれぞれ形成され且つ前記第2軌道面と前記第1軌道面との間に形成される一対の軌道路に沿って延びる一対のリターン路が設けられたケーシング,前記ケーシングの両端面にそれぞれ取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路がそれぞれ形成された一対のエンドキャップ,前記エンドキャップの端面にそれぞれ配設されたエンドシール,前記エンドキャップの前記エンドシール側に開口する凹部に嵌入された潤滑剤が含浸された多孔質成形体,並びに前記軌道路,前記リターン路及び一対の前記方向転換路で構成される循環路を転走して前記方向転換路に露出する前記多孔質成形体の接触面に接して潤滑される複数の転動体であるローラを有する直動案内ユニットにおいて,
前記エンドキャップには前記ケーシング側の端面それぞれの前記方向転換路に通じる給油溝と前記エンドキャップの幅方向中央に設けられて前記給油溝に連通する前記スライダの摺動方向に貫通する第1給油孔とが形成されており,前記エンドシールには前記第1給油孔に対向して前記第1給油孔より小径で注油針が嵌入するサイズの前記摺動方向に貫通する第2給油孔が形成されており,前記エンドシールの前記第2給油孔を通じて前記注油針から供給された潤滑剤が前記第1給油孔から前記給油溝に通じてそれぞれの前記方向転換路へ給油されて前記転動体を潤滑すると共に,前記第1給油孔の一部に形成された前記摺動方向に延びて開口するスリット,又は前記第2給油孔と前記第1給油孔との間に位置して配設された前記多孔質成形体に形成された第3給油孔を通じて前記多孔質成形体に給油されることを特徴とする直動案内ユニット。
【請求項2】
前記エンドキャップは,本体部と該本体部の両側からそれぞれ延びる袖部からなるエンドキャップ本体と前記エンドキャップ本体の前記ケーシング側の嵌入凹部に嵌入されて前記エンドキャップ本体と共働して前記方向転換路を構成するスペーサとから構成されており,前記多孔質成形体は,前記本体部の両側に位置する第1貯留部,前記本体部の中央に位置して前記第1貯留部を接続する第2貯留部,前記袖部に位置する第3貯留部,前記方向転換路の開口部へと突出して前記開口部に露出する前記接触面が形成された突出部,及び前記第3貯留部と前記突出部とを接続する連係供給部から構成され,前記第2貯留部に前記スリットが開口されて成り,又は前記第2貯留部に前記第3給油孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記多孔質成形体は,超高分子量の合成樹脂微粒子を加熱成形した焼結樹脂で形成され,前記合成樹脂微粒子間が連通状態に保形された多孔部に形成され,前記多孔部に前記潤滑剤が含浸されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記エンドキャップの端部には,前記転動体を保持するため前記摺動方向に延びる保持板を固定する保持バンドを係止する保持バンド溝が形成されており,前記エンドキャップの前記凹部に前記保持バンド溝が開口していることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記ケーシングに設けられた前記リターン路は,前記ケーシングに形成された嵌挿孔に嵌挿されたスリーブに形成されており,前記スリーブは,一端部が一方の前記エンドキャップ本体の前記嵌入凹部に嵌入された前記スペーサと一体構造に形成され且つ他端部が他方の前記エンドキャップ本体の前記ケーシング側に形成された嵌合凹部に嵌合されていることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,長尺な軌道レール及び該軌道レール上を転動体を介して相対移動するスライダから構成され,スライダに給油可能な多孔質成形体を組み込んだ直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,直動案内ユニットは,半導体製造装置,工作機械,産業用ロボット等における直線往復運動機構等の各種装置の摺動部への適用が拡大している現状であり,通常,循環路において転動体に対して潤滑をスムーズにするため,潤滑剤を給油孔から定期的に給油している。しかしながら,各種装置について,省エネであってランニングコストや設備維持コストを削減するという観点からメンテナンスフリーが要求されるようになり,各種装置に組み込まれる直動案内ユニットについても,使用状態において潤滑剤の供給を行わないメンテナンスフリーの実現が要望されると共に,潤滑剤の使用量を最小限に抑えることが益々求められている。そこで,直動案内ユニットについて,潤滑剤を適正に転動体に付着させて循環路を転動する転動体に対して金属同士の接触を防止し,耐久性を向上させるため,転動体へ潤滑剤を常に供給して潤滑させることが不可欠になっている。
【0003】
本出願人は,軌道レールの幅が10mm程度,転動体のローラ直径が1mm程度の極小形のローラタイプの直動案内ユニットを開発し,先に特許出願した。該直動案内ユニットは,軌道路でローラを保持する保持板とエンドキャップとの連結部をスムーズな循環路に形成してローラを適正な姿勢でスムーズに転走させる。スライダは,ケーシング,エンドキャップ,循環路を転走するローラ,ケーシングの軌道路に沿って延びてローラを軌道路に保持する保持板,及び保持板をケーシングに固定する固定バンドを有する。保持板は,方向転換路から連通して延びるエンドキャップの案内部に連結し,保持板の端面は案内部の端面を覆う状態に互いに補完的に合致して連結している。保持板と案内部との端面は,互いに補完的な形状の斜面に形成されている(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,本出願人は,直動案内ユニットとして,転動体への潤滑剤の給油を方向転換路において行い,給油手段の構成を単純化し,確実に安定的に給油してメンテナンスフリーを達成したものを先に開発して特許出願した。該直動案内ユニットは,転動体への潤滑剤の給油を方向転換路内で行うものであり,エンドキャップ端面の凹部に潤滑剤が含浸された多孔質成形体を配置している。上記直動案内ユニットは,方向転換路の開口部から多孔質成形体の接触面を露出させて,軌道路を転動するローラが方向転換路内で多孔質成形体の接触面に接触して給油されるものである(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,本出願人は,転動体への潤滑剤の給油を方向転換路内で行う直動案内ユニットを開発し,先に特許出願した。該直動案内ユニットは,エンドキャップのケーシング側端面の凹部に潤滑剤を含浸した多孔質成形体を配置している。上記直動案内ユニットは,方向転換路の開口部から多孔質成形体の接触面を露出させて,軌道路を転動するローラが方向転換路内で多孔質成形体の接触面に接触して給油されるものである(例えば,特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−111458号公報
【特許文献2】特開2008−82433号公報
【特許文献3】特開2011−149469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に開示されている直動案内ユニットは,グリースニップルを介して潤滑剤の追加給油を行うタイプであって給油された潤滑剤がエンドキャップ内の方向転換路まで供給されるが,エンドキャップに内蔵している潤滑部材の多孔質成形体には給油されない構造である。また,上記特許文献3では,特許文献2と同様に,グリースニップルを介して潤滑剤の追加給油を行う。給油された潤滑剤はエンドキャップ内の方向転換路まで供給される。方向転換路までの潤滑剤の通路は,エンドキャップとエンドキャップに内蔵している潤滑部材の多孔質成形体で形成される。追加給油される潤滑剤は,グリースニップルから給油され,通路内で潤滑部材に接触して潤滑部材に吸収される。しかしながら,特許文献2及び特許文献3に開示されている直動案内ユニットは,エンドキャップにグリースニップルを取り付けるための雌ねじ加工を施した給油孔構造が必要となり,そのスペース分だけ,潤滑剤を含浸する多孔質成形体の体積が減ることになるし,エンドキャップには,グリースニップルを配設するスペースが有るというサイズのものである。
【0008】
ところで,超小型の直動案内ユニット,例えば,軌道レールの幅が12mmというサイズの小さな4条列のころを使用した超小形に構成したものについて,エンドキャップの方向転換路内において,エンドキャップのエンドシール側の端面に多孔質成形体を配設した場合に,多孔質成形体で形成されている貯油板の突出部をエンドキャップの開口部から方向転換路に露出させる構造を検討した。しかしながら,上記小形の直動案内ユニットでは,エンドキャップのエンドシール側の端面には,軌道路において転動体の脱落を防止する保持板をスライダに保持する保持バンドの端部を係止するため保持バンド溝が形成されている。そのため,エンドキャップにおける保持バンド溝の占有スペースが必要になっており,しかもエンドキャップにはグリースニップルを取り付けるためのスペースがなく,また,多孔質成形体における潤滑剤を貯蔵する貯留部と転動体に接触させる突出部とを大きく構成することができないので,それらを大きくすれば,機械的強度を保つことができなくなることが分かった。しかも,多孔質成形体の突出部には,転動体が絶えず繰り返して衝突するため,多孔質成形体の突出部は,転動体の衝撃力に耐えるような機械的強度が強いものが求められている。
【0009】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,半導体製造装置,工作機械,産業用ロボット等の各種の装置の摺動部に使用される転動体のローラタイプであって,ローラの脱落を防止する保持板を保持する保持バンドを備えた直動案内ユニットにおいて,エンドキャップのエンドシール側の端面に保持バンド溝を形成したような構造上スペースが厳しくても,エンドキャップのエンドシール側の端面に凹部を形成し,凹部に潤滑剤を含浸した多孔質成形体を嵌合配設し,エンドキャップに設けた方向転換路に開口する開口部を形成し,転動体のローラへの潤滑剤の給油を方向転換路内で行い,特に,エンドシール側からの注油器の注油針により方向転換路に給油すると共に,同時に多孔質成形体にも追加給油できるように構成し,給油手段の構成を単純化し,更に,深部の凹部に追従して体積が可及的に大きくなる形状に多孔質成形体に貯留部を形成し,エンドキャップが小形であっても多孔質成形体に十分な潤滑剤を含浸できる構造に構成し,転動体へ確実に安定的に給油を行ってメンテナンスフリーを実現し,更に追加給油を可能にし,転動体への給油を長期にわたって確実に容易に安定して達成できる直動案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は,長手方向両側面に沿って一対の第1軌道面が形成された軌道レール,及び前記軌道レールの長手方向に摺動自在なスライダから成り,前記スライダは,前記軌道レールの前記一対の第1軌道面に対向して一対の第2軌道面がそれぞれ形成され且つ前記第2軌道面と前記第1軌道面との間に形成される一対の軌道路に沿って延びる一対のリターン路が設けられたケーシング,前記ケーシングの両端面にそれぞれ取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路がそれぞれ形成された一対のエンドキャップ,前記エンドキャップの端面にそれぞれ配設されたエンドシール,前記エンドキャップの前記エンドシール側に開口する凹部に嵌入された潤滑剤が含浸された多孔質成形体,並びに前記軌道路,前記リターン路及び一対の前記方向転換路で構成される循環路を転走して前記方向転換路に露出する前記多孔質成形体の接触面に接して潤滑される複数の転動体であるローラを有する直動案内ユニットにおいて,
前記エンドキャップには前記ケーシング側の端面それぞれの前記方向転換路に通じる給油溝と前記エンドキャップの幅方向中央に設けられて前記給油溝に連通する前記スライダの摺動方向に貫通する第1給油孔とが形成されており,前記エンドシールには前記第1給油孔に対向して前記第1給油孔より小径で注油針が嵌入するサイズの前記摺動方向に貫通する第2給油孔が形成されており,前記エンドシールの前記第2給油孔を通じて前記注油針から供給された潤滑剤が前記第1給油孔から前記給油溝に通じてそれぞれの前記方向転換路へ給油されて前記転動体を潤滑すると共に,前記第1給油孔の一部に形成された前記摺動方向に延びて開口するスリット,又は前記第2給油孔と前記第1給油孔との間に位置して配設された前記多孔質成形体に形成された第3給油孔を通じて前記多孔質成形体に給油されることを特徴とする直動案内ユニットに関する。
【0011】
また,前記エンドキャップは,本体部と該本体部の両側からそれぞれ延びる袖部からなるエンドキャップ本体と前記エンドキャップ本体の前記ケーシング側の嵌入凹部に嵌入されて前記エンドキャップ本体と共働して前記方向転換路を構成するスペーサとから構成されており,前記多孔質成形体は,前記本体部の両側に位置する第1貯留部,前記本体部の中央に位置して前記第1貯留部を接続する第2貯留部,前記袖部に位置する第3貯留部,前記方向転換路の開口部へと突出して前記開口部に露出する前記接触面が形成された突出部,及び前記第3貯留部と前記突出部とを接続する連係供給部から構成され,前記第2貯留部に前記スリットが開口されており,又は前記第2貯留部に前記第3給油孔が形成されているものである。
【0012】
また,前記多孔質成形体は,超高分子量の合成樹脂微粒子を加熱成形した焼結樹脂で形成され,前記合成樹脂微粒子間が連通状態に保形された多孔部に形成され,前記多孔部に前記潤滑剤が含浸されているものである。
【0013】
また,この直動案内ユニットは,前記エンドキャップの端部には,前記転動体を保持するため前記摺動方向に延びる保持板を固定する保持バンドを係止する保持バンド溝が形成されており,前記エンドキャップの前記凹部に前記保持バンド溝が開口している。
【0014】
また,前記ケーシングに設けられた前記リターン路は,前記ケーシングに形成された嵌挿孔に嵌挿されたスリーブに形成されており前記スリーブは一端部が一方の前記エンドキャップ本体の前記嵌入凹部に嵌入された前記スペーサと一体構造に形成され且つ他端部が他方の前記エンドキャップ本体の前記ケーシング側に形成された嵌合凹部に嵌合されているものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明による直動案内ユニットは,上記のように構成されているので,従来構造に対して潤滑剤の保持量を増やすためにエンドキャップの中央部に位置する多孔質成形体の第2貯留部の厚さ(即ち,容積)を増すと共に,エンドキャップの中央に設けたボス部に形成した第1給油孔が切り欠き状態になってスリットが形成されるまで前記ボス部のサイズを縮小したので,多孔質成形体における第2貯留部の容積を増加させることができ,第2貯留部に保持できる潤滑剤の量を増加させている。そして,エンドキャップの給油孔の一部に摺動方向に切り欠いたスリットを形成し,多孔質成形体を給油孔に露出させる構造により,多孔質成形体の露出面から給油孔に給油された潤滑剤の一部をスリットを通じて吸収でき,その結果,エンドキャップ内の方向転換路と多孔質成形体への追加給油を同時に行え,また,多孔質成形体に直接追加給油できる構造に構成されているので,潤滑メンテナンスフリーを長期間にわたって達成できる。
【0016】
また,この直動案内ユニットは,転動体への潤滑剤の給油を方向転換路内で行う極小形のローラタイプ直動案内ユニットに関するものであり,従来のようなグリースニップルの代わりに給油孔を設け,その分だけ多孔質成形体を設ける空間を確保することによって,直動案内ユニットの大きさに対してエンドキャップ内部に配置する多孔質成形体をできるだけ大きく形成でき,給油孔の内面に多孔質成形体が露出しており,給油孔から追加給油すると方向転換路内への給油と同時に,多孔質成形体への追加給油も可能な構造である。従って,この直動案内ユニットが極小形であっても,多孔質成形体に追加給油できる構造に構成でき,潤滑剤を追加給油できるので,多孔質成形体に逐次多くの潤滑油を保持させ,長期間にわたって容易に潤滑メンテナンスフリーを達成できる。また,この直動案内ユニットは,グリースニップルを設けない構造でエンドキャップの給油孔の下側位置にも,多孔質成形体の貯留部を形成できる。その結果,多孔質成形体に保持可能な潤滑剤量を増加させることができ,従来のグリースニップルを設けた直動案内ユニットの構造と比較して,本願発明構造の多孔質成形体の体積は約20%の体積増加を実現できる。その結果,保持できる潤滑剤の量も増加させることが出来る。保持できる潤滑剤の量を増加させた潤滑部材を備えることで,長期間にわたって容易に潤滑メンテナンスフリーを達成できる。この直動案内ユニットでは,多孔質成形体を略コの字形に連結することが出来る。その結果,多孔質成形体の内部で潤滑剤の移動が可能になり,一方側の多孔質成形体の潤滑剤含浸量が排出されて極端に減少することを予防できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明による直動案内ユニットの一実施例を示し,一部断面を示す斜視図である。
図2図1の直動案内ユニットを示す正面図である。
図3図1の直動案内ユニットを示す側面図である。
図4図1の直動案内ユニットからエンドキャップを取り外したケーシングの端面位置で軌道レールの断面部分を含んだ状態を示すケーシングの端面図である。
図5図1の直動案内ユニットにおけるエンドシールの給油孔位置を示す拡大断面図である。
図6図5におけるエンドキャップの給油孔位置を示す拡大断面図であって,エンドキャップの凹部に潤滑剤を含浸した多孔質成形体が組み込まれた状態で,エンドキャップの給油孔に多孔質成形体が露出している状態を示す断面図である。
図7図1の直動案内ユニットに形成された循環路を図2のA−A断面又は一部図8のB−B断面で示す断面図である。
図8】エンドキャップの凹部に多孔質成形体を組み込んだ状態をエンドシール側から見た端面図である。
図9】この直動案内ユニットにおけるエンドキャップに組み込まれた潤滑剤を含浸する多孔質成形体の斜視図である。
図10図9の多孔質成形体をケーシング側から見た端面図である。
図11図9の多孔質成形体を軌道レール側から見た下面図である。
図12図9の多孔質成形体を示す側面図である。
図13】エンドキャップのエンドシール側から見た端面図である。
図14図13のエンドキャップをケーシング側から見た端面図である。
図15図13のエンドキャップの側面図である。
図16図14のエンドキャップのC−C断面を示す断面図である。
図17】エンドシールを示す正面図である。
図18図17のエンドシールの側面図である。
図19図17のエンドシールの給油孔位置であるD−D断面を示す断面図である。
図20】エンドキャップに,スリーブが一体構造になったスペーサを配設した状態を一方側から見た断面図である。
図21】エンドキャップに,スリーブが一体構造になったスペーサを配設した状態を他方側から見た断面図である。
図22】この直動案内ユニットの別の実施形態を示し,エンドキャップのボス部を凹部に形成し,多孔質成形体に給油孔を形成した状態を示す端面図である。
図23】この直動案内ユニットの更に別の実施形態を示し,エンドキャップのボス部に形成する給油孔を多角形状に形成した状態を示す端面図である。
図24】この直動案内ユニットの他の実施形態を示し,エンドキャップのボス部を凹部に形成して,多孔質成形体に給油孔を多角形状に形成して油溜まりを形成した状態を示す端面図である。
図25】この直動案内ユニットの更に他の実施形態を示し,給油孔の断面形状がエンドシール側からケーシング側に向かう途中で変化する形状に構成されている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,図面を参照して,この発明による直動案内ユニットの実施例について説明する。この直動案内ユニットは,4条列のローラタイプであり,概して,幅方向両側面66の長手方向に沿って一対の軌道面11(第1軌道面)がそれぞれ形成された長尺状の軌道レール1,軌道レール1に両袖部が跨架して軌道レール1の長手方向に摺動自在なスライダ2,並びに軌道レール1とスライダ2との間に形成される負荷軌道路である軌道路40,軌道路40に平行に延びるスライダ2に設けられたリターン路15,及び軌道路40とリターン路15とを連通する方向転換路30から成る循環路45を転走するローラ7を有している。この実施例のスライダ2は,ブロックタイプであり,相手側との固定用の取付け用ねじ穴18は下方向に取り付け可能に構成されている。この直動案内ユニットは,軌道レール1の幅寸法が10mm程度であり,転動体のローラ7の直径が1mm程度の極小形のローラタイプの極小形に形成されており,従来のようなグリースニップルを設ける寸法的余裕が無く,スライダ2にはグリースニップルを備えることができない極小形のタイプである。
【0019】
また,スライダ2は,主として,軌道レール1の一対の軌道面11に対向して袖部にそれぞれ形成された一対の軌道面12(第2軌道面)と,両軌道面11,12の間に形成される上下の一対の軌道路40に沿って平行に延びる上下のリターン路15とが形成されたケーシング3,ケーシング3の摺動方向(長手方向)両端面67に固定され且つ上下の軌道路40と上下のリターン路15とを連通する方向転換路30がそれぞれ形成されたエンドキャップ4,エンドキャップ4の摺動方向外側の端面68に配置され且つ軌道レール1とスライダ2との隙間をシールするリップ部60を備えたエンドシール8,エンドキャップ4に形成された凹部31に嵌合された潤滑剤を含浸した多孔質成形体10,並びに軌道路40,方向転換路30及びリターン路15から成る循環路45を転走する複数のローラ7を有している。一対の循環路45は,スライダ2の両袖部にそれぞれ形成されている。また,この直動案内ユニットは,ケーシング3に形成されたねじ穴32には,エンドキャップ4に形成された取付け用孔37及びエンドシール8の両側の座ぐり部62に形成された取付け用孔57に挿通された固定用ボルト33が螺入され,ケーシング3にエンドキャップ4及びエンドシール8が固定されている。この直動案内ユニットは,エンドキャップ4には直径1. 5mmの給油孔35が設けられており,エンドシール8には,直径0. 5mmの給油孔9が設けられている。この直動案内ユニットは,注射器状の給油装置を使用してその針状の先端部の給油針を給油孔9に挿入して追加給油できるものである。
【0020】
一対の循環路45のうち,一方の循環路45を転走するローラ7は,スライダ2の下方向の負荷を受けるケーシング3の下側の軌道路40からケーシング3の上側のリターン路15に循環し,また,他方の循環路45を転走するローラ7は,スライダ2の上方向の負荷を受けるケーシング3の上側の軌道路40から下側のリターン路15に循環して構成されている。また,軌道レール1には,ベース等に固定するための取付け用孔17が形成され,ケーシング3には他部材を固定するための取付け用ねじ孔18が形成され,スライダ2の下面には下面シール14が取り付けられている。また,エンドキャップ4は,本体部41と袖部42とから構成されたエンドキャップ本体5とエンドキャップ本体5のケーシング3側に嵌入されてエンドキャップ本体5と共働して方向転換路30を構成するスペーサ6とから構成されている。ケーシング3に設けられたリターン路15は,ケーシング3に形成された嵌挿孔16に遊嵌状態に嵌挿されたスリーブ13に形成されており,一方のエンドキャップ本体5に嵌合された長手状でなるスリーブ13の通し孔で形成されている。スリーブ13は,スペーサ6と同一の材料である合成樹脂製であって,一端部がスペーサ6と一体構造に構成され,他端部が嵌合段部64に形成され,その嵌合段部64が他方のエンドキャップ本体5に形成された嵌入凹部69に嵌合されている。ケーシング3の両端面67に配置されたエンドキャップ4の案内部47によってケーシング3に固定状態に取り付けられることにより,スリーブ13の自由端である端部の嵌合段部64は,ケーシング3を介して対向するエンドキャップ本体5に形成された嵌入凹部69に嵌合されて,スライダ2に組み込まれる状態になる。
【0021】
この直動案内ユニットにおいて,方向転換路30は,エンドキャップ4の袖部42に形成されており,エンドキャップ4の両袖部において,内側方向転換路51と外側方向転換路52とがたすき掛けに交差状態にそれぞれ形成されている。エンドキャップ4は,スリーブ13と一体構造に構成された方向転換路30の周面を形成するスペーサ6と方向転換路30の外周面を形成するエンドキャップ本体5とから構成されている。スリーブ13と一体構造に構成されたスペーサ6は,エンドキャップ4の嵌合凹部71で形成された外側方向転換路52の内周面と,内側方向転換路51の外周面の一部と,内側方向転換路51の内周面とを形成している。スリーブ13と一体構造に構成されたスペーサ6は,外側と内側の方向転換路52,51とが互いに交差状態に組み合わされるように配設されている。また,循環路45は,負荷路である軌道路40,リターン路15,エンドキャップ本体5とスペーサ6で形成された長円状の外側方向転換路52,短円状の内側方向転換路51によってそれぞれ形成される。また,エンドキャップ4の左右側即ち摺動方向に直交する方向では,内側方向転換路51と外側方向転換路52との交差状態が互い違いの構造に構成されている。従って,方向転換路30では,ケーシング3の右側の袖部において,外側方向転換路52が下側の軌道路40と上側のリターン路15とを連通するように形成され,また,内側方向転換路51が上側の軌道路40と下側のリターン路15とを連通するように形成されている。また,ケーシング3の左側の袖部において,外側方向転換路52が上側の軌道路40と下側のリターン路15とを連通するように形成され,また,内側方向転換路51が下側の軌道路40と上側のリターン路15とを連通するように形成されている。
【0022】
この直動案内ユニットにおいて,エンドキャップ本体5には,保持板26に接続する案内部47が形成されている。軌道路40を転走するローラ7を保持する保持板26の端面と,案内部47の端面は,摺動方向に斜面に形成されている。保持板26と案内部47が互いに当接する端面の境界部は,段差の発生を防止でき,ローラ7が循環路45を安定してスムーズに転走することができる(図示せず)。案内部47は,方向転換路30の入口部に形成され,スペーサ6と共働してリターン路15へと連通し,エンドキャップ4の方向転換路30とケーシング3のリターン路15とが滑らかに連通している。また,エンドキャップ4は,一対の案内部47がケーシング3に対して位置決めされて固定されるので,スリーブ13と一体構造に構成されているスペーサ6がエンドキャップ4の案内部47に当接することによってスペーサ6とエンドキャップ4とが位置決めされ,ケーシング3のリターン路15とエンドキャップ4の案内部47とは合致するようになる。従って,リターン路15と方向転換路30との断面矩形状の循環路45が段差無く接続されている。エンドキャップ4に形成された方向転換路30とケーシング3の嵌挿孔16に嵌合したスリーブ13に形成されたリターン路15とが段差無く連通することにより,ローラ7は,方向転換路30からリターン路15へ,及びリターン路15から方向転換路30へとスムーズに転動循環することができる。また,この直動案内ユニットは,転動体がローラ7でなる小形の直動案内ユニットであり,軌道路40を転走するローラ7は,保持板26によって保持され,スライダ2を軌道レール1から外した場合に,スライダ2からローラ7が脱落しないように構成されており,保持板26は,その係合凸部29がケーシング3の軌道面12間に形成された係合凹溝28の配設され,保持バンド27によってケーシング3に固定され,保持バンド27の両端がエンドキャップ4の保持バンド溝39に嵌入して係止することによって,スライダ2に固着されている。
【0023】
この直動案内ユニットは,エンドキャップ4を構成するエンドキャップ本体5には,多孔質成形体10を嵌合する凹部31が形成され,凹部31に嵌合された多孔質成形体10のエンドシール8側の端面70は,エンドシール8の端面63と面一に形成され,互いに密接している。この直動案内ユニットは,特に,エンドキャップ4には,ケーシング3側の端面54に方向転換路30に通じる給油溝49と,給油溝49にエンドシール8側の端面53から延びてスライダ2の摺動方向に貫通する給油孔35(第1給油孔)が形成されており,エンドシール8には,給油孔35より小径で注油針(図示せず)が嵌入するサイズの摺動方向に貫通する給油孔9(第2給油孔)が形成されている。エンドキャップ4の少なくとも給油孔35を通じて前記注油針から供給された潤滑剤は,多孔質成形体10及び方向転換路30へと供給されるように構成されている。図8の矢印は,給油孔35から多孔質成形体10に潤滑剤が供給されるイメージを示す。また,エンドキャップ4に形成された給油孔35は,エンドキャップ4の中央に設けられたボス部38に形成され,予め決められた長さに摺動方向に延びるスリット36を通じて多孔質成形体10に開口しており,潤滑剤がスリット36を通じて多孔質成形体10の露出面46に給油される。ここでは,スリット36に面する露出面46は,多孔質成形体10の第2貯留部22に位置している。即ち,図8及び図14に示すように,エンドキャップ4のエンドキャップ本体5の凹部31には,従来のグリースニップルの代わりに,中央に形成された給油孔35,及び給油孔35から連通して左右の袖部42へと延びる円弧状の給油溝49が形成されており,円弧状の給油溝49は,方向転換路30へ延びる幅の狭い給油溝49が形成されている。給油溝49は,方向転換路30に潤滑剤が給油できるものになっている。一方,多孔質成形体10は,給油孔35を通る潤滑剤にスリット36を通じて接するため,多孔質成形体10には給油孔35内の潤滑剤からの油分が補給され,潤滑のメンテナンスフリーの期間を更に延長することが可能に成る。
【0024】
また,この直動案内ユニットにおいて,エンドキャップ4に形成されたエンドシール8側に開口する凹部31は,エンドキャップ本体5の本体部41と該本体部41の両側からそれぞれ延びる袖部42に形成されており,多孔質成形体10の貯留部20が凹部31にフィットして嵌入されている。多孔質成形体10は,エンドキャップ本体5に形成された凹部31内に嵌合する形状に形成されており,図9図12に示すように,本体部41の両側の凹部31の深部48に位置する第1貯留部21,両第1貯留部21に接続して本体部41の中央の凹部31の深部48に位置する第2貯留部22,両第1貯留部21に接続して両側の袖部42の凹部31に位置する第3貯留部23,方向転換路30の開口部50へと突出して先端面が開口部50に露出する突出部24,及び第3貯留部23と突出部24とを接続する連係供給部19から形成されている。潤滑剤を多量に含浸する貯留部20は,主として,ブロック状の形状で上部左右に形成された一対の第1貯留部21と,一対の第1貯留部21間に位置する平板状の第2貯留部22,及び第1貯留部21からそれぞれ垂下する第3貯留部23から構成されている。連係供給部19は,第3貯留部23からそれぞれ垂下してエンドキャップ本体5の一対の袖部42の凹部31にそれぞれ嵌合されている。一対の連係供給部19には,エンドキャップ4の方向転換路30内を転走する転動体のローラ7に接触して潤滑剤を供給する突出部24がそれぞれ形成されている。突出部24は,その先端面に傾斜した接触面25が形成されており,接触面25は,エンドキャップ4の方向転換路30の曲線部分に形成された開口部50に露出するように配設されている。多孔質成形体10は,潤滑剤の保持量を増やすために,第2貯留部22の厚さ(即ち,容積)を大きくして,エンドキャップ4のボス部38が切り欠かれてスリット36が形成されるまで,ボス部38が薄くなるように構成されている。その結果,多孔質成形体10の第2貯留部22の部分の容積(体積)が増加して,保持できる潤滑剤の量が増加することになる。同時に,ボス部38での給油孔35が切り欠かれた状態になってスリット36が形成されることによって,潤滑剤は,給油孔35からスリット36を通じてスリット36に露出している多孔質成形体10の露出面46に給油される。
【0025】
多孔質成形体10は,超高分子量の合成樹脂微粒子を加熱成形された焼結樹脂で形成され,焼結樹脂の合成樹脂微粒子間が連通状態に保形された多孔部に形成され,それらの多孔部に潤滑剤が含浸されている。多孔質成形体10の潤滑剤の保持性が良好になっているので,凹部31に多孔質成形体10を嵌合するだけで,澗滑剤が自然に漏れ出てしまう現象が無いものになっている。また,合成樹脂微粒子が,ポリエチレン又はポリプロピレンからなる場合には,多孔質成形体10は,成形体として寸法精度も高精度に形成でき,複雑な形状でなる凹部31への嵌合が適合可能になり,ローラ7と接触する部分での多孔即ちポアへの目詰まりが無く,接触するローラ7へ潤滑剤を限りなく安定して給油できるものになっている。また,多孔質成形体10の突出部24に形成された露出面である接触面25は,ローラ7の方向転換路30を転走する方向に沿って細長形状に形成されている。例えば,多孔質成形体10の突出部24の露出面即ち接触面25の長さは,ローラ7の直径の1.0倍〜1.5倍の範囲のサイズを有し,多孔質成形体10の突出部24の接触面25の幅は,ローラ7の長さの30〜50%の範囲のサイズを有している。それによって,転走するローラ7が接触面25に接触している時間を長くすることができ,ローラ7へ潤滑剤を限りなく安定して給油できるものになっている。また,多孔質成形体10は,潤滑剤を最大限に含浸できるように,可及的に体積を大きくするために,凹部31の深部48を最大限に利用する形状に対応して嵌合する貯留部20が設けられている。従って,この直動案内ユニットが小形に構成されたとしても,多孔質成形体10には多量の潤滑剤が貯留部20に保留できるものになっており,凹部31に多孔質成形体10を嵌合するだけで,長期にわたる潤滑のメンテナンスフリーが実現できると共に,更に,潤滑剤がエンドキャップ本体5のボス部38に形成された給油孔35のスリット36を通じて第2貯留部22へ給油できるように構成されている。
【0026】
また,この直動案内ユニットは,転動体のローラ7を保持するため摺動方向に延びる保持板26を固定する保持バンド27を係止するため,エンドキャップ4の端面53(68)には保持バンド溝39が形成されており,エンドキャップ4に形成された凹部31は保持バンド溝39で開口している。また,スライダ2を構成するエンドキャップ4のエンドシール8側の端面53に形成された凹部31に潤滑剤を含浸した多孔質成形体10を配設し,多孔質成形体10から方向転換路30に形成された開口部50を通じて方向転換路30を転走するローラ7に潤滑剤を給油するものである。エンドキャップ本体5の凹部31は,エンドキャップ本体5の端面53(68)から形成された外側枠部43と内側枠部44に囲まれて形成された領域に位置しており,エンドキャップ4の左右両側に形成されているので,多孔質成形体10は,左右両側の凹部31に跨がって延びて嵌合されてる。この実施例では,エンドキャップ4自体が小形に形成されているので,凹部31は,エンドキャップ本体5の本体部41及び本体部41の幅方向即ち摺動方向に直交する方向の左右両側の袖部42に延びて形成されている。
【0027】
この直動案内ユニットにおける再給油構造の一実施例について説明する。特に,図5及び図6に示すように,エンドキャップ4のエンドキャップ本体5に形成された給油孔35は,断面が円形で下側が摺動方向に延びて切り欠かれたスリット36に形成されている。給油孔35は,円形以外の四角形等の多角形状でも良い(図示せず)。エンドキャップ本体5のボス部38に形成された給油孔35の下側が切り欠かれたスリット36は,多孔質成形体10の第2貯留部22の表面に露出している。エンドシール8は,図17図19に示すように,リップ部60を備えた先端側に位置するゴム部材55,及びゴム部材55のエンドキャップ4側の端面63に形成された凹部34に嵌入固着された芯金部材56から構成されている。ゴム部材55には,給油孔9が形成され,また,芯金部材56には,給油孔9より大径の給油孔9Cが形成されている。エンドシール8を構成するゴム部材55には,上部の本体部58と,本体部58の両側部から延びる袖部59から構成され,軌道レール1に対向する側にはリップ部60が形成され,リップ部60に沿って凹部61が形成されている。エンドシール8の給油孔9,9Cには,潤滑剤を給油する注射器の注油針を挿入し,エンドキャップ4の給油孔35へと潤滑剤が供給される。給油孔35へ供給された潤滑剤は,エンドキャップ4に形成された給油溝49を通じて方向転換路30へ供給されると共に,潤滑剤が給油孔35の内部に溜まり,スリット36に露出している多孔質成形体10の第2貯留部22の露出面46から吸収される。エンドキャップ4の給油孔35において,多孔質成形体10の露出する部分とケーシング3の端面67との間は油溜まりのスペースとなっている。
【0028】
次に,この直動案内ユニットにおける再給油構造の別の実施例について説明する。
図22に示す別の実施形態は,エンドキャップ4を構成するエンドキャップ本体5には,幅方向中央部に小さなボス部を備えているタイプである。従って,エンドキャップ本体5に形成された凹部31に嵌合された多孔質成形体10における第2貯留部22に,給油孔65(第3給油孔)がダイレクトに形成されており,エンドキャップ本体5にはケーシング3側の壁面に給油孔35が形成されている。多孔質成形体10に形成された給油孔65は,形状は種々に形成できるが,図22では断面円形形状に貫通して形成されている。言い換えれば,給油孔65は,多孔質成形体10の第2貯留部22にダイレクトに形成されている。また,図22では,給油孔65は,給油孔9から供給された潤滑剤の油溜まり部を形成することになる。
【0029】
図23には,更に別の実施形態が示されている。エンドキャップ4を構成するエンドキャップ本体5には,幅方向中央部にボス部38を備えており,ボス部38に形成された給油孔35はエンドシール8側は多角形状にケーシング3側は丸形に形成され,図23では略四角形と丸形に形成されている。給油孔35の下面側が厚さ方向に延びて開口するスリット36に形成されており,スリット36は多孔質成形体10の第2貯留部22に開口している。従って,給油孔35に給油された潤滑剤はスリット36を通して多孔質成形体10の第2貯留部22に供給されて吸収されることになる。
【0030】
図24には,他の実施形態が示されている。図24に示すように,エンドキャップ4を構成するエンドキャップ本体5には,幅方向中央部に小さなボス部を備えているタイプである。従って,エンドキャップ本体5に形成された凹部31に嵌合された多孔質成形体10の第2貯留部22に,略四角形の多角形状の給油孔65がダイレクトに形成されており,エンドキャップ本体5にはケーシング3側の壁面に給油孔35が形成されている。図24では,給油孔65は,給油孔9から供給された潤滑剤の油溜まり部を形成することになる。
【0031】
図25に示す別の実施形態は,エンドキャップ本体5に形成された給油孔35は,その断面形状がエンドシール8側からケーシング3側に向かう途中で変化する形状に形成されている。また,給油孔35は,エンドキャップ本体5のケーシング端面67側の断面形状を大きく形成して,油溜まり部を形成している。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明による直動案内ユニットは,各種ロボット,半導体製造装置,精密機械,測定・検査装置,医療機器,マイクロマシーン等の各種装置における摺動部に組み込んで利用され,転動体への良好な潤滑を達成し,循環路での転動体のスムーズな転走を発揮させることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 軌道レール
2 スライダ
3 ケーシング
4 エンドキャップ
5 エンドキャップ本体
6 スペーサ
7 ローラ(転動体)
8 エンドシール
9,9C 給油孔(第2給油孔)
10 多孔質成形体
11, 軌道面(第1軌道面)
12 軌道面(第2軌道面)
13 スリーブ
15 リターン路
16 嵌挿孔
19 連係供給部
20 貯留部
21 第1貯留部
22 第2貯留部
23 第3貯留部
24 突出部
25 接触面
26 保持板
27 保持バンド
30 方向転換路
31 凹部
35 給油孔(第1給油孔)
36 スリット
38 ボス部
39 保持バンド溝
40 軌道路
41 本体部
42 袖部
45 循環路
49 給油溝
50 開口部
63,67 端面
64 嵌合段部
65 給油孔(第3給油孔)
66 側面
69 嵌入凹部
71 嵌合凹部
図1
図2
図3
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