(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発熱部が少なくとも一部に通気性を有する収容体内に収容されて発熱体を構成しており、前記袋体の内側から前記発熱部までの間に前記香料組成物が施されている、請求項3に記載の温熱具。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の温熱具の一例を示す模式的な断面図である。温熱具1は、被酸化性金属、活性炭及び水を備える発熱部10と、発熱部10を収容する袋体11とを有する。温熱具1は、香料組成物により賦香されている。
【0013】
温熱具1は、被酸化性金属の酸化反応によって発熱して十分な温熱効果を付与するものであり、JIS規格S4100による測定において、発熱温度40℃以上65℃以下の性能を有することができる。温熱具1は、水蒸気の発生を伴う蒸気温熱具であってもよいし、水蒸気の発生を実質的に伴わずに発熱する、いわゆる使い捨てカイロであってもよい。温熱具1は香料組成物により賦香されているため、使用時には、発熱とともに香料組成物により芳香する。
【0014】
発熱部10は、被酸化性金属、活性炭及び水を少なくとも含む発熱組成物を備える。
【0015】
被酸化性金属は、酸化反応熱を発する金属であり、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選択される1種又は2種以上の粉末や繊維が挙げられる。これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄が好ましく、中でも鉄粉が好ましく用いられる。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、及びアトマイズ鉄粉から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0016】
被酸化性金属が粉末である場合、酸化反応が効率的に行われるという観点から、その平均粒径が10μm以上であることが好ましく、より好ましくは20μm以上であり、そして、200μm以下が好ましく、より好ましくは、150μm以下である。また、10〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。
なお、被酸化性金属の粒径は、粉体の形態における最大長さをいい、篩による分級、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。
【0017】
被酸化性金属の含有量は、坪量で表して、100g/m
2以上であることが好ましく、より好ましくは200g/m
2以上であり、そして、3000g/m
2以下が好ましく、より好ましくは1500g/m
2である。また、100〜3000g/m
2であることが好ましく、200〜1500g/m
2であることがより好ましい。これにより、発熱部10の発熱温度をより所望の温度に上昇させることができる。
ここで、発熱部10中の鉄粉の含有量は、JIS P8128(1995年)に準じる灰分試験や、熱重量測定器で求めることができる。他に外部磁場を印加すると磁化が生じる性質を利用して振動試料型磁化測定試験等により定量することができる。
【0018】
活性炭としては、好ましくは、椰子殻炭、木粉炭、及びピート炭から選択される1種又は2種以上の微細な粉末状物又は小粒状物が用いられる。中でも、保管時における香りの安定性の観点から、木粉炭が好ましい。
【0019】
活性炭は、接触面積を広くして被酸化性金属と反応しやすい混合状態を形成する観点から、平均粒径が10μm以上のものを用いることが好ましく、より好ましくは12μm以上であり、そして、200μm以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは100μm以下である。また、10〜200μmのものを用いることが好ましく、12〜100μmのものを用いることがより好ましい。
なお、活性炭の平均粒径は、粉体の形態における最大長さをいい、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。
【0020】
活性炭は粉体状の形態のものを用いることが好ましいが、粉体状以外の形態のものを用いることもでき、例えば、繊維状の形態のものを用いることもできる。
【0021】
活性炭の含有量は、良好な発熱特性の観点及び保管時における香りの安定性の観点から、被酸化性金属100質量部に対して6質量部以上が好ましく、より好ましくは8質量部以上であり、そして、15質量部以下が好ましく、より好ましくは13質量部以下である。また、6〜15質量部が好ましく、より好ましくは8〜13質量部である。
【0022】
発熱部10において発熱組成物は、更に反応促進剤を含むことができる。反応促進剤は、被酸化性金属の酸化反応を持続させる目的で用いられる。また、反応促進剤を用いることにより、酸化反応に伴い被酸化性金属に形成される酸化被膜を破壊して、酸化反応を促進することができる。
【0023】
反応促進剤には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物から選択される1種又は2種以上が挙げられる。中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、第1塩化鉄、第2塩化鉄等の各種塩化物、硫酸ナトリウムから選択される1種又は2種以上が用いられるが、中でも汎用性の観点から塩化ナトリウムが好ましい。
【0024】
発熱部10中の反応促進剤の含有量は、十分な発熱が得られる点から被酸化性金属100質量部に対して1.4質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは1.8質量部以上であり、そして、4.5質量部以下が好ましく、より好ましくは3.7質量部以下である。また、1.4〜4.5質量部が好ましく、より好ましくは1.8〜3.7質量部である。
【0025】
発熱部10において発熱組成物は、更に水を含んでいる。水は、被酸化性金属等と組み合わせて使用されることで発熱源として機能する。また、発熱に伴う温度上昇により水蒸気になる。
【0026】
発熱部10中の水の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、27質量部以上が好ましく、より好ましくは35質量部以上であり、83質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましい。また、27〜83質量部が好ましく、35〜70質量部がより好ましい。
【0027】
発熱部10は、例えば発熱シート又は発熱粉体からなる。発熱シート及び発熱粉体のうち、着用者がどのような姿勢であっても温熱を均一に適用し得る点や本発明の効果を十分発揮させる点等から、発熱シートを用いることが好ましい。また、発熱シートは、発熱粉体と比較して、発熱の温度分布を均一化することが容易であり、また、被酸化性金属の担持能力が優れている点からも本発明の効果を十分発揮させる点で有利である。発熱シートとしては、湿式抄造してなるもの、発熱粉体を紙等で挟持してなるもの、又は発熱粉体を水等に分散させたものを紙等に塗布してなるものが挙げられる。
【0028】
ここでは、発熱部10として、発熱シートのうち特に繊維シートと呼ばれる繊維を含有したシートと、塗布シートと呼ばれる発熱粉体を水等に分散させたものを紙等に塗布してなるものを用いた例について説明する。発熱シートのうち繊維シートは、被酸化性金属、活性炭、繊維状物、電解質及び水を含み、含水状態であることが好ましい。すなわち、繊維シートは、被酸化性金属、活性炭及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されていることが好ましい。発熱シートのうち塗布シートは、被酸化性金属、活性炭、電解質及び水を含む発熱粉体水分散物を紙等に塗布したものであることが好ましい。このような発熱シートは、例えば特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。
【0029】
発熱シートは、一層であっても積層構造であってもよい。すなわち、発熱シートは、発熱シート自体が複数枚積層されたものであって良いし、あるいは、保水シート等が隣接して配され積層構造を成したものであっても良い。
図1では、一例として、成形シート10aと、保水シート10bとの二層構造の発熱シートを示す。成形シート10aには、被酸化性金属と活性炭を含むことができ、その含有量は、成形シート10a中、被酸化性金属を60質量%以上90質量%以下、及び活性炭を5質量%以上25質量%以下とすることができる。また、保水シート10bは紙や、吸水性ポリマーが挟まれた紙が好ましい。
【0030】
また、保水シート10bは、成形シート10aの第2袋体シート11b側に配置させることが好ましい。保水シート10bが介在することで香料組成物と発熱部10との距離が遠くなるため、活性炭の影響を物理的に抑制することが可能であり好ましい。なお、第2袋体シート11bについては後述する。
【0031】
発熱部10において発熱組成物には、必要に応じて、更に、増粘剤、界面活性剤、薬剤、凝集剤、着色剤、紙力増強剤、pH調整剤、嵩高剤等を含むこともできる。
【0032】
袋体11は、少なくも一部が通気性を有するが、少なくともその一部が通気性のシートであることが好ましい。保温、保存中の結露防止、必要な香り強度を長時間持続できること、及び、内部が透けて見えないようにすること等の観点から、坪量を20g/m
2以上、好ましくは25g/m
2以上、更に好ましくは30g/m
2以上とすることが好ましい。また、温熱具1の薄型化や軽量化を図り使用時の軽快さを向上させる観点や使用時の香りの立ち上がりが早くなる観点から坪量を90g/m
2以下、好ましくは85g/m
2以下、更に好ましくは80g/m
2以下とすることが好ましい。このようなシートとしては、例えば、不織布、編み物地、通気性シート(例えば、多孔質シート、通気孔を有するプラスチックフィルム)、不織布と通気性シートとをラミネートした積層シート、又は、編み物地と通気性シートとをラミネートした積層シートを用いることができる。
【0033】
不織布としては、1種又は2種以上の繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法により製造されたものを用いることができる。特に、風合いや、弾力性の観点から、伸縮性を有する不織布を用いることが好ましい。伸縮性を有する不織布としては、構成繊維として弾性繊維(例えば、ポリウレタン、ポリエステル)や立体捲縮性繊維を含む不織布が好ましく、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、又は、ニードルパンチ不織布が好ましい。
【0034】
具体的な不織布の材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、エチレンプロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド及びポリアクリルから選択される1種又は2種以上の合成繊維;セルロース、シルク、コットン及びウールから選択される1種又は2種以上を含む天然繊維;あるいはこれらを複合した繊維を用いることができる。
【0035】
通気性シートとしては、樹脂製の多孔質シートや通気穴を有する樹脂製のシートを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を使用することができる。その厚みは、5μm以上200μm以下が好ましい。樹脂製の多孔質シートとしては、具体的には、熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られたものであり、微細な多孔質構造になっているものや、通気穴を有する樹脂製のシートとしては非通気性シートや難通気性シートに針等で微細穴を設けたものや、あるいは前述の通気性シートに更に針等で微細穴を設けたものが好ましい。
【0036】
難通気性シートとしては、実質的に酸素を透過しないものであればよく、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニリデン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフォン及びポリアミドから選択される1種又は2種以上を使用することができる。その厚みは、5μm以上200μm以下が好ましい。
【0037】
第1袋体シート11a及び第2袋体シート11bの坪量は、本発明の効果を十分発揮させる点及び保温・使用時の温感・使用感から、肌等の適用部位から遠い側の第2袋体シート11bが適用部位に近い側の第1袋体シート11aと同じか又はそれよりも小さい方が好ましい。
【0038】
第1袋体シート11a及び第2袋体シート11bの通気性は、本発明の効果を十分発揮させる点及び良好な発熱特性を奏させる観点から、肌に遠い側の第2袋体シート11bが肌に近い側の第1袋体シート11aと同じか又はそれよりも低い方が好ましい。
【0039】
図1には、第1袋体シート11aと、第2袋体シート11bとの周縁部をシールすることで袋体11を構成する例を示す。第1袋体シート11a及び第2袋体シート11bは同種のものでもよく、あるいは異種のものでもよい。第1袋体シート11a及び第2袋体シート11bのどちらか一方を通気性にしてもよいし、両方を通気性としてもよい。両方を通気性とする場合、どちらか一方をもう片方よりも通気性の低いものとしてもよい。
【0040】
温熱具1の賦香に用いられる香料組成物は、1−(5,5−ジメチルシクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン(Firmenich商品名:ダイナスコン)及び2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オン(登録商標:Claritone)から選択される1種又は2種のケトン系香料(第1香料成分)を含有する。第1香料成分の含有量は、使用時に香り立ちがよい観点から、香料組成物全体に対して1質量%以上であるが、1.1質量%以上が好ましく、より好ましくは3.1質量%以上であり、保存中に香調を維持できるという観点から、15質量%以下であるが、14.8質量%以下が好ましく、13.5質量%以下がより好ましい。また、1〜15質量%であるが、1.1〜14.8質量%が好ましく、3.1〜13.5質量%がより好ましい。
【0041】
香料組成物中、第1香料成分として、少なくとも1−(5,5−ジメチルシクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン又は2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オンのいずれか一方を含めばよいが、これら2種のケトン系香料を含むことが好ましい。
【0042】
使用時において香りを持続させる観点から、1−(5,5−ジメチルシクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オンの含有量は、香料組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.75質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。また、0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.75質量%以下がより好ましく、0.1〜0.5質量%が更に好ましい。
【0043】
2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オンの含有量は、香料組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは14質量%以下であり、更に好ましくは13質量%以下である。また、1〜15質量%が好ましく、2〜14質量%がより好ましく、3〜13質量%が更に好ましい。
【0044】
香料組成物に含有する第1香料成分に対する、発熱部10中の活性炭の質量比(活性炭/第1香料成分)は、保存中の質的な香りの変化を抑制し、発熱を良好に保つという観点から、10以上が好ましく、より好ましくは13.5以上であり、更に好ましくは18以上であり、保存中の量的な香りの変化を抑えつつ、香りの変化による質的な香りの変化を抑制する観点から800以下であることが好ましく、720以下であることがより好ましく、540以下であることが更に好ましい。上記活性炭/第1香料成分の質量比は、10〜800とすることが好ましく、より好ましくは、13.5〜720であり、18〜540が更に好ましい。
【0045】
温熱具1の賦香に用いられる香料組成物は、テルペン系炭化水素及び芳香族アルコールから選択される1種又は2種以上の第2香料成分を更に含む。テルペン系炭化水素及び芳香族アルコールから選択される1種又は2種以上の第2香料成分は、香料組成物全体に対して多量に含有されると、保存により香りが変質するものであるが、本発明では第1香料成分を併用することで、香料組成物中に第2香料を多量に含有させることが可能となった。すなわち、第2香料成分の含有量は、香料組成物全体に対して、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、更に好ましくは60質量%以上であり、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、更に好ましくは75質量%以下である。また、55〜85質量%が好ましく、55〜80質量%がより好ましく、60〜75質量%が更に好ましい。
【0046】
第1香料成分に対する第2香料成分の質量比(第2香料成分/第1香料成分)は、5以上90以下が好ましい。
【0047】
テルペン系炭化水素としては、ミルセン、ファルネセン、シトラール等の鎖状テルペン系炭化水素;ピネン、リモネン、α−テルピネン、カンフェン、フェランドレン、ターピネン、ターピノレン、p-サイメン、セドレン、カリオフィレン等の環状テルペン系炭化水素を用いることができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができるが、少なくともリモネンを含むことが好ましい。リモネンの含有量は、第2香料成分全体に対して、80質量%以上85質量%以下が好ましい。
【0048】
また、芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、パンプルフルール(2−メチル−4−フェニルペンタノール)、ジメチルベンジルカルビノール及びフェニルヘキサノール(3−メチル−5−フェニルペンタノール)から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0049】
また、香料組成物中に、第2香料成分として精油を含んでいてもよい。精油には、柑橘類の精油が挙げられる。柑橘類の精油は、ミカン科の果皮から得られるものであり、中でもリモネンを主成分とする柑橘類の精油が好ましい。柑橘類の精油は、香料組成物中、例えば10質量%以上20質量%以下含むことができる。
【0050】
香料組成物には、更に、鎖状モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、モノテルペンアルコール若しくは脂環式アルコールの酢酸エステル類、ジヒドロジャスモン酸メチル、ヨノン及びダマスコンから選択される1種又は2種以上の香料(第3香料成分)を含んでいてもよい。これにより香り立ちが更によくなり、また保存中の香りの変化を抑制することができる。
【0051】
第3香料成分のうち、鎖状モノテルペンアルコール類としては、例えば、ゲラニオール、シトロネロール、リナロール、ジヒドロリナロール、エチルリナロール、ネロール及びミルセノールから選択される1種又は2種以上を用いることができる。また、これら化合物を含有する精油を用いることもできる。
【0052】
セスキテルペンアルコール類としては、ファルネソールやネロリドール等の鎖状のセスキテルペンアルコール類、及び、サンタロール、セドロール、ベチベロール(混合体)、パチュリアルコール等の環状のセスキテルペンアルコール類から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
酢酸エステル類としては、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸エチルリナリル、酢酸ラヴァンジュリル、酢酸メンタニル等のモノテルペンアルコールの酢酸エステル類、及び、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシル、酢酸p−tert−ブチルシクロヘキシル等の脂環式アルコールの酢酸エステル類の1種又は2種以上が用いられる。
【0054】
第3香料成分は、香料組成物への配合量が少量でもその効果が発揮され、第2香料成分の含有量よりも少ないことが好ましい。香料組成物中の第3香料成分の含有量は10質量%以上が好ましく、20質量%以下が好ましい。
【0055】
第3香料成分に対する第2香料成分の質量比(第2香料成分/第3香料成分)は、3以上10以下が好ましい。
【0056】
香料組成物には、上記第1、第2、及び第3香料成分に加え、例えば「合成香料 化学と商品知識」(印藤元一著 化学工業日報社)に記載の香料成分を、本発明の効果を妨げない範囲で配合することもできる。また、温熱具1の賦香に用いられる香料組成物は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、溶剤を含むことができる。溶剤としては、ジプロピレングリコール、エチルジグリコール、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート及びジエチルフタレートの1種又は2種以上を用いることができる。
【0057】
香料組成物の使用量は、その種類や温熱具1の具体的な用途等に応じ適切に選定することができる。香料組成物の種類にもよるが、一般的な範囲として、発熱部10の被酸化性金属100質量部に対して、0.005質量部以上が望ましく、0.007質量部以上がより好ましく、0.06質量部以下が好ましく、0.045質量部以下が更に好ましい。また、0.005〜0.06質量部が好ましく、0.007〜0.045質量部がより好ましい。
【0058】
温熱具1を賦香する方法は、香料組成物が液体である場合は、温熱具1に対して香料組成物をスプレー等で直接添加する方法がある。また、シート材料や粉体や油脂の担体等に賦香して、賦香シートや粉末香料やペースト状の賦香物とし、温熱具1に添加する方法もある。香料組成物が固体である場合は、温熱具1に対して香料組成物を適宜添加する方法がある。
【0059】
香料組成物は、発熱部10と袋体11との間に施されていることが製品管理上好ましい。香料組成物を発熱部10と袋体11との間に施す具体的な方法としては、例えば、袋体11の内側面に香料組成物を直接含浸させてもよいし、
図1で示すように香料組成物にてシート材料を賦香してなる賦香シート13を間に配置して施してもよいし、粉体や油脂の担体に賦香して得られた粉末香料やペースト状の賦香物をシート状にして間に施してもよい。賦香シート13を用いた場合は、具体的には、袋体11の内側面に隣接して配置することで施してもよいし、賦香シート13を接着剤により袋体11の内側面に接着して施してもよい。ここで、本明細書において「隣接して配置」とは、近くにあるが必ずしも接触していない状態、すなわち接触していてもしていなくても良い状態を意味する。
【0060】
賦香シート13は、紙、不織布、織布等の繊維材料を含むシート材料や、多孔質性フィルム等、吸湿・吸油性を有するシート材料を含むことが好ましい。その材質は、例えば、シルク、コットン、ウール、セルロースの中でも木材パルプを主たる原料とする一般的な紙等の天然繊維や、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル等の合成繊維とすることができる。中でも、紙等のセルロースを含有する天然繊維、例えば吸水紙が、保存中の香りの変化を効果的に抑制させることができ、製造直後と同等の良好な香りを呈すると共に、軽量化を図ることが可能な点で好ましい。
【0061】
袋体11内において、発熱部10は、
図1で示すように、収容体12に収容されていてもよい。収容体12は少なくとも一部に通気性を有する。
図1で示す例では、具体的には、収容体12は、第1収容体シート12aと第2収容体シート12bとの周縁部を互いに接合して形成された形状を有している。収容体12は、接合した周縁部よりも内側の部分において非接合状態になっており、それによって、発熱部10を収容する単一の空間が形成されている。
【0062】
本発明では、第2収容体シート12bの通気度を、第1収容体シート12aの通気度よりも大きくすることもできる。これにより、発熱部中の活性炭の香料組成物への影響を一層抑制することが可能になる。すなわち、第2収容体シート12bの通気度を第1収容体シート12aの通気度の2倍以上、更に5倍以上、特に10倍以上とすることが好ましい。
なお、通気度はJIS P8117によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.42cm
2の面積を通過する時間で定義される。
【0063】
第1収容体シート12aは、空気及び水蒸気の透過が可能なように通気性を有していてよい。一方、第2収容体シート12bは、第1収容体シート12aよりも難通気性であるか、又は非通気性であってよい。第2収容体シート12bが難通気性である場合、該第2収容体シート12bの通気度を、5,000秒以上とすることが好ましく、10,000秒以上とすることが更に好ましく、20,000秒以上とすることが一層好ましく、30,000秒以上とすることが更に一層好ましい。一方、第1収容体シート12aの通気度は、第2収容体シート12bが非通気性であるか又は難通気性であるかを問わず、1,000秒以上50,000秒以下であることが好ましい。
【0064】
第1収容体シート12a及び第2収容体シート12bの具体的な材料としては、通気度を支配しかつ粉体の漏れ出しを防止する等の点で、メルトブローン不織布や透湿性フィルムが好適に用いられる。なお、透湿性フィルムとしては、例えば熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られた微細な多孔質構造を有するものを用いることができる。なお、前述の袋体11に用い得る通気性シートや難通気性シートであっても良い。第1収容体シート12a及び第2収容体シート12bは、1枚のシート材から構成されていてもよいし、複数のシート材の積層体から構成されていてもよい。
【0065】
発熱部10が、
図1で示すように、成形シート10aと保水シート10bとを備える場合、使用時の軽快さを向上させると共に十分な温熱効果を付与する観点から、肌等の適用部位から遠い側、具体的には、第2収容体シート12b側に保水シート10bを配置させることが好ましい。
【0066】
香料組成物は、前述のとおり、発熱部10と袋体11との間に施されていると好ましいが、収容体12と袋体11との間に施されているとより好ましい。香料組成物と発熱部10との間に第2収容体シート12bが介在すると、香料組成物と発熱部10との距離が遠くなるため、活性炭の影響を物理的に抑制することができる。
【0067】
香料組成物を収容体12の外側面に施す具体例としては、収容体12の外側面のシートに香料組成物を直接塗布してもよい。なお、収容体12の外側面のシートを賦香シートと同等のものとし、このシートに香料組成物を施してもよい。すなわち、接着剤や熱融着等の方法を用いて第2収容体シート12bの外側面に賦香シートと同等のシートを積層し、収容体12の外側面のシートを賦香シートと同等のものとしてもよい。これにより、シートによる温度阻害をもたらさず十分な温熱効果を付与することができるとともに、賦香が容易であり、香料組成物の香り立ちが極めて高くなり、香りの変化を一層効果的に抑制することも可能となる。賦香シート13を用いた場合は、図示するように収容体12に隣接して配置することが好ましい。なお、前述のとおり、本明細書において「隣接して配置」とは、近くにあるが必ずしも接触していない状態、すなわち接触していてもしていなくても良い状態を意味する。
【0068】
第1収容体シート12aを肌等の適用部位に近い側に位置するものとし第2収容体シート12bを適用部位から遠い側に位置するものとした場合、賦香シート13を、適用部位から遠い側に位置する第2収容体シート12b側の外側面に配するあるいは外側面に施すことにより、使用時の軽快さを向上させると共に十分な温熱効果を適用部位に付与し、同時に良好な香り立ちを達成することが可能である。
【0069】
温熱具1は、その使用前は、その全体が酸素バリア性を有する包装材(図示せず)で密封されることが好ましい。
【0070】
温熱具1によれば、1−(5,5−ジメチルシクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン及び2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オンから選択される1種以上のケトン系香料を香料組成物全体に対して1質量%以上15質量%以下含む香料組成物により賦香されているため、使用時における香り立ちがよく、かつ、香りの安定性に優れ、保存により香調の変化の少ない温熱具となる。また、温熱具1は発熱特性の観点からも優れている。
【0071】
温熱具1のより具体的な一例として、蒸気温熱具100について以下に説明する。
図2には、蒸気温熱具100の平面図が示されている。この蒸気温熱具100は、いわゆるアイマスクタイプのものであり、ヒトの目及びその周囲に当接させて、所定温度に加熱された水蒸気(以下、「蒸気温熱」とも言う。)を目及びその周囲に付与するために用いられるものである。この蒸気温熱具100は前述の第1香料成分及び第2香料成分を含有する香料組成物に賦香されている。
【0072】
蒸気温熱具100は、本体部101と、耳が挿入される孔104が形成された耳掛け部102とを有している。本体部101は、長手方向Xとこれに直交する幅方向Yを有する横長の形状をしている。本体部101は略長円形をしている。耳掛け部102は一対で用いられ、各耳掛け部102は本体部101の長手方向(X方向)の各端部にそれぞれ取り付けられている。蒸気温熱具100は、各耳掛け部102を着用者の耳に掛けて、本体部101を着用者の両目を覆うように装着される。この着用状態下、蒸気温熱具100から発生した蒸気温熱が着用者の目に施され、また香気成分が揮散し、それらによって目の疲れや充血、眼精疲労が緩和され、またリラックス感が得られる。更に入眠感も誘発される。
【0073】
図3には、蒸気温熱具100の分解斜視図が示されている。同図においては、耳掛け部102は本体部101上に配置されている。また
図4には、蒸気温熱具100のX方向に沿う断面図が示されている。蒸気温熱具100の本体部101は、発熱部121と、該発熱部121を収容する袋体110とを有する。発熱部121は、少なくとも一部に通気性を有する収容体122内に収容されて発熱体120を構成している。発熱部121は
図1の発熱部10に対応し、袋体110が
図1の袋体11に対応する。
【0074】
発熱部121は、発熱部11と同じ態様である。すなわち、発熱部121は、被酸化性金属、活性炭及び水を少なくとも含むが、さらに反応促進剤を含むことが好ましい。発熱部121は一層であっても積層構造であってもよいし、
図1で示すような二層構造であってもよい。
【0075】
蒸気温熱具100の賦香に用いられる香料組成物は、
図1の温熱具1で使用しうる香料組成物と同様であり、香料組成物全体に対して1質量%以上15質量%以下の第1香料成分及び第2香料成分を含有するものであればよい。これにより、使用時に蒸気温熱を発生させるとともに柑橘の芳香を呈する蒸気温熱具100にすることができる。第2香料成分は、香料組成物中に55質量%以上85質量%以下含むことが好ましい。
【0076】
蒸気温熱具100では、袋体110は、着用者の肌に近い側に位置する第1袋体シート110aと、着用者の肌から遠い側に位置する第2袋体シート110bとを有している。
【0077】
第2袋体シート110bは、内部が透けて見えてしまうことを防止する観点や保温の観点から少なくとも一部が坪量20g/m
2以上200g/m
2以下のシートであると好ましく、特に第2袋体シート110bの全部が坪量20g/m
2以上200g/m
2以下のシートであることがより好ましい。
【0078】
また、第1袋体シート110aも第2袋体シート110bと同様の理由から少なくとも一部が坪量20g/m
2以上200g/m
2以下であるとよく、第1袋体シート110aの全部が坪量20g/m
2以上200g/m
2以下のシートであることがより好ましい。
【0079】
使用時の温感及び使用感を高める観点から、坪量は、肌に遠い側の第2袋体シート110bが肌に近い側の第1袋体シート110aと同じか又はそれよりも小さい方が好ましい。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bの厚み、構成繊維の太さは、適切に選択すればよい。
【0080】
第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bは同形であり、略長円形をしている。そして、第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bの外形が本体部101の外形をなしている。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bはそれらを重ね合わせ、それらの周縁部を接合し、かつX方向の中央部をY方向に沿って接合することで(
図3の点々部分)、内部に2つの空間を有する袋体110となされる。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bを接合するためには、例えばホットメルト接着剤を用いることができる。
【0081】
袋体110には、そのX方向に延びる2つの長辺の中央部の位置において、該長辺からY方向に沿って内方に切れ込んだ略V字形のノッチ部113a,113bが形成されている。ノッチ部113aは、蒸気温熱具100を装着したときに、着用者の眉間又はその近傍に位置する。ノッチ部113bは、蒸気温熱具100を装着したときに、着用者の鼻梁に位置する。したがって、ノッチ部113aよりもノッチ部113bの方が切れ込みの程度が大きくなっている。なお、
図2に示すノッチ部113a,113bは、それらの少なくとも一方がスリットであってもよい。
【0082】
図3、4には、発熱部121が、少なくとも一部に通気性を有する収容体122内に収容されて発熱体120を構成したものが、更に袋体110に収容された蒸気温熱具100の例を図示する。この例では、具体的には、収容体122は、第1収容体シート122aと第2収容体シート122bとの周縁部を互いに接合して形成された形状を有している。収容体122は、接合した周縁部よりも内側の部分において非接合状態になっており、それによって、発熱部121を収容する単一の空間が形成されている。収容体122が
図1の収容体12に対応し、具体的には、第1収容体シート122aが
図1の第1収容体シート12aに対応し、第2収容体シート122bが第2収容体シート12bに対応する。
【0083】
香料組成物は、発熱部121と袋体110との間に施されていると好ましく、袋体110の内側から前記発熱部までの間に施されているとより好ましく、収容体122の外側面に施されていると更に好ましく、中でも第2収容体シート122bの外側面に施されていると殊更に好ましい。香料組成物と発熱部121との間に第2収容体シート122bが介在すると、香料組成物と発熱部121との距離が遠くなるため、活性炭の影響を物理的に抑制することができる。
【0084】
香料組成物を収容体122の外側面に施す具体例としては、収容体122の外側面のシートに香料組成物を直接塗布してもよい。なお、収容体122の外側面のシートを賦香シートと同等のものとし、このシートに香料組成物を施してもよい。すなわち、接着剤や熱融着等の方法を用いて第2収容体シート122bの外側面に賦香シートと同等のシートを積層し、収容体122の外側面のシートを賦香シートと同等のものとしてもよい。これにより、シートによる温度阻害をもたらさず十分な温熱効果を付与することができるとともに、賦香が容易であり、香料組成物の香り立ちが極めて高くなり、香りの変化を一層効果的に抑制することも可能となる。賦香シート130は、賦香シート13と同じ態様である。賦香シート130を用いた場合は、具体的には、袋体110の内側面に隣接して配置することで施してもよいし、賦香シート130を接着剤により袋体110の内側面に接着して施してもよい。前述のとおり、本明細書において「隣接して配置」とは、近くにあるが必ずしも接触していない状態、すなわち接触していてもしていなくても良い状態を意味する。
【0085】
香料組成物を袋体110の内側から発熱体120の間に施す他の具体例としては、例えば、粉体や油脂の担体に賦香して得られた粉末香料やペースト状の賦香物をシート状にして間に施してもよいし、
図4で示すように香料組成物にてシート材料を賦香してなる賦香シート130を間に配置して施してもよいし、袋体110の内側面に香料組成物を直接塗布してもよい。
【0086】
第1収容体シート122aを着用者の肌に近い側に位置するものとし第2収容体シート122bを着用者の肌から遠い側に位置するものとした場合、賦香シート130を着用者の肌から遠い側に位置する第2収容体シート122b側の外側面に配するあるいは外側面に施すことにより、使用時の軽快さを向上させると共に十分な温熱効果を着用者の肌へ付与し、同様に良好な香り立ちを達成することが可能である。
【0087】
第1収容体シート122a及び第2収容体シート122bの具体的な材料としては、第1収容体シート12a、第2収容体シート12bと同様なものを選択することができる。また、第1収容体シート122a及び第2収容体シート122bの通気度は、第1収容体シート12a、第2収容体シート12bと同様に設定することができる。
【0088】
図4には、袋体110と発熱体120との固定の状態が示されている。発熱体120は、第2袋体シート110bの内側面と、第2収容体シート122bの外側面とが固定部103a、103bにより接続されることで、発熱体120が袋体110の内部に固定される。固定部103a、103bは、例えば、接着剤やヒートシール等とすることができる。
【0089】
蒸気温熱具100における耳掛け部102は、その使用前の状態では、
図3及び
図4に示すように、本体部101における第1袋体シート110a上に配置されている。蒸気温熱具100を使用するときには、
図2に示すように、耳掛け部102をX方向の外方へ向けて反転させて、開いた状態にする。使用前の状態、すなわち左右の耳掛け部102が本体部101上に位置している状態においては、左右の耳掛け部102によって形成される輪郭は、本体部101の輪郭とほぼ同じになっている。
【0090】
本実施形態の蒸気温熱具100は、その使用前は、その全体が酸素バリア性を有する包装材(図示せず)によって包装されて、発熱部121が空気中の酸素と接触しないようになっている。この包装材を構成するフィルムは特に限定されないが、具体的にはアルミニウム等の金属フィルムや、ポリプロピレン等のポリオレフィン、PET、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂フィルム、又はこれらの合成樹脂フィルムにセラミック若しくはアルミニウム等を蒸着したフィルムが挙げられる。また、包装材は、酸素透過係数(ASTM D3985)が好ましくは10cm
3・mm/(m
2・day・MPa)以下、より好ましくは2cm
3・mm/(m
2・day・MPa)以下であるものを用いることができる。
【0091】
図5には、蒸気温熱具100の別の例として、蒸気温熱具200を示す。蒸気温熱具100は、袋体の内側から発熱部までの間に、特に収容体の外側面に香料組成物が施された例を挙げたが、蒸気温熱具200では、袋体110の内側から発熱体220までの間に、特に収容体の外側に別途配されたシート材料に香料組成物が施された例を示す。具体的には、
図5に示す蒸気温熱具200においては、袋体110の内側から発熱体220までの間に、賦香シート230が配されている。特に、袋体110における第2袋体シート110bと、発熱体220との間に、賦香シート230が隣接して配置されていると好ましい。賦香シート230には、前述の第1香料成分及び第2香料成分を含有する香料組成物が施されており、香料組成物中に第1香料成分の含有量は、香料組成物全体に対して1質量%以上15質量%以下である。
【0092】
賦香シート230は、第2袋体シート110b及び発熱体220の収容体222と非接着状態になっており、隣接して配置された状態である。あるいは第2袋体シート110bと、位置ずれが起こらない程度に軽度に接着されている。賦香シート230を構成するシート材料としては、収容体222と同形でもよく、あるいは収容体222よりも小さな形状のものでもよい。中でも、発熱部221と同じ形状であると、発熱による香りの揮散が効率的で好ましい。
【0093】
発熱部221は、発熱部10と同じ態様である。発熱部221は一層であっても積層構造であってもよいし、
図1で示すような二層構造であってもよい。
【0094】
発熱体220は、固定部203により袋体110に固定されている。上記説明した以外は、蒸気温熱具200は蒸気温熱具100と同様であり、蒸気温熱具100と同様な効果を得ることができる。例えば、第1収容体シート222aは第1収容体シート122aに対応し、第2収容体シート222bは第2収容体シート122bに対応する。
【0095】
なお、蒸気温熱具100及び蒸気温熱具200は、着用者の両目に当接させて使用するアイマスクを例に挙げて説明したが、これに代えて、これを着用者の身体、例えば肩、腰、肘、膝等に当接させて用いてもよい。あるいは衣類に貼り付けて用いてもよい。蒸気温熱具100を着用者の身体に当接させる場合には、耳掛け部102に代えて、粘着剤等の固定手段を設ければよい。すなわち、着用者の身体に当接させて用いる場合には、袋体110における第1袋体シート110aの表面に、粘着剤等の固定手段を設ければよく、着用者の衣類に貼り付けて用いる場合には、袋体110における第2袋体シート110bの表面に、粘着剤等の固定手段を設ければよい。
【0096】
蒸気温熱具100、200によれば、1−(5,5−ジメチルシクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン及び2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オンから選択される1種又は2種のケトン系香料(第1香料成分)を香料組成物全体に対して1質量%以上15質量%以下含み、更にテルペン系炭化水素及び芳香族アルコールから選択される1種又は2種以上の香料成分(第2香料成分)を含む香料組成物により賦香されているため、使用時における香り立ちがよく、香りの安定性に優れ、保存による香調の変化の少ない温熱具となる。従来、テルペン系炭化水素や芳香族アルコールは香りの安定性が低いため温熱具等香料の安定性に悪影響を及ぼすものに対して含有させることは難しいことを、本発明者らは知見した。特に、テルペン系炭化水素や芳香族アルコール等の香料成分を多量に含む場合、課題が大きいことを知見した。しかしながら、上記特定のケトン系香料を所定範囲含ませることにより、香料組成物中に55質量%以上のテルペン系炭化水素及び芳香族アルコールから選択される1種又2種以上の第2香料成分を含有させた場合においても、保存後も香り立ちがよい蒸気温熱具となる。また、蒸気温熱具100、200は発熱特性の観点からも優れている。
【0097】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の態様を含む。
【0098】
<1>被酸化性金属、活性炭及び水を備える発熱部と、少なくとも一部が通気性であり、前記発熱部を収容する袋体と、を有する温熱具であって、該温熱具は、1−(5,5−ジメチルシクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン及び2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オンから選択される1種又は2種の第1香料成分、並びに、テルペン系炭化水素及び芳香族アルコールから選択される1種又は2種以上の第2香料成分を含有する香料組成物にて賦香されており、前記香料組成物中の前記第1香料成分の含有量が、該香料組成物全体に対して1質量%以上15質量%以下である、温熱具である。
【0099】
<2>前記第2香料成分は、好ましくは、ミルセン、ファルネセン、シトラール、ピネン、リモネン、α−テルピネン、カンフェン、フェランドレン、ターピネン、ターピノレン、p-サイメン、セドレン、カリオフィレン、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、パンプルフルール(2−メチル−4−フェニルペンタノール)、ジメチルベンジルカルビノール及びフェニルヘキサノール(3−メチル−5−フェニルペンタノール)から選択される1種又は2種以上であり、より好ましくは、前記第2香料成分として少なくともリモネンを含む前記<1>に記載の温熱具。
<3>香料組成物中の前記第2香料成分の含有量が、該香料組成物全体に対して55質量%以上85質量%以下であり、好ましくは60質量%以上75質量%以下である前記<1>又は<2>に記載の温熱具。
<4>前記香料組成物中の前記第1香料成分の質量に対する、前記発熱部中の前記活性炭の質量比が、10以上800以下であり、好ましくは13.5以上720以下であり、より好ましくは18以上540以下である前記<1>〜<3>いずれか1に記載の温熱具。
<5>前記香料組成物が、前記袋体の内側から前記発熱部までの間に施されている、請求項前記<1>〜<4>いずれか1に記載の温熱具。
<6>前記発熱部が、少なくとも一部に通気性を有する収容体内に収容されて発熱体を構成しており、前記袋体の内側から前記発熱部までの間に、前記香料組成物が施されている前記<5>に記載の温熱具。
<7>前記香料組成物が、前記収容体の外側面に施されている前記<6>に記載の温熱具。
<8>前記香料組成物が、賦香シートにて施されている前記<1>〜<7>いずれか1に記載の温熱具。
<9>前記賦香シートが、前記香料組成物をシート材料に施したものである前記<8>記載の温熱具。
<10>前記シート材料が、セルロースを含有するものである前記<9>記載の温熱具。
<11>前記発熱部は、前記被酸化性金属の酸化に伴い水蒸気を発生するものである前記<1>乃至<10>いずれか1に記載の温熱具。
<12>着用者の両目に当接させて使用する前記<1>乃至<11>いずれか1に記載の温熱具の使用方法。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0101】
実施例1〜3、比較例1、2
図2ないし
図4に示す構造の蒸気温熱具を以下の(1)ないし(3)の手順で作製した。
(1)シート状発熱部の作製
<原料組成物配合>
・被酸化性金属:鉄粉、同和鉱業株式会社製、商品名「RKH」:83%
・繊維状物:パルプ繊維(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名 NBKP「Mackenzi(CSF200mlに調整)」):8%
・活性炭:平均粒径45μm、(日本エンバイロケミカル株式会社製、商品名「カルボラフィン」):9%
【0102】
前記原料組成物の固形分(被酸化性金属、繊維状物及び活性炭の合計)100部に対し、カチオン系凝集剤であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.7部及びアニオン系凝集剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、商品名「HE1500F」)0.18部を添加した。更に、水(工業用水)を、固形分濃度が12%となるまで添加しスラリーを得た。
【0103】
<抄造条件>
前記スラリーを用い、これを抄紙ヘッドの直前で0.3%に水希釈し、傾斜型短網抄紙機によって、ライン速度15m/分にて抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
【0104】
<乾燥条件>
湿潤状態の成形シートをフェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま140℃の加熱ロール間に通し、含水率が5%以下になるまで乾燥した。乾燥後の坪量は450g/m
2、厚さは0.45mmであった。このようにして得られた成形シートの組成を熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて測定した結果、鉄83%、活性炭9%、パルプ8%であった。
【0105】
<シート状発熱部の作製>
得られた成形シートに、該成形シート100部に対し電解液量が42部となるように、下記電解液を注入した。毛管現象を利用して成形シート全体に電解液を浸透させて、矩形シート状の発熱部(坪量:450g/m
2、寸法49mm×49mm)を得た。
【0106】
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5%
【0107】
(2)発熱体の作製
収容体における第1収容体シートを、炭酸カルシウムを含む多孔質の延伸ポリエチレン透湿性フィルム(JIS P8117による通気度2,500秒)から構成した。第2収容体シートは、ポリエチレン製の非透湿フィルムから構成した。該第2収容体シートの一面に吸水紙(坪量35g/m
2)を積層して、上述のシート状発熱部の1枚を間にして、第1収容体シートと第2収容体シートとを、吸水紙が外方を向くように重ね、周縁部においてシートどうしを接合し、矩形の発熱体を得た。そして吸水紙に、以下の表1に示す香料組成物を含浸させた。香料組成物の含浸量は、発熱部の固形分量1.08gに対して18mgとした。
【0108】
(3)蒸気温熱具の作製
第1袋体シートは、ポリプロピレン不織布(ニードルパンチ法、坪量80g/m
2)、第2袋体シートは、ポリエチレンテレフタレート不織布(エアスルー法、坪量30g/m
2)を用い、
図3に示すように、両袋体シートの間に、前記で得られた発熱体を2個挟み、周縁部及び縦中心線近傍において第1袋体シート、第2袋体シートどうしを接合した。更に、第1袋体シートの外側面に、
図2に示すように不織布製の耳掛け部を取り付け、目的とする蒸気温熱具を得た。以上の各操作は、酸素が存在しない雰囲気下で行った。
【0109】
表1に示す実施例、比較例の各香料組成物をそれぞれ上述の方法で賦香した後、得られた蒸気温熱具を、第1袋体シートが内側になるように縦中心線Lで二つに折り畳み、酸素バリア性を有する袋(PET13μm/アルミニウム7μm/ポリプロピレン40μmの積層フィルム)の中に密閉封入し、香料成分の安定化のため一晩放置した。なお、第1香料成分に対する活性炭の質量比(活性炭/第1香料成分)を表1に示した。
【0110】
【表1】
【0111】
表1に示す評価は以下のように行った。
〔評価〕
1)香り強度
一晩放置した蒸気温熱具(これを賦香直後の蒸気温熱具という)、及び、50℃の恒温槽で1ヶ月間保存した蒸気温熱具の2種類について、個装容器(ピロー)を開封して、蒸気温熱具の発熱及び水蒸気発生を開始させ、開封から5分後における香りの強さについて以下の基準で評価した。
匂いの専門パネル2名に、各実施例及び各比較例の一晩放置したものと(これを賦香直後の蒸気温熱具という)、50℃の恒温槽で1ヶ月間保存したものの2種類について、ピローを開封して5分後の香りをそれぞれ嗅がせ、「香りの強度」について1〜5までの5段階絶対評価を行わせ、平均した結果を表1に示した。
<香りの強度の評価基準:5段階絶対評価>
1:強度がかなり不足
2:強度が不足
3:強度が必要レベルに達している
4:強度がある
5:強度が十分にある
【0112】
2)柑橘香の特徴
一晩放置した蒸気温熱具、及び、50℃の恒温槽で1ヶ月間保存した蒸気温熱具の2種類について、ピローを開封して、蒸気温熱具の発熱及び水蒸気発生を開始させ、開封から5分後における柑橘類(シトラス)の香りについて以下の基準で評価した。
<柑橘類の香りの評価基準:5段階絶対評価>
1:柑橘香の特徴がかなり乏しい
2:柑橘香の特徴がない
3:柑橘香の特徴が必要レベルに達している
4:柑橘香の特徴がある
5:柑橘香の特徴が十分にある
【0113】
3)最高温度
JIS S4100に準拠した測定機を用いて、蒸気温熱具の第1の袋体シート側を測定面に貼り付けて、発熱測定を行った。表1中の単位は「℃」である。
【0114】
比較例1の蒸気温熱具は賦香直後から香り強度及び柑橘香の特徴が低く、保存後においては香り強度がかなり不足し柑橘香の特徴も乏しかったのに対し、実施例1〜3の蒸気温熱具は、賦香直後及び保存後のいずれにおいても、香り強度及び柑橘香の特徴ともに良好だった。比較例2の蒸気温熱具は第1香料成分が多すぎて賦香直後及び保存後のいずれにおいても柑橘香の特徴がかなり乏しく、保存後の発熱特性の低下が見られた。