特許第5945167号(P5945167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5945167基礎施工方法、太陽光発電パネル施工方法及び建物施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945167
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】基礎施工方法、太陽光発電パネル施工方法及び建物施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20160621BHJP
   E02D 27/50 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   E02D27/01 Z
   E02D27/50
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-130759(P2012-130759)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-253445(P2013-253445A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】508057069
【氏名又は名称】石原 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126697
【弁理士】
【氏名又は名称】池岡 瑞枝
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(72)【発明者】
【氏名】石原 宏明
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−019648(JP,A)
【文献】 特開2008−308945(JP,A)
【文献】 実開平04−053838(JP,U)
【文献】 特開平01−066315(JP,A)
【文献】 特開平05−039613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01−27/08
E02D 27/50
E02D 5/22−5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に対して基礎を施工するための基礎施工方法であって、
地面における基礎施工予定箇所から少なくとも一の方向へ溝を掘る溝掘り工程と、
前記溝の底部に沿って帯状又は面状のアンカーシートを敷設するアンカーシート敷設工程と、
基礎施工予定箇所にコンクリートを打設することにより基礎を構築し、該基礎内にアンカーシートの一部を埋め殺すことによりアンカーシートを基礎と一体化させる基礎構築工程と、
前記溝を埋める溝埋め工程と
を経ることにより地面に対して基礎を施工し、
施工された基礎の浮き上がり又は沈下をアンカーシートで防止することができるようにしたことを特徴とする基礎施工方法。
【請求項2】
アンカーシートとしてメッシュ状のものを使用する請求項1記載の基礎施工方法。
【請求項3】
溝埋め工程において前記溝を埋める土として土壌を固化する作用を有する土壌改良材が添加されたものを使用する請求項1又は2記載の基礎施工方法。
【請求項4】
溝掘り工程において前記溝の底部を波状に形成し、アンカーシート敷設工程においてアンカーシートを波状に敷設する請求項1〜3いずれか記載の基礎施工方法。
【請求項5】
アンカーシート敷設工程で敷設されたアンカーシートの中途部にアンカー杭を打ち込む請求項1〜4いずれか記載の基礎施工方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の基礎施工方法で施工された基礎の上部に太陽光発電パネルを取り付ける太陽光発電パネル施工方法。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか記載の基礎施工方法で施工された基礎の上部に建物を施工する建物施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に対して基礎を施工するための基礎施工方法と、該基礎施工方法を利用した太陽光発電パネル施工方法及び建物施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電を利用した太陽光発電所や太陽光発電設備などにおいては、図13に示すように、太陽光発電パネル50を、地面100に施工された基礎90に固定することが一般的となっている。図13は、従来の基礎施工方法で施工された基礎90の上部に太陽光発電パネル50を固定した状態を示した斜視図である。基礎90は、台風などの強風によって太陽光発電パネル50が煽られても太陽光発電パネル50が浮き上がることのないように、重量のある寸法の大きなものが施工される。
【0003】
しかし、このように基礎90の重量によって太陽光発電パネル50の浮き上がりを防止する方法では、基礎90の寸法を大きくしなければならず、大量のコンクリートが必要であった。このため、施工コストが嵩むばかりか、太陽光発電所の閉鎖などにより、太陽光発電パネル50を撤去する際には、基礎90に起因する大量の産業廃棄物が発生するものとなっていた。
【0004】
このほか、太陽光発電パネルを地面に設置する方法としては、錘を取り付けた架台を利用する方法(例えば特許文献1)や、水貯めが可能な容器構造を有するコンクリート製の基礎を利用する方法(例えば特許文献2)や、プレキャストコンクリートからなる盤状の基礎を利用する方法(例えば特許文献3)などがある。しかし、特許文献1のように、架台を利用する方法では、設置する太陽光発電パネルの寸法などによって異なる架台が必要となり、汎用性に課題がある。また、架台や錘を施工現場まで運んで組み立てる必要があり、運搬コストや施工コストの面でも課題がある。
【0005】
また、特許文献2のように、水溜め可能な容器構造を有する基礎を利用する方法は、軟弱地盤における不同沈下を防止することを目的としたものであり、通常の地盤においてこのような方法を採用しても得られる利益は少ない。加えて、そのような容器構造を有する基礎を構築するのにも大量のコンクリートを要することは変わらず、図13に示す方法と同様、施工コストが高くなるという欠点や、大量の産業廃棄物が発生するなどの欠点がある。さらに、特許文献3のように、プレキャストコンクリートからなる盤状の基礎を利用する方法も、大量のコンクリートを要するため、やはり、図13に示す方法と同様の欠点がある。加えて、特許文献1の方法と同様、運搬コストが高くなるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−156267号公報
【特許文献2】特開2011−047199号公報
【特許文献3】特開2012−059992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、コンクリートの使用量を抑えながらも、地面に対して強固に固定された基礎を施工し、その上部構造の浮き上がりや沈下を防止することのできる基礎施工方法を提供するものである。また、施工が容易で施工コストも安く、基礎の撤去時には産業廃棄物の発生を抑えることのできる基礎施工方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
地面に対して基礎を施工するための基礎施工方法であって、
地面における基礎施工予定箇所から少なくとも一の方向へ溝を掘る溝掘り工程と、
前記溝の底部に沿って帯状又は面状のアンカーシートを敷設するアンカーシート敷設工程と、
基礎施工予定箇所にコンクリートを打設することにより基礎(通常、ブロック状の基礎)を構築し、該基礎内にアンカーシートの一部を埋め殺すことによりアンカーシートを基礎と一体化させる基礎構築工程と、
前記溝を埋める溝埋め工程と
を経ることにより地面に対して基礎を施工し、
施工された基礎の浮き上がり又は沈下をアンカーシートで防止することができるようにしたことを特徴とする基礎施工方法。
を提供することによって解決される。
【0009】
これにより、基礎に浮き上がる向きの力が加えられた場合であっても、基礎の重量だけでなく、アンカーシートが土から受ける摩擦力や、アンカーシートの上側に被せられた土の重量によって抵抗することが可能になる。したがって、基礎の重量を抑えて、使用するコンクリートの量を削減することも可能になる。よって、施工コストを削減することや、基礎を撤去する際などに生じる産業廃棄物の発生を抑えることも可能になる。また、基礎に沈む向きの力が加えられた場合であっても、やはり、アンカーシートが土から受ける抵抗力によって抵抗することが可能になる。さらに、その施工態様によっては、液状化現象による被害を抑えることも可能になる。さらにまた、本発明の基礎施工方法は、基礎底部が水平となるように転圧して構造物を造る必要はなく、アンカーシートを埋め込んで転圧するだけでよいので施工が容易である。
【0010】
本発明の基礎施工方法において、アンカーシートは、必要な強度と可撓性を有するものであれば特に限定されず、各種のものを用いることができる。具体的には、樹脂繊維や炭素繊維やガラス繊維や金属繊維などからなる編布、織布又は不織布などが例示される。アンカーシートは、地中に埋められるものであるため、耐水性や耐食性に優れたもの(耐水処理や耐食処理が施されたもの)であると好ましい。これらの条件を満たす素材としては、コンクリート用連続繊維補強材などが挙げられる。アンカーシートとしては、メッシュ状のものを使用すると好ましい。これにより、アンカーシートが土から受ける摩擦力をさらに増大させることが可能になる。アンカーシートは、溝に埋めるだけでもよいが、アンカーシート敷設工程で敷設されたアンカーシートの中途部にアンカー杭を打ち込むと好ましい。これにより、アンカーシートを地中で地盤に対して固定することが可能になる。
【0011】
本発明の基礎施工方法において、溝埋め工程において前記溝を埋める土は、通常の土(例えば、溝掘り工程で溝を掘る際に出た土)を用いてもよい。しかし、土壌を固化する作用を有する土壌改良材が添加されたものを使用すると好ましい。これにより、アンカーシートを地面下により強固に埋めることが可能になり、上述した浮き上がりや沈下をより確実に防止することが可能になる。このとき用いる土壌改良材としては、例えば、建築用途などで用いられるセメント系固化材などが好適に採用できる。土には、砂利などを添加してもよい。これにより、アンカーシートが土から受ける摩擦力や重力をさらに増大させることができる。
【0012】
本発明の基礎施工方法において、溝掘り工程において掘る溝の底部は、滑らかな形状としてもよいが、凹凸のある形状、すなわち波状に形成すると好ましい。このときは、アンカーシート敷設工程において、アンカーシートを波状に敷設する。これにより、アンカーシートが前記凹凸に引っ掛かるようになり、アンカーシートが土から受ける摩擦力をさらに増大させることが可能になる。
【0013】
本発明の基礎施工方法で施工された基礎は、その用途を限定されるものではなく、各種用途に採用することができ、その上部には各種の機器や構造体を取り付けることができる。例えば、太陽光発電パネルを取り付けることができる。太陽光発電パネルは、その下面に風を受けた際にそれが浮き上がる向きに力が加わりやすいため、それを固定する基礎を地面に強固に固定する必要がある。また、大規模な太陽光発電所などでは、多数枚の太陽光発電パネルを設置するために、施工コストを削減することにより得られる利益が大きい。このため、本発明の基礎施工方法を採用する意義が深まる。このほか、本発明の基礎施工方法で施工された基礎には、カーポートの脚などを固定することもできる。また、その上部に建物やフーチングや擁壁などを構築することもできる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、コンクリートの使用量を抑えながらも、地面に対して強固に固定された基礎を施工し、その上部構造の浮き上がりや沈下を防止することのできる基礎施工方法を提供することが可能になる。また、施工が容易で施工コストも安く、基礎の撤去時には産業廃棄物の発生を抑えることのできる基礎施工方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施態様の基礎施工方法において、溝掘り工程を終えた状態の地面を示した斜視図である。
図2】第一実施態様の基礎施工方法において、アンカーシート敷設工程を終えた状態の地面を示した斜視図である。
図3】第一実施態様の基礎施工方法において、基礎構築工程を終えた状態の地面を示した斜視図である。
図4】第一実施態様の基礎施工方法において、支柱立設工程を終えた状態の地面を示した斜視図である。
図5】第一実施態様の基礎施工方法において、溝埋め工程を終えた状態の地面を示した斜視図である。
図6】第一実施態様の基礎施工方法で施工された基礎の上部に太陽光発電パネルを取り付けた状態を示した斜視図である。
図7】第一実施態様の基礎施工方法で施工された基礎周辺を、図6におけるアンカーシートの中心線を通る鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
図8】アンカーシートを波状に敷設した場合における基礎周辺を、図7に相当する鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
図9】第二実施態様の基礎施工方法で施工された基礎の上部に太陽光発電パネルを取り付けた状態を示した斜視図である。
図10】第三実施態様の基礎施工方法で施工された基礎の上部に太陽光発電パネルを取り付けた状態を示した斜視図である。
図11】第四実施態様の基礎施工方法で施工された基礎の上部に太陽光発電パネルを取り付けた状態を示した斜視図である。
図12】第五実施態様の基礎施工方法で施工された基礎の上部に建物を施工した状態を示した断面図である。
図13】従来の基礎施工方法で施工された基礎の上部に太陽光発電パネルを固定した状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の基礎施工方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施態様から第五実施態様までの5つの実施態様を例に挙げて本発明の基礎施工方法を説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されることなく、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更することができる。
【0017】
1.0 第一実施態様の基礎施工方法
まず、第一実施態様の基礎施工方法について説明する。図1は、第一実施態様の基礎施工方法において、溝掘り工程を終えた状態の地面100を示した斜視図である。図2は、第一実施態様の基礎施工方法において、アンカーシート敷設工程を終えた状態の地面100を示した斜視図である。図3は、第一実施態様の基礎施工方法において、基礎構築工程を終えた状態の地面100を示した斜視図である。図4は、第一実施態様の基礎施工方法において、支柱立設工程を終えた状態の地面100を示した斜視図である。図5は、第一実施態様の基礎施工方法において、溝埋め工程を終えた状態の地面100を示した斜視図である。図6は、第一実施態様の基礎施工方法で施工された基礎30の上部に太陽光発電パネル50を取り付けた状態を示した斜視図である。図7は、第一実施態様の基礎施工方法で施工された基礎30の周辺を、図6におけるアンカーシート10の中心線を通る鉛直面で切断した状態を示した断面図である。図8は、アンカーシート10を波状に敷設した場合における基礎30の周辺を、図7に相当する鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
【0018】
第一実施態様の基礎施工方法は、図6に示すように、太陽光発電パネル50を固定するための基礎30を地面100に施工するものとなっている。第一実施態様の基礎施工方法は、溝掘り工程と、アンカーシート敷設工程と、基礎構築工程と、支柱立設工程と、溝埋め工程とを経るものとなっている。以下、これらの工程について、順次詳しく説明する。
【0019】
1.1 溝掘り工程
溝掘り工程では、図1に示すように、地面100における基礎30を施工する予定の基礎施工予定箇所から溝101を掘る。太陽光発電パネル50(図6)は、その後端縁側の浮き上がりを防止すればよく、その前端縁側の浮き上がりを防止する必要性はそれほどない。このため、太陽光発電パネル50を施工する第一実施態様の基礎施工方法においては、太陽光発電パネル50の後端縁側を固定する基礎30の基礎施工予定箇所Aからのみ溝101を掘り、太陽光発電パネル50の前端縁側を固定する基礎30の基礎施工予定箇所には溝101を掘らないようにしている。基礎施工予定箇所Aから掘る溝101の向きや本数は、基礎30の用途などを考慮して適宜決定される。第一実施態様の基礎施工方法においては、各基礎施工予定箇所Aから前後方向(y軸方向)に2本の溝101を掘っている。
【0020】
溝掘り工程で掘る溝101の幅は、基礎30の用途や溝101の深さなどによっても異なり、特に限定されない。しかし、溝101を狭くしすぎると、その底部に敷設するアンカーシート10の幅も必然的に狭くなり、アンカーシート10が土から十分な抵抗力(摩擦力)を受けにくくなるおそれがある。加えて、狭い幅の溝を掘ることは難しい。このため、太陽光発電パネル50のように比較的軽い構造物を固定する基礎30を施工する場合には、溝101の幅は、通常、10cm以上とされる。溝101の幅は、15cm以上であると好ましく、20cm以上であるとより好ましい。一方、溝101を広くしすぎると、溝101を掘る作業が大変になる。このため、太陽光発電パネル50のように比較的軽い構造物を固定する基礎30を施工する場合には、溝101の幅は、通常、1m以下とされる。溝101の幅は、70cm以下であると好ましく、50cm以下であるとより好ましい。基礎30の上部に建物のような重量の大きなものを施工する場合には、上記の場合よりも溝101を広くする。
【0021】
また、溝掘り工程で掘る溝101の最深部の深さは、基礎30の用途や溝101の幅などによっても異なり、特に限定されない。しかし、溝101を浅くしすぎると、基礎30に上向きの力が作用した際に、基礎30がアンカーシート10とともに地面100から引き抜かれやすくなるおそれがある。加えて、基礎30に下向きの力が作用した際に、該力に対してアンカーシート10が抵抗できなくなるおそれもある。このため、太陽光発電パネル50のように比較的軽い構造物を固定する基礎30を施工する場合には、溝101の深さ(最深部の深さ。以下同じ。)は、通常、10cm以上とされる。溝101の深さは、20cm以上であると好ましく、30cm以上であるとより好ましい。一方、溝101を深くしすぎると、溝101を掘る作業が大変になる。このため、太陽光発電パネル50のように比較的軽い構造物を固定する基礎30を施工する場合には、溝101の深さは、通常、1m以下とされる。溝101の深さは、70cm以下であると好ましく、50cm以下であるとより好ましい。基礎30の上部に建物のような重量の大きなものを施工する場合には、上記の場合よりも溝101を深くする。
【0022】
ところで、図1の例では、溝101は、基礎施工予定箇所Aから遠くなるに連れて徐々に深くなるように形成しているが、溝101は、次のように形成してもよい。すなわち、図8に示すように、アンカーシート10を波状に敷設できるように、溝101の底部を波状に形成することもできる。これにより、アンカーシート10に引張力が加えられた際に、アンカーシート10がその上下の土に引っ掛かりやすくなり、アンカーシート10が土から受ける摩擦力をさらに増大させることが可能になる。
【0023】
1.2 アンカーシート敷設工程
アンカーシート敷設工程では、図2に示すように、溝101の底部に沿って、アンカーシート10を敷設する。それぞれのアンカーシート10の中間部は、基礎施工予定箇所A(図1を参照)で地表に表出させている。アンカーシート10としては、アラミド繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの連続繊維からなるメッシュ状のシートを好適に用いることができる。アンカーシート10の目付け量は、その厚さやそれに用いる連続繊維の種類などによっても異なり、特に限定されないが、例えば、アラミド繊維を厚さ0.1〜1mm程度に織製する場合には、100〜1000g/m程度である。第一実施態様の基礎施工方法においては、前田工繊株式会社製のコンクリート用連続繊維補強材「FFシート AW40」をアンカーシート10として用いている。このアンカーシート10は、引張強度が2060N/mm以上と非常に強靭なものとなっている。
【0024】
アンカーシート敷設工程で敷設するアンカーシート10の幅は、溝101の幅と同程度か、それよりも狭くされ、具体的な値は特に限定されない。しかし、アンカーシート10の幅を狭くしすぎると、アンカーシート10の強度を確保しにくくなる。加えて、アンカーシート10が土から十分な抵抗力(摩擦力)を受けにくくなるおそれがある。このため、太陽光発電パネル50のように比較的軽い構造物を固定する基礎30を施工する場合には、アンカーシート10の幅は、通常、5cm以上とされる。アンカーシート10の幅は、10cm以上であると好ましい。一方、アンカーシート10の幅を広くしすぎると、それを敷設する溝101の幅も必然的に広く確保しなければならず、溝101を掘る作業が大変になる。このため、太陽光発電パネル50のように比較的軽い構造物を固定する基礎30を施工する場合には、アンカーシート10の幅は、通常、1m以下とされる。アンカーシート10の幅は、70cm以下であると好ましく、50cm以下であるとより好ましい。基礎30の上部に建物のような重量の大きなものを施工する場合には、上記の場合よりもアンカーシート10を広くする。
【0025】
アンカーシート10は、溝101に埋めるだけでもよいが、第一実施態様の基礎施工方法では、図7に示すように、アンカーシート10の中途部にアンカー杭60を打ち込んでいる。これにより、アンカーシート10を地中で地盤に対して固定することが可能になり、アンカーシート10に引張力が加えられた際により大きな抵抗力を発生させることができる。必要に応じて、複数本のアンカー杭60を打ち込んでもよい。アンカーシート10におけるアンカー杭60が打ち込まれた箇所には、局所的な負荷が掛かりやすいため、その箇所は、別途、補強シートなどを重ねて補強しておくとよい。
【0026】
1.3 基礎構築工程
基礎構築工程では、図3又は図7に示すように、基礎施工予定箇所にブロック状の基礎30を構築し、その基礎30の内部にアンカーシート10の中間部を埋め殺す。基礎30は、基礎施工予定箇所の周囲を図示省略の型枠で囲み、該型枠内にコンクリートを注入して養生させた後、その型枠を撤去することにより構築される。第一実施態様の基礎施工方法においては、図7に示すように、アンカーシート10の中間部から上向きにアンカーボルト40を打ち込んでおり、基礎30の上部からアンカーボルト40の先端が突出するようにしている。このアンカーボルト40は、基礎30とアンカーシート10との一体性を高めるだけでなく、後の支柱立設工程において、基礎30に支柱20を固定するために用いることができる。
【0027】
従来の基礎施工方法では、図13に示すように、連続した大きな寸法の基礎90を構築する必要があり、コンクリートの使用量が多く施工コストが高くなることに加えて、型枠の設置や撤去など、施工に手間を要するものとなっていた。これに対し、第一実施態様の基礎施工方法では、図3に示すように、ブロック状の基礎30を局所的に設ければいいので、コンクリートの使用量が少なく、コストが安くなることに加えて、型枠の設置や撤去なども容易である。さらに、基礎30を撤去する際には、それに起因する産業廃棄物の発生量も少なく抑えることができる。個々の基礎30の重量は、柱20の用途や、アンカーシート10の設置態様などによっても異なり、特に限定されない。しかし、基礎30の重量を軽くしすぎると、アンカーシート10の負担割合が大きくなり、それを埋設する溝101の本数を多くする必要が生じてしまう。このため、第一実施態様の基礎施工方法のように、施工された柱20を太陽光発電パネル50(1枚当たりの重量が0kg程度)を支持するために用いる場合には、個々の基礎30の重量は、通常、5〜20kg以上とされる。
【0028】
1.4 支柱立設工程
支柱立設工程では、図4に示すように、基礎30の上面に支柱20を立設固定する。第一実施態様の基礎施工方法で施工された支柱20の上部には、図6に示すように、後に太陽光発電パネル50が傾斜した状態で取り付けられる。このため、太陽光発電パネル50の前端縁を支持する支柱20の高さは、太陽光発電パネル50の後端縁を支持する20の高さよりも低く設定している。支柱20の下端は、図7に示すように、基礎30の上面から突き出たアンカーボルト40の先端部に固定している。
【0029】
1.5 溝埋め工程
溝埋め工程では、図5に示すように、アンカーシート10の上側に土を被せて溝101(図4を参照)を埋め、アンカーシート10を地中に埋める。これにより、アンカーシート10の上側に被せられた土の重量も、基礎30の浮き上がり防止又は沈下防止に寄与するようになる。溝101を埋める土には、砂利102(図8を参照)など、土よりも密度の高い素材を混ぜてもよい。また、土壌を固化する作用を有する土壌改良材が添加することも好ましい。第一実施態様の基礎施工方法においては、住友大阪セメント株式会社製のセメント系固化材「タフロック3E型」を土壌改良材として添加している。この土壌改良材は、物理的作用や水和反応により、土粒子の団流化を行うだけでなく、エトリンガイトの生成により土粒子間に架橋構造を形成して固定化を行い、その後もケイ酸カルシウムなどの水和物の生成により、長期的に安定した強度が得られるものとなっている。
【0030】
溝101に入れた土は、転圧ローラなどの転圧手段によって転圧を行い、締め固めておくと好ましい。以上により、基礎30の施工を完了する。この後、地面100に施工された基礎30に、目的の物を取り付ける作業を行う。第一実施態様の基礎施工方法では、図6に示すように、基礎30の上面に立設固定された支柱20の上部に太陽光発電パネル50を取り付けている。以上により、第一実施態様の基礎施工方法は完了する。第一実施態様の基礎施工方法は、従来の基礎施工方法よりも作業が容易である。
【0031】
1.6 作用
図6に示す太陽光発電パネル50に風が当たり、太陽光発電パネル50に揚力が生じると、太陽光発電パネル50の後端縁側を支持する基礎30には、上向きの引張力が加えられる。しかし、第一実施態様の基礎施工方法で施工された基礎30は、それ自体の重量に加えて、その下部に固定されたアンカーシート10が土から受ける摩擦力や重力などによって、前記引張力に対して抵抗することができるようになっている。したがって、台風などの強風によって太陽光発電パネル50が煽られた場合であっても、太陽光発電パネル50を浮き上がらせることなく、地面100に対して固定された状態を維持することができる。
【0032】
2.0 第二実施態様の基礎施工方法
続いて、第二実施態様の基礎施工方法について説明する。図9は、第二実施態様の基礎施工方法で施工された基礎30の上部に太陽光発電パネル50を取り付けた状態を示した斜視図である。第二実施態様の基礎施工方法では、図9に示すように、太陽光発電パネル50の後端縁側を支持するそれぞれの基礎30から太陽光発電パネル50の後方(y軸方向負側)へ1本のアンカーシート10を埋め込んでいる。第二実施態様の基礎施工方法における他の構成は、既に述べた第一実施態様の基礎施工方法と同様の構成を採用することができるため、詳しい説明は割愛する。
【0033】
3.0 第三実施態様の基礎施工方法
続いて、第三実施態様の基礎施工方法について説明する。図10は、第三実施態様の基礎施工方法で施工された基礎30の上部に太陽光発電パネル50を取り付けた状態を示した斜視図である。第三実施態様の基礎施工方法では、図10に示すように、太陽光発電パネル50の後端縁側を支持するそれぞれの基礎30から太陽光発電パネル50の前方(y軸方向正側)、後方(y軸方向負側)、右方(x軸方向正側)及び左方(x軸方向負側)へ計4本のアンカーシート10を埋め込んでいる。このように、基礎30から放射状にアンカーシート10を配することにより、基礎30の定着力をさらに高めることができる。第三実施態様の基礎施工方法における他の構成は、既に述べた第一実施態様の基礎施工方法と同様の構成を採用することができるため、詳しい説明は割愛する。
【0034】
4.0 第四実施態様の基礎施工方法
続いて、第四実施態様の基礎施工方法について説明する。図11は、第四実施態様の基礎施工方法で施工された基礎30の上部に太陽光発電パネル50を取り付けた状態を示した斜視図である。第四実施態様の基礎施工方法では、図11に示すように、太陽光発電パネル50の後端縁側を支持するそれぞれの基礎30から太陽光発電パネル50の前方(y軸方向正側)、後方(y軸方向負側)、右方(x軸方向正側)及び左方(x軸方向負側)へ計4本のアンカーシート10を埋め込むとともに、横方向(x軸方向)に隣接する基礎30から横方向に延びるアンカーシート10が繋がった形態としている。これにより、基礎30の定着力をさらに高めるだけでなく、アンカーシート敷設工程をより容易に行うことも可能になる。第四実施態様の基礎施工方法における他の構成は、既に述べた第一実施態様の基礎施工方法と同様の構成を採用することができるため、詳しい説明は割愛する。
【0035】
5.0 第五実施態様の基礎施工方法
続いて、第五実施態様の基礎施工方法について説明する。図12は、第五実施態様の基礎施工方法で施工された基礎の上部に建物80を施工した状態を示した断面図である。上述した第一実施態様から第四実施態様までの基礎施工方法では、その上部構造として太陽光発電パネルを取り付けたが、第五実施態様の基礎施工方法では、施工された基礎の上部に建物80を施工している。第五実施態様の基礎構築方法では、アンカーシート10として炭素繊維からなる網(カーボンメッシュ)を使用している。本発明の基礎施工方法は、このような重量のあるものを支える基礎を施工するためにも用いることができる。建物80に本発明の基礎施工方法を採用すると、風や津波などによる建物80の浮き上がりを防止するだけでなく、建物80の沈下(不同沈下や液状化に伴う沈下)を防止することも可能になる。また、溝埋め工程で使用する土に砂利などを添加して転圧すれば、液状化を発生しにくくすることも可能になる。第五実施態様の基礎施工方法における他の構成は、既に述べた第一実施態様から第四実施態様の基礎施工方法と同様の構成を採用することができるため、詳しい説明は割愛する。
【符号の説明】
【0036】
10 アンカーシート
20 支柱
30 基礎
40 アンカーボルト
50 太陽光発電パネル
60 アンカー杭
80 建物
90 基礎
100 地面
101 溝
102 砂利
A 基礎施工予定箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図12
図13