【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1に係る引戸構造Wは、
図1及び
図2に示すように、レール3に対して取付けられる保持力調節装置1と前記レール3に沿って移動可能なハンガー2とを有する引戸装置Pを備える。
【0022】
前記レール3は、
図3に示すように、設置上枠Fに取付けられるアルミ製の長尺材であり、垂直部31と水平部32によってその断面は略L字状に形成される。水平部32の先端縁は、縁全体を上方へ延設してなるレール縁部30とし、垂直部31の上端側には、断面視矩形の一側辺中央に開口34を有する形状として長手方向に連続する中空枠部33を設けた構成である。尚、レール3のうち戸袋4内の端部近傍には、引戸Sの開放時の限界位置を位置決めするストッパー6を設けている。
【0023】
前記保持力調節装置1は、
図4に示すように、前記レール3の中空枠部33の側壁35を挟持する二枚の設置部としての設置板10(外側設置板10a、内側設置板10b)と、該設置板10のうち外側設置板10aに対してスライド可能となる調節部としての調節板11と、前記外側設置板10aに対して固定される長尺弾性部としての板バネ12とからなる。
【0024】
前記設置板10のうち外側設置板10aは、長手方向に亘って90度に曲げ加工をすることで断面視L字状に、側板101と底板102を形成した構成としている。側板101には固定手段となる皿ビス101bに対応したテーパー状の周面を有する取付穴101aが形成されている。また、底板102には板バネ12を固定するための手段となるリベット102bに対応した取付穴102aが形成されている。
そして、外側設置板10aの底板102は前記中空枠部33の底面36と当接し、外側設置板10aの側板101は前記中空枠部33の開口34を有する側壁35に当接する。
【0025】
図4(b)に示すように、内側設置板10bには雌螺子穴101cを備え、外側設置板10aと内側設置板10bで前記側壁35を挟持して外側設置板10aにおける側板101の取付穴101aから前記皿ビス101bを挿通して内側設置板10bの雌螺子穴101cに螺着する。
【0026】
前記調節板11は、
図4及び
図5に示すように、基端側に長穴110を有し、先端側には前記レール3に対して水平を保つための第一突出部113と第二突出部114を備える。
また、調節板11のスライド時に第一突出部113及び第二突出部114の追従を良好とするためにやや先端側寄りの位置に段差111を設けている。また、長穴110に沿って板バネ12による開放した引戸Sの保持力の強弱の調節度合を示す表示14を刻印している。
【0027】
第一突出部113はプレス加工によって調節板11の面に対して垂直に押出して形成され、スライド固定される後端側を含め、調節板11全体がレール3に対して水平となるだけの突出量を確保している。
【0028】
第二突出部114は、先端側の一部を90度曲げて、前記レール3の中空枠部33の底面36に当接する構成としたものである。第二突出部114の形成によって先端側は断面視L字状となる。第二突出部114は前記外側設置板10aの底板102と同一水平面上に配置される。
【0029】
図4(c)のB−B断面図に示すように、固定用雄螺子13を長穴110と外側設置板10aの側板101の取付穴101dを連通して内側設置板10bの雌螺子101eに螺合することで、調節板11を固定することができる。また固定用雄螺子13を若干緩ませることで、調節板11は長穴110の寸法で許容される範囲で長手方向にスライドさせることができる。
【0030】
本発明の長尺弾性部となる板バネ12は、
図6に示すように、基端部120、中央部121及び先端部122を連続一体とした構成であり、該基端部120に設置板10の底板102に対して鋲着するための取付穴124を備える。前記中央部121は、基端部120から長手方向に延設され側面視への字状に曲げて構成される。先端部122は、前記中央部121から先端部122側へ連続し前記基端部120と同一平面上となるように形成した構成である。また、中央部121及び先端部122の幅寸法w1は、基端部120の幅寸法w2の約半分程度として形成される。中央部121の前記への字状の頂点部分123と該頂点部分123から先端側に位置する傾斜部125のうち前記頂点部分123の近傍となる部分がハンガー2に対する係止部となる。
【0031】
前記板バネ12は前記取付穴124からリベット102bを用いて前記外側設置板10aの底板102の取付穴102aに対してカシメ固定した構成としている。
以上によって、前記レール3に対して保持力調節装置1が固着した構造が実現される。
【0032】
ハンガー2は、
図1に示すように、取付基板23から立設した本体側壁25に軸部を設け、該軸部で戸車24を支持してなり、本体基板には、引戸Sを固定するための本体取付穴を備える。本実施例1においてハンガー2は、レール3に対して、戸先側の第一ハンガー2a、戸尻側の第二ハンガー2bの計二基を設けている。このうち本発明の構成として重要な働きに関与するハンガー2は、戸先側となる第一ハンガー2aである。尚、第二ハンガー2bは別途設けられる制動装置5と連結され、引戸Sの急激な移動を制御する制動装置5の引戸Sに対する伝達部として機能しており、前記第一ハンガー2aとともに移動するものである。
【0033】
前記第一ハンガー2aは、
図1及び
図7に示すように、本体側壁25の戸先側の側辺から垂直方向に延設した側片26を備え、該側片26には、前記板バネ12の係止部に対応する係止手段となる係止装置20を設けた構成としている。当該第一ハンガー2aは駆動装置7とワイヤーで連結されている。当該構成によって、駆動装置7が常に第一ハンガー2aを介して引戸Sを閉方向へ付勢し、自動的な引戸の閉鎖を行うものである。
【0034】
係止装置20は断面視L字状の基板27の一端に軸ピン22を立設し、該軸ピン22に回転駒21を枢着した構成である。回転駒21は本発明の係止手段となる。取付基板23の他端側を前記側片26に重合固定することで、回転駒21は戸車24と同方向に向けて設けられる。当該構成によって、回転駒21は、引戸Sの開放状態においても、戸袋内には位置せず、戸袋外において、係止手段として機能するものである。
【0035】
以上の構成によって、先ず、引戸Sを閉状態から開状態に移行させると、第一ハンガー2aの戸車24がレール縁部30上を移動し、第一ハンガー2aの回転駒21が板バネ12の基端部120の下面に接触し摺動する。回転駒21が開方向の傾斜部126に至ると当該傾斜によって開方向への抵抗が大きくなり、頂点部123を超えることで、再度抵抗がなくなり、引戸Sの全開状態とすることができる。傾斜部126の傾斜は非常に緩やか(約10°程度)に形成してあるため、違和感なく引戸Sを開状態とすることができる。
【0036】
そして、上記開状態の保持について、閉方向へ第一ハンガーが2aを移動させると、本発明の係止部を含む閉方向への傾斜部125は、前記開方向への傾斜部126よりも傾斜角度を大きく設定してあり(約20°程度)、回転駒21との接触により、急激に閉方向への引戸Sの移動を減速させる。回転駒21と板バネ12の係止部が係止することで、引戸Sの全開状態が保たれる。
【0037】
この閉方向への引戸Sの移動に要する力の加減を調節するには、回転駒21と板バネ12の係止部の係止の加減を調節すればよく、調節は、調節板11の位置をスライド変更して行うことができる。
【0038】
即ち、調節板11と板バネ12との二箇所の当接位置となる支点f、f間の距離dを変更することで、保持力の調節を行う。当接位置の一箇所は板バネ12が外側設置板10aの底板102に直接固定される基端部120であり、この位置は変更されない。当接位置の他の箇所は調節板11の第二突出部114と板バネ12との当接位置である。
【0039】
保持力調節装置1の伸縮は前記長穴110の範囲で行うことができ、調節板11が最も設置板10側(戸先側)となる縮小状態のとき、
図8(a)に示すように、調節板11の第二突出部114は板バネ12の先端部122のうちやや中央部121寄りの位置にある。この状態において二箇所の当接位置となる支点f、f間の距離dが最も短くなり、より多くの保持力を必要とする。
【0040】
また調節板11が最も戸尻側となる伸張状態のとき、
図8(b)に示すように、調節板11の第二突出部114は板バネ12の先端部122の端縁部位置にある。この状態において二箇所の当接位置となる支点f、f間の距離dが最も長くなり、より少ない保持力とすることができる。
【0041】
また、本実施例1に示した保持力調節装置1は、スライド固定手段、即ち長穴110と固定用雄螺子13の位置が、戸袋4外の戸尻側位置に配置した構成である。当該構成としたことによって、戸袋収納タイプの引戸Sに用いた場合であっても、調節板11のスライド操作と固定用雄螺子13の固定操作することが可能となり、簡単に引戸Sの保持力の調節を行うことができる。
【0042】
更に、当該位置に保持力調節装置1を配置したことによって、第一設置板10a及び第二設置板10bの締め付けを緩めることやこれらの設置板10の取り外しを容易とすることができるから、保持力調節装置1自体の位置の微調節や破損時の交換等も容易に行うことができる。
【0043】
また、本実施例1においては、第二突出部114と外側設置板10aの底板102の厚みを同一とすることで、レール3に設置した際に、板バネ12に対する二箇所の当接位置となる支点f、fを水平位置に保つことができる。そしてこれによってバネに対する負荷を均一に受けることができ、保持力調節装置1に対する局所的な負荷を分散し、より耐久性を向上させ、高寿命化を図ることができる。
【0044】
また、本実施例1においては、第二突出部114がレール3の中空枠部33の底面36に案内されるため、調節板11のスライド操作を安定して行うことができる。
【0045】
また、本実施例1においては、固定用雄螺子13は一箇所のみ設けるものとしたが、本発明はこれに限らず二箇所以上に設けることもできる。尚、本実施例1においては、固定用雄螺子13を一箇所のみとすることで、スライド位置の調節作業を簡単に行えるとともに、当該固定用雄螺子13が一箇所のみであっても第二突出部114がレール3の中空枠部33にガイドされることで、円滑なスライドを実現する点で優れた調節機能を実現している。
(参考例1)
【0046】
次に、本発明の
参考例1に係る引戸装置Pは、
図9に示すように、上記実施例1と基本構成は共通するものであり、上記実施例1の構成のうち、調節部の機構のみを変更し、支点fの高さを調整する機構を備えたものである。即ち、本
参考例1においては、上記実施例1における調節板11に代えて、複数の調節用ライナー15を重合して設けたものである。
【0047】
当該調節用ライナー15は重合する数量を変更することにより、支点fとなる板バネ12との当接位置、即ち、板バネ12の支点fの高さ方向の位置を変更することによって、板バネ12の撓り量を変更し、保持力の調節を行うものである。
【0048】
本
参考例1においては、調節用ライナー15は金属製板材とし、固定用螺子を通すための貫通穴を備える。前記固定用螺子を、前記調節用ライナー15の貫通穴に通し、レールに設けた雌螺子穴に対して螺合させることによって、調節用ライナー15を設置することができる。調節用ライナー15は、使用する枚数を適宜調節することにより調節する。
このため、使用する枚数は、任意の数でよいから、一枚とすることもできるし、複数枚とすることもできる。
(参考例2)
【0049】
本発明の
参考例2に係る引戸装置Pは、上記
参考例1に近似する構成を示すものであり、
図10に示すように、調節部の構成を、調節用ライナー15に代えて、調節螺子17によって行う構成としたものである。
【0050】
即ち、レール3に対して調節螺子用保持部18を固定し、該調節螺子用保持部18によって調節螺子17を保持する。前記調節螺子用保持部18は、調節螺子と螺合する雌螺子穴を備えており、調節螺子を該雌螺子穴へ螺合貫通させ、調節螺子の先端170が板バネ12と当接する構成としたものである。
【0051】
本
参考例2によれば、螺子の締込み具合(即ち、螺子の先端の突出量)により支点fの高さをすることで、板バネ12の撓り量を変更し、保持力の調節を行う。尚、調節螺子の先端は
本参考例2に開示するように直接板バネ12と当接する構成であってもよいし、他の部材を取付けてもよい。
(参考例3)
【0052】
本発明の
参考例3に係る引戸装置Pは、実施例1
、参考例1、参考例2に係る引き戸装置Pと異なり、係止時に対応するハンガー2の係止手段(例えば、回転駒21)側に調節部(例えば調節板11)を備えたものである。
【0053】
即ち、
図11(a)に示すように、実施例1に対応する第一ハンガー2aに取付けられる係止装置20の位置決め穴を、上下方向を長手とする長穴28とし、当該第一ハンガー2aの側片26に対して上下方向にスライド及び固定を可能としたものである。尚、
図11(a)では、第一ハンガー2aは省略している。
当該構成により、係止部に対応する第一ハンガー2aの係止手段(本実施例においては回転駒21)の高さを調節可能とし、長尺弾性体である板バネ12の撓り量を変更し、引戸Sの保持力を調節することができる。
また、
図11(b)に示すように、前記位置決め穴を、上下方向を長手とする長穴28とすることに加え、係止装置20を実施例1と同様に断面視L字状とすることもできる。
(参考例4)
【0054】
本発明の
参考例4に係る引戸装置Pは上記
参考例3と同様に、係止時に対応するハンガーの係止手段側に調節部を備えたものであり、
参考例3の構成から、係止手段のスライド方法を変更したものである。
【0055】
本
参考例4によれば、
図12に示すように、係止手段を回転移動させて高さ方向の位置調節を行うものである。
本実施例5では、第一ハンガー2aに取付けられる係止装置の位置決め穴について、二つの位置決め穴のうち、一方を丸孔、他方を円弧状長穴とし、円弧状長穴における螺子固定丸孔側を回転移動の中心とし、係止装置を回転移動させることができる。
(参考例5)
【0056】
本
参考例5に係る引戸装置Pは、上記
参考例3及び
参考例4と同様に、係止時において係止部に対応する対応するハンガー側に調節部を備えたものである。本
参考例5は、
図13に示すように、
参考例3及び
参考例4と異なり、係止装置をスライドさせる構成に代えて、係止装置をハンガーの本体から調節用ライナー16を介して設けた構成としたものである。
【0057】
本
参考例においても、参考例1と同様に、調節用ライナー16は金属製板材とし、固定用螺子を通すための貫通穴を備える。前記固定用螺子を、前記調節用ライナー16の貫通穴に通し、レール3に設けた雌螺子穴に対して螺合させることによって、調節用ライナー16を設置することができる。また、調節用ライナー16は、使用する枚数を適宜調節することにより調節することができる。
【0058】
また、図示省略するが、他の実施例として、例えば、実施例1の構成について、
参考例1の調節用ライナー15を調節板10の第二突出部114に設けることにより、調節板11によるスライド調節と調節用ライナー15による複数の高さ調節手段を備えることができる。このような調節手段の組合せは、例えば、
他の実施例として、上記参考例のうちいずれか二つ以上を組合せることによっても行うことができる。
【0059】
尚、
上記実施例、参考例においては、いずれも設置部(例えば設置板10)と長尺弾性部(例えば板バネ12)とは別体のものを用いたが、本発明はこれに限らず、設置部と長尺弾性部とを一体として形成することもできる。
【0060】
また、本発明における長尺弾性部は、実施例として金属製の板バネ12としたが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、高強度合成樹脂材料で構成される長尺弾性部とすることもできる。