特許第5945204号(P5945204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945204
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】包装紙巻込装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 11/56 20060101AFI20160621BHJP
   G07D 9/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B65B11/56 A
   G07D9/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-216908(P2012-216908)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-69848(P2014-69848A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山野 哲哉
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−104407(JP,A)
【文献】 特許第4064069(JP,B2)
【文献】 特開2000−357256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B11/00−11/58
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積硬貨の周囲に巻き付けられた包装紙の端部を巻き込む包装紙巻込装置であって、
前記包装紙の端部を巻き込む巻込針と、
前記巻込針を回動可能に支持する支持体を有し、この支持体を前記集積硬貨の周面に対して接近および離反する方向に移動させるとともに前記集積硬貨の集積方向に移動させる巻込針移動機構と、
前記支持体に支持され、前記支持体が前記集積硬貨の周面に対して接近移動した際に前記集積硬貨の周面に当接可能とし、当接により前記集積硬貨の径に応じて変位して前記巻込針を前記集積硬貨の径に応じた巻込位置に回動させる可動当接部と
を具備していることを特徴とする包装紙巻込装置。
【請求項2】
前記支持体に、前記支持体が前記集積硬貨の周面に対して接近移動した際に前記集積硬貨の周面に当接する固定当接部が設けられ、
前記集積硬貨の周面との当接による前記可動当接部の変位は、前記固定当接部が前記集積硬貨の周面に当接した位置で制限される
ことを特徴とする請求項1記載の包装紙巻込装置。
【請求項3】
前記可動当接部は、前記巻込針を中心として前記巻込針と一体に回動する
ことを特徴とする請求項1または2記載の包装紙巻込装置。
【請求項4】
前記可動当接部を有し、前記支持体に対して前記巻込針と一体に回動可能に設けられた可動当接部材と、
前記可動当接部が前記支持体から突出する方向に向けて前記可動当接部材を回動付勢する付勢手段とを具備している
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の包装紙巻込装置。
【請求項5】
前記支持体は、位置固定の回動支点を中心に前記集積硬貨の周面に対して接近および離反する方向に回動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の包装紙巻込装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積硬貨の周囲に巻き付けられた包装紙の端部を巻き込む包装紙巻込装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨包装機では、所定の包装単位枚数分の硬貨を上下方向に集積した集積硬貨の周囲に包装紙を巻き付け、この包装紙の上下両端部を巻き込んで集積硬貨の上下両端面にかしめることにより、包装硬貨を作成している。
【0003】
包装紙の上下両端部を巻き込むための包装紙巻込装置は、上下一対の巻込針を用い、これら巻込針を支持した上下の支持体を、所定の回動支点を中心に集積硬貨の周面に対して接近および離反する方向に回動可能とするとともに、集積硬貨の集積方向である上下方向に沿って移動可能としている。そして、支持体を集積硬貨の周面に接近させて上下の巻込針を包装紙の上下域に配置し、これら上下の巻込針を互いに接近移動させることにより、上下の巻込針で包装紙の上下両端部を巻き込んで集積硬貨の上下両端面にかしめている。
【0004】
ところで、支持体が回動する回動支点の位置が固定である場合(例えば、特許文献1参照。)、金種によって集積硬貨の径が異なると、集積硬貨に巻き付けられた包装紙に対する巻込針の角度が変化し、その角度によっては包装紙の巻込品質が低下することがある。そのため、集積硬貨の径が異なると包装紙の巻込状態を均一に仕上げることができない。
【0005】
また、カムやリンクなどを用いた調整機構により集積硬貨の径に応じて支持体の回動支点を移動させることにより、集積硬貨の径が異なっても包装紙に対する巻込針の角度が略一定となるようにした包装紙巻込装置がある(例えば、特許文献2参照。)。このように、集積硬貨の径が異なっても包装紙に対する巻込針の角度を略一定にすることにより、集積硬貨の径が異なっても包装紙の巻込状態を均一に仕上げることができる。
【0006】
しかしながら、支持体の回動支点を移動させるため、複雑な構造の調整装置が必要となる。
【0007】
また、支持体の上下の移動距離をエンコーダなどで測定して包装紙の巻込状態の過不足を検知するようにしているが、支持体の回動支点が移動するものでは、動きが不安定で巻き込みの過不足を検知することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−104407号公報
【特許文献2】特許第4064069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、集積硬貨の径が異なっても包装紙の巻込状態を均一に仕上げるためには、カムやリンクなどを有する調整機構を用いる必要があり、構造が複雑になるとともに、包装紙の巻込状態の過不足検知ができないという問題がある。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡単な構成で、集積硬貨の径が異なっても包装紙の巻込状態を均一に仕上げることができる包装紙巻込装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の包装紙巻込装置は、集積硬貨の周囲に巻き付けられた包装紙の端部を巻き込む包装紙巻込装置であって、前記包装紙の端部を巻き込む巻込針と、前記巻込針を回動可能に支持する支持体を有し、この支持体を前記集積硬貨の周面に対して接近および離反する方向に移動させるとともに前記集積硬貨の集積方向に移動させる巻込針移動機構と、前記支持体に支持され、前記支持体が前記集積硬貨の周面に対して接近移動した際に前記集積硬貨の周面に当接可能とし、当接により前記集積硬貨の径に応じて変位して前記巻込針を前記集積硬貨の径に応じた巻込位置に回動させる可動当接部とを具備しているものである。
【0012】
請求項2記載の包装紙巻込装置は、請求項1記載の包装紙巻込装置において、前記支持体に、前記支持体が前記集積硬貨の周面に対して接近移動した際に前記集積硬貨の周面に当接する固定当接部が設けられ、前記集積硬貨の周面との当接による前記可動当接部の変位は、前記固定当接部が前記集積硬貨の周面に当接した位置で制限されるものである。
【0013】
請求項3記載の包装紙巻込装置は、請求項1または2記載の包装紙巻込装置において、前記可動当接部は、前記巻込針を中心として前記巻込針と一体に回動するものである。
【0014】
請求項4記載の包装紙巻込装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の包装紙巻込装置において、前記可動当接部を有し、前記支持体に対して前記巻込針と一体に回動可能に設けられた可動当接部材と、前記可動当接部が前記支持体から突出する方向に向けて前記可動当接部材を回動付勢する付勢手段とを具備しているものである。
【0015】
請求項5記載の包装紙巻込装置は、請求項1ないし4いずれか一記載の包装紙巻込装置において、前記支持体は、位置固定の回動支点を中心に前記集積硬貨の周面に対して接近および離反する方向に回動可能に設けられているものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の包装紙巻込装置によれば、支持体が集積硬貨の周面に対して接近移動した際に、可動当接部が集積硬貨の周面に当接することにより、可動当接部が集積硬貨の径に応じて変位して、巻込針を集積硬貨の径に応じた巻込位置に回動させるため、簡単な構成で、集積硬貨の径が異なっても包装紙の巻込状態を均一に仕上げることができる。
【0017】
請求項2記載の包装紙巻込装置によれば、請求項1記載の包装紙巻込装置の効果に加えて、集積硬貨の周面との当接による可動当接部の変位を、支持体の固定当接部が集積硬貨の周面に当接した位置で制限するため、巻込針を集積硬貨の径に応じた巻込位置に位置させることができる。
【0018】
請求項3記載の包装紙巻込装置によれば、請求項1または2記載の包装紙巻込装置の効果に加えて、可動当接部が巻込針を中心として巻込針と一体に回動するため、簡単な構成で、巻込針を集積硬貨の径に応じた巻込位置に回動させることができる。
【0019】
請求項4記載の包装紙巻込装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の包装紙巻込装置の効果に加えて、可動当接部を有する可動当接部材を支持体に対して巻込針と一体に回動可能に設け、この可動当接部を支持体から突出する方向に向けて付勢手段で回動付勢するため、簡単な構成で、巻込針を集積硬貨の径に応じた巻込位置に回動させることができる。
【0020】
請求項5記載の包装紙巻込装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の包装紙巻込装置の効果に加えて、支持体を、固定位置の回動支点を中心に集積硬貨の周面に対して接近および離反する方向に回動可能に設けているため、構成を簡単にできるとともに、支持体の動きが安定することで、例えば集積硬貨の集積方向における巻込針の移動距離を検知して包装紙の巻込状態の過不足検知をすることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態を示すものであって、包装紙巻込装置による集積硬貨が小径の1円硬貨である場合の包装紙の巻込動作を示す平面図である。
図2】同上包装紙巻込装置による集積硬貨が大径の500円硬貨である場合の包装紙の巻込動作を示す平面図である。
図3】同上包装紙巻込装置の巻込針と包装紙との位置関係を示す斜視図である。
図4】同上包装紙巻込装置の斜視図である。
図5】同上包装紙巻込装置を用いた硬貨包装機の斜視図である。
図6】同上硬貨包装機の平面図である。
図7】比較例の包装紙巻込装置による集積硬貨が小径の1円硬貨である場合の包装紙の巻込動作を示す平面図である。
図8】比較例の包装紙巻込装置による集積硬貨が大径の500円硬貨である場合の包装紙の巻込動作を示す平面図である。
図9】比較例の包装紙巻込装置の巻込針と包装紙との位置関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
図5および図6に、硬貨包装機10を示す。この硬貨包装機10は、ばら状態の硬貨を受け入れて1枚ずつ繰り出す繰出部11、この繰出部11から繰り出された硬貨を搬送する搬送通路12、この搬送通路12の終端に搬送された硬貨を下側から上方へ向けて集積する集積部13、集積部13で所定の包装単位枚数分の硬貨を集積した集積硬貨Cを包装紙Pによって包装する包装部14、包装部14に包装紙Pを供給する図示しない包装紙供給部、および包装紙Pの上下両端部を巻き込んで集積硬貨Cの上下両端部にかしめる包装紙巻込装置15を備えている。
【0024】
そして、繰出部11は、回転円盤18、およびこの回転円盤18の周囲に配置された周壁19を有している。周壁19の内側で回転円盤18上に硬貨を受け入れ、回転円盤18の回転によって硬貨を1枚ずつ搬送通路12に繰り出す。
【0025】
搬送通路12は、通路上方に配設される搬送ベルトによって繰出部11から繰り出された硬貨を搬送する。搬送通路12の通路幅は包装する金種の硬貨径に対応して調整されており、包装金種より大径金種の硬貨については繰出部11から搬送通路12への進入が規制され、包装金種より小径金種の硬貨については搬送通路12の通路面に設けられた排除口12aから排除される。搬送通路12には、搬送通路12から集積部13へ送り込む硬貨の通過を検知する通過検知センサS1、搬送通路12から集積部13へ送り込まれる硬貨の枚数を計数する計数センサS2、および通過検知センサS1の検知に基づいて搬送通路12から集積部13へ送り込まれる所定の包装単位枚数目の硬貨の次の硬貨を停止させるストッパ20などが配設されている。
【0026】
集積部13は、包装部14の3本の包装ローラ21a,21b,21cの間に形成されている。集積部13の下部には集積ローラ22が配設されている。この集積ローラ22の回転により、搬送通路12から送り込まれる硬貨を集積部13の下部に取り込むとともに、集積部13の下部に送り込んだ硬貨の送込み方向の後端を搬送通路12の通路面より上昇させ、続いて送り込まれる硬貨の送込み方向の先端を集積部13の下部に位置する硬貨の下側に取り込む。このようにして、集積部13内に下側から上方へ向けて硬貨を集積する。
【0027】
包装部14は、集積部13で包装単位枚数分の硬貨が集積された集積硬貨Cを支持ロッド23で所定の包装位置まで上昇させ、3本の包装ローラ21a,21b,21cで集積硬貨Cの周面を挟持して回転させ、包装紙供給部から供給される包装紙Pを集積硬貨Cの周面に巻き付ける。包装紙巻込装置15により、集積硬貨Cに巻き付けられた包装紙Pの上下両端部を巻き込んで集積硬貨Cの上下両端面にかしめ、包装硬貨を形成する。
【0028】
そして、集積ローラ22や支持ロッド23などは、包装部14の下方位置から退避し、包装部14で形成した包装硬貨を下方へ放出可能としている。
【0029】
なお、包装ローラ21a,21b,21cは互いに接近、離反する方向に移動可能とする。包装ローラ21a,21b,21cの位置および集積ローラ22の位置は包装金種に対応して調整される。包装ローラ21cは、包装時には固定で、包装金種の設定時のみ移動する。
【0030】
次に、包装紙巻込装置15の構成を説明する。
【0031】
包装紙巻込装置15は、上下一対の鉤型の巻込針25a,25b、およびこれら上下の巻込針25a,25bを移動させる巻込針移動機構26を備えている。
【0032】
巻込針25a(25b)は、図3および図4に示すように、軸部28、およびこの軸部28の先端からU字形に屈曲された巻込部29を備えている。巻込部29には、軸部28側の根本部29a、根本部29aからU字形に屈曲された屈曲部29b、および屈曲部29bの先端の先端部29cを有している。
【0033】
図5および図6に示すように、巻込針移動機構26は、上下の巻込針25a,25bをそれぞれ支持する上下の支持体31a,31bを備えている。上下の支持体31a,31bはそれぞれ上下のアーム32a,32bの先端に取り付けられ、上下のアーム32a,32bは揺動フレーム33に対して上下方向にスライド可能に支持されている。上下のアーム32a,32bは例えばスプリングによって互いに接近する方向に付勢されている。
【0034】
揺動フレーム33は上下縁部が折曲された略コ字形に形成され、この揺動フレーム33の上下縁部間に複数のスライド軸34が取り付けられ、これらスライド軸34にアーム32a,32bが上下方向にスライド可能に取り付けられている。揺動フレーム33は、揺動フレーム33の上下縁部を貫通する回動支点(回動軸)35を中心に水平方向に回動可能に支持されているとともに、スプリングなどで巻込針25a,25bが包装部14に接近する方向へ向けて回動付勢されている。回動支点35の位置は、包装紙巻込装置15に対して固定であり、移動することはない。
【0035】
揺動フレーム33の近傍には、カム36a,36bを設けたカム軸37が配置されているとともに、各カム36a,36bに倣って上下のアーム32a,32bをそれぞれ上下方向に移動させるレバー38a,38bが配置されている。レバー38a,38bは、基端が位置固定の水平方向の支軸39a,39bによって上下方向に揺動可能に支持され、中間部にカム36a,36bに当接するカムローラ40a,40bが取り付けられ、先端にアーム32a,32bに当接する押動ローラ41a,41bが取り付けられている。そして、上側のレバー38aのカムローラ40aがカム36aの上面に当接され、押動ローラ41aが上側のアーム32aの下面に当接され、下方へ付勢されている上側のアーム32aの下降を規制している。下側のレバー38bのカムローラ40bがカム36bの下面に当接され、押動ローラ41bが下側のアーム32bの上面に当接され、上方へ付勢されている下側のアーム32bの上昇を規制している。そして、カム軸37が包装工程で1回転し、このカム軸37の1回転に伴い、カム36a,36bに倣って上下のレバー38a,38bが揺動し、上下の巻込針25a,25bが上下方向に移動する。
【0036】
カム軸37にはカム36cが取り付けられ、カム36cに当接可能とするカムローラ42が揺動フレーム33に取り付けられている。そして、カム36cがカムローラ42を押動している状態では、巻込針25a,25bが包装部14から離反するように回動されており、包装工程でのカム軸37の1回転中におけるカム36cがカムローラ42を押動しなくなる期間に、揺動フレーム33に対する付勢により巻込針25a,25bが包装部14に移動して包装紙Pの巻込動作を可能とする。
【0037】
また、図1ないし図4に示すように、支持体31aの先端部の一側部側には、上下方向に沿って巻込針25aの軸部28が回動可能に挿入される孔部45が形成され、この孔部45の中間位置に対応して切欠部46が形成されている。支持体31aの先端部の他側面側には、溝部47が形成され、この溝部47の側面に開口する凹部48が形成されている。
【0038】
溝部47には、凹部48に一端が挿入された付勢手段としてのスプリング49を介して可動当接部材50が配置されている。可動当接部材50の一側面には切欠部46に配置される突部51が形成され、この突部51に巻込針25aの軸部28が貫通する貫通孔52が形成され、可動当接部材50の他側面から貫通孔52に連通するねじ孔53が形成されている。そして、ねじ54がねじ孔53に螺着されて巻込針25aの軸部28に圧接されることにより、巻込針25aと可動当接部材50とが、巻込針25aの軸部28を中心として一体に回動可能に連結されている。さらに、スプリング49によって巻込針25aの巻込部29および可動当接部材50の先端面が支持体31aの先端面から突出する方向へ向けて回動付勢されている。なお、スプリング49によって付勢される可動当接部材50の回動は、可動当接部材50の一部が支持体31aに当接する所定位置で規制される。
【0039】
支持体31aの先端面には集積硬貨Cの周面(集積硬貨Cの周面に巻き付けられた包装紙P)に当接する固定当接部55が形成され、可動当接部材50の先端面には集積硬貨Cの周面(集積硬貨Cの周面に巻き付けられた包装紙P)に当接可能とする可動当接部56が形成されている。これら固定当接部55および可動当接部56は、集積硬貨Cの集積方向に沿って長く形成されている。
【0040】
なお、図1ないし図4には、上側の巻込針25aに関する構造を図示しているが、下側の巻込針25bに関する構造についても上下面が反対になるだけで同様の構造に構成されている。
【0041】
次に、硬貨包装機10の作用を説明する。
【0042】
図5および図6において、繰出部11から搬送通路12に硬貨を1枚ずつ繰り出し、搬送通路12から集積部13に送り込まれる硬貨を3本の包装ローラ21a,21b,21c間で下側から上方へ向けて順に集積する。集積部13で包装単位枚数分の硬貨を集積したら、集積硬貨Cを包装部14における所定の包装高さ位置に上昇させ、包装部14で集積硬貨Cを包装する。
【0043】
包装工程では、カム軸37が1回転し、そのカム軸37の1回転中に、3本の包装ローラ21a,21b,21cで集積硬貨Cを挟み込んで回転させながら集積硬貨Cの周面に包装紙Pを巻き付け、包装紙巻込装置15により集積硬貨Cの周面に巻き付けられた包装紙Pの上下両端部を巻き込んで集積硬貨Cの上下両端面にかしめ、包装硬貨を形成する。
【0044】
包装紙巻込装置15では、回動支点35を中心として揺動フレーム33が包装部14へ接近する方向に揺動し、支持体31a,31bの先端部が包装ローラ21a,21bの間を通じて集積硬貨Cの周面に当接し、上下の巻込針25a,25bが包装紙Pの上下域に位置決め配置される。その後、上下の巻込針25a,25bが上下方向に沿って互いに接近移動し、上下の巻込針25a,25bで集積硬貨Cとともに回転している包装紙Pの上下両端部を巻き込んで集積硬貨Cの上下両端面にかしめる。その後、上下の巻込針25a,25bが上下方向に沿って互いに離反移動して包装紙Pの巻込部分から外れ、回動支点35を中心として揺動フレーム33が包装部14から離反する方向に揺動し、初期の位置に戻る。
【0045】
そして、図1には、集積硬貨Cの金種が小径の1円硬貨C1である場合の包装紙Pの巻込動作を示す。なお、図1には上側の巻込針25aによる巻込動作を示すが、下側の巻込針25bによる巻込動作についても同様である。
【0046】
支持体31aの先端部が包装ローラ21a,21bの間を移動して集積硬貨Cの周面に当接する際、まず最初に、可動当接部56が集積硬貨Cの周面に当接し、移動を続ける支持体31aに対して、可動当接部材50がスプリング49の付勢に抗して巻込針25aの軸部28を中心として回動する。つまり、可動当接部材50は、可動当接部56が支持体31aの先端部から後退する方向(図1の反時計回り方向)に回動する。この可動当接部材50と一体に巻込針25aも回動する。
【0047】
可動当接部56が集積硬貨Cの周面に当接してから、固定当接部55が集積硬貨Cの周面に当接し、支持体31aの移動が規制され、可動当接部材50および巻込針25aの回動が規制される。
【0048】
固定当接部55が集積硬貨Cの周面に当接した状態で、包装硬貨Cに対して巻込針25aが位置決めされ、この巻込針25aが集積硬貨Cの径に応じた適切な巻込位置に位置する。すなわち、巻込針25aの根本部29aと包装紙Pとの間の距離L1を小さくできるとともに、包装紙Pに対する巻込針25aの角度を巻き込みに適切な角度にできる。巻込針25aの根本部29aと包装紙Pとの間の距離L1を小さくできるのは、可動当接部56が集積硬貨Cの周面に当接することで、可動当接部56が支持体31aの先端部から後退する方向(図1の反時計回り方向)に移動し、支持体31aの先端部を包装紙Pに近付けることができ、それによって巻込針25aの根本部29aを包装紙Pに近付けることができることによる。包装紙Pに対する巻込針25aの角度を巻き込みに適切な角度にできるのは、巻込針25aが包装硬貨Cの径に応じた適切な角度に回動することによる。
【0049】
そして、巻込針25aの根本部29aと包装紙Pとの間の距離L1を小さくし、巻込針25aと包装紙Pとの角度を集積硬貨Cの径に応じた適切な角度とすることにより、図3に示すように、巻込針25aの根本部29aに沿って包装紙Pの端部が位置し、巻込針25aが下降して回転している包装紙Pを巻き込む際、包装紙Pの端部が巻込針25aの根本部29aに沿って屈曲部29bに案内されて屈曲されるため、包装紙Pをスムーズに安定して巻き込むことができる。
【0050】
また、図2には、集積硬貨Cの金種が大径の500円硬貨C500である場合の包装紙Pの巻込動作を示す。なお、図2には上側の巻込針25aによる巻込動作を示すが、下側の巻込針25bによる巻込動作についても同様である。
【0051】
支持体31aの先端部が包装ローラ21a,21bの間を移動して集積硬貨Cの周面に当接する際、固定当接部55が集積硬貨Cの周面に当接し、可動当接部56は集積硬貨Cの周面に当接しない。
【0052】
固定当接部55が集積硬貨Cの周面に当接した状態で、包装硬貨Cに対して巻込針25aが位置決めされ、巻込針25aが集積硬貨Cの径に応じた適切な巻込位置に位置する。すなわち、巻込針25aの根本部29aと包装紙Pとの間の距離L2を小さくすることができるとともに、包装紙Pに対する巻込針25aの角度を巻き込みに適切な角度にできる。これらを可能としているのは、可動当接部材50および巻込針25aが回動しない状態で、予め適切な距離および適切な角度となるように設定されていることによる。
【0053】
そして、巻込針25aの根本部29aと包装紙Pとの間の距離L2を小さくし、巻込針25aと包装紙Pとの角度を集積硬貨Cの径に応じた適切な角度とすることにより、図3に示すように、巻込針25aの根本部29aに沿って包装紙Pの端部が位置し、巻込針25aが下降して回転している包装紙Pを巻き込む際、包装紙Pの端部が巻込針25aの根本部29aに沿って屈曲部29bに案内されて屈曲されるため、包装紙Pをスムーズに安定して巻き込むことができる。
【0054】
また、図7ないし図9には比較例を示す。この比較例は、可動当接部56および可動当接部材50を備えず、巻込針25aが支持体31aに固定されているものとする。なお、比較例において、本実施の形態と同様の構成については同一符号を用いて説明する。
【0055】
図7には、集積硬貨Cの金種が小径の1円硬貨C1である場合の包装紙Pの巻込動作を示す。図8には、集積硬貨Cの金種が大径の500円硬貨C500である場合の包装紙Pの巻込動作を示す。
【0056】
集積硬貨Cの径にかからず支持体31aの先端部が集積硬貨Cの周面に当接し、包装硬貨Cに対して巻込針25aが位置決めされるが、集積硬貨Cの径が異なると、巻込針25aが集積硬貨Cの径に応じた適切な巻込位置に位置しない。すなわち、集積硬貨Cの径によっては、巻込針25aの根本部29aと包装紙Pとの間の距離L11,L12が大きくなり、包装紙Pに対する巻込針25aの角度が大きく変化する。比較例では、1円硬貨C1の場合の距離L11が大きくなっている。そのため、1円硬貨C1の場合、図9に示すように、巻込針25aの屈曲部29bの頂部付近に包装紙Pの端部が対向し、巻込針25aが下降して回転している包装紙Pを巻き込む際、包装紙Pの端部が巻込針25aの屈曲部29bの頂部付近に接触するために、包装紙Pの端部を方向付けすることなくいきなり屈曲させることになって、包装紙Pの端部が座屈した状態となったり、包装紙Pの端部の一部が巻き込まれずに集積硬貨Cの端面上に出てしまうような巻込品質の低下が生じやすくなる。
【0057】
この比較例に対し、本実施の形態では、支持体31a,31bが集積硬貨Cの周面に対して接近移動した際に、可動当接部56が集積硬貨Cの周面に当接することにより、可動当接部56が集積硬貨Cの径に応じて変位して、巻込針25a,25bを集積硬貨Cの径に応じた巻込位置に回動させるため、簡単な構成で、集積硬貨Cの径が異なっても包装紙Pの巻込状態を均一に仕上げることができる。
【0058】
また、集積硬貨Cの周面との当接による可動当接部56の変位を、支持体31a,31bの固定当接部55が集積硬貨Cの周面に当接した位置で制限するため、巻込針25a,25bを集積硬貨Cの径に応じた巻込位置に位置させることができる。
【0059】
また、巻込針25a,25bと可動当接部56が巻込針25a,25bを中心として一体に回動するため、簡単な構成で、巻込針25a,25bを集積硬貨Cの径に応じた巻込位置に回動させることができる。
【0060】
また、可動当接部56を有する可動当接部材50を支持体31a,31bに対して巻込針25a,25bと一体に回動可能に設け、この可動当接部56の先端面を支持体31a,31bの先端面から突出する方向に向けてスプリング49で回動付勢するため、簡単な構成で、巻込針25a,25bを集積硬貨Cの径に応じた巻込位置に回動させることができる。
【0061】
また、支持体31a,31bを、固定位置の回動支点35を中心に集積硬貨Cの周面に対して接近および離反する方向に回動可能に設けているため、構成を簡単にできるとともに、支持体31a,31bの動きが安定することで、例えば集積硬貨Cの集積方向における巻込針25a,25bの移動距離をエンコーダなどで検知して包装紙Pの巻込状態の過不足検知をすることが容易にできる。
【0062】
なお、可動当接部56は、巻込針25a,25bを一体に備えていてもよい。
【0063】
また、可動当接部56の変位は、回動に限らず、直線的な変位でもよく、この直線的な変位を回動変位に変換して巻込針25a,25bを伝達するようにしてもよい。
【0064】
また、集積硬貨Cの金種が大径の500円硬貨C500である場合にも、可動当接部56が集積硬貨Cの周面に当接し、巻込針25aを集積硬貨Cの径に応じた適切な巻込位置に位置させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
15 包装紙巻込装置
25a,25b 巻込針
26 巻込針移動機構
31a,31b 支持体
35 回動支点
49 付勢手段としてのスプリング
50 可動当接部材
55 固定当接部
56 可動当接部
C 集積硬貨
P 包装紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9