(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の断面形状を中心軸回りに回転させた円環状に形成された弾性体を上下方向に複数配列した積み重ね弾性体を有する動吸振器を、中心軸を実質的に上下方向に沿わせて制振対象に設置し、
前記積み重ね弾性体の上端部及び下端部の一方を前記制振対象に固定するとともに他方を前記制振対象に対して変位可能な状態としたこと
を特徴とする制振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1においては、制振対象に合わせて適切な特性を持つ弾性体を設計するため、円筒容器の振動を等価的な1自由度系で表すモデルが提案されている。このモデルは円筒容器の振動特性をよく表しているが、円筒以外の形状に対する適応については検討されていない。
このような動吸振器を鉄道車両に適用する場合、円筒形状で十分な制振効果を得ようとすると、高さ方向の寸法が大きくなり、設置スペースの確保が困難であることが懸念される。
上述した問題点に鑑み、本発明の課題は、良好な制振性能を有しかつ高さ方向のサイズを小さくした制振装置及びこのような制振装置を有する鉄道車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の制振装置は、所定の断面形状を中心軸回りに回転させた円環状に形成された弾性体を有する動吸振器を、中心軸を実質的に上下方向に沿わせて制振対象に設置し、前記弾性体の上端部及び下端部の一方を前記制振対象に固定するとともに他方を
前記制振対象に対して変位可能な状態としたことを特徴とする。
これによれば、円筒状の弾性体を有する動吸振器に対して、高さ方向の寸法を抑えつつ実質的に同様の制振効果を得ることができる。
これによって、鉄道車両用車体等の制振対象へ実装する際のスペースの確保が容易となる。
また、本発明の制振装置は、所定の断面形状を中心軸回りに回転させた円環状に形成された弾性体を上下方向に複数配列した積み重ね弾性体を有する動吸振器を、中心軸を実質的に上下方向に沿わせて制振対象に設置し、前記積み重ね弾性体の上端部及び下端部の一方を前記制振対象に固定するとともに他方を
前記制振対象に対して変位可能な状態としたことを特徴とする。
これによれば、複数の弾性体を積み重ねて利用することによって、その重畳効果によって制振効果を高めることができる。
本発明において、前記弾性体は、可撓性を有する材質によって形成された袋状体に流体を封入して構成される構成とすることができる。
また、本発明において、前記弾性体は、粘弾性を有するゲル状体によって形成される構成とすることができる。
【0007】
本発明において、前記弾性体の第1の箇所と、前記第1の箇所から離間して配置された第2の箇所との相対速度あるいは相対変位に応じて減衰力を発生する減衰手段を有する構成とすることができる。
これによれば、振動の発生時に減衰力を発生させることによって、制振性能をより高めることができる。
この場合、前記第1の箇所と前記第2の箇所は、それぞれ前記弾性体の上部及び下部に設けられる構成とすることができる。
【0008】
本発明において、前記弾性体の上部に
固有振動数チューニング用の錘を載置した構成とすることができる。
これによれば、錘の質量によって、固有振動数などのチューニングを容易に行うことができる。
【0009】
本発明において、前記弾性体の上端部及び下端部を、実質的に上下方向に沿って直進案内する案内手段を有する構成とすることができる。
これによれば、弾性体の横方向等への振動を抑制して上下方向の振動を効果的に減衰させることができる。
【0011】
また、本発明の鉄道車両は、前後方向に離間して配置された複数のボギー台車上に枕ばねを介して載置された車体と、前記車体の一部に取付けられた上記いずれかの制振装置とを備えることを特徴とする。
これによれば、車体の振動を抑制して、乗り心地を向上することができる。
本発明において、前記制振装置は、前記車体の床面上であって腰掛の下側に取付けられる構成とすることができる。
また、本発明において、前記制振装置は、前記車体の屋根構の上面又は下面に取り付けられる構成とすることができる。
また、本発明において、前記制振装置は、前記車体の内装部材に取付けられる構成とすることができる。
また、本発明において、前記制振装置は、前記車体の構体に設けられた梁状部材に取付けられる構成とすることができる。
また、本発明において、前記制振装置は、前記車体の床下に吊下げられる構成とすることができる。
また、本発明において、前記制振装置は、前記車体の床下に吊下げられた機器箱の内部に設けられる構成とすることができる。
また、本発明において、前記制振装置は、前記車体の内部に配置される腰掛の下部に吊下げられる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、良好な制振性能を有しかつ高さ方向のサイズを小さくした制振装置及びこのような制振装置を有する鉄道車両を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した制振装置及び鉄道車両の実施形態について説明する。
本発明の発明者らは、上述した非特許文献1において、弾性円筒容器の振動・変形を等価な1自由度系として扱う等価変形モデルを提案した。これによると、弾性円筒容器を動吸振器として用いる場合、容器の直径に対する高さの比が大きいほど制振効果が大きくなる。
そして、直径と高さの比が1:3
1/2以上のときに、最適設計された動吸振器よりも大きな制振効果が見込めることがわかっている。
すなわち、同じ材料、直径の円筒容器の場合には、高さが高くなるほど大きな制振効果が期待できる。
【0015】
ところで、弾性円筒容器を動吸振器として用いる場合、主系の固有振動数と弾性容器の固有振動数とを一致させるように、容器の材料や寸法、形状などを設計する必要がある。
実際の鉄道車両車体の主要な曲げモードの固有振動数は10Hz程度であるため、弾性円筒容器も固有振動数が10Hz程度になるように設計する必要があるが、弾性円筒容器の固有振動数は、容器の高さが高くなるほど低くなる傾向がある。
【0016】
このため、効果的に制振効果を得るためには、容器の半径を小さくし、高さを高くしながら固有振動数を調節する必要があるといえる。
しかし、実際に鉄道車両に搭載することを考えると、スペースの制約からあまり高さのあるものを搭載することはできない。
また、容器の直径に対して高さが高くなるとロッキングが生じやすくなり、意図した変形、振動をしなくなる可能性がある。
そこで、本発明の発明者らは、高さが低く、ロッキングが生じにくいような形状として、弾性トーラス容器状の動吸振器を提案するものである。
【0017】
以下、本発明を適用した制振装置及び鉄道車両の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の制振装置の外観図であって、
図1(a)は斜め上方から見た斜視図であり、
図1(b)は直上から見た平面図である。
この弾性トーラス容器41におけるトーラスは、半径rの円を、円の中心O’からR離れた点Oを通り、線分OO’に垂直な直線を軸に回転させたものである。
このトーラスの体積Vは、以下の式1によって表される。
V=2π
2r
2R ・・・(式1)
弾性トーラス容器モデルでは、ゴム製のトーラス容器の中に水が充填されており、トーラス容器の底面にはアクリル板が取り付けられている。
ゴムの厚さは例えば2mmに設定した。
【0018】
上述した式1より、体積V、回転円半径r、回転半径Rのうち2つが決まると、もう1つの値も決まる。
今回は、体積Vを8.5×10
−3m
3で一定とし、rを40mmから70mmまで5mm刻みで変えて、7種類のFEMモデルを作成した。
各モデルのr、R及びPAM−CRASHを用いた数値計算により得られた1次モードの固有振動数fを表1に示す。
【表1】
【0019】
作成した7種類のトーラス容器モデルの加振シミュレーションを行い、時系列応答を求めた。
シミュレーションにおいて、加振時間は60秒とした。
得られた底板中央の上下加速度から、トーラス頂点部の上下加速度までのFRFを
図2に示す。
図2から明らかなように、各モデルともはっきりとした1次モードのピークを有することがわかる。
また、1次モードの固有振動数を回転円半径rに対してプロットしたグラフを
図3に示す。
図3からは、7種類のモデルの場合、トーラスモデルのrと固有振動数fとは概ね比例関係にあることがわかる。
この相関関係を利用すると、同体積でrの異なる2つの弾性トーラス容器モデルの固有振動数から、さらにrの異なる弾性トーラス容器モデルの固有振動数を推定することができると考えられる。
【0020】
以上説明した弾性トーラス容器の動吸振器としての制振性能を評価するために、これらを1自由度系モデルの上に載せて加振シミュレーションを行った。
図4は、加振シミュレーションで用いたモデルを示す図である。
このモデルは、ばねダンパモデルの上に質量を載せた1自由度系の上に、弾性トーラス容器を載せたものである。
【0021】
水の質量が2.11kgであり、固有振動数が61.5Hzの弾性トーラス容器を設計し、シミュレーションを行った。
設計した弾性トーラス容器の寸法値を表2に示す。
【表2】
また、このトーラスモデルを単体で加振した場合の周波数特性を
図5に示す。
図5より、トーラスモデルの固有振動数が61.5Hzになっていることが確認できる。
【0022】
制振対象となる1自由度系は、弾性容器の水部が系の5%の質量となること、系の固有振動数が弾性容器と同じ61.5Hzとなること、減衰比が5%になることの三つを条件にパラメータの設定を行った。
系の質量、ばね定数、減衰係数を表3に示す。
【表3】
【0023】
シミュレーションでは、主系に外部から振動が入力されることを模擬し、ばねダンパモデルの下部の節点に上下方向の強制加速度入力を与えた。
加振信号は、5−200Hzのバンドランダム波とし、60秒間加振を行った。シミュレーションで得られた加振信号から剛体中央の上下加速度までのFRFを
図6に示す。
図6を見ると、弾性トーラス容器は動吸振器として働いていることがわかる。
【0024】
以下、上述したような弾性トーラス容器を動吸振器として有する制振装置を備える鉄道車両の第1実施形態について説明する。
図7は、第1実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図であって、
図7(a)は進行方向から見た図であり、
図7(b)は側方から見た図である。(
図8〜
図22において同様)
車体10は、例えば、前後一対の2軸ボギー台車の上に、枕ばねを介して載置されるものである。
第1実施形態において、車体10は、例えば通勤車両等に用いられるロングシート車である。
車体10は、台枠によって支持された床面部11側端部、前後端部から、車体側面を構成する側構12、車体妻面を構成する妻構13を立設し、上部に屋根構14を設けることによって、実質的に六面体状に形成されている。
【0025】
車体10の側部には、ドア20が設けられている。
ドア20は、乗客の乗降に用いられる引き戸であって、例えばこのようなロングシート車の場合には、車体10の側部に2〜6箇所程度(
図7においては3箇所の例を示す)に設けられている。
車室内におけるドア20の間隔には、腰掛30が設けられている。
腰掛30は、乗客が枕木方向中央側を向いて着座するロングシートであって、側構に沿って配置された背もたれ及び側構から車内側に突き出した座面部を有して構成されている。
【0026】
また、車体10の床面部11の上面には、動吸振器として上述したような弾性トーラス容器41を有する制振装置40が設けられている。
制振装置40は、弾性トーラス容器の下部を床面部11上に固定し、上部はフリーな状態となっている。
第1実施形態においては、制振装置40は、腰掛30の下に、ロングシートの長手方向(車両前後方向)にほぼ沿って配列されている。
【0027】
以上説明した第1実施形態によれば、通常はデッドスペースとなる腰掛30の下部のスペースに、弾性トーラス容器を有する制振装置40を配置することによって、車室内の実質的な広さや使い勝手を損なうことなく、車体振動を抑制して乗り心地を向上することができる。
【0028】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第2実施形態について説明する。
以下説明する各実施形態において、従前の実施形態と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図8は、第2実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第2実施形態において、車体10は、例えば、特急車両等に用いられるクロスシート車である。
ドア20は、例えば車両の前後端部に設けられたデッキに設けられている。
腰掛31は、乗客が前後方向を向いて着座するクロスシートである。
図8(a)に示すように、腰掛31は、通路を挟んだ両側に例えば2列ずつ設けられている。
第2実施形態においても、制振装置40は、各腰掛31の下側における床面部11上に固定されている。
以上説明した第2実施形態においても、上述した第1実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0029】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第3実施形態について説明する。
図9は、第3実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第3実施形態の車体は、第1実施形態と同様のロングシート車において、制振装置40を屋根構14の上面部に取付けたものである。
制振装置40は、車幅方向に離間して例えば2列に配列されている。
以上説明した第3実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0030】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第4実施形態について説明する。
図10は、第4実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第4実施形態の車体は、第2実施形態と同様のクロスシート車において、第3実施形態と同様に制振装置40を屋根構14の上面部に取付けたものである。
以上説明した第4実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0031】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第5実施形態について説明する。
図11は、第5実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第5実施形態の車体は、第1実施形態と同様のロングシート車において、制振装置40を屋根構14の下面部に吊下げたものである。
制振装置40は、車幅方向に離間して例えば2列に配列されている。
以上説明した第5実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0032】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第6実施形態について説明する。
図12は、第6実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第6実施形態の車体は、第2実施形態と同様のクロスシート車において、第5実施形態と同様に制振装置40を屋根構14の下面部に吊下げたものである。
以上説明した第6実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0033】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第7実施形態について説明する。
図13は、第7実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第7実施形態の車体は、第1実施形態と同様のロングシート車において、制振装置40を屋根構14の下側に設けられる内装部材である化粧板15の上面部に取付けたものである。
制振装置40は、車幅方向に離間して例えば2列に配列されている。
以上説明した第7実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0034】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第8実施形態について説明する。
図14は、第8実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第8実施形態の車体は、第2実施形態と同様のクロスシート車において、第7実施形態と同様に制振装置40を化粧板15の上面部に取付けたものである。
以上説明した第8実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0035】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第9実施形態について説明する。
図15は、第9実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第9実施形態の車体は、第1実施形態と同様のロングシート車において、制振装置40を屋根構14の下側に設けられる梁状部材である垂木16の上面部に取付けたものである。
垂木16は、車両の前後方向に離間して複数配列されている。
制振装置40は、車幅方向に離間して例えば2列に配列されている。
以上説明した第9実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0036】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第10実施形態について説明する。
図16は、第10実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第10実施形態の車体は、第2実施形態と同様のクロスシート車において、第9実施形態と同様に制振装置40を垂木16の上面部に取付けたものである。
以上説明した第10実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0037】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第11実施形態について説明する。
図17は、第11実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第11実施形態の車体は、第1実施形態と同様のロングシート車において、制振装置40を腰掛30の下側における床面部11の下面に吊下げたものである。
以上説明した第11実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0038】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第12実施形態について説明する。
図18は、第12実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第12実施形態の車体は、第2実施形態と同様のクロスシート車において、第11実施形態と同様に制振装置40を腰掛31の下側における床面部11の下面に吊下げたものである。
以上説明した第12実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0039】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第13実施形態について説明する。
図19は、第13実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第13実施形態の車体は、第1実施形態と同様のロングシート車において、制振装置40を床面部11の下面に吊下げられた複数の機器箱17の内部に収容し、機器箱17の底面に取り付けたものである。
機器箱17は、車両の前後方向、車幅方向に離間して複数配置され、制振装置40は、機器箱17のいずれかあるいは複数の内部に配置される。
以上説明した第13実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0040】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第14実施形態について説明する。
図20は、第14実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第14実施形態の車体は、第2実施形態と同様のクロスシート車において、第13実施形態と同様に制振装置40を機器箱17の内部に収容したものである。
以上説明した第14実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0041】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第15実施形態について説明する。
図21は、第15実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第15実施形態の車体は、第1実施形態と同様のロングシート車において、制振装置40を腰掛30の下面から吊下げたものである。
以上説明した第15実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0042】
次に、本発明を適用した鉄道車両の第16実施形態について説明する。
図22は、第16実施形態の鉄道車両の車体を示す模式的透視図である。
第16実施形態の車体は、第2実施形態と同様のクロスシート車において、第15実施形態と同様に制振装置40を腰掛31の下面から吊下げたものである。
以上説明した第16実施形態においても、上述した各実施形態の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0043】
次に、本発明を適用した制振装置の第17実施形態について説明する。
図23は、第17実施形態の制振装置の模式的断面図である。
第17実施形態の制振装置40は、弾性トーラス容器41、上面板42、下面板43、ダンパ44を備えて構成されている。
上面板42、下面板43は、弾性トーラス容器41の上端部、下端部にそれぞれ取り付けられた平板状の部材である。
ダンパ43は、ロッド伸縮方向を鉛直方向にほぼ沿わせて配置された、油圧式、摩擦式等の減衰要素であって、その両端部は上面板42、下面板43の中央部にそれぞれ取り付けられている。
ダンパ43は、上面板42と下面板43との上下方向の相対速度あるいは相対変位に応じて減衰力を発生するものである。
以上説明した第17実施形態によれば、制振装置の減衰特性のチューニングが容易となり、制振効果をより向上することができる。
【0044】
次に、本発明を適用した制振装置の第18実施形態について説明する。
図24は、第18実施形態の制振装置の模式的断面図である。
第18実施形態の制振装置40は、弾性トーラス容器41、上面板42、下面板43、錘45を備えて構成されている。
錘45は、上面板42の上部に固定された質量体である。
以上説明した第18実施形態によれば、制振装置の固有振動数のチューニングが容易となり、制振対象に対する適合性を向上することができる。
【0045】
次に、本発明を適用した制振装置の第19実施形態について説明する。
図25は、第19実施形態の制振装置の模式的断面図である。
第19実施形態の制振装置40は、弾性トーラス容器41、上面板42、下面板43、リニアガイド46を備えて構成されている。
リニアガイド46は、上面板42と下面板43とが鉛直方向にほぼ沿って相対変位するよう直進案内するものである。
リニアガイド46は、上面板42から下方に突き出した内筒46aを、下面板43から上方に突き出した外筒46bの内径側に実質的に同心となるように挿入して構成されている。
以上説明した第19実施形態によれば、上下方向以外への動きを抑制することによって、弾性トーラス容器41が横方向に振動することを防止できる。
【0046】
次に、本発明を適用した制振装置の第20実施形態について説明する。
図26は、第20実施形態の制振装置の模式的断面図である。
第20実施形態の制振装置40は、弾性トーラス容器41を複数段(例えば3段)、上下方向に積層して配置し、その上端部、下端部にそれぞれ上面板42、下面板43を取付けたものである。
以上説明した第20実施形態によれば、複数の弾性トーラス容器41を積層して用いることによって、その重畳効果によって制振効果を向上することができる。
このような積層した弾性トーラス容器を有する制振装置は、例えば、第13、第14実施形態の鉄道車両のように、機器箱17の内部等に収容することができる。
【0047】
(他の実施形態)
なお、本発明は上述した各実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。
例えば、各実施形態では、ゴム等の可撓性を有する材料によって形成された環状の袋状体に水等の流体を収容した弾性トーラス容器を用いているが、これに代えて、動吸振器として機能する弾性体として、例えばゲル状体などの粘弾性を有する材料を円環状に形成して用いてもよい。
また、環状の袋状体に収容する流体は、水のほか油や吸水性樹脂、水溶性ポリマーなどより粘度の高いものや、ゲル状体としてもよい。また、液体やゲル状体に限らず、空気その他の気体を用いてもよい。
また、例えば第17実施形態等のような減衰要素が、第19実施形態等のようなリニアガイドを兼ねる構成としてもよい。
また、弾性体を径方向に切って見た断面形状は、各実施形態のように実質的に円形のものに限らず、例えば楕円状、長円状等、他の形状であってもよい。
また、制振装置が設けられる制振対象も、鉄道車両には限定されない。
また、鉄道車両に制振装置を取り付ける場合の設置手法、設置個数、配置等も各実施形態には限定されず、適宜変更することが可能である。
また、上述した実施形態では、一例としてロングシート車及びクロスシート車について説明したが、本発明は座席配置の形態等とは無関係に適用可能であり、収容可能な腰掛を有する車両、同一車両内にロングシート部分とクロスシート部分が混在するセミクロスシート車、これら以外の座席配置を有するサロンカー、寝台車、食堂車等にも適用することができる。さらに、旅客車に限定されず、貨車やコンテナ車等、腰掛の有無や座席配置に関わらず適用可能である。