特許第5945224号(P5945224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945224
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】クルクミンの風味のマスキング方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/20 20160101AFI20160621BHJP
【FI】
   A23L27/20 F
   A23L27/20 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-510644(P2012-510644)
(86)(22)【出願日】2011年4月8日
(86)【国際出願番号】JP2011058942
(87)【国際公開番号】WO2011129284
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】61/324,983
(32)【優先日】2010年4月16日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三内 剛
(72)【発明者】
【氏名】徳野 勝也
(72)【発明者】
【氏名】小田 誠志
(72)【発明者】
【氏名】西野 雅之
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/007273(WO,A1)
【文献】 特開2006−111534(JP,A)
【文献】 Food Chemistry,2010年 3月,vol.119,pp.669-674
【文献】 Eur Food Res Technol,2009年,vol.229,pp.391-396
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00−27/40
A23L 27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
PubMed
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミン(但し、ターメリックパウダー中に含有されているクルクミンを除く。)と加工澱粉とを混合すること(但し、ミセル外のクルクミンを除去して、内部にクルクミンが封入された疎水性修飾澱粉のミセルの清澄な溶液を得ること;並びにゼラチン及び多孔質澱粉と混合してマイクロカプセル化することを除く)を特徴とする、クルクミンの風味のマスキング方法。
【請求項2】
加工澱粉の添加量がクルクミン1質量部に対し0.01〜10質量部である請求項1記載のクルクミンの風味のマスキング方法。
【請求項3】
加工澱粉がアセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、カルボキシメチル澱粉、酢酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、リン酸澱粉、リン酸架橋澱粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載のクルクミンの風味のマスキング方法。
【請求項4】
加工澱粉及びクルクミン(但し、ターメリックパウダー中に含有されているクルクミンを除く。)を混合すること(但し、ミセル外のクルクミンを除去して、内部にクルクミンが封入された疎水性修飾澱粉のミセルの清澄な溶液を得ること;並びにゼラチン及び多孔質澱粉と混合してマイクロカプセル化することを除く)により、クルクミンの風味をマスキングすることを特徴とする、クルクミン組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2010年4月16日に出願された、米国仮特許出願第61/324983号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、クルクミンの有する、好ましくない風味をマスキングし、抵抗感無く飲食できる製剤とする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ウコンは、天然食品添加物や香辛料として昔より汎用されている食品素材であり、これを含有する飲食品が多数市場に現れている。その一方で、近年、抗酸化作用、抗炎症作用、および抗がん作用が報告され、機能性天然物質としても注目されてきている。ウコン(Turmeric, Curcuma longaL.)は、黄色主成分として、クルクミンを含有しており、その生理活性も研究が実施されている。
【0004】
しかし、ウコンには独特の風味があり、敬遠される傾向にある。
【0005】
そのため、ウコンを抽出したものよりも、上記黄色主成分であるクルクミンが汎用される傾向にある。また、ウコンのマスキング剤として、マルトデキストリン、シクロデキストリン、トレハロース等が用いられているが(特許文献1)、風味のマスキング効果についてはまだまだ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−28042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、クルクミン特有の香りや風味(苦味、におい)等をマスキングし、改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記ウコンやクルクミンの有する機能性を利用できるように、飲食への抵抗感を低減させるため、クルクミン特有の風味をマスキングする方法を検討した結果、マスキング剤として加工澱粉を用い、これをクルクミンに添加することにより、その風味を効果的にマスキングできることを見出した。本発明は、上記の新規知見に基づくものである。
【0009】
従って、本発明は、以下の項を提供する:
項1.クルクミンと加工澱粉とを混合することを特徴とする、クルクミンの風味のマスキング方法。
【0010】
項2.加工澱粉の添加量がクルクミン1質量部に対し0.01〜10質量部である項1記載のクルクミンの風味のマスキング方法。
【0011】
項3.加工澱粉がアセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、カルボキシメチル澱粉、酢酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、リン酸澱粉、リン酸架橋澱粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉からなる群より選択される少なくとも一種である項1又は2に記載のクルクミンの風味のマスキング方法。
【0012】
項4.加工澱粉及びクルクミンを混合することにより、クルクミンの風味をマスキングすることを特徴とする、クルクミン組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
当該クルクミンと、マスキング剤として加工澱粉を飲食品に添加することにより、クルクミン特有の風味が低減された飲食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
クルクミンの風味のマスキング方法
本発明は、クルクミンと加工澱粉とを混合することを特徴とする、クルクミンの風味のマスキング方法を提供する。
【0015】
本発明で使用する加工澱粉とは、トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、もち米、タピオカ、サゴヤシ等の澱粉を原料とし、これらに分解型および付加型に大別される化学処理を施したものである。なお、これらの澱粉原料は1種単独で用いても、また2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。澱粉原料として好ましくは、トウモロコシまたはタピオカである。トウモロコシの種類として、デント種(馬歯種)、フリント種(硬粒種)、ソフト種(軟粒種)、スイート種(甘味種)、ポップ種(爆裂種)及びワキシー種(もち種)が知られている。本発明においても特に制限されず任意の種類のトウモロコシを澱粉原料として用いることができるが、好ましくは澱粉がもち種であるワキシー種のトウモロコシ(本明細書においては、単に「ワキシーコーン」ともいう)である。
【0016】
本発明に使用できる加工澱粉の例として、上記原料澱粉を加工して得られるアセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、カルボキシメチル澱粉、酢酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、リン酸澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等を挙げることができ、好ましくはヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及びオクテニルコハク酸澱粉であり、より好ましくはオクテニルコハク酸澱粉である。これらの加工澱粉は、1種単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0017】
本発明によれば、クルクミンに上記加工澱粉を添加することにより、クルクミンの風味をマスキングすることができる。
【0018】
クルクミンに対する加工澱粉の添加量は、特に限定されないが、クルクミン1質量部に対し加工澱粉を、通常、0.01〜10質量部、好ましくは、0.1〜10質量部添加する。
【0019】
本発明の好ましい加工澱粉添加の態様として、クルクミンと加工澱粉を混合した組成物としても良いし、クルクミンと加工澱粉を飲食品に添加しても良い。更にクルクミンと加工澱粉を製剤化して用いても良い。
【0020】
本発明のマスキング方法の原料となるクルクミンは、好ましくは、ウコン色素またはウコンエキスに含まれた状態で用いられる。
【0021】
本発明でいうクルクミンは、ショウガ科ウコン(Curcuma longaLINNE)の根茎から得られるものである。
好ましくは、ウコンの根茎の乾燥品(ウコン粉末)から温時エタノールで、熱時油脂若しくはプロピレングリコールで、または室温時〜熱時ヘキサン若しくはアセトンで抽出して調製されるクルクミンである。さらに好ましくは結晶状態のクルクミンである。かかるクルクミンは、ウコン粉末をヘキサン及びアセトンによって抽出し、その抽出溶液を濾過後、乾燥させて溶媒を揮発させることによって調製することができる。或いは、合成品を用いることもできる。
【0022】
なお、簡便には、商業的に入手できるウコン色素(クルクミンの粉末:結晶状態)を使用することができる。かかるクルクミン粉末は、三栄源エフ・エフ・アイ(株)等から購入することができる。
【0023】
加工澱粉は予め溶媒に溶解させ、加工澱粉溶液とし、次いでこれにクルクミンを添加して混合することが好ましい。加工澱粉を溶解させる溶媒としては、食品に用いられる溶媒であってクルクミンが溶解しない溶媒であれば特に限定されないが、好ましくは水、及び水と相溶性のある溶媒と水との混合溶媒を挙げることができる。かかる水と相溶性のある溶媒としては、例えばエタノール等の低級アルコール:プロピレングリコールやグリセリン等の多価アルコール:果糖ブドウ糖液、ショ糖液、異性化糖液等の糖液、結晶果糖等が挙げられる。本明細書では、これらの溶媒を総称して「含水溶媒」と称する。またかかる溶媒に溶解した加工澱粉溶液を「加工澱粉の含水溶液」と称する。
【0024】
加工澱粉は、最終濃度が0.00001〜20質量%、好ましくは0.0001〜15質量%、より好ましくは0.001〜10質量%となるように、含水溶媒(好ましくは水)に溶解し、次いで得られた加工澱粉の含水溶液にクルクミンを添加し混合する。
【0025】
加工澱粉の含水溶液とクルクミンとの混合方法としては、混合できさえすれば特に限定されるものではなく、慣用の攪拌機を用いて攪拌することによって行うことができる。例えば、調製した加工澱粉の含水溶液にクルクミンを添加し、その後プロペラ等を用いて撹拌混合する方法を挙げることができる。撹拌混合の際の温度は、特に限定されないが、例えば、1〜100℃範囲で設定できる。撹拌混合の時間も、製造スケールにより異なるため特に限定されないが、例えば、1〜60分の範囲で設定できる。撹拌速度も製造スケールにより異なるため特に限定されないが、例えば1〜3000RPMの範囲で設定できる。
【0026】
撹拌混合された加工澱粉の含水溶液とクルクミンの混合物は、次いで粉砕処理(微粒子化処理)しても良い。粉砕処理(微粒子化処理)の方法としては、物理的破砕法が好ましい。物理的破砕法としては、湿式粉砕機を用いた処理を挙げることができる。かかる湿式粉砕機として、具体的には、ウルトラビスコミル及びダイノミルを挙げることができる。また、ビーズを入れる等の工夫により、サンドミルやコボールミル等の湿式粉砕機も用いることができる。
【0027】
加工澱粉の含水溶液中でクルクミンを混合または粉砕処理されたクルクミン液状組成物は、必要に応じて、その後更に、微粒子化したウコン色素等の成分を均一に混合するために均質化処理を行うこともできる。均質化処理の方法としては、クルクミン等の成分を均質に分散する方法であれば特に制限されず、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、ホモジナイザー等の乳化・分散装置、超音波分散機を使用して行うことができる。均質化処理をすることにより、クルクミンの凝集がほぐれて水への分散性及び分散安定性がより向上する。
【0028】
クルクミン液状組成物を添加配合する対象製品(例えば、着色する対象の製品(被着色製品))に合わせて適宜pHを調整することもできる。好ましくはpH8以下に調整する。用いるpH調整剤としては、リン酸、硫酸、塩酸等の無機酸類、及びクエン酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸類を例示することができる。これらは被着色製品の種類や調整するpHに応じて、適宜使用することができる。
【0029】
また、必要に応じて、上記方法により得られるクルクミン液状組成物を乾燥粉末化することにより、粉末状のクルクミン組成物(クルクミン粉末組成物)を調製することも可能である。かかるクルクミン粉末組成物は、非常に濃い濃度でクルクミンを含有する製品を調製するのに有用であり、また乾燥状態の食品や錠剤等の製品を乾式方法で製造する際に使用が可能であること、防腐剤の必要がなく保存性が高いこと等の利点がある。乾燥粉末化に用いられる乾燥機については特に制限はなく、スプレードライヤー、スラリードライヤー等の液滴噴霧型乾燥機や凍結乾燥機等を例示することができる。
【0030】
また、クルクミン粉末組成物をさらに造粒処理することにより、さらにまた必要に応じて打錠処理することにより、クルクミン組成物を顆粒状の形態(クルクミン顆粒組成物)または錠剤の形態(クルクミン錠剤組成物)に調製することもできる。かかる顆粒または錠剤は、必要に応じて当業界に公知の添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等)を配合して、慣用の製剤技術に従って製造することができる。なかでも顆粒状の形態のクルクミン組成物は、飲料または化粧水等の水性製品に添加する際に溶解性に優れ、速やかに溶解するという利点がある。
【0031】
なお、本発明の効果を奏する限りにおいて、クルクミン組成物に対して、例えば、増粘多糖類、香料、色素、酸化防止剤、日持ち向上剤、保存料、糖類等の添加物を併用することができる。これらを併用することによりクルクミン組成物の味質や香り、テクスチャーに変化を与えることができ、より嗜好性の高いクルクミン組成物を調製することができる。
【0032】
クルクミン組成物の製造方法
本発明は、加工澱粉及びクルクミンを混ぜた組成物を調製し、クルクミンの風味をマスキングすることを特徴とするクルクミン組成物の製造方法を提供する。
【0033】
本発明の方法に用いられる加工澱粉及びクルクミン、ならびにクルクミン組成物化の方法は、前述したマスキング方法と同様の条件を用いることができる。
【0034】
クルクミン組成物の用途
(1)食品添加物や添加剤としての使用
本発明のクルクミン組成物は、例えば食品添加物や添加剤として、より具体的には着色料または香料として、各種の食品(一般食品(健康食品を含む)のほか、サプリメント等の健康補助食品も含まれる)、及び化粧品に使用することができる。
【0035】
食品は液状、半固形状又は固形状の何れでもよく、その具体例としては以下のものが挙げられる。
【0036】
飲料(例えば、炭酸飲料、果実飲料(果実飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果肉飲料を含む)、野菜飲料、野菜・果実飲料、低アルコール飲料、コーヒー飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、サプリメント飲料、紅茶飲料、緑茶、ブレンド茶等);デザート(例えば、カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン、ゼリー、ババロア等);冷菓(例えば、アイスクリーム、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム、ソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット等);ガム(例えば、チューインガム、風船ガム等);チョコレート(例えば、マーブルチョコレート等のコーティングチョコレート、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート、メロンチョコレート等);キャンディー(例えば、ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等);その他の菓子(例えば、ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子等);スープ(例えば、コンソメスープ、ポタージュスープ、パンプキンスープ等);漬物(例えば、浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、糠漬け、粕漬け、麹漬け、酢漬け、芥子漬け、もろみ漬け、梅漬け、福神漬け、しば漬け、生姜漬け、梅酢漬け等);ジャム(例えば、ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム等);乳製品(例えば、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、チーズ等);油脂(例えば、バター、マーガリン等);穀物加工食品(例えば、パン類、麺類、パスタ類等);水畜産加工食品(例えば、ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ等);調味料(例えば、みそ、タレ、ソース、卓上レモン、酢、マヨネーズ、サラダドレッシング、カレールー等);調理品(例えば、卵焼き、オムレツ、カレー、シチュー、ハンバーグ、コロッケ、スープ、お好み焼き、餃子、果物ジャム等)。
【0037】
上記食品は、好ましくは、飲料、ジャム、漬物、ソースに属する液状調味料であり、より好ましくは飲料である。また、サプリメント等の健康補助食品の場合、好ましくはシロップ剤、液剤、ドリンク剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、及びカプセル剤を挙げることができる。
【0038】
本発明のクルクミン組成物を食品添加物や添加剤(着色料又は着香料)として使用する場合、着色又は着香する対象の製品(例えば、飲食品、化粧品)は、当該製品の製造の任意の工程で、本発明のクルクミン組成物を、着色料又は着香料として配合することで製造することができ、この工程以外は、各種製品の慣用の製造方法に従って製造することができる。
【0039】
この場合、各種製品に対する上記クルクミン組成物の添加量は、所望の目的が達成できる量であれば特に制限されない。着色を目的とする場合、具体的には、本発明のクルクミン組成物を最終製品の全質量に対して、0.01質量%を下限値として添加することが挙げられる。
【0040】
ここで従来のクルクミン(従来型クルクミン組成物)としては、既存添加物名簿収載品目リスト(平成8年5月23日衛化第56号厚生省生活衛生局長通知「食品衛生法に基づく添加物の表示等について」別添1)の基原・製法に従って調製されるクルクミンの粉末から、含水エタノールで抽出して得られる液体状の可溶化クルクミン組成物を挙げることができる。
【0041】
(2)機能性成分としての使用
また、クルクミンの生理活性機能を期待する場合、本発明のクルクミン組成物は、それ自体、サプリメント等の健康補助食品として使用することができる。
【0042】
この場合、本発明のクルクミン組成物は「経口クルクミン製剤」として、硬カプセル剤、軟カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、ドリンク剤等の経口投与形態に調製することができる。
【0043】
この場合、本発明のクルクミン組成物(経口クルクミン製剤)の投与量は、使用者の年齢、体重、症状、投与形態、処置期間等によって変わるが、WHOのTechnical Reportによると、クルクミンのADI:0〜3mg/kg体重/日、NOAEL:250〜320mg/kg体重/日とされており(WHO Technical Report Series : 第33頁)、この範囲で1日に1回乃至複数回に分けて投与することができる。
【0044】
以下、本発明の内容を以下の製造例、実施例、比較例等を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、処方中、特に記載がない限り単位は「質量部」とする。
【実施例】
【0045】
製造例1
クルクミン組成物の調製方法
加工澱粉としてオクテニルコハク酸澱粉(NSC社製、ピュリティBE)60gを水830gに加え、90℃に加熱し水溶液を調製した。次いでその水溶液にクルクミンの粉末(粉末クルクミンNo.3705:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、結晶状、クルクミン含量88.3%)を110g添加し分散混合した後、離散水を添加して合計1000gとなるよう質量調整を行った。
【0046】
クルクミンの粉末を分散させた混合液を湿式摩砕機ダイノミル(WAB社製ダイノミルKDL)に供して湿式粉砕を行った後、ホモジナイザー(APV GAULIN社製高圧ホモジナイザー15MR−8TA)にて、室温にて20MPa1回分散均一化処理して、液状のクルクミン製剤(クルクミン液状製剤)を得た。平均粒子径(粒度分布(D50))は0.22μmであった。
【0047】
製造例2
粉末状のクルクミン組成物の調製
デキストリンNSD−C(株式会社ニッシ製)83gを水119gに加え60℃に加熱し均一に溶解した。そこに上記製造例1で調製したクルクミン組成物を100g添加しホモジナイザーにて均質化した。これをスプレードライヤー(東京理科機器株式会社)にて、乾燥粉末化した。得られた粉末(クルクミン粉末組成物)のクルクミン含量は9.7%であった。
【0048】
実験例1
<目的>
加工澱粉を用いて調製した上記クルクミン粉末組成物を用いて、クルクミンの風味改善効果を調べた(実施例1)。比較例として、特開2009-28042号公報に記載のクルクミン組成物を、下記表1の処方、及び調製方法1に従い、調製し、その風味改善効果を調べた(比較例1〜4)。
【0049】
【表1】
【0050】
<使用原料 詳細>
・結晶果糖 :クリスター300 DANISCO
・クルクミン組成物:粉末クルクミン製剤(クルクミン含量9.7%、加工澱粉含量6%)
・クルクミン原末:粉末クルクミンNo.3705(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社社製 クルクミン含量88.3%)
・ジェランガム:ケルコゲルLT-100 CP KELCO社
・マルトデキストリン:サンマルト(ミドリ)株式会社林原
・シクロデキストリン:デキシパールK-100塩水港製糖株式会社
【0051】
<調製方法1>
ジェランガム、結晶果糖、クエン酸、クエン酸ナトリウムを90℃で10分間加熱し、予め水溶液を調製した。次いでマルトデキストリン、シクロデキストリン、トレハロースを添加し溶解した。クルクミン組成物又はクルクミン原末を添加し、93℃達温でホットパックした。
【0052】
<官能評価1>
ブランクに対する風味の差を、4名のパネラー(A〜D)により官能評価した。
【0053】
評価基準:
5 ブランクと同等
4 ブランクに比べ僅かにクルクミンの風味が改善している
3 ブランクに比べ少しクルクミンの風味が改善している
2 ブランクに比べかなりクルクミンの風味が改善している
1 ブランクに比べ著しくクルクミンの風味が改善している
【0054】
【表2】
【0055】
<結果1>
以上の結果より、クルクミン組成物を用いた実施例1を使用した系において、明らかな風味の改善効果が確認できた。
【0056】
実験例2
加工澱粉の含量を変化させ、クルクミンの風味改善効果を確認した。具体的には、クルクミン組成物を、下記表3記載の処方及び調製方法2に従い調製し、その風味改善効果を調べた(比較例2〜5)。
【0057】
【表3】
【0058】
<調製方法2>
ジェランガム(ケルコゲルLT-100 CP KELCO社)、結晶果糖(クリスター300 DANISCO)、クエン酸、クエン酸ナトリウム、加工澱粉(ピュリティBE:NSC社)を90℃で10分間加熱し、予め水溶液を調製した。得られた水溶液に、1000RPMにて撹拌下表3に記載の割合で当該水溶液にクルクミン原末を添加した。得られたクルクミン含有組成物を、93℃達温でホットパックした。
【0059】
<官能評価2>
ブランクに対する風味の差を、実験例1の<官能評価1>と同様の方法及び評価基準により官能評価した。結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
<結果2>
クルクミン1質量部に対し、加工澱粉が0.01〜10質量部となる実施例2〜5においてクルクミンの風味の改善効果が認められた。
【0062】
実験例3
加工澱粉の種類を変化させ、クルクミンの風味改善効果を確認した。
【0063】
【表5】
【0064】
<調製方法3>
加工澱粉であるオクテニルコハク酸澱粉(ピュリティBE:NSC社)に代えてヒドロキシプロピル澱粉(ナショナル7:NSC社)又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(ピュリティ87:NSC社)を用いる以外、実施例2(調製方法2)と同様にして、クルクミン含有組成物を調製した(実施例6及び7)。
【0065】
<官能評価3>
ブランクに対する風味の差を、実験例1の<官能評価1>と同様の方法及び評価基準により官能評価した。結果を表6に示す。
【0066】
【表6】
【0067】
<結果3>
加工澱粉(ピュリティBE:NSC社)に代えてヒドロキシプロピル澱粉、及びヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を用いた場合もクルクミンの風味の改善効果が認められた。