(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付して、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る無停電電源装置101は、本体部を収納した筐体1と、筐体1に設けられたバイパス入力端子T1、交流入力端子T2、バッテリ端子T3および交流出力端子T4とを備える。入力端子T1,T2の各々は、商用電源2からの交流電力を受ける。交流電力は、三相または単相である。電力貯蔵装置であるバッテリ50は、筐体1とは別の筐体51に収容されており、筐体1のバッテリ端子T3とバッテリ50の正極端子50aとの間にスイッチ10が直列接続されている。交流出力端子T4には負荷52が接続されている。負荷52は交流電力を消費する負荷であるが、その種類は特に限定されるものではない。
【0014】
筐体1の中には、スイッチ5,15,16,20と、リアクトル7,13と、コンデンサ6,11,14と、コンバータ8と、チョッパ9と、インバータ12と、サイリスタ17と、冷却ファン21とが設けられる。筐体1の交流入力端子T2から順に、スイッチ5と、リアクトル7と、コンバータ8と、インバータ12と、リアクトル13と、スイッチ15とが筐体1の交流入力端子T2と交流出力端子T4との間に直列接続されている。
【0015】
コンデンサ6は、スイッチ5とリアクトル7との接続点、および基準電圧のライン(図示せず)の間に接続されている。コンデンサ11は、コンバータ8の出力ノード8aと基準電圧のライン(図示せず)との間に接続されている。コンデンサ14は、リアクトル13とスイッチ15との接続点、および基準電圧のライン(図示せず)の間に接続される。チョッパ9は、コンバータ8の出力ノード8aと、バッテリ端子T3との間に接続される。スイッチ16およびサイリスタ17は、バイパス入力端子T1と交流出力端子T4との間に並列接続される。
【0016】
筐体1の中には、主制御回路4がさらに設けられる。コンバータ運転/停止指令部31、インバータ運転/停止指令部32、およびチョッパ運転/停止指令部33の各々は、無停電電源装置101の使用者によって操作される。
【0017】
コンバータ8を運転させる場合は、コンバータ運転/停止指令部31のスイッチ(図示せず)がオンされ、信号φ1が「H」レベルにされる。コンバータ8の運転を停止させる場合は、コンバータ運転/停止指令部31のスイッチ(図示せず)がオフされ、信号φ1が「L」レベルにされる。
【0018】
インバータ12を運転させる場合は、インバータ運転/停止指令部32のスイッチ(図示せず)がオンされ、信号φ2が「H」レベルにされる。インバータ12の運転を停止させる場合は、インバータ運転/停止指令部32のスイッチ(図示せず)がオフされ、信号φ2が「L」レベルにされる。
【0019】
チョッパ9を運転させる場合は、チョッパ運転/停止指令部33のスイッチ(図示せず)がオンされ、信号φ3が「H」レベルにされる。チョッパ9の運転を停止させる場合は、チョッパ運転/停止指令部33のスイッチ(図示せず)がオフされ、信号φ3が「L」レベルにされる。主制御回路4は、指令部31〜33からの信号φ1〜φ3に従って、コンバータ8と、チョッパ9と、インバータ12と、スイッチ5,15,16,20と、サイリスタ17とを制御して、無停電電源装置101の全体を制御する。
【0020】
リアクトル7およびコンデンサ6は入力フィルタを構成し、コンバータ8で発生した高調波を抑制する。また、リアクトル13およびコンデンサ14は出力フィルタを構成し、インバータ12で発生した高調波を抑制する。
【0021】
冷却ファン21は、スイッチ20がオンすることにより、インバータ12から供給される交流電力を受ける。冷却ファン21は、この交流電力を用いて動作して、筐体1の内部の温度を下げる。
【0022】
筐体1の中には、さらに、温度センサ22,23と、停電時の電力供給を制御するための停電時電力供給制御回路24とが設けられる。温度センサ22,23は、筐体1の内部の温度を検出するセンサである。具体的には、温度センサ22は、チョッパ9の温度TCHOPを検出する。温度センサ23は、インバータ12の温度TINVを検出する。温度センサ22,23による検出温度は、停電時電力供給制御回路24へと送られる。
【0023】
主制御回路4は停電時電力供給制御回路24との間で信号を送受信する。これにより、無停電電源装置の給電モード(以下に説明)が切換わる。停電時電力供給制御回路24および主制御回路4は、本発明に係る無停電電源装置が備える「制御回路」を実現する。
【0024】
なお、停電時電力供給制御回路24および主制御回路4が1つの制御回路に統合されていてもよい。また、商用電源2の停電時においても主制御回路4および停電時電力供給制御回路24が動作可能なように、たとえば主制御回路4および停電時電力供給制御回路24に電力を供給するための蓄電池および電源回路を筐体1の内部に設けることができる。
【0025】
この無停電電源装置101の動作モードについて説明する。無停電電源装置101の起動時には、コンバータ運転/停止指令部31のスイッチ、インバータ運転/停止指令部32のスイッチ、およびチョッパ運転/停止指令部33のスイッチ(いずれも図示せず)がオンされる。これにより、信号φ1〜φ3が「H」レベルにされる。主制御回路4は、スイッチ5およびスイッチ10をオンするとともに、コンバータ8およびチョッパ9を起動させる。コンバータ8は商用電源2からの交流電力(第1の交流電力)を直流電力に変換する。チョッパ9は、コンバータ8の出力電圧を、バッテリ50の充電に適した電圧に変換する。このようなコンバータ8およびチョッパ9の動作によって、コンデンサ11およびバッテリ50が充電される。
【0026】
コンデンサ11およびバッテリ50の充電が完了すると、主制御回路4はインバータ12を起動する。インバータ12は、コンバータ8から供給された直流電力を、交流電力(第2の交流電力)に変換する。
【0027】
インバータ12は、交流電力の周波数および電圧の振幅値が一定となるように動作する。インバータ12の出力電圧が安定すると、主制御回路4はスイッチ15をオンさせる。これにより、無停電電源装置101は、インバータ給電モードで負荷52に交流電力を供給する。スイッチ15がオンされた後、スイッチ20がオンされて、冷却ファン21に交流電力が供給される。これにより冷却ファン21が駆動されて、筐体1内の空気が排出されるとともに、筐体1の内部に外気が導入される。
【0028】
コンバータ8、チョッパ9およびインバータ12は動作により熱を発する。冷却ファン21によって筐体1の内部が冷却されて、筐体1の内部の温度が下げる。これにより、コンバータ8、チョッパ9あるいはインバータ12の熱暴走あるいは故障を防ぐことができるので、これらの回路の動作を安定させることができる。
【0029】
商用電源2の停電時は、スイッチ5がオフされるとともにコンバータ8の運転が停止される。チョッパ9は、バッテリ50に蓄えられた直流電力をインバータ12に供給する。このとき、チョッパ9は、バッテリ50の直流電圧と、インバータ12に入力される直流電圧との間での電圧変換も行なう。インバータ12は、チョッパ9およびコンデンサ11を介してバッテリ50から供給された直流電力を、周波数および振幅がともに一定である交流電力に変換して負荷52に供給する。
【0030】
停電が発生した場合でも、バッテリ50に直流電力が蓄えられている限りは、無停電電源装置101は、直流給電モードで負荷52に電力を供給することができる。停電が短時間で回復した場合は、スイッチ5が再度オンされてコンバータ8が運転される。これにより無停電電源装置101は、インバータ給電モードに戻る。
【0031】
インバータ給電モード時にコンバータ8、チョッパ9およびインバータ12のいずれかが故障した場合には、サイリスタ17がオンされる。これにより、商用電源2からバイパス入力端子T1を介して負荷52に電力が供給される。次にスイッチ16がオンされるとともに、スイッチ15およびサイリスタ17がオフされてバイパス給電モードで負荷52に電力が供給される。サイリスタ17がオンした後にコンバータ8、チョッパ9およびインバータ12が停止される。
【0032】
さらに、インバータ給電モードにおいて、冷却ファン21に異常が生じた場合、または、温度センサ22,23の検出温度(TCHOP,TINV)が設定値を超えた場合には、バイパス給電モードで負荷52に電力が供給される。この場合には、まずサイリスタ17がオンされる。次にスイッチ16がオンされて、スイッチ15およびサイリスタ17がオフされる。サイリスタ17がオンした後に、コンバータ8、チョッパ9およびインバータ12が停止される。なお、「冷却ファン21の異常」とは、冷却ファン21の故障を含むが、たとえば回転数の低下など、本来の動作と異なる様々な状態を含むものである。したがって「冷却ファン21の異常」とは特定の現象に限定されるものではない。
【0033】
この実施の形態では、無停電電源装置101は、商用電源2が停電した場合に、インバータ給電モードから直流給電モードへと移行する。直流給電モード中に冷却ファン21に異常が生じた場合には、停電時電力供給制御回路24はスイッチ20をオフにする。ただし、チョッパ9およびインバータ12の動作が継続される。したがって、負荷52への給電(電力供給)が継続される。
【0034】
温度センサ22の検出温度TCHOPあるいは温度センサ23の検出温度TINVが、設定値T0を超えた場合には、停電時電力供給制御回路24はスイッチ15をオフして、負荷52への給電を遮断する。すなわち、直流給電モード中に冷却ファン21が故障しても、温度センサ22,23のいずれか一方の検出温度が設定値T0を検出するまでは、負荷52への給電を継続することができる。
【0035】
設定値T0は、チョッパ9あるいはインバータ12の保護の観点から適切に定めることができる。一例としては、設定値T0は、チョッパ9あるいはインバータ12に含まれる半導体スイッチング素子(図示せず)の連続動作温度の最大値に設定される。以下の値に限定されるものではないが、たとえば設定値T0は150℃であってもよい。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態1に係る無停電電源装置における給電モードの切換動作を示すフローチャートである。
図1および
図2を参照して、たとえば無停電電源装置101が起動されることにより処理が開始される。ステップS1において、無停電電源装置101は、インバータ給電モードで負荷52に交流電力を供給する。
【0037】
ステップS2において、無停電電源装置101は、入力電源(商用電源2)が停電したかどうかを判定する。具体的には、停電時電力供給制御回路24は、交流入力端子T2の電圧Vinを検出する。電圧Vinが0のまま所定時間変化しない場合に、停電時電力供給制御回路24は、入力電源(商用電源2)が停電したと判定する。この場合(ステップS2においてYES)、処理はステップS3に進む。一方、入力電源(商用電源2)が停電していないと判定された場合(ステップS2においてNO)、処理はステップS9に進む。
【0038】
ステップS3において、無停電電源装置101は、インバータ給電モードから直流給電モードへと移行する。上記のように、スイッチ5がオフされるとともにコンバータ8の運転が停止される。チョッパ9は、バッテリ50に蓄えられた直流電力をインバータ12に供給する。インバータ12は、チョッパ9およびコンデンサ11を介してバッテリ50から供給された直流電力を、周波数および振幅がともに一定である交流電力に変換して負荷52に供給する。
【0039】
ステップS4において、無停電電源装置101は、入力電源が復旧したかどうか(停電が終了した)かどうかを判定する。たとえば停電時電力供給制御回路24は、電圧Vinの周波数および振幅がともに規定値に達した場合に、入力電源が復旧したと判定する。この場合(ステップS4においてYES)、処理はステップS9に進む。一方、入力電源が復旧していないと判定された場合(ステップS4においてNO)、処理はステップS5に進む。
【0040】
ステップS5において、停電時電力供給制御回路24は、無停電電源装置101が正常であるかどうかを判定する。具体的には、チョッパ9またはインバータ12がともに正常であるかどうかが判定される。たとえばチョッパ9の出力電圧あるいはインバータ12の出力電圧を監視することにより、停電時電力供給制御回路24は、チョッパ9またはインバータ12がともに正常であるかどうかを判定することができる。
【0041】
無停電電源装置101が正常であると判定された場合(ステップS5においてYES)、処理はステップS6に進む。一方、無停電電源装置101に異常がある(たとえばチョッパ9およびインバータ12の少なくとも一方に異常がある)と判定された場合(ステップS5においてNO)、処理はステップS8に進む。ステップS8では、無停電電源装置101の出力が遮断される。たとえば、まずスイッチ15がオフされ、次にチョッパ9およびインバータ12が停止される。
【0042】
ステップS6において、停電時電力供給制御回路24は、冷却ファン21が異常であるかどうかを判定する。停電時電力供給制御回路24は、冷却ファン21の動作を監視する。たとえば冷却ファン21の回転数に基づいて、冷却ファン21が異常であるかどうかが判定される。
【0043】
冷却ファン21が異常であると判定された場合(ステップS6においてYES)、処理はステップS7に進む。一方、冷却ファン21に異常がないと判定された場合(ステップS6においてNO)、処理はステップS3に戻る。すなわち、無停電電源装置101(たとえばチョッパ9あるいはインバータ12)および冷却ファン21がともに正常である場合には、無停電電源装置101は、直流給電モードで負荷52への給電を継続する。
【0044】
ステップS7において、停電時電力供給制御回路24は、温度センサ23の検出温度TINVが設定値T0以上であるか、または、温度センサ22の検出温度TCHOPが設定値T0以上であるか、を判定する。この判定条件は、本発明における「所定の給電停止条件」に対応する。
【0045】
検出温度TINV,TCHOPの両方が設定値T0未満である場合(ステップS7においてNO)、処理はステップS3に戻る。一方、TINV≧T0またはTCHOP≧T0である場合、すなわち、検出温度TINV,TCHOPのうちの少なくとも一方が設定値T0に等しい、あるいはT0を超えた場合(ステップS7においてYES)、処理はステップS8に進む。ステップS8において、無停電電源装置101の出力が遮断される。
【0046】
すなわち、入力電源の停電時において冷却ファン21が異常である場合(チョッパ9およびインバータ12は正常である)、検出温度TINV,TCHOPのうちの少なくとも一方が設定値T0以上となるまでステップS3からステップS7までの処理が繰り返される。これにより負荷52への給電が継続される。検出温度TINV,TCHOPのうちの少なくとも一方が設定値T0以上になると、処理はステップS8に進み、無停電電源装置101の出力が遮断される。
【0047】
また、ステップS9において、無停電電源装置101が異常であるかどうかが判定される。この処理は、ステップS5の処理と同様であり、主制御回路4または停電時電力供給制御回路24により実行される。無停電電源装置101が異常である場合(ステップS9においてYES)、処理はステップS10に進み、無停電電源装置101の給電モードはバイパス給電モードとなる。一方、無停電電源装置101が正常である場合(ステップS9においてNO)、処理はステップS1に戻る。
【0048】
このように実施の形態1によれば、商用電源2の停電時には、無停電電源装置101は、直流給電モードに移行する。直流給電モードでは、電力貯蔵装置(バッテリ50)に蓄えられた直流電力を用いて負荷への給電が行なわれる。直流給電モードの間に冷却ファン21に異常が生じた場合には、温度センサ22または23の検出温度が設定値T0(温度異常設定値)となるまでは負荷52への給電が継続される。温度センサ22または23の検出温度が設定値T0に等しい、あるいは設定値T0を超えた場合に、負荷52への給電が停止される。
【0049】
したがって、直流給電モードの間に冷却ファン21が故障しても負荷52への給電が直ちに停止されることを防ぐことができる。これにより負荷52への給電の信頼性を確保することができる。
【0050】
また、無停電電源装置101の異常時に負荷52を停止させるという運用も考えられる。この場合、負荷52を安全に停止させるためにある程度の時間を要する可能性がある。「安全に停止させる」とは、たとえば動作を再開させたときへの影響を少なくするような停止であり、たとえばコンピュータシステムにおいて、各種のデータをハードディスクなどの不揮発的な記憶媒体に退避させる処理を含む。実施の形態1によれば、負荷52を安全に停止させるためにある程度の時間を要する場合であっても、その停止時間を確保できる可能性を高めることができる。
【0051】
[実施の形態2]
図3は、本発明の実施の形態2に係る無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図1および
図3を参照して、本発明の実施の形態2に係る無停電電源装置102は、温度センサ22,23に代えてタイマ25が筐体1の内部に設けられる点、停電時電力供給制御回路24に代えて停電時電力供給制御回路24Aが筐体1の内部に設けられる点において、実施の形態1に係る無停電電源装置101と異なる。無停電電源装置102の他の部分の構成は、実施の形態1に係る無停電電源装置101の対応する部分の構成と同様であるので以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0052】
タイマ25は、停電時電力供給制御回路24Aからの信号を受けることにより起動されて、時間を計測する。計測開始時点から時間t(秒)が経過すると、タイマ25から停電時電力供給制御回路24Aに、t秒の経過を示す信号が送られる。この信号に応じて、停電時電力供給制御回路24Aは、スイッチ15をオフするための信号を出力する。
【0053】
したがって、冷却ファン21の故障からt秒間は、負荷52に給電を継続することができる。なお、
図3に示された構成では、タイマ25が停電時電力供給制御回路24Aとは別に設けられている。ただしタイマ25は、停電時電力供給制御回路24Aに含まれていてもよい。
【0054】
図4は、本発明の実施の形態2に係る無停電電源装置における給電モードの切換動作を示すフローチャートである。
図2および
図4を参照して、実施の形態2に係る給電モードの切換動作は、実施の形態1に係る給電モードの切換動作に対して、ステップS7の処理に代えてステップS7Aの処理が実行される点で異なっている。実施の形態2に係る給電モードの切換動作の他のステップの処理は、実施の形態1に係る給電モードの切換動作における対応するステップの処理と同様であるので以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0055】
ステップS6において、冷却ファンが異常であると判定された場合(ステップS6においてYES)、タイマ25が起動される。ステップS7Aでは、タイマ25の計測時間(カウント値)が設定値(t秒)に達しているかどうかが判定される。この判定条件は、本発明における「所定の給電停止条件」に対応する。
【0056】
タイマ25のカウント値が設定値(t秒)に達していない場合(ステップS7AにおいてNO)、ステップS7Aの判定処理が繰り返される。タイマ25のカウント値が設定値(t秒)に達した場合(ステップS7AにおいてYES)、処理はステップS8に進み、無停電電源装置102の出力が遮断される。したがって、直流給電モード中に冷却ファンが異常となった場合、その異常発生からt秒の間は、負荷52への給電を継続することができる。
【0057】
時間tは、予め設定された時間である。たとえば停電時電力供給制御回路24Aが時間tの値を記憶するとともに、タイマ25の起動時に、時間tの値をタイマ25に設定してもよい。たとえば、時間t(秒)は、冷却ファン21の停止時点を基準として、チョッパ9あるいはインバータ12の温度が最高動作温度に達する時点までの時間、あるいはそれ未満の時間として定めることができる。チョッパ9あるいはインバータ12の温度が最高動作温度に達した時点でチョッパ9およびインバータ12を停止させることができるので、負荷52への給電を継続しつつ、チョッパ9およびインバータ12の損傷を防ぐことができる。
【0058】
また時間t(秒)を、無停電電源装置102の異常時に負荷52を安全に停止させるために必要な時間として予め定めてもよい。このように時間をt(秒)に設定することによって、負荷を安全に停止させるためにある程度の時間を要する場合であっても、その停止時間を確保できる可能性を高めることができる。
【0059】
[実施の形態3]
図5は、本発明の実施の形態3に係る無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図5を参照して、本発明の実施の形態3に係る無停電電源装置103は、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせた構成に相当する。
【0060】
具体的には、無停電電源装置103は、実施の形態1に係る無停電電源装置101にタイマ25を追加した構成を有する。さらに、停電時電力供給制御回路24に代えて停電時電力供給制御回路24Aが筐体1の内部に設けられる。これらの点で、無停電電源装置103は、実施の形態1に係る無停電電源装置101と異なる。無停電電源装置103の他の部分の構成は、実施の形態1に係る無停電電源装置101の対応する部分の構成と同様であるので以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0061】
直流給電モード中に冷却ファン21が故障した場合、停電時電力供給制御回路24Bは、タイマ25を起動させる。さらに、停電時電力供給制御回路24Bは、温度センサ22の検出温度TCHOPあるいは温度センサ23の検出温度TINVの少なくとも一方が設定値T0を超えたかどうかを判定する。
【0062】
タイマ25の設定時間(t秒)が経過するより先に、検出温度TCHOP,TINVの少なくとも一方が設定値T0に達した場合、停電時電力供給制御回路24Bは、検出温度TCHOP,TINVの少なくとも一方が設定値T0に達した時点において、スイッチ15をオフする。逆に、検出温度TCHOP,TINVの少なくとも一方が設定値T0に達するよりも先に、タイマ25の計測時間が設定時間(t秒)に達した場合には、停電時電力供給制御回路24Bは、タイマ25の設定時間(t秒)においてスイッチ15をオフする。すなわち実施の形態3では、温度センサ22,23のいずれか一方の検出温度が設定値T0を超える時点と、タイマの計測時間が設定時間に達する時点とのうちのいずれか早いほうの時点において、負荷52への給電が遮断される。
【0063】
図6は、本発明の実施の形態3に係る無停電電源装置における給電モードの切換動作を示すフローチャートである。
図2および
図6を参照して、実施の形態3に係る給電モードの切換動作は、実施の形態1に係る給電モードの切換動作に対して、ステップS7の処理に代えてステップS7Bの処理が実行される点で異なっている。実施の形態3に係る給電モードの切換動作の他のステップの処理は、実施の形態1に係る給電モードの切換動作における対応するステップの処理と同様であるので以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0064】
ステップS6において、冷却ファンが異常であると判定された場合(ステップS6においてYES)、タイマ25が起動される。ステップS7Bでは、温度センサ23の検出温度TINVが設定値T0以上である(TINV≧T0)という条件、温度センサ22の検出温度TCHOPが設定値T0以上である(TCHOP≧T0)という条件、またはタイマ25の設定時間(t秒間)が経過したいう条件のうちの、少なくとも1つが満たされているかどうかが判定される。この判定条件は、本発明における「所定の給電停止条件」に対応する。いずれの条件も満たされていない場合(ステップS7BにおいてNO)、処理はステップS3に戻される。上記の3つの条件のうちの少なくとも1つが満たされる場合(ステップS7BにおいてYES)、処理はステップS8に進み、無停電電源装置103の出力が遮断される。
【0065】
実施の形態3によれば、直流給電モード中に冷却ファンが異常となった場合にも、温度センサの検出温度が設定温度に達するまでの間、あるいは、設定時間t秒が経過するまでのいずれか短いほうの時間は、負荷52への給電を継続することができる。したがって、実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
【0066】
さらに、実施の形態3では、負荷52への給電を継続する時間が、温度センサの検出温度が設定温度に達するまでの間、あるいは、設定時間t秒が経過するまでのいずれか短いほうの時間に制限される。したがって、冷却ファン21が異常の場合に、チョッパ9およびインバータ12を保護する効果を高めることができる。
【0067】
[実施の形態4]
本発明の実施の形態4に係る無停電電源装置の構成は、
図5に示した構成と同様である。したがって、
図5において、本発明に実施の形態4に係る無停電電源装置を、符号(104)にて示す。無停電電源装置104は、さらに、停電時電力供給制御回路24Bに代えて停電時電力供給制御回路24Cが筐体1の内部に設けられる点で、実施の形態3に係る無停電電源装置103と異なる。
【0068】
直流給電モード中に冷却ファン21が故障した場合、停電時電力供給制御回路24Bは、タイマ25を起動させる。さらに、停電時電力供給制御回路24Bは、温度センサ22の検出温度TCHOPあるいは温度センサ23の検出温度TINVの少なくとも一方が設定値T0を超えたかどうかを判定する。
【0069】
実施の形態4では、温度センサ22,23のいずれか一方の検出温度が設定値T0を超える時点と、タイマの計測時間が設定時間(t秒)に達する時点とのうちのより遅いほうの時点において負荷52への給電が遮断される。温度の設定値T0は、実施の形態1〜3での設定値よりも低く設定しておいてもよい。
【0070】
図7は、本発明の実施の形態4に係る無停電電源装置における給電モードの切換動作を示すフローチャートである。
図6および
図7を参照して、実施の形態4に係る給電モードの切換動作は、実施の形態3に係る給電モードの切換動作に対して、ステップS11〜S13の処理が追加される点で異なっている。実施の形態4に係る給電モードの切換動作の他のステップの処理は、実施の形態1〜3に係る給電モードの切換動作における対応するステップの処理と同様であるので以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0071】
ステップS6において、冷却ファンが異常であると判定された場合(ステップS6においてYES)、タイマ25が起動される。ステップS7Bでは、温度センサ23の検出温度TINVが設定値T0以上である(TINV≧T0)という条件、温度センサ22の検出温度TCHOPが設定値T0以上である(TCHOP≧T0)という条件、またはタイマ25の設定時間(t秒間)が経過したいう条件のうちの、少なくとも1つが満たされているかどうかが判定される。いずれの条件も満たされていない場合(ステップS7BにおいてNO)、処理はステップS3に戻される。上記の3つの条件のうちの少なくとも1つが成立する場合(ステップS7BにおいてYES)、処理はステップS11に進む。
【0072】
ステップS11の処理は、ステップS7Bにおいて、検出温度およびタイマの計測時間うちのどちらが条件を満たしているかを判定するための処理である。つまり、ステップS11の処理は、検出温度が設定値に達した時点と、タイマの計測時間がt秒に達した時点とのどちらがより遅いかを判定するための処理である。この判定条件は、本発明における「所定の給電停止条件」に対応する。
【0073】
具体的には、ステップS11において、温度センサ23の検出温度TINVが設定値T0以上であるという条件、または、温度センサ22の検出温度TCHOPが設定値T0以上であるという条件が成立したかどうかが判定される。いずれか一方の条件が判定した場合(ステップS11においてYES)、タイマ25の計測時間はt(秒)に達していない。したがって、ステップS12において、t(秒)が経過するまで負荷52への給電が継続される。
【0074】
一方、ステップS11において、温度センサ23の検出温度TINVが設定値T0以上であるという条件、および温度センサ22の検出温度TCHOPが設定値T0以上であるという条件のいずれも成立していない場合(ステップS11においてNO)、処理はステップS13に進む。この場合、タイマ25の計測時間がt(秒)に達したために、処理がステップS7BからステップS11へと進んだことになる。したがって、ステップS13において、温度センサ23の検出温度TINVが設定値T0以上であるという条件、または、温度センサ22の検出温度TCHOPが設定値T0以上であるという条件が成立するまで負荷52への給電が継続される。
【0075】
ステップS12またはステップS13の処理が終了すると、ステップS8において、無停電電源装置104の出力が遮断される。
【0076】
このように実施の形態4によれば、直流給電モード中に冷却ファンが異常となった場合、温度センサの検出温度が設定温度に達するまでの間、あるいは、設定時間t秒が経過するまでのいずれか長いほうの時間、負荷52への給電が継続される。これにより、無停電電源装置104の出力をできるだけ長く継続させることができる。したがって負荷52への給電の信頼性を確保することができる。さらに実施の形態4によれば、負荷52を安全に停止させる時間をより長く確保できる。
【0077】
なお、上記の各実施の形態では、温度センサ23の検出温度TINVおよび温度センサ22の検出温度TCHOPの両方に対して、同じ設定値T0が用いられる。しかしながら検出温度TINVに対する設定値と、検出温度TCHOPに対する設定値とが異なっていてもよい。
【0078】
また、チョッパ9の温度とインバータ12の温度との両方を検出するものと限定されない。筐体1の内部の温度を検出する温度センサが設けられていればよい。したがってチョッパ9およびインバータ12のいずれか一方のみの温度を検出して、その温度を設定値と比較してもよい。その場合、チョッパ9とインバータ12とのうち、動作時の温度がより高いほうの温度を検出することが好ましい。多くの場合、チョッパ9よりもインバータ12のほうが動作時の温度が高くなる。したがって、インバータ12の温度TINVのみを設定値T0と比較してもよい。
【0079】
また、実施の形態2〜4では、停電時電力供給制御回路(24A〜24C)がタイマ25のカウント値を取得するとともに、スイッチ15をオフするための信号を出力する。ただし、タイマ25からスイッチ15に信号が出力されてもよい。
【0080】
また、上記の各実施の形態では、無停電電源装置は、チョッパ9を備えている。ただし、チョッパ9を省略した構成も可能である。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。