【実施例1】
【0010】
図1は、第1の実施例におけるプリンタの構成を示すブロック図である。
図1において、画像形成装置としてのプリンタ100は、通信回線102を介して上位装置としてのPC(Personal Computer)101と接続され、PC101から受信した印刷データに基づいて給紙トレイから給紙した印刷媒体(用紙)に印刷を行うものである。
PC101は、プリンタ100に対して印刷データを送信する。この印刷データには、印刷対象となるドキュメントをプリンタ100のデータ解析部120が解析可能なコードで表現したPDLデータが含まれている。
【0011】
プリンタ100は、データ受信部110、データ解析部120、制御部150、画像形成部160、パネル部170、給紙トレイ情報格納部191、中間コード格納部195および印刷画像データ格納部196を備える。ここで中間コードとは、印刷データから印刷画像データに変換する過程で、一時的に作成されるコードのことである。
データ受信部110は、通信回線102を介してPC101から送信されてきた印刷データを受信し、データ解析部120に転送する。
【0012】
データ解析部120は、データ受信部110から受信した印刷データを解析し、印刷媒体に印刷するための印刷画像データを作成して印刷画像データ格納部196に格納する。またデータ解析部120は、制御部150に通知する編集部130と展開部140とを備える。
編集部130は、PDLデータを解釈して中間コードを生成し、生成した中間コードを中間コード格納部195に格納して展開部140に通知する。
編集部130は、更に給紙トレイ選択部131と編集範囲設定部132と描画実行部135とを備える。
【0013】
給紙トレイ選択部131は、印刷データに含まれる印刷媒体の大きさ(用紙サイズ)を表す情報に基づいて印刷データを印刷する印刷媒体を収容する給紙トレイを選択し、選択した給紙トレイに収容されている印刷媒体の方向に合わせて印刷データの編集方向を決定するものである。この給紙トレイ選択部131は、給紙トレイ情報格納部191に格納された各給紙トレイに設定された用紙サイズの情報を基に、印刷データに対応する給紙トレイを選択する。
【0014】
給紙トレイ情報格納部191は、各給紙トレイに設定された用紙サイズおよび用紙の向きを表す情報を格納する記憶部であり、例えば給紙トレイ1は横置きでB5サイズ用紙、給紙トレイ2は縦置きでB4サイズ用紙、給紙トレイ3は縦置きでA4サイズ用紙が設定されているという情報が格納されている。
ここで、縦置きとは、給紙トレイに収納されている用紙の向き(方向)であって、用紙(印刷媒体)の長手方向が用紙の走行方向となる方向をいい、横置きとは、給紙トレイに収納されている用紙の向き(方向)であって、用紙(印刷媒体)の短手方向が用紙の走行方向となる方向をいう。
【0015】
編集範囲設定部132は、印刷データを給紙トレイ選択部131で決定された編集方向に基づいて解析し、印刷データで指定された印刷媒体の大きさと選択された給紙トレイに収容されている印刷媒体の大きさとが異なるとき、給紙トレイに収容されている印刷媒体の大きさに合わせて印刷データの編集範囲(クリップ領域)を設定するものである。
この編集範囲設定部132は、給紙トレイ選択部131で選択した給紙トレイに設定されている用紙に応じた方向で印刷データを印刷する場合に、その給紙トレイの用紙の印刷範囲の情報を中間コードに設定する。なお、生成された中間コードは中間コード格納部195に格納される。
【0016】
描画部としての描画実行部135は、印刷データと編集範囲設定部132が設定した編集範囲とに基づいて編集範囲内の画像データを生成するための中間コードを生成するものであり、選択した給紙トレイの用紙の方向に応じた方向に印刷データを編集し中間コードを作成する。なお、作成された中間コードは中間コード格納部195に格納される。
描画部としての展開部140は、編集部130からの通知により中間コード格納部195から中間コードを読み出し、読み出した中間コードを解釈して印刷画像データ化し、印刷画像データ格納部196に格納する。
【0017】
制御部150は、データ解析部120から印刷画像データ作成完了の通知を受信し、印刷画像データ格納部196から印刷画像データを読み出して画像形成部160に転送し、画像形成部160を構成する各モジュールを制御して印刷画像データを基として媒体に現像剤を転写し、熱定着を施し、熱定着された媒体を搬送して出力する。
また、制御部150は、CPU(Central Processing Unit)等の制御手段により構成され、メモリ等の記憶部に格納された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいてプリンタ100全体の動作を制御する。
【0018】
画像形成部160は、展開部140が生成した画像データを、給紙トレイ選択部131で選択された給紙トレイから給紙した印刷媒体に印刷するものであり、図示しない媒体格納部、搬送部、転写部、熱定着部等のモジュールを備え、制御部150からの制御にしたがって印刷処理を実行する。
表示部としてのパネル部170は、ディスプレイ等の表示手段やタッチパネル等の入力手段で構成され、印刷データで指定されている用紙サイズの用紙が給紙トレイに存在しないため、給紙トレイからの印刷ができない場合に、制御部150の指示により印刷データで指定されている用紙サイズの用紙を要求する旨の表示を行う。
【0019】
なお、データ受信部110を用いたり、パネル部170を用いて、印刷データの大きさと異なる媒体を印刷可能とみなす媒体条件として媒体種類(レター、A4のような定型サイズ入力)に関する入力や、媒体種類の範囲(レターサイズからA4サイズのような定型サイズの範囲入力、または、媒体の長辺x(mm)短辺y(mm)のような長さの範囲入力)に関する入力を行う。
【0020】
上述した構成の作用について説明する。
まず、プリンタが行う印刷処理を
図2の第1の実施例における印刷処理の流れを示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって
図1を参照しながら説明する。
S1:プリンタ100は、データ受信部110において印刷データを受信すると、これをデータ解析部120に転送する。
S2:データ解析部120は、編集部130によりデータ受信部110から転送された印刷データを読み込み、給紙トレイ選択部131は印刷データ内の用紙サイズと指定トレイの指定に応じて給紙トレイを選択する。
【0021】
ここで、給紙トレイ選択部131が行う給紙トレイ選択処理を
図3の第1の実施例における給紙トレイ選択処理の流れを示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって説明する。
S31:給紙トレイ選択部131は、印刷データで指定されている用紙サイズと指定トレイに基づき給紙トレイ格納部191に格納されている情報を検索し、給紙トレイを選択する。
【0022】
S32:給紙トレイ選択部131は、印刷データで指定されている用紙サイズとS31で選択した給紙トレイの用紙サイズが一致するか否かを判定する。給紙トレイ選択部131は、印刷データで指定されている用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズが、一致したと判定した場合は処理をS33へ移行し、不一致と判定した場合は処理をS34へ移行する。
例えば、
図4(a)に示すように印刷データで指定されている用紙サイズがA4で、給紙トレイ3にA4サイズ用紙がある場合、給紙トレイ3(A4サイズ用紙(縦置き))を選択する。
S33:給紙トレイ選択部131は、S31で選択した給紙トレイを選択し、本処理を終了する。
【0023】
S34:印刷データで指定されている用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズが一致しないと判定した給紙トレイ選択部131は、印刷データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる用紙サイズの存否を判定する。給紙トレイ選択部131は、印刷データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる用紙サイズが、存在すると判定した場合は処理をS35へ移行し、存在しないと判定した場合は処理をS33へ移行する。
ここで、給紙トレイの用紙サイズが印刷データで指定されている用紙サイズと一致すると見做す判定は、予め記憶部に記憶されている設定情報に基づいておこなうものとし、本実施例では、例えば用紙サイズが「A4」と用紙サイズが「レターサイズ」とが一致すると見做せるものとする。
【0024】
S35:印刷データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる用紙サイズが存在すると判定した給紙トレイ選択部131は、一致と見做せる用紙サイズで再度給紙トレイを選択する。
S36:給紙トレイ選択部131は、一致と見做せる用紙サイズと再選択した給紙トレイのサイズが一致するか判定する。一致と見做せる用紙サイズと再選択した給紙トレイのサイズが一致する場合は処理をS37へ移行し、不一致の場合は処理をS33へ移行する。
【0025】
例えば、
図4(b)に示すように、印刷データで指定されている用紙サイズA4と一致と見做せる用紙サイズであるレターサイズ用紙の給紙トレイが存在するならば、給紙トレイ選択部131は給紙トレイ2を選択する。
図4(c)に示すように、レターサイズ用紙がどの給紙トレイにも存在しない場合は給紙トレイ1を選択する。再選択でも一致しない場合及び印刷データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる用紙サイズが存在しない場合、印刷データで指定されている用紙サイズで選択した給紙トレイ(
図4(c)の給紙トレイ1)を選択する。
【0026】
S37:再選択した給紙トレイの用紙サイズが印刷データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる用紙サイズと一致すると判定した給紙トレイ選択部131は、S35において再選択した給紙トレイを選択して本処理を終了する。
図2に戻り、S3から説明する。
S3:給紙トレイ選択部131は、印刷データで指定されている用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズが一致するか否かを判定し、一致すると判定すると処理をS4へ移行し、不一致と判定すると処理をS5へ移行する。
【0027】
S4:印刷データで指定されている用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズが一致すると判定した給紙トレイ選択部131は、ページの編集の向きを選択した給紙トレイを用紙の向きと決定し、処理をS9へ移行する。
S5:選択した給紙トレイの用紙サイズと印刷データで指定されている用紙サイズが一致しないと判定した給紙トレイ選択部131は、給紙トレイの用紙サイズが印刷データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる用紙サイズであり、用紙要求をせずに印刷できるか否かを判定し、用紙要求せずに印刷できると判定した場合は処理をS7へ移行し、用紙要求せずに印刷できないと判定した場合は処理をS6へ移行する。
【0028】
S6:給紙トレイの用紙サイズが印刷データで指定されている用紙サイズと一致せず、また一致と見做せないと判定した給紙トレイ選択部131は、ページの編集の向きを、印刷データで指定されている用紙サイズの標準の向き、例えば用紙横置きが可能な用紙サイズは横置き、横置きできない用紙サイズは縦置き、として処理をS9へ移行する。
S7:S5において、給紙トレイの用紙サイズが印刷データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる用紙サイズであり、用紙要求をせずに印刷できると判定した給紙トレイ選択部131は、ページの編集の向きを選択した給紙トレイの用紙の向きとする。
【0029】
S8:編集範囲設定部132は、給紙トレイの用紙サイズが印刷データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる用紙サイズである場合に、給紙トレイの用紙サイズからはみ出す部分の印刷データを特定の領域からはみ出した部分に印刷しないようにするために、給紙トレイの用紙サイズでクリップ領域を設定した中間コードを格納する。
【0030】
このクリップ領域は、印刷データで指定されている用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズの重なる部分を設定する。例えば、用紙を用紙走行方向と直交する方向における中央で合わせて印刷する装置では、印刷データで指定されている用紙サイズの用紙走行方向と直交する方向における中央と、給紙トレイの用紙サイズの用紙走行方向と直交する方向における中央とを合わせ、印刷データで指定されている用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズの重なる部分をクリップ領域として設定する。
【0031】
図5は第1の実施例におけるクリップ領域設定の説明図である。
図5(a)は、図中の上方向を用紙走行方向とし、レターサイズの用紙を用紙走行方向と直交する方向における中央合わせとして、用紙縦置きの場合を示している。また
図5(b)は、図中の上方向を用紙走行方向とし、レターサイズの用紙を用紙走行方向と直交する方向における中央合わせとして、用紙横置きの場合を示している。
図5(a)(b)どちらの図においても、破線で示すA4サイズ印刷データ200が実線で示すレターサイズ用紙201と重なる部分がクリップ領域202となる。なお、印刷はみ出し部分203は、A4サイズ印刷データ200がレターサイズ用紙201からはみ出した部分であり、レターサイズ用紙201には印刷されない。
【0032】
S9:印刷データの編集方向が決定したら、描画実行部135は決定した方向で印刷データを解析(編集)し描画オブジェクトを中間コードとして中間コード格納部195へ格納する。
描画実行部135は、1ページ分印刷データを処理し終えたら編集部130から展開部140に通知する。
S10:通知を受信した展開部140は、中間コード格納部195に格納されている中間コードを読み出し、展開して印刷画像化して印刷画像データ格納部196に格納して制御部150に通知する。
【0033】
S11:制御部150は、給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定されている用紙サイズと一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合は処理をS13へ移行し、不一致と判定した場合は処理をS12へ移行する。
S12:制御部150は、印刷画像データで指定する用紙サイズと予め決められた媒体条件に基づき給紙トレイの用紙サイズが一致すると見做して、用紙要求をせずに印刷できるか否かを判定し、用紙要求をせずに印刷できると判定した場合には処理をS13へ移行し、用紙要求をせずに印刷できないと判定した場合には処理をS14へ移行する。
【0034】
S13:給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定する用紙サイズと一致すると判定、または一致すると見做して用紙要求せずに印刷できると判定した制御部150は、印刷画像データ格納部196から印刷画像データを読み出し、画像形成部160に転送するとともに画像形成部160を構成する各モジュールを統合的に制御する。
画像形成部160は、制御部150からの制御にしたがって印刷処理を実行し、本処理を終了する。
S14:給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定されている用紙サイズと一致せず、一致と見做すこともできないと判定した制御部150は、パネル部170へ指示して印刷画像データで指定されている用紙サイズの用紙を要求する旨を表示し、本処理を終了する。
【0035】
このように、印刷画像データで指定する用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズが異なる場合でも、印刷画像データで指定する用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズが一致すると見做して印刷することができる。
本実施例においては、給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる場合の印刷結果は、給紙トレイの用紙サイズからはみ出す部分の中間コードを生成しないようにしたため、
図6に示すようになる。
【0036】
図6は、第1の実施例における用紙サイズを一致と見做し印刷した結果の説明図である。
図6(a)は、図中の上方向を用紙走行方向とし、用紙を用紙走行方向に直交する方向における中央合わせとして、用紙縦置きの場合を示している。
図6(b)は、図中の上方向を用紙走行方向とし、用紙を用紙走行方向に直交する方向における中央合わせとして、用紙横置きの場合を示している。
図6(a)(b)どちらの図も、破線で示すA4サイズ印刷データ200が実線で示すレターサイズ用紙201と重なる部分が印刷した結果となる。つまり、
図5で示した印刷はみ出し部分203は、印刷結果では存在しない。
【0037】
このように、プリンタ100は、印刷データに含まれる印刷媒体の大きさを表す情報に基づいて選択した給紙トレイに収容されている印刷媒体の方向に合わせて印刷データの編集方向を決定し、決定した編集方向に基づいて印刷データを編集し、さらに印刷データで指定された印刷媒体の大きさと選択された給紙トレイに収容されている印刷媒体の大きさとが異なるとき、給紙トレイに収容されている印刷媒体の大きさに合わせて印刷データのクリップ領域(編集範囲)を設定するようにしたことにより、給紙トレイの用紙の向きに依らず、給紙トレイの用紙サイズからはみ出すことなく、用紙サイズが一致すると見做せる用紙に対して印刷を行うことができる。
また、給紙トレイの用紙サイズからはみ出す部分が中間コード生成の段階で給紙トレイの用紙サイズの領域からはみ出した部分の印刷画像データを生成しないようにしたことにより、印刷開始前の処理時間を短縮することができ、印刷の開始を早めることができる。
【0038】
以上説明したように、第1の実施例では、印刷データに含まれる印刷媒体の大きさを表す情報に基づいて選択した給紙トレイに収容されている印刷媒体の方向に合わせて印刷データの編集方向を決定し、決定した編集方向に基づいて印刷データを編集し、さらに印刷データで指定された印刷媒体の大きさと選択された給紙トレイに収容されている印刷媒体の大きさとが異なるとき、給紙トレイに収容されている印刷媒体の大きさに合わせて印刷データのクリップ領域(編集範囲)を設定するようにしたことにより、給紙の向きにより印刷結果が大きく異なることを防止することができるという効果が得られる。
また、用紙サイズが一致すると見做せる給紙トレイの用紙に、印刷画像データがはみ出すことなく、印刷を行うことができるという効果が得られる。
さらに、印刷開始前の処理時間を短縮することができ、印刷の開始を早めることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0039】
図7は第2の実施例におけるプリンタの構成を示すブロック図である。
図7に示す第2の実施例では、第1の実施例で示した編集部130中に位置補正計算部133を設け、位置補正計算結果の情報を格納する位置補正情報格納部192を追加している。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
位置補正部としての位置補正計算部133は、印刷データで指定された印刷媒体の大きさと給紙トレイ選択部131で選択された給紙トレイに収容されている印刷媒体の大きさとが異なるとき、給紙トレイ選択部131で選択された給紙トレイに収容されている印刷媒体における印刷データの描画位置を補正するものであり、給紙トレイの用紙の向きに応じた印刷データの位置補正量を計算し、位置補正情報格納部192に格納する。
【0040】
位置補正情報格納部192は、位置補正計算部133が計算した位置補正量の情報を格納する。この位置補正情報格納部192に格納された情報は、印刷時に制御部150により読み出され、画像形成部160へ印刷データの位置補正として指示される。
画像形成部160は、展開部140で生成された画像データを、指示された印刷データの位置補正に基づいて描画位置を補正して印刷する。
【0041】
上述した構成の作用について説明する。
プリンタが行う印刷処理を、
図8に示す実施例における印刷処理の流れを示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって
図7を参照しながら説明する。
S101〜S107:
図2におけるS1〜S7と同様の処理なので説明を省略する。
S108:給紙トレイの用紙サイズが印刷データで指定されている用紙サイズと一致と見做せる用紙サイズである場合に、S107でページの編集の向きが決定すると、位置補正計算部133は印刷データの位置補正量を計算し、位置補正情報格納部192へ格納する。
【0042】
位置補正量は、例えば
図9に示すように用紙縦置きでのA4サイズ印刷データ200の左上端とレターサイズ用紙201の左上端の位置を合わせるようにする場合、印刷データで指定された用紙幅(用紙走行方向と直交する方向の幅)と給紙トレイの用紙幅の差の半分の長さを、給紙トレイの用紙幅の方が狭い場合は右に、給紙トレイの用紙幅の方が広い場合は左に補正する値とする(
図9(a))。
また、用紙向きが横置きであれば印刷データで指定された用紙長さ(用紙走行方向の長さ)と給紙トレイの用紙長さの差の半分の長さを、給紙トレイの用紙長さの方が短い場合は左に、給紙トレイの用紙長さの方が長い場合は右に補正する値とする(
図9(b))。
【0043】
また、
図9(a)(b)において一点鎖線で示す印刷位置304は、用紙縦置きでのA4サイズ印刷データ300の左上端とレターサイズ用紙301の左上端の位置が合うように、A4サイズ印刷データ300を位置補正した結果である。
このように、位置補正計算部133は、印刷データで指定された印刷媒体の大きさと給紙トレイ選択部131で選択された給紙トレイに収容されている印刷媒体の大きさとの差に基づいて描画位置を補正し、印刷データの端部の描画位置を、給紙トレイ選択部131で選択された給紙トレイに収容されている印刷媒体の端部に合わせるように補正する。
【0044】
S109:編集範囲設定部132は、位置補正情報格納部192に格納された印刷データの位置補正量を考慮してクリップ領域を中間コードに格納する。
図9の例では、実施例1と同じ用紙サイズのクリップ領域302を、用紙縦置きでの左上端の位置に合わせるようにずらした中間コードとして格納する。
S110、S111:
図2におけるS9、S10と同様の処理なのでその説明を省略する。
S112:制御部150は、給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定されている用紙サイズと一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合は処理をS115へ移行し、不一致と判定した場合は処理をS113へ移行する。
【0045】
S113:制御部150は、印刷画像データで指定する用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズが一致すると見做して、用紙要求をせずに印刷できるか否かを判定し、用紙要求をせずに印刷できると判定した場合には処理をS116へ移行し、用紙要求をせずに印刷できないと判定した場合には処理をS114へ移行する。
S114:用紙要求をせずに印刷できないと判定した制御部150は、パネル部170へ指示して印刷画像データで指定されている用紙サイズの用紙を要求する旨の表示を行い、本処理を終了する。
【0046】
S115:S112において、給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定されている用紙サイズと一致すると判定した制御部150は、印刷画像データ格納部196から印刷画像データを読み出し、画像形成部160に転送する。また制御部150は、画像形成部160を形成する各モジュールを統合的に制御し、画像形成部160は制御部150からの制御にしたがって印刷処理を実行し、本処理を終了する。
【0047】
S116:S113において、給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定されている用紙サイズと一致しないが一致と見做して印刷可能と判断した制御部150は、印刷画像データ格納部196から印刷画像データを読み出し、位置補正情報格納部192から読み出した位置補正量分の補正を加えて、画像形成部160に転送するとともに画像形成部160を構成する各モジュールを統合的に制御する。画像形成部160は、制御部150からの制御にしたがって印刷処理を実行し、本処理を終了する。
給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定される用紙サイズと一致と見做せる場合の印刷結果は、印刷データに対するクリップ領域302の位置と給紙トレイの用紙に対する印刷データ位置の補正により、
図10に示すようになる。
【0048】
図10は、用紙サイズを一致と見做し印刷した結果の説明図である。
図10(a)は、用紙縦置きの場合を示し、
図10(b)は、用紙横置きの場合を示している。
図9に示したように用紙縦置きでのA4サイズ印刷データ300の左上端とレターサイズ用紙301の左上端の位置を合わせるようにする場合、印刷データで指定された用紙幅と給紙トレイの用紙幅の差の半分の長さを、給紙トレイの用紙幅の方が狭い場合は図中右に、給紙トレイの用紙幅の方が広い場合は図中左に補正する(
図10(a))。
【0049】
また、用紙向きが横置きであれば印刷データで指定された用紙長さと給紙トレイの用紙長さの差の半分の長さを、給紙トレイの用紙長さの方が短い場合は左に、給紙トレイの用紙長さの方が長い場合は右に補正する(
図10(b))。
なお、用紙走行方向と直交するする方向における用紙の中央で印刷データと給紙トレイの用紙とを合わせたとき、印刷データで指定されている用紙の左上端と給紙トレイの用紙の左上端の位置を合わせるようにする場合、印刷データの位置補正量は、印刷データで指定されている用紙幅と給紙トレイの用紙幅との差の半分の長さとして表すことができる。
【0050】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、給紙トレイの用紙の大きさと印刷データで指定される用紙の大きさが異なる場合、印刷データの位置を補正することで、用紙サイズが一致すると見做せる用紙に対して、用紙の向きに依らず同一の結果が得られるように印刷を行うことができるという効果が得られる。
【実施例3】
【0051】
図11は第3の実施例におけるプリンタの構成を示すブロック図である。第3の実施例では、
図7の第2の実施例で示した編集部130中の編集範囲設定部132に替えて編集範囲判定部134を設け、印刷データが編集範囲をはみ出したか否かの情報を格納するはみ出し情報格納部193を追加する。なお、上述した第1の実施例および第2の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
編集範囲判定部134は、印刷データを給紙トレイ選択部131が決定した編集方向に基づいて解析し、印刷データで指定された印刷媒体の大きさと給紙トレイ選択部131で選択された給紙トレイに収容されている印刷媒体の大きさとが異なるとき、給紙トレイに収容されている印刷媒体の印刷範囲から印刷データに基づいて生成される画像データがはみ出るか否かを判定するものである。
この編集範囲判定部134は、描画実行部135が中間コード格納部195へ格納する中間コードが印刷範囲に納まるか否かを判定し、その判定結果をはみ出し情報格納部193に格納する。
【0053】
はみ出し情報格納部193は、編集範囲判定部134の判定結果である中間コードが印刷範囲からはみ出したか否かの情報を格納する。このはみ出し情報格納部193に格納された情報は、印刷時に制御部150により読み出され、用紙要求を行うか否かの判定に用いられる。
制御部150は、編集範囲判定部134により画像データを生成するための中間コードが印刷範囲からはみ出ると判定したとき、印刷媒体を要求する旨をパネル部170に表示する。
【0054】
上述した構成の作用について説明する。
プリンタが行う印刷処理を、
図12の第3の実施例における印刷処理の流れを示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって
図11を参照しながら説明する。
S201〜S208:
図8におけるS101〜S108と同様の処理なので説明を省略する。
S209:
図8におけるS110と同様の処理なのでその説明を省略する。
S210:編集範囲判定部134は、描画実行部135が中間コード格納部へ格納する中間コードが印刷範囲に納まるか否かを判定し、納まると判定した場合はS211の処理をスキップし、納まらないと判定した場合は処理をS211へ移行する。
【0055】
S211:編集範囲判定部134は、印刷範囲からはみ出す中間コードの有無をはみ出し情報格納部193へ格納する。はみ出し情報格納部193に格納した情報は、印刷時に制御部150より読み出され、用紙要求を行うか否かの判定に用いられる。
描画実行部135は、S209からS211の処理を繰り返し、1ページ分の印刷データを処理し終えたら編集部130から展開部140に通知する。
【0056】
S212:通知を受信した展開部140は、中間コード格納部195に格納されている中間コードを読み出し、展開して印刷画像化して印刷画像データ格納部196に格納して制御部150に通知する。
S213:制御部150は、給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定されている用紙サイズと一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合は処理をS216へ移行し、不一致と判定した場合は処理をS214へ移行する。
【0057】
S214:制御部150は、印刷画像データで指定する用紙サイズと給紙トレイの用紙サイズが一致すると見做すことができ、かつ、はみ出し情報格納部193の情報から印刷画像データが給紙トレイの用紙の範囲をはみ出さないと判定、すなわち用紙要求をせずに印刷できるか否かを判定し、用紙要求をせずに印刷できると判定した場合には処理をS217へ移行し、用紙要求をせずに印刷できないと判定した場合には処理をS215へ移行する。
【0058】
S215:用紙要求をせずに印刷できないと判定した制御部150は、パネル部170へ指示して印刷画像データで指定されている用紙サイズの用紙を要求する旨の表示を行い、本処理を終了する。なお、使用者は、印刷画像データで指定されている用紙サイズの用紙を要求する旨の表示にしたがって用紙を給紙トレイにセットするか、または印刷を中止するかをパネル部170で指示するものとする。
【0059】
S216:給紙トレイの用紙サイズが印刷画像データで指定されている用紙サイズと一致すると判定した制御部150は、印刷画像データ格納部196から印刷画像データを読み出し、画像形成部160に転送する。また制御部150は、画像形成部160を形成する各モジュールを統合的に制御し、画像形成部160は制御部150からの制御にしたがって印刷処理を実行し、本処理を終了する。
【0060】
S217:S214において、用紙要求をせずに印刷できると判定した制御部150は、印刷画像データ格納部196から印刷画像データを読み出し、位置補正情報格納部192から読み出した位置補正量分の補正を加えて、画像形成部160に転送するとともに画像形成部160を構成する各モジュールを統合的に制御する。画像形成部160は、制御部150からの制御にしたがって印刷処理を実行し、本処理を終了する。
【0061】
以上説明したように、第3の実施例では、第2の実施例の効果に加え、用紙サイズが一致すると見做せる用紙に対して、印刷データが用紙の範囲に納まる場合にだけ印刷を行い、はみ出す場合には用紙要求を行うことで、使用者に印刷を行うか否かの判断を求めることができるという効果が得られる。
【0062】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、編集処理の中で編集範囲をクリップ領域として設定することで、印刷範囲をはみ出すことのない印刷画像データを生成するようにしているが、画像形成部のハードウェアにより生成済の印刷画像データをマスクできる場合は、編集処理時に画像をクリップするのではなく、画像形成部のハードウェアでクリップすることも可能である。