特許第5945238号(P5945238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945238
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】車両用灯具および車両のリアパネル
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20160621BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20160621BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20160621BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160621BHJP
【FI】
   F21S8/10 371
   F21S2/00 433
   B60J5/10 Z
   F21Y115:10
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-47672(P2013-47672)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-175199(P2014-175199A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】寺井 英晃
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠
(72)【発明者】
【氏名】西島 光彦
(72)【発明者】
【氏名】内野 光二
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−212076(JP,A)
【文献】 特開2012−209167(JP,A)
【文献】 特開2011−186413(JP,A)
【文献】 特表2014−534117(JP,A)
【文献】 米国特許第06536930(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性部材で構成された車両の車体パネルに配設され、前記透光性部材の一部前記車体パネルを構成する他の部材との二色成形物、接着一体化物、又は連結一体化物として構成されてなる導光部と、この導光部に光を入射して当該導光部内を導光させる光源を備え、前記透光性部材の少なくとも前記導光部を含む領域は車両の内側に向けられた内面が遮光面として構成され、前記透光性部材は前記遮光面を除く領域がウインド領域として構成され、かつ前記導光部の外側に向けられた外面が光出射面として構成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記導光部は内面が遮光面であり、外面が光拡散面であり、当該外面を覆う光透過性の保護膜を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記導光部の外面は点刻ステップ等の光拡散素子を備え、前記保護膜はハードコート膜であることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
少なくとも一部が樹脂成形物からなる透光性部材で構成された車両の車体パネルに配設され、前記透光性部材の一部に配設されてなる導光部と、この導光部に光を入射して当該導光部内を導光させる光源を備え、前記透光性部材の少なくとも前記導光部を含む領域は車両の内側に向けられた内面が遮光面として構成され、前記透光性部材は前記遮光面を除く領域がウインド領域として構成され、かつ前記導光部の外側に向けられた外面が光出射面として構成されている車両用灯具を一体に有し、前記ウインド領域がリアウインドとして形成されていることを特徴とする車両のリアパネル。
【請求項5】
前記導光部は内面が遮光面であり、外面が光拡散面であり、当該外面を覆う光透過性の保護膜を備えていることを特徴とする請求項4に記載の車両のリアパネル。
【請求項6】
前記導光部の外面点刻ステップ等の光拡散素子を備え、前記保護膜はハードコート膜であることを特徴とする請求項5に記載の車両のリアパネル。
【請求項7】
前記導光部は、前記車体パネルを構成する他の部材との二色成形物、接着一体化物、又は連結一体化物として構成されてなることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の車両のリアパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導光体を用いた車両用灯具と、この灯具を配設した自動車等の車両のリアパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両における車体の小型化、軽量化の要請に伴って車体に装備される車両用灯具(ランプ)を導光体で構成する技術が提案されている。特許文献1では、導光体、すなわち内部に光を導光することが可能な透光性部材を板状に形成し、この導光体の一方の面には導光体の内部を導光される光の一部を反射し、他の一部は導光体を透光させた上で外部に出射させる構成の面発光体が提案されている。また、他方の面には導光体の内部を導光される光を全反射する構成とすることも提案されている。このような構成とすることで、従来の車両用灯具において必要とされていたリフレクタやレンズが不要になり、構成が簡略化できるとともに、特に灯具光軸方向の寸法を低減して灯具の薄型化を図ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−212076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、導光体の内部を導光される光の一部は外部に向けて出射されるが、一部は反射により遮光されるため、遮光された分だけ光の出射面積、すなわち発光面積が低減されることになる。また、光の一部を出射させるための構成が必要であるために全体構成が複雑なものになり、コスト上の問題が生じる。特に、このような導光体を自動車のリアパネル等の車体パネルに配設する際には、車体パネルとは別体に形成した導光体を車体パネルに対して一体的に組み込む必要があり、そのための組み付け作業が煩雑なものになるという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は車体パネルに対して一体的に組み込むことを容易にし、かつ構造を簡略化することが可能な車両用灯具と、この車両用灯具を備えた車両のリアパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、透光性部材で構成された車両の車体パネルに形成され、当該透光性部材の一部車体パネルを構成する他の領域の部材との二色成形物、接着一体化物、又は連結一体化物として構成された導光部と、この導光部に光を入射して当該導光部内を導光させる光源を備え、透光性部材の少なくとも導光部を含む領域は車両の内側に向けられた内面が遮光面として構成され、透光性部材は当該遮光面を除く領域がウインド領域として構成され、前記導光部の外側に向けられた外面が光出射面として構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明において、導光部は内面が遮光処理され、外面が光拡散処理されるとともに、当該外面を覆う光透過性の保護膜が形成される。例えば、導光部の外面には点刻ステップ等の光拡散素子が形成され、保護膜はハードコート膜で構成する。
【0008】
本発明のリアパネルは、少なくとも一部が樹脂成形物からなる透光性部材で構成された車両の車体パネルに形成され、透光性部材の一部に形成された導光部と、この導光部に光を入射して当該導光部内を導光させる光源を備え、透光性部材の少なくとも導光部を含む領域は車両の内側に向けられた内面が遮光面として構成され、透光性部材は遮光面を除く領域がウインド領域として構成され、かつ導光部の外側に向けられた外面が光出射面として構成されている車両用灯具を一体に有し、当該ウインド領域がリアウインドとして形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の車両のリアパネルにおいて、導光部は、車体パネルを構成する他の部材と二色成形物、接着一体化物、又は連結一体化物として構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用灯具によれば、導光部は、車体パネルを構成する他の部材と二色成形物、接着一体化物、又は連結一体化物として構成され、車体パネルを構成する透光性部材の内面遮光面でウインド領域が構成されるとともに、当該遮光面が形成された領域の導光部の少なくとも一部の領域の外面が光出射面として構成されるので、導光部がランプとして機能されることになり、ランプの構成が簡略化できるとともに、車体パネルに対するランプの組み付けが容易なものになる。また、導光部の内面遮光面によって導光部から出射する光が車両の内部に向けて出射されることがなく、乗員に対する眩惑を防止することができる。
【0011】
本発明の車両用灯具によれば、導光部は車体パネルに設けられるウインド領域を除いた領域内に配設されるので、ウインドを通しての視界が妨げられることはなく、また他方ではランプの非点灯時にはランプとしての外観を呈することなく、点灯時に始めてランプの外観を呈することになるので、外部からの見栄えに意外性や特異性が発揮され、新規な見栄えのランプが構成できる。また、導光部が車体パネルを構成する他の領域の部材と二色成形により、または接着、連結により一体化されるので、ランプないしは車体パネルの構造が簡略化でき、製造も容易なものになる。
【0012】
本発明の車両のリアパネルによれば、本発明の車両用灯具が一体的に構成されており、少なくとも一部が樹脂成形により形成されるので、車両用灯具以外の領域部分、ないしは車両用灯具の導光部を含む領域部分を樹脂成形によって一括製造することができ、製造を容易にするとともに製造コストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の灯具を含む自動車のリアパネルの外観斜視図。
図2図1のII−II線拡大断面図。
図3図2のテール&ストップランプを含む近傍領域を拡大した断面図。
図4】導光部の作用を説明するための拡大断面図。
図5図2のハイマウントストップランプを含む近傍領域を拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明をハッチバック型自動車のリアパネルに適用した実施形態の外観図である。図1に示すように、このリアパネルRPは自動車の後方から見たときに、ほぼ上半分の領域がクリアースモーク色のガラスあるいは樹脂で形成されたリアウインドRWとして構成されている。また、同図に点描するリアウインドRWの左右両辺と下辺に沿った領域は外観色が黒色に形成された外観黒色領域BAとして構成されており、この外観黒色領域BA内の左右両側の各一部領域にそれぞれ左右のリアランプRLが形成されている。また、前記リアウインドRWの上辺に沿って車幅方向にほぼ直線状に延長された領域と、前記外観黒色領域BAの下側の同図にレ点描画する領域は所要の車体色に塗装された車体色領域CAとして形成されており、特に上側の車体色領域CAには水平直線状に発光するハイマウントストップランプHMSLが形成されている。なお、前記車体色領域CAは、この実施形態では外観色がホワイト(白色)ないしグレイ(灰色)に塗装されている。また、下側の車体色領域CAにはライセンスプレート(ナンバープレート)LPが取着される。
【0015】
前記左右のリアランプRLはそれぞれテール&ストップランプTSLと、バックアップランプBLと、ターンシグナルランプTLとで構成されており、これらの各ランプは独立したランプとして構成され、前記リアパネルRPに所定の配置パターンで搭載されている。この実施形態では、前記テール&ストップランプTSLと前記ハイマウントストップランプHMSLを本発明にかかる車両用灯具として構成しているので、これらテール&ストップランプTSLとハイマウントストップランプHMSLについて詳細に説明し、他のランプBL,TLについてはここでは詳細な説明は省略する。
【0016】
図2図1のII−II線に沿った縦断面図である。図2に示すように、前記リアパネルRPは上縁部が鎖線で概念図示しているヒンジ機構Hによって図1に示した自動車の車体VBの上部に連結支持されており、下縁部を操作することによってリアパネルRPは上下方向に傾動されて車体VBの後部開口を開閉するようになっている。また、前記リアパネルRPの内面側の下側領域は内方に屈曲形成したインナーパネルIPによってキャビティが形成され、このキャビティ内には前記テール&ストップランプTSLを点灯させるための後述する光源4と、前記ライセンスプレートLPを照明するためのライセンスランプLLの一部と、リアパネルRPのキーロック機構KL等が配設される。
【0017】
また、図1および図2に示した前記リアパネルRPは、詳細については後述するが、前記ハイマウントストップランプHMSLと前記リアランプRL、特にこの実施形態ではテール&ストップランプTSLの各発光面を除いてクリアースモーク樹脂1によって成形されている。例えば、黒色カーボンを所要濃度で含ませることによって光透過率を低減させたポリカーボネート樹脂によって形成されている。一方、前記ハイマウントストップランプHMSLと前記テール&ストップランプTSLの各発光面の領域はクリアー樹脂2、例えば、透明なポリカーボネート樹脂によって形成されており、このクリアー樹脂2で導光体として機能する本発明の導光部を構成している。これらのクリアースモーク樹脂1とクリアー樹脂2は一体に形成されており、ここでは二色成形によって一体に成形されている。そして、このようにして一体化されたクリアースモーク樹脂1とクリアー樹脂2の前記リアウインドRWを除く領域の内面に黒色塗装膜3が塗布形成されて前記外観黒色領域BAが形成され、この外観黒色領域BAで囲まれる領域に前記クリアースモーク色のリアウインドRWが形成されている。また、前記クリアースモーク樹脂1の外面に車体色塗料が塗布されて前記車体色領域CAが形成されている。
【0018】
図3図2の一部領域の拡大断面図であり、前記テール&ストップランプTSLを含む近傍領域の断面図である。前記したようにリアパネルRPを形成しているクリアースモーク樹脂1とクリアー樹脂2の内面に遮光処理が施されており、ここでは黒色塗装を施して遮光膜としての黒色塗装膜3を形成している。この黒色塗装膜3は前記クリアースモーク樹脂1とクリアー樹脂2を通して外部から視認されるため、この黒色塗装膜3を形成した領域が黒外観色領域BAとしての外観となる。前記リアウインドRWは当該黒色塗装膜3が形成されていないので、前記したように光透過率が低減されたクリアースモーク色のリアウインドとして構成される。
【0019】
前記クリアー樹脂2は光を透過するとともに、内部に光を導光する導光体として構成されており、本発明における導光部を構成するものである。このクリアー樹脂2の少なくとも一つの縁部、ここでは下側の縁部は図2に示したように、前記リアパネルRPの内側に形成したキャビティ内に配置されており、この下側の縁部の端面2iが光入射面として構成されている。そして、前記光源4として、複数個のLED4aを長さ方向に所要の間隔で搭載した細幅の帯状をした基板5(5a)が図示しない支持片によって前記キャビティ内に支持されており、各LED4aから出射した光を前記光入射面2iから前記クリアー樹脂2内に入射させる構成とされている。
【0020】
図4は前記テール&ストップランプTSLを構成しているクリアー樹脂2の作用を説明するための概念的な拡大断面図である。前記クリアー樹脂2、すなわち本発明における導光部は、リアパネルRPの内面側の面に前記したように黒色塗装によって形成された光を透過しない遮光膜としての黒色塗装膜3が形成されている。外側の面は光拡散処理が施されており、その光拡散素子として多数の点刻ステップ21、すなわち微細な逆円錐状をした凹部が所要のパターンで当該外側の面上に配列形成されている。この点刻ステップ21は、図4に光路を破線で示すように、前記LED4aから出射されて光入射面2iからクリアー樹脂2の内部に入試され、当該クリアー樹脂2の内部を導光される光の一部を点刻ステップ21の凹部の内面において乱反射させ、この乱反射によって光の一部を拡散し、クリアー樹脂2の外面から外部に出射させる構成とされている。これにより、クリアー樹脂2の外面は光出射面2o、すなわち発光面として構成されることになる。また、前記クリアー樹脂2の外面には保護膜6が形成されており、この保護膜6としてこの実施形態ではハードコート剤を塗布したハードコート膜を形成している。ハードコート剤は点刻ステップ21の凹部内に入り込まないように塗布することが好ましいが、ハードコート剤の種類を選択することによってハードコート剤が点刻ステップ21の凹部内に入り込んでも光の拡散機能を損なわないように構成することも可能である。
【0021】
この実施形態のテール&ストップランプTSLでは、自動車の後方から観察すると、テール&ストップランプTSLの非点灯時にはクリアー樹脂2を透過して内面の黒色塗装膜3が観察されるので、黒色の外観を呈することになる。そのため、観察者はテール&ストップランプTSLと周囲の外観黒色領域BAとが渾然一体の外観となり、テール&ストップランプTSLの存在を視認ないし認識することはない。一方、テール&ストップランプTSLの点灯時にはLED4aが発光し、LED4aから出射された光はクリアー樹脂2の下側の光入射面2iからクリアー樹脂2内に入射され、クリアー樹脂内を導光される。図4に示したように、入射された光は導光の途中において点刻ステップ21に投射されて拡散されるので、クリアー樹脂2の外面、すなわち光出射面2oから出射される。これにより、観察者は外観黒色領域BAの一部領域が明るく発光した発光面として観察でき、この発光面がテール&ストップランプTSLの発光であると視認ないし認識できる。このテール&ストップランプTSLの発光では、クリアー樹脂2の外面に配設した多数個の点刻ステップ21がそれぞれ点状ないし所要の面積で発光した状態として観察され、点刻ステップ21は多数個であるので、テール&ストップランプTSLの全面が発光した状態に観察される。
【0022】
このように、非点灯時にはテール&ストップランプTSLが外観黒色領域BAと渾然一体の外観を呈して当該テール&ストップランプTSLの存在を認識させず、点灯時に外観黒色領域BAの一部が発光してテール&ストップランプTSLが発光したことを認識させるので、観察者に対して意外性を感じさせることになり、自動車の特異性をアピールする見栄えを呈することになる。また、クリアー樹脂2の内面は黒色塗装膜3によって遮光されるので、テール&ストップランプTSLの非点灯時にクリアー樹脂2を通して車室内が車外に露呈されることはなく、他方で点灯時にはクリアー樹脂2の内部を導光される光が内面側、すなわち車室内側に出射されることはなく、乗員、特に運転者に対する眩惑を防止する。さらに、クリアー樹脂2の外面に形成されたハードコート膜6によってクリアー樹脂2の外面に形成した点刻ステップ21が外力によって損傷されることが防止でき、あるいは塵埃、水分等が点刻ステップ21内に入り込んで光の拡散効果が損なわれることが防止できる。
【0023】
図5は前記ハイマウントストップランプHMSLを含む領域の図2の拡大断面図である。クリアー樹脂2はほぼ水平面状をした上側のクリアースモーク樹脂1と、前記リアウインドRWを構成しているクリアースモーク樹脂1との上下間に配設されている。このクリアー樹脂2の上縁部は所要の高さ寸法領域が鉛直方向に向けられているが、それよりも下側の領域はテーパ状に後退して、すなわち自動車の後方に向けて下方に傾斜した形状に形成されている。そして、このクリアー樹脂2の内面には全領域にわたって黒色塗装膜3が遮光膜として形成されている。また、クリアー樹脂2の外面の一部領域、ここではクリアー樹脂2の上縁部に沿った領域で、かつクリアー樹脂2のほぼ全幅方向の領域にわたって光拡散させるための点刻ステップ21が形成されている。点刻ステップ21は前記テール&ストップランプTSLのクリアー樹脂2に形成されているものと同じである。また、このクリアー樹脂2の外面にはテール&ストップランプTSLと同様にハードコート膜6が形成されている。
【0024】
さらに、ハイマウントストップランプHMSLの前記クリアー樹脂2の下側の端面が光入射面2iとして構成されており、この光入射面2iに対向して光源としてのLED4bが配設されている。このLED4bはテール&ストップランプTSLにおいて用いた前記LED4aと同じでよく、基板5bによりリアパネルRPの一部に支持されるとともに、前記したヒンジ機構Hから延長される目隠し用のカバー等(図示せず)によって露呈されないようになっている。
【0025】
このハイマウントストップランプHMSLでは、非点灯時にはクリアー樹脂2を透過して内面の黒色塗装膜3が観察されるので、このハイマウントストップランプHMSLの領域は黒色の外観を呈し、リアウインドRWの上縁に沿った領域の外観黒色領域BAと渾然一体の外観となるため、車外の観察者はハイマウントストップランプHMSLが存在していることを視認ないし認識することができない。ハイマウントストップランプHMSLの点灯時には、LED4bから出射された光は光入射面2iからクリアー樹脂2内を下方から上方に向けて導光され、導光される光は上縁側の領域に形成れている点刻ステップ21によって拡散され、クリアー樹脂2の外面、すなわち光出射面2oから出射される。これにより、クリアー樹脂2の上縁に沿って左右方向に延びるライン状の発光形態となり、車外の観察者はハイマウントストップランプHMSLの発光を認識する。
【0026】
ハイマウントストップランプHMSLにおいても、非点灯時にはランプとして認識されることがなく、点灯時に始めてランプとして認識されるので、観察者に対して意外性を感じさせることになり、自動車の特異性をアピールする見栄えを呈することになる。また、クリアー樹脂2の内面に形成した黒色塗装膜3によって、点灯時にはクリアー樹脂2の内部を導光される光が内面側、すなわち車室内側に出射されることはなく、運転者に対する眩惑を防止する。さらに、クリアー樹脂2の外面に形成されたハードコート膜6によってクリアー樹脂2の外面に形成した点刻ステップ21が外力によって損傷されることが防止でき、あるいは塵埃、水分等が点刻ステップ21内に入り込んで光の拡散効果が損なわれることが防止できる。
【0027】
以上の実施形態の説明においては、前記したターンシグナルランプTLとバックアップランプBLの詳細な説明は省略したが、前記テール&ストップランプTSLと同様に、各ランプ領域をクリアー樹脂で構成し、このクリアー樹脂の内面を遮光面とすべく黒色塗装膜を形成し、外面を光拡散面とすべく光拡散素子としての点刻ステップを形成した上で、内部に光源の光を入射するように構成すればよい。このように構成することにより、ターンシグナルランプTLとバックアップランプBLにおいてもテール&ストップランプTSLと同様に観察者に意外性を与える外観のランプとして構成することが可能である。なお、ターンシグナルランプTLとバックアップランプBLは従来から提供されている汎用型の薄型ランプをそのまま利用してもよいことは言うまでもない。
【0028】
本発明におけるクリアー樹脂の内面の遮光面は光を遮光する面であれば実施形態の黒色塗装膜を形成する構成に限られるものではない。例えば、遮光性のある黒色樹脂膜をクリアースモーク樹脂やクリアー樹脂の内面に一体化してもよい。あるいは、クリアー樹脂の内面に所要のレンズステップを形成して光が外部に出射されないように構成してもよい。また、遮光膜の色は黒色に限られるものではなく、車体塗装色との関係によって任意の色の遮光膜として構成してもよい。さらに、遮光膜に加えて保護膜としてのハードコート膜や、曇り防止のための防曇膜を積層形成してもよい。
【0029】
前記した実施形態では、リアパネルを構成する際にクリアー樹脂とクリアースモーク樹脂を二色成形した例を示したが、接着あるいは溶着によって両樹脂を一体化してもよい。あるいは、ネジ等の締結手段によって一体化してもよい。
【0030】
クリアー樹脂、すなわち導光部の光出射面に形成する光拡散面は、内部を導光する光を拡散させて外部に向けて出射するように構成すればよいので、実施形態の点刻ステップに限られるものではなく、クリアー樹脂の外面をフロスト加工により粗面化してもよく、あるいは微細な透光性粒材等の拡散性材料を薄く、かつ選択的に塗布した面であってもよい。
【0031】
光源は導光部に高い効率で光を入射させる発光体であることが要求されるので、LED等の半導体発光素子を用いることが好ましいが、これに限られるものではなく、電球やその他の発光体であってもよいことは言うまでもない。また、導光部の外面の保護膜は、実施形態のように光出射面を点刻ステップで構成したときにはハードコート膜を形成することが好ましいが、光拡散面の構成に対応させて任意の保護膜で構成してもよい。例えば、保護フィルムを貼り付けてもよい。
【0032】
以上の実施形態では、自動車のリアパネルに配設したテール&ストップランプと、ハイマウントストップランプに本発明を適用した例を示したが、これ以外のランプ、例えばターンシグナルランプやバックアップランプに本発明を適用してもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は樹脂で形成した車両のリアパネル等の車体パネルに配設する灯具および当該車体パネルに採用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 クリアースモーク樹脂
2 クリアー樹脂(導光部)
3 黒色塗装膜(遮光膜)
4(4a,4b) 光源(LED)
5 (5a,5b) 支持板
6 ハードコート膜
21 点刻ステップ(光拡散素子)
RP リアパネル
RW リアウインド
BA 外観黒色領域
CA 車体色領域
RL リアランプ
TSL テール&ストップランプ
HMSL ハイマウントストップランプ


図1
図2
図3
図4
図5