特許第5945248号(P5945248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5945248航空機に操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945248
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】航空機に操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 9/12 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   B64C9/12
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-114383(P2013-114383)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-256282(P2013-256282A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】1209666.5
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510286488
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AIRBUS OPERATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ジョン パーカー
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公告第00568331(GB,A)
【文献】 米国特許第02932473(US,A)
【文献】 米国特許第02136845(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第00734446(GB,A)
【文献】 特開昭48−063152(JP,A)
【文献】 米国特許第02582348(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/00 − 99/00
F16H 19/00 − 31/00
F16H 35/10
F16H 37/00 − 37/16
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助翼体と、
前記補助翼体の第1表面から伸びるように構成された第1スポイロンと、
前記補助翼体の第2表面から伸びるように構成された第2スポイロンと、
前記第1スポイロンおよび前記第2スポイロンが前記補助翼体に配置された待機位置と前記第1スポイロンおよび前記第2スポイロンが前記補助翼体から伸びている展開位置との間で、前記第1スポイロンおよび前記第2スポイロンを動かすように構成されたヒンジ装置とを備え、
前記ヒンジ装置は、前記補助翼体の支持素子と、前記第1スポイロンの第1ヒンジ素子と、前記第2スポイロンの第2ヒンジ素子と、前記支持素子にスライド可能に取り付けられ、前記支持素子に対して長手方向の軸に沿ってライドするように構成された作動シャフトとを含み、前記第1ヒンジ素子は前記作動シャフトと係合され、前記作動シャフトをその長手方向の軸に沿ってスライドさせると、前記第1ヒンジ素子は前記作動シャフトに対して方向に回転され、
前記第2ヒンジ素子は前記作動シャフトと係合され、前記作動シャフトをその長手方向の軸に沿ってスライドさせると、前記第2ヒンジ素子を、前記第1ヒンジ素子とは反対方向に前記作動シャフトの周りで回転させ、
前記第1スポイロンおよび前記第2スポイロンを前記長手方向の軸の周りで反対方向に回転させる、
補助翼装置。
【請求項2】
前記ヒンジ装置は、待機位置と展開位置との間で前記第1スポイロンおよび前記第2スポイロンを同時に動かすように構成される、請求項1に記載の補助翼装置。
【請求項3】
前記作動シャフトは、前記作動シャフトに沿って形成された、互いに反対向きのはすば歯車側面を有する第1駆動部および第2駆動部を含み、
前記第1駆動部および前記第2駆動部は前記第1ヒンジ素子および前記第2ヒンジ素子とそれぞれ係合し、前記作動シャフトがその長手方向の軸に沿って誘導されるとき、前記第1駆動部の前記はすば歯車側面が前記第1ヒンジ素子に作用して、前記第1ヒンジ素子を前記作動シャフトの周りで一方向に回転させ、
前記第2駆動部の前記はすば歯車側面が前記第2ヒンジ素子に作用して、前記第2ヒンジ素子を前記作動シャフトの周りで反対方向に回転させる、
請求項1に記載の補助翼装置。
【請求項4】
前記第1ヒンジ素子および前記第2ヒンジ素子は、さらに、それぞれ、それらを貫いて形成された開口部を含み、
前記開口部はらせん状の駆動側面を収容するように構成され、各開口部は、はすば歯車側面と係合して前記はすば歯車側面に対向して作用するはすば歯車表面を有する、請求項3に記載の補助翼装置。
【請求項5】
複数のヒンジ素子をさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の補助翼装置。
【請求項6】
前記作動シャフトおよび前記支持素子は、スライド可能に係合されており、前記作動シャフトが前記支持素子に対して前記長手方向の軸の周りで回転することを防ぐ、請求項1から5のいずれか1項に記載の補助翼装置。
【請求項7】
前記作動シャフトはさらに、前記支持素子においてスライドして前記支持素子と係合するように構成されたスプライン部を含み、前記作動シャフトが前記支持素子に対して前記長手方向の軸の周りで回転することを防ぐ、請求項6に記載の補助翼装置。
【請求項8】
前記スプライン部は、前記作動シャフトの前記長手方向の軸に対して平行に伸びる直線状の歯状部を含む、請求項7に記載の補助翼装置。
【請求項9】
前記支持素子はさらに、前記スプライン部に適合した溝を有する前記支持素子を貫いて形成された開口部を含み、
前記支持素子に前記スプライン部がスライド可能に収容されている、請求項7または8に記載の補助翼装置。
【請求項10】
複数の支持素子をさらに含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の補助翼装置。
【請求項11】
前記作動シャフトが前記長手方向の軸に沿って誘導されるとき、前記ヒンジ素子が前記作動シャフトの軸に沿って長手方向にスライドしないように構成されたガイド手段をさらに含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の補助翼装置。
【請求項12】
前記ガイド手段は、前記作動シャフトがその長手方向の軸に沿って誘導されるとき、前記第1ヒンジ素子が境を接する第1ガイド素子と、前記第2ヒンジ素子が境を接する第2ガイド素子とを備える、請求項11に記載の補助翼装置。
【請求項13】
前記第1ガイド素子および前記第2ガイド素子は、前記ガイド素子に対応したヒンジ素子のどちらか一方の側面を伸びる2つのガイド腕状部を含む、請求項12に記載の補助翼装置。
【請求項14】
前記作動シャフトをその長手方向の軸に沿って誘導するための直線アクチュエータをさらに含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の補助翼装置。
【請求項15】
前記直線アクチュエータは、前記作動シャフトをその長手方向の軸に沿って反対方向に誘導するように構成される、請求項14に記載の補助翼装置。
【請求項16】
前記直線アクチュエータを前記補助翼体に取り付けることができる、請求項15に記載の補助翼装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の補助翼装置を含む翼装置。
【請求項18】
翼部と、
前記翼部に前記補助翼装置を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置とをさらに含み、
前記ヒンジ装置は、前記翼部および前記補助翼装置の一方に位置する支持素子と、前記翼部および前記補助翼装置のもう一方に位置するヒンジ素子と、前記支持素子にスライド可能に取り付けられ、前記支持素子に対して長手方向の軸に沿ってスライドするように構成された作動シャフトとを含み、
前記ヒンジ素子は、前記作動シャフトと係合され、前記作動シャフトをその長手方向の軸に沿ってスライドさせるとき、前記作動シャフトおよび前記ヒンジ素子を互いに対して回転させ、前記補助翼装置を前記翼部に対して前記長手方向の軸の周りで回転させる、請求項17に記載の翼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置に関する。本発明はまた、操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置を含んだ翼装置と、ヒンジ装置に取り付けられた操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置を含んだ補助翼装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は、機体の様々な部分、特に翼が、離陸、着陸、飛行中の操縦用に発生させる揚力量を変える必要がある。通常、航空機の機体上の空気の流量を制御するために、多数の操縦翼面が用いられる。航空機に用いる操縦翼面は、スラット、補助翼、折り返し、スポイラーを含む。例えば、折り返しは概して対称的に展開されて、航空機の失速速度を制御し、補助翼は展開されて、非対称的に動作することによって航空機のロールを制御する。すなわち、一方の翼における補助翼は、もう一方の翼における補助翼が上がるときに下がり、これによって、航空機は、一方の翼によって揚力が増し、もう一方の翼によって揚力が減少するので、ロールを引き起こす。航空機は、通常、付加的な操縦翼面を有しており、例えば、航空機のヨーを制御するために動作する垂直の後部構造に取り付けられた方向舵、および、航空機の傾斜度を制御するために動作する水平の後部構造に取り付けられた昇降舵といった航空機の姿勢をさらに制御する。
【0003】
航空機の操縦翼面は、通常、航空機の機体、例えば、翼および後部構造の一方にヒンジ式で取り付けられている。これによって、前記操縦翼面は、翼または後部構造に対して枢動でき、翼または後部構造上の気流を変えることができる。ヒンジ装置は、操縦翼面を取り付けて、一連の動きにわたって操縦翼面を回転させるために用いられる。このようなヒンジ装置は、航空機の機体に対して一連の位置において操縦翼面を維持することができ、これによって、操縦翼面の位置決めを正確に制御できる。
【0004】
操縦翼面を航空機の機体にヒンジ式で取り付けるための従来のヒンジ装置は、操縦翼面が周りを枢動する長手方向の軸を規定する第1枢動点と、ヒンジ点からずれた第2枢動点とを含む。通常、油圧ピストンが、第2枢動点に取り付けられており、第2枢動点と翼または後部構造との間に伸びている。そのため、ピストンが作動するとき、操縦翼面を、ピストンによって加えられたモーメントによって、第1枢動点の周りで回転させる。通常、ヒンジ装置は、操縦翼面の長さに沿って間隙をあけて配置された複数の第2枢動点およびピストンを含んでおり、これによって、操縦翼面をその長さに応じて均一に移動することができる。
【0005】
しかしながら、従来のヒンジ装置には、ピストンの収容には広い空間が必要であり、操縦翼面をモジュール型として形成できないという問題点がある。さらに、このようなシステムには、動作用の多数のピストンと複雑な油圧システムとが必要である。
【0006】
上記したように、航空機の翼に取り付けられた補助翼が展開されて、航空機のロールを制御する。しかしながら、従来の補助翼を用いる問題は、ロール発生の派生的効果として、前記補助翼が、アドバース・ヨーも発生させるという点にある。アドバース・ヨーは、1つの補助翼が上に湾曲し、対向しあう翼におけるもう一方の補助翼が下向きに湾曲するときに生じ、航空機は上に湾曲した補助翼の方向にロールする。しかしながら、補助翼はまた、航空機にロールとは反対方向へのヨーを引き起こす。このヨーは、アドバース・ヨーとして知られており、このことは、通常、方向舵を用いることによって補償される。
【0007】
しかしながら、アドバース・ヨーを補償し、航空機のヨーを概して制御する他の手段として、スポイロンが用いられる。スポイロンは、補助翼上の気流を乱すことによって翼によって発生した揚力を変えるために、翼または補助翼といった操縦翼面から立ち上がっている操縦翼面である。したがって、スポイロンを用いて、補助翼の使用によって生じるアドバース・ヨーを補償でき、あるいは、スポイロンを補助翼と共に用いて、ヨーおよびロールを同時に制御することができる。
【0008】
複動式スポイロンが、特許文献1から知られている。ここでは、各補助翼は、ヒンジで連結されて補助翼の上部表面および下部表面から伸びる、対向しあうスポイロンを備えている。各一対の対向しあうスポイロンは互いに動き、これによって、補助翼から同時に伸びるか、あるいは、前記補助翼において待機する。スポイロンは、2つの相互作用する四分円の周りで動いてピストンによって作動するケーブルによって、回転される。しかしながら、特許文献1に示したスポイロンヒンジ装置には、操縦翼面の達成できる翼弦長が作動ピストンの必要な長さのゆえに低減され、作動ピストンが、飛行線の正しい位置に配置され、ケーブルの複雑で信頼できない構成が2つの相互作用する四分円の周りで作用する、という問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第2582348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の問題および不都合を克服するか、十分に軽減した、航空機に操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にしたがって、作動シャフトと、作動シャフトを航空機の第1部品に取り付けるように構成された支持素子と、作動シャフトを航空機の第2部品に取り付けるように構成されたヒンジ素子とを含んだ航空機に操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置を提示する。作動シャフトは、支持素子にスライド可能に取り付けられており、その長手方向の軸に沿って支持素子に対してスライドするように構成されている。ヒンジ素子は作動シャフトと係合し、これによって、作動シャフトをその長手方向の軸に沿ってスライドさせるとき、作動シャフトとヒンジ素子とを作動シャフトの長手方向の軸の周りで互いに対して回転させる。これによって、前記第1部品および前記第2部品の一方を、もう一方の前記部品に対して長手方向の軸の周りで回転させるようになる。
【0012】
ヒンジ装置はさらに、ヒンジ素子とスライド可能に係合する作動シャフトの部分に沿って形成された駆動部を含むことが好ましく、これによって、作動シャフトをその長手方向の軸に沿ってスライドさせるとき、作動シャフトとヒンジ素子とを作動シャフトの長手方向の軸の周りで互いに対して回転させる。
【0013】
駆動部は、ヒンジ素子と係合するはすば歯車側面を含んでいてもよい。これによって、作動シャフトがその長手方向の軸に沿って誘導されるとき、はすば歯車側面はヒンジ素子に作用して、ヒンジ素子と作動シャフトとを互いに対して回転させる。
【0014】
ヒンジ素子はさらに、らせん状の駆動側面を収容するように構成された、前記ヒンジ素子を貫いて形成された開口部を含んでいてもよい。開口部には、はすば歯車側面と係合して前記はすば歯車側面に対向して作用するはすば歯車表面がある。
【0015】
ヒンジ装置はさらに、複数のヒンジ素子を含んでいてもよい。
【0016】
一実施形態では、作動シャフトと支持素子とをスライド可能に係合して、作動シャフトを長手方向の軸の周りで支持素子に対して回転しないようにする。
【0017】
作動シャフトはさらに、支持素子においてスライドして前記支持素子と係合するように構成されたスプライン部を含んでおり、これによって、作動シャフトは、長手方向の軸の周りで支持素子に対して回転しないようになっている、ということが有効である。
【0018】
スプライン部が、作動シャフトの長手方向の軸に対して平行に伸びる直線状の歯状部を含むことが、好都合である。
【0019】
支持素子はさらに、スプライン部に適合している溝を有する、前記支持素子を貫いて形成された開口部を含んでおり、前記開口部には、スプライン部がスライド可能に収容されている、ということが好ましい。
【0020】
ヒンジ装置はさらに、複数の支持素子を含んでいてもよい。
【0021】
一実施形態では、ヒンジ装置はさらに、作動シャフトが前記長手方向の軸に沿って誘導されるとき、作動シャフトの長手方向の軸方向にヒンジ素子をスライドしないように構成されたガイド手段を含む。
【0022】
ガイド手段は、作動シャフトがその長手方向の軸に沿って誘導されるとき、ヒンジ素子が境を接するガイド素子である、ということが有効である。
【0023】
ガイド素子がヒンジ素子のどちらか一方の側面を伸びる2つのガイド腕状部を含むことが、好都合である。
【0024】
ヒンジ装置はさらに、作動シャフトをその長手方向の軸に沿って誘導する直線アクチュエータを含んでいてもよい。
【0025】
直線アクチュエータが、作動シャフトをその長手方向の軸に沿って反対方向に誘導するように構成されていることが有効である。
【0026】
直線アクチュエータを第1部品に取り付けることができる、ということが好ましい。
【0027】
本発明の他の態様にしたがって、補助翼体と、前記補助翼体の第1表面から伸びるように構成された第1スポイロンと、前記補助翼体の第2表面から伸びるように構成された第2スポイロンと、ヒンジ装置とを含んだ補助翼装置が備えられ、前記ヒンジ装置は、前記第1スポイロンおよび前記第2スポイロンが前記補助翼体に配置されている待機位置と前記第1スポイロンおよび前記第2スポイロンが前記補助翼体から伸びている展開位置との間で、前記第1スポイロンおよび前記第2スポイロンを動かすように構成され、前記ヒンジ装置は、前記補助翼体の支持素子と、前記第1スポイロンの第1ヒンジ素子と、前記第2スポイロンの第2ヒンジ素子と、作動シャフトとを含み、前記作動シャフトは、前記支持素子にスライド可能に取り付けられており、前記作動シャフトの長手方向の軸に沿って前記支持素子に対してスライドするように構成されており、前記第1ヒンジ素子は前記作動シャフトと係合され、これによって、前記作動シャフトをその長手方向の軸に沿ってスライドさせると、前記第1ヒンジ素子は前記作動シャフトに対して一方向に回転され、前記第2ヒンジ素子は前記作動シャフトと係合され、これによって、前記作動シャフトをその長手方向の軸に沿ってスライドさせると、前記第2ヒンジ素子を、前記第1ヒンジ素子とは反対方向に前記作動シャフトの周りで回転させ、前記第1スポイロンおよび前記第2スポイロンを前記長手方向の軸の周りで反対方向に回転させる。
【0028】
ヒンジ装置が待機位置と展開位置との間で第1スポイロンおよび第2スポイロンを同時に動かすように構成されていることが、有効である。
【0029】
前記作動シャフトは、前記第1ヒンジ素子および前記第2ヒンジ素子のそれぞれと係合する前記作動シャフトに沿って形成された、互いに反対向きのはすば歯車側面を有する第1駆動部および第2駆動部を含み、これによって、前記作動シャフトがその長手方向の軸に沿って誘導されるとき、前記第1駆動部の前記はすば歯車側面が前記第1ヒンジ素子に作用して、前記第1ヒンジ素子を前記作動シャフトの周りで一方向に回転させ、前記第2駆動部の前記はすば歯車側面が前記第2ヒンジ素子に作用して、前記第2ヒンジ素子を前記作動シャフトの周りで反対方向に回転させることが好ましい。
【0030】
本発明の他の態様にしたがって、翼部と、補助翼と、前記翼部に前記補助翼を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置とを含む翼装置を提示する。前記ヒンジ装置は、翼部の支持素子と、前記補助翼のヒンジ素子と、前記支持素子にスライド可能に取り付けられ、前記支持素子に対して長手方向の軸に沿ってスライドするように構成された作動シャフトとを含む。前記ヒンジ素子は、前記作動シャフトと係合され、これによって、前記作動シャフトをその長手方向の軸に沿ってスライドさせるとき、前記作動シャフトと前記ヒンジ素子とを互いに対して回転させて、前記補助翼を前記翼部に対して前記長手方向の軸の周りで回転させる。
【0031】
本発明の他の態様にしたがって、翼部と、補助翼と、前記翼部に前記補助翼を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置とを含む翼装置を提示する。前記ヒンジ装置は、補助翼の支持素子と、翼部のヒンジ素子と、支持素子にスライド可能に取り付けられ、前記支持素子に対して長手方向の軸に沿ってスライドするように構成された前記作動シャフトとを含む。前記ヒンジ素子は作動シャフトと係合され、これによって、前記作動シャフトをその長手方向の軸に沿ってスライドさせるとき、前記作動シャフトと前記ヒンジ素子とを互いに対して回転させて、前記補助翼を前記翼部に対して前記長手方向の軸の周りで回転させる。
【0032】
ここで、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら例示的にのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】航空機翼から伸びる補助翼を備えた航空機翼の一部と、前記翼に対して補助翼を取り付けた航空機に操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置とを示す斜視図である。
図2図1に示したヒンジ装置の斜視図である。
図3図2に示したヒンジ装置の作動シャフトの部分斜視図である。
図4図2に示したヒンジ装置の部分斜視図である。
図5図2に示したヒンジ装置の別の部分斜視図である。
図6】航空機翼から伸びる補助翼を備えた航空機翼の部分斜視図、および、航空機に操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置の他の構成である。
図7図6に示したヒンジ装置の斜視図である。
図8】補助翼に取り付けられた複動式スポイロンを備えた補助翼と、補助翼にスポイロンを取り付けた航空機に操縦翼面を回転自在に取り付けるためのヒンジ装置の他の構成の斜視図である。
図9図8に示したような、補助翼に取り付けられた2つのスポイロンを備えた補助翼の側面図である。
図10】ヒンジ装置に取り付けられた下部スポイロンを備えた、図8に示したヒンジ装置の斜視図である。
図11図8に示したヒンジ装置の他の構成の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付図面の図1を参照しながら、航空機の機体の一部を形成する翼部2と補助翼3とを含む航空機の翼装置1の一部を示す。翼装置1には、翼の前方に沿った先端(図示せず)と、翼の後方に沿った後端とがある。補助翼3は、ヒンジ装置4によって翼部2の後端に取り付けられており、補助翼3は、翼1の後端に対して平行に伸びる長手方向のヒンジ線の周りで翼部2に対して回転できる。
【0035】
翼部2は、前方長手方向の桁(図示せず)と、前記前方長手方向の桁に対して平行であるが間隙をあけて伸びている後方長手方向の桁5とを含む翼箱状部から形成されている。側部のリブ(図示せず)は、前桁と後桁との間に接続されており、上部被覆部6および下部被覆部7は、前桁と後桁との間の前記側部リブに広がっている。前方長手方向の桁および後方長手方向の桁は、たわみ荷重およびねじり荷重の影響を受けず、せん断荷重が上部被覆部6および下部被覆部7によってかけられる。
【0036】
補助翼2は、前方端部10において間隔を空けた上面8aおよび下面8bを含む。これによって、補助翼3が翼部2に取り付けられているとき、上面8aおよび下面8bは、翼部2の上部被覆部6および下部被覆部7の方へと伸びる。ヒンジ装置を収容する間隙部12は、補助翼2の上面8aと下面8bとの間の補助翼2の前方端部10に沿って細長く伸び、ヒンジ装置4は、以下に説明するように、前記間隙部に収容される。補助翼2の上面8aおよび下面8bは、補助翼3の後方端部14へと互いに合流する。
【0037】
補助翼3は、ヒンジ装置4によって翼部2の後桁5に対して枢動可能に取り付けられ、後桁5に対して平行に伸びる補助翼のヒンジ線を形成する長手方向の軸の周りで回転できる。ヒンジ線は、ヒンジ装置4の一部を形成する作動シャフト9の長手方向の軸によって規定されている。
【0038】
ここで、ヒンジ装置4について詳述する。ヒンジ装置は、これらの例示的な実施形態において翼部に補助翼を枢動するように取り付けるために用いられるが、ヒンジ装置の使用は、それに限定されるものではなく、前記ヒンジ装置を用いて、航空機の様々な航空機操縦翼面を枢動可能に取り付け、前記部品を互いに枢動可能に取り付けて、他の部品が互いに対して枢動可能である。
【0039】
図2に、ヒンジ装置4が示される。ヒンジ装置4は、細長い作動シャフト9と、シャフト9を第1部品に取り付ける支持部材16と、シャフトを第2部品に取り付けるヒンジ部材17と、ヒンジ部材17を作動シャフト9の長手方向の軸に沿った方向に動かさないようにするガイド部材18と、作動シャフト9をその長手方向の軸に沿って長手方向にスライドさせる直線アクチュエータ19とを含む。本実施形態では、第1部品は、航空機の機体の翼部2であり、第2部品は補助翼3である。しかしながら、他の実施形態では、第1部品は、航空機の機体の別の部分であり、第2部品は別の操縦翼面である。
【0040】
細長い作動シャフト9は円筒型であり、シャフト9の軸に対して平行に伸びる直線状の歯状部を含む、各端部の第1スプライン部20および第2スプライン部22を備える。シャフト9の一端における第1スプライン部20は、第1スプライン部20の歯状部の外径がシャフト9の外面21の直径に相当するように、シャフト9において凹状になっている。シャフト9のもう一方の端部における第2スプライン部22は、第2スプライン部22の歯状部の外径がシャフト9の外面21の直径よりも大きくなるように、シャフト9の外面21から突き出ている。シャフト9に沿った各スプライン部20、22の長さは、以下に示すように、直線アクチュエータ19のストロークよりも長いか、または、前記ストロークに等しい長さである。
【0041】
2つの支持部材16は、ヒンジ装置4が組み立てられると、第1部品に固定して取り付けられるか、または、前記第1部品から伸びている。各支持部材16は、それらを貫いて形成された支持開口部23を有するリブであり、前記支持部材を貫いて、作動シャフト9の前記支持部材のスプライン部22が収容されている。各支持開口部23は、その外周の周りに形成される抑止溝24を有している。前記抑止溝は、それに対応したスプライン部20、22の歯状部と係合して、シャフト9と支持部材16との回転を互いに対して制限する。しかしながら、シャフト9は、以下に示すように、その長手方向に支持開口部23においてスライドできる。2つの支持部材16は、互いから間隔を空けており、これによって、前記支持部材は、シャフト9においてそれらに対応したスプライン部20、22の位置も位置合わせされることができる。
【0042】
本実施形態においてスプライン部20、22をシャフト9の各端部に示しているが、他の実施形態では、スプライン部20、22をシャフト9の端部から間隙をあけて配置する。さらに、2つの支持部材16およびそれらに対応したスプライン部20、22を示しているが、支持部材とそれらに対応したスプライン部との数は、シャフト9の長さと、第2部品によってシャフトに加えられたトルクと、補助翼3とに応じて決まる。
【0043】
作動シャフト9はさらに、それに沿って間隙をあけて配置された駆動部25を含む。図3を参照すると、各駆動部25は、シャフト9の部分に沿って伸びるはすば歯車側面26を備える。シャフト9に沿った各駆動部25の長さは、以下に示すように、直線アクチュエータ19のストロークより長いか、または、それに等しいに長さである。駆動部25は、シャフト9の外面21から突き出ている。
【0044】
ヒンジ部材17は、ヒンジ装置4が組み立てられると、第2部品に固定して取り付けられるか、または、前記第2部品から伸びている。各ヒンジ部材17は、それらを貫いて形成された駆動開口部27を有するリブである。前記ヒンジ部材を貫いて、それらに対応した作動シャフト9の駆動部25が収容されている。各駆動開口部27は、その内周に形成された歯車内壁面28を有しており、これにより、各駆動開口部27の歯車内部歯状部はそれに対応した駆動部25の歯状部と係合し、シャフト9の駆動部25は、それに対応したヒンジ部材17の駆動開口部27においてスライドでき、ヒンジ部材を回転させる。このことについては以下で説明する。ヒンジ部材17は、互いに間隔を空けており、これによって、前記ヒンジ部材は、シャフト9においてそれらに対応した駆動部25の位置と位置合わせされ、係合する。
【0045】
3つの駆動部25およびそれらに対応したヒンジ部材17を図2に示したが、ヒンジ装置が単一の駆動部25、または複数の駆動部を含んでいてもよい。さらに、2つ以上のヒンジ部材17が、作動シャフト9の単一の駆動部25と係合してもよい。
【0046】
直線アクチュエータ19は、支持部材16に対して固定して取り付けられており、これによって、直線アクチュエータ19と支持部材16とは、互いに回転しない。作動シャフト9は、油圧ピストンまたは同様のものである直線アクチュエータ19に固定して結合されており、これによって、直線アクチュエータ19は、矢印「A」または「B」の方向に作動シャフトの長手方向の軸に沿って作動シャフトに直線運動をさせることができ(図2参照)、これにより、ヒンジ部材を駆動して、第1部品と第2部品との互いに対する所望の回転に応じて矢印「C」または「D」の方向に回転する。
【0047】
図4では、ガイド部材18は、ヒンジ装置が組み立てられると、第1部品に固定して取り付けられるか、または、前記第1部品から伸びる。ガイド部材18は、底部29と、底部29から伸びる、互いに間隙をあけて配置された2つの腕状部30とを備えてU型をしている(図4参照)。底部29は、第1部品に固定して取り付けられており、腕状部30は、それらから立ち上がっている。穴部32が、作動シャフト9が伸びうる各腕状部30を貫いて形成され、各穴部32の直径は、シャフト9および駆動部25の直径よりも大きい。これによって、シャフトがそれらを貫いて伸びているとき、シャフト9および駆動部25は各穴部32の端から間隙をあけて配置されている。これについては以下で説明する。
【0048】
各ガイド部材18の腕状部30は、それらの間にヒンジ部材18を収容するために間隙をあけて配置されており、これによって、ヒンジ部材は、ガイド部材に対して回転できるが、ガイド部材18に対して、シャフトの軸に沿って長手方向には動かないようになっている。
【0049】
ヒンジ装置の組立について、図2図5を参照しながら説明する。
【0050】
支持部材16、ガイド部材18、および、直線アクチュエータ19は、第1部品に固定して取り付けられているか、あるいは、第1部品の部分を形成しており、これによって、それらは第1部品から伸びている。支持部材16、ガイド部材18、および、直線アクチュエータ19は、互いに間隙をあけて配置されており、それぞれ、スプライン部20、22、駆動部25、および、作動シャフト9の端部の間隔に対応しており、これによって、互いに位置合わせされている。同様に、ヒンジ部材17は、第2部品に固定して取り付けられているか、あるいは、第2部品から伸びているように第2部品の一部を形成しており、互いに間隙をあけて配置されて、第1部品から伸びているガイド部材18同士の間隔に対応している。
【0051】
第1部品と第2部品とは、ヒンジ部材がそれに対応したガイド部材の腕状部間に配置され、各支持開口部と駆動開口部との中心が、ヒンジ線を規定する共通の長手方向の軸に沿って位置合わせされるように、接続されている。
【0052】
作動シャフト9は、支持部材16の支持開口部23およびヒンジ部材17の駆動開口部27を貫いて挿入され、スライドし、直線アクチュエータ19に結合される。作動シャフト9の第1端部における凹状のスプライン20の直径は、シャフトのもう一方の端部および駆動部における突き出たスプラインよりも小さく、したがって、第2支持開口部23および各駆動開口部27を貫いて、それらと係合することなくスライドできる。作動シャフト9が直線アクチュエータ19に挿入および固定して結合されると、支持部材16は、スプライン歯状部が支持開口部23の抑止溝24とスライド可能に係合するように、シャフト9の前記支持部材それぞれのスプライン部20、22と位置合わせされ、係合される。同様に、ヒンジ部材17は、前記ヒンジ部材それぞれの駆動部25と位置合わせされて、はすば歯車側面26が駆動開口部27のそれに対応したらせん状の歯車内壁面28と係合し、ヒンジ部材がそれらそれぞれのガイド部材の腕状部30間に配置される。
【0053】
例示的な実施形態に関して、本明細書において説明したガイド部材18が各ヒンジ部材17のどちらか一方の側面に伸びるU型部を含んでおり、各ヒンジ部材17がガイド部材18に対してスライドしないようになっており、それ故に、第2部品が第1部品に対してシャフト9の長手方向の軸に沿った方向にスライドしないようになっているが、他の手段を用いて、第1部品と第2部品とが、作動シャフトの長手方向の軸に沿った方向に互いに対してスライドしないようにしてもよい。例えば、ガイド腕状部が、各支持部材の外側に伸びており、ガイド腕状部およびヒンジ部材が互いに対して固定して取り付けられているように第2部品から伸びていてもよい。上記のガイド部材の利点は、前記ガイド部材が、シャフトによってガイド部材に加えられる、シャフトの軸に沿って誘導される横力のゆえに、ヒンジ部材のたわみの影響を受けないという点である。
【0054】
本例示的な実施形態にかかるヒンジ機構の動作について、図1から図5を参照しながら説明する。本実施形態では、上記したように、第1部品は、航空機の機体の翼部2であり、第2部品は補助翼3である。
【0055】
図1では、ヒンジ装置4は、補助翼3を航空機の機体の翼部2の後桁5に取り付けている。補助翼3は、図1、2、4、5に示したように、初めは、シャフト9をそのストロークの中点において維持する直線アクチュエータ19と共に、中立位置にある。したがって、支持部材16は、それらそれぞれのスプライン20、22の中点に配置されており、各ヒンジ部材17は、それらそれぞれの駆動部25の中点に配置されている。
【0056】
支持部材16および直線アクチュエータ19は、翼部2の後桁5に固定して取り付けられており、したがって、シャフト9は、支持部材16の抑止溝24と係合しているスプライン部20、22の歯状部によって回転しない。ヒンジ部材17は、補助翼3に固定して取り付けられており、したがって、前記補助翼は、駆動部25の歯と係合しているヒンジ部材17を貫いて形成された駆動開口部27の歯車内壁面28によって、翼部2に対して回転しない。シャフト9は、その長手方向の軸に沿って直線アクチュエータ19によってスライドしない。
【0057】
航空機の機体の翼部2に対して補助翼3を回転させるために、直線アクチュエータ19を作動させる。矢印「C」(図1参照)の方向に補助翼3を回転させるために、直線アクチュエータ19は、直線アクチュエータ19から離れた方向に、矢印「A」の方向に、シャフトを誘導する。シャフト9は次に、その長手方向の軸に沿ってスライドすることによって、スプライン部20、22は、支持部材16を貫いて形成される支持開口部23においてスライドするが、シャフトがその軸の周りで回転しないようになっている。シャフト9において形成された各駆動部25のはすば歯車側面26は、前記駆動部に対応したヒンジ部材17の歯車内壁面28に作用する。各ヒンジ部材17は、翼部2の後桁5に固定して取り付けられた、前記ヒンジ部材それぞれのガイド部材18の腕状部30の一方によって、シャフト9の長手方向に沿ってスライドしない。シャフト9の駆動部25は、ヒンジ部材17をシャフト9の長手方向の軸の周りで回転させる。
【0058】
したがって、シャフト9がその長手方向の軸に沿って移動すると、前記シャフトは、各ヒンジ部材17に回転力を加え、それから、補助翼をシャフト9の長手方向の軸の周りで回転させる。補助翼3は次に、その所望の位置へと回転し、直線アクチュエータ19の作動が停止する。直線アクチュエータ19は次に、シャフトがその直線アクチュエータに沿ってスライドしないようにし、したがって、補助翼3は、そのヒンジ線の周りで翼部2に対して回転しないようになっている。
【0059】
補助翼をその中立位置に戻すために、または、補助翼をその中立位置を越えて反対方向に、矢印「D」の方向に回転させる(図1参照)ために、直線アクチュエータは、直線アクチュエータ19の方向に、矢印「B」の方向に作動シャフト9を誘導する。シャフト9は次に、その長手方向の軸に沿ってスライドする。これによって、スプライン部20、22が、支持部材16を貫いて形成された支持開口部23をスライドするが、シャフトがその軸の周りで回転しないようにする。各駆動部25のはすば歯車側面26は、前記駆動部のそれに対応したヒンジ部材17の歯車内壁面28に作用し、各ヒンジ部材17は、そのそれぞれのガイド部材18の腕状部30のうちの1つによってシャフト9の長手方向に沿ってスライドしないようになっている。シャフト9の駆動部25は、したがって、ヒンジ部材17を矢印「D」の方向においてシャフト9の長手方向の軸の周りで回転させる。補助翼3は次に、その所望の位置へと回転する。
【0060】
補助翼の展開範囲は、直線アクチュエータ19のストローク、および/または、駆動部25の長さによって割り当てられる各駆動部25のはすば歯車側面26の傾斜度によって決定される、ということを理解されたい。
【0061】
翼装置の他の実施形態について、図6および図7を参照しながら説明する。本実施形態にかかるヒンジ装置40を備えた翼装置は、上記のヒンジ装置4を備えた翼装置と同じであり、したがってここでは詳細な説明を省略する。さらに、上述の実施形態において説明した部品および特性に対応している部品および特性については、同じ参照符号とする。しかしながら、本実施形態では、第1部品は補助翼43であり、第2部品は、航空機の機体の翼部42である。
【0062】
図6および図7では、本実施形態にかかる、補助翼43を航空機の機体の翼部42に取り付けたヒンジ装置40を示している。ヒンジ装置40は、細長い作動シャフト9と、シャフト9を補助翼43に取り付けた支持部材45と、シャフト9を翼部42に取り付けたヒンジ部材46と、ヒンジ部材46が作動シャフト4の長手方向の軸に沿ってスライドしないようにするガイド部材47と、軸に沿って長手方向に作動シャフト9をスライドさせる直線アクチュエータ19とを含む。本明細書において説明したヒンジ装置を用いて、補助翼を翼部に枢動するように取り付けるが、ヒンジ装置の使用はそれに限定されるものではなく、他の実施形態では、ヒンジ装置を用いて、様々な航空機の操縦翼面を航空機に枢動可能に取り付ける。
【0063】
本実施形態では、補助翼40およびヒンジ装置4を組み合わせて、補助翼をモジュール式装置として形成できるようにする。シャフトと、支持部材と、ガイド部材と、直線アクチュエータとの全ては、シャフトの長手方向の軸の周りで翼部42に対して回転する。
【0064】
細長い作動シャフト9は、各端部に第1スプライン部20および第2スプライン部22を備える。シャフト9に沿った各スプライン部20、22の長さは、直線アクチュエータ19のストロークの長さより長いか、前記ストロークの長さに等しい。
【0065】
支持部材45は、それらを貫いて形成された、作動シャフト9のスプライン部22が収容された支持開口部48と共に、補助翼40に配置されている。各支持開口部48は、それに対応したスプライン部20、22の歯状部と係合する抑止溝を有し、シャフト9と支持部材45との回転を互いに対して制限するが、シャフト9がその長手方向にスライドできる。支持部材45は、互いに間隔を空けており、これによって、シャフト9において前記支持部材のスプライン部20、22の位置と位置合わせされる。
【0066】
本実施形態において、スプライン部20、22をシャフト9の各端部に示すが、他の実施形態では、スプライン部20、22をシャフト9の端部から間隙をあけて配置してもよい。さらに、2つの支持部材45およびそれらに対応したスプライン部20、22を示しているが、支持部材とそれらに対応したスプライン部との数がシャフト9の長さおよび補助翼3によってシャフトに加えられるトルクに応じて決まる。
【0067】
作動シャフト9はまた、それに沿って間隙をあけて配置された駆動部25を備えており、各駆動部25は、シャフト9の部分に沿って伸びるはすば歯車側面26を有している。各ヒンジ部材46は、それらを貫いて形成される駆動開口部49を有する、翼部42から伸びるリブであり、前記支持開口部を貫いて、作動シャフト9の前記ヒンジ部材の駆動部25が収容されている。各駆動開口部27は、それに対応した駆動部25の歯状部と係合する歯車内壁面28を有しており、シャフト9の駆動部25は、それに対応した駆動開口部49においてスライドでき、ヒンジ部材を回転させる。
【0068】
直線アクチュエータ19は、補助翼43に固定して取り付けられており、これによって、直線アクチュエータ19と支持部材45とが互いに対して回転しないようになっている。作動シャフト9は、油圧ピストンまたは同様のものである直線アクチュエータ19に固定して結合されており、これによって、直線アクチュエータ19は、直線運動において作動シャフトの長手方向の軸に沿って作動シャフトを誘導する。
【0069】
ガイド部材47は、補助翼43に配置されており、各ガイド部材は、互いに間隙をあけて配置された2つの立ち上がっている腕状部50を備えたU型の構成をしている。穴部52は、各腕状部50を貫いて形成されており、前記腕状部を貫いて、作動シャフト9は各穴部52の端に接することなく伸びることができる。腕状部50は、それらの間にヒンジ部材46を収容するために間隙をあけて配置されており、シャフトの軸に沿って長手方向には動かないようになっている。
【0070】
支持部材45、ガイド部材47、および、直線アクチュエータ19は、互いに間隙をあけて配置されて、スプライン部20、22、駆動部25、および、作動シャフト9の端部の間隔とそれぞれ位置合わせされる。ヒンジ部材46は、それらに対応したガイド部材47の腕状部50間に配置されており、作動シャフト9は、支持開口部48、駆動開口部49、穴部52を貫いて配置されており、直線アクチュエータ19に結合されている。スプライン部20、22のスプライン歯状部は、支持開口部48の抑止溝と係合しており、駆動部25のはすば歯車側面26は、駆動開口部27の駆動部のらせん状の歯車内壁面28と係合している。
【0071】
本例示的な実施形態にかかるヒンジ機構の動作について、図6および図7を参照しながら説明する。
【0072】
ヒンジ装置40は、補助翼43を航空機の機体の翼部42に取り付けている。補助翼43は、初めは、シャフト9をそのストロークの中点において維持する直線アクチュエータ19と共に中立位置にある。したがって、支持部材45は、それらそれぞれのスプライン20、22の中点に配置されており、各ヒンジ部材46は、それらそれぞれの駆動部25の中点に配置されている。
【0073】
ヒンジ部材46は、翼部42に固定して取り付けられており、したがって、シャフト9は、それに対応した駆動部25の歯と係合する駆動開口部27の歯車内壁面28によって翼部42に対して回転しないようになっている。補助翼43は、支持部材45の抑止溝24と係合するスプライン部20、22の歯状部によって翼部42に対して回転しないようになっている。シャフト9は、その長手方向の軸に沿って直線アクチュエータ19によってスライドしないようになっている。
【0074】
翼部42に対して補助翼43を回転させるために、直線アクチュエータ19を作動させる。補助翼3を回転させるために、直線アクチュエータ19は、シャフト9を直線アクチュエータから離れた方向にまたは前記直線アクチュエータの方向に誘導する。シャフト9は次に、その長手方向の軸に沿って補助翼43に対してスライドする。これによって、スプライン部20、22は、支持部材45を貫いて形成された支持開口部48においてスライドするが、シャフトがその軸の周りで補助翼43に対して回転しないようになる。シャフト9に形成された各駆動部25のはすば歯車側面26は、前記駆動部に対応したヒンジ部材46の歯車内壁面に作用するが、補助翼43および翼部42は、ヒンジ部材46に作用するガイド部材腕状部30によって、シャフト9の長手方向に沿って互いに対してスライドしないようになっている。シャフト9の駆動部25は、ヒンジ部材46の駆動開口部49においてスライドし、各ヒンジ部材17に回転力を加え、したがって、シャフト9がシャフト9の長手方向の軸の周りで駆動開口部49において回転するようにし、それゆえに、補助翼43が翼部42に対して回転するようにする。
【0075】
補助翼43は次に、その所望の位置へと回転し、直線アクチュエータ19の作動が停止する。直線アクチュエータ19は次に、シャフトがその直線アクチュエータに沿ってスライドしないようにし、したがって、補助翼43は、そのヒンジ線の周りで翼部42に対して回転しないようになっている。
【0076】
補助翼をその中立位置に戻すために、または、補助翼43をその中立位置を越えて反対方向に回転させるために、直線アクチュエータは、作動シャフト9を直線アクチュエータ19の方向に誘導する。
【0077】
本実施形態では、補助翼40およびヒンジ装置4を組み合わせて、補助翼をモジュール式装置として形成できるようにする。シャフトと、支持部材と、ガイド部材と、直線アクチュエータとの全ては、シャフトの長手方向の軸の周りで翼部42に対して回転する。
【0078】
上記複数の実施形態は、従来のヒンジ装置および翼装置と比べてより小型の構成を提供し、ずれた枢動点においてよりはむしろそのヒンジ線に沿って補助翼を活性化できる。さらに、上記した構成によって、組立時間を改善するモジュール式装置が可能になり、補助翼の封止が改善される。
【0079】
補助翼の他の実施形態について、図8から図11を参照しながら説明する。本実施形態では、補助翼を翼部に回転自在に取り付けるためのヒンジ装置は、従来のヒンジ装置であるので、ここでは詳細に説明しない。しかしながら、他の実施形態では、補助翼を翼部に取り付けたヒンジ装置は、図1から図7を参照して説明したヒンジ装置の複数の実施形態のうちの1つである。
【0080】
図8および図9に、上部スポイロン62および下部スポイロン63が取り付けられた補助翼60を示す。上部スポイロン62および下部スポイロン63は、各スポイロン62、63の先端62a、63aに近接して位置付けられた長手方向の軸の周りで回転する操縦翼面であり、これによって、上部スポイロン62および下部スポイロン63は、補助翼上の気流を乱すことによって翼によって発生した揚力を変えるために、展開されるときに、補助翼体61の上部表面64および下部表面65の気流へと伸びる。これについては以下で説明する。
【0081】
凹部66、67を収容するスポイロンが、補助翼60のそれぞれの上部表面64および下部表面65に形成される。前記補助翼には、上部スポイロン62および下部スポイロン63が展開されていないときに収容されている。上部スポイロン62は、外層68および内層69を有する板である。上部スポイロン62の外層68は、補助翼体61の上部表面64に適合しており、これによって、前記外層は、上部スポイロン62が凹部66を収容する上部スポイロンに収容されているときに、上部表面64と同一平面にある。同様に、下部スポイロン63は、外層および内層70、72を有する板であり、下部スポイロン63の外層70は、補助翼体61の下部表面65に適合しており、これによって、前記外層は、下部スポイロン62が凹部67を収容する下部スポイロンに収容されているときに、下部表面65と同一平面にある。
【0082】
各スポイロン62、63は、ヒンジ装置73によって回転自在に取り付けられている。ヒンジ装置73は、概して、図1から図4を参照しながら説明したヒンジ装置と同じであるので、ここで詳細には説明しない。さらに、上述の実施形態において説明した部品および特性に対応している部品および特性については、同じ参照符号とする。しかしながら、本実施形態では、ヒンジ装置73は、2つの対向しあうスポイロンを補助翼に回転自在に取り付けるために配置されている。
【0083】
図10および図11では、本実施形態にかかる、図示した下部スポイロン63を取り付けたヒンジ装置73を詳細に示し、上部スポイロン62については省略する。
【0084】
ヒンジ装置73は、それを貫いて伸びる長手方向の軸を有する細長い作動シャフト74を含み、前記シャフトの周りで上部スポイロン62および下部スポイロン63が回転する。支持部材75は、シャフト74を補助翼体61に取り付けており、上部ヒンジ部材76および下部ヒンジ部材77は、シャフト74を上部スポイロン72および下部スポイロン73のそれぞれに取り付けており、ガイド部材78は、ヒンジ部材76、77が作動シャフト74の軸に沿って長手方向に動かないようにし、直線アクチュエータ19は、作動シャフト74がその軸に沿って長手方向にスライドするようにする。
【0085】
細長い作動シャフト74は円筒型であり、シャフト74の軸に対して平行に伸びる直線状の歯状部を含む各端部において、スプライン部79を備える。各スプライン部79の長さは、以下に示すように、直線アクチュエータ19のストロークより長いか、または、前記ストロークに等しい。
【0086】
支持部材75は、補助翼体61から形成されているか、あるいは、前記補助翼体に固定して取り付けられている。各支持部材75は、それらを貫いて形成される支持開口部80を有しており、前記支持部材を貫いて、それに対応した作動シャフト74のスプライン部79が収容されている。各支持開口部80には、スプライン部79の歯状部と係合している抑止溝がある。これは、シャフト74と支持部材75との互いに対する回転を防止するが、シャフトがその軸に沿ってスライドできるためである。
【0087】
スプライン部79をシャフト74の各端部に示しているが、他の実施形態では、スプライン部79を、シャフトの端部から間隙をあけて配置してもよく、支持部材およびそれらに対応したスプライン部の数は多様であってもよい。
【0088】
作動シャフト74はまた、それに沿って間隙をあけて配置された第1駆動部82および第2駆動部83を備える。図11では、各駆動部82、83は、シャフト74の部分に沿って伸びるはすば歯車側面を有している。シャフト9に沿った各駆動部82、83の長さは、以下に示すように、直線アクチュエータ19のストロークより長いか、または、前記ストロークに等しい。駆動部25は、シャフト74の外面から突き出ている。図10に示したように、シャフト74は、複数の第1駆動部82および複数の第2駆動部83を備える。
【0089】
第1駆動部82および第2駆動部83は、反対向きのはすば歯車側面を有している。例えば、各第1駆動部82は、時計回りのらせん状の筋を有し、各第2駆動部は、反時計回りのらせん状の筋を有している。
【0090】
上部ヒンジ部材76は、上部スポイロン62に固定して取り付けられている。各上部ヒンジ部材76は、それらを貫いて形成されている駆動開口部84を有する腕状部であり、前記上部ヒンジ部材を貫いて、作動シャフト74の第1駆動部82が収容されている。同様に、下部ヒンジ部材77は、下部スポイロン63に固定して取り付けられている。各下部ヒンジ部材77は、それらを貫いて形成されている駆動開口部84を有する腕状部であり、前記下部ヒンジ部材を貫いて、作動シャフト74の第2駆動部83が収容されている。各駆動開口部84は、駆動開口部84の歯車内部歯状部がそれに対応した第1駆動部または第2駆動部82の歯状部と係合するように、前記駆動開口部の内周に形成された歯車内壁面を有しており、駆動部82は、それに対応したヒンジ部材76、77の駆動開口部84においてスライドでき、ヒンジ部材を回転させる。
【0091】
直線アクチュエータ19は、補助翼体61に固定して取り付けられており、これによって、直線アクチュエータ19と支持部材75とは互いに対して回転しないようになっている。シャフト74は、油圧ピストンまたは同様のものである直線アクチュエータ19に固定して結合されており、これによって、直線アクチュエータ19は、作動シャフトを作動シャフトの長手方向の軸に沿って直線運動に誘導することができ、したがって、前記軸の周りで回転させるためにヒンジ部材を駆動することができる。
【0092】
ガイド部材78は、補助翼体61から形成されているか、あるいは、前記補助翼体に固定して取り付けられている。ガイド部材78は、互いに間隙をあけて配置された2つの腕状部85を備える。穴部86が、各腕状部85を貫いて形成されており、前記腕状部を貫いて作動シャフト74が伸びることができ、前記腕状部は各穴部32の端から間隙をあけて配置されている。ヒンジ部材76、77は、各ガイド部材78の腕状部85間に配置されており、これによって、ヒンジ部材は、シャフト74の周りで回転できるが、シャフトの長手方向の軸に沿って動かないようになっている。
【0093】
各支持開口部80と駆動開口部84との中心は、共通の長手方向の軸に沿って、位置合わせされている。前記長手方向の軸は、スポイロン62、63のヒンジ線を規定し、シャフト74の長手方向の軸に対応している。
【0094】
支持部材75は、それぞれのスプライン部79と位置合わせされており、前記スプライン部と係合している。同様に、上部ヒンジ部材76は、第1駆動部82と位置合わせされており、前記第1駆動部と係合しており、これによって、前記上部ヒンジ部材のはすば歯車側面は、それらに対応した駆動開口部84のらせん状の歯車内壁面と係合するようになる。下部ヒンジ部材77は、第2駆動部83と位置合わせされており、前記第2駆動部と係合しており、これによって、前記下部ヒンジ部材のはすば歯車側面は、それらに対応した駆動開口部84のらせん状の歯車内壁面と係合するようになる。
【0095】
補助翼体61は、従来のヒンジ装置によって翼(図示せず)に回転自在に取り付けられている。
【0096】
本例示的な実施形態にかかるヒンジ機構73の動作について、図10および図11を参照しながら説明する。
【0097】
補助翼60は、知られている手段によって翼に対してその所望の向きへと回転する。上部スポイロン62および下部スポイロン63は、初めに待機位置にあり、それによって、それぞれ凹部66、67を収容する上部スポイロンおよび下部スポイロンに収容されている。スポイロンは、シャフト9の移動の影響を受けない直線アクチュエータ19によって、待機位置に保持される。したがって、支持部材75は、それらそれぞれのスプライン79の一端に配置されており、各ヒンジ部材76、77は、それらそれぞれの駆動部82、83の一端に配置されている。
【0098】
支持部材75および直線アクチュエータ19は、主な補助翼体81に固定して取り付けられており、これによって、シャフト74は、支持部材の支持開口部80の抑止溝と係合しているスプライン部79の歯状部によって、回転しないようになっている。上部ヒンジ部材76および下部ヒンジ部材77は、上部スポイロン62および下部スポイロン63に固定して取り付けられており、したがって、スポイロン62、63は、それぞれ第1駆動部82および第2駆動部83の歯と係合しているヒンジ部材76、77を貫いて形成されている駆動開口部84の歯車内壁面によって、および、第1駆動部82および第2駆動部83の歯に沿ってスライドしないようになっているヒンジ部材76、77によって、前記スポイロンがそれぞれ補助翼体61の上層64および下層65から立ち上がる展開位置において、回転しないようになっている。
【0099】
上部スポイロン62および下部スポイロン63を展開するために、直線アクチュエータ19が作動し、直線アクチュエータ19から離れた方向にシャフトを誘導する。スプライン部79は、支持部材75の支持開口部80にスライドし、シャフトがその軸の周りで回転しないようにする。シャフト74に形成されている各第1駆動部82および第2駆動部83のはすば歯車側面は、前記駆動部に対応した上部ヒンジ部材76および下部ヒンジ部材77それぞれの歯車内壁面に作用する。なぜなら、各上部ヒンジ部材76および下部ヒンジ部材77は、それに対応したガイド部材78の腕状部85のうちの1つによってシャフト74の長手方向の軸に沿ってスライドしないようになっており、第1駆動部および第2駆動部は、上部ヒンジ部材76および下部ヒンジ部材77がそれぞれシャフト74の長手方向の軸の周りで回転するようにするからである。したがって、モーメントが各上部ヒンジ部材76および下部ヒンジ部材77に加えられる。上部スポイロン62および下部スポイロン63は次に、それらが所望の位置にある間は、あるいは、完全に展開されて、直線アクチュエータ19の作動が停止するまで、第1駆動部82および第2駆動部83の対向しあうらせん状の筋方向のゆえに、シャフト74の長手方向の軸の周りで反対方向に回転する。直線アクチュエータ19は次に、シャフトがその軸に沿ってスライドしないようにし、したがって、上部スポイロン62および下部スポイロン63は、シャフト74の長手方向の軸の周りで回転しないようになっている。したがって、シャフト74がその軸に沿って長手方向に移動すると、上部スポイロンおよび下部スポイロンは同時に展開され、互いに同時に回転する。
【0100】
スポイロンをそれらの待機位置に戻すために、あるいは、それらの位置を調整するために、作動シャフト74は直線アクチュエータ19の方向に誘導される。シャフト74の第1駆動部82および第2駆動部83は、したがって、それぞれ上部ヒンジ部材76および下部ヒンジ部材77を互いに対して反対方向へと回転させ、次に、スポイロン62、63はそれらの所望の位置へと回転する。
【0101】
スポイロンの展開範囲は、直線アクチュエータ19のストローク、および/または、駆動部の長さによって割り当てられる各駆動部のはすば歯車側面の傾斜度によって決定される、ということを理解されたい。
【0102】
本実施形態におけるヒンジ装置を用いて2つの対向しあうスポイロンを補助翼に枢動するように取り付けているが、ヒンジ装置の使用をそれに限定せず、航空機における様々な航空機操縦翼面を枢動可能に取り付けてもよい。
【0103】
上記複数の実施形態では、作動シャフトは剛性のシャフトである。しかしながら、操縦翼面は、例えば、翼に取り付けられた補助翼と屈曲しやすく、たわみやすく、補助翼およびそのヒンジ装置は翼のたわみの影響を受ける。この問題に取り組むために、汎用の接合部をシャフトに沿って配置するということを想定しているが、他の適切な手段を用いてもよい。
【0104】
単一の直線アクチュエータを上記複数の実施形態において用いているが、複数の直線アクチュエータを用いてもよい。特に、上記複数の実施形態のそれぞれにおいて説明した直線アクチュエータは、第1直線アクチュエータであり、第2直線アクチュエータは、第1直線アクチュエータに対して作動シャフトの対向しあう端部に配置されているということを想定している。この第2直線アクチュエータは、第1アクチュエータが機能しなくなるという場合には交換アクチュエータとして、または、主要な第1アクチュエータが機能しなくなった場合に十分な制動を提供するために備えられた補助アクチュエータとして、例えば、シャフトを一方向に誘導するために第1直線アクチュエータと共に用いられることを想定している。
【0105】
上述の説明はほんの一例であり、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく本発明の支持装置を変更してもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 翼装置
2 翼部
3 補助翼
9 作動シャフト
16 支持部材
17 ヒンジ部材
18 ガイド部材
19 直線アクチュエータ
20、22 スプライン部
23、27 開口部
25 駆動部
62、63 スポイロン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11