特許第5945274号(P5945274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5945274ワイヤケーブルのための可撓性テンションメンバ
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  • 特許5945274-ワイヤケーブルのための可撓性テンションメンバ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945274
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】ワイヤケーブルのための可撓性テンションメンバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   G02B6/44 376
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-531652(P2013-531652)
(86)(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公表番号】特表2014-500971(P2014-500971A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】US2011052452
(87)【国際公開番号】WO2012044498
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】61/387,581
(32)【優先日】2010年9月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ブオ
(72)【発明者】
【氏名】チョーダリー,バーラト,アイ.
(72)【発明者】
【氏名】クミエク,チェスター,ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】コジェン,ジェフリー,エム.
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−021935(JP,A)
【文献】 特開2007−091792(JP,A)
【文献】 特開2007−072379(JP,A)
【文献】 特表2010−519065(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0945479(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物の重量に対して15重量%〜30重量%の強化充填剤を含むポリプロピレン系熱可塑性樹脂組成物、及び80GPaを超え90GPaまでの引張弾性率を有する連続繊維を含み、
連続繊維が、ガラス、アラミド、ポリエステル、高分子量ポリエチレン、および炭素繊維から選択され
強化充填材がタルクである、ケーブルまたはワイヤのためのテンションメンバ。
【請求項2】
連続繊維は5〜30kmの長さを有する、請求項1に記載のテンションメンバ。
【請求項3】
請求項1に記載のテンションメンバを含む、光ファイバーケーブル。
【請求項4】
(a)樹脂組成物の重量に対して15重量%〜30重量%の強化充填材を含むポリプロピレン樹脂組成物を加熱して、溶融された充填材入りコンパウンドを生成するステップであって、強化充填材がタルクであるステップと、
(b)溶融された充填材入りコンパウンドと結び付けるために、押出機を通して80GPaを超え90GPaまでの引張弾性率を有する連続繊維を供給して、湿潤繊維/充填樹脂コンパウンドの束を生成するステップと、
(c)湿潤繊維/充填樹脂コンパウンドの束を、ダイを通して移動させて、テンションメンバを形成するステップと
を含み、
連続繊維が、ガラス、アラミド、ポリエステル、高分子量ポリエチレン、および炭素繊維から選択される、ケーブルまたはワイヤのためのテンションメンバの製造方法。
【請求項5】
連続繊維は5〜30kmの長さを有する、請求項4に記載のテンションメンバの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年9月29日に出願された米国特許仮出願第61/387581号の優先権を主張し、この仮出願の全内容は、参照を通じて本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、光ケーブルにおけるテンションメンバ(strength member)として用いられる、向上した可撓性および大きな引張強さを有する繊維強化プラスチック材料に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、光ファイバーケーブル(FOC)に用いられるテンションメンバの構成に関する。金属導体がないので、光ファイバーケーブルは、設置中または後の使用中のいずれにおいても縦方向および横方向の応力からファイバーを十分に保護するためにテンションメンバを含む設計に依拠している。テンションメンバは、通常、繊維強化プラスチック(FRP)(ガラス強化プラスチック(GRP)とも呼ばれる)から成る。
【0004】
繊維強化プラスチックは、繊維で強化されたポリマーマトリックスから成る複合材料である。繊維は、通常、ガラス(最も一般的)、炭素、またはアラミドであり、一方、慣例的には、ポリマーは、通常、エポキシ樹脂、またはビニルエステルである。
【0005】
従来の樹脂系を用いると、FRPは非常に剛直である。通常、それは、直径2ミリメートル(mm)の棒材が6×10−3Pamを超える曲げ剛性を有し、結果として、非常に曲げ難い光ファイバーケーブルを生じる。大きな曲げ剛性は、一部の屋外用途(すなわち、時折、設置の間、小さい直径の導管を通してケーブルを「押す」必要がある)では好ましい。しかし、ケーブルが建物の内部に入り且つその目的地に到達する前に幾回かの方向転換をする必要がある他の用途(屋外/屋内)では極めて望ましくない。ケーブルの可撓性を増すために、FRPの寸法を小さくする(これは、ケーブルの全引張強さを低下させるであろう)か、またはケーブル設計を変更するかのいずれかが行われなければならない。例えば、いくつかのケーブル製造業者は、中心にテンションメンバを有する従来の円いFOCケーブルを、フラットな「テープのような外観」のケーブルに変更したが、このケーブルは、その幅に沿って平行に複数のFRPを有するフラットな形状を(円形の代わりに)用いる。フラットケーブル設計において用いられるFRPは、比較的小さな直径を有するが、その全引張強さは、従来の円いケーブルと同等である。中心にテンションメンバを有する従来の円いケーブルに比べて、フラットケーブル設計は、(その幅の方向に沿う)1つの軸におけるより大きな可撓性をもたらすと同時に、ケーブルの全引張強さは不変に保つ。しかし、ケーブル設計の変更は、製造の複雑さを大きくする。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態において、本発明は、(a)ポリプロピレン系熱可塑性樹脂組成物と、(b)80ギガパスカル(GPa)を超える弾性率(modulus)を有する連続繊維とを含むテンションメンバである。ポリプロピレン系熱可塑性樹脂は、さらに、タルクのような強化充填材を含み得る。この組成物は、ワイヤおよびケーブル、特に光ファイバーケーブルのためのテンションメンバの製造に有用である。
【0007】
一実施形態において、本発明は、(a)充填材を任意選択で含む、ポリプロピレン系樹脂組成物を、押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機において加熱して、溶融された充填材入りコンパウンドを生成するステップと、(b)溶融された充填材入りコンパウンドと結び付けるために、押出機を通して連続繊維を供給して、湿潤繊維入りコンパウンドの束を生成するステップと、(c)湿潤繊維入りコンパウンドの束を、ダイを通して移動させて、テンションメンバを形成するステップとを含む、テンションメンバの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】FRPの引張弾性率対曲げ剛性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
特に断らなければ、状況から暗黙に、または当技術分野における慣習として、全ての部数およびパーセンテージは重量に基づき、全ての試験法は、本開示の出願日の時点で、最新のものである。米国特許実務の目的のために、参照される特許、特許出願または公開のいずれの内容も、それらの全体が、特に、当技術分野における定義(本開示において明確に与えられる如何なる定義にも矛盾しない範囲で)および一般的知識の開示に関して、参照を通じて組み込まれる(またはその対応米国特許が参照を通じてそのように組み込まれる)。
【0010】
本開示における数値範囲は近似的であり、このため、特に断らなければ、その範囲の外の値を含み得る。数値範囲は、任意の下限値と任意の上限値との間にも少なくとも2単位の隔たりがあるという条件で、下限値および上限値による、またこれらの値を含む、1単位ずつ増加させた全ての値を含む。例として、組成上の特性、物理的または他の特性、例えば、分子量などが、100から1,000である場合、全ての個々の値、例えば、100、101、102など、および従属範囲、例えば、100から144、155から170、197から200などが、明示的に列挙される。1未満である値を含む、または1を超える分数(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲の場合、1単位は、適宜、0.0001、0.001、0.01または0.1であると見なされる。10未満の1桁の数字を含む範囲(例えば、1から5)では、1単位は、通常、0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図されていることの単なる例にすぎず、列挙されている下限値と上限値の間の数値の全ての可能な組合せが、本開示では、明白に提示されていると見なされるべきである。本開示内では、数値範囲は、とりわけ、組成物の様々な成分の量、工程のパラメータなどに対して与えられている。
【0011】
「熱可塑性」材料は、繰り返し軟化させること、加熱した時に流動可能にすること、および、室温に冷却した時に硬い状態に戻すことができる線状または分岐状のポリマーである。本発明との関連において、熱可塑性材料は、ASTM D638−72の方法を用いると、通常、10,000psi(68.95MPa)を超える弾性率を有する。加えて、熱可塑性物質は、軟化した状態に加熱された時に、予め決められた任意の形状の物品に、成形加工または押出加工できる。
【0012】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの全量に対して)過半数の重量パーセントの重合したプロピレンモノマーを含み、任意選択で、少なくとも1種の重合したコモノマーを含んでいてもよいポリマーを意味する。
【0013】
破断時の引張強さは、ASTM D638に従って測定される。
【0014】
本明細書で用いられる場合、「連続繊維」は、粗糸(roving)全体を通して、その長さにおいて連続である繊維である。粗糸の大きさに応じて、連続繊維の長さは、5から30kmのような大きな範囲で変わり得る。
【0015】
テンションメンバ
本発明のテンションメンバは、熱可塑性樹脂組成物と、テンションメンバの製造における強化材としての連続繊維とを含む。可能な繊維には、これらに限らないが、ガラス、アラミド、ポリエステル、高分子量ポリエチレン、および炭素繊維が含まれる。本発明での繊維は、通常、80GPaを超え、好ましくは80〜90GPaの間の弾性率を有する。テンションメンバは、光ファイバーケーブルに用いられる従来のFRPに比べて、より大きな可撓性を有するが、同時に高い引張強さを維持している。その曲げ剛性によって特徴付けられるテンションメンバの可撓性は、効果的な樹脂配合を通じて広い範囲内で、例えば、約0.1×10−3から約2.5×10−3Pam、0.1×10−3から約6.0×10−3Pam、3.0×10−3から6.5×10−3Pam、好ましくは、3.26×10−3から約6.08×10−3Pamの範囲内で、要求に合わせられ得る。テンションメンバのFRPとしての引張弾性率は、通常、49GPaと59GPaの間である。
【0016】
樹脂組成物
本発明は、その樹脂系として、ポリプロピレン系熱可塑性材料を含む組成物を用いる。表1は、樹脂系に可能な配合を示す。樹脂の引張弾性率を、また結果的に、テンションメンバの曲げ剛性を、要求に合わせるために、様々なレベルのタルクが、配合物における充填材として、任意選択で用いられてもよい。可能な充填材には、これに限らないが、タルクが、または他の強化充填材が含まれる。タルクは、樹脂組成物の重量に対して、通常、0、15、または30重量パーセントで存在する。
【0017】
【表1】
【0018】
熱可塑性の系を用いることによって、テンションメンバは、容易にはリサイクルできない熱硬化性材料を用いる従来のFRPとは対照的に、容易にリサイクルできる。さらに、本発明でのポリプロピレン系の樹脂系は、比較的低い粘度を有し、テンションメンバは、繊維引抜き成形クロスヘッドを有する押出機を通して引抜き成形され得る。これは、従来のFRP製造法(これは、本質的に、従来の樹脂浴とインライン硬化方式の引抜き成形法である)とは対照的である。引抜き成形クロスヘッドの温度の下での樹脂の低い粘度により、繊維は、はるかに効率的な仕方で、湿潤され得る。加えて、低い粘度は、また、束がダイを通り抜ける際に、繊維に付着した余分な樹脂を取り除く(「逆流」の形で)助けになり得る。従来の製造法の下で、特別仕様による横断面形状にすることは困難であり、費用がかかる。しかし、本発明により、特別仕様による形の横断面形状を有するテンションメンバは、熱可塑性樹脂が比較的低い粘度を有し、どのような形にも容易に成形され得るので、より効率的に製造できる。加えて、熱可塑性樹脂では、硬化は必要でない。
【0019】
さらに、様々な任意選択の成分が、また、本発明での樹脂組成物において、有利に用いられる。例えば、使用され得る添加剤には、酸化防止剤、UV安定剤、増粘剤、殺菌剤、加工安定剤、熱安定剤、接着性樹脂、着色剤、カップリング剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、核剤、充填材、またはこれらの任意の組合せが含まれる。添加剤は、ポリプロピレン樹脂と同じであるかまたは異なる担体ポリマーを含むポリマーマトリックスに分散され得る。
【0020】
具体例として、一実施形態において、酸化防止剤(例えば、CibaによるIRGANOX(登録商標)1010酸化防止剤、IRGANOX(登録商標)PS 802酸化防止剤)および加工安定剤(例えば、活性ホスファイト(phosphiate)、例えば、亜リン酸トリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(CibaによるIRGAFOS(登録商標)168)の1つまたは複数が、樹脂組成物中に配合されることが考えられる。カップリング剤、または接着促進剤、例えば、ArkemaによるOREVAC(商標)CA−100樹脂が含められてもよい。
【0021】
製造方法
FRPテンションメンバを製造するために、連続繊維を覆って引抜き成形されるポリマーコンパウンドは、従来の配合法、例えば、バッチミキサー(Banburyなど)または連続ミキサー(FCMなど)を用いて製造できる。一実施形態において、このようなコンパウンドは、引抜き成形工程で後に使用される、ペレット化された中間体として、製造され、隔離される。ある場合には、成分のいくつかを予め配合し、次いで、引抜き成形工程の間に他の成分を加えることが、また、望ましいことであり得る。引抜き成形工程の間に、全ての成分を配合することが、さらに望まれることであり得る。例えば、引抜き成形の間に、ポリマーコンパウンドは、樹脂が完全に溶融し、適度に低い粘度に到達することを保証するために、高温で溶融押出される。次いで、繊維が、押出機を通して供給され、クロスヘッドの内側のチャンバ内で、溶融樹脂によって湿潤されるが、クロスヘッドでは、高圧(2000psiを超える)が、繊維の樹脂被覆率が85%を超える、良好な繊維湿潤性(wet-out)を保証するために、用いられる。次に、湿潤繊維/樹脂束は、成形ダイを通して連続的に引き抜かれ、その形状を保つように冷却される。
【0022】
一実施形態において、テンションメンバは、強化充填材を含むポリプロピレン樹脂組成物を加熱して、溶融された充填材入りコンパウンドを生成することによって成形される。連続繊維は押出機を通して供給され、連続繊維が、溶融された充填材入りコンパウンドと結び付いて、湿潤された充填材入りコンパウンドの束が生成される。湿潤繊維入りコンパウンドの束は、ダイを通されて、テンションメンバが形成される。
【実施例】
【0023】
実施例1、2および3の配合は、表2に見出される。Owens CorningによるAdvantex(登録商標)Eガラス連続繊維 SE4121(弾性率=81〜83GPa)を実施例において用いた。
【0024】
【表2】
【0025】
ACHIEVE 6936G1および線状低密度ポリエチレンは、コンパウンドの粘度を最適化するために用いた、樹脂のレオロジー調整剤である。IRGANOX 1010、IRGAFOX 168、およびIRGANOX PS 802は、酸化防止剤として用いられている。無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、接着促進剤として用いられている。実施例1〜3で用いたポリプロピレンは、52g/10minのMFR、0.9g/cmの密度、および1.65GPaの曲げ弾性率を有するホモポリマー(hompolymer)である。線状低密度ポリエチレンは、10g/10minのMFR、0.924g/cmの密度、および0.38GPaの曲げ弾性率を有する。
【0026】
実施例1〜3は、引抜き成形法によって製造される。タルクを含む個々の樹脂成分は、最初に、主ホッパーを通して押出機に供給される。混合は、材料が押出機を通ってクロスヘッドまで移動するにつれて、インラインで起こり、クロスヘッドでは、300℃の高温が用いられて、樹脂が完全に溶融し、望まれるような低い粘度に到達することが保証される。次いで、ガラス繊維が押出機を通して供給され、クロスヘッドの内側のチャンバ内で、溶融したコンパウンドによって湿潤され、クロスヘッドでは、高圧(2000psiを超える)が、良好な繊維湿潤性を保証するために用いられる。次に、湿潤繊維/樹脂束は、成形ダイを通して、2ft/分の速度で連続的に引き抜かれ、その形状を保つように冷却される。
【0027】
表3は、FRPに用いられる、知られている従来の樹脂との比較で、実施例の特性を示す。
【0028】
【表3】
【0029】
樹脂の弾性率は、試験規格ASTM D790に従って測定した。
【0030】
曲げ剛性は、試験規格ASTM D790に従って測定した(実施例1〜3)か、またはテンションメンバの構成要素の弾性率と寸法から計算した(比較例1〜10)。
【0031】
本発明によるテンションメンバの利点の1つは、大きな引張強さを維持しながらの、可撓性の向上である。連続繊維(長さ方向に整列)強化テンションメンバでは、その曲げ剛性は、主として樹脂の曲げ弾性によって決まる。表3における比較例は、現行のFRP製品に用いられる市販の一般的なエポキシビニルエステル樹脂のいくつかを含む。Derakane(登録商標)エポキシビニルエステル樹脂は、Ashlandによって製造される。比較の目的で、対象となるFRPは、円く、2mmの直径を有する。
【0032】
本発明によるテンションメンバは、引張弾性率は同じままで、現在用いられているエポキシビニルエステル樹脂より広い範囲の曲げ剛性をもたらす。図1は、比較例の従来のFRPと実施例1〜3のテンションメンバとの間の、引張弾性率および曲げ剛性の点から見た比較を示す。図は、市販の様々なエポキシビニルエステル樹脂を用いると、FRPの曲げ剛性は、変えられ得るが、平均値から15%未満の比較的狭い範囲に限定され得ることを例示する。他方、様々な配合を用いることにより、本発明によるテンションメンバは、ずっと広い範囲の曲げ剛性をもたらす。より詳細には、実施例1または2の配合を用いて製造されるテンションメンバは、非常に可撓性がある(2.5×10−3Pam未満の曲げ剛性を有する)のに対して、実施例3の配合を用いて製造されるテンションメンバは、DERAKANE MOMENTUM(商標)640−900エポキシビニルエステル樹脂を用いて製造される現行のFRPに似た剛性を有する(6×10−3Pamに近い曲げ剛性を有する)。最も重要なことは、本発明のテンションメンバが、引張弾性率を犠牲にすることなく可撓性を実現すること;本質的に、それは、市場に現在あるFRPと同じ引張弾性率をもたらすことである。
【0033】
本発明が、好ましい実施形態についての先の説明により、ある程度詳細に説明されたが、この詳細は主に例示のためである。多くの変更および修正が、次の特許請求の範囲に記載される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって成され得る。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] (a)ポリプロピレン系熱可塑性樹脂組成物と、
(b)80PGaを超える弾性率を有する連続繊維と
を含むテンションメンバ。
[2] 熱可塑性樹脂組成物が強化充填材をさらに含む、前記[1]に記載のテンションメンバ。
[3] 強化充填材がタルクである、前記[2]に記載のテンションメンバ。
[4] 連続繊維が、ガラス、アラミド、ポリエステル、高分子量ポリエチレン、および炭素繊維から選択される、前記[1]に記載のテンションメンバ。
[5] (a)熱可塑性樹脂組成物の重量に対して、1wt%と30wt%の間のタルク、および
(b)80GPaと90GPaの間の弾性率を有する連続繊維
をさらに含む、前記[3]に記載のテンションメンバ。
[6] 熱可塑性樹脂組成物が、酸化防止剤、加工安定剤、熱安定剤、および接着性樹脂の少なくとも1つをさらに含む、前記[1]に記載のテンションメンバ。
[7] 直径2mmのテンションメンバが2.5×10−3Pam未満で0.1×10−3Pamを超える曲げ剛性を有し、および49GPaを超えるFRP引張弾性率を有する、前記[1]に記載のテンションメンバ。
[8] 直径2mmのテンションメンバが6.0×10−3Pam未満で0.1×10−3Pamを超える曲げ剛性を有する、前記[1]に記載のテンションメンバ。
[9] 直径2mmのテンションメンバが3.26×10−3Pamと6.08×10−3Pamの間の曲げ剛性を有し、および49GPaを超えるFRP引張弾性率を有する、前記[1]に記載のテンションメンバ。
[10] 49GPaと59GPaの間のFRP引張弾性率を有する、前記[1]に記載のテンションメンバ。
[11] 前記[1]に記載のテンションメンバを含む、光ファイバーケーブル。
[12] (a)強化充填材を含むポリプロピレン樹脂組成物を加熱して、溶融された充填材入りコンパウンドを生成するステップと、
(b)溶融された充填材入りコンパウンドと結び付けるために、押出機を通して連続繊維を供給して、湿潤された充填材入りコンパウンドの束を生成するステップと、
(c)湿潤繊維入りコンパウンドの束を、ダイを通して移動させて、テンションメンバを形成するステップと
を含む、テンションメンバの製造方法。
[13] 連続繊維が、ガラス、アラミド、ポリエステル、高分子量ポリエチレン、および炭素繊維から選択される、前記[12]に記載の方法。
[14] 強化充填材がタルクである、前記[12]に記載の方法。
[15] テンションメンバが、
(a)熱可塑性樹脂組成物の重量に対して、1wt%と30wt%の間のタルクと、
(b)80GPaと90GPaの間の弾性率を有する連続ガラス繊維と
を含む、前記[12]に記載の方法。
図1