(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図8は、本発明の実施形態による作業機を側方から見たときの図である。
図8では、本実施形態による作業機として、トラクタ2を例示しているが、作業機は、トラクタ2に限らず、コンバインであってもバックホーであっても、その他の作業を行う機械であってもよい。
【0018】
まず、トラクタ2の全体構成から説明する。
図8に示すように、トラクタ2は、前後に車輪を備える走行車体10に、エンジン(例えば、ディーゼルエンジン)11、変速装置12等を搭載することで構成されている。この走行車体10の後部には、3点リンク機構16が昇降可能に設けられている。
この3点リンク機構16には、インプルメントと呼ばれる各種の作業装置(図例は耕耘装置)13が着脱自在に取り付けられる。
【0019】
走行車体10の後部には、3点リンク機構16以外に、エンジン11からの動力が伝達されるPTO軸17も設けられている。作業装置13はPTO軸17に接続され、PTO軸17の回転によって動作する。
また、エンジン11の後方には、独立搭載型のキャビン14が設けられており、キャビン14内に運転席15が設けられている。
【0020】
図9は、トラクタに搭載された機器類を示す図である。
図9に示すように、トラクタ2には、トラクタ2の動作状態や運転状態を検出するための複数の検出器と、トラクタ2の動作や運転に関する制御を行う複数の制御器と、トラクタ2の動作や運転に関する表示を行う複数の表示装置とを備えている。
各検出器は、複数のスイッチ20と、複数のセンサ40とから構成されている。各検出器は、スイッチ20、センサ40に限定されない。各制御器は、主にトラクタ2の全体の制御を行うメインECU50(主制御部)、メインECU50とは別にエンジン11の制御を行うエンジンECU60、トラクタ2の走行中において変速や前後進の切り換えなどを行う変速バルブ90から構成されている。なお、各制御器は、メインECU50、エンジンECU60、変速バルブ90に限定されない。
【0021】
各表示装置は、運転席の前に設置されたメータパネル30、メータパネル30とは別に運転席の側方に設置された液晶モニタ80とから構成されている。各表示装置は、メータパネル30、液晶モニタ80に限定されない。
本発明の本実施形態によるトラクタ2は、制御器(メインECU50)と表示装置(メータパネル30及び液晶モニタ80)の制御及び動作に特徴を有している。メインECU50と表示装置の動作を説明する前に、トラクタ2の構成について更に詳しく説明する。
【0022】
図9を参照しながら、トラクタ2に設けられる複数のスイッチ20について、以下に説明する。
前輪切れ角スイッチ20aは、前輪のアーム部に設けられており、前輪が動いて所定の切れ角になるとスイッチが「ON」となる。前輪切れ角スイッチ20aが「ON」となることで、前輪が所定の角度以上に切られたことを検出できる。
【0023】
シャトルスイッチ20bは、トラクタ2の前進・後進を切り換えるシャトルレバーの前進・中立・後進位置を検出するスイッチであって、例えば、シャトルレバーの根元に設けられている。シャトルスイッチ20bには、接点が3箇所有り、その接点の位置によって前進・中立・後進位置を検出する。
圧力スイッチ20cは、変速装置12内の各油圧クラッチの作動を検出するスイッチで、主変速及び副変速を切り換える変速バルブ90に設けられている。圧力スイッチ20cは、常時開型のスイッチで、圧力が上がると接点が閉じる。例えば、圧力約1.2MPa以上で接点が閉じ、約0.8MPa以下で接点が開くように構成されている。
【0024】
変速レバー20dは、前後に動かすことにより副変速を切り換えるためのレバーである。変速レバー20dには、変速位置「L・H」を検出するためのセンサが設けられるとと
もに、主変速を切り換えるシフトボタン(アップ・ダウン)とクラッチボタンも設けられている。
エンジン回転数上限設定ダイヤル20eは、アクセルペダル及びアクセルレバーによる操作やメモリ設定回転などによるエンジン回転数の上限を、ダイヤルによって設定するものである。
【0025】
次に、トラクタ2に設けられた複数のセンサ40について、以下に説明する。
クランク位置センサ40aは、例えば、エンジン11のフライホイール外周に取り付けられた磁気抵抗素子であり、フライホイールの1回転毎のクランク位置を検知して信号を出力する。つまり、フライホイールが1回転するごとに信号が出力されるので、この信号を検出することでフライホイールの回転数を検出することができる。
【0026】
このクランク位置センサ40aが出力した信号を基に、メインECU50がエンジン回転数を算出するので、クランク位置センサ40aは、エンジン回転センサを兼ねるものとなっている。また、メインECU50は、算出されたエンジン回転数を換算してPTO軸17の回転数(PTO回転数)も求める。
水温センサ40bは、エンジン冷却水の温度を電圧値として検出するセンサである。燃料センサ40cは、燃料の残量によって変化する燃料タンク内のフロートの位置を可変抵抗器で検出するセンサである。車速センサ40dは、変速装置12内に設けられたセンサロータの回転数を基に車速を検知するセンサである。油温センサ40eは、ミッションオイルの温度を検出するセンサである。
【0027】
また、シャトル回転センサ40fは、変速装置12のマスタクラッチの出力軸の回転数を検出するセンサである。アクセルレバーセンサ40gは、アクセルレバーの操作位置を検出してエンジン回転数を設定するためのセンサである。アクセルペダルセンサ40hは、アクセルペダルの操作量を検知するセンサである。
図1を参照しながら、トラクタ2に設けられたエンジン制御ECU60及びメインECU(主制御部)50について説明する。
図1は、トラクタ2における制御システムを示したブロック図である。
【0028】
エンジン制御ECU60は、例えばCPU等から構成されていて、アクセルペダルセンサ40hによって検知されたアクセルペダルの操作量やクランク位置センサ40aによって検知されたクランク位置などに基づいて、インジェクタ、コモンレール、サプライポンプ等を制御するものである。なお、本実施形態によるエンジン制御ECU60の制御は、一般的なディーゼルエンジンの制御と同じものであり、例えば、インジェクタの制御では燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率が設定され、サプライポンプやコモンレールの制御では燃料噴射圧が設定される。
【0029】
メインECU(主制御部)50は、例えばCPU等から構成されていて、このメインECU50には、検出器(上述した各センサ40及びスイッチ20)が接続されている。メインECU50は、各センサ40やスイッチ20などから得られる情報(検出情報)を基にして各制御(変速、油圧、倍速)を行い、当該制御に必要なセンサ情報と制御情報を、表示装置(メータパネル30、液晶モニタ80)及びエンジン制御ECU60と共有しながらトラクタ2の全体を制御するものである。
【0030】
一例として変速制御について説明する。走行中に変速レバー20dのシフトボタン(アップ、ダウン)による主変速段数の変更入力がなされると、メインECU50は、当該変更入力に対応した主変速動作を変速バルブ90に指示する。例えば、主変速段数2速での走行中にシフトボタンによってシフトアップを入力すると、メインECU50は、主変速段数を3速に変更するように変速バルブ90に指示する。
【0031】
変速が指示されると、変速バルブ90は、電磁ON−OFF弁を作動させ、主変速(2速−3速)クラッチの圧力をオーバーラップさせると共に主変速(H−L)のクラッチ側の圧力を制御しつつ、2速から3速へ変速を行う。また、このときの主変速(H−L)のクラッチ制御では、アクセルペダルセンサ40hによる設定エンジン回転数とクランク位置センサ40aからの実回転数に基づいて車軸負荷を算出し、クラッチの制御圧を設定する。
【0032】
メインECU50の動作において、各センサ40によって検出されたトラクタ2の動作状態及び運転状態がメインECU50に入力されると、メインECU50は、入力されたトラクタ2の状態を検出情報として車両用通信ネットワーク(CAN通信網)Nに出力する。上述のエンジン制御ECU60、及び後述するメータパネル30や液晶モニタ80などの表示装置は、CAN通信網Nに出力された検出情報を取得して動作する。
【0033】
本実施形態において、メインECU50は、上述したようなトラクタ2の全体の制御の他に、表示装置(メータパネル30及び液晶モニタ80)の制御を行うものであればよい。なお、メインECU50におけるトラクタ2の制御は、例示した変速制御のみに限定されず、トラクタ2の動作に必要な制御を行うものであればよい。
図1に示すように、本実施形態によるメインECU50は、検出情報出力手段51と、識別情報出力手段52と、制御情報出力手段53とを、表示装置(メータパネル30、液晶モニタ80)を制御するために有している。
【0034】
検出情報出力手段51、識別情報出力手段52、制御情報出力手段53は、例えば、メインECU50に格納された制御プログラムで構成されている。制御プログラムは、例えば、外部から接続したパーソナルコンピュータ等によって書き換えることが可能である。なお、これらの手段は、制御プログラムだけでなく、電子回路で構成されていてもよいし、制御プログラムや電子回路以外のもので構成されていてもよい。
【0035】
検出情報出力手段51は、各センサ40で検出した状態を示す検出情報を、CAN通信網Nを介して表示装置に出力するものである。具体的には、検出情報出力手段51は、エンジン回転数、冷却水温度、燃料残量、車速等の様々な検出情報を上述の各センサ40から取得する。検出情報出力手段51は、取得した検出情報をCAN通信の規格に沿った電気信号に置き換えて、CAN通信網Nに出力する。
【0036】
さらに詳しくは、検出情報出力手段51は、エンジン回転数、燃料残量、水温、車速などの検出情報を、それぞれ8bitの電気信号に置き換えて、CAN通信のデータフレームDFに乗せてCAN通信網Nに出力する。
また、検出情報出力手段51は、各センサ40で検出した実測値だけでなく、センサ40によって検出した実測値が異常な状態を示しているという警告情報も検出情報として出力する。
【0037】
例えば、燃料残量の実測値が0に近いなど異常な値を示している場合は、検出情報出力手段51は、燃料不足であることを示す検出情報を警告信号に置き換えて、CAN通信のデータフレームDFに乗せてCAN通信網Nに出力する。また、水温の実測値が異常に高い値である場合は、検出情報出力手段51は、水温が異常であることを示す検出情報を警告信号に置き換えて、CAN通信のデータフレームDFに乗せてCAN通信網Nに出力する。
【0038】
検出情報にはセンサ40の種類ごとに様々なものがあるので、それぞれの検出情報が区別できるように、メインECU50と表示装置との間でデータの配列などの通信プロトコルを定めておく。
識別情報出力手段52は、検出情報を表示させる表示装置を識別するための識別情報を出力するものである。識別情報は、検出情報出力手段51から出力される検出情報を表示させる表示装置が、メータパネル30及び液晶モニタ80のいずれであるかを識別するための情報である。
【0039】
識別情報出力手段52は、検出情報の種類とそれら検出情報を表示させる表示装置(メータパネル30及び液晶モニタ80)との組み合わせを予め有している。例えば、燃料センサ40cによって検出された燃料の残量に対してはメータパネル30、クランク位置センサ40aが出力した信号を基に求められたエンジン回転数に対してはメータパネル30、またクランク位置センサ40aが出力した信号を基に求められたPTO回転数に対しては液晶モニタ80などの組み合わせが予め保持されている。
【0040】
識別情報出力手段52は、この組み合わせに基づいて、メータパネル30に対応する検出情報に対してはメータパネル30を指定する第1識別情報を出力し、液晶モニタ80に対応する検出情報に対しては液晶モニタ80を指定する第2識別情報を出力する。なお、
検出情報の種類とそれら検出情報を表示させる表示装置(メータパネル30及び液晶モニタ80)との組み合わせ(パターン)は、識別情報出力手段52を構成する制御プログラムの書き換えによって適宜、変更可能となっている。
【0041】
制御情報出力手段53は、検出情報出力手段51から出力される検出情報の表示器に対する表示形態を指定するための制御情報を出力するものである。
ここで、表示器とは、後に詳述するセグメント式表示部D1、単一式LED表示部D2、及び指針式表示部D3のことであり、表示装置であるメータパネル30及び液晶モニタ80は、これら3種類の表示器を組み合わせることで構成されている。制御情報出力手段53は、表示器にどのような表示形態で検出情報を表示させるかという制御情報を出力するものである。この制御情報は複数の表示器に対応して複数用意されており、例えば、セグメント式表示部D1の表示形態を制御するための第1制御情報と、単一式LED表示部D2の表示形態を制御するための第2制御情報と、指針式表示部D3の表示形態を制御するための第3制御情報とがある。
【0042】
セグメント式表示部D1は、数字、記号、文字などの表示が自由に行えるだけでなく、所定位置に所望する数字、記号、文字を自由に表示でき、様々な表示形態がある。セグメント式表示部D1における表示形態とは、検出情報を数字、記号、文字のうちどの種類で表示するのか、或いは、検出情報をどの位置に表示するかという、検出情報を表現する際の形態のことである。
【0043】
第1制御情報は、セグメント式表示部D1が有する様々な表示形態の中から特定の表示形態を指定するものである。例えば、第1制御情報によって検出情報であるエンジン回転数をセグメント式表示部D1に数字で且つ左詰で表示したり、右詰に表示したりすることができる。
単一式LED表示部D2は、点灯、消灯、点滅だけでなく、点灯時間、消灯時間、点滅間隔、点灯時の明るさを変更することによっても自由に表示形態を変えることができる。第2制御情報は、単一式LED表示部D2が有する様々な表示形態の中から特定の表示形態を指定するものであって、検出情報を点灯、消灯、点滅のうち、どの形式で表示するか、或いは、検出情報を示すときの点灯時間、消灯時間、点滅間隔、点灯時の明るさはどうするかという表示形態に関する情報である。
【0044】
例えば、第2制御情報によって、検出情報である警告を単一式LED表示部D2に1秒間隔の点滅で表示したり、数秒間の点灯で表示したりすることができる。
指針式表示部D3は、後述するように針部76の先端部が指し示す位置によって検出情報を表示するものであり、検出情報から得られた数値等によって針部76の指し示す位置を自由に変えることができる。第3制御情報は、指針式表示部D3が有する様々な表示形態の中から特定の表示形態を指定するものであって、検出情報から得られた数値に関して針部76がどの位置を指し示すかという表示形態に関する情報である。
【0045】
例えば、第3制御情報によって検出情報から得られた数値に対して、針部76の回転角度を任意の単位で変更することができる。同じ数値(例えば、100)であっても、針部76が指し示す位置を回転範囲の真ん中にしたり、回転範囲の一端側に振り切った状態にすることができる。
ここで、
図2及び
図3を参照しながら、セグメント式表示部D1、単一式LED表示部D2、指針式表示部D3の組み合わせによって構成されるメータパネル30及び液晶モニタ80について説明する。
【0046】
図2(a)に示すように、メータパネル30は、単一式LED表示部D2(LED表示部D2ともいう)と、セグメント式表示部D1aと、複数の指針式表示部D3a〜D3cとを備えている。
具体的には、
図2(a)のメータパネル30を正面視すると、メータパネル30の中央には16個のLED表示部を有する単一式LED表示部D2が設けられ、単一式LED表示部D2の上側にはセグメント式表示部D1aが設けられている。また、単一式LED表示部D2の左側にはエンジン回転用指針式表示部D3a(回転用指針式表示部D3aともいう)が、右側には燃料用指針式表示部D3bと水温用指針式表示部D3cが左右に並ん
で設けられている。
【0047】
単一式LED表示部D2は、LED素子の点灯、消灯、点滅によって各センサ40で検出された検出情報を表示するものである。詳しくは、単一式LED表示部D2には、燃料用LED表示部D2aや水温用LED表示部D2bなどが設けられている。
燃料用LED表示部D2aは、燃料センサ40cからの検出情報に基づいて燃料タンク内の燃料が所定量以下となったときに点灯する。水温用LED表示部D2cは、水温センサ40bからの検出情報に基づいて冷却水の温度が所定値以上に上昇したり、水温センサ40bが故障などで異常な状態となったときに点灯する。
【0048】
その他に、メータパネル30には、倍速ターン用LED表示部、デフロック用LED表示部、エンジン予熱用LED表示部等が設けられているが説明を省略する。
図2(b)を参照して、セグメント式表示部D1aについて説明する。セグメント式表示部D1aは、複数の液晶セグメント(セグメント素子)70を点灯又は消灯させることによって様々な情報を表示するものである。セグメント式表示部D1aは82個の液晶セグメント70と、同じく液晶による3つの記号表示部71a〜71cにより構成されたものである。これら3つの記号表示部71a〜71cのそれぞれを、1つの液晶セグメント70とみることができる。
【0049】
詳しくは、このセグメント式表示部D1aでは、7つのセグメント70により8の字に構成されたセグメント群(7セグメントという)72が上段に1つと下段左右方向に8個配置されている。上段左側に、6つのセグメントによりR字型に構成されたセグメント群73が配置され、上段右側に、11個のセグメントから構成されるセグメント群74が配置される。下段に配置された7セグメントの間には、ドット(.)から構成された2つのセグメント75が配置され、上段及び下段には、文字(AUTO、n/min)や記号(歯車、三角、砂時計など)で構成された3つの記号表示部71a〜71cが配置されている。これらセグメント群によってセグメント式表示部D1aが構成されている。
【0050】
セグメント式表示部D1aでは、例えば、7セグメントによって数字、文字、記号等を表示することができる。また、7セグメントの周りに配置された3つの記号表示部71a〜71cによって、トラクタ2の特定の機能が動作していることを表示することができる。
指針式表示部D3a〜D3cは、回転中心まわりに所定角度で回動する針部76と、針部76と重なるように配置されたゲージ表示部77とを備えている。ゲージ表示部77に描かれる目盛りと、回動した針部76の先端部が指す目盛りの位置によって様々な情報を表示するものである。
【0051】
例えば、メータパネル30を正面視して右端には、水温用指針式表示部D3cが設けられ、水温用指針式表示部D3cの左隣には、燃料用指針式表示部D3bが設けられている。
水温用指針式表示部D3cは、針部76の先端がゲージ表示部77の上端を指し示したときは、エンジン11の冷却水が許容される範囲を超えた高い温度となっていることを示し、針部76の先端がゲージ表示部77の下端を示したときは冷却水が非常に低い温度となっていることを示す。
【0052】
燃料用指針式表示部D3bは、針部76の先端がゲージ表示部77の上端を指し示したときは燃料が満タンであることを示し、針部76の先端がゲージ表示部77の下端を指し示したときは燃料タンク内の残燃料が少なくなっている(又は無くなっている)ことを示す。
回転用指針式表示部D3aは、針部76の先端が左下方から時計回り(右回り)に右下方を向くまで回転する。針部76の先端がゲージ表示部77の左下方を指し示したときはエンジン回転数が低いことを示し、針部76の先端が右回りに回転するほどエンジン回転数が高くなっていることを示す。
【0053】
上述のように構成されたメータパネル30は、第1従制御部C1を備えている。第1従制御部C1は、例えばCPU等から構成されていて、識別情報判定手段C1aと表示制御手段C1bを備えている。
識別情報判定手段C1aは、識別情報出力手段53で出力された識別情報によってメータパネル30が指定されているか否かを判定するものである。識別情報判定手段C1aは、CAN通信網Nを経てメインECU50の検出情報出力手段51、識別情報出力手段52、制御情報出力手段53から出力された識別情報を受信する。そして、識別情報判定手段C1aは、メインECU50から送られてきた識別情報に基づき、メインECU50から送られてきている検出情報や制御情報などのデータがメータパネル30にて表示するものであるか否かを判断し、データ(検出情報、制御情報)を受け入れるか否かを決定するものである。
【0054】
表示制御手段C1bは、識別情報判定手段C1aがデータ(検出情報、制御情報)を受け入れる(受信する)と決定した場合、検出情報がメータパネル30に備えられた表示器(例えば、セグメント式表示部D1a)の表示形態となるように制御情報に基づいて検出情報を変換する。
例えば、表示制御手段C1bは、水温(検出情報)を受信したとき、データフレームDF内の水温に対応する信号を、メータパネル30の水温用指針式表示部D3cの表示形態である電圧に変換して、変換した電圧を水温用指針式表示部D3cに出力する。
【0055】
つまり、表示制御手段C1bは、識別情報判定手段53によって、識別情報において指定されていると判定された場合に、検出情報出力手段51から出力された検出情報が、制御情報出力手段53から出力された制御情報によって指定された表示形態となるように表示器を制御する手段である。第1従制御部C1における識別情報判定手段C1a及び表示制御手段C1bの動作については、後に詳しく説明する。
【0056】
図3を参照しながら、液晶モニタ80について説明する。
液晶モニタ80は、メータパネル30と同様に7セグメント(セグメント群72)を有するセグメント式表示部D1bを備えている。セグメント式表示部D1bでは、上段と下段のそれぞれに、7セグメントが3つずつ配置されている。下段の3つの7セグメントの間には、ドット(.)から構成されたセグメント75が1つ配置されている。
【0057】
本実施形態による液晶モニタ80は、上段の3つの7セグメントによってPTO回転数(n/min)を3桁で表示し、下段の3つの7セグメントによって車速(km/h)を3桁で表示する。
このような液晶モニタ80は、第2従制御部C2を備えている。第2従制御部C2は、例えばCPU等から構成されていて、識別情報判定手段C2aと表示制御手段C2bを備えている。
【0058】
識別情報判定手段C2aは、識別情報出力手段53で出力された識別情報によって液晶モニタ80が指定されているか否かを判定する手段である。識別情報判定手段C2aは、CAN通信網Nを経てメインECU50の検出情報出力手段51、識別情報出力手段52、制御情報出力手段53から出力された識別情報を受信する。識別情報判定手段C2aは、メインECU50から送られてきた識別情報に基づき、メインECU50から送られてきている検出情報や制御情報などのデータを液晶モニタ80にて表示するものであるか否かを判断し、データ(検出情報、制御情報)を受け入れるか否かを決定するものである。
【0059】
表示制御手段C2bは、識別情報判定手段C2aがデータ(検出情報、制御情報)を受け入れる(受信する)と決定した場合、検出情報が液晶モニタ80に備えられた表示器(例えば、セグメント式表示部D1b)の表示形態となるように制御情報に基づいて検出情報を変換する。
例えば、表示制御手段C2bは、PTO回転数(検出情報)を受信したとき、データフレームDF内のPTO回転数に対応する信号を、液晶モニタ80のセグメント式表示部D1bの表示形態であるセグメント群72用の点灯電圧に変換して、変換した電圧を所定の位置にある各セグメント群72に出力する。
【0060】
つまり、表示制御手段C2bは、識別情報判定手段53によって、識別情報において指定されていると判定された場合に、検出情報出力手段51によって出力された検出情報が、制御情報出力手段53から出力された制御情報によって指定された表示形態となるように表示器を制御する手段である。第2従制御部C2における識別情報判定手段C2a及び
表示制御手段C2bの動作については、後に詳しく説明する。
【0061】
上述の通り、メインECU50と第1及び第2従制御部とは、CAN(Controller Area Network)通信網などの車両用通信ネットワークNを介してデータの送受信が行われる。なお、車両用通信ネットワークは、メインECUと第1及び第2従制御部との間でデータの送受信が行えるものであれば何でもよく、FlexRay(フレックスレイ)であっても、その他のネットワークであってもよい。
【0062】
図4〜
図7を参照しながら、このように構成されたトラクタ2におけるメータパネル30と液晶モニタ80が、センサ40によって検出された検出情報を表示するための一連のフローについて説明する。このフローの説明を通じて、メータパネル30の第1従制御部C1の動作、及び液晶モニタ80の第2従制御部C2の動作についても説明する。
図4を参照して、メータパネル30がエンジン回転数を表示するための動作フローについて説明する。
【0063】
ステップS1において、クランク位置センサ40aがフライホイールの回転数を検出し、検出情報出力手段51がフライホイールの回転数をエンジン回転数に換算する。
ステップS2において、検出情報出力手段51は、ステップS1で得られたエンジン回転数をCAN通信に規格に沿った8ビット信号に置き換える。
ステップS3において、識別情報出力手段52は、ステップS2で得られた8ビットエンジン回転数を表示する表示装置はメータパネル30であると判断する。そして、識別情報出力手段52は、エンジン回転数の表示対象をメータパネル30とするためにメータパネル30を指定する第1識別情報をエンジン回転数を送るデータフレームDFに付加する。これによって、エンジン回転数とメータパネル30とが関連付けられる。
【0064】
なお、識別情報出力手段52が出力した第1識別情報には、エンジン回転数の表示対象をメータパネル30に指定する情報はもちろんのこと、エンジン回転数を、メータパネル30に設けられた複数の表示器のうち、セグメント式表示部D1a及び回転用指針式表示部D3aで表示するための情報(表示先の情報)も含まれている。
つまり、識別情報出力手段52は、エンジン回転数を、複数の表示装置(メータパネル30、液晶パネル80)のうちメータパネル30で表示させ且つメータパネル30のセグメント式表示部D1a及び回転用指針式表示部D3aに表示させるために、第1識別情報を出力している。
【0065】
また、制御情報出力手段53は、セグメント式表示部D1aに対してどのようにエンジン回転数を表示させるかという表示形態を特定(指定)するための第1制御情報と、回転用指針式表示部D3aに対してどのようにエンジン回転数を表示させるかという表示形態を指定するための第3制御情報とをエンジン回転数を送るデータフレームDFに付加する。これによって、エンジン回転数とそれぞれの表示形態とが関連付けられる。
【0066】
ステップS4において、メインECU50は、互いに関連づけたエンジン回転数、第1制御情報、第3制御情報、及び第1識別情報をCAN通信網Nに出力する。
ステップS5において、第1従制御部C1の識別情報判定手段C1aは、ステップS4でメインECU50から出力されてCAN通信網Nに流れる連続的なデータ(データフレームDF)中に第1識別情報が含まれているか否かを判断する。
【0067】
ステップS6において、ステップS5で第1識別情報が含まれていると判断された場合、表示制御手段C1bは、第1識別情報に関連付けられたデータ、即ち、エンジン回転数、第1制御情報、第3制御情報を受信する。
ステップS7において、表示制御手段C1bは、エンジン回転数及び第1制御情報を受信するとエンジン回転数をセグメント式表示部D1aの仕様に変換すると共に変換したエンジン回転数を第1制御情報によって指定された表示形態(例えば、数字で右詰)となるようにセグメント式表示部D1aに表示させる。
【0068】
ステップS8において、表示制御手段C1bは、エンジン回転数及び第3制御情報を受信すると、エンジン回転数を回転用指針式式表示部D3aの仕様に変換すると共に変換したエンジン回転数を第3制御情報によって指定された表示形態となるように回転用指針式表示部D3aに表示させる。
ステップS7及びS8によって、エンジン回転数は、セグメント式表示部D1aと回転用指針式表示部D3aの両方に表示される。
【0069】
ステップS9において、液晶モニタ80における第2従制御部C2の識別情報判定手段C2aは、ステップS4でメインECU50から出力されたCAN通信網Nに流れる連続的なデータ中に第2識別情報が含まれているか否かを判断する。
ステップS10において、ステップS9での判断の結果、第2識別情報は含まれていないので、識別情報判定手段C2aは、エンジン回転数、第1制御情報及び第3制御情報を受信しない。
【0070】
図5を参照して、メータパネル30が燃料残量の警告と冷却水温度の警告を表示するための動作フローについて説明する。
ステップS20において、燃料センサ40cが燃料残量を検出し、水温センサ40bが冷却水温度を検出する。
ステップS21において、検出情報出力手段51は、ステップS20で得られた燃料残量と冷却水温度が警告を要する値であるか否かを判断する。
【0071】
ステップS22において、検出情報出力手段51は、ステップS20で得られた燃料残量と冷却水温度が警告を要する値であると判断し、燃料の警告と水温の警告を出力する。
ステップS23において、識別情報出力手段52は、第1識別情報を燃料の警告を送信するデータフレームDFに付加する。これによって、燃料の警告とメータパネル30とが関連付けられる。識別情報出力手段52は、第1識別情報に燃料の警告を表示する表示先(単一式LED表示部D2)も含める。
【0072】
また、制御情報出力手段53は、単一式LED表示部D2に対してどのように燃料の警告を表示させるかという表示形態を特定するための第2制御情報を燃料の警告を送るデータフレームDFに付加する。これによって、燃料の警告と表示形態とが関連付けられる。
燃料の警告と同様に、識別情報出力手段52は、第1識別情報に対して、水温の警告を送信するデータフレームDFに水温の警告の表示先を付加し、制御情報出力手段53は、表示先での表示形態を指定する第2制御情報をデータフレームDFに付加する。
【0073】
なお、燃料の警告を表示する表示形態と、水温の警告を表示する表示形態とは、例えば、同じ種類の単一式LED表示部D2であってもよいが、それぞれ異なるようにしてもよい。異なる場合は、制御情報出力手段53が出力する第2制御情報は、それぞれ異なるものとなる。
ステップS24において、メインECU50は、互いに関連づけた燃料の警告、第2制御情報、及び第1識別情報と、互いに関連づけた水温の警告、第2制御情報、及び第1識別情報とをCAN通信網Nに出力する。
【0074】
ステップS25において、第1従制御部C1の識別情報判定手段C1aは、ステップS24でメインECU50から出力されたデータ中に第1識別情報が含まれているか否かを判断する。
ステップS26において、ステップS25で第1識別情報が含まれていると判断されると、互いに関連付けられた燃料の警告、第2制御情報と、互いに関連づけた水温の警告、第2制御情報とを受信する。
【0075】
ステップS27において、表示制御手段C1bは、燃料の警告及び第2制御情報を受信すると、燃料の警告を燃料用LED表示部D2aの仕様(例えば、電圧)に変換すると共に変換した燃料の警告を第2制御情報によって指定された表示形態(例えば、点滅)となるように燃料用LED表示部D2aに表示させる。
ステップS28おいて、表示制御手段C1bは、水温の警告及び第2制御情報を受信すると、水温の警告を水温用LED表示部D2bの仕様(例えば、電圧)に変換すると共に変換した燃料の警告を第2制御情報によって指定された表示形態(例えば、点灯)となるように水温用LED表示部D2bに表示させる。
【0076】
ステップS29において、液晶モニタ80における第2従制御部C2の識別情報判定手段C2aは、ステップS24でメインECU50から出力されたCAN通信網Nに流れる連続的なデータ中に第2識別情報が含まれているか否かを判断する。
ステップS30において、ステップS9での判断の結果、第2識別情報は含まれていないので、識別情報判定手段C2aは、燃料の警告及びこれに関連付けされた第2制御情報、水温の警告及びこれに関連付けされた第2制御情報を受信しない。
【0077】
図6を参照して、液晶モニタ80が車速とPTO回転数を表示するための動作フローについて説明する。
ステップS40において、車速センサ40dがトラクタ2の車速を検出する。また、クランク位置センサ40aがフライホイールの回転数を検出し、検出情報出力手段51がフライホイールの回転数からPTO回転数を得る。
【0078】
ステップS41において、検出情報出力手段51は、ステップS41で得られた車速及びPTO回転数をCAN通信に規格に沿った8ビット信号に置き換える。ステップS42において、検出情報出力手段51は、ステップS40で得られた車速及びPTO回転数を出力する。
ステップS43において、識別情報出力手段52は、ステップS42で得られた車速を表示する表示装置は液晶モニタ80であると判断し、車速を送るデータフレームDFに第2識別情報を付加する。これによって、車速と液晶モニタ80とが関連付けられる。同様に識別情報出力手段52は、ステップS42で得られたPTO回転数を表示する表示装置は液晶モニタ80であると判断し、PTO回転数送るデータフレームDFに第2識別情報を付加する。これによって、PTO回転数と液晶モニタ80とが関連付けられる。
【0079】
なお、第2識別情報には、車速の表示先(セグメント式表示部D1b)と、PTO回転数の表示先(セグメント式表示部D1b)がそれぞれ含まれている。
制御情報出力手段53は、セグメント式表示部D1bに対してどのように車速を表示させるかという第1制御情報を、車速を送るデータフレームDFに付加する。これによって、車速と表示形態とが関連付けられる。また、制御情報出力手段53は、セグメント式表示部D1bに対してどのようにPTO回転数を表示させるかという第1制御情報を、PTO回転数を送るデータフレームDFに付加する。これによって、PTO回転数と表示形態とが関連付けられる。
【0080】
ステップS44において、メインECU50は、互いに関連づけた車速、第1制御情報、及び第2識別情報と、互いに関連づけたPTO回転数、第1制御情報、及び第2識別情報とをCAN通信網Nに出力する。
ステップS45において、第2従制御部C2の識別情報判定手段C2aは、ステップS44でメインECU50から出力されたCAN通信網Nに流れる連続的なデータ中に第2識別情報が含まれているか否かを判断する。
【0081】
ステップS46において、ステップS45で第2識別情報が含まれていると判断されると、互いに関連付けられた車速、第1制御情報と、互いに関連づけたPTO回転数、第1制御情報とを受信する。
ステップS47において、表示制御手段C2bは、車速及び第1制御情報を受信すると車速をセグメント式表示部D1bの仕様(例えば、電圧)に変換すると共に変換した車速を第1制御情報によって指定された表示形態となるように表示させる位置を指定する。
【0082】
例えば、表示制御手段C2bは、データフレームDF内の車速に対応する信号を、液晶モニタ80のセグメント式表示部D1bの表示形態であるセグメント群72用の点灯電圧に変換し、第1制御情報に基づいて液晶モニタ80の下段位置にある各セグメント群72に出力する。
ステップS48において、表示制御手段C2bは、PTO回転数及び第1制御情報を受信するとPTO回転数をセグメント式表示部D1bの仕様(例えば、電圧)に変換すると共に変換したPTO回転数を第1制御情報によって指定された表示形態となるように表示させる位置を指定する。
【0083】
例えば、表示制御手段C2bは、データフレームDF内のPTO回転数に対応する信号を、液晶モニタ80のセグメント式表示部D1bの表示形態であるセグメント群72用の点灯電圧に変換し、第1制御情報に基づいて液晶モニタ80の上段位置にある各セグメント群72に出力する。
ステップS49において、メータパネル30における第1従制御部C1の識別情報判定手段C1aは、ステップS44でメインECU50から出力されたCAN通信網Nに流れる連続的なデータ中に第1識別情報が含まれているか否かを判断する。
【0084】
ステップS50において、ステップS49での判断の結果、第1識別情報は含まれていないので、識別情報判定手段C1aは、車速及びこれに関連付けられた第1制御情報、PTO回転数及びこれに関連付けられた第1制御情報を受信しない。
本実施形態によるトラクタ2は、メータパネル30及び液晶モニタ80(表示装置)とは別に配置されたメインECU(主制御部)を備えている。メインECU50は、検出情報出力手段51、識別情報出力手段52、及び制御情報出力手段53を備えている。
【0085】
これによれば、センサ40が接続されたメインECU50が、第1・第2識別情報及び第1〜第3制御情報を用いて、メータパネル30及び液晶モニタ80(表示装置)を制御することができる。このように各センサ40をメインECU50に接続した構成を採用することで、メータパネル30の第1従制御部C1及び液晶モニタ80の第2従制御部C2の構成を簡素化できる。また、検出情報を表示装置にて表示させるための制御情報を出力する機能(制御情報出力手段53)をメインECU50の中に組み込みんでいるので、表示装置の従制御部の構成はより簡素化される。従って、表示装置の種類や仕様が変化した場合であっても、メインECU50のプログラムを変更するだけで、容易に表示装置を動作させることができる。
【0086】
例えば、メータパネル50において、エンジン回転数、燃料の警告、水温の警告、燃料の表示形態、及び水温の表示形態を、
図7(a)に示す状態から
図7(b)に示す状態に変更する場合、本発明では、制御情報出力手段51を実現する制御プログラムを変更するだけで済む。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0087】
上述した実施形態では、検出情報として、主に、エンジン回転数、燃料、水温、車速、PTO回転数などであったが、検出情報はこれに限定されず、トラクタ2に設けたセンサ40で検出したものであれば何でもよい。