【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年 6月21日 第13回日本流体力学会中四国・九州支部講演会において公開 平成26年 7月14日発行 「Engineering of Sport 10:Procedia Engineering Volume 72」において公開 平成26年 7月15日 The 2014 conference of the International Sports Engineering Associationにおいて公開 平成26年10月29日発行 「スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス2014」において公開 平成26年10月29日発行 「スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス2014」において公開 平成26年10月30日 シンポジウム:スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス2014において公開 平成26年10月30日 シンポジウム:スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス2014において公開 平成26年10月31日発行 福岡工業大学エレクトロニクス研究所所報第31巻(2014)において公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のスモークワイヤ法では、気流の流速が速いと観察対象物の周囲に煙が流れる時間が短くなる。さらに、金属細線が気流の流れと直交する方向に張られているため、発生した煙は、気流に混入されて観察対象物の周囲を瞬時に流れる。そのため、観察可能な気流の流速は4m/s程度に限られている。したがって、上記のスモークワイヤ法では、速い流速において観察対象物の周囲の気流を観察することは困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、速い流速において観察対象物の周囲の気流を観察することができる発煙装置およびそれを備えた気流観察装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発煙装置は、発煙剤を加熱して煙を発生させるためのものである。発煙装置は、フレーム部材と、発煙剤が塗布され、かつ煙が流れる方向に延在するようにフレーム部材に張られたワイヤー部材と、発煙剤を加熱して煙を発生させるようにワイヤー部材に電圧を印加可能な電圧印加装置とを備えている。
本発明の気流観察装置は、観察対象物の周囲の気流を観察するための気流観察装置であって、上記の発煙装置と、発煙装置を収容可能な風洞と、風洞内に送風可能に構成されており、かつ煙が流れる方向においてワイヤー部材よりも上流側に配置された送風機と、送風機からの送風により、煙が流れる方向においてワイヤー部材よりも下流側に配置された観察対象物の周囲を流れる発煙を撮影可能な撮影装置とを備えている。
【0007】
本発明の発煙装置によれば、ワイヤー部材は煙が流れる方向に延在するようにフレーム部材に張られているため、煙が流れる方向に延在するように煙を発生させることができる。したがって、煙は、煙が流れる方向に延在しているため、煙が速い流速の気流に混入されても煙が観察対象物の周囲を流れる時間を長くすることができる。これにより、速い流速で観察対象物の周囲の気流を観察することができる。
【0008】
上記の発煙装置では、ワイヤー部材は、複数のワイヤーを含んでいる。このため、ワイヤーに塗布される発煙剤の量が増えるため、煙の発生量を増やすことができる。したがって、観察対象物の周囲を流れる煙の量を増やすことができる。これにより、煙が速い流速の気流に混入されても煙が観察対象物の周囲を流れる時間を長くすることができるため、速い流速で観察対象物の周囲の気流を観察することができる。
【0009】
上記の発煙装置では、ワイヤー部材は、撚り線を含んでいる。このため、発煙剤を撚り線の中に染み込ませることができるので、速い流速の気流により発煙剤が吹き飛ぶことを抑制できる。したがって、煙の発生量の低下を抑制できる。
【0010】
上記の発煙装置では、フレーム部材は複数のフレームを含んでいる。複数のフレームは直方体状の枠を構成するように組み立てられている。ワイヤー部材は、直方体状の枠の長手方向に交差する方向から見て、枠の中央に配置されている。このため、煙が枠の中央を流れるため、煙をスムーズに流すことができる。したがって、発生した煙を観察対象物の周囲に効果的に流すことができる。
【0011】
上記の発煙装置では、発煙剤は、流動パラフィンと、鉄粉とを含んでいる。流動パラフィンがワイヤー部材に塗布されると、流動パラフィンは球状に凝縮するため、気流によりワイヤー部材から吹き飛ばされることがある。流動パラフィンに鉄粉が混ぜられることでワイヤー部材から流動パラフィンが吹き飛ばされることを抑制できる。これにより、煙の発生量の低下を抑制できる。また、流動パラフィンの煙に鉄粉が混じるため、煙を見やすくすることができる。
【0012】
上記の発煙装置は、ばね部材をさらに備えている。ばね部材は、煙が流れる方向に沿ってワイヤー部材を引っ張るように構成されている。このため、ばね部材によってワイヤー部材が発熱により垂れることを抑制できる。したがって、ワイヤー部材が垂れることにより煙が発生する高さ位置が下がることを抑制できる。よって、煙Sが発生する高さを安定させることができる。
【0014】
本発明の気流観察装置によれば、上記の発煙装置を備えているため、速い流速で観察対象物の周囲の気流を撮影することができる。
【0015】
上記の気流観察装置は、照明装置をさらに備えている。照明装置は、観察対象物を照射可能に配置されている。観察対象物を照射することにより撮影された画像に濃淡が発生するため、気流を観察しやすくすることができる。また、この濃淡の動きを観察することで気流を正確に観察することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の発煙装置および気流観察装置によれば、速い流速で観察対象物の周囲の気流を観察することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
最初に本実施の形態の発煙装置の構造について説明する。本実施の形態の発煙装置は、発煙剤を加熱して煙を発生させるための装置である。この煙が混入された気流が観察対象物の周囲に流れることにより観察対象物の周囲の気流を観察することができる。
【0019】
図1を参照して、本実施の形態の発煙装置1は、フレーム部材2と、ワイヤー部材3と、第1の支持ワイヤー3fと、第2の支持ワイヤー3sと、電圧印加装置4と、ばね部材5とを主に有している。
【0020】
フレーム部材2は直方体状に形成されている。具体的には、フレーム部材2は複数のフレーム2aと、各フレーム2aを接続する接続部材2bとを有している。複数のフレーム2aは直方体状の枠を構成するように組み立てられている。直方体状の枠は、たとえば長さが850mm以上950mm以下であり、高さが350mm以上450mm以下であり、幅が350mm以上450mm以下である。各フレーム2aはフレーム部材2の直方体の各辺を構成している。各フレーム2aは、円柱状に構成されている。各フレーム2aの直径はたとえば5mm以上6mm以下である。
【0021】
フレーム部材2は、フレーム部材2の長手方向が煙の流れる方向F1に沿うように配置されている。つまり、フレーム部材2の長手方向は煙が混入された気流の流れる方向に沿って配置されている。フレーム部材2はたとえば木製である。
【0022】
また、フレーム部材2はフレーム部材2の長手方向に沿って移動可能な枠部2fを有している。枠部2fは、環状に構成されており、4本のフレーム2aと、4つの接続部材2bを有している。枠部2fの4つの接続部材2bは、フレーム部材2の長手方向に延在する4本のフレーム2aの各々に接続されている。枠部2fの4本のフレーム2aは、フレーム部材2の長手方向に延在する4本のフレーム2aの互いに隣り合うフレーム2aに接続された接続部材2bにそれぞれ接続されている。
【0023】
図1および
図2を参照して、フレーム部材2の長手方向の一端に第1の支持ワイヤー3fが取り付けられている。なお、
図2は、
図1の矢印A1方向から見た図である。矢印A1方向は煙が流れる方向F1に対向する方向である。第1の支持ワイヤー3fは煙が流れる方向F1の下流側に配置されている。第1の支持ワイヤー3fは、フレーム部材2の短手方向に延在する2本のフレーム2aを繋いでいる。具体的には、第1の支持ワイヤー3fはフレーム部材2の長手方向の一端において上下方向に延在するように上下の2本のフレーム2aに取り付けられている。第1の支持ワイヤー3fはたとえば銅線である。第1の支持ワイヤー3fの直径はたとえば0.1mm以上0.8mm以下である。
【0024】
図1および
図3を参照して、フレーム部材2の長手方向の他端側に枠部2fが配置されている。なお、
図3は、
図1の矢印A2方向から見た図である。矢印A2方向は煙が流れる方向F1に直交する方向である。枠部2fに第2の支持ワイヤー3sが取り付けられている。第2の支持ワイヤー3sは第1の支持ワイヤー3fに対向するように配置されている。第2の支持ワイヤー3sは煙が流れる方向F1の上流側に配置されている。第2の支持ワイヤー3sは、フレーム部材2の短手方向に延在する枠部2fの2本のフレーム2aを繋いでいる。具体的には、第2の支持ワイヤー3sは枠部2fにおいて上下方向に延在するように上下の2本のフレーム2aに取り付けられている。第2の支持ワイヤー3sはたとえば銅線である。第2の支持ワイヤー3sの直径はたとえば0.2mm以上0.4mm以下である。なお、この寸法は最も直径の大きい部分の寸法である。
【0025】
ワイヤー部材3は、煙が流れる方向F1に延在するようにフレーム部材2に張られている。具体的には、ワイヤー部材3は第1の支持ワイヤー3fと第2の支持ワイヤー3sとに接続されている。ワイヤー部材3は、直方体状の枠の長手方向に交差する方向から見て、直方体状の枠の中央に配置されている。
【0026】
ワイヤー部材3は、複数のワイヤー3aを有している。複数のワイヤー3aは上下方向に並んで配置されている。複数のワイヤー3aは互いに等間隔に配置されていてもよく、不等間隔に配置されていてもよい。複数のワイヤー3aの本数に制限はなく、たとえば5本以上20本以下である。ワイヤー3aはたとえばステンレスワイヤである。ワイヤー3aの直径はたとえば0.5mm以上0.6mm以下である。ワイヤー3aの長さに制限はなく、たとえば750mm以上850mm以下である。発煙装置1を風洞内に設置する場合、風洞内の十分上流でワイヤー3aの端部を支持しておけば、ワイヤー3aの端部で発生する乱流を長い流下過程で軽減させることができる。
【0027】
図4を参照して、ワイヤー部材3は撚り線を有している。具体的には、複数のワイヤー3aが撚り線で構成されている。なお、
図4は、ワイヤー部材3を拡大して示す側面図である。ワイヤー部材3はたとえばステンレス線またはタングステン線である。
【0028】
ワイヤー部材3には発煙剤10が塗布される。具体的には、発煙剤10はたとえば刷毛でワイヤー部材3に塗布される。発煙剤10は主に流動パラフィン10aで構成されている。発煙剤10は、流動パラフィン10aと、鉄粉10bとを有している。なお、鉄粉10bの代わりに、または鉄粉10bの他に、アルミニウム粉、銀粉またはカオリンクレーなどの粘土が発煙剤10に混ぜられていてもよい。また、本発明における「煙」はミスト状に限られず、発煙剤10の種類によってはダスト状やヒューム状であってもよい。
【0029】
再び
図1および
図3を参照して、電圧印加装置4は、発煙剤10を加熱して煙を発生させるようにワイヤー部材3に電圧を印加可能に構成されている。電圧印加装置4はワイヤー部材3に電気的に接続されている。電圧印加装置4は、たとえば50V程度の電圧をワイヤー部材3に印加可能に構成されている。
【0030】
枠部2fはフレーム部材2の長手方向の他端に接続されたばね部材5に接続されている。ばね部材5は、煙が流れる方向F1に沿ってワイヤー部材3を引っ張るように構成されている。具体的には、ばね部材5は、フレーム部材2の長手方向の他端に枠部2fを付勢するように構成されている。8本のばね部材5で枠部2fを付勢している。ばね部材5は、フレーム部材2の長手方向の他端のフレーム2aと、それらに向かい合う枠部2fのフレーム2aとの間に2本ずつ接続されている。これらの2本のばね部材5は、直方体の各辺を均等に分ける位置に接続されていてもよい。
【0031】
続いて、
図5を参照して、本実施の形態の発煙装置の動作について説明する。
まず、ワイヤー部材3に発煙剤10が塗布される。発煙剤10が塗布されたワイヤー部材3に電圧印加装置4によって電圧が印加される。ワイヤー部材3が通電されることによりワイヤー部材3は発熱する。ワイヤー部材3が発熱することにより、発煙剤10がミスト化され、煙Sが発生する。煙Sは、ワイヤー部材3に沿って発生する。このため、煙Sは、煙が流れる方向F1に沿ってワイヤー部材3の長さに応じて発生する。また、煙Sは、複数のワイヤー3aが上下方向に並んでいるため上下方向にも発生する。したがって、煙Sは、フレーム部材2の長手方向および短手方向に発生する。つまり、煙Sは、ワイヤー部材3の周囲にフレーム部材2の長手方向に延在するように立体的に発生する。
【0032】
次に、本実施の形態の気流観察装置の構造について説明する。
本実施の形態の気流観察装置は、観察対象物の周囲の気流を観察するための装置である。観察対象物として、たとえばゴルフボールまたは野球ボールを適用することができる。ゴルフボールおよび野球ボールの周囲の気流を観察することにより、飛翔するボールの空気力が作用するメカニズムなどを知ることができる。本実施の形態の気流観察装置は、PIV(Particle Image Velocimetry)解析を行うことができる。
【0033】
図6を参照して、気流観察装置20は、上記の発煙装置1と、風洞21と、送風機22と、撮影装置23と、照明装置24とを主に有している。観察対象物30は、気流の流れる方向において、発煙装置1よりも下流側に配置されている。
【0034】
風洞21は、発煙装置1を収容可能に構成されている。風洞21は、風洞内に発煙装置1を収容した状態で発煙装置1のフレーム部材2の長手方向に気流を流すように構成されている。
【0035】
送風機22は、風洞内に送風可能に構成されている。送風機22は煙が流れる方向F1においてワイヤー部材3よりも上流側に配置されている。送風機22はたとえば送風ファンである。送風機22は、40m/s以上の風速で送風可能に構成されている。
【0036】
撮影装置23は、送風機22からの送風により、煙が流れる方向F1においてワイヤー部材3よりも下流側に配置された観察対象物30の周囲を流れる気流を撮影可能に構成されている。撮影装置23は、気流が流れる流路から外れた位置に配置されている。撮影装置23は、風洞21の外部に配置されている。撮影装置23はたとえば高速度カメラである。撮影装置23の撮影速度は、たとえば最高速度20000fpsである。
【0037】
照明装置24は、観察対象物30を照射可能に配置されている。具体的には、照明装置24は、気流の流れる方向において観察対象物30よりも下流側に配置されている。照明装置24は、2個配置されており、観察対象物30の上下後方から観察対象物30を照射するように配置されている。照明装置24は、たとえばメタルハロイドランプおよび半円型集光レンズのセットである。
【0038】
続いて、本実施の形態の気流観察装置の動作について説明する。
発煙装置1のワイヤー部材3に発煙剤が塗布される。風洞21内に、発煙剤が塗布された発煙装置1がセットされる。風洞内に発煙装置1がセットされた状態で風洞内の気流の流速が所定の流速となるよう送風機22により風Wが送風される。ワイヤー部材3に電圧印加装置4によって電圧が印加されて発煙剤がミスト化されて煙Sが発生する。この煙Sが混入された気流が観察対象物30の周囲に送られる。照明装置24により観察対象物30の上下後方から観察対象物30に光Lが照射された。この観察対象物30の周囲を流れる気流が撮影装置23によって撮影される。これにより、観察対象物30の周囲を流れる気流が目視により観察される。
【0039】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
図1、
図5および
図6を参照して、本実施の形態の発煙装置1によれば、ワイヤー部材3は煙が流れる方向F1に延在するようにフレーム部材2に張られているため、煙が流れる方向F1に延在するように煙を発生させることができる。したがって、煙Sは、煙が流れる方向F1に延在しているため、煙Sが速い流速の気流に混入されても煙Sが観察対象物30の周囲を流れる時間を長くすることができる。これにより、速い流速で観察対象物30の周囲の気流を観察することができる。具体的には、気流の流速40m/sにおいて約1秒間、観察対象物30の周囲に濃い煙を発生させることができた。
【0040】
本実施の形態の発煙装置1では、ワイヤー部材3は、複数のワイヤー3aを含んでいる。このため、ワイヤー3aの塗布される発煙剤の量が増えるため、煙Sの発生量を増やすことができる。したがって、観察対象物30の周囲を流れる煙Sの量を増やすことができる。これにより、煙Sが速い流速の気流に混入されても煙Sが観察対象物30の周囲を流れる時間を長くすることができるため、速い流速で観察対象物30の周囲の気流を観察することができる。
【0041】
図4および
図5を参照して、本実施の形態の発煙装置1では、ワイヤー部材3は、撚り線を含んでいる。このため、発煙剤10を撚り線の中に染み込ませることができるので、速い流速の気流により発煙剤10が吹き飛ぶことを抑制できる。したがって、煙Sの発生量の低下を抑制できる。
【0042】
図5および
図6を参照して、本実施の形態の発煙装置1では、ワイヤー部材3は、直方体状の枠の長手方向に交差する方向から見て、枠の中央に配置されている。このため、煙Sが枠の中央を流れるため、煙Sをスムーズに流すことができる。したがって、発生した煙Sを観察対象物30の周囲に効果的に流すことができる。
【0043】
図4および
図6を参照して、本実施の形態の発煙装置1では、発煙剤10は、流動パラフィン10aと、鉄粉10bとを含んでいる。流動パラフィン10aがワイヤー部材3に塗布されると、流動パラフィン10aは球状に凝縮するため、気流によりワイヤー部材3から吹き飛ばされることがある。流動パラフィン10aに鉄粉10bが混ぜられることでワイヤー部材3から流動パラフィン10aが吹き飛ばされることを抑制できる。これにより、煙Sの発生量の低下を抑制できる。また、流動パラフィン10aの煙Sに鉄粉10bが混じるため、煙Sを見やすくすることができる。
【0044】
図1および
図5を参照して、本実施の形態の発煙装置1では、ばね部材5は、煙が流れる方向F1に沿ってワイヤー部材3を引っ張るように構成されている。このため、ばね部材5によってワイヤー部材3が発熱により垂れることを抑制できる。したがって、ワイヤー部材3が垂れることにより煙Sが発生する高さ位置が下がることを抑制できる。よって、煙Sが発生する高さを安定させることができる。
【0045】
図6を参照して、本実施の形態の気流観察装置20によれば、上記の発煙装置1を備えているため、速い流速で観察対象物30の周囲の気流を撮影することができる。
【0046】
本実施の形態の気流観察装置20では、照明装置24は、観察対象物30を照射可能に配置されている。観察対象物30を照射することにより撮影された画像に濃淡が発生するため、気流を観察しやすくすることができる。また、この濃淡の動きを観察することで気流を正確に観察することができる。具体的には、この濃淡の動きを追跡してPIV解析による画像処理を行い、各要素点における速度ベクトルを求め、その情報から観察対象物よりも後流の流線および渦度分布を求めることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、
図6に示す気流観察装置20を使用して、気流の流速と発煙時間との関係を検討した。この気流の流速は、発煙装置1が設置された風洞内の気流の流速である。この発煙時間は、撮影に耐える濃さの煙が実現している時間である。
【0048】
まず、本実施例の気流観察装置20の構成について説明する。特に説明しないかぎり、本実施例の気流観察装置20の構成は上記の実施の形態の気流観察装置20と同一である。
【0049】
発煙装置1のフレーム部材2は、長さが920mmであり、高さが400mmであり、幅が400mmである。各フレーム2aの直径は5mmである。また、ワイヤー部材3はステンレスワイヤである。ワイヤー部材3の長さは850mmである。ワイヤー3aの直径は0.54mmである。ワイヤー3aの本数は9本である。ワイヤー3aは撚り線である。第1の支持ワイヤー3fおよび第2の支持ワイヤー3sは銅線である。第1の支持ワイヤー3fおよび第2の支持ワイヤー3sの直径はそれぞれ0.3mmである。また、発煙装置1のワイヤー部材3に発煙剤が刷毛で塗布された。発煙剤は流動パラフィンに鉄粉が混ぜられたものである。
【0050】
撮影装置23は高速度カメラであり、その撮影速度は最高速度20000fpsである。送風機22は40m/s以上の風速で送風可能な送風ファンである。照明装置24は、メタルハロイドランプおよび半円型集光レンズのセットである。
【0051】
続いて、本実施例の気流観察装置20の動作について説明する。特に説明しないかぎり、本実施例の気流観察装置20の動作は上記の実施の形態の気流観察装置20と同一である。
【0052】
風洞21内に、発煙剤が塗布された発煙装置1がセットされた。風洞内に発煙装置1がセットされた状態で風洞内の気流の流速が5m/S以上40m/s以下の範囲の流速となるよう送風機22により送風された。気流の流速は5m/s刻みに設定された。ワイヤー部材3に電圧印加装置4によって電圧が印加された。これにより、発煙剤がミスト化されて煙が発生した。この煙が混入された気流が観察対象物30の周囲に送られた。照明装置24により観察対象物30の上下後方から観察対象物30が照射された。この観察対象物30の周囲を流れる気流が撮影装置23によって20000fpsで撮影された。
【0053】
この結果を
図7に示す。
図7を参照して、本実施例の気流観察装置では、流速40m/sにおいて、約1秒間、濃い煙を発生させることができた。このため、流速40m/sにおいて観察対象物30の周囲を流れる気流を観察できた。ワイヤーの数をたとえば20本に増やすことによって、流速80m/sにおいても、理論的には十分なPIV解析が可能なレベルの煙を発生させることができる。
【0054】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。