【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は特に溶融状態で粘性の弱い熱可塑性プレポリマーの使用に基づいており、低分子量のものが好ましく、適切に繊維に含浸することが可能で、また非常に反応性が高いため、結果として、重付加によるバルク重合により、および特定の鎖延長剤(溶融ブレンド)の存在下で、マトリックスに有利な機械的特性を持たせるのに十分大きな数平均分子量を実現できる。また、本発明による複合材料を製造するための方法は、マトリックスの重合の間、2次的な反応や、取り除かなければならない副生成物が生成される反応を引き起こさない点で有利である。この理由は、これらの取り除かれる生成物は加工条件下でガス状および揮発性になり、生み出される微小な泡により最終的な複合材料を弱くする可能性があるためである。特に、用いられる特定の反応は凝縮水を生成しない。従って本発明による複合材料の製造および/もしくは加工または整形のために用いられる装置内に副生成物を排出するためのシステムを備える必要がなく、これによりプラントのサイズおよびエネルギーコストを削減することもできる。
【0018】
また本発明により、これまで少なくとも複合材の分野において熱硬化性ポリマー用であった整形技術を用いることが可能になる。従って本発明によれば、構造反応射出成形(SRIM)または射出/圧縮成形またはインフュージョンまたはRTMにより熱可塑性マトリックスを含む複合材部品を製造することが可能である。
【0019】
従って本発明の第1の主題は、特定の反応性前駆体組成物を用いることによる、1つまたは複数の合成補強繊維の繊維基材または集合体への含浸に基づいた、複合材料を製造するための方法であり、この反応性前駆体組成物は熱可塑性マトリックスの前駆体であり、熱可塑性マトリックスの組成物には、a)上記熱可塑性ポリマーのための反応性プレポリマーが少なくとも1つ、およびb)とりわけ上記プレポリマーの反応基の官能基として具体的に選択された鎖延長剤が少なくとも1つ含まれる。
【0020】
また、上記プリプレグの製造のための上記方法を実施するために用いられる、熱可塑性マトリックスのための前駆体組成物も本発明の範囲内である。
【0021】
本発明の別の主題は、予備含浸繊維材料を製造するため、または成形複合材部品にすることができる複合材料を製造するための、1つまたは複数の合成補強繊維の集合体へ含浸するために、上記前駆体組成物を使用することである。
【0022】
また、本発明による少なくとも1つの前駆体組成物による、本発明による繊維集合体の溶融状態での含浸の結果、半完成品として得られる予備含浸繊維材料も本発明の範囲内である。
【0023】
本発明の最後の主題は、成形複合材部品にすることができる複合材料である完成品であり、この複合材料は本発明による方法、とりわけ上記前駆体組成物を使用することにより得られる。
【0024】
従って本発明の第1の主題は、複合材料を製造するための方法に関し、この複合材料には好ましくは長い1つまたは複数の合成補強繊維の集合体が含まれ、上記集合体は、80℃以上、好ましくは100から200℃、より好ましくは110から200℃、特に110℃から180℃未満、より好ましくはさらに120から170℃(TgはDSCにより測定)のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1つの熱可塑性ポリマーにより含浸されており、上記方法は
i)上記集合体に前駆体組成物を溶融状態で(即ち溶融後に)含浸させる段階を含み、含浸は特に上記前駆体組成物の粘度が溶融状態で100Pa.sを超えず、好ましくは50Pa.sを超えないような温度で行われ、上記前駆体組成物は
a)上記熱可塑性ポリマーのプレポリマーP(X)
nであって、この末端にはn個の同一の反応性官能基Xを有する分子鎖Pが含まれ、上記プレポリマーは半芳香族および/または半脂環式の構造をしており、XはOH、NH
2またはCOOHから選択される反応性官能基であり、特に上記プレポリマーは数平均分子量Mnが500から10000の範囲であり、1000から10000が好ましく、1000から6000がより好ましく、2000から6000g.mol
−1がさらによりよく、nは1から3の範囲であり、nは1または2が好ましく、2(n=2)がより好ましい、プレポリマー、
b)Y−A−Yで表され、上記X官能基の少なくとも1つと反応する2個の同一のY官能基を含む鎖延長剤、
を含む、段階、
ii)上記プレポリマーの上記鎖延長剤との溶融状態での(重)付加によるバルク重合の段階
を含み、
上記熱可塑性マトリックスの上記熱可塑性ポリマーは、重付加による上記バルク重合の結果物または生成物である。
【0025】
上記プレポリマーのP鎖の構造に関し、これはオリゴマーならびに半脂環式および/または半芳香族の構造をしている。半脂環式構造または脂環式構造に基づく構造とは、脂環式構造を含む構造を意味する。半芳香族構造は同様に定義される。
【0026】
とりわけ、上記鎖延長剤は非ポリマー構造の炭化水素分子鎖であり、即ち繰り返し単位がなく、従ってポリマーでもオリゴマーでもなく、分子量が500未満であることが好ましく、400未満がより好ましい。上記延長剤は、Y−A−Yで表されるが、ここでAは2個のY基(または官能基)を担持する炭素ベースのスペーサーまたは基であり、Aは非ポリマー構造をしており、即ちポリマーでもオリゴマーでもない。
【0027】
述べた段階i)の溶融状態にある粘度とは、含浸時に溶融状態にある前駆体組成物の粘度を意味する。
【0028】
含浸は150から340℃の範囲の温度で行うことができ、200から320℃、とりわけ200から300℃が好ましく、重合の温度と同じにすることができる。含浸条件、特に温度および時間の条件は、上記前駆体組成物の含浸粘度が100Pa.sを超えないよう、好ましくは50Pa.sを超えないよう制御される。特に含浸温度は、含浸時間と同様、重付加反応が大幅に進行しないよう、また反応性組成物の溶融状態における粘度が結果的に(100Pa.sおよび好ましくは50Pa.s)より高く定められた上限を超えないよう制御される。含浸時間は型の中の注入点の数と同様、部品の形状およびサイズに左右されることを考えると、含浸を制御するために極めて重要なパラメータは依然として含浸温度である。
【0029】
上記合成補強繊維、特に有機ポリマー繊維は、強化材として機能するために定義上、融点温度Tm’またはTm’がない場合はガラス転移温度Tg’を持たなければならず、これはマトリックスの上記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度Tgよりも高く、また、いかなる場合でも、加工温度が重合温度よりも高い場合でも、重合温度よりも高くおよび加工温度よりも高いことに留意されたい。重合温度(および加工温度)は150から340℃の範囲が可能であり、200から320℃が好ましく、200から300℃がより好ましい。とりわけ有機繊維では、さらにとりわけポリマー繊維では、重合温度が第1の範囲の最高値(340℃)である場合、このTm’またはTg’は350℃よりも高くてもよい。Tm’は規格ISO11357に従ってDSCにより温度が20℃/分で上昇する2回目の加熱において測定される。TgおよびTg’もDSCにより測定される。
【0030】
とりわけ、含浸段階i)は、この方法の重合段階ii)と同様、本発明に従って上で定義したように、a)少なくとも1つのプレポリマーとb)少なくとも1つの鎖延長剤との溶融状態にある混合物である上記熱可塑性マトリックスのための特定の前駆体組成物を用いて行われる。
【0031】
また本発明による方法には、上記複合材料の最終的な加工の段階iii)も含まれることが好ましい。
【0032】
上記プレポリマーP(X)
nは、上で定義したように、本発明の複合材料のために低くとも80℃のTgを有する熱可塑性マトリックスを構成する上記熱可塑性ポリマーのためのプレポリマーであり、従って、このプレポリマーには分子鎖Pに上記熱可塑性ポリマーに対応する繰り返し単位が含まれる。定義上、上記プレポリマーの分子量は(低くとも80℃のTgを有する)最終的な熱可塑性ポリマーの分子量よりも小さい。さらに、上記の最終的な熱可塑性ポリマーには、上記延長剤のY官能基と上記プレポリマーのX官能基との間の反応後に、反応した状態で上記鎖延長剤の構造単位が1つまたは複数含まれる。例えば、上記ポリマーがポリアミドの場合、これが意味するところは、この主構造は1つまたは複数の鎖延長剤Y−A−YによるポリアミドプレポリマーP(X)
nの鎖伸長の結果生じるポリアミド(アミド繰り返し単位)であるということであり、この鎖延長剤は上記プレポリマーのX基または官能基と反応するY基または官能基を有する。
【0033】
式P(X)
nの定義上、n個のX基は同一である。同じく、Y−A−Yで表される上記鎖延長剤において、2個のY基は同一である。従って定義上、X基は互いに反応することができず、同じくY基は互いに反応することができない。また、熱可塑性マトリックスの熱可塑性ポリマーの定義上、このポリマーにはどのような架橋構造もない。
【0034】
本発明による方法において、上記プレポリマーは特に500から10000g.mol
−1の範囲の数平均分子量Mnを有し、1000から10000g.mol
−1が好ましく、1000から6000g.mol
−1がより好ましく、2000から6000g.mol
−1がさらによりよく、これらは末端のX官能基を滴定することにより測定される。対応する固有粘度についても述べることができ、これはm−クレゾール中で測定されるが、0.1から1.0であり、0.2から1.0が好ましく、0.2から0.7がより好ましく、0.3から0.7dl/gがさらによりよい。とりわけ、プレポリマーP(X)
nのMnは、末端X官能基(単位meq/gでのXの濃度)の滴定(電位差測定による。)から、また、上記プレポリマーの計算理論官能価n(n計算値(n calc))から、存在する反応体の物質収支および官能価を考慮して計算され、Mnおよびn計算値は以下のように定義される。
【0035】
Mn=n計算値*1000/[X]
ここで、n計算値=2[X]/([X]+[M]−[B])
最後に、Mn=2000/([X]+[M]−[B])
式中、[X]、[M]および[B]はそれぞれ(測定された)反応性官能基X、(投入時に導入された場合、例えば、単官能基の反応体の量から始まる計算により得られた)非反応性の鎖Mの末端および(投入時に導入された場合、例えば、三官能基の反応体の量から始まる計算により得られた)三官能基の分岐点Bのモル濃度であり、Mnはg/molで、濃度はmeq/gで表される。
【0036】
とりわけ、上記プレポリマーは最終的なポリマーの小さくともおよそ半分の分子量を有し、この場合(プレポリマーの分子量のおよそ2倍のMn)、上記の最終的な熱可塑性ポリマーには上記鎖延長剤1分子につき2つのプレポリマーP鎖が含まれ、プレポリマー鎖および延長剤分子は、X官能基とY官能基との間に形成された2つの結合により互いに結合される。この場合、本発明で必要とされている通り、最終的な熱可塑性ポリマーの分子量が十分に大きくなるように上記プレポリマーの分子量は前述の範囲の上側から選択される。とりわけ、上記の最終的な熱可塑性ポリマーの目標とする数平均分子量は、m−クレゾール中で測定された1dl/gよりも大きい固有粘度の値に対応することが好ましく、1から3dl/gが好ましく、1.2から2dl/gがより好ましい。これらの最終粘度の範囲は、分子量Mnの範囲で10000から40000、好ましくは12000から30000に相当すると見なすことができ、この分子量は末端官能基および官能価を分析することにより測定することができる。
【0037】
より具体的な好ましいこの方法の形態によれば、上記プレポリマーは2個の(同一の)反応性官能基Xを担持し、ここでP(X)
nにおいてn=2であり、さらに延長剤の上記Y官能基は上記プレポリマーの2個のX官能基と反応するが、これは重付加による鎖伸長に対応し、付加が数回繰り返されることを意味する。本発明による最終的な熱可塑性ポリマーで高分子量を達成するためには、目標とする分子量Mnまたは固有粘度の関数としてY/Xモル比を調整する必要がある。この比は0.5から1.5の間で変わり、この比が1に近いほど分子量Mnまたは固有粘度が大きいことが知られている。
【0038】
含浸段階i)は通常、上記プレポリマーP(X)
nおよび場合によりY−A−Yで表すことができる上記鎖延長剤との混合物の融点よりも高い温度で、または融点がない場合は、これらのガラス転移温度よりも高い温度で行われる。とりわけ、段階i)のこの含浸温度は、上記前駆体組成物の溶融状態での(バルクでの)粘度が、含浸の間、100Pa.sを超えないよう、好ましくは50Pa.sを超えないよう調整される。この段階i)は1から30バール、好ましくは1から10バールの範囲の圧力下で行うことができる。
【0039】
重合段階ii)に関して、この段階は150から340℃、好ましくは200から320℃、より好ましくは200から300℃の範囲の温度で行うことができる。
【0040】
段階iii)の加工温度は上に示した通り、重合温度の範囲内にあるようにすることができ、重合温度と同一にすることが可能である。
【0041】
上述の本発明による方法の好ましい形態によれば、熱可塑性ポリマーはポリアミド、ポリエステル、これらのコポリマー、例えばポリアミド−ポリエーテルコポリマー、またはこれらの混合物から選択され、この熱可塑性ポリマーはポリアミドであることが好ましい。熱可塑性ポリマーのこの好ましい定義により、結果として暗黙的に上記反応性プレポリマーP(X)
nを次の反応性プレポリマーから好ましく選択することになる。:ポリアミド−ポリエーテルを含むポリアミドおよびコポリマー、ポリエステルおよびコポリマー、またはポリアミドおよびポリエステルおよびこれらのコポリマーのこれらの混合物。
【0042】
上記プレポリマーにより担持される好ましい反応性官能基Xに関し、これらはヒドロキシル(OH)、アミン(NH
2)またはカルボキシル(COOH)から選択され、アミンまたはカルボキシルがより好ましい。NH
2の記号で表されたアミンは一級アミンおよび二級アミンの両方を対象に含む。一級アミンがプレポリマー/延長剤の系内で(例えばビスマレイミドの場合)この2つのN−H要素と反応することが可能な場合、2つの反応体の比率および付加モードはどのような架橋も防ぐよう制御され、本発明の目的は、(半結晶性の場合)この融点よりも高く、または非晶性の場合はこのガラス転移温度よりも高くポリマーを加熱することにより、リサイクルすることができる熱可塑性マトリックスを得ることである。
【0043】
通常、2つの反応体のうちの1つの官能価が2より大きいとき、どのような潜在的な架橋も避けるために、反応体(プレポリマー+鎖延長剤を混合したもの)当たりの平均官能価、つまり反応性官能基の合計X+Yをプレポリマー+鎖延長剤の合計のモル数で割ったものは、2を超えてはならない。とりわけMacosko−Millerの関係は当業者に周知であり、反応体の比率、これらの官能価および転化率を関連付けるものであるが、この文脈で用いることができる。
【0044】
従って定義上、本発明による複合材の最終的な熱可塑性ポリマーマトリックス中において、どのような架橋ポリマーの存在も除かれる。
【0045】
熱可塑性ポリマーの有するガラス転移温度Tgは低くとも80℃であり、100から200℃の範囲が好ましく、110から200℃がより好ましく、110℃から180℃未満がさらにより好ましく、とりわけ120から170℃である。Tgは(Tg’と同様)、加熱速度20℃/分で2回目に走査後、DSCにて測定される。本発明により製造される複合材部品が、特に高温で応力を受けたときに機械的に耐えられるように、上で定義した高いガラス転移温度を実現することは有利である。とりわけ、これらの複合材部品は自動車または航空産業で用いられる機械部品に必要なように、過度に機械的強度(特に弾性率および破壊応力)に影響を与えることなく、高い機械的強度(弾性率および破壊応力)を維持して90℃まで、好ましくは100℃までの範囲の温度に耐えられなくてはならず、またこれらの性能が周囲温度(23℃)での性能に対して30%、特に最大でも25%を超えて低下しないことが好ましい。
【0046】
このようなガラス転移温度を実現するために、好ましくは芳香族および/または脂環式構造に基づく、即ち芳香族および/または脂環式構造を含み、とりわけ芳香族および/または脂環式構造を含むこれ自体の単位を少なくとも25mol%含む(有する)熱可塑性ポリマーが用いられる。この場合、本発明のこの定義によれば、状況に応じて「芳香族および/または脂環式構造に基づく」熱可塑性ポリマー(即ち、芳香族および/または脂環式構造を含む)または「芳香族構造に基づく」ポリマーまたは「脂環式構造に基づく」ポリマーに言及する。「半芳香族」または「半脂環式」ポリマーの「同等な」用語が、本発明のために同じ意味で用いられることもある。この定義は本発明のプレポリマーP(X)
nについても有効であり、これは定義上、本発明による複合材の熱可塑性マトリックスの上記熱可塑性ポリマーのプレポリマーである。
【0047】
とりわけ、上記プレポリマーP(X)
nは、以下の通りn、XおよびPに対応する。
【0048】
・n=1から3であり、1または2が好ましく、n=2がより好ましく、
・XはOH、NH
2またはCOOHから選択される反応性官能基であり、アミン(NH
2)またはカルボキシル(COOH)が好ましく、
・上記鎖Pは、炭化水素分子鎖であるが、場合により置換された4、5または6個の炭素原子の環を特に少なくとも1つ含む脂環式および/または芳香族構造(または上で説明の通り半脂環式および/または半芳香族構造として定義することもできる。)が含まれる。これは、上記プレポリマーの分子鎖Pが脂環式および/または芳香族構造の繰り返し単位を有し、または含み、また場合により置換された4、5または6個の炭素原子の環を特に少なくとも1つ含むことを意味する。
【0049】
(熱可塑性マトリックスの)熱可塑性ポリマーはポリアミド、ポリエステル、これらのコポリマー、例えばポリアミド−ポリエーテルコポリマーおよびこれらの混合物から選択され、熱可塑性ポリマーはポリアミドであることが好ましい。
【0050】
プレポリマーP(X)
nは、ポリアミドプレポリマー、コポリアミドプレポリマー、ポリエステルプレポリマー、コポリエステルプレポリマー、ポリアミド−ポリエーテルコポリマープレポリマー、ポリアミド−ポリエステルコポリマープレポリマーおよびこれらの混合物(プレポリマー混合物)から選択することができる。
【0051】
とりわけ、熱可塑性マトリックスの熱可塑性ポリマーは、本発明に従って用いられる対応するプレポリマーP(X)
nと同様、半芳香族および/または半脂環式構造をしている。
【0052】
本発明の方法において、上述の通り、好ましいプレポリマーはポリアミドプレポリマーP(X)
nであり、好ましくは芳香族および/または脂環式(または半芳香族および/または半脂環式とも表される)構造に基づいており(または、含み)、このプレポリマーは、
−少なくとも1つの直鎖または分岐鎖脂肪族ジアミンと、少なくとも1つの場合により置換された4、5または6個の炭素原子を有する環を少なくとも1つ含む芳香族および/もしくは脂環式ジカルボン酸との重縮合、ならびに/または
−少なくとも1つの脂環式ジアミンと少なくとも1つの直鎖もしくは分岐鎖脂肪族、脂環式または芳香族ジカルボン酸との重縮合から、
−場合によりラクタム、アミノカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの化学量論的組み合わせから選択される少なくとも1つの化合物の存在下で得られる。
【0053】
とりわけ、上で定義した式P(X)
nに対応するポリアミド(またはコポリアミド)プレポリマーの適した例として、以下で説明する場合を挙げることができる。
【0054】
反応性官能基X=NH
2を含むポリアミド(またはコポリアミド)プレポリマーであって、芳香族および/または脂環式構造に基づいており、本発明によるTgの特性を満たし、また例えば、以下から得ることができ、
・イソ−およびテレフタル酸、2,6−、1,5−または2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシビフェニルまたはフランジカルボン酸などの芳香族二酸
・脂肪族二酸、例えばアジピン酸、セバシン酸または1,12−ドデカン二酸などの直鎖または分岐鎖C
4−C
24脂肪族二酸、ただし、脂環式ジアミンまたは芳香族または脂環式二酸が存在するものとする
・シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸またはシクロブタン−1,3−ジカルボン酸などの脂環式二酸
・脂環式ジアミン、例えばビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)または2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)
・脂肪族ジアミン、例えば1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,19−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミンなどの直鎖または分岐鎖C
2−C
24脂肪族ジアミン、ただし、芳香族および場合により脂環式ジカルボン酸(もしくは無水物)または脂環式ジアミンが存在するものとする
・ラクタム、例えばカプロラクタムまたはドデカラクタムなどのC
5−C
14ラクタム、ただし、他の芳香族および場合により脂環式共反応体が存在するものとする
・アミノ酸、例えば11−アミノウンデカン酸などのC
5−C
14アミノ酸、ただし、他の芳香族および場合により脂環式共反応体が存在するものとし、
アミンが過剰になるのに必要な[COOH]/[NH
2]比であり、この過剰量は上記プレポリマーのために目標とするMnの関数として調整が可能であるポリアミドプレポリマー。
【0055】
(芳香族および/または脂環式構造に基づく)上記の構造と同じ反応性官能基X=COOHを含むポリアミド(またはコポリアミド)プレポリマーは、本発明によるTgの特性を満たし、前述のようにX=NH
2を備えるプレポリマー用と同じ成分から得ることができるが、NH
2に対して過剰なCOOHをここでは使用するという違いがある。
【0056】
本発明に適したカルボキシル化ポリアミドプレポリマーのより詳細な例として、本出願会社による出願EP0581642において文献Vにより引用されているジカルボキシル化オリゴアミドを挙げることができるが、これはMnが3000で、テレフタル酸(T)、イソフタル酸(I)、ラクタム−12(L12)およびビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)からモル比率:T/I/L12/BMACM:3.6/2.4/5/5で得られる。
【0057】
このようなカルボキシル化プレポリマーは、ビスオキサゾリンに関する引用文献Aならびにビスオキサジンに関する文献B、CおよびDにより同じ特許出願中で説明されている鎖延長剤、または本出願会社による出願EP0739924においてビスイミダゾリンに関する文献AからFにより説明されている鎖延長剤を用いる、本発明による重合に適している。
【0058】
官能基X=NH
2を含むポリアミドプレポリマーを得るためには、前述の成分と同じ成分を持つカルボン酸官能基に対してアミン官能基が過剰であれば十分である。このようなプレポリマーのさらに具体的な例として、本出願会社による出願EP0581641の9ページに記載の(芳香族または半芳香族構造に基づく)文献IVにより引用されたモル比率T/I/L12/BMACM:3/2/2.5/6のオリゴアミドを挙げることができる。
【0059】
末端官能基がX=ヒドロキシル(OH)のポリアミドプレポリマーを得るために、カルボキシル末端官能基と過剰なジオールとの反応により、前述のポリアミドプレポリマーの末端官能基X=カルボキシルを改変することができる。官能価n=1のプレポリマーを得る目的で、鎖の末端の1つをブロックするために、共反応体として単官能基の共反応体(モノアミンまたは一酸)を用いることができる。
【0060】
このようなアミノ化またはヒドロキシル化プレポリマーは、出願EP0581641中に、ビスオキサゾリノンに関しては文献AおよびB(7ページ)、ビスオキサジノンに関しては文献CおよびD(8ページ)により説明されている鎖延長剤を用いる本発明による重合に適している。
【0061】
プレポリマーがポリエステルまたはコポリエステルプレポリマーのとき、後者は以下から得られることが好ましい。
【0062】
−上述の芳香族および/もしくは脂環式ジエステル、またはジカルボン酸および/もしくは無水物、および
−シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール、
−脂肪族ジオール:エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールまたはトリエチレングリコールなど、
−上述の脂肪族ジカルボン酸および/もしくは無水物、ただし、芳香族および場合により脂環式ジエステルならびに/またはジカルボン酸および/もしくは無水物ならびに脂環式ジオールが存在するものとする。
【0063】
これらのポリエステルプレポリマーについて、末端官能基X=カルボキシル(COOH)を得るために、OHに対してカルボキシル官能基を過剰に用いることができる。末端官能基X=OHを得るために、カルボキシル官能基に対してOH官能基を過剰に用いる。過剰量は目標とするMn分子量の関数として調整される。
【0064】
プレポリマーP(X)
nをn=3で、例えばX=アミンのポリアミドを得るためには、例えば反応混合物中に、二官能基のジアミンおよび二酸またはラクタム成分に加えて三官能基のアミンを有する必要がある。
【0065】
とりわけ、上で定義した式P(X)
nに対応するポリエステルまたはコポリエステルプレポリマーとして、以下を挙げることができる。
【0066】
−反応性官能基X=OHを含む半芳香族構造のポリエステル(またはコポリエステル)プレポリマー、これは芳香族二酸および/または酸無水物および/またはジエステルおよび過剰なジオールから得られ、ジオールはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールまたはトリエチレングリコールなどの直鎖または分岐鎖C
2−C
24脂肪族ジオールであり、また上記芳香族および場合により脂環式二酸および/または酸無水物および/またはジエステルは、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸またはテトラヒドロフタル酸/無水物およびジメチルテレフタレートもしくはジメチルイソフタレートからの芳香族ジエステルから選択される。
−反応性官能基X=COOHを含む半芳香族構造のポリエステル(またはコポリエステル)プレポリマー、例えば、無水フタル酸および前述のものなどの過剰な二酸および/または酸無水物、ならびに直鎖または分岐鎖C
2−C
24脂肪族ジオールなどのジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールまたはトリエチレングリコールから得られる。
【0067】
ポリアミド−ポリエーテルコポリマーに基づくプレポリマーP(X)
nの例として、官能基X=COOHを担持するポリアミド−ポリエーテルシーケンシャルコポリマー、とりわけポリアミド−ポリエーテル−ポリアミドトリシーケンシャルコポリマーを挙げることができ、これはポリアミドオリゴマーとX=COOHとの反応により得られ、このX=COOHはヒドロキシル(OH)末端を含むポリエーテルオリゴマーと反応し、上記ポリアミドはOH1個当たりおよそ2個のカルボキシル(ポリエーテル1つ当たりポリアミド鎖2つ)の比で過剰である。類似の、ただしポリアミドの代わりにポリエステルを備えたプレポリマーP(X)
nは、カルボキシル化ポリアミドをカルボキシル化ポリエステルで置き換えることにより可能である。
【0068】
同じように、本発明に適したプレポリマーP(X)
nは、上記繊維へ含浸させる温度において溶融粘度は100Pa.s未満、好ましくは50Pa.s以下のままであるように、上記前駆体組成物中の上記延長剤との混合物として有利な溶融粘度を示す。
【0069】
溶融状態のプレポリマーおよび鎖延長剤を含む混合物の粘度または前駆体組成物の溶融粘度は、繊維の上記集合体の含浸の条件下で、上に示した範囲内にとどまる。含浸温度は通常、上記プレポリマーおよび上記鎖延長剤の融点よりも高く、融点がない場合は、これらのガラス転移温度よりも高い。
【0070】
このような分子量および/または粘度範囲は、合成補強繊維への最適な含浸が得られるように選択される。
【0071】
上記プレポリマーにより担持されるX官能基に対する、鎖延長剤の具体的な選択により、より具体的な好ましい本発明による方法が以下のように定義される:
− XがNH
2またはOH、好ましくはNH
2のとき、
○鎖延長剤Y−A−Yは以下:
・Yは、マレイミド、イソシアネート、場合によりブロック化イソシアネート、オキサジノンおよびオキサゾリノン、好ましくはオキサジノンおよびオキサゾリノンの基から選択され
および
・Aは、反応基または官能基Yを担持する炭素ベースのスペーサーまたは炭素ベースの基であり、Aは以下:
・Y=オキサジノンまたはオキサゾリノンの場合、2つのY官能基(基)の間の共有結合、または
・脂肪族炭化水素鎖または芳香族および/または脂環式炭化水素鎖であり、後者の2つは場合により置換された5または6個の炭素原子の環を少なくとも1つ含み、上記脂肪族炭化水素鎖は好ましくは14から200の分子量を有する、
から選択される、
に対応するか、
○または鎖延長剤Y−A−Yは、Y基としてカプロラクタムを有し、Aはカルボニルビスカプロラクタムなどのカルボニルでもよく、またはAはテレフタロイルまたはイソフタロイルでもよい、
○または上記鎖延長剤は環状無水物基であるYに対応し、これは上記延長剤が2個の環状無水物基Yを担持または含むことを意味し、この延長剤は芳香族および/または脂環式ジカルボン酸無水物から選択され、より好ましくは、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンビスフタル酸二無水物、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物またはこれらの混合物から選択され、
− ならびに、XがCOOHのとき、
○鎖延長剤Y−A−Yは以下:
・Yは、1,1’−イソフタロイルビス(2−メチルアジリジン)またはテレフタロイルを持つ同等のアジリジンなどのオキサゾリン、オキサジン、イミダゾリンおよびアジリジンの基から選択され、
および
・Aは、上で定義した炭素ベースのスペーサー(基)であり、オキサゾリン、オキサジンおよびイミダゾリンの場合、2個の基の間の共有単結合であってもよい
に対応する。
【0072】
とりわけ、Yがオキサジノン、オキサゾリノン、オキサジン、オキサゾリンまたはイミダゾリンから選択されるとき、この場合、Y−A−Yにより表される鎖延長剤において、Aは−(CH
2)
m−などのアルキレンを表すことができ、ここでmは1から14、好ましくは2から10の範囲であり、また、Aはベンゼン系アリーレンなどの(アルキル)置換または非置換のシクロアルキレンおよび/またはアリーレン、例えばo−、m−もしくはp−フェニレン、またはナフタレン系アリーレンも表すことができ、Aはアリーレンおよび/またはシクロアルキレンであることが好ましい。
【0073】
鎖延長剤Y−A−Yとして、カルボニル−またはテレフタロイル−またはイソフタロイルビスカプロラクタムの場合、好ましい条件により、溶融状態での上記重合および加工の間、カプロラクタムなどの副生成物を除去しなくてもよくなる。
【0074】
Yが前述の通りブロック化イソシアネート官能基を表す場合において、このブロッキングは、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトキシム、ジメチルピラゾールまたはジエチルマロネートなど、イソシアネート官能基に対するブロッキング剤を用いて得ることができる。
【0075】
同じく延長剤が、X=NH
2であるプレポリマーP(X)
nと反応する二無水物の場合、好ましい条件により、溶融状態での重合の間および加工の間、イミド環のどのような生成も防ぐことができる。
【0076】
X=OHまたはNH
2に対してY基は、スペーサー(基)として上で定義したAと共に、イソシアネート(非ブロック化)、オキサジノンおよびオキサゾリノンから選択されることが好ましく、オキサジノンおよびオキサゾリノンがより好ましい。
【0077】
本発明による方法の実施に適したオキサゾリンまたはオキサジン反応性官能基Yを持つ鎖延長剤の例として本出願会社による出願EP0581642の7ページに記載の文献A、B、CおよびDにより説明されているもの、ならびにこの中に記載されたこれらの調製方法およびこれらの反応モードも参照することができる。Aはビスオキサゾリン、Bはビスオキサジン、Cは1,3−フェニレンビスオキサゾリンおよびDは1,4−フェニレンビスオキサゾリンである。
【0078】
本発明による方法の実施に適したイミダゾリン反応性官能基Yを含む鎖延長剤の例として、本出願会社による出願EP0739924の7から8ページおよび10ページの表1に記載されたもの(AからF)、ならびにこの中に記載されたこれらの調製方法およびこれらの反応モードも参照することができる。
【0079】
本発明による方法の実施に適した反応性官能基Y=オキサジノンまたはオキサゾリノンを含む鎖延長剤の例として、本出願会社による出願EP0581641において文献AからDへの参照または7から8ページに記載されているもの、ならびにこの中に記載されたこれらの調製方法および反応モードを参照することができる。
【0080】
適したオキサジノン(6個の原子を含む環)およびオキサゾリノン(5個の原子を含む環)Y基の例として、ベンゾオキサジノン、オキサジノンまたはオキサゾリノンから誘導されたY基を挙げることができ、スペーサーとしてAは、ビス(ベンゾオキサジノン)、ビスオキサジノンおよびビスオキサゾリノンであるそれぞれ対応する延長剤に対して共有単結合でもよい。
【0081】
またAは、C
1−C
14アルキレン、好ましくはC
2−C
10アルキレンであってもよく、ただしAは好ましくはアリーレンであり、とりわけ(1,2−または1,3−または1,4−がYで置換された)フェニレンもしくは(Yで二置換された)ナフタレン基もしくはフタロイル(イソ−またはテレフタロイル)でもよく、またはAはシクロアルキレンでもよい。
【0082】
オキサジン(六員環)、オキサゾリン(五員環)およびイミダゾリン(五員環)としてのY官能基に対し、A基については上述の通り、Aが共有単結合でもよく、それぞれ対応する延長剤はビスオキサジン、ビスオキサゾリンおよびビスイミダゾリンである。Aはまた、C
1−C
14アルキレンでもよく、C
2−C
10アルキレンが好ましい。A基は好ましくはアリーレンであり、とりわけ(1,2−または1,3−または1,4−がYで置換された)フェニレンもしくは(Yで二置換された)ナフタレン基もしくはフタロイル(イソ−またはテレフタロイル)でもよく、またはAはシクロアルキレンでもよい。
【0083】
Y=アジリジン(エーテル−O−が−NH−で置き換わったエチレンオキシドと同等の3個の原子を含む窒素複素環)の場合、A基は、延長剤の例として1,1’−イソフタロイルビス(2−メチルアジリジン)と共に、フタロイル(1,1’−イソ−またはテレフタロイル)でもよい。
【0084】
述べた2つの共反応体の全重量に対して含有量の範囲が0.001%から2%、好ましくは0.01%から0.5%の延長剤Y−A−YとプレポリマーP(X)
nとの間の反応の触媒が存在すると、(重)付加反応を速め、従って生産サイクルを短くすることができる。このような触媒は、4,4’−ジメチルアミノピリジン、p−トルエンスルホン酸、リン酸、NaOHおよび場合によりEP0425341の9ページ、1から7行目に記載されている重縮合またはエステル交換のためのものから選択できる。
【0085】
上記延長剤の選択における先の場合のさらに具体的な場合によれば、Aは−(CH
2)
m−などのアルキレンを表すことができ、ここでmは1から14、好ましくは2から10の範囲であり、または(o−、m−またはp−フェニレンなどの)ベンゼン系アリーレンもしくはナフタレン系アリーレン(アリーレンの場合:ナフチレン)などのアルキル置換または非置換アリーレンを表す。好ましくは、Aはベンゼン系またはナフテン系でもよい置換または非置換アリーレンを表す。
【0086】
上述の本発明による方法のさらに選択的な選択によれば、上記熱可塑性ポリマーは(芳香族構造に基づく)半芳香族および/または(脂環式構造に基づく)半脂環式ポリアミド、好ましくは(芳香族構造に基づく)半芳香族ポリアミド、ホモポリアミド(ホモポリマー)またはコポリアミド(ポリアミドコポリマー)、とりわけ以下の式の1つに対応するものである。
【0087】
−以下からのポリアミド:8.T、9.T、10.T、11.T、12.T、6.T/9.T、9.T/10.T、9.T/11.T、9.T/12.T、9/6.T、10/6.T、11/6.T、12/6.T、10/9.T、10/10.T、10/11.T、10/12.T、11/9.T、11/10.T、11/11.T、11/12.T、12/9.T、12/10.T、12/11.T、12/12.T、6.10/6.T、6.12/6.T、9.10/6.T、9.12/6.T、10.10/6.T、10.12/6.T、6.10/9.T、6.12/9.T、9.10/9.T、9.12/9.T、10.10/9.T 10.12/9.T、6.10/10.T、6.12/10.T、9.10/10.T、9.12/10.T、10.10/10.T、10.12/10.T、6.10/12.T、6.12/12.T、9.10/12.T、9.12/12.T、10.10/12.T、11/6.T/9.T、11/6.T/10.T、11/6.T/11.T、11/6.T/12.T、11/9.T/10.T、11/9.T/11.T、11/9.T/12.T、11/10.T/11.T、11/10.T/12.T、11/11.T/12.T、6.T/10.T、6.T/11.T、6.T/12.T、10.T/11.T、10.T/12.T、11.T/12.T、12/6.T/10.T、12/6.T/11.T、12/6.T/12.T、12/9.T/10.T、12/9.T/11.T、12/9.T/12.T、12/10.T/11.T、12/10.T/12.T、12/11.T/12.T。
【0088】
−先のターポリマーポリアミドであって、12/を9/、10/、6.10/、6.12/、10.10/、10.12/、9.10/および9.12/で置き換えたもの。
【0089】
−前述のすべてのポリアミドであって、テレフタル酸(T)が部分的または完全にイソフタル酸(I)、ナフタレン−2,6−ジカルボンおよび/または1,3−または1,4−CHDA(シクロヘキサンジカルボン酸)で置き換えられたものであり、脂肪族ジアミンのすべてまたは一部が脂環式ジアミンで置き換えられてもよい。
【0090】
−前述のすべてのポリアミドであって、C
6−C
12脂肪族ジアミンがBMACM、BACMおよび/またはIPDAからの脂環式ジアミンで置き換えられたものであり、芳香族二酸Tのすべてまたは一部が直鎖または分岐鎖C
6−C
18脂肪族二酸で置き換えられたもの。
【0091】
「以下の式の1つに対応する」という用語は、延長剤から生じる限られた数の単位(上記プレポリマーの鎖間の延長または結合単位)が最終的なポリマー鎖内に取り込まれるのにもかかわらず、上で定義した本発明による上記ポリアミドプレポリマーと上記前駆体組成物の上記延長剤との間の(重)付加によるバルク重合の結果生じるポリアミドの最終的な熱可塑性ポリマーが上記プレポリマー、実際のところ述べた対応するポリアミドのプレポリマー、と同じ主要な繰り返し単位を有することを意味する。
【0092】
とりわけ、本発明の方法における熱可塑性ポリマーは融点温度Tmおよび結晶化温度Tcを有する半結晶性ポリアミドである。これらの温度はガラス転移温度と同様、規格ISO11357−3に従って測定されるTmおよびTcに対してDSCにより測定される。
【0093】
上記熱可塑性ポリマーは非晶性または半結晶性でもよい。とりわけ、上記ポリマーは非晶性または半結晶性ポリアミドである。本発明の特定の形態によれば、このポリマーは半結晶性である。
【0094】
芳香族および/または脂環式構造に基づくポリアミドの先のリストにおいて、イソフタル酸または1,3−CHDA二酸および脂環式ジアミンを含む単位のモル含有量を減らすことにより、ならびにテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および1,4−CHDA二酸の含有量を増やすことにより、Tgに影響を与えることなく非晶性ポリアミドから半結晶性ポリアミドへ進むことができる。
【0095】
半結晶性ポリアミドの一般的な例として、脂肪族ジアミン、例えばC
10またはC
6脂肪族ジアミンと組み合わせたテレフタル酸の構造に基づくポリアミドを挙げることができる。イソフタル酸または1,3−CHDA構造を付加することにより、Tgに影響を与えることなくTm(結晶性)を下げることができる。Tgは、これを上げるために脂環式もしくはアリール脂肪族ジアミンを存在させることにより、またはこれを下げるためにアミノ酸、脂肪族二酸および脂肪族ジアミンを存在させることにより調整することができる。Tmは結晶単位(10.Tまたは6.T)の選択により、および続く共重合により調整することができる。一般に、芳香族および場合により脂環式単位がより多く存在するほど、Tgは高くなり、半結晶性ポリマーの場合はTmが高くなる。
【0096】
とりわけ、上記熱可塑性ポリマーのTmは200から320℃にわたる範囲内にあり、200から300℃が好ましく、240から300℃がより好ましい。半結晶性熱可塑性ポリマーを用いる利点は、このポリマーの非晶領域内の結晶領域によりポリマーの非晶ドメインが強化され、高温条件下での機械的強度、特に破壊応力、とりわけクリープ強度が向上することにある。
【0097】
さらに具体的には、上記熱可塑性ポリマーが半結晶性ポリアミドである好ましい場合において、このポリマーは融点温度Tmおよび結晶化温度Tcを有する。この場合、上記ポリアミドの融点温度Tmとこの結晶化温度Tcとの差は特に100℃未満であり、80℃以下が好ましく、50℃未満がより好ましい。このような熱可塑性ポリマーを選択すると、Tc未満の温度(まで冷却することにより、この温度)で複合材料を型から容易に取り外せるようになる。
【0098】
また、熱可塑性ポリマーは非晶性でもよく、とりわけ非晶性ポリアミドでもよい。この場合、例えば、脂肪族二酸と組み合わせた脂環式もしくはアリール脂肪族ジアミンから誘導された構造または脂肪族ジアミンと組み合わせたイソフタル酸から誘導された構造に基づくポリアミドから選択される。Tgはイソフタル酸および脂環式単位が存在すると高くなり、脂肪族単位が存在すると低くなる。本発明に適した非晶性ポリアミドの例として、ポリアミド構造の中の酸として、融点がなくなるまでテレフタル酸(T)がイソフタル酸(I)で置き換えられた先のポリアミドを挙げることができる。
【0099】
本発明の方法に適した非晶性ポリアミド(非晶性とはDSCにより測定できる融点がなくなっていることを意味する。)の例として、例えば、ホモポリアミドまたはコポリアミドを挙げることができ、例えば、以下の式の1つに対応する。
【0100】
−BMACM.T、BMACM.I、BMACM.6、BMACM.10、BMACM.12、BMACM.14、BMACM.1,4−CHDAまたは、これらの式において、BMACMのすべてもしくは一部をIPDAもしくはこれらの組成物の組み合わせで置き換えたもの、および/または11、12、6.10、6.12、9.10、9.12、10.10、10.12構造を付加したもの、
ここで
BMACM:ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン
BACM:ビス(アミノシクロヘキシル)メタン
IPDA:イソホロンジアミン、である。
【0101】
熱可塑性ポリマーが熱可塑性ポリマー、例えばポリアミドおよびポリエステルの混合物であるとき、材料に良好な機械的強度を持たせるために関与するポリマー、例えばポリアミドおよびポリエステルは相溶性があることが好ましい。通常2種類のポリマーは、それぞれ2つのTg値に対して中間のTgである混合物のガラス転移温度Tgを備え、一様な機械的強度を示す材料が得られるように混合できる場合に「相溶性がある」と言われ、中間のTgはFoxの関係から計算することができる。
【0102】
本発明の意味において、ポリアミドおよびポリエステルの「混合物」はもちろん、ポリアミド−ポリエステルコポリマーおよびポリアミドの混合物またはポリアミド−ポリエステルコポリマーおよびポリエステルの混合物も意味することもある。混合物に対する2つの候補のポリマー間の相溶性の問題を克服するために、混合物に対する2つの候補のポリマーに基づくコポリマーが存在する必要があることもある。
【0103】
本発明による複合材料を製造するための方法によれば、補強繊維の上記集合体へ含浸する熱可塑性ポリマーは、a)熱可塑性ポリマーのプレポリマーを含む前駆体組成物内で、b)上で定義した本発明による鎖延長剤を伴って、重合段階ii)の間にバルク付加反応によって生成される。完成した(最終的な)マトリックスの熱可塑性ポリマーは、段階ii)の重合反応が完全で部分的でない場合に得られるものに対応する。例えばこれは、段階iii)において成形により複合材料を最終的に加工した後、さらに必要であれば場合によりアニーリング段階の後に得られるポリマーに対応する。
【0104】
上述の本発明の方法に関与する合成補強繊維に関して、これらは長繊維であることが好ましく、これは本発明によれば、形状係数>1000(即ち、繊維の直径に対する長さの比)を有することを意味する。この繊維は、織物(2D)、ラップ、ストリップもしくは編組など、不織布など、または一方向強化材(UD)など、連続していてもよい。またこの繊維は切断されて、例えば不織布(マット)の形態またはフェルトの形態であってもよい。
【0105】
これらの合成補強繊維は以下から選択できる。
【0106】
−無機繊維であって、上記ポリマーのTgより高く(非晶性ポリマーの場合)または融点温度Tmより高く(半結晶性ポリマーの場合)、また重合および加工温度よりも高い融点温度Tm’を有する。この温度は最高2050℃でもよい。
【0107】
−ポリマー繊維であって、ただし、重合温度より高い(即ち非晶性の場合、複合材のマトリックスのTgより高く、半結晶性の場合、このマトリックスの融点Tmより高く、また加工温度より高い)融点Tm’またはTm’がない場合はガラス転移温度Tg’を有するものとする。重合温度が、340℃に相当する前述の範囲の上限内にある場合、Tm’は350℃より高いことが好ましい。
【0108】
−または前述の繊維の混合物。
【0109】
本発明に適した無機繊維として以下を挙げることができる。炭素繊維(カーボンナノチューブ(CNT)繊維、カーボンナノファイバーもしくはグラフェンを含む);ガラス繊維(特にE、RまたはS2タイプ)などのシリカ繊維;ボロン繊維;セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維もしくはバサルト繊維;金属および/もしくはこれらの合金に基づく繊維もしくはフィラメント;金属酸化物、特にアルミナ(Al
2O
3)の繊維;金属化ガラス繊維および金属化炭素繊維などの金属化繊維;または前述の繊維の混合物。
【0110】
とりわけ、これらの合成繊維は以下の通り選択することができる。
【0111】
−以下から選択することができる無機繊維:炭素繊維、カーボンナノチューブ繊維、ガラス繊維(特にE、RもしくはS2タイプ)、ボロン繊維、セラミック繊維(特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維もしくはバサルト繊維)、金属および/もしくはこれらの合金に基づく繊維もしくはフィラメント、Al
2O
3などの金属酸化物に基づく繊維、金属化ガラス繊維および金属化炭素繊維などの金属化繊維、または前述の繊維の混合物、および
−前述の条件下で、以下から選択することができるポリマー繊維:
・とりわけ以下から選択される熱硬化性ポリマーの繊維:不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレートおよびビスマレイミド樹脂などのポリイミド、メラミンなどのアミンとグリオキサールまたはホルムアルデヒドなどのアルデヒドとの反応の結果生じるアミノプラスト。
・とりわけ以下から選択される熱可塑性ポリマーの繊維:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PET)、ポリプロピレン(PP)およびPET/PPコポリマーなどの高密度ポリオレフィンまたはPVOH(ポリビニルアルコール)。
・以下の式のうちの1つに対応するポリアミドの繊維。6、11、12、6.10、6.12、6.6、4.6。
・アラミドの繊維(Kevlar(登録商標)など)および以下の式のうちの1つに対応するような芳香族ポリアミド:PPD.T、MPD.I、PAAおよびPPA。ここでPPDおよびMPDはそれぞれp−およびm−フェニレンジアミン、PAAはポリアリールアミドならびにPPAはポリフタルアミドである。
・ポリアミド/ポリエーテルなどのポリアミドのブロックコポリマーの繊維またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)もしくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などのポリアリールエーテルケトン(PAEK)の繊維。
【0112】
好ましい合成補強繊維は以下から選択される長繊維である。金属化炭素繊維を含む炭素繊維、金属化ガラス繊維を含むE、RまたはS2タイプのガラス繊維、アラミド(Kevlar(登録商標)など)もしくは芳香族ポリアミドの繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)もしくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などのポリアリールエーテルケトン(PAEK)の繊維またはこれらの混合物。
【0113】
とりわけ好ましい繊維は以下から選択される。ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド(Kevlar(登録商標)など)繊維またはこれらの混合物。
【0114】
上述の通りの本発明の上記方法に関与する繊維の集合体は、織物などの連続した繊維の集合体またはフェルトおよび織地などの短繊維の集合体でもよく、ストリップ、ラップ、編組、タフトまたは片の形態で提供することができる。本発明の1つの実施形態によれば繊維の集合体とは上記複合材料の含有量が体積で40%から70%であることを表し、体積で50%から65%であることが好ましい。繊維の上記集合体はランダム(マット)、一方向(UD)または多方向(2D、3Dまたはその他)でもよい。この坪量、即ちこの1平方メートル当たりの重量は100から1000g/m
2の範囲でもよく、200から700g/m
2が好ましい。
【0115】
前述の繊維の集合体に加えて、本発明により製造された複合材料は、繊維の上記集合体または繊維集合体に含浸する熱可塑性ポリマー中に分散した状態の充填材を含んでもよい。これらは複合材の分野において当業者に周知のどのような充填材でもよい。これらは特に金属粉末、粉末カーボンブラック、炭素フィブリル、カーボンナノチューブ(CNT)、炭化ケイ素、炭窒化ホウ素、窒化ホウ素または窒化ケイ素など、伝導性の充填材でもよい。この問題に関しては、本出願会社による出願WO2010/130930を参照することができる。
【0116】
上記繊維材料中のこれらの充填材は例えば、重量で熱可塑性ポリマーの0.1%から30%となってもよく、重量で0.3%から5%が好ましい。
【0117】
本発明によれば、方法には上記複合材料に対して第1の含浸段階i)、第2の重合段階ii)および第3の最終加工段階iii)が含まれる。この加工は、以下から選択されるさまざまな技術により行うことができる。プルトルージョン、フィラメントワインディング、熱圧縮、インフュージョン成形、樹脂注入成形法(RTM)、構造反応射出成形(S−RIM)または射出/圧縮成形。特定の密閉型の技術はRTMまたはS−RIMまたは射出/圧縮成形である。
【0118】
本発明による上記複合材料の製造のための方法の代替形態によれば、段階ii)の重合は場合により加工段階iii)の後に、上記の最終的な複合材料のアニーリングを含む別の最終的な段階によって完了させる。従ってこの反応が加工の間の部分的なものにすぎない場合、このアニーリング段階により、重付加による重合のための反応を完了することができる。部分的または不完全なこの重合の場合、加工段階ii)の後に得られる複合材料は固体であり、別の処理段階においてこれをアニーリングする際に取り扱い上の問題は発生しない。
【0119】
加工iii)に対して含浸段階i)を物理的および経時的に実施するための条件に応じて、さまざまなシナリオおよび適用可能な対応する加工技術を区別することができる。
【0120】
方法の第1の可能性によれば、含浸段階i)は上記複合材の最終的な加工用の型の中で行われる。さらに具体的には、これはRTM、S−RIMまたはインフュージョン成形または射出/圧縮成形などの密閉型の加工段階を用いる方法の場合である。とりわけこの可能性によれば、上記含浸段階i)には繊維の上記集合体の上に溶融状態の上記前駆体組成物をダイレクト・トランスファーすることを含むことができ、繊維の上記集合体は上記加工型内に事前に配置された繊維のプリフォームであることが好ましい。
【0121】
上記ダイレクト・トランスファーは、押出スクリュー内で上記延長剤を加えて溶融状態で上記プレポリマーを押し出しすることにより行うことができ、上記延長剤はミキサーにより押出機の下流で加えることが好ましい。
【0122】
上述の上記方法を実施するこの第1の可能性によれば、上記加工段階iii)は、密閉型の中で樹脂注入成形法(RTM)、構造反応射出成形(S−RIM)またはインフュージョン成形または射出/圧縮成形を用いて行われる。
【0123】
さらに具体的な可能性によれば、含浸段階i)は重合段階ii)および最終加工段階iii)から時間的に分離される。これは、含浸が重合の前に、特にここでは加工型の中で行われることを意味する。とりわけ上記方法において、重合段階ii)および加工段階iii)は同時でもよい。
【0124】
本発明による方法の別の可能性によれば、上記加工段階iii)は(整形)加熱ダイを通じたプルトルージョンなどによるオープンモールド内で行うことができ、場合によりAFP(自動繊維配置)技術または熱圧縮により得られるUDバンドを特に重ね合わせることにより得られる半完成品をさらに加工することを伴う。
【0125】
レーザー加熱モードを用いて複合材バンドを互いに溶着する自動繊維配置(AFP)技術の場合、特に複合材バンドがガラス繊維または炭素繊維、好ましくはガラス繊維に基づいているとき、上記前駆体組成物はレーザー(特にUVまたはIRレーザー)の波長で吸収する特定の添加剤を含んでもよい。
【0126】
本発明の方法の別の代替形態によれば、含浸段階i)は上記複合材の最終的な加工用の型の外で行われる。この方法によれば、溶融段階における含浸の上記段階i)には粉末(固体)状態の上記前駆体組成物を繊維の上記集合体に散布する予備段階、続いて上記粉末を加熱および溶融する段階、および場合によりカレンダリング段階が含まれ、従って重合段階ii)および最終加工段階iii)の前に中間生成物として予備含浸繊維材料を得ることができる。
【0127】
本発明によるこの方法の同等の代替形態によれば、溶融状態における含浸i)の上記段階には、流動床内で繊維の上記集合体に上記前駆体組成物の粉末をコーティングする段階、続いて上記粉末の加熱および溶融を含んでもよく、従って重合段階ii)および最終加工段階iii)の前に中間生成物として予備含浸繊維材料を得ることができる。
【0128】
これらの2つの代替の方法形態によれば、予備含浸繊維材料は含浸段階i)に含まれる中間生成物として得られる。この方法において、重合段階ii)および加工段階iii)は、上記の最終的な複合材料を得るために加工される出発材料(原料)として上記予備含浸繊維材料を用いることにより行われる。
【0129】
この場合、加工段階iii)は上記含浸段階i)から生じる予備含浸繊維材料を少なくとも1つ、特に熱圧縮またはラミネーションすることにより、特にUD織物、2D織物または不織布などの繊維の集合体に基づく上記プリプレグを用いて行うことができ、この段階は場合により熱成形または打ち抜きによる最終的な整形によって完了する。打ち抜きはプリプレグを予熱した後、低温条件下で行われる。
【0130】
本発明によるさらに具体的な方法の場合によれば、上記加工段階iii)には、成形プリフォーム上への上記含浸段階i)から生じる予備含浸繊維材料を少なくとも2つ、少なくとも部分的に重ね合わされるようにずらして所望の厚さが得られるまで配置することを含む。
【0131】
また、予備含浸集合体(または予備含浸繊維材料)は、後にRTM、インフュージョンまたはSRIM成形方法において、または熱圧縮により用いることができるプリフォームを生産するために、熱圧縮により整形することもできる。
【0132】
熱可塑性マトリックスポリマーが半結晶性である特定の場合において、上述の本発明による上記複合材料の製造のための上記方法には、上記ポリマー、とりわけポリアミドポリマーの結晶化温度Tcを下回る温度で上記複合材料を型から取り外す段階が含まれてもよい。
【0133】
本発明による上記複合材料を製造するための方法により、とりわけ成形またはプルトルージョンまたはフィラメントワインディングまたは自動繊維配置(AFP)により得られる複合材料を、機械または構造部品として、とりわけ以下の分野における用途向け複合材部品(機械または構造部品)として用いることが可能になる。航空、自動車産業、鉄道産業、陸上輸送、風力発電(特に風力タービン翼)、光起電力、水上スポーツを含むスポーツおよびレジャー、建設産業または土木工学、とりわけさらに以下から選択される複合材部品:補強異形材、艇体などの船体、サンドイッチパネルを含むパネル、自動車タンクなどの複合材タンク、オイルまたはガスのポンピング用および輸送用配管などの複合材パイプライン、中空体、航空機翼、航空機胴体、家屋内または船内のビームまたは間仕切り、手すり、スポイラ、自動車ハウジング、ブレーキディスク、作動シリンダーまたはステアリングホイール、自動車車体、鉄道車両、履物の底またはゴルフクラブ。
【0134】
また本発明は、本発明により上で定義した上記複合材料を製造するための方法を実施することが可能になる前駆体組成物(熱可塑性マトリックスの前駆体)も対象に含み、上記組成物にはa)プレポリマーP(X)
nが少なくとも1つ、およびb)鎖延長剤が少なくとも1つ含まれ、この鎖延長剤はY−A−Yで表され、上記プレポリマーおよび上記延長剤は本発明により上および下で定義した通りであって、熱可塑性ポリマーはバルク重付加反応により上記組成物から生じ、有するガラス転移温度が80℃以上、好ましくは100から200℃、より好ましくは110から200℃、さらにより好ましくは110℃から180℃未満、とりわけ120から170℃である。上記組成物は本発明による上記プレポリマーP(X)
nを押し出しした後に得られる顆粒の形態または微粉末の形態でもよく、本発明による上記延長剤は押出スクリュー内に、またはミキサーを用いて押出機の下流で加え、得られる混合物は上記粉末を得るために顆粒にされ、および微粉砕される。
【0135】
実際、この前駆体組成物は2つの成分:本発明により上で定義したa)プレポリマーおよびb)延長剤の混合物に基づく。
【0136】
この前駆体組成物には添加剤および充填材を含んでもよい。これらの充填材に関し、複合材の分野における当業者に周知のどのような充填材でもよい。これらは特に、金属粉末、粉末カーボンブラック、炭素フィブリル、カーボンナノチューブ(CNT)、炭化ケイ素、炭窒化ホウ素、窒化ホウ素または窒化ケイ素などの熱を伝える充填材および/または電気を伝える充填材でもよい。この問題に関しては、本出願会社による出願WO2010/130930を参照することができる。これらの充填材は重量で(最終的な)熱可塑性ポリマーの0.1%から30%となってもよく、重量で0.3%から15%が好ましい。添加剤に関し、前駆体組成物には、本発明の好ましい代替形態によれば、とりわけ、例えばUVまたはIRレーザーなどレーザーの波長で吸収が可能な特定の添加剤が含まれ、これによって、レーザー加熱モードを用いて複合材バンドを互いに溶着する場合に自動繊維配置(AFP)技術の使用が可能になり、これは特にガラス繊維および炭素繊維、好ましくはガラス繊維に基づく複合材バンドの場合にあてはまる。熱安定剤などの他の添加剤を前駆体組成物に加えることも可能であり、従って最終用途の部品内で用いられるものとして最終的な熱可塑性複合材料中に存在してもよく、これらの安定剤は特に熱可塑性マトリックスのポリマーの熱酸化および/または光酸化を抑える酸化防止剤である。上記酸化防止剤は立体障害フェノールおよび/または(HALSの慣用名で知られる)立体障害アミンタイプのものである。このような添加剤に適した例として以下を挙げることができる。CB粉末の形態または好ましくはCBおよびポリエチレン(PE)もしくはCBおよびポリアミド(PA)に基づくマスターバッチの形態のカーボンブラック(CB)、TiO
2(酸化チタン)、ZnO(酸化亜鉛)ならびにIRレーザーの場合、インジウムスズ酸化物(Evonikにより販売)ならびに前述の熱安定剤。およそ40%のCBを含むCB+PEマスターバッチの例として、BASFにより販売されているEuthylen(登録商標)を挙げることができる。およそ15%のCBを含むCB+PAマスターバッチの例として、Clarianceにより販売されているRenol(登録商標)Blackを挙げることができる。
【0137】
また本発明は、本発明の上記特定の前駆体組成物に加えて、本発明により定義される通りの1つまたは複数の合成補強繊維の上記集合体を含む複合材料または複合材料用の組成物も対象に含む。
【0138】
本発明はまた、中間生成物または半完成品として予備含浸繊維材料も対象に含み、これは本発明により定義された前駆体組成物を少なくとも1つ用い、上で定義した1つまたは複数の合成補強繊維の集合体を溶融状態で含浸させた結果生じる。
【0139】
とりわけ上記予備含浸繊維材料は、繊維の上記集合体への粉末状の前駆体組成物の散布を含む含浸段階i)の結果生じ、または流動床内における繊維の上記集合体への上記粉末のコーティングを含む含浸段階i)の後に得ることもできる。
【0140】
本発明の別の主題は、1つまたは複数の合成補強繊維の集合体への含浸のため、上で定義した予備含浸繊維材料の製造のため、とりわけ複合材料の製造のために上で定義した前駆体組成物を使用することである。
【0141】
本発明により定義された前駆体組成物を複合材料、とりわけ成形複合材部品、好ましくは機械または構造部品の製造のために使用することも関係する。構造部品は構造部品および半構造部品の両方を包含する。
【0142】
最後に、本発明は完成品として、本発明により定義された製造方法に従い、とりわけ本発明により定義された前駆体組成物を少なくとも1つ、含浸段階i)および重合段階ii)のために用いることにより得られる複合材料を対象に含む。
【0143】
とりわけ、本発明による上記複合材料によって以下の分野における用途向け複合材部品の製造が可能になる。航空、自動車産業、鉄道産業、陸上輸送、風力発電、光起電力、水上スポーツを含むスポーツおよびレジャー、建設または土木工学、ならびに特に補強異形材、艇体などの船体、サンドイッチパネルを含むパネル、自動車タンクなどの複合材タンク、オイルまたはガスのポンピング用および輸送用配管などの複合材パイプライン、中空体、航空機翼、航空機胴体、家屋内または船内のビームまたは間仕切り、手すり、スポイラ、自動車ハウジング、ブレーキディスク、作動シリンダーまたはステアリングホイール、自動車車体、鉄道車両、履物の底またはゴルフクラブ。