特許第5945337号(P5945337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5945337X線管および磁性電子ビーム操縦性を有するX線管陰極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945337
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】X線管および磁性電子ビーム操縦性を有するX線管陰極
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20160621BHJP
   H01J 35/14 20060101ALI20160621BHJP
   H01J 35/30 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H01J35/06 E
   H01J35/14
   H01J35/30
【請求項の数】20
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-553385(P2014-553385)
(86)(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公表番号】特表2015-507835(P2015-507835A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】US2013021775
(87)【国際公開番号】WO2013109649
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】13/352,641
(32)【優先日】2012年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591030673
【氏名又は名称】バリアン・メディカル・システムズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ボーイ、ジェームズ ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】トレセダー、ロバート クラーク
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−111204(JP,A)
【文献】 特開2009−158138(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0175152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/06、35/14、35/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管陰極であって、
コアおよびコイルを含む磁性ヨークであって、前記コアが、磁性材料から形成される基部および2つの端部を有し、前記2つの端部が、前記コイルに電流を通過させるとき、磁極として機能するように構成され、前記コイルおよび前記基部が、真空の筐体の外側に位置付けられ、前記2つの端部が、前記真空の筐体内に位置付けられる、磁性ヨークと、
磁性材料と一体となった導電性で非磁性材料を含む陰極ヘッドであって、前記陰極ヘッドが、磁性材料の2つの部分の間に位置付けられる導電性で非磁性材料の一部分において放出体スロットを画定する、陰極ヘッドと、
前記放出体スロット内に位置付けられる電子放出体であって、前記電子放出体が電子ビームを放出するように構成され、前記電子ビームが、前記導電性で非磁性材料によって焦点を合わせられることと、ビーム形成中に前記磁性材料によって操縦されることとの両方がなされるように構成される、電子放出体と、を備える、X線管陰極。
【請求項2】
前記陰極が、約25kV〜約50kVの間で動作するように構成される、請求項1に記載のX線管陰極。
【請求項3】
前記陰極が、約31kVで動作するように構成される、請求項2に記載のX線管陰極。
【請求項4】
前記陰極が、前記電子ビームの軌道が最大約5mmのビーム操縦を達成するように、前記磁性材料によって偏向され得るように構成される、請求項1に記載のX線管陰極。
【請求項5】
前記磁性材料が、鉄、ニッケル‐コバルト合金鉄、ニッケル、もしくはフェライト、またはこれらの何らかの組み合わせを含む、請求項1に記載のX線管陰極。
【請求項6】
前記磁性材料が、約240ガウス〜約450ガウス(約24ミリテスラ〜約45ミリテスラ)の間の束密度で前記放出体スロットにおいて均一磁場を作り出すように構成される、請求項1に記載のX線管陰極。
【請求項7】
X線管陰極であって、
コアおよびコイルを含む磁性ヨークであって、前記コアが、磁性材料から形成される基部および2つの端部を有し、前記コイルが、前記コアの前記基部の周りに巻かれ、前記2つの端部が、前記コイルに電流を通過させるとき、磁極として機能するように構成され、前記コイルおよび前記基部が、真空の筐体の外側に位置付けられ、前記2つの端部が、前記真空の筐体内に位置付けられる、磁性ヨークと、
前記2つの端部と一体となった導電性で非磁性材料を含む陰極ヘッドであって、前記陰極ヘッドが、前記2つの端部の間に位置付けられる放出体スロットを画定する、陰極ヘッドと、
前記放出体スロット内に位置付けられる電子放出体であって、前記電子放出体が、電子ビームを放出するように構成され、前記電子ビームが、前記導電性で非磁性材料によって焦点を合わせられることと、ビーム形成中に前記磁極によって操縦されることとの両方がなされるように構成される、電子放出体と、を備える、X線管陰極。
【請求項8】
前記陰極が、約25kV〜約50kVの間で動作するように構成される、請求項7に記載のX線管陰極。
【請求項9】
前記陰極が、前記電子ビームの軌道が最大約5mmのビーム操縦を達成するように、前記磁極によって偏向され得るように構成される、請求項7に記載のX線管陰極。
【請求項10】
前記磁性材料が、鉄、ニッケル‐コバルト合金鉄、ニッケル、もしくはフェライト、またはこれらの何らかの組み合わせを含む、請求項7に記載のX線管陰極。
【請求項11】
前記磁極が、約240ガウス〜約450ガウス(約24ミリテスラ〜約45ミリテスラ)の間の束密度で前記放出体スロットにおいて均一磁場を作り出すように構成される、請求項7に記載のX線管陰極。
【請求項12】
X線管であって、
真空の筐体と、
前記真空の筐体内に位置付けられる陽極と、
陰極であって、
コアおよびコイルを含む磁性ヨークであって、前記コアが、磁性材料から形成される基部および2つの端部を有し、前記コイルが、前記コアの前記基部の周りに巻かれ、前記コイルおよび前記基部が、前記真空の筐体の外側に位置付けられ、前記2つの端部が、前記コイルに電流を通過させるとき、磁極として機能するように構成される、磁性ヨークと、
前記2つの端部と一体となった導電性で非磁性材料を含む陰極ヘッドであって、前記陰極ヘッドが、前記2つの端部の間に位置付けられる前記導電性で非磁性材料において放出体スロットを画定する、陰極ヘッドと、
前記放出体スロット内に位置付けられる電子放出体であって、前記電子放出体が、電子ビームを放出するように構成され、前記電子放出体が、ビーム形成中に前記電子ビームを操縦するように構成される前記磁性ヨークによって作り出される均一磁場に浸漬される、電子放出体と、を備える、陰極と、
を備える、X線管。
【請求項13】
前記陰極が、約31kVで動作するように構成される、請求項12に記載のX線管。
【請求項14】
前記陰極が、前記電子ビームの軌道が最大約5mmのビーム操縦を達成するように、前記磁極によって偏向され得るように構成される、請求項12に記載のX線管。
【請求項15】
前記磁性材料が、鉄、ニッケル‐コバルト合金鉄、ニッケル、もしくはフェライト、またはこれらの何らかの組み合わせを含む、請求項12に記載のX線管。
【請求項16】
前記磁性材料が、約240ガウス〜約450ガウス(約24ミリテスラ〜約45ミリテスラ)の間の束密度で前記放出体スロットにおいて均一磁場を作り出すように構成される、請求項12に記載のX線管。
【請求項17】
前記X線管が、前記電子ビームの焦点の中間位置が前記X線管の動作にかかわらず対象の基準枠において静止した状態であるように、前記電子ビームが前記均一磁場によって操縦される間に、対象を中心としてガントリ上で回転するように構成される、請求項12に記載のX線管。
【請求項18】
前記コイルが、約200アンペア回数の起磁力を有するように構成される、請求項12に記載のX線管。
【請求項19】
前記放出体が、螺旋状フィラメントである、請求項12に記載のX線管。
【請求項20】
前記磁場が、前記X線管内に含まれる、請求項12に記載のX線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管および磁性電子ビーム操縦性を有するX線管陰極に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管は、工業および医療の両方の分野で、幅広い種類の適用において使用される極めて価値のあるツールである。X線管は、一般的に、有用な部分がX線管のウィンドウを通って最終的にX線管を出る、全方向性様式でX線を生成し、X線画像を生成するために、材料試料または患者等の対象と相互作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いくつかのX線管の動作中、X線管は、様々な角度で対象のX線画像を生成するために対象を中心として平行移動されまたは回転される。しかしながら、残念なことに、X線管の動作は、焦点サイズの実効増加をもたらし得る。この焦点サイズにおける実効増加は、焦点の動作のぶれとしても知られる、対象の画像化の低減された解像度をもたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に特許請求される対象事項は、いかなる不利益をも解決するまたは上に説明されたそれら等の環境においてのみ動作する、実施形態に限定されない。むしろ、この背景技術は、本明細書に説明されるいくつかの実施形態が実践され得る1つの例示的な技術分野を例解するためだけに提供される。
一実施形態において、X線管陰極は、コアおよびコイルを含む磁性ヨークであって、前記コアが、磁性材料から形成される基部および2つの端部を有し、前記2つの端部が、前記コイルに電流を通過させるとき、磁極として機能するように構成され、前記コイルおよび前記基部が、真空の筐体の外側に位置付けられ、前記2つの端部が、前記真空の筐体内に位置付けられる、磁性ヨークと、磁性材料と一体となった導電性で非磁性材料を含む陰極ヘッドであって、前記陰極ヘッドが、磁性材料の2つの部分の間に位置付けられる導電性で非磁性材料の一部分において放出体スロットを画定する、陰極ヘッドと、前記放出体スロット内に位置付けられる電子放出体であって、前記電子放出体が電子ビームを放出するように構成され、前記電子ビームが、前記導電性で非磁性材料によって焦点を合わせられることと、ビーム形成中に前記磁性材料によって操縦されることとの両方がなされるように構成される、電子放出体と、を備える。
さらなる実施形態において、X線管陰極は、コアおよびコイルを含む磁性ヨークであって、前記コアが、磁性材料から形成される基部および2つの端部を有し、前記コイルが、前記コアの前記基部の周りに巻かれ、前記2つの端部が、前記コイルに電流を通過させるとき、磁極として機能するように構成され、前記コイルおよび前記基部が、真空の筐体の外側に位置付けられ、前記2つの端部が、前記真空の筐体内に位置付けられる、磁性ヨークと、前記2つの端部と一体となった導電性で非磁性材料を含む陰極ヘッドであって、前記陰極ヘッドが、前記2つの端部の間に位置付けられる放出体スロットを画定する、陰極ヘッドと、前記放出体スロット内に位置付けられる電子放出体であって、前記電子放出体が、電子ビームを放出するように構成され、前記電子ビームが、前記導電性で非磁性材料によって焦点を合わせられることと、ビーム形成中に前記磁極によって操縦されることとの両方がなされるように構成される、電子放出体と、を備える。
さらなる実施形態において、X線管は、真空の筐体と、前記真空の筐体内に位置付けられる陽極と、陰極とを備える。陰極は、コアおよびコイルを含む磁性ヨークであって、前記コアが、磁性材料から形成される基部および2つの端部を有し、前記コイルが、前記コアの前記基部の周りに巻かれ、前記コイルおよび前記基部が、前記真空の筐体の外側に位置付けられ、前記2つの端部が、前記コイルに電流を通過させるとき、磁極として機能するように構成される、磁性ヨークと、前記2つの端部と一体となった導電性で非磁性材料を含む陰極ヘッドであって、前記陰極ヘッドが、前記2つの端部の間に位置付けられる前記導電性で非磁性材料において放出体スロットを画定する、陰極ヘッドと、前記放出体スロット内に位置付けられる電子放出体であって、前記電子放出体が、電子ビームを放出するように構成され、前記電子放出体が、ビーム形成中に前記電子ビームを操縦するように構成される前記磁性ヨークによって作り出される均一磁場に浸漬される、電子放出体と、を備える。
【0005】
概して、例示的な実施形態は、磁性電子ビーム操縦性を有するX線管陰極に関する。本明細書に開示される例示的な陰極は、ビーム形成中に電子ビームを作り出し、操縦するように構成される。この操縦は、少なくともいくつかの例示的な実施形態において、電子ビームの焦点の中間位置がX線管の動作にかかわらず対象の基準枠において静止した状態であるように電子ビームが操縦される間に、X線管が対象を中心としてガントリ上で平行移動するまたは回転することを可能にし得、一貫した対象の画像化をもたらし得る。
【0006】
1つの例示的な実施形態においては、X線管陰極は、陰極ヘッドおよび電子放出体を含む。陰極ヘッドは、磁性材料と一体となった導電性で非磁性材料を含む。陰極ヘッドは、磁性材料の2つの部分の間に位置付けられる導電性で非磁性材料の一部分において放出体スロットを画定する。電子放出体は、放出体スロット内に位置付けられる。電子放出体は、電子ビームを放出するように構成される。電子ビームは、導電性で非磁性材料によって焦点を合わせられることと、ビーム形成中に磁性材料によって操縦されることとの両方がなされるように構成される。
【0007】
別の例示的な実施形態においては、X線管陰極は、磁性ヨーク、陰極ヘッド、および電子放出体を含む。磁性ヨークは、コアおよびコイルを含む。コアは、磁性材料から形成される基部および2つの端部を有する。コイルは、コアの基部の周りに巻かれる。2つの端部は、コイルに電流を通過させるとき、磁極として機能するように構成される。陰極ヘッドは、2つの端部と一体となった導電性で非磁性材料を含む。陰極ヘッドは、2つの端部の間に位置付けられる放出体スロットを画定する。電子放出体は、放出体スロット内に位置付けられる。電子放出体は、電子ビームを放出するように構成される。電子ビームは、導電性で非磁性材料によって焦点を合わせられることと、ビーム形成中に磁極によって操縦されることとの両方がなされるように構成される。
【0008】
さらに別の例示的な実施形態においては、X線管は、真空の筐体、真空の筐体内に位置付けられる陽極、および陰極を含む。陰極は、磁性ヨーク、陰極ヘッド、および電子放出体を含む。磁性ヨークは、コアおよびコイルを含む。コアは、磁性材料から形成される基部および2つの端部を有する。コイルは、コアの基部の周りに巻かれる。コイルおよび基部は、真空の筐体の外側に位置付けられる。2つの端部は、真空の筐体の内側に位置付けられる。2つの端部は、コイルに電流を通過させるとき、磁極として機能するように構成される。陰極ヘッドは、2つの端部と一体となった導電性で非磁性材料を含む。陰極ヘッドは、2つの端部の間に位置付けられる導電性で非磁性材料において放出体スロットを画定する。電子放出体は、放出体スロット内に位置付けられ、電子ビームを放出するように構成される。電子放出体は、ビーム形成中に電子ビームを操縦するように構成される磁性ヨークによって作り出される均一磁場に浸漬される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】例示的なX線管の斜視図である。
図1B図1Aの例示的なX線管の垂直断面図である。
図2図1Aおよび1Bの例示的なX線管の陰極ヘッドの斜視図である。
図3図1A、1B、および2の例示的なX線管の一部分の部分切り取り図である。
図4図2の陰極ヘッドの一部分の別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の例示的な実施形態のこれらのおよび他の態様は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになる。
本発明のある態様をさらに明白にするために、本発明のより具体的な説明が、添付の図面において開示されるそれらの例示的な実施形態を参照することにより、与えられる。これらの図面は、本発明の例示的な実施形態のみを描写し、よって、その範囲を限定すると解釈されないことが理解される。本発明の例示的な実施形態の態様は、添付の図面の使用を通じてさらに具体的かつ詳細に記述および説明される。
【0011】
本発明の例示的な実施形態は、X線管および磁性電子ビーム操縦性を有するX線管陰極に関する。本発明の例示的な実施形態の種々の態様を記述するために図面への参照がこれからなされる。図面は、かかる例示的な実施形態の図表および概略図の表現であり、本発明を限定しているわけではなく、必ずしも正確な縮尺率で描かれるわけではない。
(1.例示的なX線管)
図1Aおよび1Bを最初に参照すると、第1の例示的な二重エネルギーX線管100が開示される。図1Aで開示されるように、例示的なX線管100は、概して、缶102および缶102に取り付けられるX線管ウィンドウ104を含む。X線管ウィンドウ104は、ベリリウムまたは他の好適な材料(複数可)等のX線透過性材料からなる。缶102は、304のステンレス鋼等のステンレス鋼から形成され得る。
【0012】
図1Bに開示されるように、X線管ウィンドウ104および缶102は、陽極108および陰極200が位置付けられるその内部に真空の筐体106を少なくとも部分的に画定する。より具体的には、陰極200は、缶102中に延在し、陽極108はまた、缶102内に位置付けられる。陽極108は、陰極200から間隔をおいて、かつ陰極200に対向するように配置される。陽極108および陰極200は、陽極108と陰極200との間の高電位差の適用を可能にする電気回路に接続される。
【0013】
続いて図1Bを参照すると、例示的なX線管100の動作の前に、真空の筐体106が、真空空間を作り出すように真空化される。次いで、例示的なX線管100の動作中に、熱電子放出によって陰極200から電子ビームを放出させるように陰極200の電子放出体202に電流を通過させる。例として、陰極は、例えば約31kV等の約25kV〜約50kVの間で動作するように構成され得る。陽極108と陰極200との間の高電圧差動の適用は、次いで、陰極200から回転する陽極108上に位置付けられる回転する焦点軌道110に向かって電子ビームを促進させる。焦点軌道110は、例えばタングステンまたは高原子(「高Z」)番号を有する他の材料(複数可)等で構成され得る。電子が促進されるにつれて、電子は運動エネルギーの実質的な量を得、回転する焦点軌道110上のターゲット材料を打つと、この運動エネルギーのいくらかが、X線に変換される。
【0014】
焦点軌道110は、放出されたX線の多くがX線管ウィンドウ104によって平行にされるように配向される。X線管ウィンドウ104がX線透過性材料からなるため、焦点軌道110から放出されるX線は、材料試料または患者(示されず)等の対象において減弱させるために、X線管ウィンドウ104を通過し、次いで、X線画像(示されず)を生成するために画像検出器(示されず)上に画像化した。ウィンドウ104は、よって、X線管100の外側の大気空気圧からX線管100の真空の筐体106の真空空間を密閉して封止するが、なおも、回転する陽極108によって発生させられるX線がX線管100を出られるようにする。
【0015】
例示的なX線管100が、回転可能な陽極X線管として描写されるが、本明細書に開示される例示的な実施形態は、他の型のX線管において用いられてもよい。したがって、本明細書に開示される例示的な電子放出体は、例えば、静止した状態である陽極X線管において代替的に用いられてもよい。さらに、電子放出体202は、螺旋状フィラメントとして開示されるが、電子放出体202が、平らなフィラメントでもよいことが理解される。
(2.例示的な陰極)
続いて図1Aおよび図1Bを参照し、図2〜4もまた参照すると、例示的な陰極200のさらなる態様が開示される。図2に開示されるように、例示的な陰極200は、磁性材料208と210の第1および第2の部分によって囲まれる導電性で非磁性材料206の一部分を含む陰極ヘッド204を含む。本明細書に開示される磁性材料は、例えば、鉄、ニッケル‐コバルト合金鉄、ニッケル、もしくはフェライト、またはこれらの何らかの組み合わせであってもよい。陰極ヘッド204は、磁性材料の2つの部分208と210の間に位置付けられる導電性で非磁性材料206の一部分において放出体スロット212を画定する。前に言及された電子放出体202は、放出体スロット212内に位置付けられる。
【0016】
図3に開示されるように、例示的な陰極200はまた、コアおよびコイル216を含む磁性ヨークを含む。コアは、基部214および磁性材料の2つの部分208と210を含む。基部214は、磁性材料の2つの部分208と210に連結される磁性材料から形成される。コイル216は、コアの基部214の周りに巻かれる。基部214およびコイル216は、真空の筐体206の外側に位置付けられるが、陰極ヘッド204および磁性材料の2つの部分208と210は、真空の筐体206の内側に位置付けられる(図1Bを参照)。いくつかの例示的な実施形態においては、基部214およびコイル216の真空の筐体206の外側への設置は、真空の筐体206内の空間が限られているにもかかわらず磁性ヨークの組み込みを可能にする。
【0017】
例示的なX線管100の動作中、電流を、コイル216(線またはタップに巻きつけられた)に断続的に通過させ得る。コイル216に電流を通過させるとき、磁性材料の2つの部分208と210は、コアの端部および磁極として機能する。例えば、コイル202は、約200アンペア回数の起磁力を有するように構成され得る。図4に開示されるように、磁極として機能するとき、磁性材料の2つの部分208と210は、互いに対して、および電子放出体202によって画定される長手方向の軸202aに対して、磁性材料の2つの部分208と210の特定の配設の結果として、放出体スロット212において磁束密度「B」の均一磁場を作り出すように構成される。磁場は、X線管100内に完全に含まれ得る。磁場はまた、磁極間に完全に被圧され得る。均一磁場は、例えば、約240ガウス〜約450ガウス(約24ミリテスラ〜約45ミリテスラ)の間の束密度を有し得る。
【0018】
電子放出体202によって放出される電子ビーム「e」の移動の方向との接続において考えられる、磁束密度「B」の均一磁場の設定は、均一磁場の制御を通じて、破線矢印によって示されるように、電子ビーム「e」を側方に偏向する能力をもたらす。さらに、コイル216に通過させる電流を変形することは、電子ビーム「e」が側方に偏向されるその範囲を超えて信頼できる制御を可能にする。
【0019】
磁性材料の2つの部分208と210の位置付けは、均一磁場が、電子放出体202を浸漬し、ビーム形成中に、電子放出体202によって生成された電子ビーム「e」の軌道を操縦するように構成されるためである。したがって、電子ビーム「e」は、形成後に操縦されるのではなく、形成と操縦が同時にされる。例えば、例示的な陰極200は、電子ビーム「e」の軌道が、最大約5mmのビーム操縦を達成するように、磁極によって作り出される均一磁場によって形成中に偏向されるように構成され得る。同時に、導電性で非磁性材料206は、電子ビーム「e」に焦点を合わせるように構成される。
【0020】
電子ビーム「e」の軌道の偏向は、コイル216に電流を通過させることによって達され得るが、磁性材料の2つの部分208と210は、コイル216に電流を通過させることなく、電子放出体202へのそれらの近接性によって平易に電子ビーム「e」の軌道を偏向するように構成され得る。
【0021】
例示的な陰極200による電子ビーム「e」の断続的な操縦性は、対象の基準枠において静止した状態である焦点の中間位置を維持するのに役立ち得る。この操縦性は、例示的なX線管100が、例えば図4で破線矢印の方向にあるように、ガントリを使用して、回転中動作の方向で、様々な角度で対象のX線画像を生成するために対象を中心として回転されるという適用で特に有用であり得る。図4に開示されるように、動作の方向は、磁場「B」および電子ビーム「e」の両方へ垂直である。例示的なX線管100の回転中に焦点の中間位置が別様に変わる傾向でありつつも、例示的な陰極100の断続的なビーム操縦の性能は、静止した状態であるように焦点の中間位置を別様に変えることを可能にする。静止した状態である焦点の中間位置は、対象のより一貫した画像化をもたらし得る。
【0022】
本明細書に開示される例示的な実施形態は、別の具体的な形態において具現化され得る。本明細書に開示される例示的な実施形態は、よって、全ての点において実例的なものとしてのみ見なされ、限定的ではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4