(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945339
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】層状加熱体のための温度検出及び制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20160621BHJP
G01K 7/16 20060101ALI20160621BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
H05B3/00 365D
G01K7/16 B
H05B3/00 370
H05B3/20 301
【請求項の数】22
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-558961(P2014-558961)
(86)(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公表番号】特表2015-513178(P2015-513178A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】US2013028002
(87)【国際公開番号】WO2013130593
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】61/603,411
(32)【優先日】2012年2月27日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500157653
【氏名又は名称】ワトロウ エレクトリック マニュファクチュアリング カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァリンガー、マルタン
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第01117843(GB,A)
【文献】
米国特許第05886860(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0107988(US,A1)
【文献】
米国特許第07361869(US,B2)
【文献】
独国特許出願公開第102010016501(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
G01K 7/16
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状加熱体の温度を検出し、且つ、制御するためのシステムであって、
層状加熱体であって、
基板と、
前記基板の上に配置された第1の誘電体層と、
センサ終端を有し、前記第1の誘電体層の上に配置されたセンサ層と、
前記センサ層の上に配置された第2の誘電体層と、
加熱体終端を有し、前記第2の誘電体層の上に配置された抵抗加熱層と、
前記抵抗加熱層の上に配置された第3の誘電体層と
を備える層状加熱体と、
前記抵抗加熱層に動作接続される超過温度検出回路であって、
抵抗体と、
前記センサ層と、
前記センサ層と並列の電気機械継電器と
を備える超過温度検出回路と
を備え、前記制御システムの応答時間が1秒未満になるよう、前記センサ層が比較的大きいTCRを有する材料を画定し、また、前記抵抗加熱層が比較的小さいTCRを有する材料を画定するシステム。
【請求項2】
前記センサ層が、独立して制御することができる複数のゾーンを画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記独立して制御することができるゾーンが、同じサイズ及び同じ材料を画定する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサ層の前記独立して制御することができる複数のゾーンが異なる材料を画定する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記センサ層が、前記抵抗加熱層のトラックに対してほぼ直角に配向されるトラックを画定し、前記トラックが前記抵抗加熱層トラックの幅より細い幅を有し、且つ、ゼロから48VDC/ACまでの電圧及びゼロから1アンペアまでのアンペア数を画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサ層トラックが、前記抵抗加熱層のトラックに対してほぼ直角に配向され、前記センサ層の前記トラックが前記抵抗加熱層トラックの幅より細い幅を有し、且つ、ゼロから48VDC/ACまでの電圧及びゼロから1アンペアまでのアンペア数を画定する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記超過温度検出回路は、熱遮断または熱スイッチとして機能する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサ層は、ニッケル、銅、ニッケル合金、銅合金、アルミニウム合金、タングステン、および白金からなるグループから選択された1つを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1、第2、第3の誘電体層は、1×106オーム以上の抵抗を持つ、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1、第2、第3の誘電体層は、それぞれ別々に、アルミナ、マグネシア、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、磁器、凍石岩、キン青石、ムライトからなるグループから選択された1つを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサ層は、抵抗温度係数(TCR)が10,000ppm/℃である材料から成り、前記抵抗加熱層は、抵抗温度係数(TCR)が−10,000ppm/℃から1ppm/℃の範囲にある材料から成る、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
層状加熱体の温度を検出し、且つ、制御するためのシステムであって、
層状加熱体であって、
基板と、
前記基板の上に配置された第1の誘電体層と、
センサ終端を有し、前記第1の誘電体層の上に配置されたセンサ層であって、幅Wsの複数のトラックを含み、比較的高い抵抗温度係数(TCR)を持つ材料により形成されているセンサ層と、
前記センサ層の上に配置された第2の誘電体層と、
加熱体終端を有し、前記第2の誘電体層の上に配置された抵抗加熱層であって、幅Wrの複数のトラックを含み、比較的低い抵抗温度係数(TCR)を持つ材料により形成されている抵抗加熱層と、
前記抵抗加熱層の上に配置された第3の誘電体層と
を備える層状加熱体と、
前記抵抗加熱層に動作接続される超過温度検出回路であって、
抵抗体またはポテンショメータと、
前記センサ層と、
前記センサ層と並列の電気機械継電器と
を備える超過温度検出回路と
を備え、
WrがWsより大きく、前記センサ層のトラックが前記抵抗加熱層のトラックと交差するシステム。
【請求項13】
Wsが1mmであり、Wrが5mmである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記センサ層のトラックが前記抵抗加熱層のトラックに対してほぼ直角に配向される、請求項12記載のシステム。
【請求項15】
前記センサ層のトラックは電圧12V電流100mAであり、前記抵抗加熱層のトラックは電圧230VAC電流10Aである、請求項13記載のシステム。
【請求項16】
前記第1、第2、第3の誘電体層は、1×106オーム以上の抵抗を持つ、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記超過温度検出回路は、熱遮断または熱スイッチとして機能する、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記センサ層は、抵抗温度係数(TCR)が10,000ppm/℃である材料から成り、前記抵抗加熱層は、抵抗温度係数(TCR)が−10,000ppm/℃から1ppm/℃の範囲にある材料から成る、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記センサ層は、複数の独立して制御することができるゾーンを定義する、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記複数の独立して制御することができるゾーンは、同じ大きさで同じ材料である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記センサ層の前記複数の独立して制御することができるゾーンが、それぞれ異なる材料からなる、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
層状加熱体の温度を検出し、且つ、制御するためのシステムであって、
層状加熱体であって、
基板と、
前記基板の上に配置された第1の誘電体層と、
センサ終端を有し、前記第1の誘電体層の上に配置されたセンサ層であって、複数の独立して制御することができるゾーンを定義し、幅Wsの複数のトラックを含み、抵抗温度係数(TCR)が10,000ppm/℃である材料から形成されるセンサ層と、
前記センサ層の上に配置された第2の誘電体層と、
加熱体終端を有し、前記第2の誘電体層の上に配置された抵抗加熱層であって、幅Wrの複数のトラックを含み、抵抗温度係数(TCR)が−10,000ppm/℃から1ppm/℃の範囲にある材料から形成される、抵抗加熱層と、
前記抵抗加熱層の上に配置された第3の誘電体層と
を備える層状加熱体と、
前記抵抗加熱層に動作接続される超過温度検出回路であって、
抵抗体またはポテンショメータと、
前記センサ層と、
前記センサ層と並列の電気機械継電器と
を備える超過温度検出回路と
を備え、WrがWsより大きく、前記センサ層のトラックが前記抵抗加熱層のトラックと交差し、前記抵抗加熱層のトラックに対しほぼ直角に配向される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりそのすべての内容が本明細書に組み込まれている、2012年2月27日に出願した米国仮出願第61/603411号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は層状加熱体に関し、詳細には層状加熱体の温度を検出し、且つ、制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
この節における供述は、単に本開示に関連する背景情報を提供したものにすぎず、また、場合によっては従来技術を構成していない。
【0004】
層状加熱体は、一般に、空間が限られているところで、熱出力を表面全体にわたって変化させる必要がある用途で使用され、或いはウルトラ・クリーン用途又は侵食性化学用途で使用される。層状加熱体は、通常、基板に加えられる異なる材料の層、即ち誘電体材料及び抵抗材料の層を備えている。最初に誘電体材料が基板に加えられ、それにより基板と抵抗材料の間に電気的な隔離が提供され、且つ、動作中の電流リークが最小化される。抵抗材料は、所定のパターンで誘電体材料に加えられ、それにより抵抗加熱体回路が提供される。また、層状加熱体は、抵抗加熱体回路を加熱体コントローラに接続するリード線、及びリード線−抵抗回路インタフェースを保護するオーバ・モールド(over-mold)材料を含む。従って層状加熱体は、様々な加熱用途のために高度にカスタマイズすることができる。
【0005】
層状加熱体は、「厚」膜であっても、「薄」膜であっても、或いは「熱噴霧」であってもよく、とりわけ、これらのタイプの層状加熱体の間の主な相違は、層が形成される方法である。例えば厚膜加熱体のための層は、通常、とりわけ、スクリーン印刷、デカール・アプリケーション又は膜印刷ヘッドなどのプロセスを使用して形成される。薄膜加熱体のための層は、通常、とりわけ、めっき、スパッタリング、化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)及び物理気相成長(PVD:physical vapor deposition)などの堆積プロセスを使用して形成される。薄膜技法及び厚膜技法とは全く異なるさらに他のプロセスは熱噴霧であり、一例として、とりわけ、溶射、プラズマ溶射、ワイヤ・アーク溶射及び高速酸素燃料(HVOF:High Velocity Oxygen Fuel)を含むことができる。
【0006】
層状加熱体を使用しているとして知られているシステムは、通常、加熱体を制御するための温度フィードバックをコントローラに提供するために、膜加熱体の近傍のどこかに置かれる、しばしば熱電対又は測温抵抗体(RTD:resistance temperature detector)である温度センサ及び/又はプロセスを含む。しかしながら、熱電対及びRTDは、応答時間が比較的遅く、また、所望の温度をしばしば「オーバシュート(overshoot)」させる。また、熱電対及びRTDは、絶対温度値のみの検出に限定され、従って他の独立した制御は提供しない。
【0007】
他のシステムは、しばしば、抵抗加熱素子が加熱体及び温度センサの両方として機能し、従って熱電対又はRTDなどの個別の温度センサの必要性を除去する「2線式」制御を使用している。しかしながら2線式制御システムは、場合によっては、例えば設定点温度におけるワット数に対する周囲温度におけるワット数が大きくなる、という加熱素子のTCR(抵抗温度係数:temperature coefficient of resistance)特性などの特定の欠点を有することがある。さらに、2線式制御の場合、実際の温度検出によって加熱サイクルが中断されることがあり、また、短い測定パルスが使用される場合、不本意に加熱体の温度が高くなることがある。
【0008】
また、特定の加熱体システムは、熱スイッチ又はバイメタル・スイッチなどの超過温度保護を使用している。これらのシステムは、比較的コストが高く、また、応答時間が遅いことがしばしばである。さらに、温度検出は、実際の切換えに対して局所的でしかなく、従ってこれらのシステムは、それらの精度が幾分か限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】同時係属出願第12/270773号
【特許文献2】米国特許第7361869号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一形態は、層状加熱体の温度を検出し、且つ、制御するためのシステムである。層状加熱体は、基板と、該基板の上に配置された第1の誘電体層と、センサ終端(termination)を有し、第1の誘電体層の上に配置されたセンサ層と、該センサ層の上に配置された第2の誘電体層と、加熱体終端を有し、第2の誘電体層の上に配置された抵抗加熱層と、該抵抗加熱層の上に配置された第3の誘電体層とを備えている。超過温度検出回路は、抵抗加熱層に動作接続され、抵抗体と、センサ層と、該センサ層と並列の電気機械継電器とを備えている。制御システムの応答時間が改善されるよう、センサ層は、比較的大きいTCRを有する材料を画定し、また、抵抗加熱層は、比較的小さいTCRを有する材料を画定する。
【0011】
他の形態では、層状加熱体の温度を検出し、且つ、制御するためのシステムは、基板と、該基板の上に配置された第1の誘電体層と、該第1の誘電体層の上に配置されたセンサ層であって、独立して制御することができる複数のゾーンを画定するセンサ層と、該センサ層の上に配置された第2の誘電体層と、該第2の誘電体層の上に配置された抵抗加熱層と、該抵抗加熱層の上に配置された第3の誘電体層とを備えた層状加熱体を含む。
【0012】
さらに他の形態では、層状加熱体の温度を検出し、且つ、制御するためのシステムは、基板と、該基板の上に配置された第1の誘電体層と、該第1の誘電体層の上に配置されたセンサ層と、該センサ層の上に配置された第2の誘電体層と、該第2の誘電体層の上に配置された抵抗加熱層と、該抵抗加熱層の上に配置された第3の誘電体層とを備えた層状加熱体を含む。センサ層は、抵抗加熱層のトラックに対してほぼ直角に配向されたトラックを画定し、これらのトラックは、抵抗加熱層トラックの幅より細い幅を有し、低電圧、低アンペア数を画定する。
【0013】
さらに他の形態では、層状加熱体は、独立して制御することができるゾーンなどの他の特徴を有するセンサ層及び抵抗加熱層、超過温度保護回路並びにセンサ層トラックを含む。異なる誘電体層、又はグレード層、電磁妨害(EMI:electromagnetic interference)層、熱スタンドオフ層などの層、さらには本出願と共に本発明の譲受人に譲渡された、参照によりそのすべての内容が本明細書に組み込まれている、「Moisture Resistant Layered Sleeve Heater and Method of Manufacturing Thereof」という名称の同時係属出願第12/270773号に開示されているような保護カバーなどの様々な他の機能層を含むことも可能である。
【0014】
適用可能性の他の分野は、本明細書において提供される説明から明らかになるであろう。説明及び特定の実例には、単に実例による説明を目的としたものにすぎないことが意図されており、また、本開示の範囲を制限することは意図されていないことを理解されたい。
【0015】
以下、本開示を深く理解することができるよう、一例として与えられる本開示の様々な形態について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の教示に従って構築された層状加熱体の横断面図である。
【
図2】本開示の教示に従って構築された超過保護回路の略回路図、及びリミット即ち遮断温度を設定するための抵抗のサンプル計算である。
【
図3】独立して制御することができるゾーンを有する、本開示の教示に従って構築されたセンサ層の平面図である。
【
図4】抵抗加熱層を不慮の電気アークから保護するために使用されるトラックを有するセンサ層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において説明される図面は、単に実例による説明を目的としたものにすぎず、本開示の範囲を制限することは何ら意図されていない。
【0018】
以下の説明は、その性質が単に例示的なものにすぎず、本開示、用途又は使用を制限することは意図されていない。
【0019】
本明細書において使用されているように、「層状加熱体」という用語は、少なくとも1つの機能層(例えば、それらに限定されないが、抵抗層、保護層、誘電体層、センサ層)を備えた加熱体であって、それらに限定されないが、厚膜、薄膜、熱噴霧又はゾル−ゲル(sol-gel)に関連するプロセスを使用して、材料を基板又は他の層に加えるか、或いは蓄積させることによってこれらの層が形成される加熱体を含むものとして解釈されたい。これらのプロセスは、「層状プロセス」又は「層状加熱体プロセス」とも呼ばれる。
【0020】
図1に示されているように、層状加熱体の温度を検出し、且つ、制御するためのシステムが一括して参照数表示20で示されている。システム20は、一形態では、基板24と、該基板24の上に配置された第1の誘電体層26と、該第1の誘電体層26の上に配置されたセンサ層28と、該センサ層28の上に配置された第2の誘電体層30と、該第2の誘電体層30の上に配置された抵抗加熱層32と、該抵抗加熱層32の上に配置された第3の誘電体層34とを含む層状加熱体22を備えている。センサ層28は、図には基板24と抵抗加熱層32の間に示されているが、センサ層28は、抵抗加熱層32の上に配置することも、或いは個々の層と共に任意の位置に配置することも可能であり、本開示の範囲内であることを理解されたい。さらに、同じく本開示の範囲内で複数のセンサ層28を使用することも可能である。
【0021】
個々の誘電体層26、30及び34は、一般的には電気絶縁材料であり、熱出力要求事項に見合う厚さで提供される。誘電体層のための材料には、それらに限定されないが、酸化物(例えばアルミナ、マグネシア、酸化ジルコニウム及びそれらの組合せ)、非酸化物セラミック(例えば窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素)、ケイ酸塩セラミック(例えば磁器、凍石岩、キン青石、ムライト)などの抵抗が約1×10
6オームより大きい材料がある。
【0022】
センサ層28は、500ppm/℃などの比較的小さい値から10,000ppm/℃などの比較的大きい値までの抵抗温度係数(TCR:temperature coefficient of resistance)を有する材料を画定している。より正確な温度検出のためには、より大きい値のTCRが使用される。また、本開示の教示に従って、一例として黒鉛などの負のTCRを有する材料を使用することも可能であることを同じく理解されたい。このようなTCR値は、約−500ppm/℃から約−10,000ppm/℃までの範囲に及ぶ。センサ層28は、抵抗加熱層32に接続されるセンサ終端29を含み、抵抗加熱層32も図に示されているように同じく終端33を含む。
【0023】
抵抗加熱層32は、用途の要求事項に応じて、−10,000ppm/℃から約1ppm/℃などの比較的小さい、さらには負のTCRから、1ppm/℃から約10,000ppm/℃などの比較的大きいTCRを有する材料からなっている。多くの形態では比較的小さいTCR値が好ましく、センサ層28には、上で示したように比較的大きいTCR値が好ましい。抵抗加熱層32はセンサ層28とは別の層であるため、センサ層28のレイアウトには無関係に、抵抗加熱層32のための様々な異なるレイアウト(例えばトレース幾何構造、幅、厚さ)を使用することができ、これは2線式制御システムでは不可能である。レイアウトだけでなく、センサ層28及び抵抗加熱層32毎に異なる材料を選択することも可能であり、従って総合システム10における追加設計柔軟性が提供される。
【0024】
この層状加熱体構造並びに個々の層及びそれらの材料を適合させる能力により、システム10は、約5秒未満、より特定的には約500ミリ秒未満などの速やかな応答時間を有することができる。さらに、センサ層28の設計を適合させることにより、層全体にわたって、或いは離散位置で温度を検出することができる。さらに、2線式制御システムの場合とは異なり、測定パルスによって加熱サイクルが影響されることはなく、従って本開示の教示により、より敏感なシステムが提供される。
【0025】
3つの誘電体層、単一の抵抗加熱素子層及び単一のセンサ層が示されているが、本開示の範囲内で任意の数の層、任意の層の組合せ及び任意の層の配置を使用することができることを理解されたい。例えば、他の変形形態と共に、複数の抵抗加熱層及び/又はセンサ層を使用することができ、基板の上に抵抗及び/又はセンサ層を直接配置することができ、或いは部分的に加熱することができ、また、グレード層、1つ又は複数の接着層又はEMI層などの他の機能層を使用することができる。
【0026】
次に
図2を参照すると、抵抗加熱層32に動作接続される超過温度検出回路50が提供されている。超過温度検出回路50は、一般的には、抵抗体R1(別法としては温度のスイッチを可変調整するためのポテンシオメータ)、センサ層28(R2.1)、及びセンサ層R2.1と並列の電気機械継電器R2.2を備えた分圧器回路である。この回路50の場合、R1の値を設定することによってリミット即ち遮断温度を調整することができる。
図2には、遮断温度が250℃の場合における、約30オームであるR1の例示的計算が示されている。この計算及び特定の回路構成要素は単に例示的なものにすぎないこと、及びこれらを本開示の範囲を制限するものとして解釈してはならないことを理解されたい。本開示の範囲内でソフトウェアを依然として使用することは可能であるが、この超過温度検出回路50の場合、ソフトウェアの必要性が除去される。さらに、超過温度検出回路50は、熱遮断又は熱スイッチとして機能することができる。
【0027】
次に
図3を参照すると、他の形態のセンサ層が一括して参照数表示70で示されている。センサ層70は、2.1、2.2、2.3、...2.15で示されている、独立して制御することができる複数のゾーンを備えている。この例示的実施例では、3×5グリッドのゾーンは、独立して制御することができる15個のゾーンをもたらしている。本開示の教示に従って任意のサイズのグリッド及び任意の数のゾーンを使用することができることを理解されたい。また、図に示されているような一様なサイズのゾーンではなく、異なるサイズのゾーンを使用することも可能であることを同じく理解されたい。また、これらのゾーンは、同じ材料で構築することも、或いはゾーン毎に異なる材料で構築することも可能である。材料は、例えば、それらに限定されないが、ニッケル、銅及びそれらの合金、アルミニウム合金、タングステン又は白金を含むことができる。
【0028】
これらの要素は、「独立して制御することができるゾーン」として、個別のセットの終端リード線(図示せず)を含んでおり、或いは電気接続の複雑性を緩和するために、リード線を組み合わせて個々の行及び/又は列を活性化することができる。センサ層70のこの高レベルの忠実性により、局所超過温度状態又は他の予期せぬ動作状態に対して総合システムをより敏感にすることができる。
【0029】
図4を参照すると、さらに他の形態のセンサ層が一括して参照数表示80で示されている。この形態では、センサ層80は、抵抗加熱層32のトラック84に対してほぼ直角に配向されるトラック82を画定している。センサ層80のトラック82は、抵抗加熱層トラック84の幅W
rより細い幅W
sを有している。また、センサ層トラック82は、低電圧、低アンペア数であり、例えば12VDC及び100mAである。従って本開示のこの形態は、複数の層のうちの1つ、例えば複数の誘電体層又は抵抗加熱層のうちの1つのひび割れを検出するように設計されている。これらの層のうちの1つにひび割れが生じると、抵抗加熱層に供給されている電力がアークを発生し、周囲の層を損傷することがあり、また、安全上の問題をもたらす可能性がある。センサ層トラック82は、このようなひび割れを検出し、且つ、抵抗加熱層32への電力をスイッチ・オフすることによって不慮の電気アークの発生を防止するように設計されている。センサ層トラック82が抵抗加熱層トラック84と交差している限り、このような検出が生じる。従ってこれらのトラックは、必ずしも互いに直角にする必要はなく、従って本明細書に含まれている図解は、単に例示的なものにすぎない。一例示的形態では、センサ層トラック82は約1mmの幅W
sを有しており、一方、抵抗加熱層トラック84は約5mmの幅W
rを有しており、電圧及びアンペア数は、それぞれ約230VAC及び10Aである。
【0030】
本明細書において図に示し、且つ、説明した様々な形態では、層は、熱噴霧プロセスによって形成され、また、抵抗加熱層及びセンサ層は、レーザ除去プロセスによって形成され、これらのプロセスについては、本出願と共に本発明の譲受人に譲渡された、そのすべての内容が本明細書に組み込まれている米国特許第7361869号により詳細に記載されている。しかしながら、上で示した他の層状プロセスをこれらの層のうちの1つ又は複数のために使用することができること、また、トレースを生成するための他の方法、例えばそれらに限定されないが、マスキング又はウォータ・ジェットなどの方法を使用することも可能であることを理解されたい。
【0031】
本開示は、実例として説明され、且つ、図に示されている実施例に限定されないことに留意されたい。多くの様々な修正が説明されており、また、多くは当業者の知識の一部である。本開示の保護及び本特許の保護の範囲を逸脱することなく、技術的等価物によってこれら及び他の修正並びに任意の置換を説明及び図に加えることができる。