(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例に係る摩擦かく拌接合装置について、適宜図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す各図面では、共通する部材には同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【実施例1】
【0013】
図1は摩擦かく拌接合装置を示す図である。
図2は摩擦かく拌接合装置の接合ヘッドを示す図である。
実施例1の摩擦かく拌接合装置1は、接合ヘッド20がロボット本体10に取り付けられて構成されている。そして、ロボット本体10は接合ヘッド20を移動させる駆動装置になる。
図1に示すように、ロボット本体10は、台座部10aと、下腕10bと、上腕10cと、手首10dと、手首ヘッド10eと、を備えている。接合ヘッド20は手首ヘッド10eに取り付けられている。
【0014】
下腕10bは台座部10aに取り付けられている。下腕10bは台座部10aに対してS軸周りに旋回可能になっている。また、下腕10bは台座部10aに対してL軸周りに傾動可能になっている。S軸は、台座部10aが設置される設置面Gに対して垂直方向に延びる軸である。
【0015】
上腕10cは下腕10bに対してU軸周りに揺動可能に取り付けられている。L軸とU軸は互いに平行であって、ともにS軸に対して直交する軸である。
手首10dは、R軸周りに回転可能に上腕10cに取り付けられている。R軸はU軸と直交する軸であって、上腕10cの延伸方向に延びる軸である。
【0016】
手首10dの先端には手首ヘッド10eが取り付けられている。手首ヘッド10eは、B軸周りに回転可能に取り付けられている。B軸はR軸と直交する軸であって、手首10dとともにR軸周りに回転する。
【0017】
また、手首ヘッド10eはT軸周りに回転可能となっている。T軸はB軸と直交する軸であって、手首ヘッド10eとともにB軸周りに回転する。
【0018】
下腕10bは台座部10aに対して2自由度(S軸周り、L軸周り)で取り付けられている。上腕10cは下腕10bに対して1自由度(U軸周り)で取り付けられている。手首10dは上腕10cに対して1自由度(R軸周り)で取り付けられている。手首ヘッド10eは手首10dに対して1自由度(B軸周り)で取り付けられている。そして、手首ヘッド10eが1自由度でT軸周りに回転する。
このように、ロボット本体10は、6軸(S軸,L軸,U軸,B軸,R軸,T軸)の自由度を有する6軸ロボットである。そして、接合ヘッド20が取り付けられる手首ヘッド10eは設置面Gに対して6自由度を有する。
【0019】
ロボット本体10及び接合ツール20は制御装置30で制御される。
なお、ロボット本体10は、広く使用されている6軸や6軸に相当する産業用ロボットであればよい。また、ロボット本体10は、電力で駆動するものであってもよいし、油圧や空気圧で駆動するものであってもよい。
【0020】
図2に示すように、本体部20aの先端に接合ツール2が取り付けられて接合ヘッド20が構成される。本体部20aの内部には電動機(主軸モータ3)が収納されており、接合ツール2は主軸モータ3によって本体部20aの先端で回転する。主軸モータ3の回転軸はT軸と平行に設けられている。よって、接合ツール2はT軸と平行な回転軸周りに回転する。例えば、主軸モータ3で回転するチャック部20bが本体部20aの先端に配設され、このチャック部20bが接合ツール2を保持する構成であればよい。
主軸モータ3は、
図1に示すロボット本体10を制御する制御装置30(
図1参照)で制御される。
【0021】
接合ツール2はショルダ部2aとピン部2bとを有する。ショルダ部2aは円柱形を呈する。ピン部2bは、ショルダ部2aが縮径した形状であって、ショルダ部2aと同軸に形成されている。
摩擦かく拌接合は、ピン部2bが被接合部材4の内部に挿入されてショルダ部2aが被接合部材4の表面4aに接し、この状態で接合ツール2が回転して進行する。
【0022】
制御装置30(
図1参照)は、摩擦かく拌接合される2つの被接合部材4がつき合わせられる境界(接合線4bと称する)に接合ツール2を移動して主軸モータ3を回転させる。接合線4bは2つの被接合部材4を接合する境界になる。そして、ピン部2bが被接合部材4に挿入されるように接合ツール2を被接合部材4に押圧する。2つの被接合部材4は図示しない固定手段で作業用のテーブル(図示せず)等に固定され、摩擦かく拌接合時には、接合線4bで互いに離反しないようになっている。
そして制御装置30は、回転する接合ツール2のピン部2bが被接合部材4に挿入された状態で接合ツール2を接合線4bに沿って移動させる。このとき制御装置30は、ロボット本体10を制御して接合ツール2を移動させる。
【0023】
なお、接合ヘッド20は6軸の自由度でロボット本体10に保持される。そして、ロボット本体10は、接合線4bに沿った方向へ接合ヘッド20を移動可能に構成される。また、ロボット本体10は、被接合部材4に対して接合ヘッド20を近接及び離反する方向へ移動可能に構成されている。
なお、摩擦かく拌接合装置1は、2つの被接合部材4が重なり合った部分を摩擦かく拌接合することも可能である。
【0024】
例えば、制御装置30(
図1参照)は、数値データとして予め入力されている接合線4bの形状にもとづいてロボット本体10(
図1参照)を制御し、回転しながら被接合部材4に挿入された接合ツール2を接合線4bに沿って移動させる。
【0025】
このように、実施例1の摩擦かく拌接合装置1は、
図1に示すロボット本体10の手首ヘッド10eに、
図2に示す接合ヘッド20が取り付けられて構成され、
図1に示す制御装置30で制御される。
【0026】
接合ヘッド20の本体部20aには撮像装置20cが備わっている。撮像装置20cは、摩擦かく拌接合時に被接合部材4の接合線4bを撮像するように備わっている。撮像装置20cは、例えばCMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサやCCD(電荷結合素子)イメージセンサを利用するものであればよい。
撮像装置20cは、摩擦かく拌接合装置1が被接合部材4を摩擦かく拌接合するときに接合線4bを撮像する。
【0027】
図3は、撮像装置が接合線を撮像する状態を示す図であって、(a)は2つの被接合部材がつき合わされた状態を示す図、(b)は2つの被接合部材が重ね合わされた状態を示す図である。
図3の(a)に示すように、摩擦かく拌接合する2つの被接合部材4がそれぞれの一辺で互いに当接して付き当てられたとき、2つの被接合部材4の境界が接合線4bになる。制御装置30は、ロボット本体10(
図1参照)を制御して接合線4bに沿うように接合ヘッド20を移動する。撮像装置20cは、接合ヘッド20の進行方向前方に配置され、接合ヘッド20よりも進行方向前方の接合線4bを撮像する。撮像装置20cが接合線4bを撮像した信号(映像信号SigV)は制御装置30に入力される。
【0028】
また、
図3の(b)に示すように、重なり合った2つの被接合部材4を摩擦かく拌接合する場合、2つの被接合部材4が重なり合った部分に接合線4bが形成される。この場合、撮像装置20cは、当該撮像装置20cの側に配置される一方の被接合部材4の端辺を接合線4bとして撮像する。
【0029】
図4は制御装置の機能ブロック図である。
図5は位置補正信号のON/OFFと接合ヘッドの進行方向を示す図である。
図4に示すように、制御装置30は、制御部30aと、モータ駆動部30bと、電流計30cと、画像処理部30dと、を有する。制御部30aは、いずれも図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ、インタフェース等を含んで構成されるコンピュータ装置であり、CPUが所定のプログラムを実行して摩擦かく拌接合装置1(
図1参照)を制御する。
【0030】
モータ駆動部30bは、制御部30aからの指令に応じて接合ヘッド20の主軸モータ3に供給する電流(モータ駆動電流Im)を出力する。電流計30cは、主軸モータ3に供給するモータ駆動電流Imを計測した計測信号(電流検出信号Sig1)を制御部30aに入力する。
制御部30aは、電流検出信号Sig1から、主軸モータ3に供給されるモータ駆動電流Imを算出する。
【0031】
なお、制御部30aは主軸モータ3を所定の回転速度で回転させる。例えば、制御部30aは、主軸モータ3の回転速度を計測する回転速度計(図示せず)から入力される信号にもとづいたフィードバック制御で主軸モータ3の回転速度を所定の回転速度に維持するように構成される。
【0032】
画像処理部30dには、撮像装置20cが撮像した映像信号SigVが入力される。画像処理部30dは入力された映像信号SigVを画像処理して接合線4b(
図2参照)を抽出する。そして画像処理部30dは、接合ヘッド20(
図2参照)の進行方向に対する接合線4bと接合ヘッド20との間に生じるずれを検出する。
【0033】
接合線4bと接合ヘッド20との間には、接合ツール2(
図2参照)の回転によってずれが生じる。
制御装置30は、
図5に示すように、接合線4bに沿った方向を進行方向として接合ヘッド20を進行させるようにロボット本体10(
図1参照)を制御する。接合ヘッド20においては接合ツール2が回転(
図5に示す一例では右回転)しているので、接合ヘッド20には進行方向(接合線4bに沿った方向)から外れる方向(
図5に示す一例では進行方向に向かって左方向)に向かう転向力P1が発生する。接合ヘッド20の進行方向は転向力P1によって左側に向かって転向し、接合ヘッド20が接合線4bからずれる。このように、接合ツール2の回転で生じる転向力P1によって、接合線4bと接合ヘッド20との間にずれが発生する。
【0034】
例えば、摩擦かく拌接合時において、制御装置30(
図1参照)は、予め入力されている接合線4bの形状に合わせて接合ヘッド20の進行方向を決定する。このとき制御装置30は、撮像装置20c(
図2参照)が接合ヘッド20の進行方向前方に位置するように手首ヘッド10e(
図1参照)をT軸周りに回転させる。接合ヘッド20の進行方向に対する接合線4bのずれが無いとき、画像処理部30d(
図4参照)が抽出する接合線4bは撮像装置20cの撮像範囲の中心(画像中心)に位置する。
【0035】
接合ヘッド20の進行方向に対して接合線4bがずれると、
図4に示す画像処理部30dが抽出する接合線4bは撮像装置20cの画像中心からずれる。画像処理部30dは、接合線4bの画像中心からのずれ(接合偏差ΔX)を検出し、この接合偏差ΔXが所定の大きさを超えたとき位置補正信号Sig2を出力する。位置補正信号Sig2は制御部30aに入力される。制御部30aは、位置補正信号Sig2が入力されると,接合ヘッド20の進行方向に対する接合線4bの接合偏差ΔXを解消するように、接合ヘッド20の進行方向を補正する。
【0036】
実施例1において、接合偏差ΔXは、移動している接合ヘッド20と、接合線4bに沿った方向とのずれ(偏差)になる。
また、実施例1においては、
図2に示す撮像装置20cと、
図4に示す画像処理部30dとで、接合偏差ΔXを検出する偏差検出装置が構成される。
【0037】
図6は画像処理部が位置補正信号を出力する手順を示すフローチャートである。
図4に示す制御装置30の画像処理部30dは、
図6に示す手順を適宜実行して位置補正信号Sig2を出力する。
【0038】
制御装置30の画像処理部30dは、接合線4bに対する接合ヘッド20のずれ(
図5に示す接合偏差ΔX)を算出する(ステップS1)。
さらに、画像処理部30dは、接合偏差ΔXが所定の適正範囲(適正偏差)か否かを判定する(ステップS2)。画像処理部30dは、
図5に点Pxで示すように、接合偏差ΔXが所定の大きさ(偏差限界値ΔXmax)となったときに接合偏差ΔXが適正偏差ではないと判定して(ステップS2→No)、位置補正信号Sig2を出力し(ステップS3)、手順をステップS4に進める。
画像処理部30dが位置補正信号Sig2を出力すると、
図5に太い破線で示すように位置補正信号Sig2がONになる。一方、画像処理部30dは、ステップS2において、接合偏差ΔXが偏差限界値ΔXmaxより小さいときには、接合偏差ΔXが適正偏差であると判定し(ステップS2→Yes)、位置補正信号Sig2を出力しないでこの手順を終了する。
【0039】
画像処理部30dは、接合偏差ΔXがゼロになるまで位置補正信号Sig2を出力し(ステップS4→No)、接合偏差ΔXがゼロになったら位置補正信号Sig2の出力を停止して(ステップS5)、この手順を終了する。画像処理部30dが位置補正信号Sig2の出力を停止すると、
図5に太い破線で示すように位置補正信号Sig2がOFFになる。
【0040】
制御部30aは、位置補正信号Sig2が入力されると(位置補正信号Sig2がONになると)、ロボット本体10(
図1参照)を制御して、接合線4bの方向に沿って接合ヘッド20を進めるとともに、接合偏差ΔXが解消する方向に接合ヘッド20を移動する。つまり、制御装置30(制御部30a)は、位置補正信号Sig2が入力されると、接合ヘッド20を接合線4bに近づける方向に移動させる。
図5に示すように、点Px以降は接合ヘッド20が接合線4bに向かって進行して接合偏差ΔXが減少する。
また、制御部30aは、位置補正信号Sig2の出力が停止された時点(位置補正信号Sig2がOFFになった時点)で、接合線4bに向かう方向への接合ヘッド20の移動を停止する。
【0041】
なお、画像処理部30dは、例えば、接合偏差ΔXがゼロになる少し前に位置補正信号Sig2の出力を停止する構成であってもよい。この構成であれば、慣性によって接合ヘッド20が接合線4bを超えることが回避され、接合ヘッド20の位置を精度よく接合線4bに合わせることができる。
【0042】
また、
図5に示すように、接合線4bに対する接合ヘッド20のずれの方向(接合ヘッド20の進行方向に対する左右方向)の違いによって極性(例えば、信号レベルの正(+)と負(−))が異なる位置補正信号Sig2であってもよい。このような位置補正信号Sig2であれば、制御部30aは、位置補正信号Sig2によって、接合線4bに対する接合ヘッド20のずれ(接合偏差ΔX)の方向を取得可能となる。
【0043】
一例として、
図5に示すように、接合ヘッド20の進行方向に対して左側にずれた接合偏差ΔXが生じたときに極性が正(+)の位置補正信号Sig2が発生し、接合ヘッド20の進行方向に対して右側にずれた接合偏差ΔXが生じたときに極性が負(−)の位置補正信号Sig2が発生する構成とすればよい。制御部30aは、位置補正信号Sig2の極性(正負)によって、接合ヘッド20の進行方向に対する接合偏差ΔXの方向(左右)を判定できる。
【0044】
また、実施例1の制御装置30は、
図2に示す摩擦かく拌接合装置1を制御して被接合部材4を摩擦かく拌接合するとき、電流計30c(
図4参照)から入力される電流検出信号Sig1によってモータ駆動電流Imを監視する。さらに制御装置30は、モータ駆動電流Imが所定の基準値(電流適正範囲)なるようにロボット本体10(
図1参照)を制御する。
【0045】
図7はツール挿入量とトルクの関係を示す図である。
図2に示す主軸モータ3は接合ツール2を回転する。また、摩擦かく拌接合時に接合ツール2のピン部2bは回転しながら被接合部材4に挿入される。したがって、ピン部2bは、被接合部材4から回転に対する抵抗(トルクP)を受ける。
図7に示すように、接合ツール2(ピン部2b)の被接合部材4への挿入量(ツール挿入量λ)が大きいほど接合ツール2が被接合部材4から受ける抵抗(トルクP)が大きくなる。
また、接合ツール2が被接合部材4から受ける抵抗(トルクP)は主軸モータ3の回転に対する負荷となる。したがって、接合ツール2が被接合部材4から受けるトルクPが大きいほど主軸モータ3の回転に対する負荷が大きくなって主軸モータ3に供給されるモータ駆動電流Imが大きくなる。
【0046】
換言すると、ツール挿入量λが大きいほどモータ駆動電流Imが大きくなる。したがって制御装置30(
図4参照)は、モータ駆動電流Imを監視することでツール挿入量λを監視できる。
【0047】
例えば、
図7に示すように、被接合部材4に対するツール挿入量λの適正範囲(挿入適正範囲)が設定されていれば、その挿入適正範囲に対応するような、トルクPの上限値(トルク上限P
T)と下限値(トルク下限P
L)が設定可能になる。
【0048】
よって、制御装置30は、モータ駆動電流Imが、トルク上限P
Tに対応する電流と、トルク下限P
Lに対応する電流と、の間になるようにロボット本体10(
図1参照)を制御することでツール挿入量λを挿入適正範囲に維持できる。
トルク上限P
Tに対応する電流と、トルク下限P
Lに対応する電流と、の間をモータ駆動電流Imの電流適正範囲と設定すれば、制御装置30はモータ駆動電流Imを電流適正範囲に維持することでツール挿入量λを挿入適正範囲に維持できる。
【0049】
制御装置30は、モータ駆動電流Imが電流適正範囲より大きい場合、ツール挿入量λが挿入適正範囲より大きいと判定して、ロボット本体10を制御してツール挿入量λを小さくする。被接合部材4へのピン部2bの挿入量が減るとともにショルダ部2aが被接合部材4を押圧する押圧力が低下する。これによって、接合ツール2が被接合部材4から受けるトルクPが小さくなって主軸モータ3の負荷が軽減されてモータ駆動電流Imが低下する。
また、制御装置30は、モータ駆動電流Imが電流適正範囲より小さい場合、ツール挿入量λが挿入適正範囲より小さいと判定して、ロボット本体10を制御してツール挿入量λを大きくする。被接合部材4へのピン部2bの挿入量が増えるとともにショルダ部2aが被接合部材4を押圧する押圧力が増大する。これによって、接合ツール2が被接合部材4から受けるトルクPが大きくなって主軸モータ3の負荷が増大しモータ駆動電流Imが増大する。
【0050】
なお、制御装置30は、ツール挿入量λを小さくするとき、又はツール挿入量λを大きくするとき、下腕10bと、上腕10cと、手首10dと、手首ヘッド10eと、の動作の組み合わせで、接合ツール2が被接合部材4に対して垂直な方向に移動するようにロボット本体10を制御する。
【0051】
このように、実施例1の制御装置30(
図4参照)は、摩擦かく拌接合時に、電流計30c(
図4参照)から入力される電流検出信号Sig1によってモータ駆動電流Imを監視する。そして制御装置30は、モータ駆動電流Imが電流適正範囲となるようにロボット本体10を制御する。つまり、制御装置30は、モータ駆動電流Imにもとづいてツール挿入量λを挿入適正範囲に維持する。これによって、モータ駆動電流Imにもとづいてツール挿入量λが挿入適正範囲に維持され、摩擦かく拌接合の品質が向上する。
【0052】
なお、接合ツール2が被接合部材4から受けるトルクP(主軸モータ3の負荷)と、モータ駆動電流Imと、の関係は、主軸モータ3の特性によって決定されるものであり、この特性にもとづいて、トルク上限P
Tとトルク下限P
Lに対応する電流適正範囲が決定される。
また、ツール挿入量λの挿入適正範囲と、その挿入適正範囲に対応するトルク上限P
T及びトルク下限P
Lは、被接合部材4の材質等にもとづいて適宜設定される。
【0053】
以上のように、
図1,2に示す実施例1の摩擦かく拌接合装置1は、被接合部材4の接合線4bに沿った進行方向に対して接合ヘッド20がずれたとき(
図5に示す接合偏差ΔXが生じたとき)、ずれを解消するように接合ヘッド20が移動するので、接合ヘッド20が精度よく接合線4bに沿って進行する。したがって、被接合部材4を摩擦かく拌接合するときの位置精度が向上し、摩擦かく拌接合の品質が向上する。
【0054】
また、制御装置30は、主軸モータ3に供給するモータ駆動電流Imを電流適正範囲に維持することでツール挿入量λを挿入適正範囲に維持できる。これによって、摩擦かく拌接合するとき、接合ツール2(ピン部2b)が適正に被接合部材4に挿入されるので、摩擦かく拌接合の品質が向上する。
【実施例2】
【0055】
図8は実施例2に係る接合ヘッドを示す図である。
図9はツール挿入量の挿入適正範囲と押圧荷重の関係を示す図である。
図8に示すように、実施例2の接合ヘッド20は、荷重センサ(ロードセル21)を介して手首ヘッド10eに取り付けられている。
なお、ロードセル21が備わる以外、実施例2の摩擦かく拌接合装置1は、
図1,2に示す実施例1の摩擦かく拌接合装置1と同じ構成である。また、制御装置30(
図4参照)は、実施例1と同様に、接合線4bに対する接合ヘッド20のずれ(
図5に示す接合偏差ΔX)を解消する。
【0056】
ロードセル21は、手首ヘッド10eに対して接合ヘッド20が押圧されたときの荷重を検出し、検出信号(荷重信号Sig3)を出力する。荷重信号Sig3は制御装置30の制御部30a(
図4参照)に入力される。
【0057】
制御装置30の制御部30a(
図4参照)は、接合ヘッド20が手首ヘッド10eを押圧する荷重(押圧荷重W)を荷重信号Sig3から算出する。押圧荷重Wが大きいほどツール挿入量λが大きくなる。したがって、制御装置30は押圧荷重Wを調節することでツール挿入量λを調節できる。なお、押圧荷重Wとツール挿入量λの関係は被接合部材4の材質による特性として決定される。
例えば、
図9に示すように、被接合部材4に対するツール挿入量λの適正範囲(挿入適正範囲)が設定される場合、その挿入適正範囲に対応するような、押圧荷重Wの上限値(荷重上限W
T)と下限値(荷重下限W
L)が設定可能になる。
【0058】
よって、制御装置30(
図4参照)は、押圧荷重Wが、荷重上限W
Tと、荷重下限W
Lと、の間になるようにロボット本体10(
図1参照)を制御することでツール挿入量λを挿入適正範囲に維持できる。
荷重上限W
Tと、荷重下限W
Lと、の間を押圧荷重Wの荷重適正範囲と設定すれば、制御装置30は押圧荷重Wを荷重適正範囲に維持することでツール挿入量λを挿入適正範囲に維持できる。
制御装置30は、押圧荷重Wが荷重適正範囲より小さい場合、ロボット本体10を制御してツール挿入量λを大きくする。ショルダ部2aが被接合部材4を押圧する押圧力が増大する。これによって、接合ツール2が被接合部材4から受ける荷重が大きくなって押圧荷重Wが増大する。
また、制御装置30は、押圧荷重Wが荷重適正範囲より大きい場合、ロボット本体10を制御してツール挿入量λを小さくする。ショルダ部2aが被接合部材4を押圧する押圧力が減少する。これによって、接合ツール2が被接合部材4から受ける荷重が小さくなって押圧荷重Wが減少する。
【0059】
このように、実施例2の制御装置30(
図4参照)は、摩擦かく拌接合時に、ロードセル21(
図8参照)から入力される荷重信号Sig3によって押圧荷重Wを監視する。そして制御装置30は、押圧荷重Wが荷重適正範囲となるようにロボット本体10を制御する。これによって、ツール挿入量λが挿入適正範囲に維持されて摩擦かく拌接合の品質が向上する。
【実施例3】
【0060】
図10は実施例3に係る接合ヘッドを示す図である。
図11はツール挿入量の挿入適正範囲とヘッド高さの関係を示す図である。
図10に示すように、実施例3の接合ヘッド20には距離計22(距離計測装置)が備わっている。
なお、距離計22が備わる以外、実施例3の摩擦かく拌接合装置1は、
図1,2に示す実施例1の摩擦かく拌接合装置1と同じ構成である。また、制御装置30(
図4参照)は、実施例1と同様に、接合線4bに対する接合ヘッド20のずれ(
図5に示す接合偏差ΔX)を解消する。
【0061】
距離計22は、接合ヘッド20から被接合部材4の表面4aまでの距離を計測し、計測した距離を計測信号(距離信号Sig4)に変換して出力する。距離信号Sig4は制御装置30の制御部30a(
図4参照)に入力される。距離計22(距離計測装置)の構造は限定しない。例えば、レーザ光を被接合部材4に向けて照射し、その反射光から表面4aまでの距離を計測する非接触式の距離計22であってもよい。または、被接合部材4に向かうロッド(図示せず)を有し、そのロッドの変位量にもとづいて表面4aまでの距離を計測する接触式の距離計22であってもよい。
【0062】
制御装置30の制御部30a(
図4参照)は、被接合部材4の表面4aに対する接合ヘッド20の高さ(ヘッド高さHd)を距離信号Sig4から算出する。ヘッド高さHdが小さいほどツール挿入量λが大きくなる。ヘッド高さHdとツール挿入量λの関係は被接合部材4の材質による特性として決定される。したがって、制御装置30はヘッド高さHdを調節することでツール挿入量λを調節できる。
例えば、
図11に示すように、被接合部材4に対するツール挿入量λの適正範囲(挿入適正範囲)が設定される場合、その挿入適正範囲に対応するような、ヘッド高さHdの上限値(高さ上限Hd
T)と下限値(高さ下限Hd
L)が設定可能である。
【0063】
よって、制御装置30(
図4参照)は、ヘッド高さHdが、高さ上限Hd
Tと、高さ下限Hd
Lと、の間になるようにロボット本体10(
図1参照)を制御することでツール挿入量λを挿入適正範囲に維持できる。
高さ上限Hd
Tと、高さ下限Hd
Lと、の間をヘッド高さHdの適正高さ範囲と設定すれば、制御装置30はヘッド高さHdを適正高さ範囲に維持することでツール挿入量λを挿入適正範囲に維持できる。
制御装置30は、ヘッド高さHdが適正高さ範囲より高い場合、ロボット本体10を制御して接合ヘッド20を被接合部材4に近接させてツール挿入量λを大きくする。接合ツール2と被接合部材4の距離が小さくなってヘッド高さHdが減少する。また、制御装置30は、ヘッド高さHdが適正高さ範囲より小さい場合、ロボット本体10を制御して接合ヘッド20を被接合部材4から離反させてツール挿入量λを小さくする。接合ツール2と被接合部材4の距離が大きくなってヘッド高さHdが増大する。
【0064】
このように、実施例3の制御装置30(
図4参照)は、摩擦かく拌接合時に、距離計22(
図10参照)から入力される距離信号Sig4によってヘッド高さHdを監視する。そして制御装置30は、ヘッド高さHdが適正高さ範囲となるようにロボット本体10を制御する。つまり、実施例3において制御装置30は、距離計22(距離計測装置)が出力する距離信号Sig4にもとづいてツール挿入量λを挿入適正範囲に維持する。これによって、ツール挿入量λが挿入適正範囲に維持されて摩擦かく拌接合の品質が向上する。
【実施例4】
【0065】
図12は実施例4に係る摩擦かく拌接合装置を示す図である。
図12に示すように、実施例4に係る摩擦かく拌接合装置1aは、接合ヘッド20が昇降装置50を介してロボット本体10に取り付けられている。
昇降装置50の構造は限定されない。例えば、サーボモータ50aと、ボールスクリュー50bと、昇降ヘッド50cと、で構成される昇降装置50とすればよい。
【0066】
ボールスクリュー50bは接合ヘッド20を直線動作させる方向(H軸の方向)に延設され、サーボモータ50aによって軸周りに回転する。昇降ヘッド50cは、ボールねじ機構でボールスクリュー50bに取り付けられ、ボールスクリュー50bの回転に応じてその軸方向に移動する。そして、昇降ヘッド50cに接合ヘッド20が取り付けられている。
なお、実施例4においては、接合ツール2の回転軸、つまり、主軸モータ3の回転軸の方向をH軸の方向とする。
【0067】
また、図示はしないが、油圧や空気圧で駆動するアクチュエータによって昇降ヘッド50cがH軸の方向に直線運動する昇降装置であってもよい。
【0068】
実施例4の摩擦かく拌接合装置1aは、昇降装置50が備わる以外、
図1,2に示す実施例1の摩擦かく拌接合装置1と同じ構成である。また、制御装置30(
図4参照)は、実施例1と同様に、接合線4bに対する接合ヘッド20のずれ(
図5に示す接合偏差ΔX)を解消する。
なお、
図12において、主軸モータ3が本体部20aの外側に配置されているが、実施例1と同様に、主軸モータ3が本体部20aに収納されていてもよい。
【0069】
実施例4の摩擦かく拌接合装置1aは、ロボット本体10が有する6軸の自由度に、昇降装置50が有する1軸の自由度(H軸方向の移動)が加わる。このため、接合ヘッド20は設置面Gに対して7軸の自由度を有する。このように、実施例4の摩擦かく拌接合装置1aにおいて、接合ヘッド20は7軸の自由度でロボット本体10に保持される。そして昇降装置50は、被接合部材4に対して接合ヘッド20を近接及び離反する方向へ移動可能に構成されている。
【0070】
実施例4の摩擦かく拌接合装置1aにおいて、制御装置30は、撮像装置20cから入力される映像信号SigVにもとづいてロボット本体10を制御し、接合線4b(
図2参照)に沿って接合ヘッド20を移動させる。
また、制御装置30は、主軸モータ3に供給するモータ駆動電流Imが電流適正範囲になるようにツール挿入量λを変更しながら被接合部材4を摩擦かく拌接合する。
【0071】
このとき、実施例4に係る制御装置30は昇降装置50を駆動してツール挿入量λを変更する。制御装置30は、モータ駆動電流Imが電流適正範囲より大きい場合、サーボモータ50aを駆動して接合ヘッド20を被接合部材4から離反させてツール挿入量λを小さくする。接合ツール2が被接合部材4から受けるトルクPが小さくなって主軸モータ3の負荷が軽減されてモータ駆動電流Imが低下する。また、制御装置30は、モータ駆動電流Imが電流適正範囲より小さい場合、サーボモータ50aを駆動して接合ヘッド20を被接合部材4に近接させてツール挿入量λを大きくする。接合ツール2が被接合部材4から受けるトルクPが大きくなって主軸モータ3の負荷が増大しモータ駆動電流Imが増大する。
【0072】
このように、実施例4に係る制御装置30は、昇降装置50を制御してモータ駆動電流Imを電流適正範囲に維持しながら被接合部材4を摩擦かく拌接合する。
実施例4の摩擦かく拌接合装置1aは、モータ駆動電流Imが電流適正範囲から外れたとき、昇降装置50のみの駆動で電流適正範囲のモータ駆動電流Imに戻すことができるので、ロボット本体10を駆動するよりも少ないエネルギ(電力)でモータ駆動電流Imを調節できる。
【0073】
また、昇降装置50で接合ヘッド20を移動する場合、ロボット本体10で接合ヘッド20を移動する場合よりも慣性を小さくできる。したがって、接合ヘッド20の位置制御に対する精度が向上する。
【実施例5】
【0074】
図13は実施例5に係る摩擦かく拌接合装置の接合ヘッドを示す図である。
図13に示すように、実施例5に係る摩擦かく拌接合装置1aの接合ヘッド20は、荷重センサ(ロードセル21)を介して昇降ヘッド50cに取り付けられる。
なお、ロードセル21が備わる以外、実施例5の摩擦かく拌接合装置1aは、
図12に示す実施例4の摩擦かく拌接合装置1aと同じ構成である。また、制御装置30(
図4参照)は、実施例1と同様に、接合線4bに対する接合ヘッド20のずれ(
図5に示す接合偏差ΔX)を解消する。
【0075】
ロードセル21は、昇降ヘッド50cに対して接合ヘッド20が押圧されたときの荷重を検出し、荷重信号Sig3を出力する。荷重信号Sig3は制御装置30の制御部30a(
図4参照)に入力される。
そして、実施例2と同様に、制御装置30(
図4参照)は、荷重信号Sig3から押圧荷重Wを算出する。さらに、実施例5の制御装置30は、算出した押圧荷重Wが
図9に示す荷重上限W
Tと、荷重下限W
Lと、の間になるように昇降装置50を制御する。
【0076】
このように、実施例5に係る摩擦かく拌接合装置1aの制御装置30(
図4参照)は、押圧荷重Wが荷重適正範囲より小さい場合、昇降装置50を制御してツール挿入量λを大きくする。接合ツール2が被接合部材4から受ける荷重が大きくなって押圧荷重Wが増大する。また、制御装置30は、押圧荷重Wが荷重適正範囲より大きい場合、昇降装置50を制御してツール挿入量λを小さくする。接合ツール2が被接合部材4から受ける荷重が小さくなって押圧荷重Wが減少する。これによって、ツール挿入量λが挿入適正範囲に維持されて摩擦かく拌接合の品質が向上する。
また、実施例4と同様に、少ないエネルギでツール挿入量λを調節できる。さらに、接合ヘッド20の移動に対する慣性を小さくできるので、接合ヘッド20の位置制御に対する精度が向上する。
【実施例6】
【0077】
図14は実施例6に係る摩擦かく拌接合装置の接合ヘッドを示す図である。
図14に示すように、実施例6に係る摩擦かく拌接合装置1aの接合ヘッド20には距離計22が備わっている。
なお、距離計22が備わる以外、実施例6の摩擦かく拌接合装置1aは、
図12に示す実施例4の摩擦かく拌接合装置1aと同じ構成である。また、制御装置30(
図4参照)は、実施例1と同様に、接合線4bに対する接合ヘッド20のずれ(
図5に示す接合偏差ΔX)を解消する。
【0078】
距離計22は、接合ヘッド20から被接合部材4の表面4aまでの距離(ヘッド高さHd)を計測して距離信号Sig4を出力する。制御装置30(
図4参照)は、距離信号Sig4からヘッド高さHdを算出する。さらに、実施例6の制御装置30は、算出したヘッド高さHdが
図11に示す高さ上限Hd
Tと、高さ下限Hd
Lと、の間(適正高さ範囲)になるように昇降装置50を制御する。
【0079】
制御装置30(
図4参照)は、ヘッド高さHdが適正高さ範囲より低い場合、昇降装置50を制御してツール挿入量λを小さくする。接合ヘッド20と被接合部材4が離反してヘッド高さHdが増大する。また、制御装置30は、ヘッド高さHdが適正高さ範囲より大きい場合、昇降装置50を制御してツール挿入量λを大きくする。接合ヘッド20と被接合部材4が近接してヘッド高さHdが減少する。
【0080】
このように、実施例6に係る摩擦かく拌接合装置1aの制御装置30(
図4参照)は、昇降装置50を制御してヘッド高さHdを適正高さ範囲に維持しながら被接合部材4を摩擦かく拌接合する。これによって、ツール挿入量λが挿入適正範囲に維持されて摩擦かく拌接合の品質が向上する。
また、実施例4と同様に、少ないエネルギでツール挿入量λを調節できる。さらに、接合ヘッド20の移動に対する慣性を小さくできるので、接合ヘッド20の位置制御に対する精度が向上する。
【実施例7】
【0081】
図15は実施例7に係る摩擦かく拌接合装置の接合ヘッドを示す図である。
図15に示すように、実施例7の摩擦かく拌接合装置1aには、昇降装置50のサーボモータ50aに供給される電流(位置制御電流Is)を計測する電流計(昇降装置電流計50d)が備わっている。昇降装置電流計50dは、サーボモータ50aに供給される位置制御電流Isを計測して計測信号(昇降電流信号Sig5)を出力する。昇降電流信号Sig5は制御装置30(
図12参照)に入力される。制御装置30の制御部30a(
図4参照)は、昇降電流信号Sig5から、サーボモータ50aに供給される位置制御電流Isを算出する。
【0082】
なお、昇降装置電流計50dが備わる以外、実施例7の摩擦かく拌接合装置1aは、
図12に示す実施例4の摩擦かく拌接合装置1aと同じ構成である。また、制御装置30(
図4参照)は、実施例1と同様に、接合線4bに対する接合ヘッド20のずれ(
図5に示す接合偏差ΔX)を解消する。
【0083】
制御装置30(
図4参照)は、サーボモータ50aを駆動して昇降ヘッド50c(接合ヘッド20)の位置を決定したら、昇降ヘッド50cをその位置に保持するためにサーボモータ50aに位置制御電流Isを供給する。これによって、昇降ヘッド50cの位置が保持され、ひいては昇降ヘッド50cに取り付けられている接合ヘッド20の接合ツール2の位置が保持される。そして、被接合部材4を摩擦かく拌接合するときには接合ヘッド20と被接合部材4との距離(ヘッド高さHd)が保持されて、ツール挿入量λが保持される。
【0084】
摩擦かく拌接合時にヘッド高さHdが変化するとサーボモータ50aにかかる負荷が変化し、これによって位置制御電流Isが変化する。換言すると、位置制御電流Isが一定であればヘッド高さHdが一定になる。また、位置制御電流Isとヘッド高さHdとの関係は摩擦かく拌接合装置1a(
図12参照)の特性として決定される。
【0085】
例えば、
図11に示すように、被接合部材4に対するツール挿入量λの挿入適正範囲が設定される場合、その挿入適正範囲に対応するような、ヘッド高さHdの上限値(高さ上限Hd
T)と下限値(高さ下限Hd
L)が設定可能である。
【0086】
制御装置30(
図4参照)は、昇降電流信号Sig5から算出する位置制御電流Isが、ヘッド高さHdが高さ上限Hd
Tとなるときの電流よりも大きくなったら昇降装置50を制御して接合ヘッド20を被接合部材4から離反させてヘッド高さHdを大きくする。一方、昇降電流信号Sig5から算出する位置制御電流Isが、ヘッド高さHdが高さ下限Hd
Lとなるときの電流よりも小さくなったら、制御装置30は昇降装置50を制御して接合ヘッド20を被接合部材4に近接させてヘッド高さHdを小さくする。
【0087】
このように、実施例7に係る摩擦かく拌接合装置1aの制御装置30は、位置制御電流Isにもとづいてヘッド高さHdを調節することでツール挿入量λを挿入適正範囲に維持できる。これによって、ツール挿入量λが挿入適正範囲に維持されて摩擦かく拌接合の品質が向上する。
また、実施例4と同様に、少ないエネルギでツール挿入量λを調節できる。さらに、接合ヘッド20の移動に対する慣性を小さくできるので、接合ヘッド20の位置制御に対する精度が向上する。
【0088】
以上のように、
図1,2に示す実施例1の摩擦かく拌接合装置1は、接合する2つの被接合部材4の境界として形成される接合線4bに沿って接合ヘッド20を移動するとき、接合ヘッド20と接合線4bとの間にずれ(
図5に示す接合偏差ΔX)が生じた場合、ずれを補正することが可能に構成されている。つまり、実施例1の摩擦かく拌接合装置1は、接合ヘッド20と接合線4bとの間に生じる接合偏差ΔXをゼロに近づけることができる。
【0089】
摩擦かく拌接合装置1を制御する制御装置30は、撮像装置20cから入力される映像信号SigVを画像処理して接合線4bを抽出する。そして、制御装置30は、画像中心と接合線4bとのずれ(接合偏差ΔX)が所定の大きさを超えたとき、接合ヘッド20と、接合線4bと、の間に接合偏差ΔXが生じたと判定して接合偏差ΔXを補正する。具体的に制御装置30は、ロボット本体10を制御して接合ヘッド20を接合線4bの方向に移動させる。これによって接合偏差ΔXがゼロに向かって収束し、接合ヘッド20は、精度よく接合線4bに沿って移動する。したがって、被接合部材4は、接合線4bに沿って摩擦かく拌接合される。つまり、摩擦かく拌接合される領域が接合線4bから大きく離れることがないので品質の高い摩擦かく拌接合となる。
【0090】
摩擦かく拌接合においては、
図2に示す接合ヘッド20に取り付けられる接合ツール2が回転し、接合ツール2に形成されているピン部2bが被接合部材4に挿入した状態で、接合ヘッド20が接合線4bに沿って移動する。そして、回転するピン部2bが被接合部材4から受ける反力によって、接合ヘッド20と接合線4bとの間に接合偏差ΔXを生じさせる転向力P1(
図5参照)が発生する。
大型の摩擦かく拌接合装置1であれば、転向力P1を大きな質量で抑え込んで、接合ヘッド20と接合線4bとの間に接合偏差ΔXを生じさせることなく(又は、接合偏差ΔXが小さな状態で)接合ヘッド20を移動できる。
【0091】
例えば、実施例1の摩擦かく拌接合装置1は、ロボット本体10に接合ヘッド20が取り付けられている。ロボット本体10は、下腕10bや上腕10cなどの可動部を効率よく動作させるために小型軽量化が図られている。したがって、ピン部2bの回転で生じる転向力P1によって接合ヘッド20が変位しやすく、接合ヘッド20と接合線4bとの間に接合偏差ΔXが生じやすい。
【0092】
そこで、実施例1の制御装置30は、接合ヘッド20と接合線4bとの間に生じる接合偏差ΔXを補正可能に構成されている。これによって、小型軽量のロボット本体10に接合ヘッド20が取り付けられた摩擦かく拌接合装置1(
図1参照)であっても、接合線4bに精度よく沿った摩擦かく拌接合が可能になり、品質の高い摩擦かく拌接合が可能となる。
また、摩擦かく拌接合装置1の小型化が可能になるので、例えば、設置の自由度の高い可搬式の摩擦かく拌接合装置1とすることができる。
【0093】
また、実施例1の摩擦かく拌接合装置1を制御する制御装置30は、主軸モータ3に供給する電流(モータ駆動電流Im)を監視することでツール挿入量λを監視する。そして、ツール挿入量λが所定の挿入適正範囲を維持するように被接合部材4を摩擦かく拌接合できる。したがって、被接合部材4に対するピン部2bの挿入量が一定に維持され、品質の高い摩擦かく拌接合が可能になっている。
【0094】
また、
図12に示すように、実施例4の摩擦かく拌接合装置1aは、昇降装置50を有する。そして、接合ヘッド20は昇降装置50を介してロボット本体10に取り付けられている。したがって、制御装置30は、昇降装置50を制御することで、ツール挿入量λを一定に維持することができる。
昇降装置50は、ロボット本体10よりも少ないエネルギ(電力)で駆動可能であるので、ツール挿入量λを一定に維持するのに必要なエネルギが削減される。
【0095】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではない。例えば、前記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【0096】
この他、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、実施例1〜実施例3に記載される摩擦かく拌接合装置1(
図1参照)の接合ヘッド20(
図2参照)には、撮像装置20c(
図2参照)が備わる。そして、制御装置3の画像処理部30d(
図4参照)は、撮像装置20cから入力される映像信号SigVにもとづいて接合線4b(
図2参照)と接合ヘッド20のずれを検出する。
この構成に限定されず、レーザ光を被接合部材4(
図2参照)に照射して接合線4b(
図2参照)を検出する構成とすることも可能である。
【0097】
例えば、レーザ光を被接合部材4(
図2参照)に照射して被接合部材4との距離を計測する非接触式の距離計(図示せず)を接合ヘッド20(
図2参照)の進行方向前方に備える。接合線4b(
図2参照)は、被接合部材4の表面4a(
図2参照)に対する凹部となるのでこの部分は、距離計との距離が長くなる。制御装置30(
図4参照)は、距離計との距離が長い部分(凹部)を接合線4bとして抽出することによって、接合線4bと接合ヘッド20とのずれを検出可能となる。
このような構成であれば、撮像装置20c(
図2参照)や画像処理部30d(
図4参照)が不要となり、摩擦かく拌接合装置1(
図1参照)の構造を簡素化できる。
【0098】
また、画像処理部30d(
図4参照)は、
図5に示すように、接合偏差ΔXが偏差限界値ΔXmaxになったときに位置補正信号Sig2を出力する。この構成に限定されず、画像処理部30dは、接合偏差ΔXがゼロより大きくなったときに、接合偏差ΔXの大きさを示す位置補正信号Sig2を出力する構成であってもよい。この場合、制御部30a(
図4参照)は位置補正信号Sig2によって接合偏差ΔXの大きさを取得できる。したがって、制御装置30(
図4参照)は、常に接合偏差ΔXがゼロとなるように接合ヘッド20(
図2参照)を移動させることができ、接合線4b(
図2参照)と接合ヘッド20との間に生じるずれを効果的に解消できる。
【0099】
また、実施例1〜実施例7のロボット本体10(
図1参照)は6軸の自由度を有する。この構成に限定されず、ロボット本体10の自由度は限定されない。例えば、5軸以下の自由度を有するロボット本体10であってもよいし、7軸以上の自由度を有するロボット本体であってもよい。
【解決手段】2つの被接合部材4を接合する接合線4bに沿って接合ヘッド20を移動させるロボット本体10と、接合ヘッド20に備わる主軸モータ3にモータ駆動電流を供給して接合ツール2を回転させながらピン部2bを被接合部材4に挿入し、さらに、接合ヘッド20を接合線4bに沿って移動させて2つの被接合部材4を摩擦かく拌接合する制御装置と、移動している接合ヘッド20と接合線4bに沿った方向との偏差(接合偏差)を検出する撮像装置20cと、を有し、制御装置は、接合偏差が生じたときに、接合ヘッド20を接合線4bに近づける方向に移動させて接合偏差を解消する摩擦かく拌接合装置1とする。また、摩擦かく拌接合装置1の制御装置が実行する摩擦かく拌接合方法とする。