(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5945358
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】タイヤビート潤滑剤及びその利用
(51)【国際特許分類】
C10M 173/00 20060101AFI20160621BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20160621BHJP
C10M 133/08 20060101ALI20160621BHJP
C10N 10/02 20060101ALN20160621BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20160621BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20160621BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20160621BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20160621BHJP
【FI】
C10M173/00
C10M101/02
C10M133/08
C10N10:02
C10N20:00 Z
C10N30:00 Z
C10N30:06
C10N40:00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-205160(P2015-205160)
(22)【出願日】2015年10月19日
【審査請求日】2015年11月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515289521
【氏名又は名称】勝田 雅彦
(73)【特許権者】
【識別番号】504036431
【氏名又は名称】株式会社速水マシンツール
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】勝田 雅彦
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−313596(JP,A)
【文献】
特開2011−016431(JP,A)
【文献】
特開2006−312735(JP,A)
【文献】
特開2004−346239(JP,A)
【文献】
特開2002−087034(JP,A)
【文献】
特開2008−080891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 173/00
C10M 101/02
C10M 133/08
B60C 25/01
B60C 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑成分及びpH12〜13のアルカリ電解水を含有し、
前記潤滑成分は、鉱物油及び/又は合成油からなる潤滑基油、並びに界面活性剤を含み、
アルカリ電解水の含有量が20〜70質量%の範囲である、タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤。
【請求項2】
潤滑基油の含有量は、1〜30質量%の範囲であり、界面活性剤の含有量は、0.001〜5質量%の範囲である、請求項1に記載の潤滑剤。
【請求項3】
界面活性剤は、アルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の潤滑剤。
【請求項4】
添加剤をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項5】
添加剤が潤滑基油の酸化防止剤である、請求項4に記載の潤滑剤。
【請求項6】
アルカリ電解水は、ナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンを含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の潤滑剤。
【請求項7】
炭酸アルカリ金属塩水溶液を、有隔膜電解槽を用いて電気分解して、陰極側でアルカリ電解水を生成させ、得られたpH12〜13のアルカリ電解水を潤滑成分と混合することを含み、
前記潤滑成分は、鉱物油及び/又は合成油からなる潤滑基油、並びに界面活性剤を含み、
アルカリ電解水の含有量が20〜70質量%の範囲である、
タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤の製造方法。
【請求項8】
タイヤとホイールの組立方法であって、
前記ホイールの少なくともタイヤビートとの接触面に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の潤滑剤を塗布し、その後に、前記潤滑剤を塗布したホイールにタイヤを組み込むこと
を含む、前記方法。
【請求項9】
タイヤへのビートシーティング圧を300kPa以下とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一体化したタイヤとホイールの解体方法であって、
ホイールとタイヤビートとの接触面の少なくとも一部に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の潤滑剤を滲込ませ、その後に、タイヤをホイールから脱離させることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤビート潤滑剤及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤとホイールを組立てる際に、タイヤビートのホイールへの組込みを容易にするために潤滑剤が用いられている。組立てには、組込み及び取り外しがある(特許文献1、2参照)。従来用いられている潤滑剤には、固形タイプ及び水溶性タイプがある。組込みには、固形タイプを用いることが多く、水溶性タイプは、取り外しの場合にのみ用いられる。固形タイプは、ホイールとビートの間への侵入が容易ではなく、取り外しには適さない。
また、水溶性タイプを用いての取り外しの場合、潤滑性能は十分であるが、ホイールから取り外した後にタイヤ及びホイールに残った潤滑剤が残存する。取り外したタイヤ及びホイールを再利用する前に、残存した潤滑剤をきれいに除去する必要がある。
【0003】
タイヤをホイールに組込む際には、タイヤのビートのホイールへの自発的な組込を促進する目的で、ビートシーティング圧を加える。ビートシーティング圧は、作業者の安全性確保を目的として上限を300kPaとすることが、労働安全衛生規則に関する通達において規定されている。
【0004】
しかし、タイヤが大型化すると、300kPaのビートシーティング圧においてタイヤをホイールに組み込むことは、上記固形タイプの潤滑剤を用いても容易ではなく、300kPaを超えるビートシーティング圧を加えて始めて、組み込むが完了する場合もある。また、一般にタイヤビート用の潤滑剤としての使用が認められていない、組込み後に残存する性質を有する潤滑剤を用いてタイヤをホイールに組み込まれることもある。前者は、作業者の安全性確保の観点で好ましくなく、後者は、自動車の安全走行の観点で好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−207688号公報
【特許文献2】特開2006−272226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、大型のタイヤであっても、300kPa以下のビートシーティング圧においてタイヤをホイールに組み込むことが可能であり、組み込み後は、成分の残存が少なく、かつタイヤのホイールからの取り外しをビートに損傷を与えることなしに行うこともできる、タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤を提供することを本発明の目的とする。
【0007】
さらに本発明は、上記タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤の製造方法、及び上記タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤を用いた、タイヤとホイールの組立方法及び解体方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
[1]
pH11.5〜14のアルカリ電解水及び潤滑成分を含有する、タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤。
[2]
潤滑成分は、鉱物油及び/又は合成油からなる潤滑基油、並びに界面活性剤を含む、[1]に記載の潤滑剤。
[3]
潤滑基油の含有量は、1〜30質量%の範囲であり、界面活性剤の含有量は、0.001〜5質量%の範囲である、[2]に記載の潤滑剤。
[4]
界面活性剤は、アルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種である、[2]又は[3]に記載の潤滑剤。
[5]
添加剤をさらに含有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の潤滑剤。
[6]
添加剤が潤滑基油の酸化防止剤である、[5]に記載の潤滑剤。
[7]
アルカリ電解水は、ナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンを含有する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の潤滑剤。
[8]
炭酸アルカリ金属塩水溶液を、有隔膜電解槽を用いて電気分解して、陰極側でアルカリ電解水を生成させ、得られたアルカリ電解水を潤滑成分と混合することを含む、タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤の製造方法。
[9]
タイヤとホイールの組立方法であって、
前記ホイールの少なくともタイヤビートとの接触面に、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の潤滑剤を塗布し、その後に、前記潤滑剤を塗布したホイールにタイヤを組み込むことを含む、前記方法。
[10]
タイヤへのビートシーティング圧を300kPa以下とする、[9に記載の方法。
[11]
一体化したタイヤとホイールの解体方法であって、
ホイールとタイヤビートとの接触面の少なくとも一部に、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の潤滑剤を滲込ませ、その後に、タイヤをホイールから脱離させることを含む、前記方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型のタイヤから大型のタイヤまで、300kPa以下のビートシーティング圧において、タイヤをホイールに容易に組み込むことが可能な潤滑剤を提供することができる。本発明の潤滑剤を用いると、タイヤのビートのホイールへの組み込みが容易なだけではなく、ビートが容易にホイールに組み込まれることで、組込まれたタイヤのバランスの均一性が向上するという利点があり、本発明の潤滑剤を用いてホイールに組み込んだタイヤを装着した車では、走行性時のタイヤのバランスの不均一性に起因する振動が低減されるという利点もある。さらに本発明の潤滑剤は、組込み後の、成分の残存が少なく、その結果、組み込んだタイヤの走行時の残存する潤滑剤に起因する問題の発生を回避できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例6におけるタイヤとホイールの位置の写真
(写真中のPORSCHEは商標である。)。
【0011】
さらに本発明の潤滑剤によれば、タイヤのホイールからの取り外しを容易に行うことができ、その結果、ビートに損傷を与えることなしにホイールからのタイヤの取り外しが可能である。
【0012】
本発明によれば、作業者の安全性確保に寄与でき、かつ安定及び安全走行が可能な、ホイールに組み込んだタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<潤滑剤>
本発明は、タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤に関し、この潤滑剤は、pH11.5〜14のアルカリ電解水及び潤滑成分を含有する。
【0014】
潤滑成分は、鉱物油及び/又は合成油からなる潤滑基油、並びに界面活性剤を含むものであることができる。
【0015】
(潤滑基油)
潤滑基油としては、一般に金属加工用の基油として用いられている、鉱油、合成油、またはこれらの混合物を用いることができる。
【0016】
本発明に用いることができる鉱油としては、種々のものを挙げることができる。例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油、またはナフテン基系原油を常圧蒸留するか、あるいは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、またはこれを常法にしたがって精製することによって得られる精製油、例えば、溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油等を挙げることができる。
【0017】
一方、本発明に用いることができる合成油としては、例えば、炭素数8〜14のポリ−α−オレフィン、オレフィンコポリマー(例えば、エチレン−プロピレンコポリマーなど)、あるいはポリブテン、ポリプロピレン等の分岐オレフィンやこれらの水素化物、さらにはポリオールエステル(トリメチロールプロパンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルなど)や二塩基酸エステル等のエステル系化合物、アルキルベンゼン等を挙げることができる。
【0018】
界面活性剤は、アルカリ電解水に潤滑基油を分散させる目的で添加する。界面活性剤は、特に限定はされないが、例えば、アルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種であることができる。
【0019】
アルカリ電解水は、アルカリ金属塩の水溶液を電気分解して、陰極側で生成するアルカリ性の電解水である。アルカリ金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム又はその混合物の塩であることができ、好ましくはナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンである。アルカリイオンの対イオンとしては、アルカリ電解水中に残存しても比較的影響が少ないという観点で、炭酸イオンを挙げることができる。電気分解は、有隔膜電解槽または無隔膜電解槽の何れを用いても良いが、アルカリ電解水中の不純物量を抑制するという観点からは、有隔膜電解槽を用いて行うことが好ましい。アルカリ電解水としては、有隔膜電解槽を用い、アルカリ金属塩として、例えば、炭酸カリウムを用いて電気分解して、陰極側で生成した水溶液を挙げることができる。
【0020】
アルカリ電解水のpHは、潤滑剤の潤滑性能を考慮して11.5〜14とし、好ましくは12〜13、より好ましくは12.2〜12.8、さらに好ましくは12.3〜12.7、最も好ましくは12.4〜12.6の範囲である。アルカリ電解水のpHは、電気分解に用いるアルカリ金属塩水溶液のアルカリ金属塩濃度及び電気分解の条件(主に、アルカリ金属塩水溶液単位量当たりの投入電気量)等により適宜調整することができる。
【0021】
本発明の潤滑剤中の潤滑基油及び界面活性剤の含有量は、アルカリ電解水のpH、潤滑基油及び界面活性剤の種類に応じて、所望の潤滑性能も考慮して適宜決定することができる。潤滑基油の含有量は、例えば、1〜30質量%の範囲、好ましくは5〜25質量%の範囲、より好ましくは10〜25質量%の範囲である。界面活性剤の含有量は、例えば、0.001〜5質量%の範囲で、潤滑基油の含有量により適宜調整される。アルカリ電解水の含有量は、例えば、10〜80質量%の範囲、好ましくは20〜70質量%の範囲、より好ましくは25〜60質量%の範囲である。
【0022】
本発明の潤滑剤は、添加剤をさらに含有することができる。
潤滑油の保存中の酸化による品質低下を抑制するという観点から、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤としては、例えば、(1)連鎖反応停止剤:フェノール系酸化防止剤,アミン系酸化防止剤,(2)過酸化物分解型:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP),有機硫黄系酸化防止剤,(3)金属不活性化剤などを挙げることができる。好ましくは、アミン系酸化防止剤を挙げることができる。酸化防止剤の含有量は、例えば、0.001〜5質量%の範囲である。
【0023】
<潤滑剤の製造方法>
本発明は、タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤の製造方法を包含する。この方法は、アルカリ金属塩水溶液を、有隔膜電解槽を用いて電気分解して、陰極側でアルカリ電解水を生成させ、得られたアルカリ電解水を潤滑成分と混合することを含む。
【0024】
アルカリ金属塩水溶液の種類は前述のとおりであり、アルカリ金属塩の濃度は、アルカリ電解水の所望のpHや電気分解の条件を考慮して適宜決定することができる。
【0025】
電気分解には、有隔膜電解槽を用いる。無隔膜電解槽を用いることもできるが、得られるアルカリ電解水の純度を考慮して、有隔膜(イオン交換膜)電解槽を用いることが好ましい。電気分解の条件は、アルカリ電解水のpH等を考慮して適宜決定できる。例えば、炭酸カリウム濃度を1〜20質量%とし、電気分解には有隔膜電解槽を用い、電気分解の条件は印加電圧DC1〜80V、好ましくは5〜20V、電流密度1〜10A/dm
2、生成量10〜100L/時間で行うことができる。但し、これらの範囲に限定される意図ではない。
【0026】
<タイヤとホイールの組立方法>
本発明は、タイヤとホイールの組立方法を包含する。この方法は、ホイールの少なくともタイヤビートとの接触面に、前記本発明の潤滑剤を塗布し、その後に、前記潤滑剤を塗布したホイールにタイヤを組み込むことを含む。本発明の潤滑剤の塗布量の目安は、10インチタイヤの場合6〜10mL、18インチタイヤの場合13〜17mL、26インチタイヤの場合20〜24mLの範囲である。但し、この範囲に限定される意図ではない。本発明の方法では、タイヤへのビートシーティング圧を300kPa以下とすることができ、その結果、組立て作業者の安全性確保がより容易になるという利点がある。
【0027】
<一体化したタイヤとホイールの解体方法>
本発明は、一体化したタイヤとホイールの解体方法を包含する。この方法は、ホイールとタイヤビートとの接触面の少なくとも一部に、前記本発明の潤滑剤を滲込ませ、その後に、タイヤをホイールから脱離させることを含む。タイヤをホイールから脱離させる場合の本発明の潤滑剤の塗布量の目安は、ホイールにタイヤを組み込む場合と同様に、10インチタイヤの場合6〜10mL、18インチタイヤの場合13〜17mL、26インチタイヤの場合20〜24mLの範囲である。但し、この範囲に限定される意図ではない。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
【0029】
実施例1
潤滑剤の調製
潤滑剤A:
ジエタノールアミン1%、トリエタノールアミン5%、アミン系添加剤14%、合成潤滑油(ポリオレフィン油)25%、鉱油5%、残部(50%)アルカリ電解水(pH12.5)を混合して、本発明の潤滑剤Aを調製した。
【0030】
潤滑剤B:
ジエタノールアミン5%、トリエタノールアミン7%、アミン系添加剤26%、合成潤滑油27%、鉱油5%、残部(30%)アルカリ電解水(pH12.5)を混合して、本発明の潤滑剤Bを調製した。
【0031】
実施例2
タイヤとホイールの組立方法
潤滑剤A
既存のタイヤマウンティング装置及び組み込み用レバーを用いて、熟練した組立作業者が、実施例1の潤滑剤を用いてタイヤ(ピレリーPZERO NEROGT 195/45/16
(商標))をホイール(アッソ7.0JJ×16
(商標))に組み込んだ。ホイールのタイヤビートとの接触面に、16mLの潤滑剤Aを塗布し、潤滑剤を塗布したホイールにタイヤを組み込んだ。作業の途中で、余分なビート落としの操作を要することなく、1本のタイヤの組込みは、51秒で完了した。組込み時のタイヤへのビートシーティング圧は、270kPaであり、規定圧力(300kPa)の範囲内に収まった。
【0032】
実施例3
タイヤとホイールの組立方法
潤滑剤Aに代えて潤滑剤Bを用いた以外は、実施例2と同様にホイールにタイヤを組み込んだ。1本のタイヤの組込みは、50秒で完了した。
【0033】
比較例1
タイヤとホイールの組立方法
潤滑剤Aに代えて市販のタイヤビート組立用潤滑剤(TIP TOP、Universal Mounting Paste
(商標))を用いた以外は、実施例2と同様に、熟練した組立作業者がホイールにタイヤを組み込んだ。1本のタイヤの組込みには、66秒を要した。作業の途中で、潤滑不足による組み込み用レバーによるビート落としの操作を2回行う必要があり、また、最終の操作においてレバーを抜く際にホイールに傷が付く虞があった。作業組込み時のタイヤへのビートシーティング圧は、420kPaであり、規定圧力(300kPa)を大きく超えていた。
【0034】
実施例4
一体化したタイヤとホイールの解体方法
タイヤ付きホイール(タイヤ(ヨコハマ ADVAN A050 245/40/17
(商標))、ホイール(ポルシェカップタイプ9.0JJ×17
(商標))のホイールとタイヤビートとの接触面に16mLの潤滑剤Aを滲込ませ、その後に、タイヤをホイールから脱離させた。タイヤをホイールから脱離用の工具には、レバーを用いた。1本のタイヤのホイールからの脱離は、79秒で完了した。作業は、ビードはレバーを片手で簡単に上がり、連続回転であっという間にビードが外れ、その後片手で簡単に裏側にビードも向け終了した。脱離タイヤのビートには損傷はみられなかった。
【0035】
実施例5
一体化したタイヤとホイールの解体方法
潤滑剤Aに代えて潤滑剤Bを用いた以外は、実施例4と同様にタイヤをホイールから脱離させた。1本のタイヤのホイールからの脱離は、80秒で完了した。脱離タイヤのビートには損傷はみられなかった。
【0036】
比較例2
タイヤとホイールの組立方法
潤滑剤Aに代えて市販のタイヤビート脱離用潤滑剤(TIP TOP、Universal Mounting Paste
(商標))を用いた以外は、実施例4と同様にホイールにタイヤを脱離した。テストタイヤがSタイヤでありサイドウォールが堅い為、タイヤビードクリームではビードが簡単に上がらず、両手で顔をしかめるほど力を入れ作業した。また、ビードが上がらずレバーを何度も左右に振りながら作業した。ビードが上がってもサイドウォールが堅い為、ビードに損傷が出る可能性が有り断続回転にて作業し、裏側のビードを引き上げる作業も潤滑不足の為、簡単に上がらず、両手でかなり強い力でずらし脱着した。1本のタイヤの脱離には、103秒を要した。脱離タイヤのビートに複数の損傷がみられた。
【0037】
実施例6
走行ズレテスト
実施例2と同様の条件で組立てたホイール付きタイヤの走行中のホイールとタイヤのズレをテストした。
テスト車両 1991年式 ポルシェ964 カレラ4
(商標)、
テストタイヤ ヨコハマ ADVAN A050
(商標)、
タイヤサイズ F 225/45/17、R245/40/17
(商標)、
テストは、上記ホイール付きタイヤ4本(RR、RF、LR、LF)を装着した自動車でカーレース(ツクバサーキット、アイドラーズゲームス)に参戦し、走行前、予選12週、決勝11週走行後の各タイヤとホイールの位置を写真撮影した。
図1に示す。ツクバ2000を合計23週走行したがズレの発生は無かった。
【0038】
比較例3
走行ズレテスト
比較例1で組立てたホイール付きタイヤの走行中のホイールとタイヤのズレを実施例6と同様にテストした。この場合、ズレの程度は、実施例6ほぼ同等であった。即ち、本発明の潤滑剤は、従来の市販のタイヤビート脱離用潤滑剤とズレの程度に関しては、ほぼ同等であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、タイヤとホイールの組立に関する技術分野に有用である。
【要約】
【課題】300kPa以下のビートシーティング圧においてタイヤをホイールに組み込むことが可能であり、成分の残存が少なく、かつタイヤのホイールからの取り外しも容易なタイヤビート装着又は脱着用潤滑剤を提供する。このタイヤビート装着又は脱着用潤滑剤を用いた、タイヤとホイールの組立方法及び解体方法を提供する。
【解決手段】アルカリ電解水及び潤滑成分を含有する、タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤。潤滑成分は、鉱物油及び/又は合成油からなる潤滑基油、並びに界面活性剤を含む。アルカリ電解水を潤滑成分と混合することを含む、タイヤビート装着又は脱着用潤滑剤の製造方法。ホイールのタイヤビートとの接触面に上記潤滑剤を塗布し、前記潤滑剤を塗布したホイールにタイヤを組み込むタイヤとホイールの組立方法。ホイールとタイヤビートとの接触面に上記潤滑剤を滲込ませ、その後に、タイヤをホイールから脱離させる一体化したタイヤとホイールの解体方法。
【選択図】なし