【実施例】
【0024】
実施例及び比較例について説明する。
エアゾール原液として、精製水80重量%、エタノール20重量%の水性原液を調整し、表1へ試験1)、試験2)、試験3)として示す夫々の割合でエアゾール容器へジメチルエーテルと共に充填した。
そして、本発明の実施例では、上記
図1(A)へ示す逆テーパー面7を備えた噴射ノズル3を用いた。実施例において使用した噴射ノズル3は、導入口4の口径φを0.3mm、吐出口である噴射口5の口径φを2.0mmとした。噴射ノズル3の軸方向について導入口4と噴射口5との間の全域を逆テーパー面7とした。
また、比較例として、
図2へ示すノーマルノズル即ち従来の周知の噴射ノズルw3を用いたときの噴射状態を確認した。この比較例において、噴射口w5の口径即ち小径部w7の内径を0.4mmとした。
【0025】
【表1】
本発明の実施例即ち
図1へ示す逆テーパー面7を備えた噴射ノズル3(必要に応じて逆テーパーノズルと呼ぶ。)を備えたエアゾール噴射装置1は、試験1)2)3)の全てにおいて収容物を棒状に噴射した。しかし、
図2へ示す従来の噴射ノズルw3(以下必要に応じてノーマルノズルと呼ぶ。)を備えたエアゾール噴射装置w1は、試験2)3)へ示す通りジメチルエーテルを50重量%以上配合すると霧状の噴射状態となった。
また、表2、表4及び表6へ示す育毛剤処方例1〜3を作成し、当該育毛剤処方例1〜3の組成物に上記試験1)〜3)の水性原液を置き換えて育毛剤エアゾールを作成し、被験者の頭皮の血流量の測定を行った。
表3は育毛剤処方例1を使用した場合の測定結果を、表5は育毛剤処方例2を使用した場合の測定結果を、表7は育毛剤処方例3を使用した場合の測定結果を夫々示している。
表3、表5及び表7において、左欄の項目中に「テ」を付したものは上記逆テーパーノズルを用いた本発明の実施例を示し、「ノ」を付したものは上記ノーマルノズルを用いた比較例を示す。
当該測定方法は、前腕内側中央部に育毛剤エアゾールを10cm離して1秒間噴射し血流量の変化を確認するものであり、測定装置として、血流計「アドメテック レーザードップラー ALF21RD」(商品名/株式会社アドメテック/愛媛県松山市空港通1丁目8番16号)を使用した。
更にエアゾール噴射装置として上記ノーマルノズルを用い、原液99重量%と炭酸ガス1重量%をエアゾール容器に充填して同様の試験を行った比較例を表8へ示す。尚、このノーマルノズルを用い表8へ結果を示す比較例において、エアゾールは棒状に噴射されたことを確認した。
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
【表6】
【0031】
【表7】
【0032】
【表8】
【0033】
ノーマルタイプを使用したものは試験1)の条件では棒状で吐出されるがジメチルエーテルの量が少なく、また薬剤は垂れてしまうため殆ど塗布面に残らない。このため育毛剤処方例1を使用した場合において上記表3へ示す通り、比較例の何れにおいても塗布後12分を経過後の血流が1.6ml/min(ミリリットル毎分)を超えるものはなく、血行促進効果が得られていないのに対し、逆テーパーノズルを用いたものにおいては、ジメチルエーテルを20重量%とする1)−1テは1.8ml/minの血流であったものの、2)−1テ、3)−1テは夫々5.5ml/min、5.2ml/minと、5ml/minを優に超える結果を得ている。
また育毛剤処方例2を使用した場合において上記表5へ示す通り、比較例については塗布後12分経過で血流が1.6ml/min(ミリリットル毎分)以下であったのに対し、逆テーパーノズルを用いたものにおいては、ジメチルエーテルを20重量%とする1)−2テは1.7ml/minの血流であったものの、2)−2テ、3)−2テは夫々4.7ml/min、4.2ml/minと、4ml/minを優に超える結果を得ている。
更に、育毛剤処方例3を使用した場合において上記表7へ示す通り、比較例については塗布後12分経過で血流が1.2ml/min(ミリリットル毎分)以下であったのに対し、逆テーパーノズルを用いたものにおいては、ジメチルエーテルを20重量%とする1)−3テは1.6ml/minの血流であったものの、2)−3テ、3)−3テは夫々5.0ml/min、4.2ml/minと、4ml/minを優に超える結果を得ている。
また、試験2)、試験3)の条件でジメチルエーテルの量を増やしたらノーマルノズルを用いると霧状で吐出されるため、ジメチルエーテルは塗布面に届くまでに多くが揮散され、血行促進効果が得られなかった。
逆テーパータイプを用いた場合上記の通り、試験1)の条件においては、ジメチルエーテルの量が少ないので上記ノーマルノズルを用いたものと大差ない結果である。一方試験2)及び試験3)の条件において逆テーパータイプを用いたものでは適切な気化を伴いつつ棒状に吐出されるため、ジメチルエーテルの頭皮に届く量が多く、また密着性が良く、棒状に噴射できて適切な気化を伴わないノーマルノズルで生じるような液ダレも少ないため、血行促進剤が肌に浸透し、血流量の増加が確認されたのである。
【0034】
図3(A)は上記本発明の実施例における逆テーパーノズルの噴射の状態を示すスーパースロー動画の1コマであり、
図3(B)は上記比較例におけるノーマルノズルの噴射の状態を示すスーパースロー動画の1コマである。
図3(A)(B)において、図中右側から左側の平らな面へ向けてエアゾールが噴射されている。
図3(A)と
図3(B)の何れもエアゾールは棒状に噴射されていることが確認できる。しかし、
図3(B)へ示すノーマルノズルにより噴射されたエアゾールは上記面に当たって跳ね返りその多くが飛散して当該面へ殆ど付着していないことが確認できるのに対して、
図3(A)へ示す本発明の逆テーパーノズルにより噴射されたエアゾールは、その多くが跳ね返りなく上記面に付着して多重の波紋を呈していることが確認できる。
【0035】
図4に本発明の上記逆テーパーノズルにて実際に育毛剤を噴射する被験者の頭皮を拡大して示し、
図5へ上記ノーマルノズルにて実際に育毛剤を噴射する被験者の頭皮を拡大して示す。
詳しくは
図4(A)及び
図5(A)は何れも育毛剤の噴射前の被験者の頭皮を拡大した写真であり、棒状に見える複数の暗色の部分は被験者の頭髪である。
図4(B)及び
図5(B)は何れも、
図4(A)及び
図5(A)へ示す被験者の頭皮に対し育毛剤噴射中の状態を示す写真である。
図4(C)及び
図5(C)は何れも、
図4(B)及び
図5(B)の噴射が終了した状態の被験者の頭皮を示している。
図5(B)のノーマルノズルにて頭皮へ噴射されたエアゾールは細かな気泡が少なく流動的で液ダレが生じているのに対して、
図4(B)の本発明の逆テーパーノズルにて頭皮へ噴射されてエアゾールは
図5(B)の気泡よりも細かな気泡が多数頭皮に滞留していることが確認できる。
また、前述の
図3(B)から頭皮へ噴射した場合ジメチルエーテルは殆ど頭皮に残らず、エアゾール噴射装置を用いずに育毛剤を頭皮に振った場合と変わらないことが確認できる一方で、
図3(A)及び
図4(B)からエアゾールは跳ね返らず、ジメチルエーテルはエアゾール特有の細かな泡状になって頭皮に残ることが確認できる。
図3及び
図4に見られる現象が、上記表3、表5及び表7の結果を裏付けていることが分かる。
【0036】
(小活)
既に述べた通り、従来より、ジメチルエーテル(もしくはLPGの混合噴射剤)を20%(勢いが弱いため窒素や炭酸ガスなどの圧縮ガスが加圧する場合がある)配合したものがあるが、液量が多いため頭皮に付着しても液ダレが多く目に入るなどの不具合がある。また、液ダレを解消するためにジメチルエーテル(もしくはLPGの混合噴射剤)を50%配合したものがあるが、上述のように噴射剤量が多いため霧状となり薬剤が毛髪に付着して頭皮まで届かない不具合がある。
本発明は、上記不具合を特に次のa)〜d)の構成を備えることにて、解決できた。
a)血行促進剤として、ニンジンエキス、ビタミンE類、セファランチンを必須の組成とする。
b)低級アルコールを収容物100重量%中10重量%以上とする。
c)ジメチルエーテルを、上記a)b)のエアゾール原液及び当該c)を含む収容物100重量%中30重量%含む。
d)上記a)及びb)を含むエアゾール原液と上記c)
とを含む収容物とを
図1(A)へ示す噴射ノズル3に逆テーパー面7を備えた噴射ボタン2を用いることにてエアゾールを棒状に吐出する。
以上により、本発明は、c)の成分の頭皮への密着が高められ、a)の成分を頭皮から浸透を高めて血行促進効果が得られる育毛剤のエアゾール製品を提供できたものである。
【0037】
(変更例)
図1へ示す実施の形態において、逆テーパー面7は噴射ノズル3の導入口4を気化制御空間kの始点とするものとし、逆テーパー面7は、噴射ノズル3内部通路の内側面のほぼ全域に渡って設けるものとした。この他、上記適切な気化の制御が行えるものであれば、噴射ノズル3の導入口4よりも噴射口5寄りに逆テーパー面7の始端即ち気化制御空間kの上記始点を置くものとしても実施できる。噴射口5寄りに逆テーパー面7の始端を置く場合導入口4から当該始端までの間は、噴射ノズル3の内径を一定にすることができるし、或いは導入口4から当該始端に向け内径を狭めるものとしてもよい。
【0038】
また上記適切な気化の制御が行えるものであれば上記の、収容物の移動方向となる軸方向について、逆テーパー面7の終端即ち気化制御空間kの終点を噴射口3と一致させるものに限定するものではなく、当該終点は噴射口5よりも上記始点側に寄ったものとし、当該終点と噴射口5間において噴射ノズル3の内径は、一定とすることができる。また、上記適切な気化の制御が行えるものであれば、上記噴射ノズル3の軸方向即ち噴射ノズル3内での収容物の移動方向について、逆テーパー面7を噴射ノズル3内に複数設けるものとしても実施できる。逆テーパー面7を複数設ける場合、逆テーパー面7同士において夫々噴射ノズル3の軸方向に対しなす角度を異なるものとすればよい。但し、逆テーパー面7同士間に噴射ノズル3の内径を一定とする区間を介するものとすれば、上記適切な気化の制御が行える範囲において、逆テーパー面7同士は上記角度を同じものとしても或いは異なるものとしても実施することができる。
【0039】
また、上記逆テーパー面7は、噴射ノズル3の軸方向に沿った断面において輪郭を略直線とし、気化規制空間を略円錐状とするものであった。この他、逆テーパー面7は、適切な気化の規制が行えるものであれば、噴射ノズル3の軸方向に沿った断面において輪郭を曲線的にするものとしても実施できる。具体的には、当該輪郭を放物線とし気化規制空間kを釣鐘状とするものとしてもよく、或いは当該輪郭を引弧線とし気化規制空間kをラッパ状にするものとしてもよい。
【0040】
更に、気化制御部7は上記の逆テーパー面7に限定するものではない。例えば図示した例のように気化制御部7を、噴射口5へ向けて導入口4側から漸次即ち連続して噴射ノズル3の通路の径を小さくするものとするのではなく、上記適切な気化の制御ができる範囲において、噴射口5の口径を上記通路の導入口4側の径よりも不連続に即ち断続的に大きくするものとしてもよい。例えば噴射ノズル3の側面を透視した状態に見て、階段のように複数の段差を以て噴射口5側へ上記通路の導入口4側から段階的に径を大きくするものとして実施できる。また、気化制御部7を複数の段数を持った階段状とする他、上記適切な気化の制御ができる範囲において、気化制御部7を1つのみ段差を持つものとすることができる。例えば、上記適切な気化の制御ができればよく、
図2(B)の大径部w6と小径部w7の配置を逆にして実施する、即ち導入口4側を噴射口5側よりも内径の小さな小径部w7とし小径部w7より噴射口w5側を大径部w6とすることにて、気化制御部7を形成することができる。
【0041】
また、軸方向について、気化制御部7全体として噴射口5側が導入口4側よりも通路の内径を増加する傾向を以て上記適切な気化制御をおこなえるものであれば、上記通路の局所において噴射口5側より導入口4側の径の大きな箇所があったとしても、このような形態を排除するものではない。
【0042】
また更に、上記において、エアゾール製品は、被噴射物を育毛剤としたが、育毛剤以外の薬剤を被噴射物として収容し上記エアゾール噴射装置1にて噴射するものとしても実施するのを除外するものではない。
【0043】
(育毛剤を被噴射物とする本発明に係るエアゾール製品の概括)
エアゾール噴射装置の噴射ノズル3は、内部に気化制御空間kを備え、噴射ノズル3は、噴射口5よりも奥側から噴射口5へかけて漸次内径を大きくする逆テーパー面7を内側面に備え、気化制御空間kは、逆テーパー面7に囲まれた空間であり、液化ガスはジメチルエーテルを含むものであり、収容物全体を100重量%として、収容物中前記ジメチルエーテルが20重量%より多く含まれるものであり、育毛剤は、ニンジンエキスとビタミンE類とセファランチンとを含むと共に収容物全体を100重量%として、前記低級アルコールを10重量%以上含むものであり、前記ニンジンエキスとビタミンE類とセファランチンと前記低級アルコールと前記ジメチルエーテルとの合計100重量%中、前記ジメチルエーテルを30重量%以上とする。
以上により、育毛剤及び液化ガスを収容物とするエアゾール容器と前記エアゾール容器内の育毛剤を前記液化ガスにて噴射するエアゾール噴射装置を備えた、エアゾール製品において、噴射により液化ガスが気化して一気に広がるのを防ぐと共に液ダレによる、育毛剤の頭皮における血行促進の低下を抑制できた。
即ち、
図1(A)及び
図3(A)へ示されたものと、
図2(B)及び
図3(B)とに示された棒状に噴射されたエアゾールは一見して同じに見えるものの、
図1(A)及び
図3(A)へ示す棒状に噴射されたエアゾールは、
図2(B)及び
図3(B)へ示す棒状に噴射されたエアゾールと異なる。
図1(A)及び
図3(A)へ示す棒状に噴射されたエアゾールは、
図2(A)を示すように一気に気化していないものの、適切に気化されたものであり、
図4(B)と
図5(C)へ示す現象、及び表3、表5、表7へ示す血行促進の効果の差となって表れている。