特許第5945378号(P5945378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945378
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】凍結検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/02 20060101AFI20160621BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20160621BHJP
   G01N 25/00 20060101ALI20160621BHJP
   B67D 1/08 20060101ALN20160621BHJP
【FI】
   G01N25/02 Z
   F25D11/00 102E
   G01N25/00 L
   !B67D1/08 A
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-7506(P2012-7506)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-148399(P2013-148399A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】398032289
【氏名又は名称】株式会社テックスイージー
(74)【代理人】
【識別番号】100111084
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 義昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆秀
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−058650(JP,A)
【文献】 特開2011−122793(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0104322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00−25/72
G01K 1/00−19/00
G01W 1/00− 1/18
G01D 18/00−21/02
G09B 23/16
G08B 19/02
F25D 11/00−16/00
27/00−31/00
F25C 1/00− 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結検出対象となる液体を収容する液槽と、当該液槽内に配置されて、前記液体を冷却する冷却部と、前記液槽に収容された前記液体を攪拌するための攪拌部とを備えた液体冷却装置に適用される凍結検出装置であって、
前記冷却部から所定の距離に配置される温度検知部と、
前記温度検知部からの出力に基づいて、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結しているか否かを判別する判別部と
を備え、
前記判別部は、前記温度検知部に当たる前記液体の温度差により前記温度検知部からの出力が変動しているか否かに基づいて、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結しているか否かを判別する
ことを特徴とする凍結検出装置。
【請求項2】
前記判別部は、前記温度検知部からの出力が変動している場合は、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結していないと判断し、前記温度検知部からの出力が変動していない場合は、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結していると判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の凍結検出装置。
【請求項3】
前記判別部は、前記温度検知部によって検知された温度が変動しているか否かに基づいて、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結しているか否かを判別する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の凍結検出装置。
【請求項4】
前記温度検知部は、サーミスタによって構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の凍結検出装置。
【請求項5】
凍結検出対象となる液体を収容する液槽と、
前記液槽内に配置されて、前記液体を冷却する冷却部と、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の凍結検出装置と
を備えたことを特徴とする液体冷却装置。
【請求項6】
前記液槽に収容された前記液体を攪拌するための攪拌部
を更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の液体冷却装置。
【請求項7】
前記冷却部は、圧縮式冷凍機の蒸発器によって構成されている
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の液体冷却装置。
【請求項8】
前記判別部によって、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結していないと判断された場合は、前記圧縮式冷凍機を動作させ、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結していると判断された場合は、前記圧縮式冷凍機を停止させる
ことを特徴する請求項7に記載の液体冷却装置。
【請求項9】
前記液体は、不凍液である
ことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の液体冷却装置。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか一項に記載の液体冷却装置と、
冷却対象となる飲料を流すための飲料路を形成する飲料路形成部と
を備えた飲料冷却装置であって、
前記飲料路形成部は、前記液槽内に配置されている
ことを特徴とする飲料冷却装置。
【請求項11】
前記凍結検出装置は、前記冷却部の周囲に所望の量の氷が形成されているか否かを判別する
ことを特徴とする請求項10に記載の飲料冷却装置。
【請求項12】
前記温度検知部は、前記所望の量に対応する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項11に記載の飲料冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料(例えば、ビール)を冷却する飲料冷却装置等に適用される凍結検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食店等において、ビールサーバーを用いて、ビールをジョッキやグラスに注いで客に提供する場合、ビールの冷却には、氷蓄熱式の冷却装置が一般に利用されている。氷蓄熱式の冷却装置は、例えば、冷却装置内に設けられた水槽内に収容された水(飲料冷却液)を、水槽内に配置した圧縮式冷凍機の蒸発器で冷却して、蒸発器の周囲に氷を形成させることで蓄熱を行うと共に、当該水槽内に、ビールを通過させる配管を設けておいて、当該配管内を、ビール樽から導かれるビールを通過させることで、ビールを飲み頃の温度(例えば、5℃程度)まで冷却している。氷による蓄熱を利用することにより、圧縮式冷凍機の小容量化を図りつつ、必要な飲料冷却能力を確保することが可能となる。
【0003】
このような氷蓄熱式の冷却装置においては、蒸発器の周囲に形成される氷の量が所定の量になるように制御するため、蒸発器の周囲に形成された氷の量が所定の量に達したことを検出するための凍結検出装置を備えている。従来の凍結検出装置では、所望の氷量に対応する位置に一対の電極を設けておいて、水のときと氷になったときとの導電率の差によって、電極部分の周辺が凍結しているか否かを判別することで、所望の量の氷が形成されたか否かを判別していた。
【0004】
しかしながら、このような従来の凍結検出装置では、時間の経過と共に、水槽内の水の水質が変化して、水槽内の水に含まれる電解質の量が減ってしまった場合、水槽内の水自体の導電率が低くなったことに起因して、所望の量の氷が形成されていないにもかかわらず、所望の量の氷が形成されたと誤った判断をしてしまうことがあった。
【0005】
また、飲料の種類によっては、従来の氷蓄熱式の冷却装置で冷却可能な温度より低い温度(例えば、−2℃程度)が飲み頃のものも存在する。このような飲料を飲み頃の温度まで冷却する装置としては、飲料冷却液として、水の代わりに、水より低い温度で凍結する不凍液を利用して、当該不凍液を圧縮式冷凍機で冷却することで、従来の氷蓄熱式の冷却装置より低い温度までの飲料の冷却を実現するものが知られている。
【0006】
このように不凍液を飲料冷却液として使用した場合は、通常、不凍液の導電率は水と比較して高いため、凍結した状態においても高い導電率を示すこととなり、導電率の違いによって、凍っているか否かを判別することは困難であった。
【0007】
なお、特開2011−73775号公報には、水槽の蒸発管の近傍に配置され、蒸発管の周りに所定の厚さの氷が形成されているか否かを水の電気抵抗(導電率)の変化で検知する氷着センサを備えたビールサーバ、及び、蒸発管の周りに所定の厚さの氷が形成されているか否かを、冷却水と氷との温度差を利用して検知する氷着検出用温度センサを備えたビールサーバが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−73775号公報(段落0047〜0048、図2、段落0080、図12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、凍結検出対象となる液体の導電率にかかわらず、凍結検出対象となる液体が凍結しているか否かを判別可能な凍結検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る凍結検出装置は、凍結検出対象となる液体を収容する液槽と、当該液槽内に配置されて、前記液体を冷却する冷却部とを備えた液体冷却装置に適用される凍結検出装置であって、前記冷却部から所定の距離に配置される温度検知部と、前記温度検知部からの出力に基づいて、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結しているか否かを判別する判別部とを備え、前記判別部は、前記温度検知部からの出力が変動しているか否かに基づいて、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結しているか否かを判別することを特徴とする。
【0011】
この場合において、前記判別部は、前記温度検知部からの出力が変動している場合は、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結していないと判断し、前記温度検知部からの出力が変動していない場合は、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結していると判断するようにしてもよい。また、前記判別部は、前記温度検知部によって検知された温度が変動しているか否かに基づいて、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結しているか否かを判別するようにしてもよい。
【0012】
また、以上の場合において、前記温度検知部は、サーミスタ(例えば、NTCサーミスタ)によって構成するようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る液体冷却装置は、凍結検出対象となる液体を収容する液槽と、当該液槽内に配置されて、前記液体を冷却する冷却部と、上記凍結検出装置とを備えたことを特徴とする。
【0014】
この場合において、前記液槽に収容された前記液体を攪拌するための攪拌部を更に備えようにしてもよい。また、前記冷却部は、圧縮式冷凍機の蒸発器によって構成されているようにしてもよい。更にこの場合、前記判別部によって、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結していないと判断された場合は、前記圧縮式冷凍機を動作させ、前記温度検知部の周辺において前記液体が凍結していると判断された場合は、前記圧縮式冷凍機を停止させるようにしてもよい。
【0015】
また、前記液体は、例えば、水であってもよいし、不凍液であってもよい。
【0016】
本発明に係る飲料冷却装置は、上記液体冷却装置と、冷却対象となる飲料を流すための飲料路を形成する飲料路形成部とを備えた飲料冷却装置であって、前記飲料路形成部は、前記液槽内に配置されていることを特徴とする。
【0017】
この場合において、前記凍結検出装置は、前記冷却部の周囲に所望の量の氷が形成されているか否かを判別するようにしてもよい。更にこの場合、前記温度検知部は、前記所望の量に対応する位置に配置されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、凍結検出対象となる液体の導電率にかかわらず、凍結検出対象となる液体が凍結しているか否かを判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による凍結検出装置が適用されたビール冷却装置の構成を説明するための図である。
図2】製氷パイプ120の周囲に氷が形成された状態を示す図である。
図3】温度検知部150によって検知される温度の時間変化の様子を示す図である。
図4】本発明による凍結検出装置を実現するための温度検知回路の構成例を示す図である。
図5】温度データ格納領域の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、飲料としてのビールの冷却を行う飲料冷却装置(以下、ビール冷却装置という)に本発明を適用した場合について説明する。本ビール冷却装置は、外部から供給されるビールを冷却するために利用される。より具体的には、本ビール冷却装置は、外部(例えば、ビール樽)から供給される所定の温度(例えば、25℃)のビールを、所定の飲み頃の温度(例えば、5℃程度)にまで冷却して外部(例えば、注出コック)に供給するものである。
【0021】
図1は、本発明による凍結検出装置が適用されたビール冷却装置の構成を説明するための図である。
【0022】
同図に示すように、本発明による凍結検出装置が適用されたビール冷却装置100は、液槽110と、製氷パイプ120と、飲料冷却パイプ130と、冷却液攪拌部140と、温度検知部150と、制御部160とを備える。
【0023】
液槽110は、冷却対象飲料となるビールを冷却するための冷却液(本実施形態では、水)111を収容するための容器である。本実施形態においては、冷却液111が、本発明による凍結検出装置の凍結検出対象となる。
【0024】
製氷パイプ120は、液槽110内に配置されて、液槽110に収容された冷却液111を冷却するもの(冷却部)であって、パイプをコイル(螺旋)状に形成したような形状を有し、パイプの内部を冷媒(例えば、フロン)が通過するものである。なお、図1等においては、簡単のため、製氷パイプ120の断面のみを示している。製氷パイプ120は、圧縮式冷凍機における蒸発器を構成するものであり、圧縮機101、凝縮器102等と接続されて、冷凍サイクルを構成する。圧縮機101の動作によって製氷パイプ120の一方の端部(本実施形態では、上方に配置された端部121)を介して、製氷パイプ120内に導入された冷媒は、製氷パイプ120内を通過する際に製氷パイプ120内で蒸発し、当該蒸発に伴う吸熱作用によって、液槽110内の冷却液111が冷却されることとなる。そして、そのまま圧縮機101の動作を継続させると、製氷パイプ120の周囲の冷却液が凍結し、製氷パイプ120の周囲に氷(冷却液が凍結して固体状態になったもの)が形成されることになる。なお、製氷パイプ120の他方の端部(本実施形態では、下方に配置された端部122)を介して排出された冷媒は、圧縮機101に戻される。
【0025】
飲料冷却パイプ130は、液槽110内に配置されて、液槽110内に飲料(本実施形態ではビール)を流すための飲料路を形成するものであって(飲料路形成部)、飲料冷却パイプ130が液槽110に収容された冷却液111によって冷却されることによって、外部から飲料冷却パイプ130が形成する飲料路に供給されるビールが冷却されることになる。飲料冷却パイプ130は、パイプをコイル(螺旋)状に形成したような形状を有し、パイプの内部をビールが通過する。なお、図1等では、簡単のため、製氷パイプ120同様、断面のみを示している。本実施形態においては、飲料冷却パイプ130は、製氷パイプ120より小径のコイルをなすように形成されており、製氷パイプ120がなすコイルの内側に配置される。外部(例えば、ビール樽)から、飲料冷却パイプ130の一方の端部(本実施形態では、下方に配置された端部131)を介して、飲料冷却パイプ130内に導入されたビールは、飲料冷却パイプ130内を通過する間に、液槽110内の冷却液111によって、所定の温度(例えば、5℃)にまで冷却されて、他方の端部(本実施形態においては、上方に配置された端部132)を介して外部(例えば、注出コック)に導出される。
【0026】
冷却液攪拌部140は、冷却液111が均一に冷却されるよう、液槽110に収容された冷却液111を攪拌するもの(攪拌部)であって、攪拌フィン141と、攪拌モータ142とによって構成されている。攪拌フィン141は、液槽110内に配置されて、液槽110に収容された冷却液111を攪拌するものである。攪拌モータ142は、攪拌フィン141と接続されて、攪拌フィン141を駆動して、回転させるものである。本実施形態においては、攪拌フィン141は飲料冷却パイプ130がなす円筒の内側に配置されており、攪拌フィン141が回転すると、飲料冷却パイプ130がなす円筒内において、下向きの冷却液の流れが生じる。下向きの冷却液の流れは、液槽110の底面にぶつかると、今度は、外側に向かうようになり、更に、液槽110の内周面にぶつかると、今度は、上方に向かうようになる。すなわち、攪拌フィン141が回転すると、飲料冷却パイプ130がなす円筒の内側において、下方に向かい、飲料冷却パイプ130がなす円筒の外側において、上方に向かう冷却液の流れが生じることとなる。このような冷却液の流れを形成することによって、液槽110内における冷却液111の温度の均一化が促進されることになる。
【0027】
温度検知部150は、制御部160と共に、本発明による凍結検出装置を構成するものであって、製氷パイプ120の近傍に配置される。温度検知部150は、検知部151と、取付部152とを備える。検知部151は、その先端部分(温度検知部分)が、製氷パイプ120の近傍に配置され、先端部分周辺の温度を検知するものである。本実施形態においては、検知部151は、筒状のステンレス製ケースの内部(先端部分)に、サーミスタ(本実施形態においては、NTCサーミスタ)を配置したものである。取付部152は、検知部151の先端部分が所定の位置に配置されるように、検知部151を固定するためのものである。温度検知部150は、検知部151の先端部分が、所望の氷の量に対応する位置に配置されるように、液槽110に取り付けられる。
【0028】
制御部160は、ビール冷却装置100の動作の制御を行うものであり、本実施形態においては、その機能は、基本的に、マイクロプロセッサによって実現される。また、前述したように、制御部160は、温度検知部150と共に、本発明による凍結検出装置を構成する。すなわち、制御部160は、温度検知部150からの出力に基づいて、温度検知部150の周辺において凍結検出対象となる液体(本実施形態においては、冷却液111)が凍結しているか否かを判別する判別部を構成する。
【0029】
図2は、製氷パイプ120の周囲に氷が形成された状態を示す図である。同図は、所望の量の氷が形成された状態を示す図である。
【0030】
同図に示すように、製氷パイプ120の周囲に所望の量の氷123が形成された状態においては、温度検知部150の先端部分(NTCサーミスタが配置された部分)の周辺にも氷が形成されて、温度検知部150の先端部分が氷123中に埋没したような状態になる。すなわち、温度検知部150は、製氷パイプ120の周囲に所望の量の氷123が形成された時点で、その先端部分(温度検知部分)が氷123中に埋没するような位置に配置されることになる。
【0031】
次に、以上のような構成を有するビール冷却装置100の動作について説明する。
【0032】
ビール冷却装置100の電源が投入されると、制御部160は圧縮機101の動作を開始させる。圧縮機101が動作を開始すると、凝縮器102及び膨脹弁(不図示)を介して、製氷パイプ120内に導入された冷媒が蒸発することによって、液槽110に収容された冷却液111が冷却される。そして、そのまま、圧縮機101の運転を継続し、液槽110に収容された冷却液111を冷却し続けると、やがて、製氷パイプ120の周囲に、氷が形成され始める。そして、更に、そのまま、圧縮機101の運転を継続し、液槽110に収容された冷却液111を冷却し続けると、製氷パイプ120の周囲に形成される氷が成長していき、やがて、温度検知部150の先端部分にまで達し、図2に示すように、温度検知部150の先端部分が氷123の中に埋没するようなる。
【0033】
温度検知部150と共に凍結検出装置を構成する制御部160は、例えば、冷却液111の温度が所定の温度(例えば、凍結温度)まで低下したことを適宜検出すると、温度検知部150からの出力信号に基づいて、温度検知部150の先端部分が氷の中に埋没したか否かの監視を開始する。そして、温度検知部150の先端部分が氷の中に埋没したこと、すなわち、予め決められた量の氷が形成されたことを検出すると、圧縮機101の動作を停止させる。そして、今度は、温度検知部150からの出力信号に基づいて、製氷パイプ120の周囲に形成された氷が溶けて、温度検知部150の先端部分が氷の中から露出したか否かを、適宜監視する。そして、温度検知部150の先端部分が氷の中から露出したこと、すなわち、製氷パイプ120の周囲に形成されている氷の量が、予め決められた量未満になっていることを検出すると、再度、圧縮機101の動作を開始させる。このようにして、制御部160は、製氷パイプ120の周囲に予め決められた量の氷が形成された後は、当該氷の量が維持されるように、圧縮機101のオン・オフ制御を行う。
【0034】
製氷パイプ120の周囲に予め決められた量の氷123が形成された状態において、飲料冷却パイプ130の一方の端部131を介して、飲料冷却パイプ130内にビールが導入されると、当該ビールは、飲料冷却パイプ130内を通過している間に、液槽110内の冷却液111によって、所望の温度(例えば、5℃)にまで冷却されて、飲料冷却パイプ130の他方の端部132から出てくることになる。
【0035】
次に、本発明による凍結検出装置の動作について説明する。
【0036】
図3は、温度検知部150によって検知される温度の時間変化の様子を示す図である。同図において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は温度(T)を示す。同図(a)は、製氷パイプ120の周囲に氷が形成されてはいるが、温度検知部150の先端部分の周辺にまでは達してない時の様子を示し、同図(b)は、図2に示すように、製氷パイプ120の周囲に形成された氷が成長して、温度検知部150の先端部分の周辺にまで達した時の様子を示している。
【0037】
製氷パイプ120の周囲に形成された氷が、温度検知部150の先端部分の周囲にまでは達していない時は、温度検知部150の先端部分(NTCサーミスタが配置された部分)は、冷却液111にされられていることになる。前述したように、液槽110内の冷却液111は、冷却液攪拌部140によって攪拌されているので、液槽110内においては、冷却液111の流れが生じている。すなわち、温度検知部150の先端部分には、冷却液111の流れが常時当たっていることになる。一方、液槽110内の冷却液111は、製氷パイプ120の周辺から順次冷却されていくことから、液槽110内の位置によってある程度の温度差が生じることになる。そのため、冷却液攪拌部140による攪拌によって、温度検知部150の先端部分に当たる冷却液にもある程度の温度差が生じることになり、その結果、温度検知部150が検知する温度も、図3(a)に示すように、時間の経過と共にある程度の幅で変動することになる。
【0038】
一方、製氷パイプ120による冷却液111の冷却が進み、製氷パイプ120の表面に形成された氷が成長していき、温度検知部150の先端部分の周辺に達して、温度検知部150の先端部分が氷内に埋没するようになると、冷却液の流れは、温度検知部150の先端部分に当たらなくなる。そうすると、温度検知部150が検知する温度は、同図(b)に示すように、時間変化しないようになる。
【0039】
本発明による凍結検出装置は、このような温度検知部150によって検知される温度の時間変化の違いを判別して、温度検知部150の先端部分が氷内に埋没しているか否か、すなわち、温度検知部150の先端部分の周辺において、冷却液が凍結しているか否かを判別する。つまり、温度検知部150によって検知される温度が変動している場合は、温度検知部150の先端部分が氷内に埋没していない、すなわち、温度検知部150の先端部分の周辺に氷が形成されていないと判断し、温度検知部150によって検知される温度が変動していない場合は、温度検知部150の先端部分が氷内に埋没している、すなわち、温度検知部150の先端部分の周辺に氷が形成されていると判断する。
【0040】
図4は、本発明による凍結検出装置を実現するための温度検知回路の構成例を示す図である。
【0041】
同図に示すように、温度検知回路200は、温度検知部150を構成するNTCサーミスタ210と、抵抗220と、制御部160を構成するマイクロプロセッサ230とを備える。そして、NTCサーミスタ210の一方の端子は接地され、他方の端子は、抵抗220の一方の端子及びマイクロプロセッサ230のアナログ入力端子に接続される。また、抵抗220の他方の端子は、電源電圧V+に接続される。
【0042】
同図に示したような温度検知回路200においては、周辺の温度の変化に応じて、NTCサーミスタ210の抵抗値が変化すると、マイクロプロセッサ230に入力される信号の電圧値が変化することになる。
【0043】
マイクロプロセッサ230は、内部にA/D変換器231を備えており、アナログ入力端子を介して入力された信号の電圧値(アナログデータ)は、A/D変換器231によって適宜デジタルデータに変換される。マイクロプロセッサ230は、定期的(例えば、0.1秒ごと)に、A/D変換器231を動作させて、アナログ入力端子を介して入力される信号の電圧値をデジタルデータに変換し、更に、デジタルデータに変換された電圧値を、予め用意された変換表に従って、温度(温度データ)に変換する(サンプリング)。このようにして得られた温度データは、マイクロプロセッサ230によって、マイクロプロセッサ230の内蔵メモリ232(あるいは不図示の外部メモリ)に確保された温度データ格納領域に順次格納される。温度データ格納領域は、予め決められた期間(例えば、10秒間)にわたる予め決められた量(例えば、100個分)の温度データを格納できるようなサイズが確保されている。また、温度データ格納領域は、リングバッファをなすように管理されており、温度データ格納領域には、予め決められた期間(例えば、10秒間)が経過した後は、常時、予め決められた期間(例えば、10秒間)にわたる予め決められた量(例えば、100個分)の最新の温度データが格納されているようになる。
【0044】
図5は、温度データ格納領域の構成を説明するための図である。
【0045】
同図に示すように、温度データ格納領域500は、予め決められた量(同図に示した例ではN個)の温度データT1〜TNを格納できるサイズを有するデータ格納領域である。
【0046】
例えば、マイクロプロセッサ230は、まず、サンプリング開始時刻である時刻t1におけるサンプリングにより、時刻t1における温度データT1を得ると、当該温度データT1を、温度データ格納領域500の先頭に位置する領域501に格納する。そして、時刻t1の次のサンプリング時刻である時刻t2におけるサンプリングにより、時刻t2における温度データT2を得ると、当該温度データT2を、領域501に続く領域502に格納する。更に、時刻t2の次のサンプリング時刻である時刻t3におけるサンプリングにより、時刻t3における温度データT3を得ると、当該温度データT3を、領域502に続く領域503に格納する。マイクロプロセッサ230は、このような処理を各サンプリング時刻において繰り返す。そして、サンプリング開始時刻から予め決められた期間が経過した時刻tNにおけるサンプリングにより、N個目の温度データTNを得ると、当該温度データTNを、温度データ格納領域500の最後尾に位置する領域511に格納する。その結果、温度データ格納領域500には、同図に示すように、予め決められた期間、すなわち、時刻t1〜時刻tNにわたるN個の温度データT1〜TNが格納されることになる。
【0047】
同図に示した状態から、更に、時刻tNの次のサンプリング時刻である時刻tN+1におけるサンプリングにより、時刻tN+1における温度データTN+1を得ると、マイクロプロセッサ230は、再度、先頭に位置する領域501に戻って、当該温度データTN+1を、領域501に格納する。そうすると、温度データ格納領域500には、時刻t2〜時刻tN+1にわたる最新のN個の温度データT2〜TN+1が格納されることになる。なお、この場合、論理的(時系列的)には、領域502が先頭の領域となり、領域503,511等を介して、領域501が最後尾の領域となる。更に、時刻tN+1の次のサンプリング時刻である時刻tN+2におけるサンプリングにより、時刻tN+2における温度データTN+2を得ると、当該温度データTN+2を、領域501に続く領域502に格納する。そうすると、温度データ格納領域500には、時刻t3〜時刻tN+2にわたる最新のN個の温度データT3〜TN+2が格納されることになる。なお、この場合、論理的(時系列的)には、領域503が先頭の領域となり、領域511,501等を介して、領域502が最後尾の領域となる。このような処理を各サンプリング時刻において繰り返すことにより、温度データ格納領域500には、常時、予め決められた期間にわたる最新のN個の温度データが格納されているようになる。なお、論理的(時系列的)に先頭や最後尾となる領域のアドレスは、適宜マイクロプロセッサ230によって管理される。
【0048】
予め決められた期間(例えば、10秒間)にわたる予め決められた量(例えば、100個分)の温度データの収集が完了すると、マイクロプロセッサ230は、温度データ格納領域500に格納されている温度データに対して、適宜フィルタ処理を行って、ノイズを除去した後に、温度データ格納領域500に格納されている温度データが時間経過と共に変動しているか否かを判別する。例えば、時間的に隣接する温度データの差の絶対値を順次加算していき、その総和を算出する。すなわち、次の式1で示される総和Sを算出する。
【0049】
【数1】
【0050】
ここで、Ti(i=1〜N)は、温度データ格納領域500に格納されている各温度データであって、ここでは、T1が温度データ格納領域500に格納されている最も古い温度データになり、TNが温度データ格納領域500に格納されている最も新しい温度データになる。
【0051】
そして、以上のようにして算出された総和Sが所定の閾値以上になっているか否かを判別して、総和Sが所定の閾値以上になっていれば、温度は時間と共に変動している(すなわち、NTCサーミスタ210は、氷に埋没していない)と判断し、総和Sが所定の閾値未満であれば、(予め決められた期間内において)温度は変動していない(すなわち、NTCサーミスタ210は、氷に埋没している)と判断する。なお、温度データ格納領域500に格納されている温度データが時間経過と共に変動しているか否かの判別は、温度の変動周期、サンプリング周期、マイクロプロセッサ230の処理速度等の実装条件に応じて適当なタイミングで行われる。本実施形態においては、各サンプリング時刻が到来し、温度データ格納領域500に新たな温度データを格納する度、すなわち、温度データ格納領域500に格納されている予め決められた期間(例えば、10秒間)にわたる予め決められた量(例えば、100個分)の温度データのうちの一つが更新される毎に行う。
【0052】
以上のようにして、温度検知部150の先端部分(NTCサーミスタ210)が氷に埋没しているか否か、すなわち、所望の量の氷が形成されているか否かが判別されることとなる。
【0053】
以上説明したように、上述した凍結検出装置においては、温度検知部150が検知する温度が(予め決められた期間内において)変動しているか否かによって、温度検知部150の先端部分が氷に埋没しているか否か、すなわち、所望の量の氷が形成されているか否かを判別しているので、冷却液111の導電率にかかわらず、所望の量の氷が形成されたことを検出することが可能となる。従って、例えば、時間の経過と共に、液槽内の冷却液の導電率が変化したとしても、所望の量の氷が形成されたか否かを誤りなく判別することができる。また、凍結した状態においても高い導電率を示す不凍液を冷却液として使用した場合であっても、所望の量の氷が形成されたか否かを判別することができるようになる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の実施形態は上記のものに限られない。例えば、上述した実施形態においては、温度検知部をNTCサーミスタで構成するようにしていたが、温度検知部を他の温度検知手段(例えば、白金測温抵抗体や熱電対)で構成するようにしてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態においては、デジタルデータに変換された電圧値を更に温度データに変換するようにしていたが、デジタルデータに変換された電圧値をそのまま使用して、当該電圧値が変動しているか否かによって、温度検知部150の先端部分が氷内に埋没しているか否かを判別するようしてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態においては、温度検知部150の先端部分(温度検知部分)を、製氷パイプ120の上方に配置された端部121の近傍に配置するようにしていたが、所望の氷の量に対応する位置であれば他の位置、例えば、製氷パイプ120の下方に配置された端部122の近傍に配置するようにしてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態においては、液槽110内に収容する冷却液として、水を使用していたが、他の液体(例えば、不凍液)を使用するようしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100 ビール冷却装置
101 圧縮機
102 凝縮器
110 液槽
111 冷却液
120 製氷パイプ
121,122 端部
123 氷
130 飲料冷却パイプ
131,132 端部
140 冷却液攪拌部
141 攪拌フィン
142 攪拌モータ
150 温度検知部
151 検知部
152 取付部
160 制御部
200 温度検知回路
210 NTCサーミスタ
220 抵抗
230 マイクロプロセッサ
231 A/D変換器
232 内蔵メモリ
500 温度データ格納領域
501,502,503,511 領域
図1
図2
図3
図4
図5