特許第5945381号(P5945381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5945381
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】タンパク質
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20160621BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20160621BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160621BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20160621BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160621BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160621BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 15/02 20060101ALI20160621BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160621BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20160621BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20160621BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20160621BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20160621BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20160621BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20160621BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20160621BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   A61K39/395 E
   A61K39/395 T
   A61K31/7088
   A61K37/02
   A61K39/00 Z
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 105
   C07K16/28
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12N15/00 C
   C12N15/00 AZNA
   C12P21/08
   C12Q1/02
   C12Q1/06
   C12Q1/68 A
   G01N33/15 Z
   G01N33/50 Z
   G01N33/53 M
   G01N33/574 A
【請求項の数】4
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2009-550765(P2009-550765)
(86)(22)【出願日】2008年2月26日
(65)【公表番号】特表2010-518847(P2010-518847A)
(43)【公表日】2010年6月3日
(86)【国際出願番号】GB2008050127
(87)【国際公開番号】WO2008104806
(87)【国際公開日】20080904
【審査請求日】2011年2月25日
【審判番号】不服2014-20447(P2014-20447/J1)
【審判請求日】2014年10月9日
(31)【優先権主張番号】60/903,510
(32)【優先日】2007年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/903,509
(32)【優先日】2007年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2008/050124
(32)【優先日】2008年2月25日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510034270
【氏名又は名称】オックスフォード ビオトヘラペウトイクス エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クフリスチアン ロフルフフ
(72)【発明者】
【氏名】アラスダイル スタムプス
【合議体】
【審判長】 中島 庸子
【審判官】 小堀 麻子
【審判官】 長井 啓子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/053138号(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C07K 16/00
C12Q 1/68
C12N 15/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、卵巣癌又は膵癌の治療又は予防に使用する医薬組成物であって、
細胞傷害性薬物部分を含むか、又はこれに複合体化された、リンパ球抗原75に特異的に結合することが可能な抗体であって、単離されたモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分である、前記抗体を治療有効量含む、前記医薬組成物
【請求項2】
前記単離されたモノクローナル抗体が、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4アイソタイプの完全長抗体であるか、又は全抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、免疫複合体、脱フコシル化された抗体、及び二重特異性抗体からなる群から選択されたものである、請求項1記載の医薬組成物
【請求項3】
さらに医薬として許容し得る希釈剤又は担体を含有する、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、卵巣癌又は膵癌の治療又は予防に使用するためのキットであって、請求項1、2又は3記載の医薬組成物を含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(緒言)
本発明は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌に関連した膜タンパク質の同定に関し、該同定は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、卵巣癌及び膵癌の転移に関するマーカーとして有用であり、かつそれに対する治療的抗体(又は他の親和性試薬)又は他の医薬品を形成することができる生物学的標的も形成する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(慢性リンパ球性白血病)
慢性リンパ球性白血病(CLL)は、ウェスタンハンプシャーにおいて最も一般的な成人白血病であり、概して一旦本疾患が進行すると致命的である。恐らくふたつの異なる型のCLLが存在する。ひとつは非常にゆっくり増殖し、治療が必要なことは稀である。この型のCLLの罹患者は、平均13〜15年間生存する。他方のCLL型は、より迅速に増殖し、かつより重篤な疾患である。この型のCLLに罹患した人は、わずかに約6〜8年間生存する。米国において毎年約9,800のCLL症例が新たに診断され、約4,600名が死亡する。CLLは、成人のみ罹患する。患者の平均年齢は、約70歳であり、かつ年齢40歳以下の人において認められることは稀である。
【0003】
(慢性リンパ球性白血病診断)
実行される慢性リンパ球性白血病の診断試験は、血液細胞数、骨髄穿刺、骨髄生検、リンパ節切除生検、血液化学試験及び腰椎穿刺を含む。他の臨床検査は、慣習的な鏡検、細胞化学、フローサイトメトリー、免疫細胞化学、細胞遺伝学試験、分子遺伝学試験、及び蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を含む。胸部X線撮影、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)及び超音波を含む画像検査も、実行することができる。
【0004】
(慢性リンパ球性白血病病期分類)
白血病患者の予後は、白血病の型又は亜型、臨床検査により決定された細胞の特徴、及び画像検査の結果により左右される。CLLの病期診断には、ふたつの異なるシステムが存在する。Rai分類は、米国においてより頻繁に使用されるのに対し、Binetシステムは、欧州においてより広範に使用される。
【0005】
5段階のRaiシステム病期分類は、低-、中-、及び高-リスク群に分類することができる。ステージ0は、低リスクとみなされ、ステージI及びIIは、中リスクとみなされ、ステージIII及びIVは、高リスクとみなされる。
Binet病期診断システムは、それらの病期を定義するために、文字A(最も低い重症度)、B、及びC(最も高い重症度)を使用する。CLLは、罹患したリンパ系組織群の数、及び貧血症若しくは血小板減少症の存在により分類される。
染色体変化、突然変異状態、ZAP-70及びCD38状態などの他のマーカーも、CLLのふたつの異なる型を識別するために使用される。
【0006】
(慢性リンパ球性白血病の治療)
低-リスクCLLの患者の予後は、非常に良好である。白血病が進行している兆候が存在する場合にのみ、治療が考慮される。兆候が示された場合、初期治療は、通常化学療法である。クロラムブシル(Leukeran)及びフルダラビン(Fludara)が、CLLの治療に最も汎用される化学療法薬である。
いかなる症状も有さない中-及び高-リスクCLLの患者は、直ちの治療は不要である。非常に高-リスク疾患を伴う患者は、早期の幹細胞移植により最良に治療することができる。生存を改善する特異的治療は示されていない。一般に治療として、化学療法が使用される。リツキシマブなどのモノクローナル抗体を、化学療法と併用することができる。標準の化学療法治療に最早反応しないCLL患者においては、アレムツズマブ(Campath)が使用される。
【0007】
(結腸直腸癌)
結腸直腸癌(CRC)は、癌に関連した罹患と死亡の主要原因のひとつであり、ほとんどの欧米の先進国において1年当たり推定50万人の死因である。これらの地域において、CRCは、3番目に最も一般的な悪性疾患である(米国及びEU諸国における1年当たりの新規症例の推定数は、約350,000/年である)。米国において結腸直腸癌の治療に関する推定された医療費は、80億ドルよりも多い。
【0008】
(結腸直腸癌診断)
今日、糞便潜血検査及び結腸鏡検査、すなわち高度に侵襲的手法が、結腸直腸癌のスクリーニング法及び診断法において最も頻用されている。他の診断道具には、軟性S状結腸鏡検査(結腸の約半分のみの観察が可能である)及び二重造影バリウム注腸(DCBE、X線像を得るため)がある。
【0009】
(結腸直腸癌病期分類)
CRCは、4段階の区別できる病期を有し:米国立衛生研究所(NIH)によると、I期疾患の患者は、90%超の5年生存率を有するが、転移性IV期疾患の患者は5%未満の生存率を有する。
【0010】
(結腸直腸癌治療)
一旦CRCと診断されたならば、的確な治療が選択される必要がある。手術は通常直腸癌の主要な治療であるが、放射線及び化学療法が手術前に施されることが多い。可能性のある手術の副作用は、手術による出血、深部静脈血栓、及び手術時の近くの臓器の損傷を含む。
【0011】
現在、結腸直腸癌患者の60%は、自身の疾患を治療するために化学療法を受けているが;しかし、この治療形態は、わずかな割合の集団に恩恵があるのみであり、他方で高い毒性リスクを伴い、従って患者選択基準をより良く規定する必要性が示されている。
【0012】
結腸直腸癌は、一次診断後平均18ヶ月以内に、30〜40%の再発率を有する。全ての癌同様、より早期に検出される程治癒の可能性がより高く、特に病理学者は、大半のCRC腫瘍が、良性腺腫から一連の良く規定された段階で発達していくことを認めている。
【0013】
【表1】
【0014】
(腎癌)
腎癌は、癌症例全体の約1.9%、及び死亡例の1.5%を占める。腎癌の全般的発症は、約208,000症例であり、100,000を超える症例が死亡である。腎癌の発症は、先進国において非常に高く、西ヨーロッパにおいては6番目に最も一般的な癌型である。米国においては、毎年約38,900の新規腎癌症例が診断され、約12,800例が死亡である。年齢45歳以下では非常に珍しく、その発症は55歳から84歳の間で最も高い。腎癌を発症している人の割合は、年間約1.5%上昇しているが、死亡率は上昇していない。腎細胞癌腫は、悪性腎臓腫瘍の90%より多くを占めている。米国における腎癌の治療には、毎年ほぼ19億ドル費やされていると推定されている。
【0015】
(腎癌診断)
多くの腎細胞癌は、後期に発見され;これらは、疼痛や不快感を引き起こすことなく、極めて巨大となり始め、早期に腎細胞癌を検出することができる簡単な検査は存在しない。腎細胞癌腫患者の約25%は、診断された時点で、既にそれらの癌が転移性に広がっている。
腎細胞癌は、CT走査、MRI、超音波、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、静脈性腎盂造影(IVP)及び/又は血管造影を用い、生検を必要とせずに診断することができることが多い。しかし細径針による吸引生検は、画像の結果が、腎臓摘出を正当化するのに十分な程決定的でない場合には、価値がある。
【0016】
(腎癌病期分類)
腎細胞癌は通常、1−4のスケールで等級化される。腎細胞癌は同じく、米国癌病期分類合同委員会(AJCC)のTNMシステム−ステージI−IVを用いても、段階化される。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の統合病期診断システム(Integrated Staging System)も使用することができ、これは腫瘍が広がっていない患者を、低リスク、中リスク及び高リスクの3群に分ける。低リスク群の5年癌特異的生存率は91%であり、中リスク群については80%、高リスク群については55%である。腫瘍の広がりを伴う患者も、低、中及び高リスクの3群に分けられる。低リスク群の5年癌特異的生存率は32%であり、中リスク群については20%、高リスク群については0%である。
【0017】
(腎癌治療)
根治的腎摘出術(及び時には局所的リンパ節郭清術)、部分的腎摘出術又は腹腔鏡下腎摘出術による手術は、腎細胞癌腫の主要な治療である。腎細胞癌腫は、放射線に対しそれほど高感度ではないので、癌の除去の前又は後の放射線治療の使用は、試験が生存率の改善を示さないので、慣習的に推奨されない。
腎細胞癌は、現存する化学療法型に対し非常に抵抗性である。ビンブラスチン、フロキシウリジン、及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの一部の薬物は、少し効果がある。5-FUとゲムシタビンの併用は、一部の患者において恩恵がある。5-FU-様薬物であるカペシタビンも、若干の恩恵がある。
【0018】
サイトカイン(インターロイキン-2(IL-2)及びインターフェロン-α)は、転移性腎細胞癌腫の標準治療のひとつとなり始めている。これらは、患者の約10%〜20%において、癌の当初のサイズの半分未満への癌の縮小を引き起こす。IL-2に反応した患者は、反応を持続する傾向がある。IL-2、インターフェロン、及び化学療法(5-フルオロウラシルを使用)の併用による最近の研究も、将来性があり、かつ部分寛解又は完全寛解のより良い機会をもたらすであろう。しかしサイトカイン療法は、重度の副作用を有する。
ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)及びベバシズマブ(Avastin)は、腎細胞癌に対しても有効である別の薬物である。
【0019】
(病期別腎癌生存率)
【表2】
【0020】
(肝癌)
肝癌の全症例の約80%は、肝臓の主要な細胞(肝細胞)から生じる、肝細胞癌である。肝細胞癌は、通常肝臓に限定され、かつ患者の50%〜80%は肝硬変を随伴している。肝細胞癌は、女性よりも男性において約3倍より一般的である。B型肝炎ウイルス(HBV)又はC型肝炎ウイルス(HCV)による慢性感染症は、HCCの主因であり、かつ世界中の多くの地域で最も一般的な癌である肝癌の発生の原因である。米国において、C型肝炎感染症は、全ての肝癌の約50%〜60%の原因であり、B型肝炎は、別の20%の原因である。アフラトキシン曝露も、ほとんどの温暖な及び熱帯の国々におけるHCCの原因である。肝癌は、全世界的には癌症例全ての約5.8%を占め(約626,000例)、年間死亡例の8.9%を占める(約598,000例)。これは、世界中の男性及び女性の両方における癌に関連した3番目の最も一般的な死因である。HCCは、アジア及びアフリカにおいて顕著に認められ、これは症例の80%を占めている。米国においては、HCCの一年に約18,500の新規症例及び16,000の死亡例である。肝癌と診断された人の約85%は、年齢が45〜85歳の間である。約4%は年齢35〜44歳の間であり、わずかに2.4%が35歳未満である。
【0021】
(肝癌診断)
肝癌の症状は、疾患が進行するまで明らかではないことから、ごく少数の肝癌が、初期ステージにおいて発見され、手術により除去することができる。
肝癌の多くの兆候及び症状は、比較的非特異的であり−すなわち、肝癌は、他の癌によるか、又は非-癌性疾患により引き起こされ得る。超音波、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)及び血管造影などの画像検査は、HCCを診断するために通常使用される。他の診断道具は、腹腔鏡検査、生検、α-フェトプロテイン(AFP)血液検査、肝機能検査(LFT)、プロトロンビン時間(PT)、並びにB型及びC型肝炎の試験を含む。
【0022】
(肝癌病期分類)
HCCは、米国癌病期分類合同委員会(AJCC)のTNMシステムに従い、I期からIV期の4病期を有する。HCCは、局所的切除可能なもの、局所的切除不能なもの、又は進行したものに分類することができる。肝癌全症例の5年相対生存率は、約9%である。
この低い生存率のひとつの理由は、肝癌患者のほとんどは、それ自身致命的である肝硬変も有することである(肝癌及びクラスC肝硬変の患者は概して、治療するには病状が重く、かつ通常数ヶ月で死亡する。)。局所的切除可能なHCCの術後の5年生存率は、40%〜70%である。進行したHCCに関して、標準の治療は存在せず、かつその5年生存率は5%未満である。生存率は、診断及び治療後も低下し続け、その結果10年までに2.5%未満である。
【0023】
(肝癌治療)
肝癌の治療は、腫瘍のサイズ、及び患者が肝硬変を有するかどうかに左右される。この時点で、切除又は肝移植手術のいずれかによる手術は、肝癌を治癒する唯一の機会をもたらす。肝硬変でない患者は、腫瘍の手術による摘出により良くなることができる。
しかし多くの症例において、局所的肝癌を安全に摘出することは不可能であろう。試験開腹した患者の30%未満が、手術によりその癌を完全に除去することができる。部分的肝切除術は、5年生存率30%〜40%をもたらす。肝硬変又は非常に巨大な腫瘍が存在する場合、ほとんどの専門家は、主要な治療として肝移植手術を推奨した。肝移植手術患者の5年生存率は約70%であるが、肝移植手術の機会は限定されている。
【0024】
他の治療は、高周波アブレーション(RFA)、エタノールアブレーション、凍結外科手術、肝動脈塞栓形成、化学的塞栓形成又は三次元原体照射法(3DCRT)を含む。化学療法も使用することができるが、縮小するのは5個の腫瘍中1個未満である。これは、肝動脈注入(HAI)により改善されることがある。使用される化学療法薬は、アドリアマイシン、VP-16、シス-プラチニウム、マイトマイシン、5-FU及びロイコボリンを含む。
【0025】
進行性、再燃性又は再発性疾患を伴う任意の治療された原発性肝癌患者の予後は、不良である。初期治療後に回復する肝癌の治療は、再燃部位、初期治療の種類、及び肝機能を含む多くの因子により左右される。同じ場所で再燃する局所的切除可能な疾患を有する患者は、更なる手術に適格であろう。
【0026】
(肺癌)
肺癌は、世界中で最も一般的な癌形態であり(癌症例の約12%を占める)、癌による死亡の主な原因である(死亡例の約18%を占める)。
肺癌の世界的な発生は、年間1,300,000例を超え、死亡数は1,100,000例を超える。米国において、年間の新規症例は約170,000であり(全ての癌の約13%)、死亡数は約160,000例である(癌による死亡の約28%)。肺癌の有病率は、女性よりも男性においてはるかに高い。肺癌と診断された人のほぼ70%が65歳以上であり;全症例の3%未満が45歳以下の人に認められる。全肺癌の約15%は、体中広範に広がる傾向がある小細胞型(SCLC)である一方で、残りの85%は、非小細胞型(NSCLC)である。米国において毎年約96億ドルが肺癌の治療に費やされていると推定されている。
【0027】
(肺癌診断)
肺癌は、胸部X線撮影において検出できるようになる以前であっても転移することが多いので、これは生命を脅かす疾患である。通常肺癌の症状は、疾患が進行病期となるまで明らかではない。これまでのところ、患者の治癒の機会を改善することが示されたスクリーニング試験は存在しない。胸部X線撮影、CT走査、MRI走査又はPETなどの画像検査を使用し、肺癌を検出することができる。次にその診断を確認する検査が行われ、かつこれは痰細胞診、針生検、気管支鏡検査、気管支内超音波検査及び完全血球算定(CBC)を含む。
【0028】
(肺癌病期分類)
肺癌と診断された人のほぼ60%が、診断から1年以内に死亡し;75%が2年以内に死亡する。NSCLCと診断された患者の5年生存率は、約15%であり;SCLCについて、5年生存率は約6%である。NSCLCは、米国癌病期分類合同委員会(AJCC)のTNMシステムを用い、0期からIV期までに病期分類される。病期別の5年生存率は、以下のようである:I期:47%;II期:26%;III期:8%;及びIV期:2%。SCLCは、限局期と拡大期の2病期システムを有する。SCLC患者の約2/3は、診断時に拡大期疾患を有する。SCLCが極初期に発見されかつ肺のみに局在化されている場合、その5年生存率はほぼ21%であるが、この範疇に収まるのは患者のわずかに6%である。この癌が広がった場合、5年生存率はほぼ11%である、拡大期疾患を伴う患者に関して、5年生存率はわずかに2%である。
【0029】
(肺癌治療)
手術は、NSCLCを治癒するための唯一の信頼できる方法である。手術の種類は、肺葉切除術、肺切除術、部分切除術及びビデオ監視下の胸郭手術(小さい腫瘍に関して)である。
外照射療法は、時々、特に患者の健康状態が手術に耐えられない場合に、一次治療として使用される。放射線治療は、術後に使用することもできる。化学療法は、一次治療として又は手術の補助として施されることがある。ゲフィチニブ又はエルロチニブなどの、上皮増殖因子受容体(EGFR)アンタゴニストを使用する標的化療法も、他の治療が失敗した後に与えることができる。ベバシズマブなどの抗血管新生薬は、進行した肺癌の患者の生存を延長することがわかっている。光力学療法も、肺癌の治療として研究中である。
【0030】
SCLCの主な治療は、単独の、又は外照射療法若しくはごく稀に手術と組合せた、化学療法である。
NSCLC及びSCLCに使用される化学療法薬は、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、イホスファミド、ビンブラスチン、ゲムシタビン、エトポシド、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル及びイリノテカンを含む。
【0031】
(卵巣癌)
卵巣癌は、世界中の癌症例の約1.9%、及び死亡例の約1.8%を占めている。卵巣癌の世界的規模の発生率は、約205,000例であり、主に先進国の閉経後の女性においてであり、約125,000例が死亡である。卵巣癌の約85%〜90%は、上皮卵巣癌である。卵巣癌の約5%は、胚細胞腫瘍であり、これよりも小さい割合が間質性腫瘍である。卵巣癌は、女性における8番目の最も一般的癌である。米国において、毎年約20,200の新規卵巣癌症例が診断され、これは女性における全ての癌の約3%を占める。卵巣癌の発症及び死亡のリスクは、黒人女性よりも白人女性のほうがより高い。卵巣癌の女性の約2/3は55歳以上である。米国において、卵巣癌は、女性における癌による死亡の5番目にランクされ、これは女性生殖システムのその他の癌よりも死亡が多い。米国における卵巣癌による死亡は、毎年約15,300例である。米国において毎年約22億ドルが卵巣癌の治療に費やされていると推定されている。
【0032】
(卵巣癌診断)
現在、卵巣癌を早期に診断することは困難である。超音波、コンピュータ断層撮影法及び磁気共鳴画像法などの画像検査は、骨盤腔内腫瘤が存在するかどうかを確認する。CA-125検査を含む血液検査及び腹腔鏡検査が行われる。その後卵巣癌は、生検により確認される。
【0033】
(卵巣癌病期分類)
卵巣癌は、米国癌病期分類合同委員会(AJCC)のTNMシステムを用い、I期−IV期に病期分類される。FIGO(国際産科婦人科連合(International Federation of Gynecology and Obstetrics))システムも使用される。卵巣癌は、1−3の等級でも示される。卵巣癌の女性の約76%は、診断後1年生存し、45%は診断後5年以上生存する。癌が卵巣の外側に広がっていない時点で診断及び治療された場合、5年生存率は94%である。しかしこのような早期に見つかるのは、全ての卵巣癌のわずかに19%である。
【0034】
(卵巣癌治療)
卵巣癌の手術は、子宮摘出、両側性卵管摘除術、両側性卵巣摘出術、及び大網摘出術である。癌がその腹部全体に広範に広がった女性においては、腫瘍減量手術(debulking)が行われる。
【0035】
シスプラチン又はカルボプラチンなどの白金化合物、及びパクリタキセル又はドセタキセルなどのタキサンを使用する併用療法を用いる腹腔内(IP)化学療法は、標準的方法である。腫瘍の再燃は、白金化合物及び/又はタキサンの追加サイクルにより時々治療される。別の症例において、再燃は、トポテカン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)及びリポソームドキソルビシン(ドキシル)などのアントラサイクリン系、ゲムシタビン、シクロホスファミド、ビノレルビン(ナベルビン)、ヘキサメチルメラミン、イホスファミド、及びエトポシドなどの他の薬物により治療される。現在利用可能な化学療法薬に対する耐性は、大きな問題点である。完全な臨床反応は、初期治療後に患者の75%において実現されるが、ほとんどは疾患再燃を発症し、再治療を必要とする。
外照射療法も、時折使用することができる。
【0036】
(病期別卵巣癌生存率)
【表3】
【0037】
(膵癌)
膵癌は、検出することが非常に困難な癌であり、通常患者の予後は非常に悪い。1年間の新規症例数と死亡数はほぼ等しい。膵癌の世界的規模での発症は、1年間におよそ230,000症例(全癌症例の約2%)であり、約225,000例が死亡する(癌による死亡の3.4%)。先進国における有病率がはるかに高い。米国において、1年間の新規症例は約34,000例であり、約32,000例が死亡する。米国において毎年約15億ドルが膵癌の治療に費やされていると推定されている。
【0038】
(膵癌診断)
膵癌は、検出が非常に困難であり、早期に発見されるのは非常に少数の膵癌である。患者は通常、癌が他の臓器に広がるまで、無症状である。現在、膵臓の早期癌を正確に検出することができる血液検査及び容易に利用可能なスクリーニング検査は存在しない。超音波内視鏡検査とそれに続く生検が、膵癌の診断の最良の方法である。他の検出法は、CT、CT-補助式針生検、PET、超音波検査及びMRIを含む。CA19-9及び癌胎児抗原(CEA)の血液レベルは上昇することがあるが、血液レベルが検出されるのに十分に高いような時点では、癌は最早その早期ではない。
【0039】
(膵癌病期分類)
膵癌は、米国癌病期分類合同委員会(AJCC)のTNMシステムに従い、I期からIV期までの4病期を有する。膵癌は、切除可能な癌、局所的に進行した(切除不可能な)癌及び転移性癌にも分類される。進行した癌患者に関して、全体の5年生存率は<1%であり、ほとんどの患者は1年以内に死亡する。
【0040】
(膵癌治療)
手術は、膵癌を治癒する唯一の方法である。膵癌の約10%は、診断時に全て膵臓内に含まれ、手術による癌全体の除去の試みは、これらの一部の患者においては成功し得る。癌を完全に除去する意図で手術を受ける患者の5年生存率は、約20%である。通常、膵頭十二指腸切除術(Whipple法)による潜在的に根治目的の手術が、癌を全て除去することが可能である場合に使用される。腫瘍が完全に除去するには広がりすぎている場合には、緩和手術も行うことができる。膵癌の一部のみを除去することは、患者の生存を延長しない。膵癌の手術は、合併症の可能性が高く、実行が困難である。
【0041】
化学療法と組合せた外照射療法を、術前又は術後に行うことができ、腫瘍が手術により除去するには広がりすぎている患者に施すことができる。使用される主な化学療法薬は、ゲムシタビン及び5-フルオロウラシルである。エルロチニブ及びセツキシマブなどの薬物を使用する標的化療法は、進行した膵癌の患者に恩恵があるであろう。
【0042】
(治療的挑戦)
結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌の治療の主な挑戦は、早期検出率を改善すること、疾患進行を追跡しかつ再発を確定するために使用することができる新規の非侵襲的マーカーを見つけること、並びに、特に5年生存が依然極めて不良であるより進行した疾患のための、改善されかつ毒性の低い療法を見つけることである。免疫療法及びターゲットトキシンのような将来性のある新規アプローチにより攻撃することができる、癌細胞により特異的である標的、例えば腫瘍細胞の表面上に発現された標的を同定することには、大きな必要性が存在する。
【発明の概要】
【0043】
(発明の要旨)
本発明は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌のスクリーニング、診断、予後及び療法のための、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の患者の層化のための、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療の有効性のモニタリングのための、並びに結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療用薬物開発のための、方法及び組成物を提供する。
【0044】
本発明者らは、質量分析を使用し、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の組織試料から抽出された膜タンパク質のゲル電気泳動又はiTRAQ試薬による標的化及びトリプシン分解により作製されたペプチドを同定した。ペプチド配列を、現存するタンパク質及びcDNAデータベースと比較し、対応する遺伝子配列を同定した。本発明のタンパク質は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の細胞膜に起源があることはこれまで報告されておらず、ゆえに新規の診断的及び治療的価値があるタンパク質を表す。
【0045】
従って本発明の第一の態様に従い、本発明者らは、被験体における結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を検出、診断及び/又はスクリーニング、又は進行をモニタリングする方法、或いは抗-結腸直腸癌、抗-腎癌、抗-肝癌、抗-肺癌、抗-リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、抗-卵巣癌又は抗-膵癌の薬物又は療法の作用をモニタリングする方法を提供し、該方法は、前記被験体におけるOGTA076若しくはそれらの1種以上の断片の存在若しくはレベル、又はOGTA076をコードしている核酸の存在若しくはレベル、又はOGTA076の活性の存在若しくはレベルを検出することを含むか、又はそれらのレベルの変化を検出することを含む。
【0046】
本発明の第二の態様に従い、本発明者らは、候補被験体における結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法であって、該方法は、前記候補被験体におけるOGTA076若しくはそれらの1種以上の断片の存在、又はOGTA076をコードしている核酸の存在、又はOGTA076の活性の存在を検出することを含み、ここにおいて、(a)健常被験体におけるレベルと比較して、候補被験体における、OGTA076若しくはそれらの1種以上の前記断片の上昇したレベル、又はOGTA076をコードしている核酸の上昇したレベルの存在、又はOGTA076活性の上昇したレベルの存在か、或いは(b)健常被験体における対応する検出不可能なレベルと比較した候補被験体における、OGTA076若しくはそれらの1種以上の該断片の検出可能なレベル又はOGTA076をコードしている核酸の検出可能なレベルの存在、又はOGTA076活性の検出可能なレベルの存在のいずれかは、前記被験体における結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の存在を示す、前記方法を提供する。
【0047】
本発明の第三の態様に従い、本発明者らは、被験体において結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の進行をモニタリングするか、或いは抗-結腸直腸癌、抗-腎癌、抗-肝癌、抗-肺癌、抗-リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、抗-卵巣癌若しくは抗-膵癌の薬物又は療法の作用をモニタリングする方法であって、該方法は、前記候補被験体における、第一の時点及びより遅い時点での、OGTA076若しくはそれらの1種以上の断片の存在、又はOGTA076をコードしている核酸の存在、又はOGTA076の活性の存在の検出、前記第一の時点での被験体におけるレベルと比較したより遅い時点での被験体における、OGTA076又はそれらの1種以上の前記断片の上昇若しくは下降したレベルの存在、又はOGTA076をコードしている核酸の上昇若しくは下降したレベルの存在、又はOGTA076活性の上昇若しくは下降したレベルの存在を検出することを含み、これが前記被験体における結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の進行又は退縮を示すか、或いは抗-結腸直腸癌、抗-腎癌、抗-肝癌、抗-肺癌、抗-リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、抗-卵巣癌又は抗-膵癌の薬物又は療法の作用又は非作用を示す、前記方法を提供する。
【0048】
OGTA076若しくはそれらの1種以上の断片の存在、又はOGTA076をコードしている核酸の存在、又はOGTA076の活性の存在は、例えば、前記被験体から得られた生物学的試料の分析により検出されてよい。
【0049】
本発明の方法は、典型的には、前記被験体から分析のための生物学的試料を得る工程を含んでよい。しかしひとつ以上の態様において、本発明の方法は、生物学的試料を得る工程を含まない。
【0050】
使用される生物学的試料は、血清試料、又は例えば結腸直腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ系、卵巣若しくは膵臓の組織などの組織試料のように、任意の給源由来であることができる。例えば、転移性の結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、卵巣癌又は膵癌の証拠を探す場合、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、卵巣癌又は膵癌の転移の主要な部位で、例えば結腸直腸癌に関して、肝臓、腹腔、骨盤、後腹膜及び肺に;腎癌に関して、骨、肺及び肝臓に;肝癌に関して、肺及び骨に;肺癌に関して、脳、肝臓、骨及び副腎に;卵巣癌に関して、腹部に;並びに、膵癌に関して、肝臓;に注目する。
【0051】
或いはOGTA076若しくはそれらの1種以上の断片の存在、又はOGTA076をコードしている核酸の存在、又はOGTA076の活性の存在は、インサイチュ分析により検出されてよい。
ある実施態様において、本明細書に説明された診断法は、少なくとも部分的又は全体がインビトロで実行されてよい。
好適なことにOGTA076若しくはそれらの1種以上の断片の存在、又はOGTA076をコードしている核酸の存在、又はOGTA076の活性の存在は、定量的に検出される。
【0052】
例えば、定量的な検出は:
(a)生物学的試料を、OGTA076に特異的である親和性試薬と接触することであり、前記親和性試薬は任意に検出可能な標識に複合体化されていること;及び
(b)結合が、該親和性試薬と該試料中の少なくとも1つの化学種の間で生じているかどうかを検出することであり、前記検出は、直接又は間接に行われること:を含んでよい。
或いは、OGTA076若しくはそれらの1種以上の断片の存在、又はOGTA076をコードしている核酸の存在、又はOGTA076の活性の存在は、画像技術の使用に関連した手段により、検出されてよい。
【0053】
別の実施態様において、本発明の方法は、OGTA076若しくはそれらの1種以上の断片の存在、又はOGTA076をコードしている核酸の存在、又はOGTA076の活性の存在を測定し、それによって結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の細胞の局在を決定するための組織切片に対する免疫組織化学の使用に関連している。
【0054】
ひとつの実施態様において、OGTA076又はそれらの1種以上のエピトープ含有断片の存在は、例えば抗体などの、OGTA076又はそれらの1種以上の断片に特異的に結合することが可能である親和性試薬の使用により検出される。
別の実施態様において、OGTA076の活性が検出される。
【0055】
本発明の別の態様に従い、被験体における結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を検出、診断及び/又はスクリーニングするか又は進行をモニタリングする方法、或いは抗-結腸直腸癌、抗-腎癌、抗-肝癌、抗-肺癌、抗-リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、抗-卵巣癌又は抗-膵癌の薬物又は療法の作用をモニタリングする方法が提供され、該方法は、前記被験体におけるOGTA076若しくはそれらの1種以上のエピトープ含有断片への免疫特異的結合の可能な抗体の存在若しくはレベルを検出することを含むか、又はそれらのレベルの変化を検出することを含む。
【0056】
本発明の別の態様に従い、被験体において結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法であって、該方法は、前記被験体におけるOGTA076又はそれらの1種以上のエピトープ含有断片への免疫特異的結合が可能な抗体の存在を検出することを含み、ここで(a)健常被験体におけるレベルと比較した、前記被験体におけるOGTA076又はそれらの前記1種以上のエピトープ含有断片への免疫特異的結合が可能な抗体の上昇したレベルの存在、又は(b)健常被験体における対応する検出不能なレベルと比較した、前記被験体におけるOGTA076又はそれらの前記1種以上のエピトープ含有断片への免疫特異的結合が可能な抗体の検出可能なレベルの存在は、前記被験体における結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の存在を示す、前記方法も提供する。
【0057】
結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の検出、診断及び/又はスクリーニングのひとつの特定の方法は:
(a)試験される生物学的試料を、OGTA076又はそれらの1種以上のエピトープ含有断片と接触させること;並びに
(b)OGTA076又はそれらの1種以上のエピトープ含有断片への免疫特異的結合が可能な抗体の存在を被験体において検出すること:を含む。
【0058】
本発明の別の態様に従い、被験体における結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の進行をモニタリングする方法、或いは抗-結腸直腸癌、抗-腎癌、抗-肝癌、抗-肺癌、抗-リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、抗-卵巣癌又は抗-膵癌の薬物又は療法の作用をモニタリングする方法であって、該方法は、前記被験体において第一の時点及びより遅い時点でのOGTA076若しくはそれらの1種以上のエピトープ含有断片への免疫特異的結合が可能な抗体の存在、又は該第一の時点での前記被験体におけるレベルと比べより遅い時点での前記被験体におけるOGTA076若しくはそれらの1種以上のエピトープ含有断片への免疫特異的結合が可能な抗体の存在の上昇若しくは下降したレベルの存在を検出することを含み、これが結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の進行又は退縮を示すか、或いは前記被験体における抗-結腸直腸癌、抗-腎癌、抗-肝癌、抗-肺癌、抗-リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、抗-卵巣癌又は抗-膵癌の薬物又は療法の作用又は非作用を示す、前記方法を提供する。
【0059】
OGTA076又はそれらの1種以上のエピトープ含有断片への免疫特異的結合が可能な抗体の存在は、典型的には、前記被験体から得られた生物学的試料の分析により検出される(生物学的試料の例は先に説明されており、例えばこの試料は、結腸直腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ系、卵巣若しくは膵臓の組織の試料、又は他に血液若しくは唾液の試料である)。
【0060】
本方法は、前記被験体から分析用の前記生物学的試料を得る工程を含んでよい。
検出することができる抗体は、IgA抗体、IgM抗体及びIgG抗体を含む。
前述の任意の方法において、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する候補被験体において検出され得るレベルは、健常被験体におけるレベルよりも2倍以上高い。
本発明の別の態様は、癌、特に結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌などの疾患のスクリーニング、検出及び/又は診断において使用するための、OGTA076若しくはそれらの断片へ特異的に結合することが可能な作用物質、又はOGTA076をコードしている核酸へハイブリダイズすることが可能なハイブリダイズ物質、又はOGTA076の活性を検出することが可能な作用物質である。
【0061】
本発明の別の態様は、癌、特に結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌などの疾患のスクリーニング、検出及び/又は診断において使用するための、OGTA076又はそれらの断片である。
本発明の別の態様は、OGTA076又はそれらの断片への特異的結合が可能な親和性試薬、例えば、検出可能な標識を含むか又は複合体化された、若しくは細胞傷害性部分などの治療的部分を含むか又は複合体化された親和性試薬である。この親和性試薬は、例えば抗体であってよい。
【0062】
本発明の別の態様は、OGTA076をコードしている核酸にハイブリダイズすることが可能なハイブリダイズ物質、例えば、検出可能な標識を含むか又は複合体化されたハイブリダイズ物質である。ハイブリダイズ物質の一例は、抑制性RNA(RNAi)である。他の例は、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムを含む。
【0063】
本発明は、OGTA076及び/若しくはそれらの1種以上の断片を含むか、又は1種以上の前述の親和性試薬及び/若しくはハイブリダイズ物質を含むか、又はOGTA076の活性の検出が可能な1種以上の作用物質を、前述の方法におけるそれらの使用のための説明書と一緒に含むキットも提供する。本キットは、前記親和性試薬及び/又はハイブリダイズ物質のそれらの結合パートナーへの結合の検出及び報告が可能である試薬を更に含んでよい。
【0064】
本発明の別の態様は、OGTA076又はそれらの断片に特異的に結合することが可能な親和性試薬を治療有効量含有する医薬組成物である。
本発明の別の態様は、医薬として許容し得る希釈剤又は担体、及び前述のような1種以上の親和性試薬又はハイブリダイズ試薬及び医薬として許容し得る希釈剤又は担体を含有する医薬組成物である。
【0065】
ひとつの実施態様において、検出、予防又は治療される癌は、結腸直腸癌である。
別の実施態様において、検出、予防又は治療される癌は、腎癌である。
別の実施態様において、検出、予防又は治療される癌は、肝癌である。
別の実施態様において、検出、予防又は治療される癌は、肺癌である。
別の実施態様において、検出、予防又は治療される癌は、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)である。
別の実施態様において、検出、予防又は治療される癌は、卵巣癌である。
別の実施態様において、検出、予防又は治療される癌は、膵癌である。
本発明の他の態様は、以下及び本明細書の「特許請求の範囲」に記されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1は、本発明のタンパク質の3種のアイソフォームのアミノ酸配列を示す。質量分析により実験的に検出されたトリプシン分解ペプチドは、強調表示している。マスマッチペプチドは太字で示し、タンデムペプチドには下線をつけた。
図2図2は、本発明のタンパク質のタンパク質指数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
(発明の詳細な説明)
以下に詳細に説明された本発明は、哺乳動物の被験体における結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の臨床スクリーニング、診断及び予後のための、特定の治療的処置に最も反応しそうな患者を同定するための、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の療法の結果をモニタリングするための、薬物スクリーニング及び薬物開発のための、方法並びに組成物を提供する。本発明は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を治療又は予防するための、治療的組成物の哺乳動物被験体への投与も包含している。哺乳動物被験体は、非ヒト哺乳動物であってよいが、例えばヒト、例として成人、すなわち少なくとも21歳(例えば少なくとも35歳、少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも70歳、又は少なくとも80歳)のヒト被験体であってよい。限定ではなく、開示の明確化のために、本発明は、結腸直腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ系、卵巣又は膵臓の組織の分析に関して説明するものである。しかし当業者に理解されるように、以下に説明されたアッセイ及び技術は、体液(例えば血液、尿又は唾液)、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有するリスクのある患者の組織試料(例えば結腸直腸、腎臓、肝臓、肺、骨髄、卵巣又は膵臓の生検などの、生検)又はそれらのホモジネートを含む、他の種類の患者試料に適用することができる。本発明の方法及び組成物は、生存している被験体のスクリーニング、診断及び予後に特に適しているが、被験体の剖検診断に使用して、例えば、同疾患を発症するリスクのある家族の一員を同定してもよい。
【0068】
(OGTA076)
本発明のひとつの態様において、一次元電気泳動又は相対及び絶対定量用同重体タグ法(iTRAQ)又は他の好適な方法を使用して、被験体、好ましくは生存している被験体からの結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の組織試料を分析し、これは、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌若しくは膵癌のスクリーニング又は診断のため、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌若しくは膵癌の患者の予後を決定するため、又は結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌若しくは膵癌の療法の有効性をモニタリングするため、又は薬物開発のために、本発明のタンパク質の発現を測定することを目的とする。
【0069】
本明細書において使用される用語「本発明のタンパク質」又は「OGTA076」とは、その全てのアイソフォームで図1に例示されたタンパク質、特に結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌組織試料の1Dゲル電気泳動及びiTRAQ分析により実験的に検出されたその3種の異なるアイソフォームをいう(OGTA076a[配列番号:1];OGTA076b[配列番号:2]、及びOGTA076c[配列番号:3])。これらの配列のタンパク質誘導体も、本明細書に説明されたものと同じ目的のために有用である。
【0070】
このタンパク質は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌の患者からの結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌の組織試料の膜タンパク質抽出物中において、「好ましい技術(Preferred Technologies)」の方法及び器具(膜タンパク質抽出物のトリプシン分解と合わせた1Dゲル電気泳動又はiTRAQ)により同定されている。ペプチド配列は、SWISS-PROT及びtrEMBLデータベース(スイス生命情報学研究所(SIB)及び欧州生命情報学研究所(EBI)が保持、http://www.expasy.comで入手可能)と比較し、下記エントリーが同定された:O60449、リンパ球抗原75。
【0071】
SWISS-PROTによると、リンパ球抗原75は、脾臓、胸腺、結腸及び末梢血リンパ球中に発現される。これは、骨髄細胞株及びBリンパ球様細胞株において検出されている。アイソフォームOGTA076b及びOGTA076cは、ホジキン・リードステルンベルグ(HRS)細胞と称される悪性ホジキンリンパ腫細胞中に発現される。リンパ球抗原75は、細胞外空間から特定された抗原プロセシングコンパートメントへ、捕獲された抗原を方向付けるために、エンドサイトーシス受容体として作用する。これは、Bリンパ球の増殖の低下を引き起こす。
【0072】
本発明のタンパク質は、それらの断片、特にエピトープ含有断片、例えば抗原性断片又は免疫原性断片及びそれらの誘導体として有用である。抗原性断片又は免疫原性断片を含むエピトープ含有断片は、典型的には、長さ12アミノ酸以上、例えば20アミノ酸以上、例えば50又は100アミノ酸以上であろう。断片は、完全長タンパク質の95%以上、例えば90%以上の長さ、例えば完全長タンパク質の75%又は50%又は25%又は10%以上であってよい。
【0073】
抗原性断片又は免疫原性断片を含むエピトープ含有断片は、例えば1種以上のアジュバントを含有する製剤中などの好適な形態で免疫系に提示される場合、患者において関連する免疫応答を誘起することが可能であろう。本発明のタンパク質をコードしているDNAは、それらの断片、例えばそれらの免疫原性断片などの、本発明のタンパク質の断片をコードしているDNAとしても有用である。本発明のタンパク質をコードしている核酸(例えばDNA)の断片は、完全長コード領域の95%以上、例えば90%以上、例えば完全長コード領域の75%又は50%又は25%又は10%以上であってよい。核酸(例えばDNA)の断片は、長さが36ヌクレオチド以上、例えば60ヌクレオチド以上、例えば150又は300ヌクレオチド以上であってよい。
【0074】
本発明のタンパク質の誘導体は、その中で1個以上(例えば、1〜20個、例として15個のアミノ酸など、又はタンパク質の全長を基にしたアミノ酸数の最大20%、例として最大10%若しくは5%若しくは1%など)の欠失、挿入又は置換が行われている配列上の変種を含む。置換は典型的には、保存的置換であってよい。誘導体は典型的には、それらが誘導されるタンパク質と本質的に同じ生物学的機能を有するであろう。誘導体は典型的には、それらが誘導されるタンパク質と同等の抗原性又は免疫原性であろう。誘導体は典型的には、それらが誘導されるタンパク質のリガンド−結合活性、又は活性受容体−複合体形成能のいずれか、又は好ましくは両方を有するであろう。
【0075】
下記表1a-1fは、各々、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌及び卵巣癌患者に由来する結腸直腸、腎臓、肝臓、肺及び卵巣の組織試料の膜タンパク質抽出物のiTRAQ及び質量分析により検出されたOGTA076の様々な出現を例示している。第一列は試料バッチ番号を示し、第二列はそれらの試料に関するiTRAQ実験番号を示し、最後の列は質量分析により認められた配列及び対応する配列番号のリストを提供する。
【0076】
下記表2a-2cは、各々、結腸直腸癌、慢性リンパ球性白血病及び膵癌患者に由来する結腸直腸、リンパ系及び膵臓組織試料の膜タンパク質抽出物の1Dゲル電気泳動及び質量分析により検出されたOGTA076の様々な出現を例示している。第一列は分子量を提供し、第二列はもしあれば使用された細分画プロトコールの情報を記し(下記実施例1参照)、最後の列は質量分析により認められた配列及び対応する配列番号のリストを提供する。
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
【表11】
【0085】
【表12】
【0086】
OGTA076に関して、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有さない被験体由来の組織の分析時に得られた検出レベルと比べた、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体由来の組織の分析時に得られた検出レベルは、使用される特定の分析プロトコール及び検出技術により左右されるであろう。従って本発明は、診断的技術において慣例であるように、各実験室が、使用する分析プロトコール及び検出技術に従い結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有さない被験体における基準範囲を確立することを意図している。好ましくは、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌若しくは膵癌を有することがわかっている被験体由来の対照陽性組織試料の少なくとも1種、又は結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌若しくは膵癌を有さないことがわかっている被験体由来の対照陰性組織試料の少なくとも1種が、分析される被検試料の各バッチに含まれる。
【0087】
OGTA076は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の検出、予後、診断、又はモニタリングのため、若しくは薬物開発のために使用することができる。本発明のひとつの実施態様において、被験体(例えば、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有することが疑われる被験体)由来の組織は、OGTA076の検出について1Dゲル電気泳動又はiTRAQにより分析される。結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌を有さない被験体若しくは被験体ら由来の組織(例えば対照試料)又は予め決定された基準範囲と比較しての、被験体由来の組織中のOGTA076の増大した存在量は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の存在を示す。
【0088】
OGTA076の断片、エピトープ含有断片、免疫原性断片又は抗原性断片に関連して:
−結腸直腸癌適用に関して、これらは表1aの第三列又は表2aの第三列のトリプシン分解物配列として同定された配列を含んでよく;
−腎癌適用に関して、これらは表1bの第三列のトリプシン分解物配列として同定された配列を含んでよく;
−肝癌適用に関して、これらは表1cの第三列のトリプシン分解物配列として同定された配列を含んでよく;
−非小細胞肺癌適用に関して、これらは表1dの第三列のトリプシン分解物配列として同定された配列を含んでよく;
−小細胞肺癌適用に関して、これらは表1eの第三列のトリプシン分解物配列として同定された配列を含んでよく;
−卵巣癌適用に関して、これらは表1fの第三列のトリプシン分解物配列として同定された配列を含んでよく;
−慢性リンパ球性白血病適用に関して、これらは表2bの第三列のトリプシン分解物配列として同定された配列を含んでよく;
−膵癌適用に関して、これらは表2cの第三列のトリプシン分解物配列として同定された配列を含んでよい。
【0089】
本明細書において使用されるOGTA076は、それが夾雑タンパク質を実質的に含まない調製品、すなわち、存在する総タンパク質の10%未満(例えば5%未満、例として1%未満など)が夾雑タンパク質(群)である調製品中に存在する場合に、「単離されている」。夾雑タンパク質は、質量スペクトル分析により決定されるような、単離されたOGTA076のアミノ酸配列とは著しく異なるアミノ酸配列を有するタンパク質である。本明細書において使用される「著しく異なる」配列とは、「参照プロトコール(Reference Protocols)」に従い実行される質量スペクトル分析によりOGTA076から分離される夾雑タンパク質をもたらすものである。
【0090】
OGTA076は、本明細書に説明された「好ましい技術」、キナーゼアッセイ、酵素アッセイ、結合アッセイ及び他の機能アッセイ、イムノアッセイ、並びにウェスタンブロットを含むが、これらに限定されるものではない、当業者に公知の任意の方法によりアッセイすることができる。ひとつの実施態様において、OGTA076は、それらの分子量(MW)により1-Dゲル上で分離され、ゲルの染色により可視化される。ひとつの実施態様において、OGTA076は、蛍光色素により染色され、蛍光スキャナーにより撮像される。Sypro Red(Molecular Probes社, ユージーン、オレゴン州)は、この目的のための好適な色素である。好ましい蛍光色素は、1999年10月5日に出願された、米国特許出願第09/412,168号に開示されており、これはその全体が本明細書に引用として組み込まれている。別の実施態様において、OGTA076は、相対及び絶対定量用同重体タグ法(iTRAQ)を用いて分析される。
【0091】
或いは、OGTA076は、イムノアッセイにおいて検出することができる。ひとつの実施態様において、イムノアッセイは、試験される被験体由来の試料を、抗-OGTA076抗体(又は他の親和性試薬)と、OGTA076が存在する場合に結合(例えば免疫特異的結合)が生じ得るような条件下で接触させ、かつその作用物質による結合(例えば免疫特異的結合)の量を検出又は測定することにより実行される。OGTA076に結合する作用物質は、本明細書に示された方法及び技術により作製することができる。
【0092】
OGTA076は、それらの断片、例えばそれらのエピトープ含有(例えば免疫原性又は抗原性)断片の検出により検出することができる。断片は、長さが少なくとも10個のアミノ酸、より典型的には少なくとも20個のアミノ酸、例えば少なくとも50又は100個のアミノ酸、例えば少なくとも200又は500個のアミノ酸、例えば少なくとも1000又は1500個のアミノ酸を有してよい。
【0093】
1以上の実施態様において、OGTA076は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の患者/被験体において示差的に発現される。示差的に発現されるとは、癌を有さない試料/健常試料と比べ、関連試料中でのより高い又はより低いレベルの発現をいうことが意図されている。
【0094】
ひとつの実施態様において、組織切片中の親和性試薬(例えば抗体)の結合を使用し、異常なOGTA076局在化又はOGTA076の異常なレベルを検出することができる。具体的実施態様において、OGTA076に対する抗体(又は他の親和性試薬)を使用し、OGTA076のレベルについて患者組織(例えば、結腸直腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ系、卵巣又は膵臓の組織)をアッセイすることができ、ここではOGTA076の異常なレベルは、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の指標である。本明細書において使用される「異常なレベル」とは、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌でない被験体のレベル又は基準レベルと比べ増加したレベルを意味する。
【0095】
ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線検定法、蛍光イムノアッセイ及びプロテインAイムノアッセイなどの技術を使用する競合及び非-競合アッセイシステムを含むが、これらに限定されない、任意の好適なイムノアッセイを使用することができる。
【0096】
例えば、OGTA076は、二工程サンドイッチアッセイにより、液体試料(例えば血液、尿又は唾液)中で検出することができる。第一の工程において、捕獲試薬(例えば、抗-OGTA076抗体、又は他の親和性試薬)を使用し、OGTA076を捕獲する。この捕獲試薬は、任意に固相上に固定することができる。第二の工程において、直接的又は間接的に標識された検出試薬を使用し、捕獲されたOGTA076を検出する。ひとつの実施態様において、この検出試薬は、レクチンである。例えばOGTA076と同じコアタンパク質を有する他のアイソフォームへ、又はその抗体により認識される抗原決定基を共有する他のタンパク質へというよりもむしろOGTA076へ優先的に結合する任意のレクチンを、この目的のために使用することができる。好ましい実施態様において、選択されたレクチンは、前述のOGTA076と同じコアタンパク質を有する他のアイソフォームへ、又は親和性試薬により認識される抗原決定基を共有する他のタンパク質へよりもむしろOGTA076へ、少なくとも2倍大きい親和性で、より好ましくは少なくとも5倍大きい親和性で、更により好ましくは少なくとも10倍大きい親和性で結合する。本説明を基に、OGTA076の検出に適しているレクチンは、当該技術分野において周知の方法により、例えばSumarらの文献「疾患関連糖型の指標としてのレクチン(Lectins as Indicators of Disease-Associated Glycoforms)」(Gabius H-J & Gabius S(編), 1993年, 「レクチン・糖生物学(Lectins and Glycobiology)」の158-174頁(これは全体が本明細書に引用として組み込まれている))中の158-159頁の表Iに列挙されたレクチンの1種以上を試験する際に、容易に同定することができる。別の実施態様において、検出試薬は、抗体(又は他の親和性試薬)、例えば他の翻訳後修飾を特異的に(例えば免疫特異的に)検出する抗体、例えばリン酸化されたアミノ酸へ免疫特異的に結合する抗体である。このような抗体の例は、ホスホチロシンへ結合する抗体(BD Transduction Laboratories社, カタログ番号:P11230-050/P11230-150;P11120;P38820;P39020)、ホスホセリンへ結合する抗体(Zymed Laboratories社, サウスサンフランシスコ, CA, カタログ番号61-8100)及びホスホトレオニンへ結合する抗体(Zymed Laboratories社, サウスサンフランシスコ, CA, カタログ番号71-8200, 13-9200)を含む。
【0097】
望ましいならば、相補配列を含む、OGTA076コードしている遺伝子、関連遺伝子、又は関連核酸配列若しくは亜配列も、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用することができる。OGTA076をコードしているヌクレオチド、又は少なくとも8個のヌクレオチド、例えば少なくとも12個のヌクレオチド、例として少なくとも15個のヌクレオチドなどを含むそれらの亜配列を、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。ハイブリダイゼーションアッセイを、OGTA076をコードしている遺伝子の異常な発現に関連した状態、障害、若しくは病態の検出、予後、診断、若しくはモニタリングのために、又は結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌若しくは膵癌を示唆する徴候若しくは症状を伴う被験体の鑑別診断のために、使用することができる。特にそのようなハイブリダイゼーションアッセイは、核酸を含む被験体の試料を、OGTA076をコードしているDNA又はRNAとハイブリダイズすることが可能である核酸プローブと、ハイブリダイゼーションが起こり得るような条件下で接触させること、並びに生じたハイブリダイゼーションを検出又は測定することを含む方法により、実行することができる。
【0098】
こうしてOGTA076をコードしている核酸(例えばDNA又はより好適にはRNA)は、例えば、OGTA076をコードしている核酸にハイブリダイズすることが可能であるハイブリダイズ物質を使用し、検出することができる。
【0099】
そのような例証的方法のひとつは、以下の工程を含む:
(a)OGTA076をコードしているヌクレオチド配列に相補的な10個以上の連続ヌクレオチドを含む1種以上のオリゴヌクレオチドプローブを、被験体由来の生物学的試料から得られたRNAと、又はこのRNAからコピーされたcDNAと接触させる工程であり、ここで前記接触は、存在する場合に該ヌクレオチド配列への該プローブのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で生じる、前期工程;
(b)該プローブと該ヌクレオチド配列間のハイブリダイゼーションがもしあれば、これを検出する工程;並びに
(c)工程(b)において検出されたハイブリダイゼーションがもしあれば、これを対照試料中で検出されたハイブリダイゼーション、又は先に決定された基準範囲と比較する工程。
【0100】
本発明は、抗-OGTA076抗体(又は他の親和性試薬)を含む、診断キットも提供する。加えてこのようなキットは、以下のひとつ以上を任意に含んでいてもよい:(1)診断、予後、治療モニタリング又はこれらの適用の任意の組合せに関して抗-OGTA076親和性試薬を使用するための説明書;(2)親和性試薬に対する標識された結合パートナー;(3)その上に抗-OGTA076親和性試薬が固定された固相(試薬ストリップなど);及び、(4)診断的、予後的若しくは治療的使用又は任意のこれらの組合せに関して法的承認を示すラベル又は折り込み。親和性試薬に対する標識された結合パートナーが提供されない場合には、抗-OGTA076親和性試薬自体を検出可能なマーカー、例えば化学発光、酵素的、蛍光性又は放射性の部分で標識することができる。
【0101】
本発明はまた、OGTA076をコードしている核酸、好適にはRNAにハイブリダイズすることが可能である核酸プローブを含むキットを提供する。具体的実施態様において、キットは、1個以上の容器内に、適切な反応条件下でポリメラーゼ連鎖反応(例えば、Innisらの文献, 1990年,「PCRプロトコール(PCR Protocols)」, Academic Press社, サンディエゴ, CAを参照されたい)、リガーゼ連鎖反応(EP 320,308を参照されたい)、Qβレプリカーゼの使用、環状プローブ反応、又は当該技術分野において公知のその他の方法などにより、OGTA076をコードしている核酸の少なくとも一部の増幅を開始することができるプライマー対(例えば、それぞれ6〜30ヌクレオチド、より好ましくは10〜30ヌクレオチド、及び更に好ましくは10〜20ヌクレオチドのサイズ範囲のもの)を含む。
【0102】
キットは、例えば標準又は対照として使用するための、予め決定された量のOGTA076又はOGTA076をコードしている核酸を任意に更に含むことができる。
【0103】
(臨床研究における使用)
本発明の診断法及び組成物は、臨床研究のモニタリングにおいて、例えば結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の療法のための薬物を評価することを、補助することができる。ひとつの実施態様において、候補分子は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌若しくは膵癌を有する被験体におけるOGTA076レベルを、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌でない被験体において認められるレベルまで回復するそれらの能力について、又は治療された被験体において、OGTA076レベルを非-結腸直腸癌、非-腎癌、非-肝癌、非-肺癌、非-リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、非-卵巣癌若しくは非-膵癌の値で又はその近似値で維持するそれらの能力について試験される。
【0104】
別の実施態様において、本発明の方法及び組成物を使用して、臨床研究用候補をスクリーニングし、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する個体を同定し;次いで、そのような個体を研究から除外するか、又は治療若しくは解析のための別のコホートに配置することができる。
【0105】
(本発明のタンパク質及び対応する核酸の作製)
本発明のDNAは、出発材料として市販のmRNAを使用するcDNAライブラリーからのcDNA断片としての単離、並びにそれらのヌクレオチド配列の決定及び同定により得ることができる。すなわち詳述すると、クローンは、Oharaらの方法(DNA Research, 第4巻, 53-59 (1997))に従い調製されたcDNAライブラリーから無作為に単離される。次にハイブリダイゼーションにより、二本鎖化されたクローン(反復して出現する)が除去され、次にインビトロ転写及び翻訳が実行される。それについて50kDa以上の生成物が確認されているクローンの両端のヌクレオチド配列が、決定される。
【0106】
更にこのようにして得られた末端ヌクレオチド配列をクエリーとして使用し、公知の遺伝子のデータベースを相同性について検索する。結果として、新規であることが明らかにされたクローンの全ヌクレオチド配列が決定される。前記スクリーニング法に加え、cDNAの5'及び3'末端配列が、ヒトゲノム配列に関連付けられる。その後未知の長鎖遺伝子が、これらの配列間の領域で確認され、そのcDNAの完全長が分析される。この方法において、公知の遺伝子に応じて通常のクローニング法では得ることができない未知の遺伝子を、系統的にクローニングすることができる。
【0107】
更に本発明のDNAを含むヒト由来の遺伝子の全ての領域も、短い断片又は得られた配列において生じる人為的誤差を防ぐために十分に注意を払いながら、RACEなどのPCR法を使用して調製することができる。前述のように、本発明のDNAを有するクローンを得ることができる。
【0108】
本発明のDNAをクローニングする別の手段において、本発明のポリペプチド部分の好適なヌクレオチド配列を有する合成DNAプライマーが作出され、引き続き好適なライブラリーを使用するPCR法により増幅される。或いは選択は、本発明のDNAの、好適なベクターに組み込まれかつ本発明のポリペプチドの一部若しくは全部の領域をコードしているDNA断片又は合成DNAにより標識されたDNAとのハイブリダイゼーションにより実行することができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(Frederick M. Ausubelら編集、1987)に説明された方法により実行することができる。本発明のDNAは、それらが前述のような本発明のポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含む限りは、任意のDNAであってよい。そのようなDNAは、結腸直腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ系、卵巣又は膵臓の組織に由来するcDNAライブラリー又は同様のものから同定されかつ単離されたcDNAであってよい。そのようなDNAは、合成DNAなどであってもよい。ライブラリー構築において使用するためのベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどのいずれかであってよい。更に前記細胞及び/又は組織から調製された総RNA画分又はmRNA画分を使用することにより、増幅を、直接逆転写共役ポリメラーゼ連鎖反応(以後「RT-PCR法」と略す)で実行することができる。
【0109】
OGTA076のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列からなる前記ポリペプチドをコードしているDNA、又は該アミノ酸配列の一部を構成している1個以上のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加によるOGTA076のアミノ酸配列に由来したアミノ酸配列からなる前記ポリペプチドをコードしているDNAは、例えば、部位特異的突然変異誘発法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法、及び当業者に公知のPCR法などの好適な組合せにより容易に作出することができる。加えてこの時点で、ポリペプチドに実質的に同等な生物活性を生じる可能性のある方法は、このポリペプチドを構成するアミノ酸の中での、同族のアミノ酸(例えば、極性アミノ酸と無極性アミノ酸、疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸、正帯電したアミノ酸と負帯電したアミノ酸、並びに芳香族アミノ酸)の置換である。更に実質的に同等の生物活性を維持するために、本発明のポリペプチドに含まれる機能ドメイン内のアミノ酸は、保存されることが好ましい。
【0110】
更に本発明のDNAの例は、OGTA076のアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を含むDNA、並びにこのDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズしかつOGTA076のアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能と同等の生物活性(機能)を有するポリペプチド(タンパク質)をコードしているDNAを含む。そのような条件下で、OGTA076のアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を含むDNAにハイブリダイズすることが可能なそのようなDNAの例は、このDNAのヌクレオチド配列の全体と全体的平均の相同度、例えば約80%以上、好ましくは約90%以上、及びより好ましくは約95%以上を有するヌクレオチド配列を含むDNAである。ハイブリダイゼーションは、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(Frederick M. Ausubelら編集、1987)に説明された方法のような当該技術分野において公知の方法又はそれらに準じた方法に従い実行することができる。ここで「ストリンジェントな条件」とは、例えば約1×SSC、0.1%SDS、及び37℃の条件であり、よりストリンジェントな条件は、約0.5×SSC、0.1%SDS、及び42℃であり、更によりストリンジェントな条件は、約0.2×SSC、0.1%SDS、及び65℃である。よりストリンジェントなハイブリダイゼーション条件により、プローブ配列との高度な相同性を有するDNAの単離を期待することができる。前述のSSC、SDS、及び温度条件の組合せは、例示を目的として示している。前述のものに類似したストリンジェンシーは、当業者により、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーの決定のために前記要因又は他の要因の好適な組合せ(例えば、プローブ濃度、プローブ長、及びハイブリダイゼーション反応時間)を用いて実現することができる。
【0111】
本発明のクローニングされたDNAは、直接使用するか、又は望ましいならば、目的に応じて制限酵素による消化後若しくはリンカーの付加後に使用することができる。DNAは、翻訳開始コドンとして5'末端側にATGを有し、かつ翻訳終結コドンとして3'末端側にTAA、TGA、又はTAGを有することができる。これらの翻訳開始及び翻訳終結コドンはまた、好適な合成DNAアダプターを用いて追加することができる。
【0112】
本発明の方法と共に使用するために供される場合、OGTA076は、例えば単離された形態で提供されてよい。ひとつの実施態様において、OGTA076ポリペプチドは、少なくともある程度まで精製される。OGTA076ポリペプチドは、実質的に純粋形態、すなわち実質的程度他のタンパク質を含まない形態で提供されてよい。OGTA076ポリペプチドは、組換え法を用いて生成されるか、合成的に生成されるか、又はこれらの方法の組合せにより生成されることができる。OGTA076は、当業者に公知の任意の方法により容易に調製することができ、これは、本発明のDNA又は本発明のDNAを含む遺伝子を含む発現ベクターの作出、この発現ベクターを使用し形質転換された形質転換体の培養、本発明のポリペプチド又はこのポリペプチドを含む組換えタンパク質の作出及び蓄積、その後の得られたものの収集に関連している。
【0113】
組み換えOGTA076ポリペプチドは、発現システムを含む遺伝子操作された宿主細胞から、当該技術分野において周知のプロセスにより調製することができる。従って本発明は、OGTA076ポリペプチド又は核酸を含む発現システム、そのような発現システムにより遺伝子操作された宿主細胞、及び組換え技術によるOGTA076ポリペプチドの生成にも関連している。組換えOGTA076ポリペプチド生成に関して、宿主細胞は、核酸の発現システム又はその一部を組み込むように遺伝子操作することができる。そのような組み込みは、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAD-デキストラン媒介型トランスフェクション、トランスベクション、微量注入、陽イオン性脂質-媒介型トランスフェクション、電気穿孔、形質導入、スクレープローディング、弾丸導入又は感染などの、当該技術分野において周知の方法を用いて行うことができる(例えば、Davisらの文献、「分子生物学の基本法(Basic Methods in Molecular Biology)」, 1986、及びSambrookらの文献、「実験マニュアル(A Laboratory Manual)」, 第2版, Cold Spring Harbour laboratory Press社、コールドスプリングハーバー、NY、1989を参照されたい)。
【0114】
宿主細胞として、例えば、大腸菌(Escherichia)、連鎖球菌(Streptococci)、ブドウ球菌(Staphylococci)、ストレプトマイセス(Streptomyces)属の細菌、バチルス(Bacillus)属の細菌、酵母、アスペルギルス細胞、昆虫細胞、昆虫、及び動物細胞が使用される。本明細書において使用される大腸菌属の細菌の具体例は、大腸菌(Escherichia coli)K12及びDH1(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol.60, 160 (1968))、JM103(Nucleic Acids Research, Vol.9, 309 (1981))、JA221(Journal of Molecular Biology, Vol.120, 517 (1978))、及びHB101(Journal of Molecular Biology, Vol.41, 459 (1969))を含む。バチルス属の細菌としては、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)MI114(Gene, Vol.24, 255 (1983))及び207-21(Journal of Biochemistry, Vol.95,87(1984))が使用される。酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccaromyces cerevisiae)AH22、AH22R-、NA87-11A、DKD-5D、及び20B-12、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccaromyces pombe)NCYC1913及びNCYC2036、並びにピチア・パストリス(Pichia pastoris)が使用される。昆虫細胞として、例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)S2及びヨトウガ(Spodoptera)Sf9細胞が使用される。動物細胞として、例えば、COS-7及びサルVero細胞、CHOチャイニーズハムスター細胞(以後CHO細胞と略す)、dhfr-遺伝子-欠損CHO細胞、マウスL細胞、マウスAtT-20細胞、マウス骨髄腫細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞、COS、HeLa、C127、3T3、HEK 293、BHK及びBowesメラノーマ細胞が使用される。
【0115】
組換えポリペプチドを作製するために、無細胞-翻訳システムも利用することができる(例えば、ウサギ網状赤血球溶解液、コムギ胚芽溶解液、SP6/T7インビトロT&T及びRTS 100大腸菌HY転写及び翻訳キット(Roche Diagnostics社, ルイス, 英国)、並びにTNTクイック・カップル転写/翻訳システム(Promega UK社, サウスハンプトン, 英国))。
【0116】
前記発現ベクターは、当該技術分野において公知の方法に従い作出することができる。例えば該ベクターは、(1)本発明のDNAを含むDNA断片又は本発明のDNAを含む遺伝子の切り出し、及び(2)好適な発現ベクター内のプロモーターの下流への該DNA断片のライゲーション:により作製することができる。多種多様な発現システムを使用することができ、例えば非限定的に、染色体システム、エピソームシステム及びウイルス由来のシステムなど、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pBR322、pBR325、pUC18、及びpUC118)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5、及びpC194)、バクテリオファージ由来の、トランスポゾン由来の、酵母エピソーム由来の(例えば、pSH19及びpSH15)、挿入エレメント由来の、酵母染色体エレメント由来の、バキュロウイルス、SV40などのパポーバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスなどのウイルス由来のプラスミド、並びにそれらの組合せ由来のベクター、例えばプラスミド及びバクテリオファージ(λファージなど)の遺伝エレメント由来のもの、例えばコスミド及びファージミドなどが挙げられる。これらの発現システムは、発現を生み出すことに加え調節する制御領域を含んでよい。本発明において使用されるプロモーターは、遺伝子発現に使用される宿主に適している限りは、任意のプロモーターであってよい。例えば宿主が大腸菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター、lppプロモーターなどが好ましい。宿主が枯草菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。動物細胞が宿主として使用される場合、この場合に使用するためのプロモーターの例は、SRaプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、及びHSV-TKプロモーターを含む。一般に宿主においてポリペプチドを作出するために核酸を維持、伝播又は発現することができる任意のシステム又はベクターを、使用することができる。
【0117】
好適な核酸配列は、Sambrookらの文献(前掲)に記されたものなどの、様々な周知かつ慣習の技術のいずれかにより、発現システムへ挿入することができる。好適な分泌シグナルをOGTA076ポリペプチドへ組み込み、翻訳されたタンパク質を小胞体内腔、周辺腔又は細胞外環境へ分泌させることができる。これらのシグナルは、OGTA076ポリペプチドに対し内在性であるか、またはこれらは異種シグナルであってよい。宿主細胞の形質転換は、当該技術分野において公知の方法に従い実行することができる。例えば、下記の文献を参照することができる:Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol.69, 2110 (1972);Gene, Vol.17, 107 (1982);Molecular & General Genetics, Vol.168, 111 (1979);Methods in Enzymology, Vol.194, 182-187 (1991);Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol.75, 1929 (1978);Cell Technology, 分冊第8巻, New Cell Technology, Experimental Protocol. 263-267 (1995)(Shujunsha発行);及び、Virology, Vol.52, 456 (1973)。こうして得られた本発明のDNAを含む発現ベクター又は本発明のDNAを含む遺伝子により形質転換された形質転換体は、当該技術分野において公知の方法に従い培養することができる。例えば、宿主がエシェリキア属の細菌である場合、この細菌は一般に、約15℃〜43℃で、約3〜24時間培養される。必要ならば、曝気又は攪拌を加えることもできる。宿主がバチルス属の細菌である場合、この細菌は一般に、約30℃〜40℃で、約6〜24時間培養される。必要ならば、曝気又は攪拌を加えることもできる。宿主が酵母である形質転換体が培養される場合、培養は一般に、pH約5〜8に調節された培地を用い、約20℃〜35℃で約24〜72時間実行される。必要ならば、曝気又は攪拌を加えることもできる。宿主が動物細胞である形質転換体が培養される場合、これらの細胞は一般に、pH約6〜8に調節された培地を用い、約30℃〜40℃で約15〜60時間実行される。必要ならば、曝気又は攪拌を加えることもできる。
【0118】
OGTA076 ポリペプチドが、細胞ベースのスクリーニングアッセイにおいて使用するために発現される場合、このポリペプチドは細胞表面で生成されることが好ましい。この事象において、これらの細胞は、スクリーニングアッセイにおいて使用する前に収集することができる。OGTA076ポリペプチドが培地へ分泌されるならば、前記ポリペプチドを単離するために、この培地を回収することができる。細胞内に生成される場合、これらの細胞は、OGTA076ポリペプチドが回収される前に、最初に溶解されなければならない。
【0119】
OGTA076ポリペプチドは、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、遠心分離法、電気泳動法及びレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法により、組換え細胞培養物から又は他の生物学的給源から回収及び精製することができる。ひとつの実施態様において、これらの方法の組合せが使用される。別の実施態様において、高速液体クロマトグラフィーが使用される。更なる実施態様において、OGTA076ポリペプチドへ特異的に結合する抗体を使用して、前記ポリペプチドのOGTA076ポリペプチドを含有する試料を枯渇させることができ、又は前記ポリペプチドを精製することができる。
【0120】
本発明のポリペプチド又はタンパク質を、例えば培養後に培養生成物から分離及び精製するために、微生物体又は細胞を、公知の方法により収集し、これらを好適な緩衝液中に懸濁し、微生物体又は細胞を、例えば超音波、リゾチーム、及び/又は凍結−融解により破壊し、その後得られた結果的産物を遠心分離又は濾過に供し、その後該タンパク質の粗抽出物を得ることができる。この緩衝液は、尿素若しくは塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤、又はTriton X-100(商標)などの界面活性剤を含んでもよい。タンパク質が培養液へ分泌される場合、微生物体又は細胞及び上清は、培養の完了後に公知の方法により分離され、その後上清が収集される。こうして得られた培養物上清又は抽出物中に含まれたタンパク質は、公知の分離法及び精製法の適当な組合せにより精製することができる。こうして得られた本発明のポリペプチド(タンパク質)は、公知の方法又はそれに準じた方法により塩に転換することができる。逆に本発明のポリペプチド(タンパク質)が塩の形態で得られた場合、これは公知の方法又はそれに準じた方法により遊離タンパク質又はペプチド又はその他の塩に転換することができる。更にトリプシン又はキモトリプシンなどの好適なタンパク質修飾酵素は、精製の前後に組換えにより生成されたタンパク質に作用させ、その結果修飾が適宜加えられるか又はポリペプチドが部分的に除去されることができる。本発明のポリペプチド(タンパク質)又はそれらの塩の存在は、様々な結合アッセイ、特異的抗体を使用する酵素イムノアッセイなどにより測定することができる。
【0121】
OGTA076ポリペプチドが単離及び/又は精製時に変性した場合には、当該技術分野において周知の技術を使用し、OGTA076ポリペプチドの未変性型又は活性型のコンホメーションを再生するためにリフォールディングすることができる。本発明の状況において、OGTA076ポリペプチドは、非限定的に、血液試料又は組織試料、例えば結腸直腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ系、卵巣若しくは膵臓の組織試料などの、任意の給源由来の生物学的試料から得ることができる。
【0122】
OGTA076ポリペプチドは、「成熟タンパク質」の形態であることができるか、又は融合タンパク質などの比較的大きいタンパク質の一部であることができる。これは、分泌配列又はリーダー配列、プレ-、プロ-若しくはプレプロ-タンパク質配列、又は例えば非限定的に複数のヒスチジン残基、FLAGタグ、HAタグ若しくはmycタグなどの親和性タグなどの精製を補助する配列を含む追加のアミノ酸配列を含むことが有利であることが多い。
【0123】
組換え生成時に安定性を提供することができる追加の配列も使用することができる。このような配列は、追加配列又はその一部として切断可能な配列を組み込むことにより、必要に応じ任意に除去することができる。従ってOGTA076ポリペプチドは、他のポリペプチド又はタンパク質(例えばグルタチオンS-トランスフェラーゼ及びプロテインA)を含む他の部分に融合することができる。このような融合タンパク質は、好適なプロテアーゼを用い切断し、その後各タンパク質へ分離することができる。このような追加の配列及び親和性タグは、当該技術分野において周知である。所望であるならば前述のものに加え、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA追加シグナル、選択マーカー、及びSV40複製起点などの当該技術分野において公知の特徴を、発現ベクターに追加することができる。
【0124】
(OGTA076への親和性試薬の作製)
当該技術分野において、3種の主な免疫親和性試薬−モノクローナル抗体、ファージディスプレイ抗体、及びアフィボディ、ドメイン抗体(dAb)、ナノボディ又はユニボディなどの小型抗体由来の分子−が存在する。一般に抗体の使用が言及される本発明の適用においては、他の親和性試薬(例えばアフィボディ、ドメイン抗体、ナノボディ又はユニボディ)が利用されてよい。このような物質は、OGTA076への免疫特異的結合が可能であると言うことができる。用語「親和性作用物質」は、適宜、免疫親和性試薬、並びにリガンド、レクチン、ストレプトアビジン、抗体模倣物及び合成結合物質を含むが、これらに限定されるものではない、OGTA076へ特異的に結合することが可能な他の物質を包含するように解釈されるべきである。
【0125】
(OGTA076に対する抗体の産生)
本発明に従い、OGTA076、OGTA076類似体、OGTA076-関連タンパク質又は前述のいずれかの断片若しくは誘導体を免疫原として使用して、このような免疫原に免疫特異的に結合する抗体を産生してもよい。このような免疫原は、上記の方法を含む任意の便利な手段によって単離することができる。本明細書において使用される用語「抗体」とは、抗原又はエピトープへ特異的に結合することが可能である、ひとつ又は複数の免疫グロブリン遺伝子、又はそれらの断片により誘導体化された、モデル化された、若しくは実質的にコードされたペプチド又はポリペプチドをいう。例えば、「基礎免疫学(Fundamental Immunology)」, 第3版, W.E. Paul編, Raven Press, N.Y. (1993);Wilsonの論文, (1994) J. Immunol. Methods 175:267-273;Yarmushの論文, (1992) J. Biochem. Biophys. Methods 25:85-97を参照されたい。用語「抗体」は、抗原へ結合する能力を保持している抗原-結合部分、すなわち「抗原結合部位」(例えば、断片、部分配列、相補性決定領域(CDR))を含み、これは(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる単価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド結合により連結された2個のFab断片を含む二価断片である、F(ab')2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなる、Fd断片;(iv)抗体の1本の腕のVL及びVHドメインからなる、Fv断片、(v)VHドメインからなる、dAb断片(Wardらの論文, (1989) Nature, 341:544-546);並びに、(vi)単離された相補性決定領域(CDR);を含む。単鎖抗体も、用語「抗体」に含まれる。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片及びF(ab')2断片、Fab発現ライブラリーによって産生される断片、抗イディオタイプ(抗-Id)抗体、並びに上記のいずれかのエピトープ結合断片を含むが、これらに限定されない。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えばIgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)又はサブクラスであることができる。
【0126】
「特異的に結合」(又は「免疫特異的に結合」)という用語は、抗体がその意図された標的だけに結合することを示すことは意図していない。むしろ抗体は、非標的分子に対するその親和性と比較したときに、その意図された標的に対するその親和性が約5倍より高い場合に、「特異的に結合する」。好適なことに、望ましくない物質、特に健常なヒト又は動物の天然のタンパク質又は組織との重大な交差反応若しくは交差結合は存在しない。ひとつの実施態様において、抗体の親和性は、非標的分子に対するその親和性よりも標的分子に対して少なくとも約5倍、例えば10倍、例として25倍、特に50倍及び特別には100倍以上高い。一部の実施態様において、抗体又はその他の結合剤と抗原との間の特異的結合は、少なくとも106 M-1の結合親和性を意味する。少なくとも約107 M-1、例えば108 M-1〜約109 M-1、約109 M-1〜約1010 M-1、又は約1010 M-1〜約1011 M-1の間の親和性を有する抗体は、本発明における使用に特に適している。
【0127】
親和性は、Kd=koff/konとして算出される(koffは、解離速度定数であり、konは、会合速度定数であり、及びKdは平衡定数である)。親和性は、平衡時に、様々な濃度(c)での、標識されたリガンドの結合した画分(r)を測定することにより決定することができる。データは、スキャッチャード式:r/c=K(n-r)を使用してグラフで示してある:
式中
r=平衡時の結合したリガンドのモル数/受容体のモル数;
c=平衡時の遊離リガンド濃度;
K=平衡会合定数;及び
n=受容体分子1個あたりのリガンド結合部位の数。
図式解法により、r/cをY軸にプロットし、対してrをX軸にプロットし、こうしてスキャッチャードプロットを作製する。親和性は、この直線の負の勾配である。koffは、結合した標識リガンドを過剰な非標識リガンドとで競合させることによって決定することができる(例えば、米国特許第6,316,409号を参照されたい)。ターゲティング剤のその標的分子に対する親和性は、好ましくは少なくとも約1×10-6モル/リットルであり、より好ましくは少なくとも約1×10-7モル/リットル、更により好ましくは少なくとも約1×10-8モル/リットル、更により好ましくは少なくとも約1×10-9モル/リットル、及び最も好ましくは少なくとも約1×10-10モル/リットルである。スキャッチャード解析による抗体親和性測定は、当技術分野において周知である。例えば、van Erpらの論文、J. Immunoassay, 12:425-43、1991;Nelson及びGriswoldの論文、Comput. Methods Programs Biomed. 27:65-8、1988を参照されたい。
【0128】
ひとつの実施態様において、OGTA076をコードする遺伝子の遺伝子産物を認識する抗体を公に入手することができる。別の実施態様において、当業者に公知の方法を使用して、OGTA076、OGTA076類似体、OGTA076-関連ポリペプチド又は前述のいずれかの断片若しくは誘導体を認識する抗体を産生する。当業者は、抗体の産生のために、例えば、「抗体、実験マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」(Harlow及びDavid Lane編, Cold Spring Harbor Laboratory (1988), コールドスプリングハーバー, NY)に説明されたような、多くの手法を利用することができることを認めるであろう。当業者は、抗体を模倣している結合断片又はFab断片も、様々な手法により遺伝的情報から調製することができることも理解するであろう(「抗体操作:実践法(Antibody Engineering: A Practical Approach)」(Borrebaeck, C.編), 1995, Oxford University Press社, オックスフォード;J. Immunol. 149, 3914-3920 (1992))。
【0129】
本発明のひとつの実施態様において、OGTA076の特異的ドメインに対する抗体が産生される。具体的実施態様において、OGTA076の親水性断片が、抗体産生のための免疫原として使用される。
【0130】
抗体産生において、所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野において公知の技術、例えばELISA(酵素結合免疫吸着検定法)によって達成することができる。例えば、OGTA076の特異的ドメインを認識する抗体を選択するために、このようなドメインを含むOGTA076断片と結合する産物について作製したハイブリドーマをアッセイしてもよい。第1のOGTA076相同体に特異的に結合するが、第2のOGTA076相同体と特異的に結合しない(又は、より弱い強さで結合する)抗体の選択のためには、第1のOGTA076相同体に対する陽性結合及び第2のOGTA076相同体に対する結合の欠如(又は、結合の減少)を基に選択することができる。同様に、OGTA076に特異的に結合するが、同じタンパク質の異なるアイソフォーム(OGTA076と同じコアペプチドを有する異なる糖型など)には特異的に結合しない(又は、より弱い強さで結合する)抗体の選択のためには、OGTA076に対する陽性結合及び異なるアイソフォーム(例えば、異なる糖型)に対する結合の欠如(又は、結合の減少)を基に選択することができる。従って本発明は、OGTA076の異なるアイソフォーム又はアイソフォーム群(例えば、糖型)よりもOGTA076に対してより高い親和性(例えば少なくとも2倍、少なくとも5倍、特に少なくとも10倍より高い親和性など)で結合する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を提供する。
【0131】
本発明の方法に使用してもよいポリクローナル抗体は、免疫動物の血清に由来する抗体分子の不均一な集団である。分画されていない免疫血清を使用することもできる。当該技術分野において公知の様々な手法を使用して、OGTA076、OGTA076の断片、OGTA076-関連ポリペプチド、又はOGTA076-関連ポリペプチドの断片に対するポリクローナル抗体を産生してもよい。例えばひとつの方法は、関心対象のポリペプチドを精製する、又は例えば当該技術分野において周知の固相ペプチド合成法を用い関心対象のポリペプチドを合成する。例えば、「タンパク質精製指針(Guide to Protein Purification)」、Murray P. Deutcher編、Meth. Enzymol. Vol 182 (1990);「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」、Greg B. Fields編, Meth. Enzymol. Vol 289 (1997);Kisoらの論文、Chem. Pharm. Bull. (東京) 38: 1192-99, 1990;Mostafaviらの論文、Biomed. Pept. Proteins Nucleic Acids, 1: 255-60, 1995;Fujiwaraらの論文、Chem. Pharm. Bull. (東京) 44: 1326-31, 1996を参照されたい。その後選択されたポリペプチドを使用し、ウサギ、マウス、ラットなどを含むが、これらに限定されない種々の宿主動物を注射することにより免疫し、ポリクローナル又はモノクローナル抗体の産生することができる。本明細書において実施例1に記述した「好ましい技術」は、このような免疫化に適した単離されたOGTA076を提供する。OGTA076をゲル電気泳動によって精製する場合、OGTA076は、ポリアクリルアミドゲルから先に抽出するかどうかにかかわらず、免疫に使用することができる。様々なアジュバント(すなわち免疫賦活剤)を、宿主種に応じて、免疫応答を増強するために使用してよく、これは完全又は不完全フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシニアン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメット・ゲラン菌)又はコリネバクテリウム・パルバム(corynebacterium parvum)などのアジュバントを含むが、これらに限定されるものではない。更なるアジュバントも当該技術分野において周知である。
【0132】
OGTA076、OGTA076の断片、OGTA076-関連ポリペプチド、又はOGTA076-関連ポリペプチドの断片に対するモノクローナル抗体(mAb)の調製のためには、連続した培養における株化細胞によって抗体分子の産生を提供する任意の技術が使用されてよい。例えばハイブリドーマ技術は最初に、Kohler及びMilstein(1975, Nature, 256:495-497)によって開発され、更にはトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborらの論文, 1983, Immunology Today, 4:72)及びヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV-ハイブリドーマ技術(Coleらの文献, 1985, 「モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」, Alan R. Liss社, 77-96頁)を使用してもよい。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそのいずれかのサブクラスを含む免疫グロブリンのクラスに由来するものであることができる。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで培養することができる。本発明の更なる実施態様において、モノクローナル抗体は、公知の技術を利用して無菌動物において産生することができる(PCT/US90/02545(引用により本明細書に組み込まれる))。
【0133】
モノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体及びキメラモノクローナル抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ)を含むが、これらに限定されない。キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域及びマウスmAb由来の可変領域を有するものなどのように、異なる部分が異なる種に由来する分子である(Cabillyらの米国特許第4,816,567号;Bossらの米国特許第4,816,397号を参照されたく、これらはそれらの全体が引用により本明細書に組み込まれる)。ヒト化抗体は、ひとつ以上の非ヒト種由来の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する非ヒト種由来の抗体分子である。(例えば、Queenの米国特許第5,585,089号を参照されたく、これはその全体が引用により本明細書に組み込まれる)。
【0134】
キメラモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野において公知の組換えDNA技術、例えばPCT公開番号WO87/02671;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT公開番号WO86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Betterらの論文、1988、Science, 240:1041-1043;Liuらの論文、1987、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:3439-3443;Liuらの論文、1987、J. Immunol. 139:3521-3526;Sunらの論文、1987、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:214-218;Nishimuraらの論文、1987、Canc. Res. 47:999-1005;Woodらの論文、1985、Nature, 314:446-449;及びShawらの論文、1988、J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559;Morrisonの論文、1985、Science, 229:1202-1207;Oiらの論文、1986、Bio/Techniques, 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesらの論文、1986、Nature, 321:552-525;Verhoeyanらの論文、(1988) Science, 239:1534;及びBeidlerらの論文、1988、J. Immunol. 141:4053-4060;に記述された方法を使用して産生することができる。
【0135】
完全ヒト抗体は、ヒト被験体の治療的処置のためには特に望ましい。このような抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して産生することができる。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えばOGTA076の全て又は一部により通常の様式で免疫される。この抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスにより収容されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再編成し、その後にクラススイッチ及び体細胞突然変異を受ける。従ってこのような技術を使用し、治療に有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術の総説については、Lonberg及びHuszarの論文(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を産生するためのこの技術並びにこのような抗体を産生するためのプロトコールの詳細な考察については、例えば米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;及び米国特許第5,545,806号;を参照されたい。加えて、Abgenix社(フリーモント, CA)及びGenpharm社(サンノゼ, CA)などの会社は、前述のものと類似の技術を使用して選択された抗原に対するヒト抗体を提供することに従事することができる。
【0136】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる技術を使用して産生することができる。この方法では、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespersらの論文,(1994) Bio/technology 12:899-903)。
【0137】
また本発明の抗体は、選択された標的への結合に関してポリペプチドライブラリーを作製しスクリーニングするファージディスプレイ法を使用して産生することもできる。例えば、Cwirlaらの論文, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 6378-82, 1990;Devlinらの論文, Science 249, 404-6, 1990;Scott及びSmithの論文, Science 249, 386-88, 1990;並びに、Ladnerらの米国特許第5,571,698号を参照されたい。ファージディスプレイ法の基本的概念は、スクリーニングされるポリペプチドをコードしているDNAとそのポリペプチドの間の物理的関係の確立である。この物理的関係は、そのポリペプチドをコードしているファージゲノムを封入しているキャプシドの一部としてポリペプチドを提示する、ファージ粒子により提供される。ポリペプチドとそれらの遺伝物質の間の物理的関係の確立は、異なるポリペプチドを有する非常に多数のファージの同時大量スクリーニングを可能にする。標的への親和性を伴うポリペプチドを提示するファージはその標的へ結合し、これらのファージは、標的への親和性スクリーニングにより濃縮される。これらのファージにより提示されるポリペプチドの同一性は、それらの各ゲノムにより決定することができる。これらの方法を用い、所望の標的に対する結合親和性を有すると同定されたポリペプチドは、次に通常の手段により大量に合成することができる。例えば米国特許第6,057,098号を参照することとし、全ての表、図面及び特許請求の範囲を含む、その全体は引用により本明細書に組み込まれる。特にこのようなファージは、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示するために利用することができる。関心対象の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現しているファージは、抗原を用いて、例えば標識抗原、又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕獲された抗原を使用して選択又は同定することができる。これらの方法に使用されるファージは、典型的にはファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えで融合されたFab、Fv又はジスルフィド安定化されたFv抗体ドメインと共にファージから発現されるfd及びM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。本発明の抗体を作製するために使用することができるファージディスプレイ法は、Brinkmanらの論文、J. Immunol. Methods, 182:41-50(1995);Amesらの論文、J. Immunol. Methods, 184:177-186(1995);Kettleboroughらの論文、Eur. J. Immunol. 24:952-958(1994);Persicらの論文、Gene, 187 9-18(1997);Burtonらの論文、Advances in Immunology, 57:191-280 (1994);PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT公開WO 90/02809;WO 91/10737;WO 92/01047;WO 92/18619;WO 93/11236;WO 95/15982;WO 95/20401;並びに、米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号及び第5,969,108号;(それぞれ、その全体が引用により本明細書に組み込まれる)に開示されたものを含む。
【0138】
上記文献に記載されているように、ファージ選択の後、ファージ由来の抗体コード領域を単離して、ヒト抗体を含む抗体全体又はその他の所望の抗原結合断片を産生するために使用すること、並びに例えば以下に詳細に記述したように、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む任意の所望の宿主において発現させることができる。また例えば、Fab、Fab'、及びF(ab')2断片を組換えで産生する技術も、PCT公開WO 92/22324;Mullinaxらの論文、BioTechniques, 12(6):864-869 (1992);及び、Sawaiらの論文、AJRI 34:26-34 (1995);及び、Betterらの論文、Science, 240:1041-1043(1988)(前記参照は、それらの全体が引用により組み込まれる)に開示されたものなどの当該技術分野において公知の方法を使用して利用することができる。
【0139】
単鎖Fv及び抗体を産生するために使用することができる適切な技術の例には、米国特許第4,946,778号及び第5,258,498号;Hustonらの論文、Methods in Enzymology, 203:46-88(1991);Shuらの論文、PNAS 90:7995-7999(1993);及びSkerraらの論文、Science, 240:1038-1040(1988);に記述されたものを含む。
【0140】
本発明は、当該技術分野において公知の方法によって作製することができる二重特異性抗体の使用を更に提供する。完全長二重特異性抗体の従来の産生は、ふたつの鎖が異なる特異性を有するふたつの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいている(Milsteinらの論文, 1983、Nature, 305:537-539)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組合せのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の可能性のある混合物を生じ、そのうちのひとつのみが正確な二重特異性構造を有する。通常アフィニティクロマトグラフィー工程によってなされる正確な分子の精製は、むしろ扱いにくく、生成物の収率は低い。同様の手法は、1993年5月13日に公開されたWO 93/08829、及びTrauneckerらの論文、1991、EMBO J. 10:3655-3659に開示されている。
【0141】
異なるアプローチ及びより好ましいアプローチに従い、所望の結合特異性をもつ抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。融合物の少なくともひとつに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、及び望ましいならば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトする。これは、構築に使用した不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収量をもたらす実施態様において、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調節する際に優れた柔軟性をもたらす。しかし、少なくともふたつのポリペプチド鎖の同等の比率の発現により高収率を生じるときか、又は比率が特に意味を持たないときは、ふたつ又は3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列をひとつの発現ベクターに挿入することができる。
【0142】
このアプローチの好ましい実施態様において、二重特異性抗体は、一方の腕の第1の結合特異性をもつハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方の腕のハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)とで構成される。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することは、容易な分離方法を提供するので、この非対称構造は、所望の二重特異性化合物の望まれない免疫グロブリン鎖状結合からの分離を容易にすることが判明した。このアプローチは、1994年3月3日公開されたWO 94/04690に開示されている。二重特異性抗体の産生に関する詳細については、例えば、Sureshらの論文、Methods in Enzymology, 1986 121:210を参照されたい。
【0143】
本発明は、抗-OGTA076免疫グロブリン分子の機能的に活性のある断片、誘導体又は類似体を提供する。機能的に活性とは、断片、誘導体又は類似体が、それらから断片、誘導体又は類似体が誘導される抗体によって認識される同じ抗原を認識する抗抗イディオタイプ抗体(すなわち、三次抗体)を誘発することができることを意味する。具体的には、好ましい実施態様において、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性をフレームワーク及びC末端であるCDR配列から抗原を特異的に認識するCDR配列までの欠失によって増強してもよい。どのCDR配列が抗原に結合するかを決定するために、CDR配列を含む合成ペプチドは、当該技術分野において公知の任意の適切な結合アッセイ法による抗原との結合アッセイ法に使用することができる。
【0144】
本発明は、非限定的に、F(ab')2断片及びFab断片などの抗体断片を提供する。特異的エピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって産生することができる。F(ab')2断片は、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖CH1ドメインからなり、抗体分子のペプシン消化によって産生される。Fab断片は、F(ab')2断片のジスルフィド橋を還元させることによって産生される。また本発明は、本発明の抗体の重鎖と軽鎖との二量体又はFv若しくは単鎖抗体(SCA)などの任意のその最小断片(例えば、米国特許第4,946,778号;Birdの論文、1988、Science, 242:423-42;Hustonらの論文、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883;及びWardらの論文、1989、Nature, 334:544-54に記載されたとおり)、又は本発明の抗体と同じ特異性をもつ任意のその他の分子を提供する。単鎖抗体は、アミノ酸ブリッジを介してFv領域の重鎖断片及び軽鎖断片を連結して一本鎖ポリペプチドを生じることによって形成される。大腸菌における機能的Fv断片の集成のための技術を使用してもよい(Skerraらの論文, 1988、Science, 242:1038-1041)。
【0145】
その他の実施態様において、本発明は、本発明の免疫グロブリン(又はその機能的に活性のある断片)の融合タンパク質、例えば免疫グロブリンがN末端又はC末端のいずれかにて共有結合(例えば、ペプチド結合)を介してその免疫グロブリンでない別のタンパク質のアミノ酸配列(又はその一部、好ましくはそのタンパク質の少なくとも10、20又は50アミノ酸部分)に融合されている融合タンパク質を提供する。好ましくは、免疫グロブリン又はその断片は、定常ドメインのN末端にて他のタンパク質に共有結合で連結されている。前述のように、このような融合タンパク質は、精製を促進し、インビボでの半減期を延長し、及び免疫系に対する上皮関門を越える抗原の送達を増強し得る。
【0146】
本発明の免疫グロブリンは、すなわちこのような共有結合が免疫特異的結合を障害しない限りは、任意の型の分子の共有結合によって修飾されている類似体及び誘導体を含む。例えば、限定を目的とするものではないが、免疫グロブリンの誘導体及び類似体は、例えばグリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解性切断、細胞リガンド若しくはその他のタンパク質に対する結合などによって更に修飾されたものを含む。任意の多数の化学的修飾を、特異的化学開裂、アセチル化、ホルミル化などを含むが、これらに限定されない公知技術によって行ってもよい。加えて、類似体又は誘導体は、ひとつ以上の非古典的アミノ酸を含んでいてもよい。
【0147】
前述の抗体は、OGTA076の局在化及び活性に関連した当該技術分野において公知の方法において、例えばこれらのタンパク質を造影するため、適切な生理学的試料におけるこれらのレベルを測定するため、診断法などに使用することができる。
【0148】
(OGTA076に対するアフィボディの産生)
アフィボディ分子は、ブドウ球菌プロテインAのIgG-結合ドメインのひとつに由来する58アミノ酸残基タンパク質ドメインに基づいた親和性タンパク質の新たな種類を表す。この3つのヘリックスバンドルドメインはコンビナトリアルファージミドライブラリーの構築のための足場として使用されてきており、これからファージディスプレイ技術を使用して所望の分子を標的化するアフィボディ変異体を選択することができる(Nord K, Gunneriusson E, Ringdahl J, Stahl S, Uhlen M, Nygren PAの論文、「α-ヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリーから選択された結合タンパク質(Binding proteins selected from combinatorial libraries of an α-helical bacterial receptor domain)」, Nat Biotechnol 1997;15:772-7;Ronmark J, Gronlund H, Uhlen M, Nygren PAの論文、「タンパク質Aのコンビナトリアル操作からのヒト免疫グロブリンA(IgA)−特異性リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, Eur J Biochem 2002;269:2647-55)。これらの低分子量(6kDa)と組合せでのアフィボディ分子の単純で頑強な構造は、多種多様な適用、例えば検出試薬としての適用にそれらを適したものとし(Ronmark J, Hansson M, Nguyen Tらの論文, 「大腸菌で産生されたアフィボディ-Fcキメラの構成及び特徴づけ(Construction and charecterization of affibody-Fc chimeras produced in Escherichia coli)」, J Immunol Methods 2002;261:199-211)、及び受容体相互作用を阻害する(Sandstorm K, Xu Z, Forsberg G, Nygren PAの論文, 「コンビナトリアルタンパク質操作によって開発されたCD28結合アフィボディリガンドによる、CD28-CD80共刺激の阻害(Inhibition of the CD28-CD80 co-stimulation signal by a CD28-binding affibody ligand developed by combinatorial protein engineering)」, Protein Eng 2003;16:691-7)。アフィボディに関する更なる詳細及びそれらの製造法は、その全体が本明細書に引用により組み込まれる米国特許第5831012号を参照することによって得られるであろう。
【0149】
また、標識されたアフィボディは、アイソフォームの存在量を決定するための造影用途に有用であろう。
【0150】
(OGTA076に対するドメイン抗体の産生)
本明細書の抗体に関する言及は、ドメイン抗体に関する言及を包含している。ドメイン抗体(dAb)は、ヒト抗体の重(VH)鎖又は軽(VL)鎖のいずれかの可変領域に対応する抗体のうちの最も小さな機能的結合単位である。ドメイン抗体は、およそ13kDaの分子量を有する。Domantisは、完全ヒトVH及びVL dAbの一連の大きく、かつ高度に機能的なライブラリー(それぞれのライブラリーにおける10,000,000,000を超える異なる配列)を開発し、これらのライブラリーを治療標的に対して特異的なdAbを選択するために使用している。多くの通常抗体とは対照的に、ドメイン抗体は、細菌、酵母及び哺乳動物細胞系において十分に発現される。ドメイン抗体に関する更なる詳細及びその産生方法は、米国特許第6,291,158号;第6,582,915号;第6,593,081号;第6,172,197号;第6,696,245号;米国特許出願第2004/0110941号;欧州特許出願第1433846号、並びに欧州特許第0368684号及び第0616640号;WO 05/035572、WO 04/101790、WO 04/081026、WO 04/058821、WO 04/003019及びWO 03/002609(これらのそれぞれは、その全体が本明細書に引用により組み込まれる)を参照することによって得られるであろう。
【0151】
(OGTA076に対するナノボディの産生)
ナノボディは、天然の重鎖抗体の独自の構造的及び機能的特性を有する、抗体-由来の治療的タンパク質である。これらの重鎖抗体は、単独の可変ドメイン(VHH)及びふたつの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含む。重要なことに、クローニングされかつ単離されたVHHドメインは、当初の重鎖抗体の完全な抗原結合能を収容する全く安定したポリペプチドである。ナノボディは、ヒト抗体のVHドメインと高い相同性を有し、かつ活性を喪失することなく更にヒト化することができる。重要なことに、ナノボディは、免疫原性の潜在能が低く、このことはナノボディリード化合物による霊長類の研究において確認された。
【0152】
ナノボディは、通常抗体の利点を小型分子型薬物の重要な特徴と組合せている。通常抗体同様、ナノボディは、高い標的特異性、それらの標的への高い親和性及び低い固有の毒性を示す。しかし小型分子型薬物同様、これらは酵素を阻害しかつ容易に受容体クレフトに接近する。更にナノボディは、極めて安定しており、注射以外の手段で投与することができ(例えば、その内容全体は引用により本明細書に組み込まれている、WO 04/041867を参照のこと)、製造が容易である。ナノボディの他の利点は、それらのサイズが小さいことの結果として珍しい又は隠されたエピトープを認識すること、それらの独自の3-次元性のために高い親和性及び選択性を伴いタンパク質標的の溝又は活性部位に結合すること、薬物フォーマットの柔軟性、半減期のあつらえ及び薬物発見の迅速さである。
【0153】
ナノボディは、単独の遺伝子によりコードされ、並びに例えば大腸菌(例えば、その内容全体は引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,765,087号を参照されたい)、糸状菌(例えば、アスペルギルス又はトリコデルマ)及び酵母(例えば、サッカロミセス、クルイベロマイセス、ハンセヌラ又はピチアなど)(例えば、その内容全体は引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,838,254号を参照されたい)などの、ほぼ全ての原核宿主及び真核宿主において効率的に産生される。産生プロセスは、拡大縮小可能であり、数Kg量のナノボディが生産されている。ナノボディは通常抗体と比べ優れた安定性を示すので、これらは長期保存しそのまま使用することができる液剤として製剤することができる。
【0154】
ナノクローン法(例えば、その内容全体は引用により本明細書に組み込まれている、WO 06/079372を参照されたい)は、B細胞の自動式ハイスルーアウト選択を基にした、所望の標的に対するナノボディを作製する特許で保護された方法である。
【0155】
(OGTA076に対するユニボディの産生)
ユニボディは、現在の小型抗体フォーマットよりもより長い治療ウィンドウが予測される、安定した、より小さい抗体フォーマットを作製する、新規の特許で保護された抗体技術である。IgG4抗体は、不活性であると考えられ、従って免疫系と相互作用しない。Genmab社は、完全ヒトIgG4抗体のヒンジ領域を取り除くことにより、完全ヒトIgG4抗体を修飾した。完全サイズのIgG4抗体とは異なり、この半分の分子断片は、非常に安定しており、ユニボディと称された。IgG4分子の二分は、ユニボディ上に疾患標的に結合することができるひとつの領域のみを残し、その結果ユニボディは、標的細胞上のただひとつの部位に一価で結合する。この一価の結合は、二価の抗体が行うように癌細胞の増殖を刺激せず、通常抗体が治療することができない一部の癌型の治療の扉を開く。
【0156】
ユニボディは、通常のIgG4抗体のサイズのほぼ半分である。この小さいサイズは、一部の癌型の治療において大きい利点であり、この分子の大きい固形腫瘍上のより良い分布及び有効性増大の可能性をもたらす。
【0157】
Fabは典型的には、非常に長い半減期を有さない。しかしユニボディは、前臨床試験において、全IgG4抗体と同等の速度でクリアランスされ、かつ全抗体及び抗体断片と同様に結合することができた。他の抗体は、標的化された細胞を死滅することにより主に作用するが、ユニボディは、細胞を単に阻害又は沈黙させるのみである。
ユニボディの更なる詳細は、その全体が本明細書に引用により組み込まれる特許WO 2007/059782を参照することによって得られるであろう。
【0158】
(親和性試薬の発現)
(抗体の発現)
本発明の抗体は、抗体の合成に関する当該技術分野において公知の任意の方法により、特に、化学合成によるか、又は組換え発現により産生することができ、好ましくは組換え発現技術によって産生される。
抗体又はそれらの断片、誘導体若しくは類似体の組換え発現には、その抗体をコードする核酸の構築が必要である。抗体のヌクレオチド配列が公知である場合、抗体をコードする核酸は、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドから集成してもよく(例えば、Kutmeierらの論文, 1994, BioTechniques, 17:242に記載されているように)、これには簡単には、抗体をコードする配列の部分を含む重複するオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及び連結、次いでPCRによる連結されたオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
【0159】
或いは、抗体をコードする核酸は、抗体をクローニングすることによって得てもよい。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンは入手不可能であるが、抗体分子の配列が公知である場合、抗体をコードする核酸は、配列の3'及び5'末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、又は特定の遺伝子配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用してクローニングすることによって、適切な供与源(例えば、抗体cDNAライブラリー又は抗体を発現する任意の組織又は細胞から作製したcDNAライブラリー)から得てもよい。
【0160】
特定の抗原を特異的に認識する抗体分子(又は、このような抗体をコードする核酸をクローニングするためのcDNAライブラリーのための供与源)が入手不可能である場合、特定の抗原に特異的な抗体を、当該技術分野において公知の任意の方法によって、例えばウサギなどの動物を免疫して、ポリクローナル抗体を産生することによって、又はより好ましくはモノクローナル抗体を産生することによって産生してもよい。或いは、特異的抗原に結合するFab断片のクローンについてFab発現ライブラリーをスクリーニングすることによって(例えば、Huseらの論文, 1989, Science, 246:1275-1281に記載されたように)、又は抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって(例えば、Clacksonらの論文, 1991、352:624 Nature;Haneらの論文, 1997 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4937;を参照されたい)、少なくとも抗体のFab部分をコードするクローンを得てもよい。
【0161】
一旦、少なくとも抗体分子の可変ドメインをコードする核酸が得られたら、これを抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むベクターに導入してもよい(例えば、PCT公開WO 86/05807、PCT公開WO 89/01036;及び米国特許第5,122,464号;を参照されたい)。完全な抗体分子の発現を可能にする核酸を同時発現するのための完全な軽鎖又は重鎖を含むベクターも利用できる。次いで、抗体をコードする核酸を使用し、スルフヒドリル基を含まないアミノ酸残基との鎖内ジスルフィド結合に関与するひとつ以上の可変領域システイン残基を置換する(又は欠失させる)ために必要なヌクレオチド置換(群)又は欠失(群)を導入することができる。このような修飾は、ヌクレオチド配列の特異的な突然変異又は欠失の導入のための当該技術分野において公知の任意の方法、例えば化学的突然変異誘発、インビトロ部位特異的突然変異誘発(Hutchinsonらの論文, 1978, J. Biol. Chem. 253:6551)、PCTに基づいた方法などによって行うことができるが、これらに限定されない。
【0162】
加えて、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来遺伝子を適切な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングすることにより、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrisonらの論文, 1984、Proc. Natl. Acad. Sci. 81:851-855;Neubergerらの論文, 1984、Nature, 312:604-608;Takedaらの論文, 1985、Nature, 314:452-454)を使用することができる。上記のように、キメラ抗体は、マウスmAbに由来する可変領域及びヒト抗体定常領域を有する分子、例えばヒト化抗体などの、異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。
【0163】
一旦、本発明の抗体分子をコードする核酸が得られたら、抗体分子の産生のためのベクターを、当該技術分野において周知の技術を使用する組換えDNA技術によって産生してもよい。従って、抗体分子配列を含む核酸を発現することにより本発明のタンパク質を調製する方法が本明細書に記述される。当業者に周知の方法を使用して、抗体分子コード配列並びに適切な転写及び翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えばインビトロ組換えDNA技術、合成技術及びインビボ遺伝子組換えを含む。例えば、Sambrookらの文献、(1990、「分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, コールドスプリングハーバー, NY)及びAusubelらの文献、(eds., 1998、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」, John Wiley & Sons, NY)に記述された技術を参照されたい。
【0164】
発現ベクターを従来技術によって宿主細胞に移し、次いで該トランスフェクト細胞を従来技術によって培養して、本発明の抗体を産生する。
本発明の組換え抗体を発現するために使用される宿主細胞は、特に組換え抗体分子全体の発現のためには、大腸菌などの細菌細胞、又は好ましくは真核細胞のいずれであってもよい。特に、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併用するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、抗体のための有効な発現系である(Foeckingらの論文, 1986, 45:101 Gene;Cockettらの論文, 1990 Bio/Technology 8:2)。
【0165】
種々の宿主-発現ベクター系を、本発明の抗体分子を発現させるために利用してもよい。このような宿主-発現系は、関心対象のコード配列を産生し、その後に精製され得る媒体を表すだけでなく、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換されたか、又はトランスフェクトされたときに、本発明の抗体分子をインサイチュで発現することができる細胞も表してもよい。これらには、抗体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA若しくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌、枯草菌)などの微生物;抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス、ピチア);抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウィルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させたか、若しくは抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;又は、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)、又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を収容する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞);を含むが、これらに限定されない。
【0166】
細菌系では、発現される抗体分子について意図される用途に応じて、多数の発現ベクターを都合よく選択することができる。例えば、大量のこのようなタンパク質が産生される場合には、抗体分子を含む医薬組成物の製造のために、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指揮するベクターが望ましいであろう。このようなベクターには、融合タンパク質が産生されるように抗体コード配列が個々にベクター内にlac Zコード領域とインフレームで連結され得る大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherらの論文, 1983, EMBO J. 2:1791);pINベクター(Inouye及びInouyeの論文、1985、Nucleic Acids Res. 13:3101-3109;Van Heeke及びSchusterの論文、1989、J. Biol. Chem. 24:5503-5509);などを含むが、これらに限定されない。また、pGEXベクターを使用して、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させてもよい。一般に、このような融合タンパク質は、可溶性であり、マトリックスグルタチオン-アガロースビーズへの吸着及び結合、続く遊離グルタチオンの存在下における溶出により、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローン化された標的遺伝子産物がGST部分から放出できるように、トロンビン又はXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0167】
昆虫系では、外来遺伝子を発現するためにベクターとしてキンウワバ(Autographa californica)核多角体病ウィルス(AcNPV)を使用する。このウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞内で増殖する。抗体コード配列は、このウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個々にクローニングしても、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置いてもよい。哺乳動物宿主細胞では、多数のウイルスに基づいた発現系(例えば、アデノウイルス発現系)を利用してもよい。
【0168】
上で議論したように、挿入配列の発現を調節するか、又は所望の特異的様式で遺伝子産物を修飾し、プロセシングする宿主細胞株を、選択してもよい。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能に重要であろう。
【0169】
組換え抗体の長期多収の産生のためには、安定した発現が好ましい。例えば関心対象の抗体を安定して発現する株化細胞は、抗体のヌクレオチド配列と選択可能な(例えば、ネオマイシン又はハイグロマイシン)のヌクレオチド配列とを含む発現ベクターで細胞をトランスフェクトし、選択可能なマーカーの発現について選択することによって産生することができる。このような操作された株化細胞は、特に抗体分子と直接又は間接に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価に有用であろう。
【0170】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増加することができる(総説については、Bebbington及びHentschelの文献、「DNAクローニングにおける哺乳動物細胞内のクローニングされた遺伝子の発現のための遺伝子増幅に基づくベクターの使用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning)」、第3巻(Academic Press ニューヨーク, 1987)を参照されたい)。抗体を発現するベクター系のマーカーが増幅可能なときは、宿主細胞の培養に存在する阻害剤のレベルを高め、マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅された領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の産生も増加する(Crouseらの論文, 1983、Mol. Cell Biol. 3:257)。
【0171】
宿主細胞には、第1のベクターが重鎖由来ポリペプチドをコードし、第2のベクターが軽鎖由来ポリペプチドをコードする本発明のふたつの発現ベクターを同時トランスフェクトしてもよい。ふたつのベクターは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択可能なマーカーを含んでいてもよい。或いは、重鎖及び軽鎖両ポリペプチドをコードする単一のベクターを使用してもよい。このような状況において、有毒な過剰の遊離重鎖を避けるために、軽鎖を重鎖の前に置くべきである(Proudfootの論文、1986、Nature, 322:52;Kohlerの論文、1980、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:2197)。重鎖及び軽鎖のコード配列には、cDNA又はゲノムDNAを含んでいてもよい。
【0172】
一旦本発明の抗体分子が組換え発現されたならば、これを、抗体分子の精製のための当該技術分野において公知の任意の方法によって、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインA又は特異的抗原とのアフィニティクロマトグラフィー、及びサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度分画を含む標準的方法によって、又はタンパク質の精製のためのその他の任意の標準的技術によって精製してもよい。
【0173】
或いは、任意の融合タンパク質を、発現される融合タンパク質に対して特異的な抗体を利用することによって容易に精製することができる。例えばJanknechtらの論文によって記述される系により、ヒト株化細胞において発現された非変性融合タンパク質の容易な精製が可能になる(Janknechtらの論文, 1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-897)。この系では、遺伝子のオープンリーディングフレームが6ヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに対して翻訳可能的に融合されるように、関心対象の遺伝子をワクシニア組換えプラスミドにサブクローニングする。このタグは、融合タンパク質に対するマトリックス結合ドメインとして役立つ。組換えワクシニアウイルスを感染させた細胞からの抽出物をNi2+ニトリロ酢酸−アガロースカラムに添加して、ヒスチジンにタグを付けたタンパク質を、イミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出させる。
【0174】
次いで、これらの方法によって産生された抗体を、最初に関心対象の精製されたポリペプチドとの親和性及び特異性についてスクリーニングして、必要であれば、結合から除外されることが望まれるポリペプチドとの抗体の親和性及び特異性の結果と比較することによって選択してもよい。スクリーニング法には、マイクロタイタープレートの別々のウェルにおける精製ポリペプチドの固定化を含むことができる。次いで、可能性のある抗体又は抗体群を含む溶液をそれぞれのマイクロタイターのウェルに置き、約30分間〜2時間インキュベートする。次いで、マイクロタイターのウェルを洗浄し、標識された二次抗体(例えば、生じた抗体がマウス抗体である場合、アルカリホスファターゼに複合した抗マウス抗体)をウェルに添加し、約30分間インキュベートし、その後洗浄する。基質をウェルに添加すると、固定されたポリペプチド(群)に対する抗体が存在する場合、呈色反応が現れる。
【0175】
次いで、こうして同定された抗体を、選択したアッセイデザインでの親和性及び特異性について更に分析してもよい。標的タンパク質に関するイムノアッセイ法の開発では、精製した標的タンパク質は、選択された抗体を使用するイムノアッセイ法の感受性及び特異性を判断するための標準としての役割を果たす。種々の抗体の結合親和性は異なっていることがあるため、ある特定の抗体対(例えば、サンドイッチアッセイ法において)は、互いに例えば立体的に干渉する可能性があり、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対的な親和性及び特異性よりも重要な尺度となるであろう。
【0176】
当業者であれば、多くのアプローチを抗体又は結合断片を産生し、並びに種々のポリペプチドに対する親和性及び特異性についてスクリーニング及び選択する際に採用することができることを認識するが、これらのアプローチは、本発明の範囲を変更しないであろう。
【0177】
治療的用途に関して、抗体(特に、モノクローナル抗体)は、適切には、ヒト抗体又はヒト化された動物(例えば、マウス)抗体であってもよい。動物抗体は、免疫原としてヒトタンパク質(例えば、OGTA076)を使用し動物において生じさせてもよい。ヒト化は、典型的にはヒトフレームワーク領域内に、これにより同定されるCDRを移植することを含む。通常、鎖の高次構造を最適化するためにいくつかのその後のレトロ突然変異が必要とされる。このような方法は、当業者に公知である。
【0178】
(アフィボディの発現)
アフィボディの構築は、他に記述されており(Ronnmark J, Gronlund H, Uhle´ n, M., Nygren P.Aの論文、「タンパク質Aのコンビナトリアル操作からのヒト免疫グロブリンA(IgA)−特異性リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, 2002, Eur. J. Biochem. 269, 2647-2655.)、アフィボディファージディスプレイライブラリーの構築を含む(Nord, K., Nilsson, J., Nilsson, B., Uhle´ n, M. & Nygren, P.Aの論文, 「a-ヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリー(A combinatorial library of an a-helical bacterial receptor domain)」, 1995, Protein Eng. 8, 601-608. Nord, K., Gunneriusson, E., Ringdahl, J., Stahl, S., Uhle´ n, M. & Nygren, P.Aの論文, 「a-ヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリーから選択された結合タンパク質(Binding proteins selected from combinatorial libraries of an a-helical bacterial receptor domain)」, 1997, Nat. Biotechnol.15, 772-777)。
【0179】
また、バイオセンサー結合研究を使用する最適なアフィボディ変異体を調査するためのバイオセンサー解析も、他に記述されている(Ronnmark J, Gronlund H, Uhle´ n, M., Nygren P.A,「タンパク質Aのコンビナトリアル操作からのヒト免疫グロブリンA(IgA)−特異性リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, 2002, Eur. J. Biochem. 269, 2647-2655)。
【0180】
(親和性試薬の修飾)
ひとつの実施態様において、抗体又はそれらの断片などの抗-OGTA076 親和性試薬は、診断的部分(検出可能な標識など)又は治療的部分に複合体化される。これらの抗体は、診断のために、又は所与の治療計画の有効性を決定するために使用することができる。検出は、検出可能な物質(標識)に抗体を結合することによって容易にすることができる。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光材料、生物発光材料、放射性核種、ポジトロン放射金属(ポジトロン放出断層撮影での使用)及び非放射性常磁性金属イオンを含む。一般に、本発明に従った診断法として使用するために抗体に複合することができる金属イオンについての米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素には、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンを含み;適切な蛍光物質には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリトリンを含み;適切な発光物質には、ルミノールを含み;適切な生物発光物質には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含み;並びに、適切な放射性核種には、125I、131I、111In及び99Tcを含む。また、68Gaも使用され得る。
【0181】
抗-OGTA076抗体又はそれらの断片、更には他の親和性試薬は、所与の生物反応を修飾するために治療的物質又は薬物部分に複合させることができる。親和性試薬が複合体化され得る治療的物質の例は、細胞傷害性部分である。治療的物質又は薬物部分は、古典的な化学治療薬に限定されるものとして解釈されない。例えば薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであってよい。このようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、プソイドモナス外毒素若しくはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲンアクチベータ、血栓薬又は抗血管新生薬剤、例えばアンジオスタチン若しくはエンドスタチンなどのタンパク質;又は、リンホカイン、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経成長因子(NGF)若しくはその他の成長因子などの生体反応調節因子:を含んでいてもよい。
【0182】
このような治療的部分を抗体に複合するための技術は周知であり、例えばArnonらの文献、「モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy)」における「癌治療における薬物の免疫ターゲティングのためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」、Reisfeldらの編集、pp. 243-56(Alan R. Liss社、1985);Hellstromらの文献、「制御放出性薬物送達(Controlled Drug Delivery)」における「薬物送達のための抗体(Antibodies For Drug Delivery)」(第2版)、Robinsonらの編集、pp. 623-53(Marcel Dekker社 1987);Thorpeの文献、「モノクローナル抗体'84:生物学的及び臨床的適用(Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications)」における「癌療法における細胞傷害薬の抗体担体:総説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」、Pincheraらの編集、pp. 475-506(1985);「癌検出及び療法のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy)」における「癌療法における放射標識された抗体の治療的使用の解析、結果及び将来の展望(Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」、Baldwinらの編集、pp. 303-16(Academic Press社 1985);及び、Thorpeらの論文、「抗体-毒素複合体の調製及び細胞傷害特性(The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates)」、Immunol. Rev., 62: 119-58 (1982)を参照されたい。
【0183】
或いは、Segalによって米国特許第4,676,980号に開示されたように、抗体を第二の抗体に複合させて、抗体ヘテロ複合体を形成することもできる。
抗体は、これに複合体化された治療的部分の有無にかかわらず、単独で、又は細胞傷害性因子(群)及び/若しくはサイトカイン(群)と組合せて投与される治療薬として使用することができる。
【0184】
本発明は同じく、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導する、完全なヒト抗体、又はヒト化抗体も提供する。完全なヒト抗体は、タンパク質配列が、単離された抗体-産生ヒトBリンパ球由来か、又はマウス免疫グロブリンをコードしている染色体領域がオルソログヒト配列により交換されているマウスのトランスジェニックマウスBリンパ球由来の、天然のヒト免疫グロブリン配列によりコードされたものである。後者の型のトランスジェニック抗体は、HuMab(Medarex社, CA)及びXenomouse(Abgenix社, CA)を含むが、これらに限定されるものではない。ヒト化抗体は、適当な抗原特異性の非-ヒト抗体分子の定常領域が、好適なエフェクター機能により、例えばIgG亜型のヒト抗体の定常領域により交換されたものである(Morrisonらの論文、1984, Proc. Natl. Acad. Sci. 81:851-855;Neubergerらの論文、1984, Nature 312:604-608;Takedaらの論文、1985, Nature 314:452-454)。好適なエフェクター機能は、ADCCを含み、これは、完全-ヒト抗体又はヒト化抗体が癌細胞の表面の標的に結合した場合に、自然免疫系の一部であるリンパ球の細胞傷害特性のスイッチを作動する自然のプロセスである。これらの活動型リンパ球は、ナチュラルキラー(NK)細胞と称され、細胞傷害プロセスを使用して、抗体が結合した生存細胞を破壊する。ADCC活性は、抗原-特異性抗体及び免疫適格性(immunocompetent)の生存ヒト被験体から抽出された末梢血単核細胞の存在下で、Eu3+標識された生存細胞からのユーロピウム(Eu3+)の放出を測定することにより、検出及び定量することができる。このADCCプロセスは、Janeway Jr. C.A.らの文献、「免疫生物学(Immunobiology)」, 第5版, 2001, Garland Publishing, ISBN 0-8153-3642-X;Pier G.B.らの論文、Immunology, Infection, and Immunity, 2004, p246-5;Albanell J.らの論文、Advances in Experimental Medicine and Biology, 2003, 532: p2153-68、及びWeng, W.-K.らの論文、Journal of Clinical Oncology, 2003, 21:p 3940-3947に詳述されている。ADCCの検出及び定量の好適な方法は、Blombergらの論文、Journal of Immunological Methods. 1986, 86: p225-9;Blombergらの論文、Journal of Immunological Methods. 1986, 21;92: p117-23、並びにPatel及びBoydの論文, Journal of Immunological Methods. 1995, 184: p29-38.に見ることができる。
【0185】
ADCCは典型的には、NK細胞の活性化に関与し、かつNK細胞の表面上のFc受容体による抗体でコートされた細胞の認識に依存する。このFc受容体は、標的細胞の表面に特異的に結合したIgGなどの抗体のFc(結晶性)部分を認識する。NK細胞の活性化の引き金をひくFc受容体は、CD16又はFcγRIIIaと称される。一旦FcγRIIIa受容体がIgG Fcに結合したならば、NK細胞は、IFN-γなどのサイトカイン類、並びに標的細胞に侵入しかつアポトーシスを引き起こすことにより細胞死を促進するパーフォリン及びグランザイムを含む細胞傷害性顆粒を放出する。
【0186】
抗体による抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の誘導は、抗体の定常領域(Fc)と免疫系細胞の表面に存在する様々な受容体の間の相互作用を変更する修飾により増強することができる。このような修飾は、哺乳動物細胞における天然又は組み換え合成時の、抗体のFcへ通常追加される複合オリゴ糖鎖内のα1,6-結合型フコース部分の減少又は非存在を含む。ひとつの実施態様において、抗体若しくはそれらの断片などの、フコシル化されない抗-OGTA076親和性試薬は、それらのADCC反応を誘導する能力を増強することを目的として作製される。
【0187】
Fcのオリゴ糖鎖内のα1,6-結合型フコース部分を減少又は除去する技術は、よく確立されている。一例において、N-結合型二分岐複合型Fcオリゴ糖の最内側のN-アセチルグルコサミンへα1,6結合でフコースを付加するその能力が損なわれた株化細胞において、組み換え抗体が合成される。そのような株化細胞は、低下したレベルのα1,6-フコシル転移酵素遺伝子FUT8を発現するラットハイブリドーマYB2/0を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、この抗体は、FUT8遺伝子の両コピーの欠失のために、複合オリゴ糖鎖へのα1,6-結合型フコシル部分の付加が不可能である株化細胞において合成される。このような株化細胞は、FUT8-/-CHO/DG44株化細胞を含むが、これに限定されるものではない。部分的にフコシル化された又はフコシル化されない抗体及び親和性試薬の合成技術は、Shinkawaらの論文、J. Biol. Chem. 278:346634735 (2003);Yamane-Ohnukiらの論文、Biotechnology and Bioengineering 87: 614-22 (2004)、及びWO 00/61739 A1、WO 02/31140 A1及びWO 03/085107 A1に説明されている。第二の例において、組み換え抗体のフコシル化は、糖タンパク質-修飾するグリコシル転移酵素を、二分岐N-アセチルグルコサミンを保持する複合N-結合型オリゴ糖の産生を最小化するレベルで過剰発現するように遺伝子操作された株化細胞における合成により、減少されかつ廃止される。例えば、この抗体は、酵素N-アセチルグルコサミン転移酵素III(GnT III)を発現している、チャイニーズハムスター卵巣株化細胞において合成される。好適な糖タンパク質-修飾するグリコシル転移酵素により安定してトランスフェクトされた株化細胞、及びこれらの細胞を使用する抗体の合成法は、WO 9954342に開示されている。
フコシル化されない抗体又は親和性試薬は、単独で又は細胞傷害性因子(群)及び/若しくはサイトカイン(群)と組合せて投与される治療薬として使用することができる。
【0188】
更なる修飾において、抗体Fcのアミノ酸配列は、リガンド親和性に影響を及ぼすことなく、ADCC活性化を増強する様式で変更される。そのような修飾の例は、Lazarらの論文、Proceedings of the National Academy of Sciences 2006, 103: p4005-4010;WO 03074679、及びWO 2007039818に説明されている。これらの例において、239位のセリンのアスパラギン酸へ、及び332位のグルタミン酸のイソロイシンへなどの抗体Fc内のアミノ酸の置換は、Fc受容体への抗体の結合親和性を変更し、ADCC活性化の増大につながった。
アミノ酸置換に起因した増強されたADCC活性化を伴う抗体試薬は、単独で又は細胞傷害性因子(群)及び/若しくはサイトカイン(群)と組合せて投与される治療薬として使用することができる。
【0189】
(結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の診断)
本発明に従い、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有することが疑われるか又は有することがわかっている被験体から得た結腸直腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ系、卵巣又は膵臓の組織、血清、血漿又は尿の被験試料を、診断又はモニタリングに使用することができる。ひとつの実施態様において、対照試料(結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌を有さない1名又は複数の被験体から得た)又は予め決定された基準範囲と比べた被験試料中のOGTA076の存在量の変化は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の存在を示す。別の実施態様において、対照試料又は予め決定された基準範囲と比べた被験試料中のOGTA076の相対存在量は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の亜型(例えば、家族性又は散発性結腸直腸癌、線維層板肝細胞癌、肺扁平上皮癌、T細胞慢性リンパ球性白血病、悪性乳頭状漿液性腺癌、又は膵臓の内分泌腫瘍)を示す。更に別の実施態様において、対照試料又は予め決定された基準範囲に対する被験試料中のOGTA076の相対存在量は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の程度又は重症度(例えば、転移の可能性)を示す。前述の方法のいずれかにおいて、OGTA076の検出は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の1種以上の追加の生体マーカーの検出と任意に組合せることができる。本明細書で説明された「好ましい技術」、キナーゼアッセイ、OGTA076を検出及び/又は可視化するイムノアッセイ(例えばウェスタンブロット、免疫沈降、それに続くドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学など)を含むが、これらに限定されるものではない当該技術分野において好適ないずれかの方法を使用し、OGTA076のレベルを測定することができる。更なる実施態様において、対照試料又は予め決定された基準範囲に対する被験試料中のOGTA076をコードしているmRNAの存在量の変化は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の存在を示す。任意の好適なハイブリダイゼーションアッセイ(例えばノーザンアッセイ、ドットブロット、インサイチュハイブリダイゼーションなど)を使用し、OGTA076をコードしているmRNAを検出及び/又は可視化することにより、OGTA076発現を検出することができる。
【0190】
別の本発明の実施態様において、OGTA076へ特異的に結合する標識された抗体(又は他の親和性試薬)、それらの誘導体及び類似体を、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を検出、診断又はモニタリングするために診断目的で使用することができる。好ましくは結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌は、動物において、より好ましくは哺乳動物において、最も好ましくはヒトにおいて、検出される。
【0191】
(スクリーニングアッセイ)
本発明は、OGTA076に結合するか、又はOGTA076の発現若しくは活性に対する刺激作用若しくは阻害作用を有する、作用物質(例えば、候補化合物又は被験化合物)の同定法を提供する。本発明は、OGTA076-関連ポリペプチド若しくはOGTA076融合タンパク質に結合するか、又はOGTA076-関連ポリペプチド若しくはOGTA076融合タンパク質の発現若しくは活性に対する刺激作用若しくは阻害作用を有する作用物質、候補化合物又は被験化合物の同定法も提供する。作用物質、候補化合物又は被験化合物の例は、核酸(例えばDNA及びRNA)、炭水化物、脂質、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、小型分子及び他の薬物を含むが、これらに限定されるものではない。作用物質は、生物学的ライブラリー;空間的アドレス可能なパラレル固相又は液相ライブラリー;重畳を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;及び、アフィニティクロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法:を含む、当該技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多くのアプローチのいずれかを用いて得ることができる。この生物学的ライブラリーのアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されるが、他の4種のアプローチは、ペプチド、非-ペプチドオリゴマー又は化合物の小型分子ライブラリーに適用可能である(Lamの論文、1997, Anticancer Drug Des. 12:145;米国特許第5,738,996号;及び、米国特許第5,807,683号、これらは各々その全体が引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0192】
分子ライブラリーの合成法の例は、例えば、DeWittらの論文、1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909;Erbらの論文、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422;Zuckermannらの論文、1994, J. Med. Chem. 37:2678;Choらの論文、1993, Science 261:1303;Carrellらの論文、1994, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059;Carellらの論文、1994, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;及び、Gallopらの論文、1994, J. Med. Chem. 37:1233などで、当該技術分野において認めることができ、これらは各々その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0193】
化合物のライブラリーは、例えば溶液中(例えば、Houghtenの論文、1992, Bio/Techniques 13:412-421)、又はビーズ上(Lamの論文、1991, Nature 354:82-84)、チップ上(Fodorの論文、1993, Nature 364:555-556)、細菌上(米国特許第5,223,409号)、胞子上(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号;及び、第5,223,409号)、プラスミド上(Cullらの論文、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869)、又はファージ上(Scott及びSmithの論文、1990, Science 249:386-390;Devlinの論文、1990, Science 249:404-406;Cwirlaらの論文、1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382;並びに、Feliciの論文、1991, J. Mol. Biol. 222:301-310)に提示されるように、提示されてよく、これらの論文は各々その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0194】
ひとつの実施態様において、OGTA076、OGTA076断片(例えば機能性活性断片)、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質と相互作用する(すなわち結合する)作用物質が、細胞-ベースのアッセイシステムにおいて同定される。本実施態様において、OGTA076、OGTA076の断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076 融合タンパク質を発現している細胞は、候補化合物又は対照化合物と接触され、かつOGTA076と相互作用する候補化合物の能力が決定される。望ましいならばこのアッセイを使用して、複数の候補化合物(例えばライブラリー)をスクリーニングしてよい。この細胞は、例えば、原核生物起源(例えば大腸菌)又は真核生物起源(例えば酵母又は哺乳動物)であることができる。更にこれらの細胞は、OGTA076、OGTA076の断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、若しくはOGTA076融合タンパク質を内在性に発現することができるか、又はOGTA076、OGTA076の断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、若しくはOGTA076融合タンパク質を発現するように遺伝子操作される。場合によっては、OGTA076と候補化合物の間の相互作用の検出を可能にするために、OGTA076、OGTA076の断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、若しくはOGTA076融合タンパク質又は候補化合物は、例えば放射性標識(32P、35S、及び125Iなど)又は蛍光標識(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド(phthaldehyde)又はフルオレスカミンなど)により、標識される。候補化合物の、OGTA076、OGTA076の断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、若しくはOGTA076融合タンパク質と直接又は間接に相互作用する能力は、当業者に公知の方法により決定することができる。例えば、候補化合物とOGTA076、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、若しくはOGTA076融合タンパク質の間の相互作用は、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、免疫沈降又はウェスタンブロット分析により決定することができる。
【0195】
別の実施態様において、OGTA076、OGTA076断片(例えば機能性活性断片)、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質と相互作用する(すなわち結合する)作用物質が、無細胞アッセイシステムにおいて同定される。本実施態様に従い、未変性若しくは組み換えのOGTA076若しくはそれらの断片、又は未変性若しくは組み換えのOGTA076-関連ポリペプチド若しくはそれらの断片、又はOGTA076融合タンパク質若しくはそれらの断片は、候補化合物又は対照化合物と接触され、候補化合物の、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチド、又はOGTA076融合タンパク質と相互作用する能力が決定される。望ましいならばこのアッセイを使用して、複数の候補化合物を(例えばライブラリー)スクリーニングしてよい。例えば、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076-融合タンパク質は、最初に、例えば、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質を、これを特異的に認識しかつ結合する固定された抗体(又は他の親和性試薬)と接触することにより、又はOGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質の精製された調製物を、タンパク質に結合するようにデザインされた表面と接触することにより、固定される。OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質は、部分的又は完全に精製されるか(例えば、他のポリペプチドを部分的に又は完全に含まない)又は細胞溶解液の一部であってよい。更にOGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、又はOGTA076-関連ポリペプチドの断片は、OGTA076又はそれらの生物学的活性部分、又はOGTA076-関連ポリペプチド及びグルタチオニン-S-転移酵素などのドメインを含む融合タンパク質であってよい。或いは、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片又はOGTA076融合タンパク質は、当業者に周知の技術(例えばビオチン化キット、Pierce Chemicals社;ロックフォード, IL)を用い、ビオチン化することができる。本候補化合物の、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質と相互作用する能力は、当業者に公知の方法により決定することができる。
【0196】
別の実施態様において、細胞-ベースのアッセイシステムを使用して、OGTA076の生成若しくは分解に寄与するか、又はOGTA076の翻訳後修飾に寄与する、酵素、又はそれらの生物学的活性部分などのタンパク質に結合又はタンパク質活性を調節する作用物質を同定する。一次スクリーニングにおいて、複数の化合物(例えばライブラリー)が、以下を天然に又は組み換えにより発現する細胞と接触される:(i)OGTA076、OGTA076のアイソフォーム、OGTA076ホモログ、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076融合タンパク質、又は前述のいずれかの生物学的活性断片;並びに、(ii)OGTA076、OGTA076のアイソフォーム、OGTA076ホモログ、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076融合タンパク質、若しくは断片の生成、分解、又は翻訳後修飾を調節する化合物を同定するために、OGTA076、OGTA076のアイソフォーム、OGTA076ホモログ、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076融合タンパク質、又は断片のプロセシングに寄与するタンパク質。望ましいならば、一次スクリーニングにおいて同定された化合物は次に、OGTA076を天然に又は組み換えにより発現する細胞に対する二次スクリーニングにおいてアッセイすることができる。候補化合物が、OGTA076、アイソフォーム、OGTA076ホモログ、OGTA076-関連ポリペプチド、若しくはOGTA076融合タンパク質の生成、分解又は翻訳後修飾を調節する能力は、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、免疫沈降又はウェスタンブロット分析を含むが、これらに限定されるものではない、当業者に公知の方法により決定することができる。
【0197】
別の実施態様において、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質と競合的に相互作用(すなわち結合)する作用物質は、競合的結合アッセイにおいて同定される。この実施態様に従い、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質を発現している細胞は、候補化合物及びOGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質と相互作用することが公知の化合物と接触され;次に、候補化合物の、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質と優先的に相互作用する能力が、決定される。或いは、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、又はOGTA076-関連ポリペプチドの断片と優先的に相互作用(すなわち結合)する作用物質は、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質を、候補化合物及びOGTA076、OGTA076-関連ポリペプチド又はOGTA076融合タンパク質と相互作用することが公知の化合物と接触させることにより、無細胞アッセイシステムにおいて同定される。前述のように、OGTA076、OGTA076断片、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076-関連ポリペプチドの断片、又はOGTA076融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法により決定することができる。これらのアッセイは、細胞-ベースか又は無細胞かにかかわらず、複数の候補化合物(例えばライブラリー)をスクリーニングするために使用することができる。
【0198】
別の実施態様において、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの発現又は活性を調節する(すなわちアップレギュレートするか又はダウンレギュレートする)作用物質は、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドを発現している細胞(例えば原核生物起源の又は真核生物起源の細胞)の、候補化合物又は対照化合物(例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS))との接触、並びにOGTA076、OGTA076-関連ポリペプチド、又はOGTA076融合タンパク質、OGTA076をコードしているmRNA、又はOGTA076-関連ポリペプチドをコードしているmRNAの発現の決定により、同定される。候補化合物の存在下でのOGTA076、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076をコードしているmRNA、又はOGTA076-関連ポリペプチドをコードしているmRNAの発現のレベルは、候補化合物の非存在下(例えば対照化合物の存在下)でのOGTA076、OGTA076-関連ポリペプチド、OGTA076をコードしているmRNA、又はOGTA076-関連ポリペプチドをコードしているmRNAの発現のレベルと比較される。その後この候補化合物は、この比較を基に、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの発現のモジュレーターとして同定することができる。例えば、OGTA076又はmRNAの発現が、候補化合物の存在下で、その非存在下におけるよりも有意に多い場合、この候補化合物は、OGTA076又はmRNAの発現のスティミュレーターとして同定される。或いは、OGTA076又はmRNAの発現が候補化合物の存在下で、その非存在下におけるよりも有意に少ない場合、この候補化合物は、OGTA076又はmRNAの発現のインヒビターとして同定される。OGTA076又はこれをコードしているmRNAの発現のレベルは、当業者に公知の方法により決定することができる。例えば、mRNA発現は、ノーザンブロット分析又はRT-PCRにより評価することができ、かつタンパク質レベルは、ウェスタンブロット分析により評価することができる。
【0199】
別の実施態様において、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの活性を調節する作用物質は、OGTA076若しくはOGTA076-関連ポリペプチドを含有する調製物、又はOGTA076若しくはOGTA076-関連ポリペプチドを発現している細胞(例えば原核細胞又は真核細胞)を、被験化合物又は対照化合物と接触させ、その被験化合物の、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの活性を調節する(例えば刺激又は阻害する)能力を決定することにより、同定される。OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの活性は、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの細胞シグナル伝達経路(例えば、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導を検出すること、好適な基質上の標的の触媒活性又は酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(例えばOGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドに反応し、かつ検出可能なマーカー、例えばルシフェラーゼをコードしている核酸に機能的に連結される調節エレメント)の誘導を検出すること、又は例えば、細胞分化若しくは細胞増殖などの細胞反応を検出することにより、評価することができる。本説明を基に、これらの活性を測定するために、当業者に公知の技術を使用することができる(例えば米国特許第5,401,639号を参照し、これは引用により本明細書中に組み込まれている。)。次にこの候補化合物は、候補化合物の作用を対照化合物と比較することにより、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの活性のモジュレーターとして同定することができる。好適な対照化合物は、リン酸緩衝食塩水(PBS)及び通常の食塩水(NS)を含む。
【0200】
別の実施態様において、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの発現、活性若しくは発現及び活性の両方を調節する(すなわちアップレギュレートするか又はダウンレギュレートする)作用物質は、動物モデルにおいて同定される。好適な動物の例は、マウス、ラット、ウサギ、サル、モルモット、イヌ及びネコを含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、使用される動物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌のモデルを表す(例えば、エストロゲン-欠乏されたSCIDマウスにおけるMDA-MB-345などのヒト結腸直腸癌株化細胞の異種移植片、Ecclesらの論文、1994 Cell Biophysics 24/25, 279;免疫低下マウスにおけるLABAZ1などの腎細胞癌株化細胞の異種移植片、Zismanらの論文、Cancer Research 63, 4952-4959, August 15, 2003;ヌードマウスにおけるMHCC97などの肝細胞癌株化細胞の異種移植片、Tianらの論文、Br J 5 Cancer 1999 Nov;81(5):814-21;A549及びH460などの非小細胞肺癌株化細胞の異種移植片、並びにNCI-H345などの小細胞肺癌株化細胞の異種移植片;SCIDマウスにおけるWSU-CLLなどの慢性リンパ球性白血病株化細胞の異種移植片、Mohammadらの論文、Leukaemia. 1996 Jan; 10(1): 130-7;ヌードマウスにおけるIGROV1などの卵巣癌株化細胞の異種移植片、Benardらの論文、Cancer Res. 1985 Oct;45(10):4970-9;又は、ヌードマウスにおけるMIA PaCa-2などの膵癌株化細胞の異種移植片、Marincolaらの論文、J Surg Res 1989 Dec;47(6):520-9)。これらのモデルにおいて示された病理は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の病理と類似しているので、該動物は、OGTA076レベルを調節する化合物を試験するために利用することができる。本実施態様に従い、被験化合物又は対照化合物は、好適な動物に投与され(例えば経口、経直腸又は非経口、例えば腹腔内若しくは静脈内)、かつOGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの発現、活性、又は発現と活性の両方に対する作用が決定される。OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドの発現の変化は、先に概説した方法により評価することができる。
【0201】
更に別の実施態様において、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドは、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドに結合又は相互作用する他のタンパク質を同定するための、ツーハイブリッドアッセイ又はスリーハイブリッドアッセイにおいて、「ベイトタンパク質」として使用される(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosらの論文、(1993) Cell 72:223-232;Maduraらの論文、(1993) J. Biol. Chem. 268:12046-12054;Bartelらの論文、(1993) Bio/Techniques 14:920-924;Iwabuchiらの論文、(1993) Oncogene 8:1693-1696;及び、PCT公開WO 94/10300を参照されたい。)。当業者に理解されるように、そのような結合タンパク質は恐らく、例えば、OGTA076が関連するシグナル伝達経路の上流又は下流エレメントとして、OGTA076によるシグナル伝達にも関連しているであろう。
【0202】
本発明は更に、前述のスクリーニングアッセイにより同定された新規作用物質、及び本明細書に説明されたような治療のためのそれらの使用を提供する。加えて本発明は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療のための医薬品の製造における、OGTA076と相互作用するか又はその活性を調節する作用物質の使用も提供する。
【0203】
(OGTA076の治療的使用)
本発明は、治療的化合物の投与による、様々な疾患及び障害の治療又は予防を提供する。このような化合物は、OGTA076、OGTA076類似体、OGTA076-関連ポリペプチド及びそれらの誘導体(断片を含む);前述のものに対する抗体(又は他の親和性試薬);OGTA076、OGTA076類似体、OGTA076-関連ポリペプチド及びそれらの断片をコードしている核酸;OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドをコードしている遺伝子に対するアンチセンス核酸;並びに、OGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドをコードしている遺伝子のモジュレーター(例えばアゴニスト及びアンタゴニスト)を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の重要な特徴は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌に関与するOGTA076をコードしている遺伝子の同定である。結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体の血清又は組織中のOGTA076の機能又は発現を低下する治療的化合物の投与により、治療するか(例えば症状を改善するか又は発症若しくは進行を遅らせる)又は予防することができる。従ってひとつの態様において、本発明は、治療又は予防において、例えば本明細書に規定された癌などの癌の治療又は予防などにおいて使用するための前述の部分の1種以上を提供する。本発明は、例えば本明細書に規定された癌などの癌の治療又は予防のための医薬品の製造における前記部分の使用、並びに例えば本明細書に規定された癌などの癌の治療法における使用にも拡大される。
【0204】
ひとつの実施態様において、各々OGTA076へ特異的に結合する1種以上の抗体(又は他の親和性試薬)は、単独で又は1種以上の追加の治療的化合物又は治療と組合せて投与される。
【0205】
更なる実施態様において、抗体(又は他の親和性試薬)などの生物学的製品は、それが投与される被験体に対し同種異系である。別の実施態様において、ヒトOGTA076又はヒトOGTA076-関連ポリペプチド、ヒトOGTA076若しくはヒトOGTA076-関連ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列、又はヒトOGTA076若しくはヒトOGTA076-関連ポリペプチドに対する抗体(又は他の親和性試薬)は、治療(例えば症状を改善するか又は発症若しくは進行を遅くするため)又は予防のために、ヒト被験体へ投与される。
【0206】
理論により限定されるものではないが、OGTA076へ特異的に結合する抗体(又は他の親和性試薬)の治療的活性は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の現象を介して実現され得ると考えられる(例えば、Janeway Jr. C.A.らの文献、「免疫生物学(Immunobiology)」, 第5版, 2001, Garland Publishing, ISBN 0-8153-3642-X;Pier G.B.らの論文、Immunology, Infection, and Immunity, 2004, p246-5;Albanell J.らの論文、Advances in Experimental Medicine and Biology, 2003, 532:p2153-68、及びWeng, W.-K.らの論文、Journal of Clinical Oncology, 2003, 21:p 3940-3947を参照されたい)。
【0207】
(結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療及び予防)
結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する疑いがあるか又はこれらを有することがわかっている被験体、若しくは結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を発病するリスクがあることが疑われるか又はわかっている被験体に対して、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体の血清又は組織において、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌を有さない被験体の血清又は組織と比較して示差的に存在するOGTA076のレベル又は活性(すなわち機能)を調節する(すなわち増大又は減少する)化合物を投与することによって、治療又は予防される。ひとつの実施態様において、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する疑いがあるか又はこれらを有することがわかっている被験体、若しくは結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を発病するリスクがあることが疑われるか又はわかっている被験体に対して、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体の血清又は組織において減少されたOGTA076のレベル又は活性(すなわち機能)をアップレギュレートする(すなわち増大する)化合物を投与することによって、治療又は予防することができる。そのような化合物の例には:OGTA076アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、OGTA076に対する抗体(又は他の親和性試薬)、及びOGTA076の酵素活性を阻害する化合物;を含むが、これらに限定されない。他の有用な化合物、例えばOGTA076アンタゴニスト及び小型分子OGTA076アンタゴニストは、インビトロでのアッセイ法を使用して同定することができる。
【0208】
また、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する疑いがあるか又はそれらを有することがわかっている被験体、若しくは結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を発病するリスクがある疑いがあるか又はわかっている被験体に対して、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体の血清又は組織において増大されたOGTA076のレベル又は活性(すなわち機能)をダウンレギュレートする化合物の投与によって、治療又は予防される。このような化合物の例には、OGTA076、OGTA076断片及びOGTA076-関連ポリペプチド;OGTA076、OGTA076断片及びOGTA076-関連ポリペプチドをコードしている核酸(例えば遺伝子治療における使用のため);並びに、酵素活性を伴うそれらのOGTA076又はOGTA076-関連ポリペプチドについて、その酵素活性を調節することがわかっている化合物又は分子を含むが、これらに限定されない。使用することができるその他の化合物、例えばOGTA076アゴニストは、インビトロアッセイ法を使用して同定することができる。
【0209】
ひとつの実施態様において、療法又は予防は、個々の被験体の必要に合わせられる。従って具体的実施態様において、OGTA076のレベル又は機能を促進する化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する疑いがあるか又はそれらを有することがわかっており、そのOGTA076のレベル又は機能を欠くか、又は対照又は正常基準範囲に対して相対的に減少している被験体に、治療的又は予防的に投与される。更なる実施態様において、OGTA076のレベル又は機能を促進する化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する疑いがあるか又はそれらを有することがわかっており、そのOGTA076のレベル又は機能が対照又は基準範囲に対して相対的に増大している被験体に、治療的又は予防的に投与される。更なる実施態様において、OGTA076のレベル又は機能を減少させる化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する疑いがあるか、又はそれを有することが既知であり、前記OGTA076のレベル又は機能が、対照又は基準範囲に対して相対的に増大している被験体に、治療的又は予防的に投与される。更なる実施態様において、OGTA076のレベル又は機能を減少させる化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する疑いがあるか又はそれを有することがわかっており、そのOGTA076のレベル又は機能が対照又は基準範囲に対して相対的に減少している被験体に、治療的又は予防的に投与される。このような化合物の投与によるOGTA076の機能又はレベルの変化は、例えば試料(例えば、血液又は尿)を得ること、及びOGTA076のレベル若しくは活性、又は前記OGTA076をコードするmRNAのレベル、又は前述の任意の組合せをインビトロでアッセイすることによって、容易に検出することができる。このようなアッセイ法は、本明細書に記述したように、化合物の投与の前後に行うことができる。
【0210】
本発明の化合物は、OGTA076プロフィールを正常の方向へ回復させる任意の化合物、例えば小型有機分子、タンパク質、ペプチド、抗体(又は他の親和性試薬)、核酸など含むが、これらに限定されない。本発明の化合物は、任意の他の化学療法薬と組合せて投与されてもよい。
【0211】
(ワクチン療法)
本発明の別の態様は、OGTA076若しくはそれらのエピトープ含有断片、又はOGTA076若しくはそれらの断片をコードしている核酸を、任意に免疫賦活剤と一緒に含有している、免疫原性組成物又は医薬組成物、好適にはワクチン組成物である。本発明は、治療又は予防において、例えば本明細書に説明された癌などの、癌の治療又は予防において使用するための該組成物(群)にも拡大される。更に本発明は、例えば本明細書に説明された癌などの、癌の治療又は予防のための医薬品の製造のための該組成物の使用、及びそれらの治療における該組成物(群)の使用に拡大される。
【0212】
被験体へそのような組成物を投与することを含む、免疫応答を生じる方法、及びそのような組成物の治療有効量を、それを必要とする被験体へ投与することを含む、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を治療又は予防する方法、及び結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の予防若しくは治療における使用のためのそのような組成物も提供される。
【0213】
従ってOGTA076は、抗原性物質として有用であり、かつ結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療又は予防のためのワクチンの製造において使用することができる。このような物質は、「抗原性」及び/又は「免疫原性」であることができる。一般に「抗原性」は、そのタンパク質は、抗体(又は他の親和性試薬)を生じるために使用されることが可能であること、又は実際被験体若しくは実験動物において抗体反応を誘導することが可能であることを意味する。「免疫原性」は、該タンパク質が、免疫応答、例えば被験体若しくは実験動物における保護的免疫応答を誘起することが可能であることを意味する。従って後者の場合、該タンパク質は、単に抗体反応を生じるのみではなく、加えて非-抗体ベースの免疫応答も生じることが可能であってよい。「免疫原性」は、該タンパク質が、例えばT細胞増殖アッセイのようなインビトロの状況において免疫様反応を誘起することができるかどうかも包含している。
【0214】
当業者は、OGTA076の相同体又は誘導体も、抗原性/免疫原性物質としての用途があることを認めるであろう。従って例えば付加、欠失、置換などを1個以上含むタンパク質は、本発明に包含される。加えて1個のアミノ酸を、別の同様の「型」と交換することが可能であることがある。例えば、1個の疎水性アミノ酸を別のものと交換する。アミノ酸配列を比較するために、CLUSTALプログラムなどのプログラムを使用することができる。このプログラムは、アミノ酸配列を比較し、適宜いずれかの配列にスペースを挿入することにより、最適なアラインメントを見つける。最適なアラインメントに関して、アミノ酸の同一性又は類似性(アミノ酸型の同一性に加え保存性)を計算することは可能である。BLASTxのようなプログラムは、類似配列の最長ストレッチを並べ、かつそのフィットに値を割り当てる。従って、各々は異なるスコアを有する、類似性のあるいくつかの領域が認められる比較を得ることは可能である。両方の分析型が、本発明において意図されている。
【0215】
相同体及び誘導体の場合、本明細書に説明されたようなタンパク質との同一性の程度は、相同体又は誘導体がその抗原性及び/又は免疫原性を維持すべき程度よりも重要ではない。しかし本明細書に説明されたタンパク質又はポリペプチドと少なくとも60%の類似度(先に考察した)を有する相同体又は誘導体が、提供される。ひとつの実施態様において、少なくとも70%の類似度、例えば少なくとも80%の類似度を有する相同体又は誘導体、少なくとも90%又は更には95%の類似度を有する相同体又は誘導体などが提供される。好適なことに、相同体又は誘導体は、本明細書に説明されたタンパク質又はポリペプチドと、少なくとも60%の配列同一性を有する。ひとつの実施態様において、相同体又は誘導体は、少なくとも70%の同一性、より好ましくは少なくとも80%の同一性を有する。最も好ましくは、相同体又は誘導体は、少なくとも90%又は更には95%の同一性を有する。
【0216】
別の方法において、相同体又は誘導体は、例えば所望のタンパク質又はポリペプチドの効果的タグ付けにより、精製をより容易にする部分を組み込んでいる、融合タンパク質であることができる。「タグ」を除去することが必要であってよいか、又は融合タンパク質それ自身が有用であるのに十分な抗原性を保持する場合であってよい。
【0217】
抗原性タンパク質又はポリペプチドをスクリーニングして、エピトープ領域、すなわちタンパク質又はポリペプチドの抗原性若しくは免疫原性に寄与するそのような領域を同定することが可能であることは周知である。当業者に周知の方法を使用し、抗原性に関して断片及び/又は相同体及び/又は誘導体を試験することができる。従って本発明の断片は、そのようなエピトープ領域を1個以上含むか、又はそれらの抗原性/免疫原性特性を保持するそのような領域と十分に類似しなければならない。従って本発明の断片に関して、それらは本明細書に説明されたようなタンパク質又はポリペプチド、相同体又は誘導体の特定の部分と100%同一であってよいので、同一性の程度は、恐らく重要でないであろう。再度重要な点は、その断片が、それが由来したタンパク質の抗原性/免疫原性特性を保持することである。
【0218】
相同体、誘導体及び断片に関して重要なことは、これらが、少なくともそれらが由来したタンパク質又はポリペプチドの抗原性/免疫原性の程度を有することである。従って本発明の追加の態様において、OGTA076の抗原性/又は免疫原性断片、又はそれらの相同体若しくは誘導体が提供される。
【0219】
OGTA076、それらの抗原性断片は、精製された又は単離された調製物として、単独で提供することができる。これらは、1種以上の他の本発明のタンパク質、又はそれらの抗原性断片との混合物の一部として提供されてよい。従って更なる態様において、本発明は、OGTA076及び/又は1種以上のそれらの抗原性断片を含有する抗原組成物を提供する。そのような組成物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の検出及び/又は診断に使用することができる。
本発明のワクチン組成物は、予防的又は治療的ワクチン組成物のいずれかであってよい。
【0220】
本発明のワクチン組成物は、1種以上のアジュバント(免疫賦活剤)を含有することができる。当該技術分野において周知の例は、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、及び不完全フロイントのアジュバントなどの油中水型エマルションがある。その他の有用なアジュバントは、当業者に周知であろう。
【0221】
癌治療のためのワクチン組成物における使用に適したアジュバントは、3De-O-アシル化されたモノホスホリルリピドA(3D-MPL又は単純にMPLとして公知、WO 92/116556を参照されたい)、サポニン、例えばQS21又はQS7、及び例えばWO 95/26204に開示されたような、CpG含有分子などのTLR4アゴニストがある。
使用されるアジュバントは、例えばMPL及びQS21又はMPL、QS21及びCpG含有部分などの、成分の組合せであってよい。
アジュバントは、水中油型エマルション又はリポソーム製剤として製剤されてよい。
【0222】
そのような調製物は、他のビヒクルを含んでよい。
別の実施態様において、OGTA076又はOGTA076ペプチド断片をコードしているヌクレオチド配列に相補的である10個又はそれよりも多い連続ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド調製物が、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療のためのワクチンとして使用される。そのような調製物は、アジュバント又は他のビヒクルを含んでよい。
【0223】
(結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療のためのOGTA076の阻害)
本発明のひとつの実施態様において、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体の血清又は組織中において、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌を有さない被験体の血清又は組織と比べ、上昇したOGTA076のレベル(群)及び/又は機能(群)を拮抗(阻害)する化合物の投与により、治療又は予防される。
【0224】
この目的に有用な化合物は、抗-OGTA076抗体(又は他の親和性試薬、並びにそれらの結合領域を含む断片及び誘導体)、OGTA076アンチセンス又はリボザイム核酸、並びに相同組換えによる内在性OGTA076機能の「ノックアウト」に使用される機能異常のOGTA076をコードしている核酸を含むが、これらに限定されるものではない(例えば、Capecchiの論文、1989, Science 244:1288-1292を参照されたい)。OGTA076機能を阻害する他の化合物は、公知のインビトロアッセイ、例えば被験化合物の、OGTA076の他のタンパク質若しくは結合パートナーへの結合を阻害する能力、又は公知のOGTA076機能を阻害する能力に関するアッセイの使用により同定することができる。好ましくは、このような阻害は、インビトロ又は細胞培養物中でアッセイされるが、遺伝子アッセイも使用することができる。「好ましい技術」も、本化合物の投与の前後のOGTA076のレベルを検出するために使用することができる。好ましくは、好適なインビトロ又はインビボアッセイを利用し、特異的化合物の作用、又は以下により詳細に説明されるように、その投与が罹患組織の治療に適応であるかどうかを決定する。
【0225】
具体的実施態様において、OGTA076機能(活性)を阻害する化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌を有さない被験体の血清若しくは組織、又は予め決定された基準範囲と比べ、OGTA076の上昇した血清又は組織のレベル又は機能活性(例えば正常レベル又は望ましいレベルよりも大きい)が検出された被験体へ、治療的又は予防的に投与される。当該技術分野において標準の方法を使用し、先に概説されたように、OGTA076レベル又は機能の増加を測定することができる。好ましいOGTA076インヒビター組成物は、小型分子、すなわち、1000ダルトン以下の分子を含む。このような小型分子は、本明細書において説明されたスクリーニング法により同定することができる。
【0226】
(治療的又は予防的化合物のアッセイ)
本発明は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療又は予防のための化合物の有効性を同定又は検証するための、薬物発見における使用のためのアッセイも提供する。
【0227】
従って、OGTA076の活性を調節する化合物のスクリーニング法が提供され、この方法は:(a)OGTA076又はそれらの生物学的活性部分を、候補化合物と接触する工程;及び、(b)それによりOGTA076の活性が調節されたかどうかを決定する工程:を含む。このようなプロセスは、(a)試料中でOGTA076又はそれらの生物学的活性部分を、候補化合物と接触する工程;及び、(b)前記候補化合物との接触後の前記試料中のOGTA076又はそれらの生物学的活性部分の活性を、前記候補化合物との接触前の前記試料中のOGTA076又はそれらの生物学的活性部分の活性、若しくは活性の基準レベルと比較する工程:を含む。
【0228】
本スクリーニング法は、OGTA076の活性を阻害する化合物のスクリーニング法であってよい。
OGTA076又はそれらの生物学的活性部分は、例えば、細胞上で又は細胞により発現されてよい。OGTA076又はそれらの生物学的活性部分は、例えば、それを発現する細胞から単離されてよい。OGTA076又はそれらの生物学的活性部分は、例えば、固相上に固定されてよい。
【0229】
OGTA076又はOGTA076をコードしている核酸の発現を調節する化合物のスクリーニング法も提供され、この方法は:(a)OGTA076又はOGTA076をコードしている核酸を発現している細胞を、候補化合物と接触する工程;及び、(b)それによりOGTA076又はOGTA076をコードしている核酸の発現が調節されたかどうかを決定する工程:を含む。このようなプロセスは、(a)試料中でOGTA076又はOGTA076をコードしている核酸を発現している細胞を、候補化合物と接触する工程;及び、(b)前記候補化合物との接触後の前記試料中の細胞によるOGTA076又はOGTA076をコードしている核酸の発現を、前記候補化合物との接触前の前記試料中の細胞のOGTA076又はOGTA076をコードしている核酸の発現、若しくは発現の基準レベルと比較する工程:を含む。
【0230】
本方法は、OGTA076又はOGTA076をコードしている核酸の発現を阻害する化合物のスクリーニング法であってよい。
本発明の別の態様は、前述のスクリーニング法により入手可能な化合物、OGTA076又はOGTA076をコードしている核酸の活性又は発現を調節する化合物、例えば、OGTA076又はOGTA076をコードしている核酸の活性又は発現を阻害する化合物を含む。
【0231】
このような化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療又は予防における使用のために提供される。そのような化合物の治療有効量をそれを必要とする被験体へ投与することを含む、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療又は予防の方法も提供される。
【0232】
被験化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体におけるOGTA076レベルを、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌を有さない被験体において認められるレベルにまで回復するそれらの能力、又は結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の実験動物モデルにおいて同様の変化をもたらすそれらの能力についてアッセイすることができる。結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体におけるOGTA076レベルを、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌を有さない被験体において認められるレベルにまで回復するか、又は結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の実験動物モデルにおいて同様の変化をもたらすことができる化合物は、更なる薬物発見のためのリード化合物として使用するか、又は治療に使用することができる。OGTA076発現は、「好ましい技術」、イムノアッセイ、ゲル電気泳動とそれに続く可視化、OGTA076活性の検出、又は本明細書に開示されたか若しくは当業者に公知の任意の他の方法によりアッセイすることができる。そのようなアッセイは、OGTA076の存在量を、臨床疾患の代理マーカーとして扱うことができる、臨床モニタリング又は薬物開発における候補薬物のスクリーニングに使用することができる。
【0233】
様々な具体的な実施態様において、インビトロアッセイは、化合物がそのような細胞型に対し所望の作用を有するかどうかを決定するために、被験体の障害に関与した細胞型を代表する細胞で実行することができる。
【0234】
療法において使用する化合物は、ヒトにおいて試験する前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含むが、これらに限定されるものではない、好適な動物モデルシステムにおいて試験することができる。インビボ試験に関して、ヒトへ投与する前に、当該技術分野において公知の任意の動物モデルシステムを使用してよい。結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の動物モデルの例は、エストロゲン-欠乏SCIDマウスのMDA-MB-345などの、ヒト結腸直腸癌株化細胞の異種移植片、Ecclesらの論文、1994 Cell Biophysics 24/25, 279;免疫低下したマウスのLABAZ1などの、腎細胞癌株化細胞の異種移植片、Zismanらの論文、Cancer Research 63, 4952-4959, 2003年8月15日;ヌードマウスのMHCC97などの肝細胞癌株化細胞の異種移植片、Tianらの論文、Br J 5 Cancer 1999 Nov;81(5):814-21;A549及びH460などの、非小細胞肺癌株化細胞の異種移植片、並びにNCI-H345などの、小細胞肺癌株化細胞の異種移植片;SCIDマウスのWSU-CLLなどの、慢性リンパ球性白血病株化細胞の異種移植片、Mohammadらの論文、Leukemia. 1996 Jan;10(1):130-7;ヌードマウスのIGROV1などの、卵巣癌株化細胞の異種移植片、Benardらの論文、Cancer Res. 1985 Oct;45(10):4970-9;又は、ヌードマウスのMIA PaCa-2などの、膵癌株化細胞の異種移植片、Marincolaらの論文、J Surg Res 1989 Dec;47(6):520-9;を含むが、これらに限定されるものではない。これらのモデルにおいて示された病理は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の病理と類似しているので、これらは、OGTA076レベルを調節する化合物の試験に利用することができる。本開示を基に、OGTA076をコードしている遺伝子又は遺伝子群の「ノックアウト」変異により、トランスジェニック動物を作出することができることも、当業者には自明である。遺伝子の「ノックアウト」変異は、変異された遺伝子が発現されないか、若しくは異常な形態又は低レベルで発現されることを引き起こす変異であり、その結果その遺伝子産物に関する活性はほぼ又は完全に存在しない。好ましくは、このトランスジェニック動物は、哺乳動物であり;より好ましくは、このトランスジェニック動物は、マウスである。
【0235】
ひとつの実施態様において、OGTA076の発現を調節する被験化合物は、非-ヒト動物(例えば、マウス、ラット、サル、ウサギ、及びモルモット)、例えば、OGTA076を発現している、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の非-ヒト動物モデルにおいて同定される。本実施態様に従い、被験化合物又は対照化合物は、動物へ投与され、かつこの被験化合物のOGTA076の発現に対する作用が決定される。OGTA076の発現を変更する被験化合物は、被験化合物で処置した動物又は動物群におけるOGTA076(又はこれをコードしているmRNA)のレベルを、対照化合物で処置した動物又は動物群におけるOGTA076若しくはmRNAのレベルと比較することにより、同定することができる。当業者に公知の技術、例えばインサイチュハイブリダイゼーションを使用し、mRNA及びタンパク質のレベルを決定することができる。これらの動物は、被験化合物の作用のアッセイのためには屠殺されても、されなくてもよい。
【0236】
別の実施態様において、OGTA076又はそれらの生物学的活性部分の活性を調節する被験化合物は、非-ヒト動物(例えば、マウス、ラット、サル、ウサギ、及びモルモット)、例えば、OGTA076を発現している、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の非-ヒト動物モデルにおいて同定される。本実施態様に従い、被験化合物又は対照化合物は、これらの動物へ投与され、かつこの被験化合物のOGTA076活性に対する作用が決定される。OGTA076活性を変更する被験化合物は、対照化合物で処置した動物及び被験化合物で処置した動物をアッセイすることにより、同定することができる。OGTA076の活性は、OGTA076の細胞セカンドメッセンジャー(例えば、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導を検出すること、OGTA076又はそれらの結合パートナーの触媒活性又は酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ若しくは緑色蛍光タンパク質などの検出可能なマーカーをコードしている核酸に機能的に連結されたOGTA076に反応する調節エレメント)の誘導を検出すること、若しくは細胞反応(例えば、細胞分化又は細胞増殖)を検出することにより、評価することができる。当業者に公知の技術は、OGTA076の活性の変化を検出するために利用することができる(例えば、米国特許第5,401,639号を参照し、これは引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0237】
更に別の実施態様において、OGTA076のレベル又は発現を調節する被験化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有するヒト被験体において、例えば重症の結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有するヒト被験体において、同定される。この実施態様に従い、被験化合物又は対照化合物がヒト被験体へ投与され、かつ被験化合物のOGTA076発現に対する作用が、生物学的試料(例えば、血清、血漿、又は尿)中のOGTA076又はそれをコードしているmRNAの発現の分析により決定される。OGTA076の発現を変更する被験化合物は、対照化合物で処置された被験体又は被験体群におけるOGTA076又はこれをコードしているmRNAのレベルを、被験化合物で処置された被験体又は被験体群におけるそのレベルと比較することにより、同定することができる。或いは、OGTA076の発現の変更は、被験化合物の投与の前及び後で、被験体又は被験体群におけるOGTA076又はそれをコードしているmRNAのレベルを比較することにより、同定することができる。当業者に公知の技術を使用し、生物学的試料を得、かつmRNA又はタンパク質の発現を分析することができる。例えば、本明細書に説明された「好ましい技術」を使用し、OGTA076のレベルの変化を評価することができる。
【0238】
別の実施態様において、OGTA076の活性を調節する被験化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有するヒト被験体(好ましくは重症の結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有するもの)において同定される。この実施態様において、被験化合物又は対照化合物は、ヒト被験体へ投与され、かつ被験化合物のOGTA076活性に対する作用が決定される。OGTA076活性を変化する被験化合物は、対照化合物で処置した被験体由来の生物学的試料を、被験化合物で処置した被験体由来の試料と比較することにより、同定することができる。或いは、OGTA076活性の変化は、被験化合物の投与の前及び後の被験体又は被験体群におけるOGTA076の活性を比較することにより同定することができる。OGTA076の活性は、生物学的試料(例えば、血清、血漿又は尿)中のOGTA076の細胞シグナル伝達経路(例えば細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導、OGTA076若しくはそれらのパートナーの触媒活性若しくは酵素活性、又は細胞反応、例えば細胞分化若しくは細胞増殖を検出することにより、評価することができる。当業者に公知の技術を使用し、OGTA076のセカンドメッセンジャーの誘導における変化又は細胞反応の変化を検出することができる。例えば、RTを使用し、細胞セカンドメッセンジャーの誘導の変化を検出することができる。
【0239】
ひとつの実施態様において、OGTA076のレベル又は発現を対照被験体(例えば、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌を有さないヒト)において検出されたレベルへと変化させる被験化合物は、更に試験用途又は治療用途のために選択される。別の実施態様において、OGTA076の活性を対照被験体(例えば、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌及び膵癌を有さないヒト)において認められた活性へと変化させる被験化合物は、更に試験用途又は治療用途のために選択される。
【0240】
別の実施態様において、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌に関連した1種以上症状の重症度を低下させる被験化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有するヒト被験体、例えば、重症の結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体において同定される。この実施態様に従い、被験化合物又は対照化合物は、被験体へ投与され、かつ被験化合物の、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の1種以上の症状に対する作用が決定される。1種以上の症状を軽減する被験化合物は、対照化合物で処置された被験体を被験化合物で処置された被験体と比較することにより、同定することができる。結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を熟知した医師に公知の技術を使用し、被験化合物が、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌に関連した1種以上の症状を軽減するかどうかを決定することができる。例えば、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体において全身腫瘍組織量を低下する被験化合物は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有する被験体において恩恵があるであろう。
【0241】
ひとつの実施態様において、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を有するヒトにおいて結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌に関連した1種以上の症状の重症度を軽減する被験化合物は、更なる試験用途又は治療用途のために選択される。
【0242】
(治療的及び予防的組成物並びにそれらの使用)
本発明は、本発明の化合物の有効量を被験体へ投与することを含む、治療(及び予防)の方法を提供する。ひとつの態様において、本化合物は、実質的に精製される(例えば、その作用を制限するか又は望ましくない副作用を生じる物質を実質的に含まない)。本被験体は、動物であり、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物、例えば哺乳動物、特にヒトを含むが、これらに限定されるものではない。具体的実施態様において、非-ヒト哺乳動物が被験体である。
【0243】
本化合物が核酸を含有する場合に利用され得る製剤及び投与法は、先に説明されており;追加の適した製剤及び投与経路が以下に説明される。
様々な送達システムが公知であり、かつ本発明の化合物を投与するために、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル内の封入、本化合物の発現が可能な組み換え細胞、受容体-媒介性エンドサイトーシス(例えば、Wu及びWuの論文、1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照されたい)、レトロウイルスベクター又は他のベクターの一部としての核酸の構築物などを使用することができる。導入法は、経腸又は非経口であることができ、かつ皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外及び経口経路を含むが、これらに限定されるものではない。本化合物は、例えば、注入又はボーラス注射による、上皮又は粘膜裏層(例えば、口腔粘膜、直腸及び小腸の粘膜など)を介した吸収によるなど、任意の好都合な経路により投与されてよく、かつ他の生物学的活性物質と一緒に投与されてよい。投与は、全身性又は局所性であることができる。加えて、脳室内及び髄腔内注射を含む、任意の好適な経路により、本発明の医薬組成物を中枢神経系へ導入することが望ましいことがあり;脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバーなどの、リザーバーに連結された脳室内カテーテルにより促進され得る。例えば、吸入器又はネブライザー、及びエアロゾル化された作用物質を伴う製剤の使用により、肺投与も利用することができる。
【0244】
具体的実施態様において、本発明の医薬組成物を、治療を必要とする領域へ局所的に投与することが望ましいことがあり;これは、例えば、限定的ではなく、手術時の局所注入による、例えば注射、カテーテルによる、若しくはインプラントによる局所適用により実現され、前記インプラントは、多孔質、非孔質、又はゼラチン状物質であることができ、シラスティックメンブレンなどのメンブレン又はファイバーを含む。ひとつの実施態様において、投与は、結腸直腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ系、卵巣又は膵臓の組織への、又は悪性腫瘍若しくは新生物組織若しくは前新生物組織の部位(又は部位前方)での直接注射によることができる。
【0245】
別の実施態様において、本化合物は、小胞、特にリポソームで送達することができる(Langerの論文、1990, Science 249:1527-1533;Treatらの文献、「感染症及び癌治療におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infection and Cancer)」, Lopez-Berestein及びFidler編集, Liss, ニューヨーク, 353-365頁 (1989);Lopez-Beresteinの文献、同書、317-327頁を参照されたい;一般には同書参照されたい)。
【0246】
更に別の実施態様において、本化合物は、制御放出システム中において送達することができる。ひとつの実施態様において、ポンプを使用することができる(Langerの論文、前掲;Seftonの論文、1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201;Buchwaldらの論文、1980, Surgery, 88:507;Saudekらの論文、1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照されたい)。別の実施態様において、高分子材料を使用することができる(「制御放出の医学適用(Medical Applications of Controlled Release)」, Langer及びWise編集, CRC Pres., ボカラトン, フロリダ州(1974);「徐放薬のバイオアベイラビリティ、医薬品のデザインと性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, Smolen及びBallの編集, Wiley, ニューヨーク(1984);Ranger及びPeppas J.の論文、1983, Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照されたい;同じく、Levyらの論文、1985, Science 228:190;Duringらの論文、1989, Ann. Neurol. 25:351;Howardらの論文、1989, J.Neurosurg. 71:105も参照されたい)。更に別の実施態様において、制御放出システムは、治療標的の近傍、すなわち結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣又は膵臓の近傍に配置することができ、その結果全身投与量の一部分のみが必要となる(例えば、Goodsonの文献、「制御放出の医学適用(Medical Applications of Controlled Release)」, 前掲, 第2巻、115-138頁(1984)を参照されたい)。
他の制御放出システムは、Langerの総説(1990, Science 249:1527-1533)において考察されている。
【0247】
本発明の化合物がタンパク質をコードしている核酸である具体的な実施態様において、核酸は、そのコードされたタンパク質の発現を促進するために、好適な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築し、かつこれを投与することにより、インビボ投与することができ、その結果これは、例えばレトロウイルスベクターの使用(米国特許第4,980,286号を参照されたい)によるか、又は直接注射によるか、又は微粒子銃の使用により(例えば、遺伝子銃;Biolistic, Dupont社)、又は脂質若しくは細胞-表面受容体によるコーティング、若しくは作用物質のトランスフェクションにより、又は核に侵入することがわかっているホメオボックス-様ペプチドへ連結した状態でのそれの投与(例えば、Joliotらの論文、1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868を参照されたい)などにより、細胞内となり始める。或いは核酸は、細胞内へと導入され、かつ相同組換えにより発現のために宿主細胞DNA内に組み込まれる。
【0248】
本発明は、医薬組成物も提供する。このような組成物は、治療有効量の化合物、及び医薬として許容し得る担体を含有する。具体的実施態様において、用語「医薬として許容し得る」とは、連邦の規制機関若しくは州政府により承認されたか、又は動物、より特定するとヒトにおける使用に関する米薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に収載されたことを意味する。用語「担体」は、それと共に治療薬が投与される、希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルをいう。このような医薬担体は、無菌の液体、例えば水及び油類であり、これは石油、動物、植物若しくは合成起源のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などを含む。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に、好適な担体である。食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も、液体担体として、特に注射用溶液のために使用することができる。好適な医薬賦形剤は、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。本組成物は、望ましいならば、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態をとることができる。本組成物は、伝統的結合剤及びトリグリセリドなどの担体と共に、坐薬として製剤することができる。経口製剤は、医薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの、標準担体を含む。好適な医薬担体の例は、「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、E.W. Martinに記載されている。そのような組成物は、被験体への適切な投与のための形態を提供するように、例えば精製された形態の本化合物の治療有効量を、好適な量の担体と一緒に含有するであろう。本製剤は、投与様式に適さなければならない。
【0249】
ひとつの実施態様において、本組成物は、ヒトへの静脈内投与のために適応された医薬組成物としての慣習的手順に従い製剤される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌の等張水性緩衝液中の溶液である。必要であるならば、本組成物は、可溶化剤及び注射部位の疼痛を緩和するためのリドカインなどの局所麻酔薬も含むことができる。一般にこれらの成分は、活性物質の量を示す、アンプル又はサシェなどの気密性の密閉容器中で、凍結乾燥された粉末又は水を含有しない濃縮物として、単位剤形で個別に又は互いに混合してのいずれかで供給される。本組成物が注入により投与される場合、これは、無菌の医薬等級の水又は食塩水を含む注入瓶で分配される。本組成物が注射により投与される場合、本成分が投与前に混合されるように、注射用滅菌水又は食塩水のアンプルを提供することができる。
【0250】
本発明の化合物は、中性の形態又は塩形態で製剤することができる。医薬として許容し得る塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの、遊離アミノ基により形成されたもの、並びにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの、遊離カルボキシル基により形成されたものを含む。
【0251】
結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の治療において有効である本発明の化合物の量は、標準の臨床技術により決定することができる。加えて最適用量範囲の同定を補助するために、インビトロアッセイが任意に使用されてよい。製剤において使用される正確な投与量は、投与経路、及び疾患又は障害の重篤度に応じても左右され、かつ臨床医の判断及び各被験体の状況に従い決定されなければならない。しかし静脈内投与に適した用量範囲は、一般に体重1kgにつき活性化合物約20〜500μgである。鼻腔内投与に適した用量範囲は、一般に約0.01pg/kg体重から、100、10、例えば1mg/kg体重などまでである。有効量は、インビトロ又は動物モデル試験システムから誘導された用量−反応曲線から外挿されてよい。
【0252】
坐薬は一般に、活性成分を、0.5%〜10重量%の範囲で含有し;経口製剤は好ましくは、10%〜95%の活性成分を含有する。
本発明は、本発明の医薬組成物の1種以上の成分で満たされた容器を1個以上含む、医薬パック又はキットも提供する。任意にそのような容器(群)は、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関により指示された形態の能書と関連付けることができ、この能書は、(a)ヒト投与のための製造、使用又は販売の政府機関による承認、(b)使用に関する指示、又はそれらの両方を反映している。
【0253】
(画像技術によるOGTA076存在量の決定)
画像技術によりOGTA076の存在量を決定することの利点は、そのような方法は非侵襲的であり(試薬投与を不要にする)及び被験体から試料を採取する必要がないことである。
好適な画像技術は、ポジトロン放出断層撮影(PET)及び単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)を含む。このような技術を使用するOGTA076の可視化は、適切な標識、例えば18F、11C又は123Iなどの放射性トレーサの取込み又は結合が必要である(例えば、本技術の更なる詳細については、NeuroRx-The Journal of the American Society for Experimental Neuro Therapeutics (2005) 2(2), 348-360頁及び同書の361-371頁を参照されたい)。放射性トレーサ又は他の標識は、適切に標識された特異的リガンドの被験体への投与によって(例えば、注射によって)、OGTA076へ取り込むことができる。或いはこれらは、被験体に(例えば、注射によって)投与されてもよいOGTA076に特異的な結合親和性試薬(例えば抗体)へ取り込むことができる。造影のためのアフィボディの使用に関する考察については、例えばOrlova A、Magnusson M、Eriksson TL、Nilsson M、Larsson B、Hoiden-Guthenberg I、Widstrom C、Carlsson J、Tolmachev V、Stahl S、Nilsson FY、「ピコモル親和性HER2結合アフィボディ分子を使用する腫瘍造影(Tumor imaging using a picomolar affinity HER2 binding affibody molecule)」、Cancer Res.2006年4月15日;66(8):4339-48を参照されたい)。
【0254】
(免疫組織化学を使用する結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の診断及び治療)
免疫組織化学は、優れた検出技術であり、従って結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌の診断及び治療において非常に有用である。免疫組織化学を使用して、蛍光色素、酵素、放射性元素又はコロイド金などのマーカーにより可視化される抗原-抗体相互作用による特異的試薬として、OGTA076へ特異的に結合する標識された抗体(又は他の親和性試薬)、それらの誘導体及び類似体の使用により、組織切片中のOGTA076抗原の局在化を通じて、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、リンパ性白血病(特に慢性リンパ球性白血病)、卵巣癌又は膵癌を検出、診断、又はモニタリングできる。
【0255】
モノクローナル抗体技術の進歩は、ヒト新生物の最新の高精度顕微鏡診断における免疫組織化学の立場を確証する上で重大な意味を有する。免疫組織化学による散在性の新生物性に悪性転換された細胞の同定は、癌の侵襲及び転移、更には増大した悪性度への免疫表現型に関連した腫瘍細胞の進展の明確な像をもたらす。将来の抗新生物治療的アプローチは、各個々の患者の新生物疾患に関連した特定の免疫表現型パターンに特異的な、様々な個人化された免疫療法を含むであろう。更なる考察に関しては、例えば、Bodey Bの文献、「新生物の診断及び療法における免疫組織化学の重要性(The significance of immunohistochemistry in the diagnosis and therapy of neoplasms)」、Expert Opin Biol Ther. 2002 Apr;2(4):371-93を参照されたい。
【0256】
本発明の各態様の好ましい特徴は、変更すべき所は変更し、他の態様の各々についてもあてはまる。本明細書において言及した先行技術の文献は、法的に許される最大程度で組み込まれる。
【実施例】
【0257】
(実施例1:1Dゲル電気泳動を使用する、結腸直腸癌、慢性リンパ球性白血病、及び膵癌の血液及び組織試料において発現される膜タンパク質の同定)
下記参照プロトコールを使用し、結腸直腸癌、慢性リンパ球性白血病及び膵癌の組織試料から抽出された膜タンパク質を、1Dゲルから分離し、分析した。
(1.1 材料及び方法)
(1.1.1 細胞膜分画)
結腸直腸癌、慢性リンパ球性白血病又は膵癌の上皮から回収した細胞を溶解し、100OGでの遠心分離に供した。上清を収集し、これを引き続き3000Gで遠心した。再度上清を収集し、次に100000Gで遠心した。
得られたペレットを回収し、15-60%ショ糖勾配上に配置した。
【0258】
ウェスタンブロットを用い、細胞内マーカーを同定し、細胞膜画分をプールした。
プールした溶液を、直接1Dゲルに泳動するか(下記1.1.4項参照)、又は以下に説明するように、ヘパリン結合画分及びヌクレオチド結合画分に更に分画した。
【0259】
(1.1.2 細胞膜ヘパリン-結合画分)
前記1.1.1からプールした溶液を、ヘパリンカラムに装加し、カラムから溶出し、1Dゲル上を流した(下記1.1.4項参照)。
【0260】
(1.1.3 細胞膜(plasma)ヌクレオチド-結合画分)
前記1.1.1からプールした溶液を、Cibacrom Blue 3GAカラムに装加し、カラムから溶出し、1Dゲル上を流した(下記1.1.4項参照)。
【0261】
(1.1.4 1Dゲル技術)
タンパク質又は膜のペレットを、1D試料緩衝液中に可溶化した(1〜2μg/μl)。次にこの試料緩衝液及びタンパク質混合液を、95℃で3分間加熱した。
その全体は引用により本明細書に組み込まれている、Ausubel F.M.らの編集した文献、1989, 「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」, Vol. II, Green Publishing Associates社, 及びJohn Wiley & Sons社, ニューヨーク, 10.2項に説明された手順に従い、9-16%アクリルアミド勾配ゲルを、濃縮用ゲル及び濃縮用櫛と共に成形した。
【0262】
界面活性剤から得られたタンパク質混合物30〜50μg及び分子量標準(66、45、31、21、14kDa)を、10μlのピペットチップを用い、濃縮用ゲルのウェルに添加し、これらの試料を40mAで5時間泳動した。
その後プレートをこじ開け、ゲルを固定液(10%酢酸、40%エタノール、50%水)のトレイに配置し、一晩振盪した。これに続きゲルをプライマー溶液(7.5%酢酸(75ml)、0.05%SDS(10%5ml))中で振盪し、30分間プライミング(prime)した。次にゲルを、蛍光色素(7.5%酢酸、0.06%OGSインハウス色素(600μl))と共に、3時間振盪しながらインキュベーションした。Sypro Red(Molecular Probes社, ユージーン, OR)は、この目的に適した色素である。好ましい蛍光色素は、1999年10月5日に出願された米国特許出願第09/412,168号に開示されており、これはその全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0263】
コンピュータ可読出力を、Apollo 3スキャナー(Oxford Glycosciences社、オックスフォード、英国)で蛍光染色したゲルをイメージングすることにより作製した。このスキャナーは、それらの各内容は引用により本明細書に組み込まれている、WO 96/36882、及びPh.D. David A. Basijiの学位論文「内部反射光及び相-感受性検出を使用するハイスループット蛍光スキャナーの開発(全内部反射、電気泳動)(Development of a High-throughput Fluorescence Scanner Employing Internal Reflection Optics and Phase-sensitive Detection(Total Internal Reflection, Electrophoresis))」、ワシントン大学、(1997), Dissertation Abstracts International, 58/12-B巻6686頁に開示されたスキャナーから開発されている。この装置の最新の実施態様は、下記の改善点を含む:ゲルは、精密な送りネジ駆動システム上でスキャナーを通り運搬される。これは、Basijiの学位論文において定義されたベルト駆動システム上のガラスプレート上に好ましくは配置され、結像光学系を通りゲルを正確に運搬する再現可能な手段を提供する。
【0264】
ゲルは、既知の位置でガラスプレートを堅く保持する3種のアラインメントストップでスキャナーへ固定される。これを、前述の正確な運搬システム、及びゲルはガラスプレートに結合されるという事実と組合せて行うことにより、ゲルの絶対位置を予測しかつ記録することができる。このことは、ゲル上の各特徴の正確な座標を、切り出しのためのカッティングロボットに伝達することを確実にする。このカッティングロボットは、位置の正確さを保つために、ガラスプレートと同一の取付位置を有する。
【0265】
その場にゲルを保持するキャリヤは、複合蛍光マーカー(M1、M2、M3と命名されている)を有し、これらのマーカーはイメージの外形を補正するのに使用され、かつ走査が正確に行われたことを保証する品質管理特徴である。
【0266】
本システムの光学部品は倒置される。レーザー、鏡、導波管及び他の光学部品は、この時走査されるガラスプレート上にある。Basijiの学位論文の実施態様では、これらは下側にある。従ってガラスプレートは、走査ゲル側を下側にした上に取付けられ、その結果ガラスプレートを通る光路が維持される。これを行うことにより、ガラスプレートから引き離れ得るゲルの全ての粒子が、光学系へよりもむしろ装置の底へと降下するであろう。
【0267】
ゲルの走査において、ゲルを染色から取り出し、水ですすぎ、簡単に空気乾燥させ、Apollo 3でイメージングした。イメージングの後、ゲルを、少量の染色液を含むポリエチレンバッグに密閉し、次いで4℃で保存した。
見かけの分子量を、試料と平行して泳動した既知の分子量マーカーセットから内挿することにより算出した。
【0268】
(1.1.5 選択されたタンパク質の回収及び分析)
タンパク質は、米国特許第6,064,754号(引用により本明細書に組み込まれている)の5.4及び5.6、5.7、5.8節に開示されたプロセスにより、1D-電気泳動に適用可能なように、以下のようにロボットカッターを改変し、ゲルからロボットを使用し切り出した:カッターは、レーンの上端から開始し、レーンの左端から直径1.7mmのゲルディスクを切り出す。次にカッターは、右側に2mm移動し、0.7mm下がり、更なるディスクを切り出す。その後これを繰り返す。次にカッターは、最初のゲル切断の真下、しかし2.2mm下側にずれた(offset)位置に戻り、三本の対角切断(three diagonal cut)パターンが繰り返される。これがゲルの全長について継続される。
【0269】
注意:レーンが、著しく広く見える場合は、横向きに補正を行い、すなわち、先のゲル切断の真下の位置に戻る代わりに、切断は、左(レーンの左)及び/又は右(レーンの右)にわずかにずらすことができる。ゲル断片中に含まれたタンパク質は、処理し、トリプシン分解ペプチドを産生した;これらのペプチドの部分的アミノ酸配列は、1998年6月15日に出願されたWO 98/53323及び出願番号09/094,996号に開示された質量分析により決定した。
【0270】
タンパク質は、処理し、トリプシン分解ペプチドを産生した。トリプシン分解ペプチドを、PerSeptive Biosystems Voyager-DETM STRマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析計を使用する質量分析によって解析し、選択されたトリプシン分解ペプチドを、ナノフロー(登録商標)エレクトロスプレーZスプレー源を装備したMicromass四重極飛行時間型(Q-TOF)質量分析計(Micromass社、アルトリンカム、英国)を使用するタンデム型質量分析(MS/MS)によって解析した。OGTA076の部分的アミノ酸配列決定及び同定のためには、トリプシン分解ペプチドの解釈されてないタンデム質量スペクトルを、SEQUEST検索プログラムバージョンv.C.1(Engらの論文, 1994、J. Am. Soc. Mass Spectrom. 5:976-989)を使用して検索した。データベースによる同定のための基準には:トリプシンの切断特異性;データベースから返されたペプチドにおける、a、b及びyイオンセットの検出、並びにカルバミドメチル化を説明する全てのシステイン残基での質量増分を含んだ。検索したデータベースは、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)によって保持される非冗長データベースのタンパク質の登録で構築されるデータベースであり、これはwww.ncbi.nlm.nih.govでアクセス可能である。SEQUESTプログラムを使用するスペクトル-スペクトル相関を介したタンパク質の同定に続いて、MALDI-TOF質量スペクトルにおいて検出された質量を、同定されたタンパク質内にあるトリプシン分解ペプチドに割り当てた。SEQUESTプログラムを使用するトリプシン分解ペプチドの未解釈のMS/MSスペクトルでの検索を介してもアミノ酸配列が同定できない場合には、ペプチドのタンデム質量スペクトルを当該技術分野において公知の方法を使用して手作業で解釈した(ペプチドイオンの低エネルギーによる断片化の質量スペクトルを解釈する場合には、Gaskellらの文献、1992, Rapid Commun Mass Spectrom. 6:658-662を参照されたい)。
【0271】
(1.1.6 結腸直腸癌、慢性リンパ球性白血病又は膵癌関連タンパク質の識別)
OGTA076を同定する方法では、上記の質量分析によって実験的に得られた天然に存在するヒトタンパク質のペプチド配列を使用して、公開されたヒトゲノム配列においてコードされたエキソンを同定し組織化する。
【0272】
ヒトゲノムの化学配列を明らかにすることにおける最近の劇的な進歩により、この莫大な課題が完成間近になった(Venter, J.C.らの論文,(2001)「ヒトゲノムの配列(The sequence of the human genome.)」 Science, 16:1304-51;International Human Genome Sequencing Consortium.の論文(2001)「ヒトゲノムの一次塩基配列決定及び解析(Initial sequencing and analysis of the human genome.)」Nature 409:860-921)。この配列情報は、我々が、分子進化、比較ゲノム科学、病理メカニズム及び分子医薬を含む多くの生物学的プロセスを理解する上で、重大な衝撃を有することにはほぼ疑いがない。ヒトゲノムの配列に固有の完全な医学的価値が理解されるためには、ゲノムが「組織化」され、注釈付けされる必要がある。これは、少なくとも以下の3つのことを意味する。(i)ゲノムの個々の部分の配列を、それぞれの染色体の明瞭で連続的な配列に構築すること。(ii)遺伝子を含むそれぞれの染色体の領域の明白な同定。(iii)遺伝子の微細構造及びそのmRNAとタンパク質産物の特性の決定。「遺伝子」の定義は、ますます複雑な問題となる一方で(H Pearsonの文献:「遺伝子とは何か(What is a gene?)」Nature, (2006)24:399-401)、薬物発見及び薬物開発の現在の関心事は、機能的な発現タンパク質をコードするこれらの遺伝子の目録である。これらの遺伝子のサブセットは、全てとまではいかないがほとんどの病態の分子基盤に関与しているであろう。従って製薬産業にとって重要な現在の目標は、ヒトゲノムにおいてこのような遺伝子を同定し、これらの微細構造を記述することである。
【0273】
(OGAP(登録商標)データベースを形成するための、ペプチド質量、ペプチドの特徴、EST及び公共ドメインゲノム配列データの処理並びに統合)
別々の遺伝学的単位(エキソン、転写物及び遺伝子)を以下の一連の工程を使用して同定した:
1. Ensembl及び種々の遺伝子予測プログラムから利用できる遺伝子同定を組合せることにより、ヒトゲノムにマッピングするトリプシン分解ペプチドを含む「仮想トランスクリプトーム」を作製する。また、これには、遺伝子同定におけるSNPデータ(dbSNPから)及び全ての選択的スプライシングを組み込む。また、公知の混入物を仮想トランスクリプトームに追加した。
【0274】
2. OGeS質量分析データベースの全てのタンデムスペクトルを、仮想トランスクリプトームのひとつに対してマッピングすることができるペプチドを作製するように解釈する。一連の自動化されたスペクトル解釈アルゴリズムを使用してペプチド同定を行った。
3. 典型的には20ppmという質量分析計の質量精度に基づいた寛容性を使用して、タンデムペプチドによってヒットした転写物由来の全てのペプチドを検索することにより、OGeS質量分析データベースの全ての質量がマッチしたペプチドのセットを作製する。
【0275】
4. 全てのタンデムペプチド及び質量がマッチしたペプチドを、「タンパク質クラスター」の形態で組合せる。これは、共通のペプチドヒット数に基づいて配列をクラスターにグループ化する再帰的プロセスを使用してなされる。生物学的配列は、それらがひとつ以上のタンデムペプチド又は質量がマッチしたペプチドを共有する場合に、同じクラスターに属するとみなされる。
5. 誤って同定されたペプチドを除外するための初期のフィルタリング後に次いで、得られたクラスターをヒトゲノムに対してマッピングする。
【0276】
6. 次いで、タンパク質クラスターを、その近接度及びタンパク質クラスター内のペプチドの同時観察を使用して、予備的遺伝子境界線を定義する領域に集約させる。近接度は、同じ染色体の同じ鎖上の80,000ヌクレオチド内に存在するペプチドとして定義される。クラスター観察スコアリング及びゲノムに対する多重マッピングに基づいた種々の排除則を使用して出力結果を洗練する。得られる「確認された遺伝子」が、それぞれのクラスターにおける質量分析によって観察されるペプチド及び質量を最もよく説明するものである。また、遺伝子の公称座標がこの段階の出力結果である。
【0277】
7. それぞれの確認された遺伝子の転写物の最もよいセットを、タンパク質クラスター、ペプチド、EST、候補エキソン及び元のタンパク質スポットの分子量から作製する。
8. それぞれの同定された転写物を、観察されたペプチドを提供する試料と関連させる。
9. データを考察し、マイニングするためのアプリケーションの使用。工程1〜8の結果は、それぞれが多数のエキソン及びひとつ又は複数の転写物からなる遺伝子を含むデータベースである。この組み込まれたゲノム/プロテオームデータを表示し、及び検索するためのアプリケーションを書いた。Ensemblと同じGolden経路座標系にマッピングされた任意の特徴(OMIM疾患座、InterProなど)を、位置及び微細構造の一致によって、これらの遺伝子に相互参照することができる。
【0278】
(結果)
本方法を使用して、およそ1,000,000個のペプチド配列を作製して、タンパク質をコードする遺伝子及びそれらのエキソンを同定し、結果として膀胱癌で506遺伝子、乳癌で4,713遺伝子、バーキットリンパ腫で767遺伝子、子宮頸癌で1,372遺伝子、慢性リンパ球性白血病で2424遺伝子、結腸直腸癌で949遺伝子、肝細胞癌で1,783遺伝子、腎癌で1004遺伝子、肺癌で978遺伝子、メラノーマで1,764遺伝子、卵巣癌で1,033遺伝子、膵癌で2,961遺伝子、及び前立腺癌で3,308遺伝子を含む、67の異なる組織及び57の疾患にわたる18083個の遺伝子のタンパク質配列を同定し、これらは結腸直腸癌、慢性リンパ球性白血病、腎癌、肝癌、肺癌、卵巣癌及び膵癌の試料から単離及び同定されたOGTA076によりここで説明された。実験的に決定された配列とOGAP(登録商標)データベースの配列とを比較した後、OGTA076は、結腸直腸癌、慢性リンパ球性白血病、腎癌、肝癌、肺癌、卵巣癌及び膵癌に対して高度に特異性であり、予後及び診断性質を示すことが示された。
【0279】
(1.2 結果)
これらの実験は、更に本明細書において説明されたように、その3種の異なるアイソフォームでOGTA076を同定した。完全長OGTA076は、結腸直腸癌、慢性リンパ球性白血病及び膵癌試料の細胞膜中で検出され、かつ細胞質ゾルにおいて検出されなかった。
【0280】
図2は、OGTA076のタンパク質指数を示す。各遺伝子に関して、タンパク質指数は、全般的データベースに対し、各疾患にスコアを割り当てるために、質量分析データを使用する。次にタンパク質指数を使用し、癌適用症において高スコアを有しかつ正常及び他の疾患において低/無視できるスコアを有する、癌特異的遺伝子を同定することができる。この指数は、56疾患からの質量分析により、〜1,000,000個のペプチド配列を含む。各遺伝子に関して、これは、各々の疾患及び細胞内局在に関するスコアを生じる。これらの結果を、以下にまとめる:
【0281】
OGTA076に関するタンパク質指数の報告
陽性適応症:
結腸直腸癌
慢性リンパ球性白血病
腎癌
肝癌
肺癌
卵巣癌
膵癌
【0282】
【表13】
【0283】
【表14】
【0284】
図2は、OGTA076のタンパク質指数が、結腸直腸癌において高く、慢性リンパ球性白血病において中位であり、腎癌において中位であり、肝癌において低く、肺癌において高く、卵巣癌において中位であり、及び膵癌細胞膜において低く、かつ正常細胞膜及び膜において非常に低いことを示している。OGTA076は、他の疾患のいずれにおいても検出されなかった。このことは、OGTA076は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌、慢性リンパ球性白血病、卵巣癌及び膵癌の良好なマーカーである可能性があることを示している。
【0285】
(実施例2:結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌又は卵巣癌の血液及び組織試料中で発現された膜タンパク質の同定)
【0286】
下記の「参照プロトコール」を使用し、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌及び卵巣癌組織、並びに正常な隣接する結腸直腸、腎臓、肝臓、肺及び卵巣の組織試料から抽出された膜タンパク質を消化し、絶対及び相対定量用同重体タグ法(iTRAQ;Applied Biosystems社, フォスターシティー, CA, USA)で標識し、得られたペプチドをタンデム質量分析により配列決定した。
【0287】
(2.1 材料及び方法)
(2.1.1 細胞膜分画)
結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌若しくは卵巣癌、又は正常な隣接する結腸直腸、腎臓、肝臓、肺若しくは卵巣の組織から回収した細胞を溶解し、100OGでの遠心分離に供した。上清を収集し、これを引き続き3000Gで遠心した。再度上清を収集し、次に100000Gで遠心した。
得られたペレットを回収し、15-60%ショ糖勾配上に配置した。
【0288】
ウェスタンブロットを用い、細胞内マーカーを同定し、細胞膜画分をプールした。
プールした溶液を、次にiTRAQ(下記2.1.2項参照)により直接分析した。
【0289】
(2.1.2 iTRAQ法)
結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌又は卵巣癌、及び正常な隣接する結腸直腸、腎臓、肝臓、肺又は卵巣の組織由来の膜タンパク質ペレットを、緩衝液を添加することにより、試料緩衝液(0.5%SDS中2-4μg/μl)に可溶化し、それから95℃で3分間加熱した。
【0290】
50μgと等しい各タンパク質溶液の容積に、0.5M炭酸水素トリエチルアンモニウム(TEAB)溶液150μlを添加した。各試料へ、50mMトリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィン3μlを添加し、この混合物を60℃で1時間インキュベーションした。次にイソプロパノール中のシステイン阻害試薬1μl、200mMメタンチオスルホン酸メチル(MMTS)を添加した。室温で10分間インキュベーションした後、1μg/1μlトリプシン15μlを各試料に添加し、引き続き37℃で一晩インキュベーションした。
【0291】
この消化した試料を、真空下で乾燥し、0.5M TEAB溶液30μl中に再構成した。4種のiTRAQ試薬(114/115/116/117)の各々に、エタノール70μlを添加し、ひとつの試薬を分析される4つの試料(2つの結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌又は卵巣癌試料及び2つの対応する正常隣接組織試料)の各々に添加し、室温で1時間静置した。各試料に添加した具体的試薬は記録した。4つの標識された試料を一緒にし、激しく攪拌した。
【0292】
一緒にした試料を、真空下で乾燥し減量し、C18スピンカラム上に装加することにより脱塩し、水性溶媒で洗浄し、次に70%アセトニトリルで溶出した。この試料画分を再度乾燥し減量し、次に溶媒A(水97.9、アセトニトリル2%、ギ酸0.1%)40μlに再溶解し、その後イオン交換分画を施した。
【0293】
(2.1.3 標識ペプチドの分画及び分析)
前述の試料を、Agilent 1200クロマトグラフ(Agilent社, サンタクララ, CA, 米国)を使用する強陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画した。試料を、0〜100mM酢酸ナトリウムの勾配を20μl/分で用い20分間、その後1Mとし10分間かけて、Agilent Zorbax Bio-SCXIIカラム(3.5μm;50×0.8mm)から溶出した。30分間の試行の間に、1分間画分を収集した。
【0294】
各分画を、Zorbax 300SB-C18 (150mm×75μm)及びAgilent 6510四重極飛行時間型装置(Agilent社, サンタクララ, CA, 米国)を装着したAgilent 1200クロマトグラフを使用し、液体クロマトグラフィー/質量分析により分析した。ペプチドを、60分間かけて、15%から45%アセトニトリルまで増大する300nl/分勾配により溶出した。データは、自動MS/MSモードで獲得し、その結果閾値強度を上回る最大3プリカーサーイオンが選択され、かつ標識ペプチドの配列決定を促進するために、プロダクトイオンスペクトルを蓄積した。生データを処理し、Spectrum Millソフトウェア(Agilent社, サンタクララ, CA, 米国)を用い、ピークリストを作製した。
【0295】
(2.1.4 標識ペプチドのアミノ酸配列分析)
OGTA076の部分的アミノ酸配列決定及び同定のために、トリプシン分解ペプチドの観解釈のタンデム質量スペクトルを、SEQUEST検索プログラムを用いて検索した(Engらの論文、1994, J. Am. Soc. Mass Spectrom. 5:976。データーベースによる同定のための基準は以下を含んだ:トリプシンの切断特異性;データベースから返されたペプチドのa、b及びyイオンセットの検出、並びにメタンチオホスホン酸メチルによる修飾及び遊離アミン(N-末端及びリジン)へのiTRAQ標識の付加を説明する全てのシステイン残基の質量増分。このデータは、IPI Human v3.23 (www.ebi.ac.uk/IPI/IPIhuman.html)により検索した。
【0296】
(2.1.5 結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌又は卵巣癌に関連したタンパク質の識別)
実施例1の1.1.6節に説明されたプロセスを使用し、実験試料中の結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌及び卵巣癌に関連したタンパク質を識別した。
【0297】
(2.2 結果)
これらの実験は、以下に更に説明するような、その3種の異なるアイソフォームで、OGTA076を同定した。完全長OGTA076は、結腸直腸癌、腎癌、肝癌、肺癌及び卵巣癌試料の細胞膜内で検出された。iTRAQ分析は、これらの癌試料中のOGTA076レベルは、マッチした正常な隣接する組織試料中よりも高いことを示した。
図2は、OGTA076のタンパク質指数を示す。OGTA076のタンパク質指数の説明については、実施例1の1.2節を参照のこと。
【0298】
特許及び特許出願を含む、本出願を通じて引用された全ての参照は、可能な限り最大に引用により本明細書に組み込まれる。
明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって、状況が他に必要としない限り、語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」などのバリエーションは、明示された整数、工程、整数群又は工程の群を含むことを意味するが、任意のその他の整数、工程、整数の群又は工程群を除外しないことは理解されるであろう。
【0299】
本説明及び特許請求の範囲を一部形作る出願は、後続のあらゆる出願に関する優先権の基礎として使用され得る。そのような後続の出願の特許請求の範囲は、本明細書に説明された任意の特徴又は特徴の組合せに関連することができる。これらは、生成物、組成物、プロセス、又は使用の特許請求の形態をとることができ、かつ例示として非限定的に、以下の「特許請求の範囲」を含んでよい。
【表15】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図1-10】
図1-11】
図1-12】
図1-13】
図1-14】
図1-15】
図1-16】
図1-17】
図1-18】
図1-19】
図1-20】
図1-21】
図1-22】
図1-23】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]